(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
超音波探触子により被検体に加える圧迫力が変化され、且つ、超音波送受信の断層位置が短軸方向に移動される過程で、前記超音波探触子により超音波を前記被検体に周期的に送受信して計測された反射エコー信号を取り込む第1ステップと、
第1ステップで取り込んだ前記反射エコー信号を受信処理してRF信号フレームデータを周期的に計測する第2ステップと、
第2ステップで周期的に計測された断層位置が異なる複数のRF信号フレームデータから選択される計測時間の差が設定範囲内に属する2つのRF信号フレームデータに基づいて、複数の前記断層位置の生体組織の変位を求めて変位フレームデータを順次生成する第3ステップと、
第3ステップで求めた複数の前記変位フレームデータに基づいて、複数の前記断層位置の生体組織の弾性情報を演算して弾性フレームデータを順次生成する第4ステップと、
第4ステップで順次生成される前記弾性フレームデータに基づいて弾性画像を順次構成する第5ステップと、
第5ステップで構成される弾性画像を前記断層位置の位置情報を付してメモリに順次登録する第6ステップと、
第6ステップで登録された弾性画像のボリュームデータに基づいてレンダリングにより三次元弾性画像を構成してモニタ画面に表示する第7ステップとを含んでなる弾性画像表示方法。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1に、本発明の弾性画像計測が適用されてなる超音波診断装置の一実施形態のブロック構成図である。
図1に示すように、超音波診断装置は、被検体1に当接させて用いる超音波探触子2と、超音波探触子2を介して被検体1に時間間隔をおいて周期的に繰り返し超音波を送信する送信部3と、被検体1から発生する時系列の反射エコー信号を受信する受信部4と、送信部3と受信部4の送信と受信を切り換える制御を行なう送受信制御部5と、受信部4で受信された反射エコー信号を整相加算する整相加算部6とが備えられている。これらの送信部3、受信部4、送受信制御部5及び整相加算部6により、送受信部が形成されている。
【0043】
超音波探触子2は、複数の振動子を直線状又は扇形をなすように配列して形成されており、被検体1に振動子を介して断層位置に超音波を送受信する機能を有している。この超音波探触子2は、例えば、
図2(a)に示すガイドレール式、又は、同図(b)に示すギアスイング式の揺動機構を備えた揺動装置46に組み付けられ、メカ3Dプローブとして構成されている。しかし、これらの方式に限られるものではなく、要は超音波探触子2の超音波送受信面を短軸方向、つまり、複数の振動子が配列された長軸方向に直交する方向に揺動可能な揺動装置46を備えたメカ3Dプローブであればよい。
【0044】
例えば、ガイドレール式の揺動機構を備えた揺動装置46は、超音波探触子2を短軸方向へ揺動を案内する円弧状のガイドレール46aと、ガイドレール46aに沿って超音波探触子2を揺動駆動させるモータ46bと、モータ46bの回転角の位置により超音波探触子2の揺動角度φを図示位置を基準として検知すると共に、モータ46bの回転速度を制御するモータ制御部46cとを備えて構成されている。また、ギアスイング式の揺動機構を備えた揺動装置46は、超音波探触子2の把持部を揺動可能に支持するギア46dと、ギア46dに噛み合うギア46eを回動させるモータ46bと、モータ46bの回転角の位置により超音波探触子2の揺動を検知すると共に、モータ46bの回転速度を制御するモータ制御部46cとを備えて構成されている。このように構成されることから、モータ制御部46cによりモータ46bの回転角を駆動制御することにより、超音波探触子2をガイドレー
ル46aに沿って、あるいはギア46dの軸回りに揺動させることができる。
【0045】
また、モータ制御部46cは、送受信部による超音波の送受信と同時に、モータ46bの回転位置などから、超音波探触子2の検知した揺動をフレームナンバーとして検出するようになっている。
【0046】
超音波探触子2は、モータ46bによって複数の振動子の配列方向(長軸方向)と直交する方向(短軸方向)に機械的に揺動されながら、送受信部によって断層位置(スキャン面)に超音波ビームを走査して送信するとともに、被検体1からの反射エコー信号を受信するようになっている。なお、超音波探触子2は、これに限らず、複数の振動子を2次元状に配列して形成され、送受信部により超音波探触子2の短軸方向の複数の振動子を電子走査する機能を備えて構成することができる。この場合、断層位置の短軸方向への移動は、送受信部の電子走査により揺動させることができる。
【0047】
送信部3は、超音波探触子2の振動子を駆動して超音波を発生させるための送波パルスを生成する。送信部3は、送信される超音波の収束点をある深さに設定する機能を有している。また、受信部4は、超音波探触子2で受信した反射エコー信号について所定のゲインで増幅してRF信号すなわち受信信号を生成するものである。超音波送受信制御部5は、送信部3や受信部4を制御するためのものである。整相加算部6は、受信部4で増幅されたRF信号を入力して位相制御し、一点又は複数の収束点に対し超音波受波ビームを形成して、断層画像データであるRF信号フレームデータを生成するものである。
【0048】
断層画像構成部7は、整相加算部6から出力されるRF信号フレームデータを入力してゲイン補正、ログ圧縮、検波、輪郭強調、フィルタ処理等の信号処理を行なって断層画像を構成する。なお、図示していないが、断層画像構成部7から出力される超音波走査に同期した断層画像を、画像表示器13の走査方式で表示可能な座標に座標系変換を行なう白黒スキャンコンバータが備えられている。白黒スキャンコンバータから出力される断層画像は、2次元断層画像記憶部9にフレームナンバーとともに記憶される。
【0049】
断層ボリュームデータ作成部36は、2次元断層画像記憶部9に記憶されたnフレーム分の断層画像を読み出し、断層位置(スキャン面)毎に順次並べて断層ボリュームデータを作成する。このように、被検体内の断層画像の集合であるレンダリング用の断層ボリュームデータが生成される。
【0050】
断層ボリュームレンダリング部38は、断層ボリュームデータ作成部36から断層ボリュームデータを読み出し、断層ボリュームデータを例えば平面に投影した2次元投影断層画像を、白黒3次元断層画像として構成する。具体的には、断層ボリュームレンダリング部38は、断層ボリュームデータの各点(座標)に対応する輝度値と不透明度から各点の画像情報を求める。そして、例えば下記式による、視線方向の断層ボリュームデータの輝度値と不透明度を深さ方向に演算して濃淡を与えるボリュームレンダリング法を用いて3次元断層画像を構成する。
【0051】
(数1)
αouti=αini+(1−αini)*αi ,
Couti=Cini+(1−αini)*αi*Ci
ここで、αouti:i番目の不透明度の出力
αini :i番目の不透明度の入力
αi :i番目の不透明度
Couti :i番目の輝度値の出力
Cini :i番目の輝度値の入力
Ci :i番目の輝度値
なお、上記では、ボリュームレンダリング法を用いて3次元断層画像を構成したが、各点の画像が視点位置に該当する面に対してなす傾斜角に応じて濃淡を与えるサーフェスレンダリング法や、視点位置からみた対象物の奥行きに応じて濃淡を与えるボクセル法を用いてもよい。
【0052】
切替合成部12は、断層ボリュームレンダリング部38で構成された3次元断層画像を、画像表示器13に表示するようになっている。また、切替合成部12は、3次元断層画像に後述するカラー3次元弾性画像を合成したり、並列に表示させたり、切替えを行なうようになっている。したがって、画像表示器13には、3次元断層画像、カラー3次元弾性画像、3次元断層画像とカラー3次元弾性画像の合成画像が表示されるようになっている。
【0053】
一方、整相加算部6から周期的に出力されるRF信号フレームデータは、RF信号フレームデータ選択部28に入力されて順次記憶される。RF信号フレームデータ選択部28は、記憶されているRF信号フレームデータと、入力される最新のRF信号フレームデータを一対として選択するようになっている。RF信号フレームデータ選択部28で選択される2つのRF信号フレームデータは、周期的に計測された複数のRF信号フレームデータのうちの計測時間の差が設定範囲内に属する2つのRF信号フレームデータである。ここで、選択する2つのRF信号フレームデータの計測時間の差の設定範囲は、複数の断層位置(スキャン面)に係る反射エコー信号の超音波受信ビームの径が重なる計測時間差に設定することができる。あるいは、選択する2つのRF信号フレームデータの計測時間の差の設定範囲は、隣り合う断層位置に係る反射エコー信号の超音波受信ビームの径が重なる計測時間差に設定することができる。
【0054】
変位計測部30は、RF信号フレームデータ選択部28により選択された2つのRF信号フレームデータに基づいて、スキャン面における生体組織の変位を求めて変位フレームデータを順次生成し、弾性情報演算部32に出力するようになっている。すなわち、変位計測部30は、選択されたフレームナンバー“N”のRF信号フレームデータから1次元或いは2次元相関処理を行って、RF信号フレームデータの画像上の各点(例えば、画素)に対応する生体組織における変位や移動ベクトルすなわち変位の方向と大きさに関する1次元又は2次元変位分布の変位フレームデータを求める。例えば、移動ベクトルの検出にはブロックマッチング法を用いる。ブロックマッチング法は、画像を例えばM×M画素からなるブロックに分け、関心領域内のブロックに着目し、着目しているブロックに最も近似しているブロックを前のフレームから探し、これを参照して予測符号化すなわち差分により標本値を決定する処理を行なう。
【0055】
弾性情報演算部32は、順次入力される変位フレームデータに基づいて、スキャン面における生体組織の歪み又は弾性率などの弾性情報を求めて弾性フレームデータを順次生成し、弾性画像構成部34に出力するようになっている。すなわち、弾性情報演算部32は、変位計測部30から出力される変位フレームデータ(例えば、画素の移動ベクトルデータ)に基づいて、画像上の各画素(座標)における生体組織の歪みを弾性情報として演算する。このとき、歪みは、生体組織の移動量、例えば、変位を空間微分することによって算出される。
【0056】
弾性情報演算部32において弾性率を演算する場合は、超音波探触子2の圧力センサ(図示しない。)に接続された圧力計測部27によって計測されたスキャン面の各部位における生体組織に加わる圧力を弾性情報演算部32に出力する。弾性率は、圧力の変化を歪みの変化で除することによって計算される。例えば、変位計測部30により計測された生体組織の各点の変位をL(X)とすると、その点における歪みΔS(X)は、L(X)を空間微分することによって算出することができるから、ΔS(X)=ΔL(X)/ΔXという式を用いて求められる。
【0057】
また、圧力計測部27により計測された圧力をP(X)とすると、弾性率のヤング率Ym(X)は、Ym=(ΔP(X))/ΔS(X)という式によって算出される。このヤング率Ymから各点に対応する生体組織の弾性率が求められるので、2次元弾性画像を連続的に得ることができる。なお、ヤング率とは、物体に加えられた単純引張り応力と、引張りに平行に生じる歪みに対する比である。
【0058】
弾性画像構成部34は、順次入力される弾性フレームデータに基づいて弾性画像データを順次構成するようになっている。すなわち、弾性画像構成部34は、算出された弾性情報(歪み、弾性率等)に対し、座標平面内におけるスムージング処理、コントラスト最適化処理や、フレーム間における時間軸方向のスムージング処理等の様々な画像処理を行ない、2次元弾性画像データを構成する。なお、図示していないが、弾性画像構成部34から出力される超音波走査に同期した2次元弾性画像データを、画像表示器13の走査方式で表示可能な座標に座標系変換を行なう弾性スキャンコンバータが備えられている。弾性スキャンコンバータから出力される2次元弾性画像データは、2次元弾性画像記憶部39にフレームナンバー“N”とともに記憶される。
【0059】
2次元弾性画像記憶部39に記憶された複数の2次元弾性画像データは、弾性ボリュームデータ作成部40により読み出され、弾性画像の弾性ボリュームデータが作成される。すなわち、2次元弾性画像記憶部39に記憶された一連のフレームナンバー“1”〜“n”の2次元弾性画像データを読み出し、スキャン面毎に順次並べて弾性ボリュームデータを作成する。このように、被検体内の2次元弾性画像データの集合であるレンダリング用の弾性ボリュームデータが構成される。
【0060】
弾性ボリュームデータ作成部40により作成された弾性ボリュームデータは、弾性ボリュームレンダリング部42により適宜読み出され、カラー3次元弾性画像が構成される。構成されたカラー3次元弾性画像は、切替合成部12を介して画像表示器13に表示されるようになっている。すなわち、弾性ボリュームレンダリング部42は、弾性ボリュームデータの画像の各点に対応する弾性情報(歪み、弾性率等のいずれか1つ)と不透明度から各点の画像情報を求め、3次元弾性画像を構成する。例えば、下記式2により視線方向の弾性ボリュームデータの弾性値を深さ方向に演算するボリュームレンダリング法を用いて3次元弾性画像を構成する。なお、この視線方向は、断層ボリュームレンダリング部38のボリュームレンダリング処理等における視線方向と同一方向である。
【0061】
(数2)
αouti=αini+(1-αini)*αi、
Eouti=Eini+αi*(1-αini)*Ei
ここで、αouti:i番目の不透明度の出力
αini :i番目の不透明度の入力
αi :i番目の不透明度
Eouti :i番目の弾性値の出力
Eini :i番目の弾性値の入力
Ei :i番目の弾性値
また、弾性ボリュームレンダリング部42は、3次元弾性画像を構成する画像情報に光の3原色、すなわち赤(R)値、緑(G)値、青(B)値を付与する。弾性ボリュームレンダリング部42は、例えば、歪みが周囲に比べて大きい箇所又は弾性率が小さい箇所に赤色コードを付与し、歪みが周囲に比べて小さい箇所又は弾性率が大きい箇所に青色コードを付与するなどの処理を行なう。
【0062】
ここで、切替合成部12の詳細構成について説明する。切替合成部12は、画像メモリと、画像処理部と、画像選択部とを備えて構成されている。画像メモリは、断層ボリュームレンダリング部38から出力される白黒3次元断層画像と、弾性ボリュームレンダリング部42から出力されるカラー3次元弾性画像とを時間情報とともに格納する。また、画像処理部は、画像メモリに確保された白黒の3次元断層画像データとカラー3次元弾性画像データとの合成割合を変更して合成するものである。画像処理部は、同じ視点位置における3次元断層画像データとカラー3次元弾性画像データを画像メモリから読み出す。
【0063】
ここで、画像処理部は、3次元断層画像データとカラー3次元弾性画像データを合成するにあたり、3次元断層画像データとカラー3次元弾性画像データはボリュームレンダリング処理等後の画像データであるため、実質的にはそれぞれ2次元的に加算されることとなる。具体的には、例えば下記数式3に示すように、画像上の各点において、カラー3次元弾性画像データの赤(R)値、緑(G)値、青(B)値と、3次元断層画像データの赤(R)値、緑(G)値、青(B)値とをそれぞれ加算する。なお、αは0以上1以下の係数であり、インターフェース部43で任意に設定することができる。
【0064】
(数3)
(合成画像データR)=α×(カラー3次元弾性画像データR)
+(1-α)×(3次元断層画像データR)
(合成画像データG)=α×(カラー3次元弾性画像データG)
+(1-α)×(3次元断層画像データG)
(合成画像データB)=α×(カラー3次元弾性画像データB)
+(1-α)×(3次元断層画像データB)
例えば、上記αを0又は1とすることにより、3次元断層画像データ又はカラー3次元弾性画像データのみを抽出することもできる。画像選択部は、ボリュームメモリ内の3次元断層画像データとカラー3次元弾性画像データ及び画像処理部の合成画像データのうちから画像表示器13に表示する画像を選択する。画像表示器13は、切替合成部12で合成された合成画像、3次元断層画像又はカラー3次元弾性画像を並列に表示する。
【0065】
このようにして、本実施形態によれば、被検体の生体組織の硬さ又は軟らかさを示す3次元弾性画像を構成し、表示することができる。
【0066】
また、超音波診断装置には、各構成要素を制御する画像系制御部44と、画像系制御部44に各種入力を行なうインターフェース部43を備えている。インターフェース部43は、キーボードやトラックボール等を備えている。
【0067】
以下に、本発明の特徴である弾性画像のボリュームデータを構築する2次元弾性画像の計測手順を、実施例1〜10に基づいて説明する。以下に述べる各実施例において、次の点は共通するので、適宜説明を省略する場合がある。(1)被検体1に圧迫を加える方法は、被検体1に当接させた超音波探触子2で手技により行う。
【0068】
しかし、これに限らず、機械的あるいは液体バルーンにより圧迫を加える方法を適用できる。また、圧迫は、被検体1が例えば最大約20mmの変形を受ける程度に行う。さらに、一回の揺動(スイング)期間中で最大約20mmの変形を与えるようにすることが好ましい。(2)メカ3Dプローブの超音波探触子2を、短軸方向に設定される曲面(円弧面)に沿って揺動(スイング)させながら、超音波を送受信して断層画像を連続的に取得する。揺動方向は一方向でもよいが、所定の角度範囲(例えば、30°)を往復させて揺動させてもよい。なお、メカ3Dプローブを用いずに、手技により超音波探触子2を短軸方向に揺動させてもよい。また、超音波探触子2の短軸方向への移動は、揺動に限らず、被検体1の体表上を滑らせて、直線的に移動させるようにすることができる。(3)超音波探触子2の超音波の送受信の周期は一定であり、且つ、RF信号フレームデータの計測周期(フレームレート)も一定とする。
【実施例1】
【0069】
図3を参照して弾性画像計測の実施例1の処理手順を説明する。同図(a)は、
図2のメカ3Dプローブを用いて、超音波探触子2を機械的に短軸方向に揺動して、超音波を送受信するスキャン面をφ方向に揺動角度を順次変化(スイング)させながら、フレームナンバー(No.)Fr.0-Fr.nの断層画像データ201を計測することを示している。同図(b)は、2次元断層画像データを3次元的に取得していることを示している。つまり、2次元断層画像データを複数のフレーム方向を1ラインとみなして、断層画像データを3次元的に取得していることを示す。通常、弾性画像を構成する場合には、同じ位置のスキャン面、すなわち同じフレーム位置同士にて、相関演算を行って変位を算出することが望ましい。しかし、本実施例においては、隣接または近隣の異なるフレームNo.の超音波の断層画像データを使って変位を検出する
のが特徴である。例えば、超音波探触子2の揺動角度φを用いて、隣接フレーム間隔をΔφで表す。
【0070】
本実施例においては、隣接フレーム間隔Δφごとに得られる断層画像データのフレームNo.Fr.0〜Fr.nは、
図3(a)に示すように、複数の振動子の揺動角度(傾き)φと断層画像データとを対応付
けるものである。A方向のスキャンにおける最初のフレームNo.を“1”とし、最後のフレームNo.を“n”としている。フレームNo.“1”の断層画像データが最初に2次元断層画像記憶部9に記憶され、次にフレームNo.“2”の断層画像データが2次元断層画像記憶部9に記憶される。そして、最後にフレームNo.“n”の断層画像データが2次元断層画像記憶部9に記憶される。また、B方向のスキャンにおける最初のフレームNo.を“n”とし、最後のフレームNo.を“1”とし、断層画像データが2次元断層画像記憶部9に記憶される。
【0071】
一方、隣接フレーム間隔Δφごとに得られるフレームNo.Fr.0〜Fr.nの断層画像データ201に基づいて、変位計測部30、弾性情報演算部32及び弾性画像構成部34により、フレームNo.Fn.0〜Fn.n-1の弾性画像202が構成される。フレームNo.Fn.0〜Fn.n-1の弾性画像202は、2次元弾性画像記憶部39に記憶され、弾性ボリュームデータ作成部40にてボリュームデータに変換される。このボリュームデータの各弾性画像202の座標は、揺動角度φによる極座標系であるから、
弾性3次元スキャンコンバージョン部41によってXYZ座標に変換される。そして、弾性
ボリュームレンダリング部42にて、サーフェスレンダリング、MIP(Max.Impressive)法あるいはmIP(minimum Impressive)法等により、3次元弾性画像が投影画像として生成される。
【0072】
図4に、本発明の弾性画像計測を用いて、ファントムの3次元弾性画像を構成した一例を説明する。
図4(a)は、病変部100を実施例1の計測法で弾性ボリュームデータを計測する様子を示している。RF信号フレームデータのフレーム間隔Δφは約0.1mmで、被検体1に最大約20mmの変形(最大変形量)を与える過程で、一回の揺動(スイング)期間中に複数のRF信号フレームデータを計測した。これにより得られる弾性ボリュームデータに基づいてレンダリング処理により、
図4(b)に示すように、
図4(a)の左正面から見たサーフェース3次元弾性画像のレンダリング画像を表示させることができる。
【0073】
すなわち、本実施例1によれば、メカ3Dプローブの超音波探触子2を被検体1の体表に当接させて加える圧迫力を増加又は減少の何れか一方に変化させながら、且つ、超音波探触子2を揺動させながら断層面位置を異ならせ、これにより取得される時間的に隣り合う2つのRF信号フレームデータの相関を取って、各断層位置の生体組織の変位を求め、その変位フレームデータに基づいて各断層位置における生体組織の弾性情報を求めて弾性画像を順次構成している。言い換えれば、本実施例1は、異なる断層位置で計測された圧迫量が異なる2つの断層画像データ201を計測して、いずれか一方の断層位置、あるいは2つの断層位置の平均位置における生体組織の変位を求めて、弾性画像202を順次構成していることが特徴である。したがって、従来法に比べて、RF信号フレームデータの計測数を少なくとも半分に減らして、弾性画像のボリュームデータの計測時間を少なくとも半分に短縮できる。つまり、従来は、同一の断層位置において圧迫量が異なる2つの断層画像データを計測して、同一の断層位置における生体組織の変位を求めているから、本実施例1の2倍の計測時間が必要になる。
【0074】
また、本実施例1によれば、変位計測に係る2つのRF信号フレームデータ
のうち、最新に計測されたRF信号フレームデータはメモリに記憶させる必要はないから、RF信号フレームデータ選択部28のメモリ容量を減らすことができる。
【0075】
なお、本実施例1によれば、生体組織の変位を求める2つのRF信号フレームデータが異なるスキャン面で計測されるから、生体組織の変位データの精度が従来よりも低下する。しかし、RF信号フレームデータは周期的に計測されるから、各RF信号フレームデータの圧迫量及びスキャン面の変化は連続的になる。しかも、RF信号フレームデータの計測周期は、スキャン面の変化時間に対して極めて短いから、圧迫量の大きさ及び差の同一性を許容できる複数の変位フレームデータを計測できる。その結果、圧迫量の大きさ及び差の同一性を許容できる複数の弾性画像を構成できる。
【0076】
特に、弾性情報を計測時間が隣り合う2つの断層画像データの生体組織の変位に基づいて求めていることから、スキャン面が異なることによる生体組織の位置ずれを無視することができる程度に小さくすることができる。例えば、フレームレートにより異なるが、超音波探触子2により計測する短軸方向のスキャン面は、一般に例えば0.05〜0.1mm間隔で揺動又は直線的に移動させて断層画像データ201を計測する。一方、超音波ビーム径は1mm程度であり、且つ、隣接するスキャン面の断層画像データ201は生体組織の大半が重複して計測されるから、スキャン面が異なっても、計測される断層画像データ201に含まれる生体組織の位置ずれをほとんど無視することができる。このことから、選択する2つの断層画像データ201は、隣接する2つのスキャン面に限らず、近接する複数のスキャン面に係る反射エコー信号の超音波受信ビーム径が重なる範囲に設定された計測時間差内に属するものから選択することができる。
【0077】
なお、超音波探触子
2を例えば半径80mmの円弧上で揺動しながら計測すると、計測される断層画像データ201の隣接間隔は深度に応じて広がるので、変位の計算においてフレーム間隔Δφを深度に応じて補正をすることが好ましい。しかし、補正しなくても誤差は無視できるほど小さい。
【実施例2】
【0078】
図5を参照して弾性画像計測の実施例2の処理手順を説明する。本実施例2が実施例1と相違する点は、隣接したフレーム間にて相関演算を行い変位検出する方法に代えて、超音波探触子2を短軸方向にスイングしながら、超音波受信ビーム径が重なる範囲に設定された計測時間差内に属する複数の近隣フレームから選択して相関演算を行い変位検出することにある。例えば、
図5(a)に示すように、スキャン方向に互いに隣接する4つのスキャン面に対応する4枚のフレームNo.Fr.0〜Fr.3の断層画像データ201を計測し、それらの中から例えば、Fr.0とFr.2又は3の2つの断層画像データ201を選択して、1枚の弾性画像204を構成する。
【0079】
複数の断層画像データ201の中から2つを選択する選択基準は、ユーザーインターフェース部43からフレーム間隔(又は揺動間隔)Δφなどのパラメータを入力して任意に設定することができる。揺動角度間隔Δφとしては、例えば、
図5(b)に示すように、Δφ1<Δφ2<Δφ3・・・を設定することができる。このように設定されたΔφに対応して、変位計測部30は最新に計測された断層画像データ(例えば、Fr.3)を基準とし、Δφ前に計測された過去の断層画像データ(例えば、Fr.0又はFr.2)を選択して、それら2つの断層画像データに基づいて変位フレームデータを演算する。
【0080】
図5(b)の方法に限らず、複数の断層画像データ201の中から2つを選択する選択基準は、最新の断層画像データ201を基準とし、複数のフレームNo.Fr.0〜Fr.3・・・のRF信号フレームデータとの相関を求め、最も相関が高い断層画像データ201との間で変位フレームデータを演算して、弾性画像を構成するようにしてもよい。
【0081】
本実施例2によれば、複数のスキャン面で計測された断層画像データ201から1枚の弾性画像を構成しているので、変位計測、弾性情報演算、及び弾性画像の構成に係る時間を大幅に短縮できると同時に、弾性ボリュームデータを構成する弾性画像データを少なくできるので、ボリュームレンダリングに要する時間を短縮して、高速に3次元弾性画像を構成することができ、リアルタイム性を向上できる。
【実施例3】
【0082】
図6を参照して弾性画像計測の実施例3の処理手順を説明する。本実施例3が実施例1と相違する点は、超音波探触子2の揺動速度を揺動範囲の両端で遅くしてRF信号フレームデータを計測するようにしたことにある。すなわち、超音波送受信するスキャン面は扇状に揺動されることから、
図6(a)に示すように、揺動範囲の中心におけるフレーム間隔Δφ2よりも、揺動範囲両側におけるフレーム間隔Δφ1、Δφ3が広くなる。特に、深度が深い位置では揺動範囲の両端側における隣接するフレーム間の距離が離れる。また、圧迫方向に対して超音波の送受信の角度のズレが大きくなるから、解像度が低下する。そこで、本実施例3では、
図6(b)に示すように、揺動範囲の中心から両端にかけて揺動速度を落とし、中心部において計測されるRF信号フレームデータのフレーム間隔を広げ、両端のフレーム間隔を狭めてRF信号フレームデータを密に取得するようにしたことを特徴とする。本実施例3を実現するには、インターフェース部43からモータ制御部46cに揺動速度パターンを設定するようにする。
【0083】
言い換えれば、本実施例3は、短軸方向のスイング位置(揺動角度)により、フレーム間隔を制御し、圧迫方向に対し送波の角度のズレが大きくなるほどフレーム間隔を狭く設定できるようにしたものである。弾性画像を構成する際に、各弾性画像の画素の変位を正確に計測するためには、短軸方向のズレが少ないほど精度が高くなる。一方、簡便性及び高速化の視点から見ると、スイング速度は速い方が好ましい。この点、本実施例3によれば、スキャン面のズレが大きくなる揺動範囲の外側はスイング速度を遅くして精密にRF信号フレームデータを取得し、スキャン面のズレが小さくなる中心側はスイング速度を速く制御することにより、精度及び高速化の両方を満たすことができる。
【0084】
すなわち、本実施例3によれば、揺動範囲内において計測される弾性画像の解像度を均一化して、且つ弾性画像の計測時間を短縮することができる。
【実施例4】
【0085】
図7を参照して弾性画像計測の実施例4の処理手順を説明する。本実施例4が実施例1と相違する点は、深度方向を複数(図では、2区間)の深度区間に分け、各深度区間の深度に応じて超音波探触子2の揺動速度を制御するようにしたことにある。すなわち、
図7(a)に示すように、浅い深度区間502と、それより深い深度区間503を設定する。そして、
図7(b)に示すように、浅い深度区間502に対してはフレーム間隔Δφ1を広げ、深い深度区間503に対してはフレーム間隔Δφ2を狭めるように、メカ3Dプローブのモータ46bの速度を制御する。すなわち、一般に、機械的に超音波探触子2をスイングするメカ3Dプローブにおいては、揺動範囲の中心軸からのスイングにより超音波探触子2を移動させるものが多い。この場合、超音波探触子2から浅い深度における弾性画像は、フレーム間の距離(時間差)が小さく、深い深度になるとフレーム間の距離は大きくなる。そこで、本実施例4では、深部の弾性画像を得るときには、フレーム間の距離を小さくするように揺動速度を遅くし、浅部の弾性画像を得るときには、フレーム間の距離を大きくするように、揺動速度を速く制御しているのである。
【0086】
本実施例4の場合は、深度区間502、503に分けて往復又は2回スイングし、それぞれの区間について弾性画像を計測する。つまり、弾性画像構成部34は、深度区間ごとに計測される断層画像データ201に基づいて弾性画像を構成する。また、本実施例4において、3次元弾性画像にて観察したい着目部位が含まれる深度区間についてフレーム間隔Δφを狭めるように揺動速度を制御することにより、着目部位の解像度を向上できる。
【実施例5】
【0087】
図8を参照して弾性画像計測の実施例5の処理手順を説明する。本実施例5が実施例1と相違する点は、超音波探触子2の揺動速度を周期的に増減制御し、弾性画像構成部34は、揺動速度が遅い揺動区間に計測されたRF信号フレームデータに基づいて弾性画像を構成することにある。すなわち、メカ3Dプローブのモータ制御部46cは、
図8(b)に示すように、揺動範囲を断層画像データ201のフレーム取得区間外603とフレーム取得時604とに分け、フレーム取得時604近傍の揺動速度を遅く、フレーム取得区間外603の揺動速度を速くするように、周期的に増減制御する。
【0088】
これに対応して、変位計測部30は、フレーム取得時604の揺動速度が遅いときに計測された2つの断層画像データ201に基づいて変位フレームデータを求め、これに基づいて弾性画像構成部34は弾性画像205を構成する。つまり、揺動速度が遅いときに計測された変位フレームデータに基づいて弾性画像205を構成するようにしている。言い換えれば、複数計測される断層画像データ201を間引いて、弾性画像205を構成することにより、変位計測、弾性情報演算、及び弾性画像の構成に係る時間を大幅に短縮するようにしている。
図8(b)の揺動速度の増減周期は、インターフェース部43から指定することにより、任意に可変設定できる。
【0089】
本実施例5によれば、弾性画像の計測に係る時間を大幅に短縮できると同時に、弾性ボリュームデータを構成する弾性画像データを少なくできるから、ボリュームレンダリングに要する時間を短縮して、高速に3次元弾性画像を構成することができ、リアルタイム性を向上できる。すなわち、3次元弾性画像を構成して画像表示器13に投影画像として表示するまでに要する時間は、超音波を送受する超音波探触子を短軸方向にスイングするのに要する時間と、3次元弾性画像を構成するレンダリング処理に要する時間に依存する。したがって、本実施例5のように、フレーム取得時の近傍の区間においてスイング速度を低速にして高密度に断層画像データ201を取得し、その他の区間は高速に揺動させることにより、スイングするのに要する時間を短縮できる。
【0090】
また、低速にして高密度に取得された断層画像データ201に基づいて複数の弾性画像を構成して、さらに複数の弾性画像を合成することにより、アーチファクトが少ない弾性画像を構成することができる。その結果、間引かれて弾性画像205の枚数が少なく、且つ、アーチファクトが少ない弾性画像205のボリュームデータに基づいてレンダリング処理することにより、レンダリング処理に要する時間をも短縮できる。
【実施例6】
【0091】
図9を参照して弾性画像計測の実施例6の処理手順を説明する。本実施例6が実施例1と相違する点は、実施例1により複数の断層画像データ201に基づいて構成された複数枚の弾性画像202を、1枚の弾性画像301に合成して、アーチファクトを軽減するとともに、ボリュームデータを減らしてレンダリングを高速化することにある。すなわち、3次元弾性画像を構築する際、明瞭にレンダリングを行うためには、アーチファクトをより低減した弾性ボリュームデータに対してレンダリング処理を施すのが望ましい。その理由は、レンダリング処理は、数4に従って処理されるため、視線方向にアーチファクトがあると、実際の表示したい画像の重みが低く表示されてしまうからである。これを軽減するためには、
図9に示すように、複数の弾性画像202のフレームデータを加算、加算平均又は重み付け加算平均などの手法を用いて合成した弾性画像301により、弾性ボリュームデータを作成すると、アーチファクトが軽減される。また、合成により弾性画像301の枚数が軽減されるから弾性ボリュームデータを構成する弾性画像の枚数を軽減できる。そのため、レンダリング処理に要する演算時間も軽減され、3次元弾性画像を高速に表示することができる。
【0092】
(数4)
αouti=αini+(1-αini)*αi+βi
Eouti=Eini+αi*(1-αini)*Ei
具体的には、
図9(a)に示すように、実施例1と同様に計測された隣り合う2つの断層画像データ201に基づいて、複数枚の弾性画像202を構成し、構成された複数枚の弾性画像202を1枚の弾性画像301に合成することを特徴とする。つまり、弾性ボリュームデータ作成部40は、弾性画像構成部34で順次構成されて2次元弾性画像記憶部39に記憶された複数枚の弾性画像202を1枚の弾性画像301に合成する。そして、合成された弾性画像301を複数枚の弾性画像に対応する複数のスキャン面の平均揺動角度に対応付けてメモリに順次登録する。なお、合成対象の弾性画像202のフレーム数は、パラメータとしてインターフェース部43からユーザーが任意に設定又は切り替えることができる。
【0093】
本実施例6によれば、複数枚の2次元弾性画像を1枚の2次元弾性画像に合成して平均化できるから、アーチファクトを軽減するとともに、ボリュームデータを減らしてレンダリングを高速化することができる。なお、弾性画像の合成は、複数の弾性画像の加算、加算平均、又は重み付け加算平均のいずれかにより弾性画像を合成することができる。
【実施例7】
【0094】
図10を参照して弾性画像計測の実施例7の処理手順を説明する。本実施例7は、実施例5、6を組み合わせたものである。すなわち、超音波探触子2の揺動速度を周期的に増減制御し、弾性画像構成部34は、揺動速度が遅い揺動区間に計測された断層画像データ401に基づいて弾性画像402を構成する。そして、弾性ボリュームデータ作成部40は、弾性画像構成部34で順次構成されて2次元弾性画像記憶部39に記憶された複数枚の弾性画像402を1枚の弾性画像403に合成する。そして、合成された弾性画像403を複数枚の弾性画像に対応する複数の断層位置の平均揺動角度に対応付けてメモリに順次登録する。
【0095】
ここで、3次元弾性画像を構成して画像表示器13に投影画像として表示するまでに要する時間は、超音波を送受する超音波探触子を短軸方向にスイングするのに要する時間と、3次元弾性画像を構成するレンダリング処理に要する時間に依存する。したがって、本実施例7のように、フレーム取得時の近傍区間においてスイング速度を低速にして高密度に断層画像データ401を取得し、その他の区間は高速に揺動させることにより、スイングするのに要する時間を短縮できる。また、低速にして高密度に取得された断層画像データ401に基づいて複数の弾性画像402を構成して、それらの複数の弾性画像402を合成することにより、アーチファクトが少ない弾性画像403を構成することができる。その結果、間引かれて弾性画像の枚数が少なく、且つ、アーチファクトが少ない弾性画像403のボリュームデータに基づいてレンダリング処理することにより、レンダリング処理に要する時間をも短縮できる。
【0096】
したがって、本実施例7によれば、アーチファクトを軽減するとともに、ボリュームデータを減らしてレンダリングをさらに高速化することができる。
【実施例8】
【0097】
図11を参照して弾性画像計測の実施例8の処理手順を説明する。本実施例8が実施例1と相違する点は、弾性画像により観察したい着目部位及びその周辺だけの弾性画像及び弾性ボリュームデータを取得するようにしたことにある。具体的には、弾性ボリュームデータを取得するための揺動スキャンを2回に分けて行う。初回の短軸方向の揺動スキャンは、
図11(a)に示すように、断層画像データ201を広域に計測して断層画像を表示する。最初の揺動スキャンによる断層画像にて腫瘍等の着目部位501が発見されたとき、2回目の短軸方向の揺動スキャンは、
図11(b)に示すように、着目部位501及びその周辺領域を含む特定揺動区間だけ揺動スキャンして、実施例1と同様に、弾性ボリュームデータ用の弾性画像を取得する。
【0098】
ここで、着目部位501又は特定揺動区間の設定は、利用者に判断により手技(マニュアル)で設定するか、あるいは自動的に設定することができる。マニュアルで設定する場合は、
図11(a)で取得する弾性画像を連続的に表示しながら着目部位501を観察し、着目部位501を含む特定揺動区間について揺動角度φの範囲を決め、インターフェース部43からモータ制御部46cに入力設定する。また、特定揺動区間における揺動速度は可変設定できる。例えば、モータ制御部46cに予め設定しておくか、インターフェース部43からモータ制御部46cに入力設定することもできる。そして、モータ制御部46cは、入力される特定揺動区間において、可変設定される揺動速度に応じて超音波探触子の揺動速度を制御する。
【0099】
ここで、自動的に着目部位501又は特定揺動区間を設定する一例について、次に説明する。例えば、
図11(b)の揺動スキャン時に、弾性情報演算部32で求められる2次元の弾性フレームデータのデータのバラツキを評価して、その弾性フレームデータに着目部位501が含まれるか否かを判定する。そして、データのバラツキが判定値以上の弾性フレームデータには、着目部位501が含まれると判定する。この判定処理を揺動方向に続けて行って着目部位501を自動的に検出し、着目部位501が検出されている間は揺動速度を低速にして、弾性画像を構成する。着目部位501が検出されないときは揺動速度を高速にして、弾性画像の構成を休止する。なお、弾性フレームデータのデータのバラツキの判定は、下記の式5及び
図11(b)に示す弾性フレームデータのデータの偏差σ、あるいは分散値のバラツキが大きい区間を検出するようにしてもよい。
【0100】
(数5)
【0101】
つまり、本実施例8では、弾性情報演算部32に弾性フレームデータに基づいて予め設定された条件に照らして3次元弾性画像にて観察したい着目部位501が含まれるか否か検出する着目部位検出部を設ける。そして、超音波探触子揺動装置46のモータ制御部46cは、弾性情報演算部32の着目部位検出部から出力される着目部位501の検出信号に応答して、特定揺動区間に対応する揺動角度範囲について超音波探触子2の揺動速度を低速度に制御する。
【0102】
本実施例8によれば、着目部位501が含まれる領域以外における弾性画像の計測時間を短縮でき、且つ、レンダリング対象の弾性画像枚数が低減されるから、着目部位501が含まれる領域の弾性画像の解像度を確保しつつ、3次元弾性画像を投影するまでに要する時間を短縮できる。これにより、弾性ボリュームデータの生成、及びレンダリングに係る処理時間を短縮できるから、リアルタイム性が向上し、且つ、弾性ボリュームデータを記憶させるメモリ容量を低減することが可能となる。
【0103】
上記の実施例8では、弾性ボリュームデータを取得するためのスキャンを2回に分けて行う例について説明したが、2回に限らず複数回に分けて行うことができる。すなわち、超音波の送受信部から複数のスキャン面の断層画像データ201を計測する超音波の送受信を複数回行うようにする。そして、
弾性画像構成部34は、初期の断層画像データ201の計測により得られる断層画像に基づいて、予め設定された条件に適合する着目部位501を検出する着目部位検出部を有し、モータ制御部46cは、着目部位検出部により着目部位501が検出された後は、断層画像データ201の計測時に、着目部位501を含む複数のスキャン面における超音波探触子2の揺動速度を低速に切り替える。そして、弾性画像構成部34は、着目部位501を含む複数の断層位置における超音波探触子2の揺動範囲において計測された断層画像データ201に基づいて、弾性画像を構成するようにする。
【実施例9】
【0104】
図12を参照して弾性画像計測の実施例9の処理手順を説明する。本実施例9が実施例8と相違する点は、
図12(b)に示すように、3次元弾性画像にて観察したい着目部位501が含まれる複数のスキャン面に対応する特定揺動区間601においては低速度にてスイングし、それ以外の区間602は高速度にてスイングすることにある。特定揺動区間601の設定及び検出法は、実施例8と同様である。つまり、超音波探触子揺動装置46のモータ制御部は、入力される特定揺動区間601において可変設定される揺動速度に応じて超音波探触子の揺動速度を低速度に制御し、それ以外の区間602は高速度に超音波探触子の揺動速度を制御する。
【0105】
本実施例9によれば、フレーム取得区間においてスイング速度を低速にすることで、重要な区間は低減速度で高密度にフレームを取得することが可能である。つまり、3次元弾性画像にて観察したい着目部位501が含まれる特定揺動区間601についてはフレーム間隔が小さくなり、断層画像データ201を密に計測し、実施例1と同様に弾性ボリュームデータを取得する。また、必要ない部分は高速度にスイングすること
により、得られる弾性画像の画質が劣化するが、全体像としては把握できるのでレンダリングした際に、視野角が広く、また重要な部分は高精細な3次元弾性画像として表示可能となる。
【0106】
一方、着目部位501以外の揺動区間602については高速に揺動(スイング)するから、弾性画像の画質は劣化する。しかし、全体として、弾性ボリュームデータの生成、及びレンダリングに係る処理時間を短縮できるから、リアルタイム性が向上し、且つ、弾性ボリュームデータを記憶させるメモリ容量を低減することが可能となる。
【実施例10】
【0107】
図13を参照して弾性画像計測の実施例10の処理手順を説明する。本実施例10が実施例1又は他の実施例と相違する点は、弾性画像取得用と断層画像取得用の超音波のパターン(例えば、周波数、パルスパターン、強度など)を異ならせることができるようにしたことにある。すなわち、同図(a)に示すように、超音波探触子により被検体に加える圧迫
力が変化され、且つ、被検体に超音波を送受信するスキャン面が矢印の短軸方向に移動される過程で、被検体に超音波を周期的に送受信してRF信号フレームデータを連続的に計測する。特に、本実施例では、複数(図示例では2つ)の連続したスキャン面に予め設定された弾性画像取得用の超音波と、続く1つのスキャン面に予め設定された断層画像取得用の超音波とをセットとして、繰り返し送信するようにしている。これに対応して、受信部4及び整相加算部6により3枚セットのRF信号フレームデータが生成されて出力される。
【0108】
同図(c)に示すように、メカ3Dプローブが一方向にスイングされる過程で、2枚の弾性画像用のRF信号フレームデータ(前フレーム、後フレーム)と、1枚の断層画像用のRF信号フレームデータが繰り返し取得される。このとき、弾性画像取得用の超音波の送信周期は、順次受信される反射エコー信号の超音波受信ビームの径が重なる周期に設定されているので、各RF信号フレームデータも超音波受信ビームの径が互いに重なり合う間隔で取得される。
【0109】
このようにして取得された断層画像用のRF信号フレームデータは、断層画像構成部7に入力されて断層画像が構成される。一方、2枚の弾性画像用のRF信号フレームデータは、RF信号フレームデータ選択部28と変位計測部30を経て弾性情報演算部32に入力される。これにより、同図(c)に示すように、弾性情報が演算され、弾性画像構成部34にて3枚のRF信号フレームデータの間隔ごとに弾性画像が構成され、弾性フレームデータが生成される。この弾性フレームデータが蓄積された段階で、ボリュームレンダリング処理により任意の3D弾性画像が生成されて画面に表示される。
【0110】
本実施例10によれば、弾性画像取得用と断層画像取得用に適した超音波パターン(例えば、周波数、パルスパターン、強度など)を用いることができるから、弾性画像及び断層画像の画質等を向上できる。また、断層ボリュームデータを構成する断層画像の枚数を少なくすることにより、3次元断層画像のレンダリング処理を高速化できる。
【0111】
上記の実施例1〜10では、超音波探触子2の短軸方向の移動を
図2に示したメカ3Dプローブにより円弧状に揺動(スイング)する例について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。すなわち、超音波探触子2の短軸方向の移動は、直線状であってもよい。この場合、
図2の超音波探触子2を案内するガイドレール46aは、直線状に形成する。また、機械的手段によらず、手技により超音波探触子2を短軸方向に揺動又は直線的に移動させるようにしてもよい。