特許第5688243号(P5688243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5688243
(24)【登録日】2015年1月30日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】傘袋
(51)【国際特許分類】
   A45B 25/24 20060101AFI20150305BHJP
【FI】
   A45B25/24 Z
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-164381(P2010-164381)
(22)【出願日】2010年7月21日
(65)【公開番号】特開2012-24208(P2012-24208A)
(43)【公開日】2012年2月9日
【審査請求日】2013年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000178583
【氏名又は名称】山崎産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095522
【弁理士】
【氏名又は名称】高良 尚志
(72)【発明者】
【氏名】浅見 傑
【審査官】 青木 良憲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−208735(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3157240(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3101413(JP,U)
【文献】 特開2010−017210(JP,A)
【文献】 特開2000−300321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45B 25/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長袋状体を備えてなる傘袋であって、
前記細長袋状体の長手方向の基端部に挿入口部を有し、
前記細長袋状体の長手方向の先端部は、開口可能な閉塞部であり、
前記挿入口部の内側に吸水材料からなる挿入口吸水部が形成され、
前記先端部の内側に吸水材料からなる先端側吸水部が形成され、
前記細長袋状体の内側における前記挿入口部と先端部の間の何れかの部分の内側に吸水材料からなる中間吸水部が形成され、
前記細長袋状体に、前記中間吸水部を外部に開放可能な中間開閉部を有し、
前記中間吸水部の先端側の位置である中間折曲位置において前記細長袋状体が折り畳まれた状態で保持する中間折畳保持部を有する傘袋。
【請求項2】
上記細長袋状体の先端に先端開口部を有し、
その先端開口部よりも基端側の位置である先端折曲位置において前記細長袋状体の先端部が折り畳まれた状態で保持する先端折畳保持部を有し、
前記先端折曲位置において細長袋状体の先端部が折り畳まれた状態が前記先端折畳保持部により保持されることにより、細長袋状体の先端部に上記閉塞部が形成されている請求項記載の傘袋。
【請求項3】
上記細長袋状体の内側のうち、先端部における先端折曲位置よりも基端側の内側に先端側吸水部が形成されている請求項記載の傘袋。
【請求項4】
上記先端部が折り畳まれていない状態における上記先端開口部から先端側吸水部にわたり、先端側切込状部が1以上設けられており、
前記先端側切込状部は、少なくとも上記先端折曲位置よりも基部側を開閉し得るものである請求項2又は3記載の傘袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用した雨傘を収容して、自他の衣類やその他の物を濡れ傘で濡らすことを防ぐことができる傘袋に関する。
【背景技術】
【0002】
実開平5−7121号公報には、防水性生地などにより後端部が開口した折畳み自在な先細り状の長袋を形成し、その長袋の先端部にキャップ付の排水口を設けるとともに、後端部に下げ紐を取付けた収納袋と、その下げ紐を周側壁に嵌挿して上記収納袋を収容した容器とからなる携帯用洋傘収納具において、上記収納袋の先端側部と後端側部とに、該収納袋を二つ折りに支持する止部材を設けてなることを特徴とする携帯用洋傘収納具の発明が記載されている。
【0003】
この携帯用洋傘収納具によれば、通常の洋傘の場合は、収納袋の全長を利用して収納袋内に納め、また折り畳んだ洋傘の時には、収納袋の下半部を折り返して先端部を後端側部に止着し、上半部の収納袋内に納めて不要な下半部による携帯時の煩わしさなどを除くことができる。傘に付着した雨水が収納袋内に溜ったときには、キャップを外すことにより先端の排水口から排出することができる。
【0004】
しかしながら、この携帯用洋傘収納具の場合、傘収納具の材質等次第で、下端部からの水漏れが生じる可能性があり、傘を収納した状態での取り扱いや、傘を取り出した状態において、上部へ逆流した雨水が漏れることも生じ得る。
【0005】
特開2010−17210号公報には、特に折畳み傘を折り畳んで収容するための傘収容具として、内部に多数の吸水用のパイルを有し、内部を乾燥のために外部に向かって開放するための開閉部を備えるものが開示されている。
【0006】
この傘収容袋部は、内部のパイルの吸水効果により、水の漏出や滲出が効果的に防がれ、傘を収容した状態でそのまま携帯したり、かばん等に収容する上で好適である。
【0007】
しかしながら、折り畳み傘よりも全長が長い通常の長さの傘を収容するものとした場合、傘を使用している際にかばん等に入れるために折り畳んだ場合、内部の吸水用のパイルにより嵩張ってしまうという不便が生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平5−7121号公報
【特許文献2】特開2010−17210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来技術に存した上記のような課題に鑑み行われたものであって、その目的とするところは、濡れ傘を収容して先端部からの水漏れを引き起こすことや、折り畳んだ場合に水が逆流して漏れ出すことが効果的に防がれ、傘袋の使用後は、次の使用に備えて容易に乾燥させることができ、傘袋を折り畳んだ場合に嵩張ることが防がれる傘袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 上記目的を達成する本発明の傘袋は、
細長袋状体を備えてなる傘袋であって、
前記細長袋状体の長手方向の基端部に挿入口部を有し、
前記細長袋状体の長手方向の先端部は、開口可能な閉塞部であり、
前記先端部の内側に吸水材料からなる先端側吸水部が形成され、
前記細長袋状体の内側における前記挿入口部と先端部の間には吸水材料からなる吸水部を有しないものである。
【0011】
傘袋の細長袋状体内に、傘の先端部より、細長袋状体の基端部の挿入口部を通じて傘を挿入して収容することができ、それにより、自他の衣類やその他の物を濡れ傘で濡らすことを防ぐことができる。
【0012】
雨で濡れた傘を収容した場合、細長袋状体の先端部を下側、挿入口部側を上側にすることにより、収容した傘に随伴する雨水が、下側に位置する先端部、すなわち閉塞部へと流下することとなる。
【0013】
閉塞部に水が溜まると、傘を収容した状態で先端部からの水漏れを引き起こすことや、傘を使用するために傘を抜き出して、傘袋をバッグに収容する等して携帯するために細長袋状体を折り畳んだ場合に、閉塞部に溜まった水が挿入口部へ逆流して漏れ出すことが生じ得る。
【0014】
ところが、先端部の内側に吸水材料からなる先端側吸水部が形成されているため、収容した傘に随伴し、下方の先端部へ流下した雨水が、先端側吸水部に吸収されるので、傘を収容した状態で持ち運んで先端部からの水漏れを引き起こすことや、傘を使用するために傘を抜き出して、傘袋をバッグに収容する等して携帯するために細長袋状体を折り畳んだ場合に、閉塞部に溜まった水が挿入口部へ逆流して漏れ出すことが効果的に防がれる。
【0015】
閉塞部は開口可能であるため、傘袋の使用後は、閉塞部を開口することにより、次の使用に備えて先端側吸水部を容易に乾燥させることができる。
【0016】
また、細長袋状体の内側における前記挿入口部と先端部の間には吸水材料からなる吸水部を有しないので、傘袋を折り畳んだ場合に吸水材料により嵩張ることが防がれ、できるだけコンパクト化して携帯や収納を行うことができる。
【0017】
(2) また本発明の傘袋は、
細長袋状体を備えてなる傘袋であって、
前記細長袋状体の長手方向の基端部に挿入口部を有し、
前記細長袋状体の長手方向の先端部は、開口可能な閉塞部であり、
前記先端部の内側に吸水材料からなる先端側吸水部が形成され、
前記細長袋状体の内側における前記挿入口部と先端部の間の何れかの部分の内側に吸水材料からなる中間吸水部が形成され、
前記細長袋状体に、前記中間吸水部を外部に開放可能な中間開閉部を有するものとすることができる。
【0018】
この場合、前記(1)の場合と異なり、細長袋状体の内側における前記挿入口部と先端部の間の何れかの部分の内側に吸水材料からなる中間吸水部が形成されているので、傘袋を折り畳んだ場合に吸水材料により嵩張ることをできるだけ防ぎつつ、全体としての吸水容量を増大させることができる。
【0019】
細長袋状体における中間開閉部により、中間吸水部を外部に開放可能であるため、傘袋の使用後は、中間吸水部を外部に開放することにより、次の使用に備えて中間吸水部を容易に乾燥させることができる。
【0020】
この傘袋は、上記中間吸水部の先端側の位置である中間折曲位置において前記細長袋状体が折り畳まれた状態で保持する中間折畳保持部を有するものとすることができる。
【0021】
この場合、中間折畳保持部により、中間折曲位置において細長袋状体が折り畳まれた状態で保持することにより、細長袋状体の全長程度では長すぎるような折り畳み傘に対応するように全長を短縮した状態として、基端部の挿入口部を通じて傘を挿入して収容することができる。
【0022】
このように折り畳まれた状態の細長袋状体の中間折曲位置付近の内側には、吸水材料からなる中間吸水部が位置するため、収容した傘に随伴し、下方へ流下した雨水が、中間吸水部に吸収されるので、傘を収容した状態で中間折曲位置付近からの水漏れを引き起こすことや、傘を使用するために傘を抜き出して、傘袋をバッグに収容する等して携帯するために細長袋状体を更に折り畳んだ場合に、中間折曲位置付近に溜まった水が挿入口部へ逆流して漏れ出すことが効果的に防がれる。
【0023】
(3) 上記(1)又は(2)の傘袋は、
上記細長袋状体の先端に先端開口部を有し、
その先端開口部よりも基端側の位置である先端折曲位置において前記細長袋状体の先端部が折り畳まれた状態で保持する先端折畳保持部を有し、
前記先端折曲位置において細長袋状体の先端部が折り畳まれた状態が前記先端折畳保持部により保持されることにより、細長袋状体の先端部に上記閉塞部が形成されているものとすることができる。
【0024】
この場合、先端折曲位置において細長袋状体の先端部が折り畳まれた状態が先端折畳保持部により保持されることにより、細長袋状体の先端部に閉塞部が形成され、先端折畳保持部による保持を解除することにより、先端折曲位置において細長袋状体の先端部が折り畳まれていない状態にして先端開口部を開口させることができる。
【0025】
そのため、先端部における閉塞部形成による漏水防止と、先端開口部の開口による先端側吸水部の乾燥を効果的に実現し得る。
【0026】
この傘袋は、上記細長袋状体の内側のうち、先端部における先端折曲位置よりも基端側の内側に先端側吸水部が形成されているものとすることができる。
【0027】
この場合、先端側吸水部が、細長袋状体の内側のうち、先端部における先端折曲位置よりも基端側の内側に形成されているので、細長袋状体の先端部が折り畳まれて閉塞部が形成された状態において先端部が嵩張ることが防がれる。
【0028】
またこの傘袋は、上記先端部が折り畳まれていない状態における上記先端開口部から先端側吸水部にわたり、先端側切込状部が1以上設けられており、
前記先端側切込状部は、少なくとも上記先端折曲位置よりも基部側を開閉し得るものでとすることができる。
【0029】
この場合、傘袋の使用後に先端折畳保持部による保持を解除して先端部が折り畳まれていない状態とし、先端側切込状部を開くことにより閉塞部をできるだけ大きく開口し、先端側吸水部を外部に開放して効率的に乾燥させることができる。
【0030】
傘袋を使用する場合は、先端側切込状部のうち少なくとも上記先端折曲位置よりも基部側を閉じ、先端折曲位置において細長袋状体の先端部を折り畳み、その状態を先端折畳保持部により保持して閉塞部を形成する。
【0031】
(4) 上記(1)、(2)又は(3)の傘袋は、
上記挿入口部の内側に吸水材料からなる挿入口吸水部が形成されているものとすることができる。
【0032】
この場合、傘袋の細長袋状体内に傘を挿入する際に、入り口である挿入口部の内側に形成されている挿入口吸水部により、傘に随伴する雨水をある程度吸収することができるので、傘袋を折り畳んだ場合に吸水材料により嵩張ることをできるだけ防ぎつつ、全体としての吸水容量を増大させることができる。
【0033】
挿入口吸水部は挿入口部の内側に形成されているので、傘袋の使用後は、挿入口部内をできるだけ外部に開放することにより、次の使用に備えて挿入口吸水部を容易に乾燥させることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の傘袋は、先端部の内側に吸水材料からなる先端側吸水部が形成されているため、収容した傘に随伴し、下方の先端部へ流下した雨水が、先端側吸水部に吸収されるので、傘を収容した状態で先端部からの水漏れを引き起こすことや、傘を使用するために傘を抜き出して、傘袋をバッグに収容する等して携帯するために細長袋状体を折り畳んだ場合に、閉塞部に溜まった水が挿入口部へ逆流して漏れ出すことが効果的に防がれる。
【0035】
閉塞部は開口可能であるため、傘袋の使用後は、閉塞部を開口することにより、次の使用に備えて先端側吸水部を容易に乾燥させることができる。
【0036】
また、傘袋を折り畳んだ場合に吸水材料により嵩張ることが防がれ、できるだけコンパクト化して携帯や収納を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】正面図である。
図2】先端部側面拡大図である。
図3】先端折畳保持部による保持を解除した状態の先端部側面拡大図である。
図4】切込状部を開いた状態の先端部側面拡大図である。
図5】基端部側面拡大図である。
図6】基端部が開いた状態の側面拡大図である。
図7】中間折曲位置において折り畳まれた状態の正面図である。
図8】中間開閉部が開いた状態の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
(1) 図1乃至図6は、本発明の傘袋Aの実施の形態の一例についてのものであって、模式的に表わされている。
【0039】
(1-1) この例の傘袋Aは、主に、長手方向の基端部から先端部に向かってやや先細状をなす細長袋状体Bからなる。本発明における細長袋状体Bは、透水性が低い又は実質上非透水性のシート状材料製であることが望ましく、できるだけ薄手且つ軽量であり十分な耐久性を有する合成繊維織物等のシート材料製であることが望ましい。
【0040】
細長袋状体Bの基端部には挿入口部Cを有する。挿入口部Cには、基端の一箇所から先端側に向かって長手方向の基端側切込状部Dが形成されている。挿入口部Cの内側には、周方向(細長袋状体Bの長手方向に直交する方向)の一周にわたり実質上途切れのないように、後述のパイル状吸水材料Pからなる挿入口吸水部Eが形成されている。なお、本発明における挿入口吸水部Eは、必ずしも一周にわたり実質上途切れのないものであることを要しない。挿入口吸水部Eが存在しないものとすることもできる。
【0041】
挿入口部Cを構成するシート材料の厚み内に形成された基端側切込状部Dに臨む一方から他方にわたり一周する挿通部(図示せず)に、収縮用紐Fが挿通されている。収縮用紐Fは輪状をなし、外部に出ている部分を引き絞ることにより、挿入口部Cを収縮させることができる。収縮用紐Fのうち外部に出ている部分には、輪を束ねる保持部品Gが外嵌され、収縮の程度に合わせて保持部品Gの位置を調節することにより、収縮状態を保持することができる。
【0042】
挿入口部Cの背面側に、連結紐部Hの基部が固定されている。連結紐部Hは、挿入口部Cの正面側に設けられた凹スナップ部H1に対し着脱し得る凸スナップ部H2を先端部に有し、細長袋状体Bの長手方向における挿入口部Cの外方部を経て、挿入口部Cの背面側と正面側を連結する。
【0043】
細長袋状体Bのうち挿入口部Cよりも先端側には、二点鎖線で示されるような肩掛け紐Iが設けられている。肩掛け紐はこれに限らない。また、肩掛け紐は必ずしも要しない。
【0044】
細長袋状体Bは、図3に示されるように、その先端に先端開口部Jを有し、先端開口部Jよりもやや基端側に先端折曲位置Kが位置し、図1及び図2に示されるように、先端折曲位置Kにおいて細長袋状体Bの先端部が基端側へ折り畳まれる。細長袋状体Bの先端部の背面側には、先端へ突出する結合用突片Lが設けられ、結合用突片Lの正面側に設けられた凸スナップ部L1と、細長袋状体Bの先端部の正面側に設けられた凹スナップ部L2が着脱可能に結合することにより、先端折曲位置Kにおいて細長袋状体Bの先端部が基端側へ折り畳まれた状態が保持される。凸スナップ部L1が設けられた結合用突片Lと凹スナップ部L2は、先端折畳保持部を構成している。このようにして、先端折曲位置Kにおいて細長袋状体Bの先端部が折り畳まれた状態が保持されることにより、細長袋状体Bの先端部に、開口可能な閉塞部Uが形成されている。なお、本発明における先端折畳保持部は、これに限らず、例えば凸スナップ部と凹スナップ部に代えて面ファスナーを用いることもでき、また例えば、結合用突片Lを設けず、先端開口部Jを構成する部分の正面部と背面部のうち背面部を正面部よりもやや先端へ突出させ、その部分の正面側に凸スナップ部等を設けることもできる。
【0045】
細長袋状体Bの先端部の内側のうち、先端部における先端折曲位置Kよりも基端側の内側に、図4に示されるように、周方向(細長袋状体Bの長手方向に直交する方向)の一周にわたり実質上途切れのないように、後述のパイル状吸水材料Pからなる先端側吸水部Mが形成されている。先端側吸水部Mが、細長袋状体Bの内側のうち、先端部における先端折曲位置Kよりも基端側の内側に形成されているので、細長袋状体Bの先端部が折り畳まれて閉塞部Uが形成された状態において先端部が嵩張ることが防がれる。なお、本発明における先端側吸水部Mは、必ずしも一周にわたり実質上途切れのないものであることを要せず、また、必ずしも先端折曲位置Kよりも基端側にのみ位置することを要しない。
【0046】
細長袋状体Bの先端部には、図3に示すように先端部が折り畳まれていない状態における先端開口部Jから先端側吸水部Mの基端側位置にわたり、長手方向の先端側切込状部Nが設けられている。先端側切込状部Nには、先端折曲位置Kよりも基部側をスライダーN2の摺動により開閉し得る線ファスナーN1が設けられている。なお、本発明における先端側切込状部は、少なくとも先端折曲位置よりも基部側を開閉し得るものであればよく、先端折曲位置よりも先端側をも開閉し得るものであってもよい。また、開閉は、線ファスナーに限らず、面ファスナーやその他の開閉手段を用いることもできる。
【0047】
細長袋状体Bの内側における挿入口部Cと先端部の間には吸水材料からなる吸水部を有しない。
【0048】
(1-2) 傘袋Aの細長袋状体B内に、傘の先端部より、細長袋状体Bの基端部の挿入口部Cを通じて傘を挿入して収容することができ、それにより、自他の衣類やその他の物を濡れ傘で濡らすことを防ぐことができる。更に、収縮用紐Fを引き絞って挿入口部Cを収縮させ、保持部品Gの位置を調節して収縮状態を保持することにより、傘が不用意に飛び出ることを防ぐことができる。傘を細長袋状体Bから抜き出して使用するには、保持部品Gの位置をずらして収縮用紐Fを緩め、挿入口部Cを広げる。
【0049】
雨で濡れた傘を収容した場合、傘袋Aの細長袋状体B内に傘を挿入する際に、入り口である挿入口部Cの内側に形成されている挿入口吸水部Eにより、傘に随伴する雨水をある程度吸収することができる。しかしながら、収容した傘に随伴し、挿入口吸水部Eにより吸収されなかった雨水は、細長袋状体Bの先端部を下側、挿入口部Cを上側にすることにより、下側に位置する先端部、すなわち先端折曲位置Kにおいて細長袋状体Bの先端部が折り畳まれた状態が保持された閉塞部Uへと流下することとなる。
【0050】
細長袋状体Bの先端部の内側のうち、先端折曲位置Kよりも基端側の内側には、パイル状吸水材料Pからなる先端側吸水部Mが形成されているので、収容した傘に随伴し、下方の先端部へ流下した雨水は、先端側吸水部Mに吸収される。そのため、傘を収容した状態で持ち運んで、流下した水が先端部から漏れることや、傘を使用するために傘を抜き出して、傘袋Aをバッグに収容する等して携帯するために細長袋状体Bを折り畳んだ場合に、閉塞部Uに溜まった水が挿入口部Cへ逆流して漏れ出すことが効果的に防がれる。
【0051】
傘袋Aの細長袋状体B内に傘を挿入する際に、入り口である挿入口部Cの内側に形成されている挿入口吸水部Eにより、傘に随伴する雨水をある程度吸収することができるので、先端側吸水部Mと併せて全体としての吸水容量を増大させることができ、細長袋状体Bの内側における挿入口部Cと先端部の間には吸水材料からなる吸水部を有しないので、傘袋Aを折り畳んだ場合に吸水材料により嵩張ることが防がれ、できるだけコンパクト化して携帯や収納を行うことができる。
【0052】
傘袋Aの使用後は、次の使用に備えて先端側吸水部M及び挿入口吸水部Eを乾燥させる。
【0053】
図4に示すように、結合用突片Lの凸スナップ部L1と細長袋状体Bの先端部の正面側に設けられた凹スナップ部L2との嵌合を解除して細長袋状体Bの先端部が折り畳まれていない状態とし、更に線ファスナーN1を開いて先端側切込状部Nを開き、パイル状吸水材料Pからなる先端側吸水部Mをできるだけ大きく外部に開放することにより、先端側吸水部Mを外部に開放して効率的に乾燥させることができる。
【0054】
また、図6に示すように、連結紐部Hの凸スナップ部H2と挿入口部Cの正面側に設けられた凹スナップ部H1との嵌合を解除し、収縮用紐Fを緩めた状態において基端側切込状部Dを開いてパイル状吸水材料Pからなる挿入口吸水部Eをできるだけ大きく外部に開放することにより、先端側吸水部Mを効率的に乾燥させることができる。
【0055】
(2) 図7及び図8は、本発明の傘袋Aの実施の形態の別の例についてのものであって、模式的に表わされている。
【0056】
図1乃至図6に示す例との相違点は、中間開閉部S及び中間吸水部Tが設けられている点である。
【0057】
図7は、その下端に位置する中間折曲位置Qにおいて細長袋状体Bが折り畳まれ、図1における細長袋状体Bの正面側における挿入口部Cよりも先端寄りに表わされた中間凹スナップ部Rに、結合用突片Lの正面側に設けられた凸スナップ部L1が着脱可能に結合することにより、前記折り畳み状態が保持された状態の正面図である。この場合、結合用突片L並びに凸スナップ部L1及び中間凹スナップ部Rが、中間折曲位置Qにおいて細長袋状体Bが折り畳まれた状態を保持する中間折畳保持部を構成している。
【0058】
図8は、図1における細長袋状体Bに想像線(二点鎖線)で示された背面側の中間開閉部Sが開いた状態の背面図である。
【0059】
細長袋状体Bの内側における挿入口部Cと先端部の間の中間開閉部Sの位置に、後述のパイル状吸水材料Pからなる中間吸水部Tが形成されている。
【0060】
中間開閉部Sは、線ファスナー(図示せず)により周囲の三方が開閉して図8に示すように中間吸水部Tを外部に開放し得る。
【0061】
この場合、中間折曲位置Qにおいて細長袋状体Bが折り畳まれた状態で保持することにより、細長袋状体Bの全長程度では長すぎるような折り畳み傘に対応するように全長を短縮した状態として、基端部の挿入口部Cを通じて傘を挿入して収容することができる。
【0062】
このように折り畳まれた状態の細長袋状体Bの中間折曲位置Q付近の内側には、パイル状吸水材料Pからなる中間吸水部Tが位置するため、収容した傘に随伴し、下方へ流下した雨水が、中間吸水部Tに吸収される。そのため、傘を収容した状態で中間折曲位置Q付近からの水漏れを引き起こすことや、傘を使用するために傘を抜き出して、傘袋Aをバッグに収容する等して携帯するために細長袋状体Bを更に折り畳んだ場合に、中間折曲位置Q付近に溜まった水が挿入口部Cへ逆流して漏れ出すことが効果的に防がれる。
【0063】
また細長袋状体Bの内側における挿入口部Cと先端部の間の一部の内側にパイル状吸水材料Pからなる中間吸水部Tが形成されているので、傘袋Aを折り畳んだ場合に吸水材料により嵩張ることをできるだけ防ぎつつ、全体としての吸水容量を増大させることができる。
【0064】
傘袋Aの使用後は、細長袋状体Bにおける中間開閉部Sを開いて中間吸水部Tを外部に開放することにより、次の使用に備えて中間吸水部Tを容易に乾燥させることができる。
【0065】
(3) 本発明における先端側吸水部、中間吸水部、及び挿入口吸水部を構成する吸水材料は必ずしも限定されないが、上記の例では、次のようなパイル形成体からなるパイル状吸水材料Pを用いている。
【0066】
このパイル形成体は、略円柱形状をなし、0.05乃至0.8デニールの極めて細い非吸水性のフィラメントが、パイル形成体の軸線を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように密設され且つ軸線方向に密設されてなり、その略円柱形状外周面は、前記フィラメントの先端部により形成されている。パイル形成体におけるフィラメントの密度はパイル形成体の表面部から内方部に向かうほど高くなり、毛管現象により、パイル形成体の内方部に向かって強い吸液力が作用するので、パイル状吸水材料Pは、フィラメントの先端部が位置する表面部からパイル形成体の内方部に向かって迅速に比較的多量の水(他の成分を含有する水又はその他の液体でもよい)を吸収し得る。また、各パイル状吸水材料Pを構成するフィラメントが非吸水性であるという材質と、そのフィラメントがパイル形成体の軸線を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように密設され且つ軸線方向に密設され、パイル状吸水材料Pの略円柱形状外周面は各フィラメントの先端部により形成されているという構造との両者よりして、遠心脱水性等の慣性力による脱水性又はその他の脱水性及び脱水後の乾燥性に優れる。
【0067】
上記パイル形成体は、0.05乃至0.8デニールの非吸水性のフィラメントを飾り糸とする2本又は3本以上のモール糸が、そのモール糸の芯糸を中心として撚り合わさることにより略円柱形状を形成したもの(パイル形成糸)とすることができる。
【0068】
また上記非吸水性のフィラメントは、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリプロピレン系又はポリエチレン系のフィラメントであるものとすることができる。
【0069】
また上記非吸水性のフィラメントは、その吸水率が20℃相対湿度65%において5%以下であるものとすることができる。
【符号の説明】
【0070】
A 傘袋
B 細長袋状体
C 挿入口部
D 基端側切込状部
E 挿入口吸水部
F 収縮用紐
G 保持部品
H 連結紐部
H1 凹スナップ部
H2 凸スナップ部
I 肩掛け紐
J 先端開口部
K 先端折曲位置
L 結合用突片
L1 凸スナップ部
L2 凹スナップ部
M 先端側吸水部
N 先端側切込状部
N1 線ファスナー
N2 スライダー
P パイル状吸水材料
Q 中間折曲位置
R 中間凹スナップ部
S 中間開閉部
T 中間吸水部
U 閉塞部
図1
図2
図3
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図8