特許第5688162号(P5688162)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5688162部品内蔵基板の製造方法及びこの方法を用いて製造した部品内蔵基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5688162
(24)【登録日】2015年1月30日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】部品内蔵基板の製造方法及びこの方法を用いて製造した部品内蔵基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20150305BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20150305BHJP
【FI】
   H05K3/46 Q
   H05K3/46 N
   H05K3/00 P
   H05K3/46 G
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-542735(P2013-542735)
(86)(22)【出願日】2011年11月8日
(86)【国際出願番号】JP2011075705
(87)【国際公開番号】WO2013069093
(87)【国際公開日】20130516
【審査請求日】2014年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000243906
【氏名又は名称】株式会社メイコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】今村 圭男
【審査官】 吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−123797(JP,A)
【文献】 特開2009−194382(JP,A)
【文献】 特開2011−523773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に配線パターンを有する絶縁基板内に内蔵された電気又は電子的な部品を含み、この部品の端子が前記配線パターンと電気的に接続されている、部品内蔵基板の製造方法において、
支持板上に金属層を形成し、この金属層が前記支持板に接する第1面及びこの第1面とは反対側の第2面を含み、この第2面が前記部品のための搭載予定領域及びこの搭載予定領域以外の非搭載領域を有する、金属層形成工程と、
前記第2面の前記非搭載領域に金属のメインマークを形成するマーク形成工程と、
前記第2面の前記搭載予定領域に前記メインマークの形成と同時に中央貫通孔を有する金属の座を形成する座形成工程と、
前記搭載予定領域及び前記座に絶縁性の接着剤を塗布して接着層を形成し、この接着層が前記座の前記中央貫通孔の位置に前記中央貫通孔内を前記接着剤で満たした充填域を有する、接着剤塗布工程と、
前記メインマークを基準にして前記部品を位置決めし、前記部品の前記端子が前記充填域に接した状態で、前記接着層上に前記部品を搭載する部品搭載工程と、
前記第2面上に、前記部品及び前記メインマークを埋設させる前記絶縁基板としての埋設層を形成する埋設層形成工程と、
前記金属層から前記支持板を剥離させ、この剥離により前記金属層の第1面を露出させる剥離工程と、
露出された第1面側から前記金属層の一部を除去し、前記金属層に少なくとも前記メインマークを露出させる第1のウィンドウ及び少なくとも前記座の前記中央貫通孔を露出させる第2のウィンドウをそれぞれ形成するウィンドウ形成工程と、
露出された前記メインマークを基準にして前記部品の端子の位置を特定し、露出した前記座の前記貫通孔内を満たしている前記充填域の前記接着剤を除去し、前記充填域に前記端子まで到達するビアホールを形成するビアホール形成工程と、
前記ビアホールにめっき処理を施し、この後、前記ビアホール及び前記第2のウィンドウ内に金属を充填することにより前記端子と前記金属層とを電気的に接続する導通ビアを形成する導通ビア形成工程と、
前記金属層を前記配線パターンに形成するパターン形成工程と
を備えていることを特徴とする部品内蔵基板の製造方法。
【請求項2】
前記マーク形成工程は、金属のサブマークを前記メインマークと同時に前記第2面の非搭載領域に形成し、
前記剥離工程と前記ウィンドウ形成工程との間にて、前記サブマークをX線を用いて特定し、前記金属層、前記サブマーク及び前記埋設層を共に貫通する貫通孔マークを形成する貫通孔マーク形成工程を更に備え、
前記ウィンドウ形成工程は、前記貫通孔マークを基準にして前記第1のウィンドウ及び第2のウィンドウを形成することを特徴とする請求項1に記載の部品内蔵基板の製造方法。
【請求項3】
前記メインマーク、サブマーク及び前記座は、めっきレジスト膜を用いたパターンめっきにより形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の部品内蔵基板の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の製造方法を用いて製造した部品内蔵基板。
【請求項5】
請求項2の前記サブマーク及び前記貫通孔マークを更に備えていることを特徴とする請求項4に記載の部品内蔵基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気又は電子的な部品を基板内に埋め込んだ部品内蔵基板の製造方法及びこの方法を用いて製造した部品内蔵基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子回路基板に表面実装された部品の高密度化、即ち、電子回路基板の高機能化に伴い、電子部品を絶縁層である絶縁基板内に埋め込んだ構造の部品内蔵基板が注目されている。この部品内蔵基板の絶縁基板の表面には配線パターンが形成されており、この配線パターンの所定位置に他の各種電子部品が表面実装されることで、部品内蔵基板はモジュール基板として使用することができる。また、部品内蔵基板は、ビルドアップ法により部品内蔵多層回路基板を製造するときのコア基板として使用することもできる。
上記した部品内蔵基板においては、前記配線パターンと、前記絶縁基板内の電子部品の端子とを電気的に接続する必要があり、この接続には、半田を用いることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、モジュール基板や多層回路基板の製造過程においては、数度にわたって各種電子部品の表面実装が行われる。通常、電子部品の表面実装には、リフロー方式の半田付けが行われるので、部品内蔵基板は、表面実装の度にリフロー炉に投入され、半田が溶ける温度まで加熱される。このため、特許文献1の部品内蔵基板における前記絶縁基板内の接続部は、半田の溶融温度まで数度にわたって加熱されるので、前記接続部の信頼性が低下する虞がある。
【0004】
そこで、部品内蔵基板における前記接続部の信頼性を向上させるために、絶縁基板内での接続部の電気的接続を半田に代えて銅めっきにより行うことが知られている(例えば、特許文献2参照)。つまり、銅の融点は、半田の融点より高いので、部品内蔵基板がリフロー炉に投入されても接続部が溶けることはなく、前記接続部の信頼性は維持される。
【0005】
詳しくは、特許文献2の製造方法は、以下の通りである。
【0006】
まず、銅箔等の金属層上に絶縁層が積層され、層状体が形成される。この層状体にガイド孔が形成され、更に、このガイド孔を基準にして前記層状体には、接続孔が形成される。この接続孔は、前記絶縁層上に配設されるべき基板内部品の領域に形成される。この接続孔内には後工程にて銅が充填され、充填された銅は基板内部品の端子と配線パターンとを電気的に接続する金属ジョイントを形成する。その後、前記領域に接着剤が塗布され、この接着剤を利用して絶縁層の上に基板内部品が固定される。このときの基板内部品の位置決めには、前記接続孔が利用される。ここで、前記基板内部品は、その端子が前記接続孔と対応するように位置決めされる。なお、前記接続孔には、前記接着剤が流れ込んでいる。
【0007】
ついで、層状体の絶縁層には絶縁基板となるべきプリプレグ等の絶縁基材が積層され、この時点で、絶縁基材内に基板内部品を埋設した絶縁基板が形成される。得られた絶縁基板は、一方の面に前記層状体の前記金属層が存在しており、この金属層の外面には前記接続孔が開口している。この状態の絶縁基板に対し、前記金属層の外面側から前記接続孔内の接着剤を除去して前記基板内部品の端子を接続孔内で露出させたのち、前記接続孔を含め、前記金属層の外面の全体に銅のめっき処理を施す。これにより、前記接続孔内には、銅が成長して充填され絶縁基板の表面に位置付けられた金属層と基板内部品の端子とが電気的に接続される。この後、絶縁基板表面の金属層の一部をエッチングして配線パターンを形成することにより部品内蔵基板が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−027917号公報
【特許文献2】特表2008−522396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記した製造方法においては、前記基板内部品を固定する接着剤は、前記領域に塗布された際、上述したように一部が前記接続孔内へ流れ込む。その結果、接着層の厚さが薄くなり、以下のような不具合が生じる虞がある。
【0010】
まず、接着剤は、硬化した後の接着層の強度を維持するためフィラーを含むものが通常用いられている。しかし、接着層の厚さがフィラーのサイズよりも薄くなると、フィラーが接着層から脱落しやすくなり所要の強度が得られなくなることがある。
【0011】
また、接着層は、絶縁層としても用いられるので、その厚さが薄くなりすぎると所要の絶縁性の確保が困難となることがある。
このため、上記した製造方法においては、接続孔内へ流れ込みやすい低粘度タイプ、あるいは、チクソトロピー性の低いタイプの接着剤は適しておらず、用いることのできる接着剤が限定される。
【0012】
本発明は、上記の事情に基づいてなされたものであり、その目的とするところは、内蔵された部品の端子に対して配線パターンとの電気的接続に用いられる接続孔を精度良く位置決めして形成できるとともに、部品を固定する接着剤の選択の幅を拡げることができる部品内蔵基板の製造方法及びこの方法を用いて製造した部品内蔵基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明によれば、表面に配線パターンを有する絶縁基板内に内蔵された電気又は電子的な部品を含み、この部品の端子が前記配線パターンと電気的に接続されている、部品内蔵基板の製造方法において、支持板上に金属層を形成し、この金属層が前記支持板に接する第1面及びこの第1面とは反対側の第2面を含み、この第2面が前記部品のための搭載予定領域及びこの搭載予定領域以外の非搭載領域を有する、金属層形成工程と、前記第2面の前記非搭載領域に金属のメインマークを形成するマーク形成工程と、前記第2面の前記搭載予定領域に前記メインマークの形成と同時に中央貫通孔を有する金属の座を形成する座形成工程と、前記搭載予定領域及び前記座に絶縁性の接着剤を塗布して接着層を形成し、この接着層が前記座の前記中央貫通孔の位置に前記中央貫通孔内を前記接着剤で満たした充填域を有する、接着剤塗布工程と、前記メインマークを基準にして前記部品を位置決めし、前記部品の前記端子が前記充填域に接した状態で、前記接着層上に前記部品を搭載する部品搭載工程と、前記第2面上に、前記部品及び前記メインマークを埋設させる前記絶縁基板としての埋設層を形成する埋設層形成工程と、前記金属層から前記支持板を剥離させ、この剥離により前記金属層の第1面を露出させる剥離工程と、露出された第1面側から前記金属層の一部を除去し、前記金属層に少なくとも前記メインマークを露出させる第1のウィンドウ及び少なくとも前記座の前記中央貫通孔を露出させる第2のウィンドウをそれぞれ形成するウィンドウ形成工程と、露出された前記メインマークを基準にして前記部品の端子の位置を特定し、露出した前記座の前記貫通孔内を満たしている前記充填域の前記接着剤を除去し、前記充填域に前記端子まで到達するビアホールを形成するビアホール形成工程と、前記ビアホールにめっき処理を施し、この後、前記ビアホール及び前記第2のウィンドウ内に金属を充填することにより前記端子と前記金属層とを電気的に接続する導通ビアを形成する導通ビア形成工程と、前記金属層を前記配線パターンに形成するパターン形成工程とを備えていることを特徴とする部品内蔵基板の製造方法が提供される。
【0014】
ここで、前記部品内蔵基板の製造方法は、前記マーク形成工程は、金属のサブマークを前記メインマークと同時に前記第2面の非搭載領域に形成し、前記剥離工程と前記ウィンドウ形成工程との間にて、前記サブマークをX線を用いて特定し、前記金属層、前記サブマーク及び前記埋設層を共に貫通する貫通孔マークを形成する貫通孔マーク形成工程を更に備え、前記ウィンドウ形成工程は、前記貫通孔マークを基準にして前記第1のウィンドウ及び第2のウィンドウを形成する態様とすることが好ましい。
【0015】
また、好ましくは、前記メインマーク、サブマーク及び前記座は、めっきレジスト膜を用いたパターンめっきにより形成される態様とする。
【0016】
また、本発明によれば、上記した部品内蔵基板の製造方法を用いて製造した部品内蔵基板が提供される。
【0017】
ここで、前記部品内蔵基板は、前記サブマーク及び前記貫通孔マークを更に備えている構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る部品内蔵基板の製造方法は、金属層に形成したメインマークを用いて電気又は電子的な部品の位置決めを行い、後工程にて形成されるビアホールは前記メインマークと同時に形成される前記座の前記中央貫通孔内の樹脂を除去することで形成される。従って、形成されるビアホールの位置は前記座の前記中央貫通孔によるものとなる。つまり、前記座と同時に形成されるメインマークを用いて行なわれる前記部品の位置決めは、前記座の位置すなわちビアホールの位置に向けて行なうこととなるため、前記部品と前記部品の端子への電気的な接続を行なうビアホールの位置決めは、極めて高い位置精度での対応が可能となる。
【0019】
また、本発明においては、メインマークと同時に形成された座が前記部品と前記金属層(配線パターン)との間のスペースを確保するスペーサとして機能するので、前記部品と前記金属層との間の接着層の厚さを一定に保つことができる。この結果、優れた接着強度及び絶縁性を有する接着層を安定して得ることができる。しかも、この座は、中央貫通孔を有しており、この中央貫通孔と搭載される前記部品の端子の位置とが合致しているので、中央貫通孔内の接着層の充填域を除去することにより、設計通りの正確な位置にビアホールを形成することができる。
【0020】
また、本発明に係る部品内蔵基板の製造方法は、前記部品を前記金属層に接着剤を介して搭載した後に、当該接着剤を硬化させた接着層を得る。前記金属層には予め孔をあけることは行わないので、未硬化の接着剤が孔から流れ落ちることはない。このため、得られる接着層の厚さを所要の厚さとすることができ、設計通りの接着強度及び絶縁性を確保することができる。つまり、本発明によれば、接着剤の選択の幅が広がる。
【0021】
更に、本発明においては、マーク形成工程にて、サブマークを前記メインマークと同時に形成し、前記ウィンドウ形成工程の前に、前記サブマークをX線を用いて特定し、前記金属層、前記サブマーク及び前記埋設層を共に貫通する貫通孔マークを形成する。この貫通孔マークを基準にすれば、金属層に隠れているメインマークの位置及び前記部品の端子に対応する位置は、簡単に特定することができるので、前記第1のウィンドウ及び第2のウィンドウを容易に形成することができる。
【0022】
また、本発明においては、前記メインマーク、サブマーク及び前記座は、めっきレジスト膜を用いたパターンめっきにより形成されるので、従来より一般的に使用されているプリント基板製造設備にて簡単に形成できる。このため、本発明は、部品内蔵基板全体としての生産効率向上に寄与する。
【0023】
また、本発明の部品内蔵基板は、上記した製造方法により得られるので、内蔵される部品と配線パターンとの位置決め精度が極めて高く、不良品の発生率が低い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る部品内蔵基板の製造方法において、支持板の金属層上にマーク及び座が形成されるまでの手順を概略的に示す断面図である。
図2図2の座を概略的に示す斜視図である。
図3図1(e)の金属層上に接着剤を供給した状態を概略的に示す断面図である。
図4図3の接着剤上に電子部品を搭載した状態を概略的に示す断面図である。
図5】電子部品が搭載された金属層上に絶縁基材及び銅箔を積層する状態を概略的に示す断面図である。
図6】電子部品が搭載された金属層上に絶縁基材及び銅箔を積層し一体化した状態を概略的に示す断面図である。
図7】金属層から支持板を剥離した状態を概略的に示す断面図である。
図8】中間体にX線孔加工を施した状態を概略的に示す断面図である。
図9図8の中間体にウィンドウを形成した状態を概略的に示す断面図である。
図10図9の中間体にレーザービアホールを形成した状態を概略的に示す断面図である。
図11図9の中間体にレーザーを照射している状態を概略的に示す断面図である。
図12図10の中間体にめっき処理を施した状態を概略的に示す断面図である。
図13】本発明の実施形態に係る部品内蔵基板を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
絶縁基板内に電子部品(以下、基板内部品という)14を内蔵した部品内蔵基板につき、本発明に係る部品内蔵基板の製造方法を適用して製造する手順を以下に説明する。
【0026】
本発明においては、まず、支持板上に金属層を形成する(金属層形成工程)。
本工程では、図1(a)に示すように、支持板2を用意する。この支持板2は、例えばステンレス鋼製の薄板である。そして、図1(b)に示すように、支持板2上に薄膜からなる第1金属層4を形成する。この第1金属層4は、例えば、電解めっきにより得られる銅めっき膜からなる。このようにして銅張り鋼板6を得る。ここで、第1金属層4において、支持板2に接している面を第1面3とし、この第1面3とは反対側の面を第2面5とする。また、この第2面5は、基板内部品14のための搭載予定領域S及びこの搭載予定領域以外の非搭載領域Nを有している。
【0027】
次いで、銅張り鋼板6上に銅製の柱状体からなる位置決め用のマークを形成する(マーク形成工程)と同時に銅製の環状体からなる座を形成する(座形成工程)。
【0028】
詳しくは、図1(c)に示すように、準備した銅張り鋼板6の第1金属層4上にマスク層8を形成する。このマスク層8は、例えば、所定厚みのドライフィルムからなるめっきレジストであり、所定位置に所定形状の開口10が設けられており、この開口10から金属層4が露出している。そして、このようなマスク層8を有する銅張り鋼板6に対し銅の電解めっきを施すことにより、前記した露出部分に銅7を優先的に析出させる(図1(d))。この後、マスク層8としてのドライフィルムを除去することにより、第1金属層4の第2面5上の所定位置に銅ポストが形成される(図1(e))。この銅ポストとしては、円柱状をなす位置決め用のマーク12及び円環状をなす座60が形成される。ここで、座60は、詳しくは、図2に示すように、扁平な円柱体の中心に中央貫通孔62を有する形状をなしている。なお、これら銅ポストは、ドライフィルムの高さと同じ高さで形成されるが、少なくとも座60は、その高さが、後工程で形成される接着層18に求められる厚さと同じ寸法に設定されている。
【0029】
マーク12の設置位置としては、非搭載領域Nにおいて任意に選定することができるが、絶縁基板内に内蔵すべき基板内部品14の位置決めを行う光学系位置決め装置(図示せず)の光学系センサーが認識しやすい位置に設けることが好ましい。本実施形態においては、図1(e)に示すように、マーク12は、基板内部品14が搭載される予定の搭載予定領域Sを挟むように銅張り鋼板6の両端部の非搭載領域Nに2個ずつ形成した。ここで、各マークにつき、図1(e)中、搭載予定領域Sに近い側に位置付けられたものをインサイドマーク(メインマーク)A,B、これらインサイドマークA,Bを挟んで搭載予定領域Sとは反対側に位置付けられたものをアウトサイドマーク(サブマーク)C,Dと称する。
【0030】
一方、座60の設置位置は、搭載予定領域S内で、且つ、基板内部品14の端子20が位置付けられるべき端子位置tに中央貫通孔62が相対するように位置付けられる位置とする。
【0031】
次に、搭載予定領域Sに接着剤16を供給する(接着剤塗布工程)。
まず、図3に示すように、金属層4上の部品の搭載予定領域Sに絶縁性の接着層となるべき接着剤16が供給される。このとき、供給される接着剤16の形態としては、特に限定されるものではなく、低粘度タイプあるいは高粘度タイプのペースト状の接着剤16を所定厚さで塗布する形態をとることができる。本実施形態では、低粘度タイプの接着剤16を用い、図3に示すように、僅かに座60を覆う程度の厚さで、搭載予定領域Sの全体を覆うように塗布する。ここで、座60の中央貫通孔62内にも接着剤16が導入され、中央貫通孔62は接着剤16で満たされた状態とする。これにより、接着層は、中央貫通孔62内を接着剤で満たした充填域63を有する。
【0032】
中央貫通孔62は、図3から明らかなように、一方端(図3中下側)が金属層4により塞がれているので、接着剤16は、中央貫通孔62内に留まる。ここで、接着剤16は、搭載予定領域Sの全体を覆っていればよく、接着剤16の位置決め精度は、比較的低くてもよい。なお、接着剤16の位置決めを行う際、インサイドマークA,Bを基準にして搭載予定領域Sを特定し、特定された位置に接着剤16を塗布すると接着剤16の位置決め精度は向上するので好ましい。
【0033】
上記した接着剤16は、硬化して所定厚さの接着層18となる。得られる接着層18は、基板内部品14を所定位置に固定するとともに、所定の絶縁性を有している。接着剤16としては、硬化後に所定の接着強度及び所定の絶縁性とを発揮するものであれば格別限定されないが、例えば、紫外線硬化型のエポキシ系樹脂又はポリイミド系樹脂にフィラーを添加したもの、熱硬化型のエポキシ系樹脂又はポリイミド系樹脂にフィラーを添加したもの等が用いられる。このフィラーとしては、例えば、シリカ(二酸化ケイ素)、ガラス繊維等の微粉末が用いられる。本実施形態においては、熱硬化型のエポキシ系樹脂にシリカの微粉末を添加した低粘度タイプの接着剤を使用した。
【0034】
次に、銅張り鋼板6上に接着剤16を介して基板内部品14を搭載する(部品搭載工程)。
まず、図4に示すように、搭載予定領域Sに塗布された接着剤16の上に基板内部品14を搭載する。ここで、基板内部品14は、図4から明らかなように、ICチップ等(図示せず)が樹脂で覆われた直方体状のパッケージ部品であり、このパッケージ部品の下部には複数の端子20が設けられている。この基板内部品14は、インサイドマークA,Bを基準にして搭載予定領域Sに位置決めされる。詳しくは、基板内部品14は、基板内部品14の端子20が座60の中央貫通孔62と相対する位置に配置される位置に位置決めされ、端子20が充填域63と接した状態となる。そして、基板内部品14は、第1金属層4側に押圧され、その下面15が座60の上端部に当接する。これにより、第1金属層4の第2面5と基板内部品14の下面15との間には、所定厚みのスペースが確保される。この後、接着剤16は、所定温度に加熱されて硬化し接着層18となる。これにより、接着層18の厚さは、設計通りの厚さとなり、所要の接着強度と絶縁性が確保される。その結果、基板内部品14は所定位置に固定される。
【0035】
次に、絶縁基材を積層して基板内部品14、インサイドマークA,B及びアウトサイドマークC,Dの埋設を行う(埋設層形成工程)。
まずは、図5に示すように、絶縁基材22,24を用意する。これら絶縁基材22,24は、互いに樹脂製である。ここで、絶縁基材22,24は、ガラス繊維に未硬化状態の熱硬化性樹脂を含浸させたシート状をなすいわゆるプリプレグが好適に用いられる。絶縁基材22は、貫通孔30を有している。この貫通孔30は、基板内部品14が挿通可能な大きさに形成されている。この貫通孔30に基板内部品14を通すようにして第1金属層4上に絶縁基材22を積層し、その上側に絶縁基材24を重ね、更にその上側に第2金属層28となるべき銅箔を重ねた後、全体をホットプレスする。
【0036】
これにより、プリプレグの未硬化状態の熱硬化性樹脂は、加圧されて貫通孔30等の隙間に充填された後、ホットプレスの熱により硬化する。その結果、図6に示すように、絶縁基材22,24からなる絶縁基板34が形成され、基板内部品14は絶縁基板34内に埋設される。ここで、絶縁基材22には、予め貫通孔30が設けられているため(図5参照)、ホットプレスを行う際に基板内部品14にかかる圧力を緩和することができる。このため、大型の基板内部品14であっても絶縁基板内に埋設することができる。
【0037】
次いで、図7に示すように、支持板2を剥離させる(剥離工程)。
本工程では、第1金属層4から支持板2を剥離させ、この剥離により第1金属層4の第1面3を露出させる。これにより部品内蔵基板の中間体40が得られる。この中間体40は、内部に基板内部品14を含む絶縁基板34と、この絶縁基板34の一方の面(下面)36に形成された第1金属層4と、他方の面(上面)38に形成された第2金属層28とを備えている。
【0038】
次に、得られた中間体40に対し、第1金属層4の所定箇所を除去してウィンドウを形成する(ウィンドウ形成工程)。
まずは、図8に示すように、アウトサイドマークC,Dの位置を検出し、両金属層4,28、絶縁基板34及びアウトサイドマークC,Dを共に貫通する基準孔(貫通孔マーク)42,42をドリルを用いて形成する。ここで、アウトサイドマークC,Dの位置検出は、通常のX線孔加工の際に用いられるX線照射装置(図示せず)を用いて行われる。
【0039】
この後、基準孔42を基準として、インサイドマークA,Bが存在する部分及び座60が存在する部分(以下、座存在部という)Tを特定し、特定した箇所につき、第1金属層4の第1面3側から第1金属層4の一部を通常用いられるエッチング法により除去する。これにより、インサイドマークA,Bと共に絶縁基板34を部分的に露出させる第1ウィンドウW1及び座存在部Tを含む接着層18の部位を露出させる第2ウィンドウW2が形成される。このとき、第1ウィンドウW1は、図9に示すように、これらインサイドマークA,Bよりも大きめに形成する。これにより、第1ウィンドウW1では、インサイドマークA,Bの全体を容易に認識できる。一方、第2ウィンドウW2では、座60の中央貫通孔62の充填域63が完全に露出していればよく、座60の全体が露出していなくても構わない。なお、本実施形態においては、第1ウィンドウW1及び第2ウィンドウW2のどちらも、インサイドマークA,Bの全体及び座60の全体が露出するように比較的大きめに形成した。この場合、ウィンドウを形成する際の位置決め精度を高めなくてよく、生産効率の向上に寄与するので好ましい。
【0040】
次に、座60の中央貫通孔62内の接着層18の充填域63を除去し、この充填域63にビアホールを形成する(ビアホール形成工程)。
まず、露出したインサイドマークA,Bを光学系位置決め装置(図示せず)の光学系センサーで認識する。そして、インサイドマークA,Bの位置を基準として接着層18で隠れている基板内部品14の端子20の位置を特定する。その後、特定した端子位置に向けてレーザー、例えば、炭酸ガスレーザーを照射し、基板内部品14の端子20を露出させるべく接着層18の充填域63を除去していく。前記レーザーは、ある程度の幅の照射範囲Rをもって照射され、照射範囲R内の接着層18を除去することができる。
【0041】
本発明においては、基板内部品14の端子20の位置は、座60の中央貫通孔62と合致しているので、中央貫通孔62を含む座60の下端面に向けてレーザーが照射される。これにより中央貫通孔62内の接着層18の充填域63は除去され、中央貫通孔62は、端子20まで到達するレーザービアホール(以下、LVHという)46に形成される(図10)。ここで、座60の中央貫通孔62の位置と、基板内部品14の端子20の位置とは予め正確に位置合わせしてあるので、中央貫通孔62内の接着層18の充填域63が除去されれば、設計通りの正確な位置にLVH46を形成することができる。ここで、本発明においては、仮に、レーザーの照射範囲Rが、図11中の矢印Xで示すように多少ずれても、金属製の座60がマスクとなるので、予め設定した箇所以外の接着層18を除去することは防止され、中央貫通孔62内の接着層18の充填域63を優先的に除去できる。よって、本発明は、正確な位置にLVH46をより安定的に形成することができる。なお、図11中の参照符号Pで示す一点鎖線はレーザーの照射範囲の中心軸線を表す。
【0042】
上記した態様から明らかなように、本発明においては、基板内部品14の位置決めに使用したインサイドマークA,BをLVH46の形成に再度使用することを特徴としている。このため、極めて高い位置決め精度を発揮することができ、接着層18に隠れている端子20に対し、正確な位置にLVH46を形成することができる。
【0043】
次に、LVH46が形成された中間体40にめっき処理を施した後、LVH46内に銅を充填し、基板内部品14の端子20と第1金属層4とを電気的に接続する導通ビアを形成する(導通ビア形成工程)。
【0044】
まず、LVH46内も含め第1ウィンドウW1及び第2ウィンドウW2内に銅の無電解めっき処理を施す。これにより、第1ウィンドウW1及び第2ウィンドウW2において部分的に露出している絶縁基板34及び接着層18の表面、LVH46の内壁面及び基板内部品14の端子20の表面を銅で覆う。その後、銅の電解めっき処理を施し、図12に示すように、LVH46内を含め第1金属層4の全体を覆う銅のめっき層48を成長させる。これにより、LVH46内は銅で充填されて導通ビア47が形成され、この導通ビア47が第1金属層4と一体化し、基板内部品14の端子20と第1金属層4とが電気的に接続される。
【0045】
次に、絶縁基板34の表面の第1金属層4及び第2金属層28の一部を除去し、所定の配線パターン50を形成する(パターン形成工程)。
両金属層4,28の一部の除去は、通常のエッチング法が用いられる。これにより、図13に示すような、表面に所定の配線パターン50を有する絶縁基板34内に、この配線パターン50と電気的に接続された端子20を有する基板内部品14が内蔵されている部品内蔵基板1が得られる。
【0046】
本発明においては、搭載予定領域Sの金属層4に予め孔をあけることは行わないので、金属層4の下側に接着剤が流れ落ちることはない。よって、粘度の低いタイプの接着剤を使用することができる。
【0047】
以上のようにして得られた部品内蔵基板1は、表面に他の電子部品を表面実装してモジュール基板とすることができる。また、この部品内蔵基板1をコア基板として、通常行われるビルドアップ法を用いて多層回路基板を形成することもできる。
【0048】
なお、上記した実施形態では、基板内部品14の位置決め及びLVHの位置決めのマークとしてインサイドマークA及びインサイドマークBの両方を用いているが、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、基板内部品14及びLVHの位置決めには、インサイドマークA及びインサイドマークBのうちのどちらか一方だけ用いる態様でもよい。本発明は、基板内部品の位置決め及びLVHを設ける際の端子の位置の特定に同一マークを使用することに特徴があり、インサイドマークA及びインサイドマークBのうちのどちらか一方だけを用いても十分高い位置決め精度を発揮できる。上記した実施形態では、位置決め精度がより向上する好ましい態様として、インサイドマークA及びインサイドマークBの両方を使用する態様につき説明した。
【0049】
また、本発明は、位置決め用のマークを搭載予定領域Sの近傍に設ける態様に限定されるものではなく、位置決め用のマークを搭載予定領域Sから離れた部分に設けても構わない。このように、位置決め用のマークを搭載予定領域Sから離れた部分に設ける態様は、例えば、大判のワークに部品内蔵基板(ピース)を複数個作り込む際に採用される。詳しくは、このワークは、周縁に大枠部を備えた基板であり、この大枠部の内側に複数個のシートが形成される。各シートは、それぞれの周縁に小枠部を備えており、この小枠部の内側に複数個のピースが形成される。そして、最終的には、各ピースが切り取られ、個々の部品内蔵基板が得られる。このようなワークにおいては、例えば、前記小枠部にメインマーク(インサイドマーク)が形成され、前記大枠部にサブマーク(アウトサイドマーク)が形成される。このように、大判のワークにおいては、上記した大枠部及び小枠部といったピース(搭載予定領域S)から離れた部分にメインマーク及びサブマーク(位置決め用のマーク)が形成され、これらマークを基準にして部品の位置決め及びLVHを設ける際の端子の位置の特定が行われる。
また、本発明において、絶縁基板内に内蔵される部品としては、パッケージ部品に限定されるものではなく、チップ部品等他の各種電子部品を対象とすることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 部品内蔵基板
2 支持板
3 第1面
4 第1金属層
5 第2面
6 銅張り鋼板
8 マスク層
12 マーク
14 電子部品(基板内部品)
16 接着剤
18 接着層
20 端子
34 絶縁基板
40 中間体
46 レーザービアホール(LVH)
47 導通ビア
50 配線パターン
60 座
63 充填域
N 非搭載領域
S 搭載予定領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13