(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5688405
(24)【登録日】2015年1月30日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】抗真菌医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4178 20060101AFI20150305BHJP
A61K 47/08 20060101ALI20150305BHJP
A61K 47/34 20060101ALI20150305BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20150305BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20150305BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20150305BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20150305BHJP
【FI】
A61K31/4178
A61K47/08
A61K47/34
A61P31/10
A61K9/08
A61K47/10
A61K47/14
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-504266(P2012-504266)
(86)(22)【出願日】2010年4月9日
(65)【公表番号】特表2012-523409(P2012-523409A)
(43)【公表日】2012年10月4日
(86)【国際出願番号】JP2010056881
(87)【国際公開番号】WO2010117089
(87)【国際公開日】20101014
【審査請求日】2013年3月14日
(31)【優先権主張番号】特願2009-111551(P2009-111551)
(32)【優先日】2009年4月9日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2009-111552(P2009-111552)
(32)【優先日】2009年4月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507029007
【氏名又は名称】株式会社ポーラファルマ
(73)【特許権者】
【識別番号】000232623
【氏名又は名称】日本農薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100090516
【弁理士】
【氏名又は名称】松倉 秀実
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 武司
(74)【代理人】
【識別番号】100151596
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】小林 浩一
(72)【発明者】
【氏名】小杉 英子
(72)【発明者】
【氏名】久保田 信雄
【審査官】
田村 直寛
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−193755(JP,A)
【文献】
国際公開第03/105841(WO,A1)
【文献】
国際公開第2009/031643(WO,A1)
【文献】
特表2012−518009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
A61K 9/00
A61K 47/00
A61K 8/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)下記一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩を医薬組成物全量に対して5〜15質量%
、
2)次の群から選ばれる
1種又は2種以上:
ポリオキシエチレンアルキル(炭素数8〜30)エーテルを医薬組成物全量に対して1〜10質量%
、ポリオキシエチレンアルケニル(炭素数8〜30)エーテルを医薬組成物全量に対して1〜10質量%、
3)炭酸ジエステル、芳香族アルコール及び二塩基酸(但し、炭酸を除く)のジエステルから選択される1種又は2種以上を医薬組成物全量に対して1〜30質量%
を含有する、外用医薬組成物。
【化1】
(但し、式中R
1、R
2はそれぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子を表し、R
1、R
2の少なくとも一方はハロゲン原子である。)
【請求項2】
更に、アセトンを医薬組成物全量に対して1〜30質量%含有する、請求項1に記載の外用医薬組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)に表される化合物は、ルリコナゾールである、請求項1
又は2に記載の外用医薬組成物。
【化2】
【請求項4】
次に示す性状を有する、請求項1〜3の何れか一項に記載の外用医薬組成物。
1)一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩に立体異性体が存在する場合、60℃3週間の保存条件において、生成する当該化合物及び/又はその塩の立体異性体の量は、保存当初の当該化合物及び/又はその塩の全質量に対して1質量%以下である。
2)製造直後20℃に恒温にした場合に透明な液状を呈する。
3)製造後5℃に2週間保存した場合に結晶を析出しない。
【請求項5】
爪白癬治療用の薬剤である、請求項1〜4の何れか1項に記載の外用医薬組成物。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の外用医薬組成物の製造方法であって、
一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩と溶媒の一部とを混合し、
アセトン、ポリオキシエチレンアルキル(炭素数8〜30)エーテル及びポリオキシエチレンアルケニル(炭素数8〜30)エーテル以外の成分を加え、
加温条件下、アセトン、ポリオキシエチレンアルキル(炭素数8〜30)エーテル及びポリオキシエチレンアルケニル(炭素数8〜30)エーテルから選ばれる1種又は2種以上を加える、
工程を含む、外用医薬組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬組成物に関し、詳細には真菌症の治療に有用な抗真菌外用医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般式(1)に表される化合物は、例えば、ルリコナゾールに代表されるように、優れた抗真菌活性を有しており、これまで外用投与では治療不可能とされてきた爪真菌症の治療にも応用可能性が指摘されている(例えば、特許文献1を参照)。しかしながら、この様な爪真菌症の治療用製剤とする場合、一般式(1)に表される化合物の製剤中での可溶化状態の含有量を更に高めることが望まれている。特に爪白癬症の治療用製剤においては、通常の皮膚真菌症の治療に用いる製剤の2倍以上の、具体的には5質量%以上のルリコナゾールに代表される一般式(1)に表される化合物を可溶化することが望まれ、高濃度の一般式(1)に表される化合物を可溶化し製剤化する為の溶媒の開発が望まれている。しかしながら、その結晶性の良さから、かかる化合物を高濃度に含有する製剤を作るために用いることの出来る溶媒はごく限られたものにならざるを得ない状況が存した。即ち、溶媒の種類によっては、5℃等の低温条件で結晶を析出したり、塗布時に結晶を析出するなどの不都合を生じる場合が存した。
【0003】
加えて、ルリコナゾール等の溶液においては、立体異性体を生じやすい状況が存し、この様な立体異性体が生じるのを防ぐ溶媒としては、クロタミトン、炭酸プロピレン及びN−メチル−2−ピロリドンが知られるのみであった(例えば、特許文献2を参照)。しかしながら、かかる溶媒においても、溶媒が元来持っている抗炎症作用などの薬効によって、配合が制限される場合が存し、これらに代わる新たなルリコナゾール等の製剤用の溶媒の開発が望まれていた。
【0004】
【化1】
【0005】
(但し、式中R
1、R
2はそれぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子を表し、R
1、R
2の少なくとも一方はハロゲン原子である。)
【0006】
【化2】
【0007】
即ち、ルリコナゾール等を5質量%以上含有する外用医薬組成物において、クロタミトン、炭酸プロピレン及びN−メチル−2−ピロリドンの溶剤特性(ルリコナゾール等の可溶化・立体安定化特性)に依存する以外の手段で、次の性状を有する製剤を可能ならしめる溶媒の開発が望まれていたとも言える。
1)60℃3週間の保存条件において、生成するルリコナゾール等の立体異性体の量は、保存当初のルリコナゾール等の全質量に対して1質量%以下である。
2)製造直後20℃に恒温にした場合に透明な液状を呈する。
3)製造後5℃に2週間保存した場合に結晶を析出しない。
【0008】
一方、抗真菌外用医薬、取り分け爪白癬症用の外用医薬において、アセトンを用いることは既に行われることである(例えば、特許文献3、特許文献4を参照)が、前記ルリコナゾール等を含有する外用医薬組成物において、ルリコナゾール等の立体構造を維持しつつ、ルリコナゾール等を安定に可溶化する溶媒として働くことは全く知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO/2007/102241
【特許文献2】WO/2007/102242
【特許文献3】特開平08−291049号公報
【特許文献4】特表2009−511553号公報
【特許文献5】特開2001−316247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、ルリコナゾール等の一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩を5質量%以上含有する外用医薬組成物において、クロタミトン、炭酸プロピレン及びN−メチル−2−ピロリドンの溶剤特性(一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩の可溶化・立体安定化特性)に依存する以外の手段で、次の2)及び3)の性状を有する製剤を提供することを課題とする。また、一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩が立体異性体を有する場合、次の1)〜3)の性状を有する製剤を提供することを課題とする。
1)60℃3週間の保存条件において、生成する一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩の立体異性体の量は、保存当初の当該化合物及び/又はその塩の全質量に対して1質量%以下である。
2)製造直後20℃に恒温にした場合に透明な液状を呈する。
3)製造後5℃に2週間保存した場合に結晶を析出しない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような状況に鑑みて、本発明者らは、一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩を5質量%以上含有する外用医薬組成物において、クロタミトン、炭酸プロピレン及びN−メチル−2−ピロリドンの溶剤特性(一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩の可溶化・立体安定化特性)に依存する以外の手段で、安定な溶状を有する製剤を求めて鋭意研究努力を重ねた結果、アセトン及び/又はポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)エーテル(但し、当該アルキル基、アルケニル基の炭素数は8〜30)をクロタミトン、炭酸プロピレン及びN−メチル−2−ピロリドンに代えて用いることにより、この様な製剤が得られることを見いだし、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は、以下に示すとおりである。
【0012】
[1] 1)下記一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩を医薬組成物全量に対して5〜15質量%、及び
2)次の群から選ばれる
1種又は2種以上:アセトンを医薬組成物全量に対して1〜30質量%;ポリオキシエチレンアルキル(炭素数8〜30)エーテルを医薬組成物全量に対して1〜10質量%;及びポリオキシエチレンアルケニル(炭素数8〜30)エーテルを医薬組成物全量に対して1〜10質量%、
を含有する、外用医薬組成物。
【0013】
【化3】
【0014】
(但し、式中R
1、R
2はそれぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子を表し、R
1、R
2の少なくとも一方はハロゲン原子である。)
[2] 前記一般式(1)に表される化合物は、ルリコナゾールである、[1]に記載の外用医薬組成物。
【0015】
【化4】
【0016】
[3] 次に示す性状を有する、[1]又は[2]に記載の外用医薬組成物。
1)一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩に立体異性体が存在する場合、60℃3週間の保存条件において、生成する当該化合物及び/又はその塩の立体異性体の量は、保存当初の当該化合物及び/又はその塩の全質量に対して1質量%以下である。
2)製造直後20℃に恒温にした場合に透明な液状を呈する。
3)製造後5℃に2週間保存した場合に結晶を析出しない。
[4] 更に、炭酸ジエステル、芳香族アルコール及び二塩基酸(但し、炭酸を除く)のジエステルから選択される1種又は2種以上を医薬組成物全量に対して1〜30質量%含有する、[1]〜[3]の何れかに記載の外用医薬組成物。
[5] 爪白癬治療用の薬剤である、[1]〜[4]の何れかに記載の外用医薬組成物。[6] [1]〜[5]の何れかに記載の外用医薬組成物の製造方法であって、
一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩と溶媒の一部とを混合し;
アセトン、ポリオキシエチレンアルキル(炭素数8〜30)エーテル及びポリオキシエチレンアルケニル(炭素数8〜30)エーテル以外の成分を加え;
加温条件下、アセトン、ポリオキシエチレンアルキル(炭素数8〜30)エーテル及びポリオキシエチレンアルケニル(炭素数8〜30)エーテルから選ばれる1種又は2種以上を加える、
工程を含む、外用医薬組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ルリコナゾール等の一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩を5質量%以上含有する外用医薬組成物において、クロタミトン、炭酸プロピレン及びN−メチル−2−ピロリドンの溶剤特性(一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩の可溶化・立体安定化特性)に依存する以外の手段で、次の2)及び3)の性状を有する製剤を提供することができる。また、一般式(1)に表される化合物が立体異性体を有する場合、次の1)〜3)の性状を有する製剤を提供する
。
1)60℃3週間の保存条件において、生成する一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩の立体異性体の量は、保存当初の当該化合物及び/又はその塩の全質量に対して1質量%以下である。
2)製造直後20℃に恒温にした場合に透明な液状を呈する。
3)製造後5℃に2週間保存した場合に結晶を析出しない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<1>本発明の外用医薬組成物の必須成分である一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩
本発明の外用医薬組成物は、ルリコナゾール、ラノコナゾール等の一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩を含有することを特徴とする。ルリコナゾールは、化学名(R)−(−)−(E)−[4−(2,4−ジクロロフェニル)−1,3−ジチオラン−2−イリデン]-1−イミダゾリルアセトニトリル、ラノコナゾールは、化学名(±)−(E)−[4−(2−クロロフェニル)−1,3−ジチオラン−2−イリデン]-1−イミダゾリルアセトニトリルで表される化合物であり、かかる化合物の製造方法は既に知られている(例えば、特開平09−100279号公報など)。
【0019】
本発明の外用医薬組成物は、一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩を、医薬組成物全量に対し、通常5〜15質量%、好ましくは8〜13質量%含有することを特徴とする。ルリコナゾールは結晶性に優れ、乳酸などのヒドロキシカルボン酸を添加し、結晶化を抑制した状態においても、用いた溶媒の種類によっては、5℃等、低温下の保存では1質量%以上の含有において結晶を析出する場合が存する。本発明においては、後記アセトン及び/又はポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)エーテルを含有させた製剤の組合せにおいてこの様な析出を抑制し、その生体利用性、特に爪中への移行を高め、爪白癬症の治療効果を高めている。爪は組織内への移行が困難な器官であり、有効量が移行するためには、医薬組成物全量に対し、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上の含有量である。又、低温での結晶析出抑制の上限から、医薬組成物全量に対し、好ましくは15質量%以下、より好ましくは13質量%以下の含有量である。これらを鑑みれば8〜13質量%程度がより好ましい。
【0020】
上記「その塩」としては、生理的に許容されるものであれば特段の限定はされないが、例えば、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の鉱酸塩、クエン酸塩、蓚酸塩、乳酸塩、酢酸塩等の有機酸塩、メシル酸塩、トシル酸塩等の含硫酸塩が好適に例示できる。安全性、溶解性の面からより好ましくは、塩酸塩である。
【0021】
<2>本発明の外用医薬組成物の必須成分であるアセトン及びポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)エーテル
本発明の外用医薬組成物は、アセトン及び/又はポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)エーテルを必須成分として含有することを特徴とする。アセトンであれば、医薬組成物全量に対して、通常1〜30質量%、好ましくは3〜20質量%、ポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)エーテルとしては、炭素数8〜30のアルキル基又はアルケニル基のものであり、好ましくは炭素数10〜18のアルキル基又はアルケニル基のものであり、その同類のもの1種又は2種以上を、医薬組成物全量に対して、通常1〜10質量%、好ましくは2〜5質量%含有することを特徴とする。かかる成分は、これらのアセトン及び/又はポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)エーテルのうちいずれか1種を含有することができ、2種(アセトン及びポリオキシエチレンアルキルエーテル、又はアセトン及びポリオキシエチレンアルケニルエーテル)を含有することもできる。2種を含有する場合の好ましい含有量は、それぞれの成分の好ましい含有量の和として考えることができる。これはその効果がそれぞれ独立であるためである。
【0022】
前記ポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)エーテルを構成するアルキル基、アルケニル基としては、炭素数8〜30のものであり、炭素数10〜18のものが好ましい。具体的には、ラウリル基、セチル基、イソステアリル基、オレイル基等が特に好適に例示できる。更に、ポリオキシエチレン基におけるオキシエチレンの重合度は、1〜30が好ましく、2〜25がより好ましい。性状としては、1気圧25℃の条件で液体であることが好ましい。具体的なポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)エーテルの例としては、例えば、ポリオキシエチレン(POE)(4.2)ラウリルエーテル、POE(10)セチルエーテル、POE(30)セチルエーテル、POE(10)オレイルエーテル、POE(20)イソステアリルエーテルなどが好適に例示できる。
【0023】
かかる成分は、一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩の溶解状態での立体安定性を損なうことなく、その可溶化状態を、5質量%以上の高濃度域において、5℃付近以下の低温域であっても安定に保つ作用を有する。特に、一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩の含有量が10質量%付近においては、該一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩の質量と同量又はそれ以上の配合を行うことにより、この効果は顕著に表れる。このため、この様な配合条件を充足することが好ましい。この様な条件下においては、本発明の外用医薬組成物は、5℃付近の低温域、20℃付近の室温条件、40℃付近の高温域の広い温度範囲において、2週間、好ましくは1ヶ月以上、より好ましくは3ヶ月以上の保存においても溶状に変化を示さない。立体異性体の生成も殆ど皆無であり、60℃3週間の保存においても保存当初の化合物の全質量に対して1質量%以下である。このため、爪などの吸収性の低い臓器に適用する製剤として好適である。特に、塗布後の蒸散、或いは、溶剤のみの生体への吸収による一般式(1)に表される化合物の濃縮や溶剤構成の変化、接触面の界面効果等により結晶析出することが少ないので、爪中への吸収が阻害されない。かかる効果により、生物利用性が著しく向上する。
【0024】
<3>本発明の外用医薬組成物
本発明の外用医薬組成物は、前記の必須成分を含有し、且つ、通常製剤化のために使用される任意成分の含有を許容される。
この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ
油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類;オレイルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーンに分類されないシリコーン油等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル、ポリオキシエチレンラウリル燐酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEオクチルフェニルエーテル、POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、グルコノラクトン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、ポリプロピレングリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール等の多価アルコール類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;燐酸、クエン酸等のpH調整剤;表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、硫酸バリウム等の粉体類、;表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類;レーキ化されていても良い、赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫
色201号、赤色204号等の有機色素類;ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、糖系紫外線吸収剤、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB
6塩酸塩、ビタミンB
6トリパルミテート、ビタミンB
6ジオクタノエート、ビタミンB
2又はその誘導体、ビタミンB
12、ビタミンB
15又はその誘導体等のビタミンB類;α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類;フェニルエチルアルコール、フェニルプロピルアルコール、ベンジルアルコール等の芳香族アルコール、クロタミトン、N−メチル−2−ピロリドン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等の炭酸アルキレン、炭酸ジエチル、炭酸ジカプリル等の炭酸ジエステル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル等の二塩基酸のジエステル、トリアセチン、サリチル酸エチレングリコール等の溶媒;乳酸、グリコール酸、クエン酸等のヒドロキシ酸、リン酸等の鉱酸等の安定化剤等が好ましく例示できる。
【0025】
この様な任意成分の内、特に好ましいものとしては、炭酸プロピレンのような環状構造を有する、炭酸アルキレン、直鎖の炭化水素基が2つ結合した、炭酸ジカプリルなどの炭酸ジアルキルに代表される炭酸ジエステル、ベンジルアルコールのような芳香族アルコール、及び、アジピン酸、セバシン酸等の二塩基酸(但し、炭酸を除く)のジエステル等から選択される溶媒が好ましく例示できる。
【0026】
本発明の外用医薬組成物としては、炭酸ジアルキル、炭酸アルキレン等の炭酸ジエステル、好ましくは炭酸アルキレン、より好ましくは炭酸プロピレンを、医薬組成物全量に対して、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは2〜8質量%、特に好ましくは3〜5質量%を含有することが安定性を向上させるために好ましい。かかる炭酸ジエステルにおいては、総炭素数は5〜30が好ましく、6〜25がより好ましい。かかる成分は、低温でのルリコナゾール等の可溶化安定性を向上せしめる作用を有し、5℃での2週間、好ましくは4週間以上の保存での結晶析出を抑制し、且つ、高温安定性を向上せしめる作用も有し、60℃での3週間の保存でも立体異性化を防ぎ、立体異性体の生成を1質量%以下に抑える。かかる成分は、ルリコナゾール等と同程度の質量比又は半分質量程度で含有されることが好ましい。炭酸プロピレンは炭酸アルキレンの1種であり、他の炭酸アルキレン、例えば炭酸エチレン、或いは、炭酸ジエステル、例えば、炭酸ジエチル、炭酸ジカプリル等も炭酸プロピレンと同様の効果を有しているので、本願発明の技術的範囲に属する。2種以上を用いる場合には、炭酸ジエステル量を炭酸ジエステル類の総量として読み替えることができる。
【0027】
本発明の外用医薬組成物としては、芳香族アルコール、好ましくは、ベンジルアルコールを、医薬組成物全量に対して、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは、1〜8質量%、特に好ましくは1〜5質量%を含有することが溶解性・安定性を向上させるために好ましい。かかる成分は、製造時に一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩を可溶化させる助剤として有用であり、加えて、低温保存において、一般式(1)で表される化合物及び/又はその塩の結晶析出を抑制する作用を有する。この様な効果は、前記量範囲において、発現される。他の芳香族アルコール、例えば、フェニルエチルアルコール、フェニルプロピルアルコールなども、ベンジルアルコールには及ばないものの、同様の効果を奏し、ベンジルアルコールと同様に取り扱うことができる。即ち、本発明の技術的範囲に属する。
【0028】
本発明の外用医薬組成物としては、二塩基酸のジエステル、好ましくはアジピン酸ジエチル、又は、アジピン酸ジイソプロピルを、医薬組成物全量に対して、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは2〜18質量%、特に好ましくは3〜15質量%を好ましい成分として含有する。前記二塩基酸とは、炭酸を含まず、カルボキシル基を2個有するジカルボン酸の総称を意味する。この様な二塩基酸としては、アジピン酸、酒石酸、コハク酸、セバシン酸などが好適に例示できる。前記二塩基酸ジエステルを構成するエステル部分としては、炭素数1〜20、より好ましくは1〜5の直鎖又は分岐構造を有するアルキル基又はアルケニル基が好ましく例示できる。具体的にはメチル基、エチル基、エトキシエチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソプレニル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、へキシル基、オクチル基、イソオクチル基、デカニル基、ラウリル基、セチル基、ステアリル基、イソステアリル基、オレイル基等が好適に例示できる。かかる成分は、前記量範囲において、ベンジルアルコールなどと溶媒和した一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩を溶解せしめて、均一な溶液系に移行せしめる作用を有する。アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピルには及ばないが、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピルなどの二塩基酸のジエステルにおいて、広範にかかる作用が存することが観察できる。即ち、本発明の技術的範囲に属する。この様な本発明の効果を増強する二塩基酸のジエステルとしては、酸残基がアジピン酸残基、セバシン酸残基、又は、コハク酸残基のものであって、脂肪族基がメチル基、エチル基、エトキシエチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、オクチル基、イソオクチル基、又は、ラウリル基であるものが特に好ましく例示できる。
【0029】
前記炭酸ジエステル、芳香族アルコール、二塩基酸のジエステルは、これらから選ばれる1種を選択することもできるし、2種以上を組み合わせて選択することもできる。量範囲は、それぞれ独立に好ましい量範囲を選択することができるが、これら3種の成分の質量の総和が、外用医薬組成物全量に対して、1〜30質量%、より好ましくは2〜25質量%となるように配合することが好ましい。
【0030】
更に、本発明の外用医薬組成物の安定性と、塗工後の結晶析出の抑制効果を向上させるために、乳酸、グリコール酸、クエン酸等のヒドロキシ酸や、リン酸などの鉱酸等の安定化剤を、医薬組成物全量に対して、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは1〜10質量%含有させることも好ましい。加えて、溶解性・安定性を向上させるために、イソステアリルアルコールのような1気圧25℃で液状を呈する高級アルコールを、好ましくは10〜30質量%、より好ましくは15〜25質量%含有することも好ましい。更に、立体安定性維持効果の存する、クロタミトン、N−メチル−2−ピロリドンを、医薬組成物全量に対して、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは2〜15質量含有させることも好ましい。加えて、溶解性を向上させるために、プロピレングリコールのような多価アルコールを、医薬組成物全量に対して、1〜30質量%、より好ましくは5〜20質量%含有することも好ましい。
【0031】
この様な任意成分と、必須の成分とを用いて、本発明の外用医薬組成物を製造することができる。本発明の外用医薬組成物の製造方法としては、一般式(1)に表される化合物又はその塩に、脂肪族アルコール、芳香族アルコール等の溶媒成分の一部を加えて、溶媒和させ、次いで溶媒和に用いた残余の溶媒を加え可溶化する方法が好ましく例示できる。前記溶媒和・可溶化させるための溶媒としては、脂肪族又は芳香族アルコールが好適に例示でき、アセトンや炭酸ジエステル、二塩基酸のジエステル等を溶解性の向上に用いることが好ましい。この様な可溶化作業には30〜90℃の加温を伴うことが好ましい。前記溶媒和のための溶媒には、溶媒和に用いる溶媒全量の10〜50質量%を充当することが好ましい。斯くの如くの操作を行い、さらに常法に従って処理すれば、本発明の外用医薬組成物を得ることができる。
【0032】
本発明の外用の医薬組成物としては、外用の医薬組成物で使用されている剤形であれば特段の限定無く適用することが出来、例えば、ローション剤、乳液剤、ゲル剤、クリーム剤、エアゾル剤、ネイルエナメル剤、ハイドゲル貼付剤などが好適に例示できる。特に好ましいものはローション剤である。
【0033】
本発明の外用医薬組成物は、ルリコナゾール等の特性を利用し、真菌による疾病の治療又は悪化の予防に用いることが好ましい。真菌による疾病としては、水虫のような足部白癬症、カンジダ、デンプウのような体部白癬症、爪白癬のようなハードケラチン部分の白癬症が例示でき、その効果が顕著なことから、爪白癬のようなハードケラチン部分の処置に用いることが特に好ましい。本発明の外用医薬組成物の効果は爪に特に好適に発現されるが、通常の皮膚真菌症にも及ぶので、本発明の構成を充足する皮膚真菌症に対する外用医薬組成物も本発明の技術的範囲に属する。この様な皮膚真菌症としては、足白癬症や足白癬症の内、かかとなどに現れる角質増殖型の白癬症などが例示できる。上記皮膚真菌症においては、通常の薬剤が効果を奏しにくい角質増殖型の白癬症への適用が本発明の効果が著しく現れるので好ましい。
【0034】
その使用態様は、一日に一回又は数回、疾病の箇所に適量を塗布することが例示でき、かかる処置は連日行われることが好ましい。特に、爪白癬に対しては、通常の製剤では為し得ない量の有効成分であるルリコナゾール等を、爪内に移行せしめることが出来る。これにより、長期間抗真菌剤を飲用することなく、外用のみによって爪白癬を治療することが出来る。又、再発や再感染が爪白癬では大きな問題となっているが、本発明の外用の医薬組成物を、症状鎮静後1〜2週間投与することにより、この様な再発や再感染を防ぐことができる。この様な形態で本発明の外用医薬組成物は予防効果を奏する。
【0035】
上述のとおり、本発明の外用医薬組成物は、次の2)及び3)の性状を有する製剤とすることができる。また、一般式(1)に表される化合物が立体異性体を有する場合、次の1)〜3)の性状を有する製剤とすることができる。
1)60℃3週間の保存条件において、生成する該化合物及び/又はその塩の立体異性体の量は、当初の当該化合物及び/又はその塩の全質量に対して1質量%以下である。
2)製造直後20℃の恒温にした場合に透明な液状を呈する。
3)製造後5℃に2週間保存した場合に結晶を析出しない。
1)に関しては、例えば、製剤を製造後60℃に3週間保存し、目的の化合物及びその光学異性体を分離できる光学活性な固定相を用いて液体クロマトグラフィーによってそれらを光学分割し、得られたチャートの光学異性体のピークの面積により求めることができる。
2)に関しては、例えば、製剤を製造後20℃の恒温に保持し、製剤が恒温となったら肉眼及び/又は顕微鏡下で液状を観察することにより判定できる。白濁、沈殿等を認めない、又は顕微鏡又は顕微鏡下の観察で初めて認める程度の結晶であって、経時的に当該結晶の成長が認められない場合、透明な液状と判定する。(但し、以後、この様な状態を「僅かに結晶析出を認める」と記することもある。)
3)に関しては、例えば、製剤を製造後5℃に2週間保存し、肉眼及び/又は顕微鏡下で観察することにより判定できる。肉眼及び/又は顕微鏡下で結晶の析出を認めない、又は顕微鏡又は顕微鏡下の観察で初めて認める程度の結晶であって、経時的に当該結晶の成長が認められない場合、結晶を析出しないと判定する。(但し、以後、この様な状態を「僅かに結晶析出を認める」と記することもある。)
【0036】
斯くして得られる本発明の外用医薬組成物は、高濃度の一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩を含有しながら、透明の性状を長期間維持する作用に優れる。又、塗布後に結晶が析出するのを抑制しているが故に、該結晶により、臓器への化合物の配向、移行が阻害されることが抑制される。これにより優れた生物利用性を有することとなる。又
、爪のような薬剤配向性の低い臓器にも十分な量が配向するので、爪用の外用医薬組成物として好適である。
【実施例】
【0037】
以下に、実施例を示して本発明について更に詳細に説明を加える。
[実施例1〜7]
下記の表1に示す処方に従って、本発明の外用医薬組成物を作製した。即ち、無水エタノールの一部(10〜30質量%)でルリコナゾールを馴染ませ、無水エタノールの残分に結晶化抑制成分である乳酸を溶解させ、これらを混合し、加温(50℃〜90℃)しながら溶解させた。加温下(80〜90℃)のこのものに、ベンジルアルコール、炭酸プロピレンを順次加えて可溶化したことを確認した上で、アセトンを加え、残余の成分を加えて攪拌混合し、可溶化したことを確認した。その上で、攪拌冷却し外用医薬組成物1〜5を得た。これらのものは20℃に12時間保存し、肉眼及び顕微鏡下の観察においても結晶の析出は認められず、透明な溶液の性状を呈していた。結果を表1に示す。これらの5℃保存での結晶の析出の有無を肉眼及び顕微鏡下の観察した結果、及び製造直後と60℃3週間の保存条件での光学異性体の発生状況も表1に示す。
SE体[(S)-(E)体]の測定及び定量方法は以下の通りである。
HPLC(島津製作所製 LC-9Aシステム、HPLC条件:カラム;CHIRALCEL OD-R 4.6×250mm、カラム温度; 40゜C、移動相;過塩素酸ナトリウムのメタノール/水混液(4:1, v/v)溶液(7→500)、流速;0.56mL/min、検知;295nm)
Z体の測定方法は以下の通りである。
HPLC(島津製作所製 LC-10VPシステム、HPLC条件:カラム;Inertsil ODS-2 4.6×150mm、カラム温度; 40゜C、移動相;1-ウンデカンスルホン酸ナトリウムの水/アセトニトリル/酢酸(100)混液(54:45:1, v/v/v)溶液(13→10000)、流速;1.0mL/min、検知;295nm)
尚、実施例1の炭酸プロピレンをアセトンに置換した実施例6、実施例4の炭酸プロピレンをアセトンに置換した実施例7は、何れも製造後20℃保存1日で不溶分を認めた。
【0038】
【表1】
【0039】
[比較例1]
下記の表2の成分を処理して、実施例1と同様の方法で、比較例1の外用医薬組成物を得た。このものは、製造直後に20℃恒温下、既に結晶析出が認められ、実使用上に課題が存することが判明した。
【0040】
【表2】
【0041】
[実施例8]
下記の表3の成分を処理して、実施例1と同様の方法で、実施例8の外用医薬組成物を得た。このものは、比較例1ほどではないが、製造直後に20℃恒温下、顕微鏡下認識できる程度で僅かに結晶析出が認められた。尚、このものを5℃で保存を行ったところ、1日目で顕微鏡下認識できる程度に僅かに結晶析出を認めた。溶解度に関する限り、二塩基酸のジエステルは炭酸ジエステルと同様の効果を示すことが判明した。
【0042】
【表3】
【0043】
[実施例9]
下記の表4の成分を処理して、実施例9の外用医薬組成物を得た。このものは、製造直後に20℃恒温下、結晶析出は認められなかった。尚、このものを5℃で保存を行ったところ、1日目では外観に変化はなく、4日目で微かに結晶析出を認め、1週間で顕微鏡下認識できる程度に僅かに結晶析出を認めた。これより、安定性の面のみならず、溶解性においても炭酸プロピレンを含有することが好ましいことが判明した。又、ここにおいてプロピレングリコールの添加効果も認められる。
【0044】
【表4】
【0045】
[実施例10〜14及び比較例2]
以下の表5に示す処方に従って、本発明の外用医薬組成物を製造した。即ち、処方成分を70℃に加温し、無水アルコールの一部(10〜30質量%)でルリコナゾールを馴染ませ、無水アルコールの残分に結晶化抑制成分である乳酸を溶解させ、これらを混合し、加温しながら溶解させ、ベンジルアルコール、炭酸プロピレンを順次加えて可溶化したことを確認した。その上で、加温下のこのものに、予め混合しておいたイソステアリルアルコール及び/又はポリオキシエチレンアルキルエーテルを、徐々に加え、溶状を安定化させ、しかる後に残余の成分を順次加え、処方成分を可溶化させた。攪拌冷却して本発明の外用医薬組成物10〜13を得た。これらのものは20℃に12時間保存し、肉眼及び顕微鏡下の観察においても結晶の析出は認められず、透明な溶液の性状を呈していた。結果を表5に示す。これらの5℃保存での結晶の析出の有無を肉眼及び顕微鏡下の観察した結果、及び製造直後と60℃3週間の保存条件での光学異性体の発生状況も表5に示す。光学異性体の定量方法は上記のものと同様である。
尚、実施例10の炭酸プロピレンをエタノールに置換した実施例14は、製造直後に顕微鏡下認識できる程度に僅かに結晶を認め、ポリオキシエチレン(10)セチルエーテルをエタノールに置換した比較例2は、製造直後に既に結晶を認めた。これより、本発明の構成がルリコナゾールを5質量%という高濃度で安定に可溶化する効果を奏していることがわかる。
【0046】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、爪真菌症などの治療に有用な外用医薬組成物に応用できる。