特許第5688188号(P5688188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小松製作所の特許一覧

特許5688188排気ガス浄化装置の異常判定装置、および排気ガス浄化装置の異常判定方法
<>
  • 特許5688188-排気ガス浄化装置の異常判定装置、および排気ガス浄化装置の異常判定方法 図000002
  • 特許5688188-排気ガス浄化装置の異常判定装置、および排気ガス浄化装置の異常判定方法 図000003
  • 特許5688188-排気ガス浄化装置の異常判定装置、および排気ガス浄化装置の異常判定方法 図000004
  • 特許5688188-排気ガス浄化装置の異常判定装置、および排気ガス浄化装置の異常判定方法 図000005
  • 特許5688188-排気ガス浄化装置の異常判定装置、および排気ガス浄化装置の異常判定方法 図000006
  • 特許5688188-排気ガス浄化装置の異常判定装置、および排気ガス浄化装置の異常判定方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5688188
(24)【登録日】2015年1月30日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】排気ガス浄化装置の異常判定装置、および排気ガス浄化装置の異常判定方法
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/023 20060101AFI20150305BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20150305BHJP
【FI】
   F01N3/02 321K
   F02D45/00 358K
   F02D45/00 360Z
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-530041(P2014-530041)
(86)(22)【出願日】2014年2月26日
(86)【国際出願番号】JP2014054713
【審査請求日】2014年7月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 真一
(72)【発明者】
【氏名】長坂 昇平
(72)【発明者】
【氏名】木村 光良
(72)【発明者】
【氏名】仲野 賢
【審査官】 山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−002694(JP,A)
【文献】 特開2013−002366(JP,A)
【文献】 特開2008−215535(JP,A)
【文献】 特開平11−132026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00−3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排気ガスの排気通路に設けられ、排気ガスに含まれる残留物質を除去するフィルタ装置と、前記フィルタ装置に設けられて排気ガスの圧力を測定する圧力測定装置とを有した排気ガス浄化装置の異常判定装置であって、
前記圧力測定装置で測定した圧力および排気ガス流量に基づいて当該圧力測定装置が使用可能であるかを判定する使用可能判定部と、
前記圧力測定装置が凍結しているかを判定する凍結状態判定部と、
前記使用可能判定部により前記圧力測定装置が使用不可能であると判定され、かつ、前記凍結状態判定部により前記圧力測定装置が凍結していないと判定された場合に、前記圧力測定装置に異常があると判定する異常判定部と
前記使用可能判定部により前記圧力測定装置が使用不可能であると判定され、かつ、前記凍結状態判定部により前記圧力測定装置が凍結していると判定された場合に、前記フィルタ装置での理論上の粒子状物質の堆積量をモデル堆積量として算出するモデル堆積量算出部とを備える
ことを特徴とする排気ガス浄化装置の異常判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排気ガス浄化装置の異常判定装置において、
前記異常判定部により前記圧力測定装置に異常があると判定された場合に、前記圧力測定装置の異常を通知する異常通知部をさらに備える
ことを特徴とする排気ガス浄化装置の異常判定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の排気ガス浄化装置の異常判定装置において、
前記圧力測定装置は、前記フィルタ装置に用いられるフィルタでの排気ガスの入口側の圧力および出口側の圧力の差圧を測定する圧力測定装置であり、
前記使用可能判定部は、前記圧力測定装置で測定した差圧および排気ガス流量に基づいて前記圧力測定装置が使用可能であるかを判定する
ことを特徴とする排気ガス浄化装置の異常判定装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の排気ガス浄化装置の異常判定装置において、
前記凍結状態判定部は、大気温度または前記圧力測定装置の温度を測定する温度センサを有し、前記温度センサで測定された温度が設定温度よりも高い場合に、前記圧力測定装置は凍結していないと判定する
ことを特徴とする排気ガス浄化装置の異常判定装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の排気ガス浄化装置の異常判定装置において、
前記凍結状態判定部は、前記内燃機関の始動からの経過時間を計測するタイマを有し、前記タイマによる計測時間が設定時間を超えた場合に、前記圧力測定装置は凍結していないと判定する
ことを特徴とする排気ガス浄化装置の異常判定装置。
【請求項6】
内燃機関から排出される排気ガスの排気通路に設けられ、排気ガスに含まれる残留物質を除去するフィルタ装置と、前記フィルタ装置に設けられて排気ガスの圧力を測定する圧力測定装置とを備えた排気ガス浄化装置の異常判定方法であって、
前記圧力測定装置で測定した圧力および排気ガス流量に基づいて当該圧力測定装置が使用可能であるかを判定するステップと、
前記圧力測定装置が使用不可能であると判定された場合に、前記圧力測定装置が凍結しているかを判定するステップと、
前記圧力測定装置が凍結していないと判定された場合に、前記圧力測定装置に異常があると判定するステップと
前記使用可能判定部により前記圧力測定装置が使用不可能であると判定され、かつ、前記凍結状態判定部により前記圧力測定装置が凍結していると判定された場合に、前記フィルタ装置での理論上の粒子状物質の堆積量をモデル堆積量として算出するステップとを備える
ことを特徴とする排気ガス浄化装置の異常判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス浄化装置の異常判定装置、および排気ガス浄化装置の異常判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、油圧ショベルやホイールローダなどの建設機械や、バス、貨物用トラック、ダンプトラック、オンロードトラックなどの運搬車両、定置式の発電機等のディーゼルエンジン等の内燃機関を備える車両や機械では、内燃機関から排出される排気ガス中の粒子状物質(Particulate Matter(PM))をDiesel Particulate Filter(DPF)で除去する排気ガス浄化装置を備えている。この排気ガス浄化装置は、DPFで用いられるフィルタにおいて、排気ガスの入口側の圧力および出口側の圧力の差圧を検出する圧力センサ(差圧センサ)を備え、この圧力センサによって検出された差圧に基づき、フィルタでのPMの堆積量を推定している。例えば、特許文献1,2には、圧力センサや圧力センサに接続された圧力導入用のホースの異常を判定する構成が記載されている。
【0003】
すなわち、特許文献1では、DPFの圧力センサに接続された圧力導入ホースの破損を診断するために、フィルタでの排気ガスの入口側および出口側の温度に基づくDPFでの異常の判定結果と、圧力センサによる差圧の検出結果とを用いて、ホース破損の異常を判定する。
特許文献2では、フィルタの出口側に接続された配管に切換弁を設けて大気開放可能とし、この際のフィルタ上流側の圧力変化に基づいて圧力センサに関する異常を判定する。
【0004】
従って、特許文献1,2によれば、圧力センサに圧力が正しく導入されない状況や圧力センサ自身を異常と判定することで、その異常を示す発報によりオペレータに通知することができる。通知を受けたオペレータがサービスマンに連絡することで、サービスマンは圧力センサやホースを交換する等のメンテナンスを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−2366号公報
【特許文献2】特開2008−111409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、寒冷地で稼働する車両や機械のように、低温状態でエンジンを始動した時に、排気ガス浄化装置の圧力センサでの異常を示す発報が行われることがあった。この場合、オペレータは、建設機械の稼働を停止し、サービスマンを呼んで点検してもらうこととなる。
【0007】
ただし、エンジン低温状態での始動時の圧力センサに関する異常は、圧力センサ自体が故障していることは少なく、多くの場合は、圧力導入用の配管内の凝縮水が凍結し、圧力センサへ圧力が正しく導入されないことが原因であるとわかった。このような場合、時間経過に伴って外気温度が上昇したり、稼働中の排気ガスによって排気ガス浄化装置の温度が上昇したりすることにより、凍結した凝縮水が次第に解凍するため、圧力センサに圧力が導入されるようになり、圧力センサの機能が回復して異常が解消されることが多い。
【0008】
しかしながら、特許文献1,2においては、凍結が原因で生じる圧力センサに関する異常に対しては何ら記載されていないことから、その原因に関係なく異常と判断されることで通知を行うこととなる。このため、そのまま稼働を継続することで異常が解消される可能性が高いにもかかわらず、サービスマンを呼び、車両や機械の稼働を停止して点検を実施することとなり、車両や機械の稼働率が低下するという問題が生じる。
【0009】
本発明の目的は、圧力センサの異常が凍結によるものであるかを判定でき、車両や機械の稼働率を維持できる排気ガス浄化装置の異常判定装置、および排気ガス浄化装置の異常判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の排気ガス浄化装置の異常判定装置は、内燃機関から排出される排気ガスの排気通路に設けられ、排気ガスに含まれる残留物質を除去するフィルタ装置と、前記フィルタ装置に設けられて排気ガスの圧力を測定する圧力測定装置とを有した排気ガス浄化装置の異常判定装置であって、前記圧力測定装置で測定した圧力および排気ガス流量に基づいて当該圧力測定装置が使用可能であるかを判定する使用可能判定部と、前記圧力測定装置が凍結しているかを判定する凍結状態判定部と、前記使用可能判定部により前記圧力測定装置が使用不可能であると判定され、かつ、前記凍結状態判定部により前記圧力測定装置が凍結していないと判定された場合に、前記圧力測定装置に異常があると判定する異常判定部とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、使用可能判定部は、圧力測定装置が使用不可能であるか否かを判定する。凍結状態判定部は、使用可能判定部で圧力測定装置が使用不可能と判定された場合、使用できない原因が凍結によるものかを判定する。圧力測定装置は、圧力センサと、この圧力センサに排気ガス等の圧力を導入する圧力導入用の配管とを備える。そして、圧力測定装置内で水蒸気が凝縮し、この凝縮水が圧力センサや配管内で凍結すると、圧力が圧力センサまで導かれず圧力測定装置は排気ガス等の圧力を正しく測定できなくなる。このように圧力測定装置は、圧力センサが故障したり、配管が破損して使用不可能と判定される場合の他に、凍結が原因で使用不可能と判定される場合がある。
そして、凍結状態判定部が前記原因を凍結によるものであると判定した場合、異常判定部は、圧力センサが故障したり、圧力センサに圧力を導入する配管等に破損が生じているものではなく、凍結による異常であるため、凍結部分が解凍すれば圧力測定装置も正常に機能し、圧力測定装置の修理や交換が不要であると判定できる。この場合、異常判定装置は、圧力測定装置に異常があることを報知しないため、オペレータはサービスマンを呼ばずに排気ガス浄化装置の使用を継続できる。
これに対して、異常判定部は、圧力測定装置を使用できない原因が凍結によるものでない場合には、圧力センサ自身や配管等に異常があると判定する。このため、異常判定装置は、オペレータに対して異常を報知でき、圧力センサや配管の修理や交換を行うことができる。
従って、異常判定部は、使用可能判定部で圧力測定装置が使用不可能と判定され、かつ、凍結状態判定部で圧力測定装置は凍結していないと判定した場合に、圧力測定装置に異常があると判定する。このため、圧力測定装置が凍結していると判定された場合は、異常判定部は異常と判定しないので、車両や機械の稼働を継続でき、稼働率を良好に維持できる。
【0012】
本発明の排気ガス浄化装置の異常判定装置において、前記異常判定部により前記圧力測定装置に異常があると判定された場合に、前記圧力測定装置の異常を通知する異常通知部をさらに備えることが好ましい。
【0013】
本発明によれば、凍結していない場合の圧力測定装置の異常をオペレータに通知できる。したがって、オペレータは、凍結以外の理由で圧力測定装置に異常が発生したことを把握でき、車両や機械を停止できる。このため、圧力測定装置に異常が存在している状況で排気ガス浄化装置が稼働されることを防止できる。
【0014】
本発明の排気ガス浄化装置の異常判定装置において、前記圧力測定装置は、前記フィルタ装置に用いられるフィルタでの排気ガスの入口側の圧力および出口側の圧力の差圧を測定する圧力測定装置であり、前記使用可能判定部は、前記圧力測定装置で測定した差圧および排気ガス流量に基づいて前記圧力測定装置が使用可能であるかを判定することが好ましい。
【0015】
排気ガス浄化装置では、捕集されたPM等の残留物質の堆積量が増加するとフィルタの目詰まりが生じるため、捕集した残留物質を燃焼してフィルタの目詰まりを除去する再生処理を行っている。そして、前記フィルタでの残留物質の堆積量は、通常、前記圧力測定装置の圧力センサで測定される差圧および排気ガス流量により推定する場合が多い。ここで、圧力測定装置に異常があったり、凍結状態で使用できない場合には、排気ガス流量に対する差圧が異常値を示すため、圧力測定装置が使用できない状態であることを容易に判定できる。
【0016】
本発明の排気ガス浄化装置の異常判定装置において、前記凍結状態判定部は、大気温度または前記圧力測定装置の温度を測定する温度センサを有し、前記温度センサで測定された温度が設定温度よりも高い場合に、前記圧力測定装置は凍結していないと判定してもよい。
【0017】
本発明によれば、凍結状態判定部は、大気温度を測定する温度センサや圧力測定装置の温度を測定する温度センサを有し、前記温度センサで測定した温度(大気温度や圧力測定装置の温度)が設定温度よりも高いか否かを判定する。前記設定温度として、凝縮水が凍結する可能性が低い温度、たとえば10℃等に設定することで、測定温度が設定温度よりも高い場合には圧力測定装置は凍結していないと判定できる。
なお、圧力測定装置の温度を測定する温度センサとしては、圧力測定装置の圧力センサの配置部分や配管内に温度センサを組み込むことで構成してもよいし、圧力測定装置が配置される空間内に温度センサを配置して構成してもよい。
また、大気温度を測定する温度センサは、車両の車体などの内燃機関の熱の影響を受けにくい場所に配置すればよい。圧力測定装置が凍結する可能性があるのは、大気温度が低温のために、車両や機械を停止して排気ガス浄化装置や圧力測定装置が大気で冷却される場合である。したがって、大気温度がそもそも凍結の可能性が低い温度、たとえば10℃以上であれば、圧力測定装置は凍結しないと判定できる。このため、圧力測定装置の温度を直接測定できなくても、大気温度を測定することで、圧力測定装置が凍結する可能性を判定できる。
【0018】
本発明の排気ガス浄化装置の異常判定装置において、前記凍結状態判定部は、前記内燃機関の始動からの経過時間を計測するタイマを有し、前記タイマによる計測時間が設定時間を超えた場合に、前記圧力測定装置は凍結していないと判定してもよい。
【0019】
本発明によれば、凍結状態判定部は、内燃機関の始動からの経過時間をタイマで計測し、計測時間が設定時間を超えたか否かを判定する。前記設定時間として、仮に圧力測定装置が凍結していた場合でも、排気ガスによって温められて圧力測定装置で凍結した凝縮水が解凍される時間、例えば8時間などに設定することで、前記計測時間が設定時間を超えた場合には圧力測定装置は凍結していないと判定できる。
【0020】
本発明の排気ガス浄化装置の異常判定方法は、内燃機関から排出される排気ガスの排気通路に設けられ、排気ガスに含まれる残留物質を除去するフィルタ装置と、前記フィルタ装置に設けられて排気ガスの圧力を測定する圧力測定装置とを備えた排気ガス浄化装置の異常判定方法であって、前記圧力測定装置で測定した圧力および排気ガス流量に基づいて当該圧力測定装置が使用可能であるかを判定するステップと、前記圧力測定装置が使用不可能であると判定された場合に、前記圧力測定装置が凍結しているかを判定するステップと、前記圧力測定装置が凍結していないと判定された場合に、前記圧力測定装置に異常があると判定するステップとを備えることを特徴とする。
本発明の異常判定方法においても、前記異常判定装置と同様の作用効果を奏することができる。すなわち、圧力測定装置が使用不可能と判定されても、圧力測定装置が凍結していると判定された場合は、車両や機械の稼働を継続できるので、稼働率を良好に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る排気ガス浄化装置の異常判定装置を含む内燃機関を示す模式図。
図2】異常判定装置を示すブロック図。
図3】排気ガス流量、差圧、およびPM堆積量の関係を示す図。
図4】異常判定方法を説明するためのフローチャート。
図5】本発明の変形例の異常判定装置を示すブロック図。
図6】本発明の変形例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る排気ガス浄化装置の異常判定装置を含む内燃機関としてのディーゼルエンジン100の概要構成を示す模式図である。
【0023】
[ディーゼルエンジンの概略全体説明]
図1において、ディーゼルエンジン100は、内部に複数の燃焼室が形成されたエンジン本体1と、吸入される空気を濾過し、埃などの異物が燃焼室に混入するのを防止するエアクリーナ2と、エンジン本体1内部の各燃焼室に給気を供給する給気管路3と、エンジン本体1内部の各燃焼室からの排気ガスを排出する排気管路4と、冷却機構5と、排気タービン過給機6と、排気ガス浄化装置7と、排気再循環システム8と、エンジンコントローラ30と、異常判定装置としての再生制御部40と、モニタ装置50とを有する。
【0024】
本実施形態のディーゼルエンジン100としては、例えば油圧ショベル、ホイールローダ、オフロードダンプトラック等の建設機械に搭載されることを想定しているが、この限りではない。ディーゼルエンジン100は、オンロードトラックや定置式の発電機等に搭載されるものであってもよい。
【0025】
エンジン本体1と給気管路3との間には、給気管路3からの給気がエンジン本体1内の各燃焼室に分配されるように、給気マニホールド3Aが取り付けられている。エンジン本体1と排気管路4との間には、エンジン本体1内部の各燃焼室から排出された排気ガスがまとめて排気管路4に流入するように、排気マニホールド4Aが取り付けられている。
【0026】
給気管路3には、排気タービン過給機6によって圧縮された空気を冷却するためのアフタークーラ11が設けられている。冷却機構5は、エンジン本体1内に収められた図示しないクランクシャフト等により駆動されるポンプ12を備える。ポンプ12によって圧送された冷却水は、エンジン本体1、排気タービン過給機6、図示しないオイルクーラ等の冷却が必要な部位を冷却した後、冷却機構5に設けられたラジエータ13によって空冷されるようになっている。アフタークーラ11とラジエータ13とは、エンジン本体1に設けられ、且つ、図示しないクランクシャフト等によって回転駆動されるファン14によって、その冷却作用が促進されるようになっている。
【0027】
排気タービン過給機6は、排気管路4の途中に設けられたタービン21と、給気管路3の途中に設けられ、タービン21に連結されて駆動されるコンプレッサ22と、タービン21に供給される排気ガスの流速を制御するために可変ターボノズル23とを備える。排気タービン過給機6は、可変ターボノズル23の開度を制御することにより、タービン21の回転数を制御する。タービン21の回転によってコンプレッサ22が駆動し、エンジン本体1への給気が行われる。なお、可変ターボノズル23は、全閉時には、バイパス路24を介して排気ガス浄化装置7側に排気するようにしている。すなわち、可変ターボノズル23の開時には、排気ガスをタービン翼車21Aに供給して仕事をさせ、可変ターボノズル23の全閉時には、バイパス路24を介して排気ガスを排気ガス浄化装置7側に出力し、タービン翼車21Aへの仕事を小さくして排気温度を高めるようにしている。
【0028】
排気ガス浄化装置7は、タービン21の下流側に設けられ、排気ガスに含まれるPM(残量物質)を除去するものであり、ディーゼル酸化触媒(Diesel Oxidation Catalyst(DOC))71、フィルタ装置としてのDPF72、圧力測定装置73、排気ガス温度センサ74を有する。DOC71およびDPF72は、円筒状の排気管路内部に設けられ、排気管路の上流側にDOC71が設けられ、排気管路の下流側にDPF72が設けられる。また、タービン21と排気ガス浄化装置7との間には、ドージング燃料供給装置70から供給されるドージング燃料を噴射するドージングノズル70Aが配置される。このドージング燃料の噴射は、強制再生が指示された場合に行われる。ドージング燃料は、ディーゼルエンジン100を稼働させるための燃料と同じである。なお、ドージング燃料供給装置70にてドージング燃料を供給するのに代えて、燃焼室に燃料を噴射する燃料噴射装置にてポスト噴射を行ってもよい。
【0029】
DOC71は、Pt(白金)などによって実現され、排気ガスに含まれるCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、PMに含まれるSOF(有機可溶成分)を酸化して除去する。さらに、DOC71は、排気ガスに含まれるNO(一酸化窒素)を酸化してNO(二酸化窒素)に変化させ、さらにはドージングノズル70Aから噴射されたドージング燃料を酸化することによって排気ガス温度を上昇させる。
【0030】
DPF72は、PMを捕集するフィルタとしてのCatalyzed Soot Filter(CSF)72Aを有している。CSF72Aは、炭化珪素、アルミナ等を基材として実現される。排気ガスに含まれるPMは、CSF72Aに形成された微細な穴を通過する際に捕集される。そして、CSF72Aは、図1に示すように、排気ガスの流れ方向に沿った微細流路を有するセルが円筒状の排気管路内に密集配置される。そして、上流側端部を目封じさせたセルと、下流側端部を目封じさせたセルとを交互に配置したウォールフロー型である。捕集されたPMは、排気ガスが酸化反応を進行させることができる温度であることを条件として、排気ガスに含まれる酸素およびDOC71で生成されたNOによって酸化(燃焼)されることになる。
【0031】
圧力測定装置73は、CSF72Aの上流側に接続された配管731と、CSF72Aの下流側に接続された配管732と、配管731を通して導入される排気ガスの入口側の圧力および配管732を通して導入される排気ガスの出口側の圧力の差圧を測定し、測定した差圧(圧力)を再生制御部40に出力する圧力センサ733と、前記配管732を通して導入される圧力を測定して再生制御部40に出力する出口圧センサ734とを有する。さらに、ディーゼルエンジン100が搭載された建設機械の車体には、大気圧センサ735が取り付けられている。この大気圧センサ735も、測定した圧力(大気圧)を再生制御部40に出力する。
【0032】
排気ガス温度センサ74は、CSF72Aの上流側に配置され、CSF72Aの入口の排気温度を検出し、DPF温度として再生制御部40に出力する。
また、建設機械の車体には、大気温度センサ75が取り付けられている。大気温度センサ75は、車体外部の大気の温度を測定し、大気温度として再生制御部40に出力する。
【0033】
排気再循環システム8は、排気マニホールド4Aと給気管路3とを連通する排気再循環通路31を備える。排気再循環通路31は、排気マニホールド4Aから排気ガスの一部を抽出して給気管路3に再循環させる。排気再循環通路31には、排気再循環通路31を開閉するEGRバルブ32と、排気マニホールド4Aからの排気ガスを冷却するEGRクーラ33とが設けられている。排気再循環システム8は、排気再循環通路31を介して排気ガスの一部を給気マニホールド3Aに還流させることによって、給気中の酸素濃度を低下させ、エンジン本体1の燃焼温度を下げる。これにより、排気ガス中に含まれる窒素酸化物の量を低減させることができる。
【0034】
ここで、ディーゼルエンジン100は、流量センサ105を備える。流量センサ105は、マスフローセンサとして構成され、エンジン本体1に供給される空気の吸気質量流量を検出し、吸気質量流量を示す信号をエンジンコントローラ30に入力する。
【0035】
[エンジンコントローラ]
エンジンコントローラ30は、図示しないアクセルペダルなどのオペレータの要求に応じた入力部の入力値に応じて、燃料噴射量、燃料噴射タイミング、EGRバルブ32、可変ターボノズル23を調整してエンジン回転数やトルク制御を行うとともに、再生制御部40からの指示によって、燃料噴射量、燃料噴射タイミング、EGRバルブ32、可変ターボノズル23を調整して排気温度を上昇させ、その後ドージングノズル70Aからドージング燃料を噴射することによって、強制再生制御を行う。特に、エンジンコントローラ30は、強制再生制御を行う場合、燃料噴射量を抑え、EGRバルブ32、可変ターボノズル23をそれぞれ閉にすることによって排気温度を上昇させる。
【0036】
[再生制御部]
再生制御部40は、図2に示すように、差圧堆積量算出部41、モデル堆積量算出部42、再生指示部43、使用可能判定部44、凍結状態判定部45、異常判定部46、異常通知部47を有する。
再生制御部40は、差圧堆積量算出部41またはモデル堆積量算出部42でCSF72Aに堆積するPM堆積量の推定値を算出し、PM堆積量が所定の閾値を越える場合に、CSF72Aの再生を行う指示をエンジンコントローラ30に出力する。
また、再生制御部40は、モニタ装置50を通して手動再生指示があった場合に、エンジンコントローラ30に手動強制再生を行わせる。また、手動強制再生が終了した場合、その旨を通知する。
さらに、再生制御部40は、圧力測定装置73に異常があるかを判定し、異常があると判定した場合にその旨を通知する。
なお、図1では、エンジンコントローラ30の外部に再生制御部40を設けているが、エンジンコントローラ30の内部に再生制御部40を設けてもよい。
【0037】
[差圧堆積量算出部]
差圧堆積量算出部41には、圧力測定装置73の圧力センサ733で測定された差圧DPと、出口圧センサ734で測定されたDPF下流圧Pdと、大気圧センサ735で測定された大気圧Paと、排気ガス温度センサ74で測定されたDPF温度Tと、エンジンコントローラ30から出力される排気ガス流量情報とが入力される。排気ガス流量情報は、流量センサ105が検出した吸入質量流量と、燃料噴射量から推定される燃料質量流量とを加算した排気質量流量mである。そして、差圧堆積量算出部41は、エンジンコントローラ30から入力された排気質量流量m、前記DPF温度T、DPF上流圧Pu、既知のガス定数Rをもとに、以下の状態方程式(1)からCSF72Aに入力される排気ガス流量Vを算出する。この算出された排気ガス流量Vは、体積流量である。
Pu・V=m・R・T ・・・(1)
この際、DPF上流圧Puは、大気圧Pa、ゲージ圧であるDPF下流圧Pd、および差圧DPを加算した圧力であり、絶対圧である。
【0038】
差圧堆積量算出部41は、この算出した排気ガス流量Vと差圧DPとPM堆積量との関係を示す3次元マップを有し、前記排気ガス流量Vと差圧DPとを入力値としてPM堆積量を出力する。図3は、PM堆積量をパラメータとした排気ガス流量Vと差圧DPとの関係を示す図である。排気ガス流量Vが一定の場合、差圧DPの増大に伴ってPM堆積量は増大する。また、差圧DPが一定の場合、排気ガス流量Vの増大に伴ってPM堆積量は減少する。例えば、図3に示すように、排気ガス流量がV1で差圧がDP1〜DP4の場合、それぞれPM堆積量は、P1〜P4となる。すなわち、PM堆積量は、P1よりP4のほうが大きい。L1〜L4は、PM堆積量の堆積レベルを示す線である。差圧堆積量算出部41は、推定したPM堆積量を差圧堆積量PMaとして再生指示部43に出力する。
【0039】
[モデル堆積量算出部]
図2に示すモデル堆積量算出部42は、エンジンコントローラ30から出力される吸入質量流量、燃料質量流量、噴射タイミングの各情報と、排気ガス温度センサ74から出力されるDPF温度Tとを用いて、所定の燃焼モデルにより、理論上のPM堆積量を算出し、このPM堆積量をモデル堆積量PMbとして再生指示部43に出力する。
したがって、モデル堆積量算出部42は、圧力センサ733の差圧DPを用いずに、PM堆積量を推定できる。
【0040】
[再生指示部]
再生指示部43は、差圧堆積量算出部41で算出される差圧堆積量PMa、または、モデル堆積量算出部42で算出されるモデル堆積量PMbに基づいて、エンジンコントローラ30に自動再生処理を指示する。
また、再生指示部43は、堆積量PMa,PMbがあらかじめ設定した閾値PMthを越えている場合は、モニタ装置50に手動強制再生をすべき旨の指示を出力し、オペレータがモニタ装置50で手動強制再生を指示する操作を行った場合は、エンジンコントローラ30に対して手動強制再生の制御を指示する。
【0041】
この際、本実施形態では、図3に示す堆積レベルL4を閾値PMthとしている。このため、圧力測定装置73(図1)が使用可能な状況で行われる通常の制御では、再生指示部43は、差圧堆積量算出部41で算出された差圧堆積量PMaが、閾値PMth(堆積レベルL4)を超えた場合は、モニタ装置50に手動強制再生をすべき旨を指示する。
一方、以下に説明する異常判定部46で圧力測定装置73が凍結していて使用不可能な状態と判定されている状況で行われるモデルによる制御では、再生指示部43は、モデル堆積量算出部42で算出されたモデル堆積量PMbが、燃焼モデルから得られるPM堆積量の閾値PMthを超えた場合に、モニタ装置50に手動強制再生をすべき旨を指示する。
さらに、再生指示部43は、手動強制再生指示の終了通知があった場合、その旨をモニタ装置50に表示する。
【0042】
[使用可能判定部]
使用可能判定部44は、圧力測定装置73(図1)が正常な状態であるか、つまり使用可能な状態であるかを判定する。
すなわち、使用可能判定部44は、図3に示す図より、排気ガス流量Vおよび差圧DPから得られるPM堆積量が、堆積レベルL1未満であって領域R1内の値として検出された場合、および堆積レベルL4を超えた領域R2内の値として検出された場合に、圧力測定装置73で測定された差圧DPが異常値であり、圧力測定装置73が正常な状態になく、圧力測定装置73を使用できないと判定する。
使用可能判定部44は、圧力測定装置73が使用可能であるか使用不可能であるかの判定結果を、異常判定部46に出力する。
【0043】
ここで、使用可能判定部44において、圧力測定装置73が使用不可能と判定する原因としては、凍結による場合と、圧力測定装置73が故障した場合とが想定できる。
凍結が原因となるのは、配管731,732内で凝結水が凍結して排気ガスの圧力が圧力測定装置73に導入されない場合や、圧力センサ733の受圧部分に付着した凝結水が凍結して圧力センサ733が何らかの外力を受けた状態になっている場合等である。
これらの場合、圧力センサ733で測定される差圧DPが異常値となるため、使用可能判定部44は、圧力測定装置73を使用不可能であると判定する。
一方、圧力センサ733が故障したり、配管731,732が破損等した場合も、差圧DPが異常値となる。このような場合も、使用可能判定部44は、圧力測定装置73を使用不可能であると判定する。
【0044】
[凍結状態判定部]
凍結状態判定部45は、圧力測定装置73が凍結している可能性があるか否かを判定する。凍結状態判定部45は、建設機械の適宜な位置に設けられた大気温度センサ75で測定した大気温度Taと、予め設定された設定温度Tdとを比較して判定する。凍結状態判定部45は、凍結が生じていないと推定できる温度、例えば10℃を設定温度Tdとして設定する。
凍結状態判定部45は、大気温度Taが設定温度Tdよりも小さい場合に、圧力測定装置73は凍結している可能性があると判定し、大気温度Taが設定温度Td以上の場合は、圧力測定装置73は凍結していないと判定する。そして、凍結状態判定部45は、判定結果を異常判定部46に出力する。
なお、大気温度Taはエンジン制御やその他の制御のパラメータとして多用されていることから、大気温度センサ75は建設機械にもともと設置されていることが多い。従って、凍結判定に用いられる大気温度Taを測定する大気温度センサ75を新規に設ける必要はない。
【0045】
[異常判定部]
異常判定部46は、使用可能判定部44から出力される圧力測定装置73の使用可能判定結果と、凍結状態判定部45から出力される凍結状態の判定結果に基づいて、圧力測定装置73(図1)に異常があるかを判定する。そして、異常判定部46は、判定結果を再生指示部43や異常通知部47に出力する。
すなわち、圧力測定装置73は、使用可能判定部44で圧力測定装置73が使用可能と判定された場合は、圧力測定装置73が正常に動作しており、異常は無いと判定し、判定結果を再生指示部43に出力する。この場合、再生指示部43は、圧力測定装置73が正常であるため、圧力センサ733で測定された差圧DPを利用する差圧堆積量算出部41の差圧堆積量PMaに基づいて再生制御を行う。
【0046】
一方、圧力測定装置73は、使用可能判定部44で圧力測定装置73が使用不可能と判定され、かつ、凍結状態判定部45で凍結状態ではないと判定された場合は、圧力測定装置73(圧力センサ733や配管731,732)に異常があると判定し、判定結果をエンジンコントローラ30、再生指示部43、異常通知部47に出力する。
圧力測定装置73に異常があると判定された場合、再生指示部43は適切な再生処理が行えないため、再生処理を禁止する。また、異常通知部47は、モニタ装置50に圧力測定装置73に異常があることを示すコーションを表示する。これにより、オペレータはサービスマンを呼んで、圧力測定装置73のメンテナンスを依頼できる。
さらに、エンジンコントローラ30は、再生処理が禁止されており、また、コーション表示を見落としたオペレータに異常を伝えるために、エンジン本体1の出力を所定割合低下させる。
【0047】
また、異常判定部46は、使用可能判定部44で圧力測定装置73が使用不可能と判定され、かつ、凍結状態判定部45で凍結状態であると判定された場合は、圧力測定装置73が凍結しているために使用不可能となったと判定し、判定結果を再生指示部43に出力する。この場合、再生指示部43は、圧力測定装置73が凍結しているため、モデル堆積量算出部42のモデル堆積量PMbに基づいて再生制御を行う。一方で、モニタ装置50に圧力測定装置73が異常であることは報知しない。
【0048】
[異常通知部]
異常通知部47は、異常判定部46で異常があると判定した場合、モニタ装置50に圧力測定装置73が異常であることを発報し、オペレータに通知する。
【0049】
[異常判定方法]
以下に、図1〜3を用いて説明した排気ガス浄化装置7の異常判定方法を図4に基づいて説明する。
オペレータがディーゼルエンジン100のキースイッチをON(オン)にすると、バッテリからの電源にてエンジンコントローラ30や再生制御部40が起動する(ステップS1)。
すると、再生制御部40(図1)の差圧堆積量算出部41は、差圧堆積量PMaを算出する。具体的には、差圧堆積量算出部41は、エンジンコントローラ30から排気ガス流量情報である排気質量流量mを取得し(ステップS2)、この排気質量流量m、DPF温度T、DPF上流圧Pu、およびガス定数Rから排気ガス流量Vを算出し(ステップS3)、圧力測定装置73から差圧DPを取得する(ステップS4)。
【0050】
続いて、使用可能判定部44は圧力測定装置73が使用可能であるかを判定する(ステップS5)。具体的には、使用可能判定部44は、排気ガス流量Vおよび差圧DPが図3に示すマップ上の堆積レベルL1〜L4で挟まれた領域の値である場合は圧力測定装置73が使用可能であると判定し(ステップS5でYes)、堆積レベルL1未満の領域R1や、堆積レベルL4を超えた領域R2内の値である場合は圧力測定装置73が使用不可能であると判定する(ステップS5でNo)。
【0051】
ステップS5でYesと判定された場合、再生制御部40は通常制御を行う(ステップS6)。すなわち、使用可能判定部44の判定結果は異常判定部46に出力され、異常判定部46は圧力測定装置73が使用可能であることを再生指示部43に通知する。
再生指示部43は、圧力測定装置73が使用可能であるため、圧力測定装置73で測定された実際の差圧DPに基づいて差圧堆積量算出部41で差圧堆積量PMaを算出し、差圧堆積量PMaに基づいて再生処理を実行する。以後、再生制御部40は、ステップS2からS6の処理を繰り返す。
【0052】
ステップS5でNoと判定された場合、凍結状態判定部45は、圧力測定装置73が凍結状態であるかを判定する(ステップS7)。具体的には、凍結状態判定部45は、大気温度センサ75で測定された大気温度Taが設定温度Td未満であれば、圧力測定装置73は凍結状態であると判定し(ステップS7でYes)、大気温度Taが設定温度Td以上であれば圧力測定装置73は凍結状態ではないと判定する(ステップS7でNo)。
【0053】
ステップS7でYesと判定された場合、再生制御部40はモデルによる制御を行う(ステップS8)。すなわち、凍結状態判定部45の判定結果は異常判定部46に出力され、異常判定部46は圧力測定装置73が凍結状態で使用できないことを再生指示部43に通知する。
再生指示部43は、圧力測定装置73が使用不可能であるため、モデル堆積量算出部42でモデル堆積量PMbを算出し、モデル堆積量PMbに基づいて再生処理を実行する。以後、再生制御部40は、ステップS2からS8の処理を繰り返す。
ディーゼルエンジン100の始動から時間が経過すると、排気ガスの熱で圧力測定装置73も温められ、凍結されていた凝結水が徐々に解凍される。圧力測定装置73が解凍されて使用可能な状態になると、ステップS5でYesと判定されるため、それ以降は、通常制御(ステップS6)を実行することになる。
【0054】
一方、ステップS7でNoと判定された場合は、圧力測定装置73が凍結している可能性が低いのにもかかわらず、圧力測定装置73が使用不可能であることになる。このため、異常判定部46は、圧力センサ733が故障したり、配管731,732が破損しているために、圧力測定装置73に異常が発生したと判定する(ステップS9)。
すると、異常通知部47は、モニタ装置50に異常を報知する(ステップS10)。このため、オペレータはサービスマンを呼んで圧力測定装置73のメンテナンスを依頼できる。さらに、異常判定部46は、エンジンコントローラ30および再生指示部43に圧力測定装置73に異常が発生したことを通知する。また、エンジンコントローラ30は、再生処理が禁止されており、また、コーション表示を見落としたオペレータに異常を伝えるために、エンジン本体1の出力を所定割合低下させる。
【0055】
そして、サービスマンのメンテナンスで、圧力測定装置73の異常が解消された状態でキーオンされるとステップS1、ステップS2以降の処理を繰り返し実行する。
【0056】
以上に説明した実施形態によれば、使用可能判定部44で圧力測定装置73が使用不可能と判定された場合でも、凍結状態判定部45で圧力測定装置73が凍結していると判定した場合は、異常判定部46は圧力測定装置73に異常があると判定せず、再生制御部40はモデル堆積量算出部42で算出されたモデル堆積量PMbに基づいて制御を継続する。このため、作業車両の稼働を継続でき、稼働率を良好に維持できる。
【0057】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記実施形態では、凍結状態判定部45は、大気温度Taと設定温度Tdとの比較により圧力測定装置73が凍結しているかを判定していたが、これに限定されない。例えば、図5に示すように、大気温度センサ75の代わりにディーゼルエンジン100の始動(キーON状態を含む)からの経過時間を計測可能なタイマ76を設け、再生制御部40Aの凍結状態判定部45Aは、タイマ76による計測時間Haが設定時間Hdを超えた場合に、圧力測定装置73は凍結していないと判定してもよい。
【0058】
この変形例の再生制御部40Aによる処理を、図6のフローチャートに示す。図6において、前記実施形態の図4のフローチャートと同じ処理には同じ符号を付し、説明を省略する。
図6に示すように、ステップS1のキーON後に、タイマ76は計測を開始する(ステップS11)。そして、ステップS5でNoと判定された場合に、凍結状態判定部45Aはタイマ76による計測時間Haが予め設定された設定時間Hd未満であれば(ステップS7AでYes)、圧力測定装置73が凍結している可能性があると判定し、モデルによる制御を行う(ステップS8)。
一方、凍結状態判定部45Aは、タイマ76による計測時間Haが予め設定された設定時間Hd以上であれば(ステップS7AでNo)、圧力測定装置73が凍結している可能性は低いため、凍結によって異常が発生しているのでは無く、圧力測定装置73自体に異常があると判定する(ステップS9)。
したがって、前記設定時間Hdは、凍結している圧力測定装置73が排気ガスなどの熱で解凍するに十分な時間、たとえば8時間に設定すればよい。この変形例では、大気温度センサ75を設けずに凍結状態を判定できるため、大気温度センサ75を備えていない車両などに容易に適用できる。
【0059】
前記実施形態では、凍結状態の判定に用いられる大気温度Taは、もともと作業車両に用いられていた大気温度センサ75から得られるものとして説明したが、凍結状態の判定専用に新たに大気温度センサを設け、この大気温度センサから得られる大気温度を用いてもよい。
また、大気温度センサ75を用いずに、エンジンルーム内の温度を計測する温度センサを設け、この温度センサで測定される温度で圧力測定装置73の温度を推定して凍結状態を判定してもよい。さらに、圧力測定装置73の温度、例えば圧力センサ733、配管731,732の温度を直接検出する温度センサを設け、凍結状態判定部45は、各温度センサの測定温度で圧力測定装置73の凍結状態を判定してもよい。
【0060】
また、本発明の異常判定を行う圧力測定装置は、圧力測定装置73に限らない。例えば、出口圧センサ734の異常判定に利用してもよいし、DPF72の下流側に選択還元触媒(Selective Catalytic Reduction(SCR))を配置した場合には、SCRに設けられる圧力測定装置の異常判定に利用してもよい。すなわち、本発明は、排気ガス浄化装置に用いられる圧力測定装置の異常を判定する場合に利用できる。
【0061】
本発明は、油圧ショベル、ホイールローダ、オフロードダンプトラック等の建設機械を含む作業車両に利用できる他、定置式の発電機などにも利用できる。
【符号の説明】
【0062】
1…エンジン本体、40、40A…再生制御部、41…差圧堆積量算出部、42…モデル堆積量算出部、43…再生指示部、44…使用可能判定部、45、45A…凍結状態判定部、46…異常判定部、47…異常通知部、50…モニタ装置、70…ドージング燃料供給装置、71…DOC、72…DPF、72A…CSF、73…圧力測定装置、74…排気ガス温度センサ、75…大気温度センサ、76…タイマ、100…ディーゼルエンジン、731,732…配管、733…圧力センサ、734…出口圧センサ、735…大気圧センサ。
【要約】
フィルタ装置(72)と圧力測定装置(73)を有する排気ガス浄化装置(7)の異常判定装置(40)は、圧力測定装置(73)で測定した圧力および排気ガス流量に基づいて圧力測定装置(73)が使用可能であるかを判定する使用可能判定部(44)と、圧力測定装置(73)が凍結しているかを判定する凍結状態判定部(45)と、使用可能判定部(44)により圧力測定装置(73)が使用不可能であると判定され、かつ、凍結状態判定部(45)により圧力測定装置(73)が凍結していないと判定された場合に、圧力測定装置(73)に異常があると判定する異常判定部(46)とを備える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6