(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記中間部は、少なくとも1回の折り返しパターンからなるメアンダ形状を有する第1の部分と、直線形状または少なくとも1回の折り返しパターンからなるメアンダ形状を有する第2の部分とからなり、前記第1の部分のメアンダ形状の折り返し方向と、前記第2の部分の直線形状の延在する方向またはメアンダ形状の折り返し方向とが、互いに直交するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
前記放射素子は、前記第1の根本部が、前記放射素子の一方の端から第1の向きに伸びる第1の直線部と、第1の屈曲部を介して前記第1の直線部に連結され、前記第1の屈曲部から前記第1の向きとは逆向きの第2の向きに伸びる第2の直線部とを有し、前記第2の直線部が前記後端直線部となっており、
前記第2の根本部が、前記放射素子の他方の端から前記第2の向きに伸びる第3の直線部と、第2の屈曲部を介して前記第3の直線部に連結され、前記第2の屈曲部から前記第1の向きに伸びる第4の直線部とを有し、前記第4の直線部が前記後端直線部となっていることを特徴とする請求項1または2に記載のアンテナ装置。
前記放射素子は、前記第1の根本部が、前記放射素子の一方の端から第1の向きに伸びる第1の直線部と、第1の屈曲部を介して前記第1の直線部に連結され、前記第1の屈曲部から前記第1の向きとは逆向きの第2の向きに伸びる第2の直線部と、第2の屈曲部を介して前記第2の直線部に連結され、前記第2の屈曲部から前記第1の向きに伸びる第3の直線部とを有し、前記第3の直線部が前記後端直線部となっており
前記第2の根本部が、前記放射素子の他方の端から前記第2の向きに伸びる第4の直線部と、第3の屈曲部を介して前記第4の直線部に連結され、前記第3の屈曲部から前記第1の向きに伸びる第5の直線部と、第4の屈曲部を介して前記第5の直線部に連結され、前記第3の屈曲部から前記第2の向きに伸びる第6の直線部とを有し、前記第6の直線部が前記後端直線部となっていることを特徴とする請求項1または2に記載のアンテナ装置。
前記放射素子の前記中間部は、前記導電性経路の複数回の折り返しパターンからなるメアンダ形状部を有し、前記メアンダ形状部には、アンテナ装置の使用帯域内におけるVSWR値を低下させるように、前記折り返しパターンにおける異なる2点間を短絡させる短絡部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
前記アンテナ装置は、自動車の車体に形成された開口部から前記アンテナ装置の使用帯域における最低周波数の波長の1/2以下の距離の範囲に配置されていることを特徴とする請求項10に記載のアンテナシステム。
前記アンテナ装置は、自動車のピラーの位置、ルーフトップの裏の位置、ドアの内側の位置、またはダッシュボード上の位置のいずれかに配置されていることを特徴とする請求項10または11に記載のアンテナシステム。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0029】
〔実施の形態1〕
図1は、本発明の実施の形態1に係るアンテナ装置の概略構成を示す平面図である。
図1に示すように、アンテナ装置101は、放射素子115を備えている。この放射素子115は例えば表面が平坦な基材の表面に形成されている。
【0030】
放射素子115は、一端から他端に連続する導電性経路を持っている。一端から他端に連続する導電性経路を持っている点から見ると、公知のループアンテナ装置と同様、放射素子115がループ形状に形成されているともいえる。そして、放射素子115は、同一平面上に配置されており、その部材としては、例えば、導体ワイヤーや導体フィルムを用いることができる。
【0031】
放射素子115の導電性経路において、一端側の部分は第1の根本部(一方の根本部)117となっており、他端側の部分は第2の根本部(他方の根本部)118となっている。上記導電性経路の第1の根本部117と第2の根本部118との間の中間部は、一部(第1の部分)が第1の放射部111を構成し、残りの一部(第2の部分)が第2の放射部112を構成している。一方、第1の根本部117と第2の根本部118とは巻込部(第1の領域)113を構成している。すなわち、放射素子115は、2つの根本部117、118と、それら根本部117、118の間の第1の放射部111および2の放射部112とを備えている。
図1の例では、第1の放射部111はメアンダ形状(メアンダラインアンテナ形状、メアンダ形状部)を有しており、第2の放射部112は直線形状を有している。
【0032】
アンテナ装置101のサイズは、
図1における左右方向(Y軸方向)の長さが70mm、
図1における上下方向(X軸方向)の長さが30mmである。
【0033】
放射素子115の第1および第2の根本部117、118には、給電部114が形成されている。給電部114には給電線121が接続され、これにより放射素子115に対して給電線121から給電されている。
【0034】
巻込部113においては、放射素子115の第1の根本部117の取り出しの向きが、
図1における左向き(Y軸の負の向き)であり、放射素子115の第2の根本部118の取り出しの向きが、
図1における右向き(Y軸の正の向き)である。すなわち、これら2つの取り出しの向きは互いに反対向きとなっている。
【0035】
また、放射素子115の2つの根本部117、118の取り出しの向きは、第1の根本部117が、給電部114の位置を始端として給電線121が延びている向き、つまり、
図1における左向き(Y軸の負の向き)になり、第2の根本部118が、給電部114の位置を始端として給電線121が延びている向き(
図1における左向き)と反対の向きとなっている。
【0036】
具体的には、巻込部113においては、第1の根本部117の延在する向きが、放射素子115の一方の端から、
図1における左向き(Y軸の負の向き)、上向き(X軸の負の向き)、右向き(Y軸の正の向き)、下向き(X軸の正の向き)、左向き(Y軸の負の向き、取り出しの向き)となっており、第2の根本部118の延在する向きが、放射素子115の他方の端から、
図1における右向き(Y軸の正の向き)、下向き(X軸の正の向き)、左向き(Y軸の負の向き)、上向き(X軸の負の向き)、右向き(Y軸の正の向き、取り出しの向き)となっている。すなわち、巻込部113においては、2つの根本部117、118のいずれにおいても、それらの延在する向きが、給電部114を取り囲むようにして、360°回転している。本実施の形態においては、給電部114を取り囲む、このような巻込部113の構成により、アンテナ装置101は、470MHz〜860MHz帯域において、その放射利得として最大4dBiを実現することができる。
【0037】
放射素子115の第1の放射部111は、第1の根本部117と連続しており、少なくとも1回の折り返しパターンからなるメアンダ形状を有している。このメアンダ形状の折り返しパターンの折り返し方向(
図1のX軸方向)は、巻込部113における放射素子115の第1の根本部117の取り出しの向きと垂直である。
【0038】
放射素子115の第2の放射部112は、直線形状を有している。この直線形状(放射部112)の延在する方向(
図1のY軸方向)は、巻込部113における放射素子115の第2の根本部118の取り出しの向きと平行である。
【0039】
すなわち、アンテナ装置101の放射素子115では、第1の放射部111が有するメアンダ形状の折り返し方向と、第2の放射部112が有する直線形状の延在する方向とは直交するようになってされている。
【0040】
また、巻込部113においては更に、
図1に示すように、巻込部113の上に給電線121が配置されており、給電線121の下方に位置して給電線121と重畳する、放射素子115の第1の根本部117の線幅が、給電線121の下方に位置しない、他の位置の線幅よりも広くなっている。
【0041】
このため、給電部114において、インピーダンス整合を実現することができる。なお、このようにして線幅が広くなっているパターンのことを、以下、インダクタンス整合パターン(幅広部)116と称する。
【0042】
なお、上記のように、線幅が広くなっているパターンのことをインダクタンス整合パターン(幅広部)116と称するのは、線幅が広くなっているパターンが、アンテナ装置110に入力される高周波電流に対して誘導リアクタンスを有するインダクタとして機能し、アンテナ装置101の入力インピーダンスを変化させるためである。ただし、線幅が広くなっているパターンの入力インピーダンスへの寄与は、インダクタンスとしてのものだけに限定されない。すなわち、線幅が広くなっているパターンが、容量リアクタンスを有するキャパシタとして機能し、アンテナ装置101の入力インピーダンスを変化させてもよい。
【0043】
アンテナ装置101は、このようなインダクタンス整合パターン116の配置構成により、放射素子115のVSWRを低下させることができる。このため、VSWRの値が規
定値以下になる使用可能帯域を拡大することができる。したがって、低周波帯域側の電波
、高周波帯域側の電波のいずれを送受信する場合であっても、それら電波の帯域を含む使用可能帯域を実現することができる。上記のインダクタンス整合パターン116に関する構成については、
図2に基づき後においても詳述する。
【0044】
次に、
図2に基づいて、巻込部113について、更に詳しく説明する。
巻込部113は、上述したように、放射素子115の第1の根本部117と第2の根本部118とによって構成されている。
【0045】
放射素子115の一方の根本部117は、放射素子115の一方の端から
図2において左向き(Y軸の負の向き)に延在する第1の直線部と、
図2において上向き(X軸の負の向き)に延在する第1の屈曲部を介して第1の直線部に連結され、第1の屈曲部から
図2において右向き(Y軸の正の向き)に延在する第2の直線部と、
図2において下向き(X軸の正の向き)に延在する第2の屈曲部を介して第2の直線部に連結され、第2の屈曲部から
図2において左向き(Y軸の負の向き)に延在する第3の直線部とを有している。
【0046】
上記構成は次のように説明することもできる。放射素子115の第1の根本部117は、
図2において、放射素子115の一方の端から左向き(Y軸の負の向き)に延在する第1の直線部117o1と、この第1の直線部117o1の端部から上向き(X軸の負の向き)に延在する第1の屈曲部117o2と、この第1の屈曲部117o2の端部から右向き(Y軸の正の向き)に延在する第2の直線部117o3と、この第2の直線部117o3の端部から下向き(X軸の正の向き)に延在する第2の屈曲部117o4と、この第2の屈曲部117o4の端部から左向き(Y軸の負の向き)に延在する第3の直線部(後端直線部)117o5とを有している。
【0047】
すなわち、放射素子115の第1の根本部117は、第1及び第2の屈曲部117o2、117o4を介して順次繋がる第1から第3の直線部117o1、117o3、117o5が互いに平行になるように、矩形の渦巻き状に形成されている。
【0048】
一方、放射素子115の他方の根本部118は、放射素子115の他方の端から
図2において右向き(Y軸の正の向き)に延在する第4の直線部と、
図2において下向き(X軸の正の向き)に延在する第3の屈曲部を介して第4の直線部に連結され、第3の屈曲部から
図2において左向き(Y軸の負の向き)に延在する第5の直線部と、
図2において上向き(X軸の負の向き)に延在する第4の屈曲部を介して第5の直線部に連結され、第4の屈曲部から
図2において右向き(Y軸の正の向き)に延在する第6の直線部とを有している。
【0049】
上記構成は次のように説明することもできる。放射素子115の第2の根本部118は、
図2において、放射素子115の他方の端から右向き(Y軸の正の向き)に延在する第4の直線部118o1と、この第4の直線部118o1の端部から下向き(X軸の正の向き)に延在する第3の屈曲部118o2と、この第3の屈曲部118o2の端部から左向き(Y軸の負の向き)に延在する第5の直線部118o3と、この第5の直線部118o3の端部から上向き(X軸の負の向き)に延在する第4の屈曲部118o4と、この第4の屈曲部118o4の端部から右向き(Y軸の正の向き)に延在する第6の直線部(後端直線部)118o5とを有している。
【0050】
すなわち、放射素子115の第2の根本部118も、第3及び第4の屈曲部118o2、118o4を介して順次繋がる第4から第6の直線部118o1、118o3、118o5が互いに平行になるように、矩形の渦巻き状に形成されている。
【0051】
このような配置は、放射素子115の2つの根本部117、118が互いに巻き込みあっているともいえることから、この部分を巻込部113と称している。
【0052】
また、第1の根本部117における第1の直線部117o1の端部には、第1の直線部117o1の幅方向であって、第2の根本部118の第4の直線部118o1の方向に突出する凸部117o11が形成されている。同様に、第2の根本部118における第4の直線部118o1の端部には、第4の直線部118o1の幅方向であって、第1の根本部117における第1の直線部117o1の方向に突出する凸部118o11が形成されている。
【0053】
したがって、上記凸部117o11と上記凸部118o11とは、
図2に示すY方向において隣り合うように、かつX方向において反対方向を向くように配置されている。また、第1の根本部117と第2の根本部118とは、上記凸部117o11、118o11を始端として、すなわち渦巻きの中心として、矩形の渦巻き状に配置されている。
【0054】
放射素子115の第1の根本部117に対する給電は、その端部に形成された給電部114から行われる。一方、放射素子115の第2の根本部118に対する給電は、その端部からではなく、根本部118の第3の屈曲部118o2の中間に形成された給電部114から行われる。
【0055】
具体的には、給電部114は、第1の根本部117における第1の直線部117o1の凸部117o11と、この凸部117o11とY方向に隣り合う第2の根本部118における第3の屈曲部118o2の中間部とに配置されている。給電部114のこのような配置により、給電線121を
図2における左右方向に配置し、給電線121と給電部114、すなわち給電線121と第1および第2の根本部117、118とを接続する構成が実現されている。
【0056】
さらに、この給電線121と給電部114との接続構成においては、給電線121を構成する同軸ケーブルの外部導体122が放射素子115の第1の根本部117(第1の直線部117o1の凸部117o11)に給電し、その同軸ケーブルの内部導体123が放射素子115の第2の根本部118(第3の屈曲部118o2の中間部)に給電している。また、給電線121としての同軸ケーブルの、外部導体122が露出して部分と隣り合う、絶縁性外皮にて覆われてる部分(外部導体122が露出していない部分)は、第4の直線部118o1の凸部118o11上に配置されている。
【0057】
給電線121からの給電に関し、具体的には、給電部114において、給電線121を構成する同軸ケーブルの内部導体123を介して所定の周波数帯の信号が放射素子115の第2の根本部118に印加され、その同軸ケーブルの外部導体122を介してアース電位が放射素子115の第1の根本部117に印加される。
【0058】
このようにして、給電部114において、放射素子115の第1の根本部117と第2の根本部118との間に給電が行われる場合、VSWR特性を十分に良好な値に設定するためには、給電線121と給電部114との間において、インピーダンス整合を行わなければならない。
【0059】
このため、放射素子115の第2の根本部118における第4の直線部118o1には、その端部に、その幅方向(
図2の上下方向、X方向)に突出する凸部118o11が形成され、この凸部118o11により、直線部118o1において上述したインダクタンス整合パターン116が設けられている。このインダクタンス整合パターン116は、給電線121と給電部114との間におけるインピーダンス整合において、インダクタとして機能するものである。すなわち、第2の根本部118の直線部118o1には凸部118o11が形成され、この凸部118o11の上に給電線121が配置されている。そして、給電線121の下方に位置して給電線121と重畳する、凸部118o11が形成されている第4の直線部118o1の部分は、給電線121の下方に位置しない他の部分よりも線幅が広い幅広部となっている。この幅広部の線幅は、放射素子115の中間部の最小の線幅よりも広ければよい。すなわち、「給電線121の下方に位置しない他の部分」とは、放射素子115の中間部のうち線幅が最小になる部分のことを指す。また、この幅広部の線幅は、給電線121の直径の1.2倍以上4.5倍以下であることが好ましい。
【0060】
以上説明したように、放射素子115の2つの根本部117、118は、給電部114を取り囲みつつ互いに反対向きに引き出され、
図1に示した第1の放射部111及び第2の放射部112にそれぞれ繋がっている。
【0061】
このような配置にすることによって、放射素子115の2つの根本部117、118を比較的狭い矩形領域に収容することができる。したがって、上記配置は、給電部114の周辺部をコンパクトに形成することに寄与している。
【0062】
なお、以下に説明する他の図面においては、上述した各構成部材に対応する変形例を図示することがある。これら変形例については、上述した対応する構成部材に付記した符号(数字)にa、b、c・・・のアルファベットを付記することにより、対応関係を明らかにしつつ変形例であることを示すこととする。
【0063】
(変形例1)
図3は、アンテナ装置101の変形例であるアンテナ装置101aを示している。
【0064】
放射素子115aも、その中間部の一部が第1の放射部111aを構成し、その中間部の他の一部が第2の放射部112aを構成する一方、その2つの根本部117a、118aが巻込部(第1の領域)113aを構成している。
【0065】
放射素子115aの中間部の一部は、第1の放射部111aにおいて、少なくとも1回の折り返しパターンからなるメアンダ形状を有している。そして、このメアンダ形状の折り返しパターンの折り返し方向は、巻込部113aにおける放射素子115aの第1の根本部117aの取り出しの向きと垂直である。
【0066】
放射素子115aの中間部の他の一部も、第2の放射部112aにおいて、メアンダ形状を有している。そして、このメアンダ形状の延在する方向は、巻込部113aにおける放射素子115aの第2の根本部118aの取り出しの向きと平行である。
【0067】
放射素子115aの一方の根本部は、放射素子115aの一方の端から
図3において左向き(Y軸の負の向き)に延在する第1の直線部と、
図3において上向き(X軸の負の向き)に延在する第1の屈曲部を介して第1の直線部に連結され、第1の屈曲部から
図3において右向き(Y軸の正の向き)に延在する第2の直線部と、
図3において下向き(X軸の正の向き)に延在する第2の屈曲部を介して第2の直線部に連結され、第2の屈曲部から
図3において左向き(Y軸の負の向き)に延在する第3の直線部とを有している。
【0068】
上記構成は次のように説明することもできる。放射素子115aの第1の根本部117aは、
図3において、放射素子115aの一方の端から左向き(Y軸の負の向き)に延在する第1の直線部117a1と、この第1の直線部117a1の端部から上向き(X軸の負の向き)に延在する第1の屈曲部と、この第1の屈曲部の端部から右向き(Y軸の正の向き)に延在する第2の直線部と、この第2の直線部の端部から下向き(X軸の正の向き)に延在する第2の屈曲部と、この第2の屈曲部の端部から左向き(Y軸の負の向き)に延在する第3の直線部(後端直線部)とを有している。
【0069】
一方、放射素子115aの他方の根本部は、放射素子115aの他方の端から
図3において右向き(Y軸の正の向き)に延在する第4の直線部と、
図3において下向き(X軸の正の向き)に延在する第3の屈曲部を介して第4の直線部に連結され、第3の屈曲部から
図3において左向き(Y軸の負の向き)に延在する第5の直線部と、
図3において上向き(X軸の負の向き)に延在する第4の屈曲部を介して第5の直線部に連結され、第4の屈曲部から
図3において右向き(Y軸の正の向き)に延在する第6の直線部とを有している。
【0070】
上記構成は次のように説明することもできる。放射素子115aの第2の根本部118aは、
図3において、放射素子115aの他方の端から右向き(Y軸の正の向き)に延在する第4の直線部118a1と、この第4の直線部118a1の端部から下向き(X軸の正の向き)に延在する第3の屈曲部と、この第3の屈曲部の端部から左向き(Y軸の負の向き)に延在する第5の直線部と、この第5の直線部の端部から上向き(X軸の負の向き)に延在する第4の屈曲部と、この第4の屈曲部の端部から右向き(Y軸の正の向き)に延在する第6の直線部(後端直線部)とを有している。
【0071】
放射素子115aの第1の根本部117aに対する給電は、その第1の直線部117a1の中間に形成された給電部114aから行われる。放射素子115aの第2の根本部118aに対する給電も、その第4の直線部118a1の中間に形成された給電部114aから行われる。
【0072】
特に、給電部114aにおいては、放射素子115aの第1の根本部117aは、その幅方向(
図3における上下方向、X軸方向、第4の直線部118a1方向)に突出する凸部117a11をその第1の直線部117a1の中間に有している。また、放射素子115aの第2の根本部118aも、その幅方向(
図3における上下方向、X軸方向、第1の直線部117a1方向)に突出する凸部118a11をその第4の直線部118a1の中間に有している。そして、2つの根本部117a、118aのそれぞれの凸部117a11、118a11が、
図3における左右方向(Y軸方向、給電線121aの延在方向)に隣接し合うように配置されている。このようにすることによって、給電線121aを
図3における左右方向(Y軸方向)に配置し、給電線121aと給電部114aとを接続する構成が実現されている。
【0073】
なお、
図3の例では、第2の根本部118aの第4の直線部118a1において、給電線121aの絶縁性外皮にて覆われている部分が配置される部分の線幅を幅広部とすることにより、インダクタンス整合パターン116aが構成されている。
【0074】
(変形例2)
図4は、アンテナ装置101の変形例であるアンテナ装置101bを示している。
【0075】
放射素子115bは、その中間部の一部が第1の放射部111bを構成し、その中間部の他の一部が第2の放射部112bを構成する一方、その2つの根本部部117b、118bが巻込部(第1の領域)113bを構成している。また、第1の放射部111bはメアンダ形状を有しており、第2の放射部112bもメアンダ形状を有している。
【0076】
放射素子115bの一方の根本部は、放射素子115bの一方の端から
図4において左向き(Y軸の負の向き)に延在する第1の直線部と、
図4において上向き(X軸の負の向き)に延在する第1の屈曲部を介して第1の直線部に連結され、第1の屈曲部から
図4において右向き(Y軸の正の向き)に延在する第2の直線部と、
図4において下向き(X軸の正の向き)に延在する第2の屈曲部を介して第2の直線部に連結され、第2の屈曲部から
図4において左向き(Y軸の負の向き)に延在する第3の直線部とを有している。
【0077】
上記構成は次のように説明することもできる。放射素子115bの第1の根本部117bは、
図4において、放射素子115bの一方の端から
図4において左向き(Y軸の負の向き)に延在する第1の直線部117b1と、この第1の直線部117b1の端部から上向き(X軸の負の向き)に延在する第1の屈曲部と、この第1の屈曲部の端部から右向き(Y軸の正の向き)に延在する第2の直線部と、この第2の直線部の端部から下向き(X軸の正の向き)に延在する第2の屈曲部と、この第2の屈曲部の端部から左向き(Y軸の負の向き)に延在する第3の直線部(後端直線部)とを有している。
【0078】
一方、放射素子115bの他方の根本部は、放射素子115bの他方の端から
図4において右向き(Y軸の正の向き)に延在する第4の直線部と、
図4において下向き(X軸の正の向き)に延在する第3の屈曲部119bを介して第4の直線部に連結され、第3の屈曲部から
図4において左向き(Y軸の負の向き)に延在する第5の直線部と、
図4において上向き(X軸の負の向き)に延在する第4の屈曲部を介して第5の直線部に連結され、第4の屈曲部から
図4において右向き(Y軸の正の向き)に延在する第6の直線部とを有している。
【0079】
上記構成は次のように説明することもできる。放射素子115bの第2の根本部118bは、
図4において、放射素子115bの他方の端から右向き(Y軸の正の向き)に延在する第4の直線部118b1と、この第4の直線部118b1の端部から下向き(X軸の正の向き)に延在する第3の屈曲部119bと、この第3の屈曲部119bの端部から左向き(Y軸の負の向き)に延在する第5の直線部118b3と、この第5の直線部118b3の端部から上向き(X軸の負の向き)に延在する第4の屈曲部と、この第4の屈曲部の端部から右向き(Y軸の正の向き)に延在する第6の直線部(後端直線部)とを有している。
【0080】
更に、放射素子115bの第2の根本部118bは、
図4の上下方向(X軸方向)に延在する第7の直線部120bを更に有している。そして、この第7の直線部120bは、第4の直線部118b1及び第5の直線部118b3のそれぞれの中央付近と連結されている。
【0081】
このように放射素子115bの第2の根本部118bにおいて、
図4に示すように、第4の直線部118b1と第5の直線部118b3とが、第3の屈曲部119bと第7の直線部120bとの両方を介して、連結されている。このようにすることによって、放射素子115bの第2の根本部118bにおける電流経路を増やし、共振点を増加させることにより、広帯域化を図るアンテナ装置101bが実現されている。
【0082】
放射素子115bの第1の根本部117bに対する給電は、その端部に形成された給電部114bから行われる。一方、放射素子115bの第2の根本部118bに対する給電は、その端部からではなく、その第1の直線部の中間に形成された給電部114bから行われる。
【0083】
特に、給電部114bにおいては、放射素子115bの第1の根本部117bは、その幅方向(
図4における上下方向、第4の直線部118b1方向)に突出する凸部117b11をその第1の直線部117b1の端部に有している。また、放射素子115bの第2の根本部118bは、その幅方向(
図4における上下方向、第1の直線部117b1方向)に突出する凸部118b11をその第4の直線部118b1の中間に有している。
【0084】
そして、2つの根本部117b、118bのそれぞれの凸部117b11、118b11が、
図4における左右方向(給電線121bの延在方向)に隣接し合うように配置されている。このようにすることによって、給電線121bを
図4における左右方向に配置し、給電線121bと給電部114bとを接続する構成が実現されている。
【0085】
なお、
図4の例では、第2の根本部118bの第4の直線部118b1において、給電線121bの絶縁性外皮にて覆われている部分が配置される部分の線幅を幅広部とすることにより、インダクタンス整合パターン116bが構成されている。
【0086】
(変形例3)
図5は、アンテナ装置101の変形例であるアンテナ装置101cを示している。
【0087】
第1の放射部111cはメアンダ形状を有しており、第2の放射部112cは直線形状を有している。
【0088】
特に、第2の放射部112cは、隣接し合う2本の直線経路から構成されており、それらの2本の直線経路同士は、それぞれの一方の端部同士、及び、それぞれの他方の端部同士が接続されている。すなわち、並列接続されている。
【0089】
また、第1の放射部111cは、第2の放射部112cを構成する2本の直線経路に連結された、2本の直線経路111c1を有している。第1の放射部111cが有する2本の直線経路111c1も、それぞれの一方の端部同士、及び、それぞれの他方の端部同士が接続されている。すなわち、並列接続されている。
【0090】
巻込部(第1の領域)113cにおいては、放射素子115cの第1の根本部117cの取り出しの向きが、
図5における下向き(X軸の正の向き)であり、放射素子115cの第2の根本部118cの取り出しの向きが、
図5における上向き(X軸の負の向き)である。すなわち、これら2つの根本部117c、118cの取り出しの向きは互いに反対向きとなっている。
【0091】
そして、放射素子115cの2つの根本部117c、118cの取り出しの向きは、その第1の根本部117cが、給電線121cが延在する向き、つまり、
図5における下向き(X軸の正の向き)と同じ向きになり、その第2の根本部118cが、給電線121cが延在する向き(
図5における下向き、X軸の正の向き)と反対の向きとなっている。
【0092】
具体的には、巻込部113cにおいては、第1の根本部117cの延在する向きが、
図5における上向き(X軸の負の向き)、右向き(Y軸の正の向き)、下向き(X軸の正の向き、取り出しの向き)となっており、第2の根本部118の延在する向きが、下向き(X軸の正の向き)、左向き(Y軸の負の向き)、上向き(X軸の負の向き、取り出し向き)となっている。
【0093】
すなわち、巻込部113cにおいては、2つの根本部117c、118cのいずれにおいても、それらの延在する向きが、給電部114cを取り囲むようにして、180°回転している。給電部114cを取り囲む、このような配置構成により、アンテナ装置101は、470MHz〜860MHz帯域において、その放射利得として最小1dBiを実現することができる。
【0094】
特に、放射素子115cの第1の根本部117cは、
図5において、放射素子115cの一方の端から上向き(X軸の負の向き)に延在する第1の直線部117c1と、この第1の直線部117c1の端部から右向き(Y軸の正の向き)に延在する第1の屈曲部117c2と、この第1の屈曲部117c2の端部から下向き(X軸の正の向き)に延在する第2の直線部(後端直線部)117c3とを有している。
【0095】
すなわち、放射素子115cの第1の根本部117cは、第1の屈曲部117c2を介して互いに隣接する第1の直線部117c1と第2の直線部117c3とが平行になるようにコの字状に折れ曲がるように形成されている。
【0096】
一方、放射素子115cの第2の根本部118cは、
図5において、放射素子115cの他方の端から下向き(X軸の正の向き)に延在する第3の直線部118c1と、この第3の直線部118c1の端部から左向き(Y軸の負の向き)に延在する第2の屈曲部118c2と、この第2の屈曲部118c2の端部から上向き(X軸の負の向き)に延在する第4の直線部(後端直線部)118c3とを有している。
【0097】
すなわち、放射素子115cの第2の根本部118cも、第2の屈曲部118c2を介して互いに隣接する第3の直線部118c1と第4の直線部118c3とが平行になるようにコの字状に折れ曲がるように形成されている。
【0098】
放射素子115cの第1の根本部117cに対する給電は、その第1の直線部117c1の中間に形成された給電部114cから行われる。放射素子115cの第2の根本部118cに対する給電も、その第3の直線部118c1の中間に形成された給電部114cから行われる。
【0099】
特に、給電部114cにおいては、放射素子115cの第1の根本部117cは、その幅方向(
図5における左右方向、Y軸方向、第3の直線部118c1方向)に突出する凸部117c11をその第1の直線部117c1の中間に有している。また、放射素子115cの第2の根本部118cも、その幅方向(
図5における左右方向、Y軸方向、第1の直線部117c1方向)に突出する凸部118c11をその第3の直線部118c1の中間に有している。そして、2つの根本部117c、118cのそれぞれの凸部117c11、118c11が、
図5における上下方向(給電線121cの延在方向)に隣接し合うように配置されている。このようにすることによって、給電線121cを
図5における上下方向(X軸方向)に配置し、給電線121cと給電部114cとを接続する構成が実現されている。
【0100】
なお、
図5の例では、第1の根本部117cの第1の直線部117c1において、給電線121cの絶縁性外皮にて覆われている部分が配置される部分の線幅を幅広部とすることにより、インダクタンス整合パターン116cが構成されている。
【0101】
(変形例4)
図6は、アンテナ装置101の変形例であるアンテナ装置101dを示している。
【0102】
放射素子115dも、その中間部の一部が第1の放射部111dを構成し、その中間部の他の一部が第2の放射部112dを構成する一方、その2つの根本部117d、118dが巻込部(第1の領域)113dを構成している。また、第1の放射部111dはメアンダ形状を有しており、第2の放射部112dもメアンダ形状を有している。
【0103】
放射素子115dの一方の根本部は、放射素子115dの一方の端から
図6において上向き(X軸の負の向き)に延在する第1の直線部と、
図6において右向き(Y軸の正の向き)に延在する第1の屈曲部を介して第1の直線部に連結され、第1の屈曲部から
図6において下向き(X軸の正の向き)に延在する第2の直線部とを有している。
【0104】
上記の構成は次のように説明することもできる。放射素子115dの第1の根本部117dは、
図6において、放射素子115dの一方の端から上向き(X軸の負の向き)に延在する第1の直線部117d1と、この第1の直線部117d1の端部から右向き(Y軸の正の向き)に延在する第1の屈曲部117d2と、この第1の屈曲部117d2の端部から下向き(X軸の正の向き)に延在する第2の直線部(後端直線部)117d3とを有している。
【0105】
一方、放射素子115dの他方の根本部は、放射素子115dの他方の端から
図6において下向き(X軸の正の向き)に延在する第3の直線部と、
図6において左向き(Y軸の負の向き)に延在する第2の屈曲部を介して第3の直線部に連結され、第2の屈曲部から
図6において上向き(X軸の負の向き)に延在する第4の直線部とを有している。
【0106】
上記の構成は次のように説明することもできる。放射素子115dの第2の根本部118dは、
図6において、放射素子115dの他方の端から下向き(X軸の正の向き)に延在する第3の直線部118d1と、この第3の直線部118d1の端部から左向き(Y軸の負の向き)に延在する第2の屈曲部118d2と、この第2の屈曲部118d2の端部から上向き(X軸の負の向き)に延在する第4の直線部(後端直線部)118d3とを有している。
【0107】
放射素子115dの第1の根本部117dに対する給電は、その端部に形成された給電部114dから行われる。放射素子115dの第2の根本部118dに対する給電も、その端部に形成された給電部114dから行われる。
【0108】
特に、給電部114dにおいては、放射素子115dの第1の根本部117dは、その幅方向(
図6における左右方向、Y軸方向、第3の直線部118d1方向)に突出する凸部117d11をその第1の直線部117d1に有している。また、放射素子115dの第2の根本部118dも、その幅方向(
図6における左右方向、Y軸方向、第1の直線部117d1方向)に突出する凸部118d11をその第3の直線部118d1に有している。そして、2つの根本部117d、118dのそれぞれの凸部117d11、118d11が、
図6における上下方向(X軸方向、給電線121dの延在方向)に隣接し合うように配置されている。このようにすることによって、給電線121dを
図6における上下方向(X軸方向)に配置し、給電線121dと給電部114dとを接続する構成が実現されている。
【0109】
また、インダクタンス整合パターン116dは、放射素子115dの第2の根本部118dにおける第2の屈曲部118d2を幅広部とすることにより構成されている。このような構成により、放射素子115dの第2の根本部118を、
図5の場合よりも短くでき、比較的狭い領域に収容することができる。したがって、上記配置は、巻込部113dをコンパクトに形成することに寄与している。
【0110】
(放射指向性及びVSWR特性)
次に、本発明の実施の形態1に係るアンテナ装置の放射指向性及びVSWR特性について説明する。
【0111】
以下に、放射指向性及びVSWR特性の測定手順の概要を示す。
(1)ケーブル付きアンテナのVSWRを測定する。
(2)ケーブル付きアンテナの放射パワーを測定する。
(3)ケーブル付きアンテナの放射特性を計算する。
(4)必要に応じて、ケーブル抜きアンテナのVSWRを測定する。
(5)ケーブルの損失を測定する。
(6)ケーブル抜きアンテナの放射特性を計算する。
【0112】
なお、この測定手順において利用される計算式及び、それら計算式中における変数は次の通りである。
【0115】
以下では、
図3に示した上記の変形例1のアンテナ装置101aを例として、本発明の実施の形態1に係るアンテナ装置の放射指向性及びVSWR特性について説明する。
【0116】
図3に示したアンテナ装置101aでは、図示したように、xy面、yz面及びzx面が設定されている。
【0117】
そして、
図7及び
図8に示すように、例えば、xy面を測定する場合には、上記の測定手順で示した(2)のアンテナの放射パワーを測定する際に、ターンテーブルに載置された測定用の受信アンテナの向きが、xy面内で順次、x軸正の向き、y軸正の向き、x軸負の向き、y軸正の向き、x軸正の向きとなるように、ターンテーブルの回転角度αを0°→360°と変化させてやればよい。なお、アンテナ装置101aは、
図8に示す受信アンテナ向きが指す位置に配置されており、所定の距離(例えば、3m)だけ離れている。
【0118】
この変化の過程において、アンテナの放射パワーを表わす垂直偏波V及び水平偏波Hを測定し、それらの測定結果に基づき、各受信アンテナの向きにおける放射特性を計算する。
【0119】
図7、
図9及び
図10に示すように、上記と同様に、yz面及びzx面の放射特性を計算する。
【0120】
図11は、
図3に示したアンテナ装置101aのVSWR特性を示すグラフである。また、
図12は、
図3に示したアンテナ装置101aの470MHz帯域及び500MHz帯域のそれぞれにおける放射パターンを示すグラフである。なお、
図12は、xy面における放射パターンである。
【0121】
図11によれば、地上波デジタルテレビ帯域(470MHz〜900MHz)のうち、500MHz以下の帯域においてVSWRを3.5以下に抑えられることが分かる。
【0122】
また、
図12によれば、470MHz帯域及び500MHz帯域のいずれにおいても、放射無指向性が実現されていることが分かる。
【0123】
〔実施の形態2〕
次に、本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態は、上記の実施の形態1に係るアンテナ装置101〜101dにおいて、第1の放射部111〜111dが有するメアンダ形状(メアンダ形状部)、及び、第2の放射部112〜112dが有するメアンダ形状の少なくとも一方に、それぞれのメアンダ形状内において短絡箇所を発生させるための1つまたは複数の短絡部材(短絡部)を配置した実施の形態である。なお、短絡部材は、独立した部材として設けられる場合に限らず、例えば放射素子を形成する導電性経路を同じ材料により、導電性経路とともに形成されるものであってもよい。
【0124】
図13〜
図15は、本発明の実施の形態2を説明するための図である。
図13は、本発明の実施の形態2に係るアンテナ装置からインダクタンス整合パターンを取り除いた例であり、
図14は、本発明の実施の形態2に係るアンテナ装置から短絡部材を取り除いた例である。また、
図15は、本発明の実施の形態2に係るアンテナ装置の概略構成を示す平面図である。なお、
図14における符号116f、および
図15における符号116gはインダクタンス整合パターンを示す。
【0125】
図15に示すように、本発明の実施の形態2に係るアンテナ装置101gにおいては、放射素子115gは、その中間部の一部が第1の放射部111gを構成し、その中間部の他の一部が第2の放射部112gを構成する一方、その2つの根本部117g、118gが巻込部(第1の領域)113gを構成している。
【0126】
放射素子115gの中間部の一部は、第1の放射部111gにおいて、少なくとも1回の折り返しパターンからなるメアンダ形状を有している。そして、このメアンダ形状の折り返しパターンの折り返し方向は、巻込部113gにおける放射素子115gの第1の根本部117gの取り出しの向きと平行である。
【0127】
放射素子115gの中間部の他の一部も、第2の放射部112gにおいて、メアンダ形状を有している。そして、このメアンダ形状の折り返しパターンの折り返し方向は、巻込部113gにおける放射素子115gの第2の根本部118gの取り出しの向きと垂直である。
【0128】
第1の放射部111gが有するメアンダ形状内に短絡部材131g、132g、133g、134gが配置されている。また、第2の放射部112gが有するメアンダ形状内に短絡部材131gが配置されている。
【0129】
このような短絡部材131g〜134gを配置する位置及び箇所の決定は、次のように行なわれる。
【0130】
すなわち、放射素子115gの共振点が増加し、且つ、給電部114gにおける放射素子115gの2つの根本部117g、118gのVSWR特性が安定するように、短絡部材131g〜134gを配置する位置及び箇所を決定する。
【0131】
そうすることにより、放射素子115gが、VHF帯域側の電波を送受信する場合、及び、UHF帯域側の電波を送受信する場合のいずれにおいても、それぞれの電波に関する放射無指向性を向上させることができる。
【0132】
なお、
図15の例では、短絡部材131g〜134gは、第1の放射部111g及び第2の放射部112gのいずれのメアンダ形状内にも配置されているが、もちろん、第1の放射部111gが有するメアンダ形状内のみに配置されても構わないし、第2の放射部112gが有するメアンダ形状内のみに配置されても構わない。
【0133】
要は、放射素子115gの共振点が増加し、且つ、給電部114gにおける放射素子115gの2つの根本部のVSWR特性が安定するように、短絡部材131g〜134gの位置及び箇所を決定すればよい。
【0134】
なお、短絡部材131g〜134gは、放射素子115gを短絡させるものであり、例えば、金属材料などの導電材料を用いることができる。このような短絡部材131g〜134gは、放射素子115gに直接接触し、放射素子115gを短絡させる。
【0135】
(放射指向性及びVSWR特性)
図16は、
図15に示したアンテナ装置101gのVSWR特性を示すグラフである。また、
図17は、
図15に示したアンテナ装置101gの550MHz帯域におけるxy面の放射パターンを示すグラフである。
【0136】
図16によれば、地上波デジタルテレビ帯域(470MHz〜900MHz)のうち、500MHz以下の帯域においてVSWRを3.5以下に抑えられることが分かる。
【0137】
また、
図17によれば、550MHz帯域において、放射無指向性が実現されていることが分かる。
【0138】
(インダクタンス整合パターンの有無)
図18は、
図13に示したアンテナ装置101eの750MHz帯域におけるxy面の放射パターン、及び、
図15に示したアンテナ装置101gの800MHz帯域におけるxy面の放射パターンを示すグラフである。
【0139】
図18によれば、インダクタンス整合パターン116gを設けることで、放射無指向性が向上されていることが分かる。
【0140】
(短絡部材の有無及びメアンダ形状の折り返し方向の配置構成)
図19は、
図14に示したアンテナ装置101fの700MHz帯域におけるxy面の放射パターン、
図15に示したアンテナ装置101gの700MHz帯域におけるxy面の放射パターン、及び、
図20に示したアンテナ装置101hの700MHz帯域におけるxy面の放射パターンを示すグラフである。
【0141】
なお、
図20の例では、放射素子115hの中間部の一部は、第1の放射部111hにおいて、そのメアンダ形状の折り返しパターンの折り返し方向が、巻込部113hにおける放射素子115の第1の根本部117の取り出しの向きと平行である。
【0142】
また、放射素子115hの中間部の他の一部は、第2の放射部112hにおいて、そのメアンダ形状の折り返しパターンの折り返し方向が、巻込部113hにおける放射素子115の第2の根本部118の取り出しの向きと平行である。
【0143】
すなわち、アンテナ装置101hでは、第1の放射部111hが有するメアンダ形状の折り返し方向と、第2の放射部112hが有するメアンダ形状の折り返し方向とが平行となるように配置構成されている。
【0144】
図18に示すように、
図14に示したアンテナ装置101fの放射パターンと
図15に示したアンテナ装置101gの放射パターンとの比較結果から、短絡部材131g〜134gを設けることで、放射無指向性が安定化されていることが分かる。
【0145】
また、
図14に示したアンテナ装置101fの放射パターンと
図20に示したアンテナ装置101hの放射パターンとの比較結果から、第1の放射部111fが有するメアンダ形状の折り返し方向と、第2の放射部112fが有するメアンダ形状の折り返し方向とが直交となるように配置構成されていることで、放射無指向性が安定化されていることが分かる。
【0146】
〔実施の形態3〕
次に、本発明の実施の形態3について説明する。上述したように、地上波デジタル放送用のアンテナ装置が実用化されれば、その放送の受信端末となる、携帯電話、パーソナルコンピュータ、カーナビゲーションシステム、車載用テレビジョン受像機など多種多様な受信機に搭載されることになる。
【0147】
ところで、アンテナ装置は、その周囲の影響を強く受けるため、その搭載箇所にどのように実装するかということは重要な事柄になる。
【0148】
特に、アンテナ装置が金属板等からなる導体部材上に搭載される場合、導体部材からの影響が避けられない。つまり、アンテナ装置が導体部材に搭載される場合、アンテナ装置単体が真空の自由空間にある場合とは異なり、その導体部材からの影響を考慮しつつ、アンテナ装置の設計が必要となる。
【0149】
そこで、本発明の実施の形態3では、アンテナ装置が導体部材に搭載される場合において、導体部材から受ける影響を考慮した構成としている。このために、短絡部材(短絡部)を使用し、短絡部材を配置する位置及び箇所を決定することによって、放射素子の共振点を増加させ、VSWR値を低下させる。これにより、アンテナ装置が導体部材に搭載される場合でも、使用可能帯域の拡大を図ることができる。なお、前述したように、短絡部材は、独立した部材として設けられる場合に限らず、例えば放射素子を形成する導電性経路を同じ材料により、導電性経路とともに形成されるもの、導電性経路と一体的に形成されたものであってもよい。
【0150】
図21は、本発明の実施の形態3に係るアンテナ装置の概略構成を示す平面図である。
図21に示すように、アンテナ装置201は、放射素子215を備えている。
【0151】
放射素子215は、一端から他端に連続する導電性経路を持ち、1本の線路である。一端から他端に連続する導電性経路を持っている点から、ループ形状に形成されているともいえる。そして、放射素子215は、同一平面上に配置されており、その部材としては、例えば、導体ワイヤーや導体フィルムを用いることができる。
【0152】
放射素子215は、放射素子215の一端から所定の長さの部分(下記の巻込部211に相当する部分)と、その他端から所定の長さの部分(下記の巻込部211に相当する部分)とが、それぞれ、第1および第2の根本部225、226となる。そして、放射素子215から2つの根本部225、226を除いた残りの部分が中間部となる。
【0153】
上記中間部の一部がメアンダ形状(メアンダ形状部)を有する放射部212を構成し、上記中間部の残りの一部が第1の幅広部213および第2の幅広部214を構成する一方、上記2つの根本部225、226が巻込部211を構成している。第1の幅広部213と第2の幅広部214とは、お互いに、各々の一部分を共有しあっている。
【0154】
アンテナ装置201のサイズは、
図21における左右方向(X軸方向)の長さが92mm、上下方向(Z軸方向)の長さが52mmである。
【0155】
上記巻込部211において、放射素子215の2つの根本部225、226のそれぞれには、給電部222が形成されている。2つの根本部225、226のそれぞれは、給電部222に接続された給電線221から給電されている。放射素子215の第1の根本部225の取り出しの向きは、
図21における左向き(X軸の負の向き)であり、第2の根本部226の取り出しの向きは、
図21における右向き(X軸の正の向き)である。すなわち、これら2つの取り出しの向きは互いに反対向きとなっている。
【0156】
さらに、放射素子215の2つの根本部225、226の取り出しの向きは、第1の根本部225が、給電線221が延在する向き、つまり、
図21における左向き(X軸の負の向き)と同じ向きになり、第2の根本部226が、給電線221が延在する向きと反対の向きとなっている。
【0157】
具体的には、巻込部211においては、
図21において、第1の根本部225の延在する向きが、放射素子215の一方の端から、上向き(Z軸の正の向き)、左向き(X軸の負の向き、取り出しの向き)となっている。すなわち、第1の根本部225は、上向きに延びる第1の直線部225o1、およびこの第1の直線部225o1の端部から左向きに延びる第1の屈曲部225o2(後端直線部)を有する。
【0158】
また、他方の根本部の延在する向きが、放射素子215の他方の端から、下向き(Z軸の負の向き)、右向き(X軸の正の向き、取り出しの向き)となっている。すなわち、第2の根本部226は、下向きに延びる第2の直線部226o1、およびこの第2の直線部226o1の端部から右向きに延びる第2の屈曲部226o2(後端直線部)を有する。
【0159】
このように、巻込部211においては、2つの根本部225、226のいずれにおいても、それらの延在する向きが、給電部114を取り囲むようにして、90°回転している。
【0160】
また、放射素子215の中間部の一部は、放射部212において、少なくとも1回の折り返しパターンからなるメアンダ形状を有している。そして、このメアンダ形状の折り返しパターンの折り返し方向(Z軸方向)は、巻込部211における放射素子215の第2の根本部226の取り出しの向き(X軸の正の向き)、すなわち第2の屈曲部226o2(後端直線部)の向きと垂直である。
【0161】
また、給電線221の下方に位置し、給電線221と重畳する、第1の幅広部213の線幅(X軸方向の長さ)は、放射素子215の巻込部211および放射部212を構成する部分の線幅よりも広くなっている。このため、給電部222において、給電線221との間のインピーダンス整合を実現することができる。
【0162】
第2の幅広部214も、第1の幅広部213と同様、放射素子215の巻込部211および放射部212を構成する部分の線幅よりも広くなっている。
【0163】
図21とは異なり、給電線221が給電線222からZ軸の負の向きに延在する場合であれば、この第2の幅広部214が第1の幅広部213の役割を果たすことになる。すなわち、この場合、給電線221の下方に位置し、給電線221と重畳する、第2の幅広部214の線幅(X軸方向の長さ)が、放射素子215の巻込部211および放射部212を構成する部分の線幅よりも広くなっている、といえる。
【0164】
更に、放射部212が有するメアンダ形状内に短絡部材231が配置されている。ここで、
図22を用いて、この短絡部材231の役割について、以下、説明する。
【0165】
(短絡部材231の役割)
図22は、メアンダ形状を有する放射素子315内に短絡部材331を配置して、放射素子315内に複数の導電性経路を生じさせた状態を示す模式図である。
【0166】
図22に示すように、アンテナ装置301は1本の線路である放射素子315を有し、この放射素子315はメアンダ形状を有する。すなわち、放射素子315はメアンダ化されている。放射素子315には給電部322において給電線が接続される。
【0167】
短絡部材331は、メアンダ化された放射素子315の例えば異なる2点間を短絡させる。
図22の例では、短絡部材331の両端部に位置する上下方向に延びる2本の直線部間が短絡されている。これにより、放射素子315には、第1の波長λ1に対応した実線にて示す第1のパス(第1の導電性経路)と、第2の波長λ2に対応した破線にて示す第2のパス(第2の導電性経路)とが形成される。
【0168】
このように、アンテナ装置301では、メアンダ化された放射素子315において、複数の異なる点同士を短絡させるように短絡部材331を設けて、長さの異なる導電性経路の数を増やすことにより、アンテナ装置301の共振周波数を増加させることができる。これにより、使用帯域におけるアンテナ装置301のVSWR特性を向上させることができる。
【0169】
ここで、上述したように、アンテナ装置では、導体部材に搭載された場合、導体部材の影響を受けて、使用帯域(例えば、日本向け地上デジタル放送用アンテナであれば470MHz〜770MHz、北米向け地上デジタル放送用アンテナであれば470MHz〜860MH、欧州向け地上デジタル放送用アンテナであれば470〜890MHz)におけるVSWR特性が悪化する(VSWR値が上昇する)場合がある。
【0170】
このような場合には、
図22のアンテナ装置301において示したように、メアンダ化された放射素子315において、複数の異なる点同士を短絡させるように短絡部材331を設けることによって、使用帯域におけるVSWR特性の悪化(VSWR値の上昇)を抑制することができる。すなわち、導体部材からの影響を考慮し、放射素子315の近傍にダミーの導電部材を配置した状態で、放射素子315において短絡部材331により短絡させる位置を決定して短絡部材331を配置する。これにより、長さの異なる導電性経路の数が増加してアンテナ装置301の共振周波数が増加する。この結果、アンテナ装置301を導体部材に搭載した場合でも、導体部材の影響による使用帯域におけるVSWR特性の悪化(VSWR値の上昇)を抑制することができる。
【0171】
図21に示したアンテナ装置201では、上で述べたような短絡部材331として、短絡部材231が、メアンダ化された放射部212に配置されている。この短絡部材231を配置する位置及び箇所の決定は、例えば、次のようにして行われる。
【0172】
短絡部材231の配置は、放射素子215が誘電体を介して金属板上に配置された状態で、使用帯域内の各周波数におけるVSWR値が、短絡部材231を配置していない場合よりも小さくなるように決める。より好ましくは、放射素子215が誘電体を介して金属板上に配置された状態で、使用帯域内の各周波数におけるVSWR値が、3.5以下になるように決める。
【0173】
より具体的に言えば、ダミー金属板上に誘電体を介して配置された放射素子215上に短絡部材231を仮置きした上で、使用帯域におけるVSWR値をモニタしながら短絡部材231を移動する。そして、使用帯域内の各周波数においてVSWR値が短絡部材を配置していない場合よりも小さくなる位置が見出された場合、その短絡部材231をその位置に固定する。一方、使用帯域内の各周波数においてVSWR値が短絡部材を配置していない場合よりも小さくなる位置を見出せなかった場合、使用する短絡部材231を形状またはサイズの異なるものに取り替えながら、上記の試行を繰り返す。
【0174】
短絡部材231は、放射素子215の所定の位置同士を短絡させるものであり、例えば、金属材料などの導電材料を用いることができる。短絡部材231は、例えば放射素子215に直接接触し、放射素子215を短絡させる。
【0175】
ここで、短絡部材231の有無とVSWR特性との関係について調べた実験結果について、以下に説明する。
【0176】
(短絡部材の有無による効果)
この実験においては、
図23に示すように、350mm×250mmの導体部材としての金属板403上に、誘電体層402を介してアンテナ装置401を搭載した。誘電体層402については後述する。なお、アンテナ装置401のサイズが100mm×50mm程度であれば、アンテナ装置401を350mm×250mmの導体部材上に搭載したときと概ね同じ特性が、アンテナ装置401を自動車のボンネット等の導体部材上に搭載した場合にも得られる。
【0177】
アンテナ装置401には、
図21に示したアンテナ装置201、および
図24に示すアンテナ装置501を使用し、それぞれについてVSWR特性を測定した。なお、
図24のアンテナ装置501は、
図21のアンテナ装置201に設けられている短絡部材231が設けられていない点を除き、
図21のアンテナ装置201と同一の構成を有する。
【0178】
図25は、アンテナ装置201およびアンテナ装置501の各VSWR特性の測定結果を示すグラフである。
図25において、「短絡部材有り」のグラフがアンテナ装置201の測定結果であり、「短絡部材無し」のグラフがアンテナ装置501の測定結果である。なお、この測定時においては、誘電体層402の厚さdは5mm、比誘電率εrは1であった。
【0179】
図25に示す実験結果からは、アンテナ装置201において短絡部材231を配置し、短絡を生じさせることにより、地上波デジタルテレビ帯域(470MHz〜770MHz)のうち、800MHz以下の帯域においてVSWRを3.5以下に抑えられることが分かる。
【0180】
(誘電体の厚さによる効果)
発明者等は、
図23に示すように、アンテナ装置401と導体部材としての金属板403との間に誘電体層402を設けることにより、アンテナ装置401と導体部材(金属板403)との間の距離を数mm程度に小さくしても実用に耐えるVSWR特性を有するアンテナ装置を実現できることを見出した。この際、誘電体層402の比誘電率εrは1以上10以下に設定することが望ましい。これは、比誘電率εrを10よりも大きくすると、放射効率の低下が無視できなくためである。
【0181】
図26に、誘電体層402の厚さdを変化させ、各厚さdにおけるアンテナ装置401のVSWR特性の測定結果を示す。ここでは、
図21のアンテナ装置201をアンテナ装置401として用いている。
【0182】
また、厚さdとして、d=無限大(∞)、d=5mm、d=2mm、d=0mm、の4条件を用意した。なお、d=無限大とは、アンテナ装置201と金属板403との距離が無限大、つまり、金属板403が存在しない状況を意味する条件である。また、d=0mmは、アンテナ装置201が金属板403に直接接触するように搭載されている状況を意味する条件である。
【0183】
図26に示すように、d=無限大、d=5mmの2つ条件において、470MHz〜770MHzの帯域においてVSWRを3.5以下に抑えられることが分かる。また、d=2mmとした場合でも、670MHz近傍の帯域を除けば、470MHz〜770MHzの帯域においてVSWRを3.5以下に抑えられることが分かる。このことから次のようなことがいえる。
【0184】
d=無限大、すなわち、アンテナ装置201が金属板403に搭載されていなければ、アンテナ装置201は金属板402からの影響を受けることは無い。言い換えると、アンテナ装置201が金属板403に無限遠から徐々に金属板403に近づくとすれば、金属板403に近づけば近づくほど、金属板403からの影響を強く受けるはずである。
【0185】
したがって、
図26の結果からいえることは、アンテナ装置201と金属板403との間の誘電体層402の厚さd、すなわち、アンテナ装置201と金属板403との間の距離を5mm以上とすれば、470MHz〜770MHzの帯域において、VSWRを3.5以下に抑えられることができるといえる。また、アンテナ装置201と金属板403との間の距離を2mm以上とすれば、一部の例外的な帯域を除けば、470MHz〜770MHzの帯域においてVSWRを3.5以下に抑えられることができるといえる。
【0186】
図27は、
図21に示したアンテナ装置201の550MHz帯域における放射パターンを示すグラフである。(a)は、xy面における放射パターン、(b)は、yz面における放射パターン、(c)は、zx面における放射パターンをそれぞれ示している。このときの誘電体層402の厚さdは5mm、比誘電率ε
rは1であった。
【0187】
図27によれば、xy面における放射パターン、yz面における放射パターン、zx面における放射パターンのいずれにおいても、放射無指向性が実現されていることが分かる。
【0188】
(変形例)
図28は、アンテナ装置201の変形例であるアンテナ装置201aを示している。以下、上記の実施の形態3と異なる部分について、その詳細な説明を行なうものとし、同様の部分については、説明を省略する。
【0189】
アンテナ装置201aのサイズは、
図28における左右方向(X軸方向)の長さが83mm、上下方向(Z軸方向)の長さが56mmである。
【0190】
巻込部211aにおいて、放射素子215aの2つの根本部225a、226aのそれぞれに、給電部222aが形成されている。2つの根本部225a、226aのそれぞれは、給電部222aに接続された給電線221aから給電されている。
【0191】
なお、第1の根本部225aは、
図21に示した第1の根本部225の第1の直線部225o1および第1の屈曲部225o2に対応する第1の直線部225a1および第1の屈曲部225a2(後端直線部)を有する。同様に、第2の根本部226aは、
図21に示した第2の根本部226の第2の直線部226o1および第2の屈曲部226o2に対応する第2の直線部226a1および第2の屈曲部226a2(後端直線部)を有する。
【0192】
給電線221aは、その延在する向きが、上記の実施の形態1の給電線221とは異なり、
図28のZ軸の負の向きとなっている。
【0193】
このため、放射素子215aの2つの根本部225a、226aの取り出しの向きは、いずれも、給電線221が延在する向きと直交している。
【0194】
また、第1の幅広部213aは、給電線221aの下方に位置し、給電線221aと重畳する部分の線幅(X軸方向の長さ)が、放射素子215aの巻込部211aおよび放射部212aを構成する部分の線幅よりも広くなっている。
【0195】
図28とは異なり、給電線221aは給電線222aからX軸の負の向きに延在していてもよい。
【0196】
更に、放射部212aが有するメアンダ形状内に短絡部材231a及び短絡部材232aが配置されている。この短絡部材231a及び短絡部材232aの役割については、上記の実施の形態3の短絡部材231と同様である。
【0197】
次に、短絡部材231a及び232aの有無により、VSWR特性がどの程度向上するかについて、発明者等が実験を行なった。その実験結果について、以下に説明する。
【0198】
(短絡部材の有無による効果)
発明者等は、上記の実施の形態3と同様、
図23に示すように、350mm×250mmの金属板403上に、誘電体層402を介してアンテナ装置401を搭載した。
【0199】
アンテナ装置401には、
図28に示したアンテナ装置201a、
図29に示すアンテナ装置502、および
図30に示すアンテナ装置503を使用し、それぞれについてVSWR特性を測定した。
図29のアンテナ装置502は、
図28の短絡部材232aが放射部212aのメアンダ形状部内に配置されていないことを除き、
図28のアンテナ装置201aと同一の構成を有する。また、
図30のアンテナ装置503は、
図28の短絡部材短絡部材231a及び232aが放射部212aのメアンダ形状部内に配置されていないことを除き、
図28のアンテナ装置201aと同一の構成を有する。
【0200】
図31に、アンテナ装置201a、アンテナ装置502及びアンテナ装置503の各VSWR特性の測定結果を示す。
図25において、「短絡部材有り」のグラフがアンテナ装置201aの測定結果であり、「短絡部材無し」のグラフがアンテナ装置503の測定結果であり、「第2の短絡部材無し」のグラフがアンテナ装置502の測定結果である。なお、この測定時においては、誘電体層402の厚さdは5mm、比誘電率εrは1であった。
【0201】
図31に示すように、先ず、短絡部材231aを配置し、短絡を生じさせることにより、地上波デジタルテレビ帯域(470MHz〜770MHz)のうち、低周波帯域においてVSWRを3.5以下に抑えられることが分かる。
【0202】
更に、短絡部材232aを配置し、短絡を生じさせることにより、地上波デジタルテレビ帯域(470MHz〜770MHz)のうち、高周波帯域においてもVSWRを3.5以下に抑えられることが分かる。
【0203】
(誘電体の厚さによる効果)
図32に、誘電体層402の厚さdを変化させ、各厚さdにおけるアンテナ装置401のVSWR特性の測定結果を示す。ここでは、
図28のアンテナ装置201aをアンテナ装置401として用いている。
【0204】
また、厚さdとして、d=無限大(∞)、d=5mm、d=2mm、d=0mm、の4条件を用意した。
【0205】
図32に示すように、d=無限大、d=5mmの2つ条件において、420MHz〜920MHzの帯域においてVSWRを3.1以下に抑えられることが分かる。
【0206】
また、d=無限大、d=5mm、d=2mmの3つ条件において、420MHz〜870MHzの帯域においてVSWRを3.5以下に抑えられることが分かる。
【0207】
このことから、アンテナ装置201と金属板403との間の距離を2mm以上とすれば、420MHz〜870MHzの帯域において、VSWRを3.5以下に抑えられることができるといえる。
【0208】
図33は、
図28に示したアンテナ装置201aの550MHz帯域における放射パターンを示すグラフである。(a)は、xy面における放射パターン、(b)は、yz面における放射パターン、(c)は、zx面における放射パターンをそれぞれ示している。このときの誘電体層402の厚さdは5mm、比誘電率ε
rは1であった。
【0209】
図33によれば、xy面における放射パターン、yz面における放射パターン、zx面における放射パターンのいずれにおいても、放射無指向性が実現されていることが分かる。
【0210】
(アンテナ装置の搭載場所の具体例)
上述したように、地上波デジタル放送用のアンテナ装置が実用化されれば、受信端末としては、携帯電話の他、カーナビ、パソコン、専用ポータブルテレビなど多種多様な受信機に搭載することができる。
【0211】
特に、このようなアンテナ装置を車に搭載することを考えた場合、本発明のアンテナ装置は非常に有効である。なぜなら、
図34に示すように、車601にアンテナ装置を搭載しようとすれば、たとえば、ルーフトップ611、バンパー612、リアウィンドウ613、ドア614、サイドミラー615、トランク616、ボンネット617といった、金属板である導体部材を搭載場所とすることが必須となるからである。
【0212】
本発明のアンテナ装置によれば、このような搭載場所であっても、導体部材からの影響を考慮し、アンテナ装置を搭載することができる。
【0213】
〔実施の形態4〕
本発明のさらに他の実施の形態を図面に基づいて以下に説明する。
【0214】
以上の実施の形態に示した各アンテナ装置は、例えば
図34に示したように、自動車の外部、すなわち車体の外面に配置することができる。また、上記の各アンテナ装置は、
図35〜
図39に示すように、自動車の内部に配置することができる。なお、
図35〜
図39において、アンテナ装置はアンテナ装置701として示している。アンテナ装置701は、上記の各実施の形態において示したいずれかのアンテナ装置を指す。また、アンテナ装置701は、自動車の車体に配置されることにより、自動車のアンテナシステムを構成する。
【0215】
図35には、アンテナ装置701が自動車の車内におけるルーフの裏(車内の天井)の車幅方向の中央付近に配置された状態を示している。
図36には、アンテナ装置701が自動車の車内におけるルーフの裏の窓際付近に配置された状態を示している。
図37には、アンテナ装置701が自動車の車内におけるセンターピラーに配置された状態を示している。
図38には、アンテナ装置701が自動車の車内におけるリアピラーに配置された状態を示している。
図39には、アンテナ装置701が自動車の車内におけるフロントピラーおよびダッシュボードに配置された状態を示している。
【0216】
図35〜
図39に示したアンテナ装置701の配置において、アンテナ装置701は、車内の内装材の外面に配置されていてもよく、あるいは内装材の内側、すなわち、車体の金属材と内装材との間に配置されていてもよい。
【0217】
アンテナ装置701は、車内の内装材の外面に配置される場合、例えば接着剤によって内装材の表面に貼着される。この場合、アンテナ装置701と車体の金属材との間には、内装材の存在によって、2mm以上の距離を容易に確保できる。なお、内装材の外面および表面は、内装材の外側、すなわち内装材の車体部材(ボディ)と対向する面の反対側の面である。
【0218】
また、アンテナ装置701は、内装材の内側、すなわち車体部材と内装材との間に配置される場合、例えば
図40に示すような配置となる。
図40は、アンテナ装置701をピラーにおける金属材802と内装材803との間に配置した場合のピラーの横断面図である。
【0219】
図40に示すように、ピラー810は、導体である金属材802と合成樹脂からなる内装材803とを有し、これら金属材802と内装材803との間は空間部となっている。金属材802は円弧状の断面形状を有し、内装材802は直線状あるいは円弧状の断面形状を有する。アンテナ装置701は、上記空間部において、内装材803の内面803aに貼着されている。また、アンテナ装置701における金属材802側の面と金属材802の内面との最短の離間距離Lは、2mm以上となっている。
【0220】
内装材803に対するアンテナ装置701の配置構造をさらに詳細に示せば
図41の(a)(b)のとおりである。(a)は、アンテナ装置701を車内の内装材803の内面803aに貼着する直前の状態を示す斜視図、(b)は、アンテナ装置701を車内の内装材803の内面803aに貼着した状態を示す斜視図である。
図41の(b)に示すように、アンテナ装置701は、可撓性を備えているので、内装材803の内面803aに沿った形状となり、内装材803に容易に貼着することができる。
【0221】
ピラーに限らず、車体の金属材802と内装材803とを有する自動車の車体において、車内および車体外面にアンテナ装置701を配置する形態は複数存在する。ここで、車体の金属材802および内装材803に対するアンテナ装置701の配置形態をまとめると、
図42〜
図45に示すようになる。
【0222】
図42は、自動車の車内において内装材803の外面にアンテナ装置701が配置されている状態を示す縦断面図である。
図43は、自動車の車内において内装材803の内面803aにアンテナ装置701が配置されている状態を示す縦断面図である。
図44は、自動車の車内において、車体の金属材802の内面にアンテナ装置701が配置されている状態を示す縦断面図である。
図45は、自動車の車外において、車体の金属材802の外面にアンテナ装置701が配置されている状態を示す縦断面図である。
【0223】
図42〜
図45の例において、アンテナ装置701は、アンテナ装置701における放電素子702の両面が例えばPETからなる誘電体層711としての誘電性フィルムにてコーディングされて場合を示している。この場合、アンテナ装置701は誘電体層711を含んだ構成と見なすことができる。このように、アンテナ装置701の放電素子702が誘電体層711にて被覆された構成では、誘電体層711によって放電素子702の防錆機能が得られる。また、誘電体層711の厚みを所定厚さ以上(2mm以上)に設定しておけば、放電素子702を金属材802の表面に配置する場合に、誘電体層711によって放電素子702と金属材802との間に、所定の距離(2mm以上)を確保することができる。
【0224】
なお、放電素子702と金属材802との間に所定の距離(2mm以上)を確保する観点のみからでは、
図42の構成および
図43の構成では、放電素子702の両側の誘電体層711を省くことができる。また、
図44の構成では、放電素子702の内装材803側の誘電体層711を省くことができ、
図45の構成では、放電素子702の金属材802側とは反対側の誘電体層711を省くことができる。
【0225】
上記のように、本実施の形態では、アンテナ装置701を自動車の車内に配置する構成について示している。このように、アンテナ装置701を自動車の車内に配置した構成では、例えば複数のアンテナ装置701を自動車に配置する場合に、アンテナ装置701の配置によって自動車の外観が害される事態を防止することができる。
【0226】
また、アンテナ装置701を自動車の車内に配置する場合には、アンテナ装置701を、窓やルーフの開口部など、車内に通じる車体の開口部から、一定距離D以内の範囲に配置するのが好ましい。上記の一定距離Dは、アンテナ装置701の使用帯域の周波数における最も長い波長(λ)の1λであり、さらに好ましくは1/2λである。
【0227】
図46は、自動車901の上記開口部である窓903からの上記一定距離Dの範囲を示す車体902の要部の横断面図である。
図46において、上記一定距離Dの範囲は網目によって示される領域である。
【0228】
上記のように、アンテナ装置701を車内に通じる車体の開口部から一定距離D以内の範囲に配置した場合、アンテナ装置701は良好な電界強度での受信状態とすることができる。特に、地上波デジタル放送の電波は、車内に対して横方向から入射する。したがって、アンテナ装置701は、車体側面の窓に対して上記一定距離Dの範囲内に配置した場合に、地上波デジタル放送に対して良好な受信状態が得られる。
【0229】
〔実施の形態5〕
本発明のさらに他の実施の形態を図面に基づいて以下に説明する。
本実施の形態のアンテナシステムは、以上の各実施の形態に示したアンテナ装置701のうち、複数のアンテナ装置701をダイバシティ構成として使用している。本実施の形態において、アンテナシステムに使用する複数のアンテナ装置701は、全て同一構成のもの、互いに構成が異なるもの、あるいは少なくとも一つが異なる構成のもののいずれであってもよい。
【0230】
アンテナシステムのダイバシティ方式としては、一般にアンテナ選択方式と最大比合成方式とが知られている。本実施の形態のアンテナシステムは、これらのうちのいずれであってもよい。
【0231】
図47は、本実施の形態のアンテナシステム703の概略の構成を示すブロック図である。
図47に示すように、アンテナシステム703は例えば4個のアンテナ装置701を備える。なお、アンテナ装置701の数は4個に限定されず、複数個であればよい。本実施の形態において、アンテナシステム703は最大比合成方式となっている。したがって、各アンテナ装置701は合成器705に接続されている。合成器705は各アンテナ装置701からの出力信号を合成して取り出し、例えばチューナー706に供給する。
【0232】
アンテナシステム703において、例えば4個のアンテナ装置701を同一平面上に配置してダイバシティ構成とする場合、それらアンテナ装置701は、例えば
図48の(a)〜(d)に示す配置とすることができる。(a)は、アンテナ装置701を基準となる第1位置に配置した状態、(b)は、アンテナ装置701を第1位置から時計回りに90度回転(y軸周りに90度回転)して第2位置に配置した状態、(c)は、アンテナ装置701を第1位置から時計回りに180度回転(y軸周りに180度回転)して第3位置に配置した状態、(d)は、アンテナ装置701を第1位置から時計回りに270度回転(y軸周りに270度回転)して第4位置に配置した状態をそれぞれ示している。
【0233】
アンテナ装置701を上記第1位置に配置した状態の550MHz帯域におけるアンテナ装置701のxy面、yz面およびzy面における放射パターンは、
図49に示すものとなる。(a)は、アンテナ装置701のxy面における放射パターンを示すグラフ、(b)は、アンテナ装置701のyz面における放射パターンを示すグラフ、(c)は、アンテナ装置701のzy面における放射パターンを示すグラフである。
【0234】
アンテナ装置701を上記第2位置に配置した状態の550MHz帯域におけるアンテナ装置701のxy面、yz面およびzy面における放射パターンは、
図50に示すものとなる。(a)は、アンテナ装置701のxy面における放射パターンを示すグラフ、(b)は、アンテナ装置701のyz面における放射パターンを示すグラフ、(c)は、アンテナ装置701のzy面における放射パターンを示すグラフである。
【0235】
アンテナ装置701を上記第3位置に配置した状態の550MHz帯域におけるアンテナ装置701のxy面、yz面およびzy面における放射パターンは、
図51に示すものとなる。(a)は、アンテナ装置701のxy面における放射パターンを示すグラフ、(b)は、アンテナ装置701のyz面における放射パターンを示すグラフ、(c)は、アンテナ装置701のzy面における放射パターンを示すグラフである。
【0236】
アンテナ装置701を上記第4位置に配置した状態の550MHz帯域におけるアンテナ装置701のxy面、yz面およびzy面における放射パターンは、
図52に示すものとなる。(a)は、アンテナ装置701のxy面における放射パターンを示すグラフ、(b)は、アンテナ装置701のyz面における放射パターンを示すグラフ、(c)は、アンテナ装置701のzy面における放射パターンを示すグラフである。
【0237】
したがって、第1位置および第2位置のアンテナ装置701によりダイバシティを行う場合、アンテナシステム703の合成器705からは、550MHz帯域のアンテナ装置701のxy面、yz面およびzy面における放射パターンとして、
図53に示すものが得られる。(a)は、第1位置および第2位置のアンテナ装置701によるxy面における放射パターンを示すグラフ、(b)は、第1位置および第2位置のアンテナ装置701によるyz面における放射パターンを示すグラフ、(c)は、第1位置および第2位置のアンテナ装置701によるzy面における放射パターンを示すグラフである。
【0238】
また、第1位置から第3位置のアンテナ装置701によりダイバシティを行う場合、アンテナシステム703の合成器705からは、550MHz帯域のアンテナ装置701のxy面、yz面およびzy面における放射パターンとして、
図54に示すものが得られる。(a)は、第1位置から第3位置のアンテナ装置701によるxy面における放射パターンを示すグラフ、(b)は、第1位置から第3位置のアンテナ装置701によるyz面における放射パターンを示すグラフ、(c)は、第1位置から第3位置のアンテナ装置701によるzy面における放射パターンを示すグラフである。
【0239】
さらに、第1位置から第4位置のアンテナ装置701によりダイバシティを行う場合、アンテナシステム703の合成器705からは、550MHz帯域のアンテナ装置701のxy面、yz面およびzy面における放射パターンとして、
図55に示すものが得られる。(a)は、第1位置から第4位置のアンテナ装置701によるxy面における放射パターンを示すグラフ、(b)は、第1位置から第4位置のアンテナ装置701によるyz面における放射パターンを示すグラフ、(c)は、第1位置から第4位置のアンテナ装置701によるzy面における放射パターンを示すグラフである。
【0240】
図55に示すように、第1位置から第4位置のアンテナ装置701によりダイバシティを行う場合には、アンテナシステム703は、各アンテナ装置701を自動車901の車体902に配置した場合であっても、x,y,zの各軸方向において良好かつ均一な利得を得ることができる。
【0241】
また、アンテナシステム703において、例えば4個のアンテナ装置701を互いにx軸周りに回転させた状態に配置してダイバシティ構成とする場合、それらアンテナ装置701は、例えば
図56の(a)〜(d)に示す配置とすることができる。(a)は、アンテナ装置701を基準となる第1位置に配置した状態、(b)は、アンテナ装置701を第1位置からx軸周りに90度回転して第2位置に配置した状態、(c)は、アンテナ装置701を第1位置からx軸周りに180度回転して第3位置に配置した状態、(d)は、アンテナ装置701を第1位置からx軸周りに270度回転して第4位置に配置した状態をそれぞれ示している。
【0242】
さらに、アンテナシステム703において、例えば4個のアンテナ装置701を互いにz軸周りに回転させた状態に配置してダイバシティ構成とする場合、それらアンテナ装置701は、例えば
図57の(a)〜(d)に示す配置とすることができる。(a)は、アンテナ装置701を基準となる第1位置に配置した状態、(b)は、アンテナ装置701を第1位置からz軸周りに90度回転して第2位置に配置した状態、(c)は、アンテナ装置701を第1位置からz軸周りに180度回転して第3位置に配置した状態、(d)は、アンテナ装置701を第1位置からz軸周りに270度回転して第4位置に配置した状態をそれぞれ示している。
【0243】
なお、
図48から
図57の例では、複数のアンテナ装置701を備えたアンテナシステム703において、各アンテナ装置701を互いに異なる向きに配置してダイバシティを行う構成について示している。しかしながら、これに限定されず、複数のアンテナ装置701を同一の方向に配置した状態であっても、利得の改善効果は得られる。
【0244】
なお、アンテナシステム703において、複数のアンテナ装置701を互いにx軸周りまたはz軸周りに回転させて配置する場合、それらアンテナ装置701は、例えば
図58に示すように、自動車901のバンパーの異なる角度を有する面に配置することができる。
図58は、
図47に示したアンテナシステム703において、4個のアンテナ装置701を自動車901のバンパーの異なる角度を有する面に配置した状態を示す斜視図である。
【0245】
次に、複数のアンテナ装置701を備えたアンテナシステム703において、自動車901の車体902に対する各アンテナ装置701の他の配置例(搭載例)について説明する。
【0246】
図59は、アンテナシステム703において、複数のアンテナ装置701を自動車901の車体902の外面に配置した状態を示す斜視図である。詳細には、(a)は、アンテナ装置701が自動車901のルーフトップ、ボンネットおよびフロントバンパーに配置された状態を示す斜視図である。(b)は、アンテナ装置701が自動車901のルーフトップおよびリアバンパーに配置された状態を示す斜視図である。なお、アンテナシステム703において、アンテナ装置701少なくとも4個が配置されていれば、x,y,zの各軸方向において所望の利得を得ることができる。また、アンテナ装置701の車体902の外面での配置位置としては、リアウイング、ドア、サイドミラーおおよびトランクなどを挙げることができる。
【0247】
図60は、アンテナシステム703において、複数のアンテナ装置701を自動車901の車内に配置した状態を示す斜視図である。詳細には、(a)は、アンテナ装置701が自動車901のルーフの裏(車内の天井)の2箇所に配置された状態を示す斜視図である。(b)は、アンテナ装置701が車内におけるルーフの窓際の2箇所に配置された状態を示す斜視図である。
【0248】
図61は、アンテナシステム703において、複数のアンテナ装置701を自動車901の車内の
図60に示した位置とは異なる位置に配置した状態を示す斜視図である。詳細には、(a)は、アンテナ装置701が自動車901の車内のセンターピラーに配置された状態を示す斜視図である。(b)は、アンテナ装置701が自動車901の車内のリアピラーに配置された状態を示す斜視図である。(c)は、アンテナ装置701が自動車901の車内のフロントピラーおよびダッシュボードに配置された状態を示す斜視図である。
【0249】
アンテナシステム703において、ダイバシティを行う場合の複数のアンテナ装置701の好適な配置例としては、上記の例の他、次のものを挙げることができる。
【0250】
図62は、
図47に示したアンテナシステム703において、自動車901の車体外面であって、ルーフトップに4個のアンテナ装置701を配置した状態を示す斜視図である。この場合、4個のアンテナ装置701は、
図48に示したように、第1位置〜第4位置に配置してもよい。なお、アンテナシステム703において、ダイバシティを行う場合のアンテナ装置701の個数は、4個に限定されることなく、2個以上かつ4個以下とするのが好ましい。下限を2個としたのは、ダイバシティを行うためには2個以上のアンテナ装置701が必要であることによる。また、上限を4個としたのは、4個を超えるアンテナ装置701を配置しても、4個のアンテナ装置701を配置した場合と比較して、ダイバシティ構成による効果の向上が得難いためである。
【0251】
図63は、
図47に示したアンテナシステム703において、自動車901の車体外面であって、ルーフトップと左右のフロントピラーに合計3個のアンテナ装置701を配置した状態を示す斜視図である。なお、アンテナ装置701の同様の配置として、ルーフトップ(例えばリア側)と左右のリアピラーに合計3アンテナ装置701を配置した状態としてもよい。
【0252】
図64は、
図47に示したアンテナシステム703において、自動車901の車体外面であって、ルーフトップ、左右のフロントピラーおよび左右のリアピラーのうちのいずれかに、2〜4個のアンテナ装置を分散させて配置する場合の配置状態の一例を示す斜視図である。
【0253】
図65は、
図47に示したアンテナシステム703において、自動車901の車内の窓際に複数のアンテナ装置701を配置した状態を示す斜視図である。詳細には、(a)は、ルーフの窓付近のルーフ裏面位置に、複数のアンテナ装置701を配置した状態を示す斜視図、(b)は、車体側面の窓付近のルーフ裏面位置に、複数のアンテナ装置701を配置した状態を示す斜視図である。なお、アンテナシステム703では、(a)に示したアンテナ装置701と(b)に示したアンテナ装置701とを織り交ぜて2〜4個のアンテナ装置701を備え、それらアンテナ装置701によりダイバシティを行う構成であってもよい。
【0254】
図66は、
図47に示したアンテナシステム703において、自動車901の車内のピラーに複数のアンテナ装置701を配置した状態を示す斜視図である。詳細には、(a)は、左右のリアピラーのそれぞれにアンテナ装置701を配置した状態を示す斜視図、(b)は、センターピラーおよびフロントピラーのそれぞれにアンテナ装置701を配置した状態を示す斜視図である。なお、アンテナシステム703では、(a)に示したアンテナ装置701と(b)に示したアンテナ装置701とを織り交ぜて2〜4個のアンテナ装置701を備え、それらアンテナ装置701によりダイバシティを行う構成であってもよい。
【0255】
図67は、
図47に示したアンテナシステム703において、自動車901の車内におけるルーフの裏およびセンターピラーに複数のアンテナ装置701を配置した状態を示す斜視図である。詳細には、(a)は、ルーフの裏における車幅方向の中央付近にアンテナ装置701を配置した状態を示す斜視図、(b)は、ルーフの裏における窓際付近およびセンターピラーのそれぞれにアンテナ装置701を配置した状態を示す斜視図である。なお、アンテナシステム703では、(a)に示したアンテナ装置701と(b)に示したアンテナ装置701とを織り交ぜて2〜4個のアンテナ装置701を備え、それらアンテナ装置701によりダイバシティを行う構成であってもよい。
【0256】
図68は、
図47に示したアンテナシステム703において、自動車901の車内におけるルーフの裏の窓際付近、センターピラーおよびダッシュボードのそれぞれにアンテナ装置701を配置した状態を示す斜視図である。アンテナシステム703では、各位置のアンテナ装置701を織り交ぜて2〜4個のアンテナ装置701を備え、それらアンテナ装置701によりダイバシティを行う構成となる。
【0257】
図69は、
図47に示したアンテナシステム703において、自動車901の車体902の外面および自動車901の車内(車体902の内面)に配置した複数のアンテナ装置701によってダイバシティを行う場合のアンテナ装置701の配置状態を示す斜視図である。詳細には、アンテナ装置701は、自動車901のルーフトップ、フロントピラー、センターピラーおよびリアピラーのそれぞれに配置されている。このうち、例えばフロントピラー、センターピラーおよびリアピラーのアンテナ装置701は車内に配置され、ルーフトップのアンテナ装置701は車外に配置されている。アンテナシステム703では、車内に配置されたアンテナ装置701と車外に配置されたアンテナ装置701を織り交ぜて、2〜4個のアンテナ装置701によりダイバシティを行う。
【0258】
図69に示したアンテナ装置701の配置では、ダイバシティを構成する一部のアンテナ装置701を車内に配置し、残りのアンテナ装置701を車外に配置している。したがって、車外のアンテナ装置701によって良好な受信状態を確保しながら、全てのアンテナ装置701を車外に配置した場合に生じ易い自動車の外観の低下を抑制することができる。また、車外(車体902の外面)におけるアンテナ装置701の取り付け数が減少する分、車外におけるアンテナ装置701の取り付け位置の自由度を増加させることができる。
【0259】
上記のアンテナ装置において、前記放射素子は、前記2つの根本部の間に挟まれた中間部を更に有し、前記中間部は、少なくとも1回の折り返しパターンからなるメアンダ形状を有する第1の部分と、直線形状または少なくとも1回の折り返しパターンからなるメアンダ形状を有する第2の部分とからなり、前記第1の部分のメアンダ形状の折り返し方向と、前記第2の部分の直線形状の延在する方向またはメアンダ形状の折り返し方向とが、互いに直交するように配置されていることが好ましい。
【0260】
この場合、放射素子の中間部の第1の部分のメアンダ形状の折り返し方向と、その第2の部分の直線形状が延在する方向またはメアンダ形状の折り返し方向とが互いに直交するように配置されているので、低周波帯域側の電波及び高周波帯域側の電波のいずれを送受信する場合であっても、それぞれの電波に関する放射無指向性を向上させることができる。
【0261】
上記のアンテナ装置において、前記放射素子は、前記第1の根本部が、前記放射素子の一方の端から第1の向きに伸びる第1の直線部と、第1の屈曲部を介して前記第1の直線部に連結され、前記第1の屈曲部から前記第1の向きとは逆向きの第2の向きに伸びる第2の直線部とを有し、前記第2の直線部が前記後端直線部となっており、前記第2の根本部が、前記放射素子の他方の端から前記第2の向きに伸びる第3の直線部と、第2の屈曲部を介して前記第3の直線部に連結され、前記第2の屈曲部から前記第1の向きに伸びる第4の直線部とを有し、前記第4の直線部が前記後端直線部となっていることが好ましい。
【0262】
この場合、放射素子の2つの根本部のいずれにおいても、それらの伸びる向きが、給電部を取り囲むようにして、180°回転している。
【0263】
このため、低周波帯域側の電波及び高周波帯域側の電波のいずれを送受信する場合であっても、それぞれの電波に関する高い放射利得を得ることができる。
【0264】
上記のアンテナ装置において、前記放射素子は、前記第1の根本部が、前記放射素子の一方の端から第1の向きに伸びる第1の直線部と、第1の屈曲部を介して前記第1の直線部に連結され、前記第1の屈曲部から前記第1の向きとは逆向きの第2の向きに伸びる第2の直線部と、第2の屈曲部を介して前記第2の直線部に連結され、前記第2の屈曲部から前記第1の向きに伸びる第3の直線部とを有し、前記第3の直線部が前記後端直線部となっており、前記第2の根本部が、前記放射素子の他方の端から前記第2の向きに伸びる第4の直線部と、第3の屈曲部を介して前記第4の直線部に連結され、前記第3の屈曲部から前記第1の向きに伸びる第5の直線部と、第4の屈曲部を介して前記第5の直線部に連結され、前記第3の屈曲部から前記第2の向きに伸びる第6の直線部とを有し、前記第6の直線部が前記後端直線部となっていることが好ましい。
【0265】
この場合、放射素子の2つの根本部のいずれにおいても、それらの伸びる向きが、給電部を取り囲むようにして、360°回転している。
【0266】
このため、低周波帯域側の電波及び高周波帯域側の電波のいずれを送受信する場合であっても、それぞれの電波に関する高い放射利得を得ることができる。
【0267】
上記のアンテナ装置において、前記第1の部分及び前記第2の部分の少なくとも一方は、それぞれのメアンダ形状上に配置された1つまたは複数の短絡部材であって、それぞれのメアンダ形状内において短絡箇所を発生させるための1つまたは複数の短絡部材を有することが好ましい。
【0268】
この場合、それぞれのメアンダ形状内において短絡箇所を発生させるための1つまたは複数の短絡部材を配置する際に、放射素子の共振点が増加するように、短絡部材を配置する位置及び箇所を決定することができる。
【0269】
このため、放射素子の共振点を増加させることができるので、アンテナ装置の使用可能帯域をより拡大することができる。
【0270】
上記のアンテナ装置において、前記放射素子の前記中間部は、前記導電性経路の複数回の折り返しパターンからなるメアンダ形状部を有し、前記メアンダ形状部には、アンテナ装置の使用帯域内におけるVSWR値を低下させるように、前記折り返しパターンにおける異なる2点間を短絡させる短絡部が形成されていることが好ましい。
【0271】
上記の構成によれば、放射素子の中間部におけるメアンダ形状部に、折り返しパターンにおける異なる2点間を短絡させる短絡部を形成することにより、アンテナ装置の使用帯域内におけるVSWR値を低下させるようになっている。これにより、メアンダ形状部に短絡部を形成するという簡単な構成により、使用帯域内のVSWR特性が良好なアンテナ装置を容易に得ることができる。
【0272】
上記のアンテナ装置において、前記短絡部は、前記VSWR値を3.5以下に低下させるように、前記折り返しパターンにおける異なる2点間を短絡することが好ましい。
【0273】
上記の構成によれば、折り返しパターンにおける異なる2点間を短絡部にて短絡するという簡単な構成により、使用帯域内のVSWR値が3.5以下という良好なVSWR特性を有するアンテナ装置を得ることができる。
【0274】
上記のアンテナ装置において、前記放射素子における一方の面の側には誘電体からなる誘電体層を備えていることが好ましい。
【0275】
上記の構成によれば、アンテナ装置は放射素子における一方の面の側には誘電体からなる誘電体層を備えているので、アンテナ装置を例えば自動車の車体などの金属部材上に設ける場合に、誘電体層によって金属部材から悪影響を抑制することができる。これにより、アンテナ装置は、例えば自動車の車体に設けられる場合においても、良好なVSWR特性を維持することができる。
【0276】
上記のアンテナ装置において、前記誘電体の厚さは、2mm以上であることが好ましい。
【0277】
上記の構成によれば、アンテナ装置を導体付近に搭載する場合でも、一部の例外的な帯域を除いて、使用帯域内でVSWR値を3.5以下に抑えることができる。
【0278】
本発明のアンテナシステムは、前記放射素子の前記中間部が、前記導電性経路の複数回の折り返しパターンからなるメアンダ形状部を有し、前記メアンダ形状部には、アンテナ装置の使用帯域内におけるVSWR値を低下させるように、前記折り返しパターンにおける異なる2点間を短絡させる短絡部が形成されている前記アンテナ装置を備え、前記アンテナ装置が自動車の車内に配置されている構成である。
【0279】
上記の構成によれば、メアンダ形状部に短絡部を形成するという簡単な構成によって使用帯域内のVSWR特性が良好になっているアンテナ装置を自動車に配置するので、自動車においても電波の良好な受信状態を得ることができる。また、アンテナ装置は自動車の車内に配置するので、アンテナ装置の配置によって自動車の外観が害される事態を防止することができる。
【0280】
上記のアンテナシステムにおいて、前記アンテナ装置は、自動車の車体に形成された開口部、例えば窓から前記アンテナ装置の使用帯域における最低周波数の波長の1/2以下の距離の範囲に配置されている構成としてもよい。
【0281】
上記の構成によれば、アンテナ装置は良好な電界強度での受信状態とすることができる。特に、地上波デジタル放送の電波は車内に対して横方向から入射するので、地上波デジタル放送に対して良好な受信状態が得られる。
【0282】
上記のアンテナシステムにおいて、前記アンテナ装置は、自動車のピラーの位置、ルーフトップの裏の位置、ドアの内側の位置、またはダッシュボード上の位置のいずれかに配置されている構成としてもよい。
【0283】
上記の構成によれば、自動車の車内において、アンテナ装置を適切に配置することができる。
【0284】
上記のアンテナシステムは、アンテナ装置と、受信信号出力手段とを備え、前記アンテナ装置は、前記放射素子の前記中間部が、前記導電性経路の複数回の折り返しパターンからなるメアンダ形状部を有し、前記メアンダ形状部には、アンテナ装置の使用帯域内におけるVSWR値を低下させるように、前記折り返しパターンにおける異なる2点間を短絡させる短絡部が形成されており、複数個が自動車の車体に配置され、前記受信信号出力手段は、前記複数個のアンテナ装置と接続され、前記複数個のアンテナ装置によりダイバシティを行う構成である。
【0285】
上記の構成によれば、メアンダ形状部に短絡部を形成するという簡単な構成によって使用帯域内のVSWR特性が良好になっている複数個のアンテナ装置を自動車に配置するので、自動車においても各アンテナ装置において電波の良好な受信状態を得ることができる。また、このようなアンテナ装置の複数個を自動車の車体に配置してダイバシティを行うので、良好なダイバシティが可能となる。
【0286】
上記のアンテナシステムにおいて、前記複数個のアンテナ装置は、少なくとも1個が自動車の車内と車外とにそれぞれ配置されている構成としてもよい。
【0287】
上記の構成によれば、車外のアンテナ装置によって良好な受信状態を確保しながら、全てのアンテナ装置を車外に配置した場合に生じ易い自動車の外観の低下を抑制することができる。また、車外におけるアンテナ装置の取り付け数が減少する分、車外におけるアンテナ装置の取り付け位置の自由度を増加させることができる。
【0288】
上記のアンテナシステムにおいて、前記複数個のアンテナ装置の総数は2個以上かつ4個以下である構成としてもよい。
【0289】
上記の構成によれば、アンテナ装置の総数の下限を2個とすることによってダイバシティが可能となる。また、アンテナ装置の総数の上限を4個とすることによって、ダイバシティ構成による効果の向上が得難いアンテナ装置を無駄に配置する事態を防止することができる。
【0290】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。