特許第5688511号(P5688511)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5688511タウプロテインキナーゼ1阻害剤としてのピリミドン誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5688511
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】タウプロテインキナーゼ1阻害剤としてのピリミドン誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 413/14 20060101AFI20150305BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20150305BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20150305BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20150305BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20150305BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20150305BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20150305BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20150305BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20150305BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20150305BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20150305BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20150305BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20150305BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20150305BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20150305BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20150305BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20150305BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20150305BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20150305BHJP
   A61P 33/06 20060101ALI20150305BHJP
【FI】
   C07D413/14CSP
   A61K31/5377
   A61P43/00 111
   A61P25/28
   A61P25/00
   A61P25/16
   A61P9/10
   A61P25/14
   A61P25/02
   A61P27/06
   A61P3/10
   A61P3/04
   A61P25/18
   A61P25/24
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61P17/14
   A61P21/02
   A61P17/00
   A61P33/06
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-261020(P2013-261020)
(22)【出願日】2013年12月18日
(62)【分割の表示】特願2012-507487(P2012-507487)の分割
【原出願日】2010年8月11日
(65)【公開番号】特開2014-51532(P2014-51532A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2013年12月20日
(31)【優先権主張番号】特願2009-204095(P2009-204095)
(32)【優先日】2009年8月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002956
【氏名又は名称】田辺三菱製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】酒井 大貴
(72)【発明者】
【氏名】中山 和樹
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 和俊
【審査官】 上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/078837(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/035159(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/035162(WO,A1)
【文献】 特表2008−512347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)によって表される化合物またはその薬学的に許容される塩。
【化1】
[式中、Xは、水素原子を表し;
Yは、水酸基を表し;
R1は、C1〜6アルキル基を表し;および
R2は、
式(iii)によって表される基を表す:
【化2】
[式中、Zは、酸素原子を表し、
R5a、R5b、およびR5dは、水素原子を表し、
R5cは、C1〜6アルキル基によって置換されている1,2,4-オキサジアゾリルによって置換されているフェニル基を表す。]
【請求項2】
(S)-5-ヒドロキシ-1-メチル-2-{2-[4-(5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)フェニル]モルホリン-4-イル}-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オンである請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
請求項1または2いずれか一項に記載の化合物を活性成分として含む、タウプロテインキナーゼ1活性を阻害するための医薬組成物。
【請求項4】
タウプロテインキナーゼ1活性の阻害によって緩和されることが期待される疾患または状態を治療または予防するための、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
タウプロテインキナーゼ1活性の阻害によって緩和されることが期待される疾患または状態が、アルツハイマー病、虚血性脳血管障害、ダウン症候群、孤立性脳アミロイド血管症に起因する脳出血、進行性核上性麻痺、亜急性硬化性全脳炎パーキンソニズム、脳炎後パーキンソニズム、ボクサーの脳症、グアム島パーキンソニズム-認知症複合、レビー小体病、ピック病、大脳皮質基底核変性症、前頭側頭認知症、血管性認知症、外傷性損傷、脳および脊髄外傷、末梢神経障害、網膜症および緑内障、インスリン非依存性糖尿病、肥満、躁うつ病、統合失調症、脱毛症、乳がん、非小細胞肺癌、甲状腺がん、TまたはB細胞白血病、ある種のウイルス誘発性腫瘍、筋萎縮性側索硬化症、マラリア、尋常性天疱瘡、ならびにがん化学療法によって誘発される好中球減少症からなる群から選択される疾患または状態である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
タウプロテインキナーゼ1活性の阻害によって緩和されることが期待される疾患または状態が、インスリン非依存性糖尿病、アルツハイマー病、虚血性脳血管障害、進行性核上性麻痺、ピック病、大脳皮質基底核変性症、前頭側頭認知症、外傷性損傷、脳および脊髄外傷、筋萎縮性側索硬化症、ならびにマラリアからなる群から選択される疾患または状態である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項7】
タウプロテインキナーゼ1活性の阻害によって緩和されることが期待される疾患または状態が、アルツハイマー病である、請求項4に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経変性疾患(例えばアルツハイマー病)などの、タウプロテインキナーゼ1(TPK1、GSK3β:グリコーゲン合成酵素キナーゼ3βとも呼ばれる)の異常な活性によって主に引き起こされる疾患の予防的および/または治療的処置のための医薬の活性成分として有用な化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病は、神経細胞の変性および神経細胞数の減少に起因する著しい大脳皮質の委縮が観測される、進行性の老年性認知症である。病理学的には、多数の老人斑および神経原線維変化が脳内に観測される。患者数は、高齢集団の増加に伴って増加しており、疾患は深刻な社会問題を生じている。様々な仮説が提唱されているが、疾患の原因は未だ解明されていない。原因の早期解決が望まれている。
【0003】
アルツハイマー病の2つの特徴的な病理学的変化の出現の度合いは、知的機能障害の度合いに十分に相関することが知られている。それに伴い、1980年代初期から、2つの病理学的変化の構成要素の分子レベルでの調査を介して疾患の原因を明らかにするための研究が実施されている。老人斑は細胞外に蓄積し、βアミロイドタンパク質が、それらの主な構成要素として解明されている(本明細書では以下「Aβ」と略す:Biochem.Biophys.Res.Commun.、120、885頁(1984年);EMBO J.、4、2757頁(1985年);Proc.Natl.Acad.Sci.USA、82、4245頁(1985年))。他の病理学的変化、すなわち神経原線維変化では、対らせん状細線維(本明細書では以下「PHF」と略す)と呼ばれる二重らせんの線維状物質が細胞内に蓄積し、その主な構成要素として、脳に特異的な微小管関連タンパク質の一種であるタウタンパク質が明らかにされている(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85、4506頁(1988年);Neuron、1、827頁(1988年))。
【0004】
さらに、遺伝的調査に基づいて、プレセニリン1および2が、家族性アルツハイマー病の原因遺伝子として見出されており(Nature、375、754頁(1995年);Science、269、973頁(1995年);Nature.376、775頁(1995年))、プレセニリン1および2の変異体の存在が、Aβの分泌を促進することが明らかになっている(Neuron、17、1005頁(1996年);Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94、2025頁(1997年))。これらの結果から、アルツハイマー病では、何らかの理由に起因してAβが異常に蓄積、凝集し、それがPHFの形成に関与して神経細胞死を引き起こすと考えられる。また、グルタミン酸の細胞外への流出およびその流出に応答するグルタミン酸受容体の活性化は、虚血性脳血管障害によって引き起こされる神経細胞死の初期過程において、重要な因子となり得る可能性があることも予想されている。
【0005】
グルタミン酸受容体の1つであるAMPA受容体を刺激するカイニン酸による処置が、Aβの前駆体としてのアミロイド前駆体タンパク質(本明細書では以下「APP」と略す)のmRNAを増大し(Society for Neuroscience Abstracts、17、1445頁(1991年))、またAPPの代謝を促進することが報告されている(The Journal of Neuroscience、10、2400頁(1990年))。従って、Aβの蓄積は虚血性脳血管障害に起因する細胞死に関与していることが強く示唆されている。Aβの異常な蓄積および凝集が観測される他の疾患としては、例えば、ダウン症候群、孤立性脳アミロイド血管症に起因する脳出血、レビー小体病などが挙げられる。さらに、PHFの蓄積に起因する神経原線維変化を示す疾患としては、例えば、進行性核上性麻痺、亜急性硬化性全脳炎(panencephalitic)パーキンソニズム、脳炎後パーキンソニズム、ボクサーの脳症、グアム島パーキンソニズム-認知症複合、レビー小体病などが挙げられる。
【0006】
タウタンパク質は、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法において48〜65kDaの分子量の複数のバンドを形成するタンパク質群から一般的に構成され、微小管の形成を促進する。アルツハイマー病に罹患している脳内のPHFに組み込まれたタウタンパク質は、通常のタウタンパク質と比較して異常にリン酸化されていることが実証されている(J.Biochem.、99、1807頁(1986年);Proc.Natl.Acad.Sci.USA、83、4913頁(1986年))。異常なリン酸化を触媒する酵素が単離されている。そのタンパク質は、タウプロテインキナーゼ1(本明細書では以下「TPK1」と略す)と名付けられ、その物理化学的特性が解明されている(J.Biol.Chem.、267、10897頁(1992年))。さらに、ラットTPK1のcDNAが、TPK1の部分アミノ酸配列に基づいてラット大脳皮質cDNAライブラリーからクローニングされ、そのヌクレオチド配列が決定され、アミノ酸配列が推定された。その結果、ラットTPK1の一次構造は、ラットGSK-3β(グリコーゲン合成酵素キナーゼ3β、FEBS Lett.、325、167頁(1993年))として公知の酵素の一次構造に相当することが明らかになっている。
【0007】
老人斑の主な構成要素であるAβは神経毒性を有することが報告されている(Science、250、279頁(1990年))。しかし、Aβが細胞死を引き起こす理由についての様々な仮説が提案されており、信頼のおける仮説は未だ確立されていない。Takashimaらは、細胞死が、胎児ラットの海馬の初代培養系のAβ処置によって引き起こされることを観察し、その後TPK1活性がAβ処置によって増大し、Aβによる細胞死がTPK1のアンチセンスによって阻害されることを見出した(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90、7789頁(1993年);EP616032)。
【0008】
前述のことを考慮すると、TPK1活性を阻害する化合物は、Aβの神経毒性およびPHFの形成を抑制し、アルツハイマー病における神経細胞死を阻害し、それによって疾患の進行を停止または遅延できる可能性がある。
【0009】
後述する式(I)によって表される本発明の化合物に構造的に類似の化合物として、国際公開番号WO01/70729、WO03/037888およびWO03/027080に開示の化合物が知られている。一方、6位がフッ素置換ピリミジンによって、または5位が水酸基によって置換されているピリミドン誘導体化合物は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】EP616032
【特許文献2】WO01/70729
【特許文献3】WO03/037888
【特許文献4】WO03/027080
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Biochem.Biophys.Res.Commun.、120、885頁(1984年)
【非特許文献2】EMBO J.、4、2757頁(1985年)
【非特許文献3】Proc.Natl.Acad.Sci.USA、82、4245頁(1985年)
【非特許文献4】Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85、4506頁(1988年)
【非特許文献5】Neuron、1、827頁(1988年)
【非特許文献6】Nature、375、754頁(1995年)
【非特許文献7】Science、269、973頁(1995年)
【非特許文献8】Nature.376、775頁(1995年)
【非特許文献9】Neuron、17、1005頁(1996年)
【非特許文献10】Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94、2025頁(1997年)
【非特許文献11】Society for Neuroscience Abstracts、17、1445頁(1991年)
【非特許文献12】The Journal of Neuroscience、10、2400頁(1990年)
【非特許文献13】J.Biochem.、99、1807頁(1986年)
【非特許文献14】Proc.Natl.Acad.Sci.USA、83、4913頁(1986年)
【非特許文献15】J.Biol.Chem.、267、10897頁(1992年)
【非特許文献16】FEBS Lett.、325、167頁(1993年)
【非特許文献17】Science、250、279頁(1990年)
【非特許文献18】Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90、7789頁(1993年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、高い臨床的有効性を有し、他の医薬と共に投与できる、アルツハイマー病などの疾患の予防的および/または治療的処置のための医薬の活性成分として有用な化合物を提供することである。より具体的には、本目的は、TPK1活性を阻害してAβの神経毒性およびPHFの形成を抑制することによって、ならびに神経細胞死を阻害することによって、高い臨床的効率を有し、他の医薬と共に投与できる、アルツハイマー病などの神経変性疾患の根本的な予防および/または治療を可能にする医薬の活性成分として有用な新規の化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の発明者らは、一般式(I)によって表される化合物の合成、およびそれらのインビトロTPK1阻害活性のスクリーニングを実施した。その結果、本発明者らは、以下の式(I)によって表される新規の化合物が所望の活性を有していることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて達成された。
【0014】
即ち、本発明は、一般式(I)によって表される化合物を提供する。
【化1】
[式中、Xは、水素原子またはフッ素原子を表し;
Yは、水素原子または水酸基を表し、
ただしXが水素原子を表す場合、Yは水酸基であり;
R1は、C1〜6アルキル基を表し;および
R2は、
置換されていてもよいピペラジン-1-イル基、
置換されていてもよいピペリジン-1-イル基、
置換されていてもよいモルホリン-4-イル基、または
式(ii)によって表される基を表す:
【化2】
(式中、R3は、水素原子またはC1〜6アルキル基を表し、
R4は、置換されていてもよいC6〜10アリール基または置換されていてもよいC6〜10アリール-CO-基を表し、
nは、1〜4の整数を表す)]
【0015】
さらに本発明は、上記の化合物[I]またはその薬学的に許容される塩の製造方法に関する。
さらに本発明は、上記の化合物[I]またはその薬学的に許容される塩を活性成分として含有する医薬組成物に関する。
【0016】
さらに本発明は、有効量の上記の化合物[I]またはその薬学的に許容される塩を患者に投与する工程を含む、疾患または状態の治療方法または予防方法に関する。
またさらに本発明は、医薬の製造のための、上記の化合物[I]またはその薬学的に許容される塩の使用に関する。
またさらに本発明は、タウプロテインキナーゼ1活性の阻害のための、上記の化合物[I]またはその薬学的に許容される塩の使用に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の所望の化合物[I]またはその薬学的に許容される塩は、TPK1に対して優れた阻害活性を示す。本発明の化合物を含有する医薬組成物は、TPK1の阻害によって改善されることが期待できる疾患または状態の治療または予防のための医薬における活性成分として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
他に指示がない限り、以下の定義は、本明細書において本発明を説明するために使用される様々な用語の意味および範囲を例示及び定義するために記載される。
用語「C1〜C6アルキル基」は、直鎖または分岐のいずれでもよい1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。C1〜C6アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、n-ヘキシル基およびイソヘキシル基が挙げられる。C1〜C3アルキル-O-基のC1〜C3アルキル部分は、直鎖または分岐のいずれかでもよい1〜3個の炭素原子を有するアルキル基であればよい。C1〜C3アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基およびイソプロピル基が含まれる。
【0019】
用語「ハロゲン原子」は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を意味する。
用語「C6〜C10アリール基」は、6〜10個の炭素原子を有するアリール基を意味する。C6〜C10アリール基の例としては、フェニル基およびナフチル基が挙げられる。環の結合位置は限定されない。
【0020】
用語「置換されていてもよい」は、1つまたは複数の置換基を有していてもよい基を意味する。置換基の数ならびにそれらの種類および置換位置は、特に限定されず、2つ以上の置換基が存在する場合、それらは同じでも異なっていてもよい。
【0021】
R1によって表されるC1〜C6アルキル基としては、メチル基が好ましい。
R3によって表されるC1〜6アルキル基としては、メチル基が好ましい。
R4によって表される、置換されていてもよいC6〜10アリール基のC6〜10アリール基としては、フェニル基が好ましい。
R4によって表される、置換されていてもよいC6〜10アリール-CO-基のC6〜10アリール-CO-基としては、ベンゾイル基が好ましい。
【0022】
R4によって表される、置換されていてもよいC6〜10アリール基または置換されていてもよいC6〜10アリール-CO-基において、C6〜10アリール基またはC6〜10アリール-CO-基は、1つ以上の、好ましくは1つまたは2つの置換基を有することができる。その置換基の例としては、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基およびC1〜C6アルキル-O-基が挙げられる。これらの置換基の中でも、ハロゲン原子、ニトロ基またはC1〜C6アルキル-O-基が好ましい。
記号「n」は、好ましくは1または2を表す。
【0023】
R2の例としては、式(iii)によって表される基が挙げられる。
【化3】
式中、Zは、酸素原子、NR5eまたはCHR5fを表し、
R5a、R5b、R5c、R5d、R5eおよびR5fは、それぞれ独立に、水素原子、C1〜6アルキル基またはC6〜10アリール基を表す。R5a、R5b、R5c、R5d、R5eまたはR5fによって表される上記のC1〜6アルキル基は、ハロゲン原子によって置換されていてもよい。R5a、R5b、R5c、R5d、R5eまたはR5fによって表される上記のC6〜10アリール基は、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、C1〜6アルキル基、C1〜6アルキル-O-基、または5員もしくは6員の単環式複素環式基からなる群から選択される1つまたは2つの置換基を有することができる。これらの置換基の中でも、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、C1〜6アルキル基、または5員もしくは6員の単環式複素環式基が好ましく、その5員または6員の単環式複素環式基は、窒素原子および酸素原子からなる群から選択される1〜3個のヘテロ原子を含有することができ、C1〜6アルキル基によって置換されていてもよい。
【0024】
R5a、R5b、R5c、R5d、R5eまたはR5fによって表されるC6〜10アリール基の置換基としての、5員または6員の単環式複素環式基としては、ピロリジニル基または1,2,4-オキサジアゾリル基が好ましく、1,2,4-オキサジアゾリル基がより好ましい。
R5a、R5bおよびR5fとしては、水素原子が好ましい。
R5cとしては、ハロゲン原子、シアノ基、またはC1〜6アルキル基によって置換されていてもよい5員もしくは6員の単環式複素環式基によって置換されていてもよいC6〜10アリール基が好ましい。
【0025】
R5dとしては、水素原子、またはハロゲン原子によって置換されていてもよいC1〜6アルキル基が好ましい。
R5eとしては、C1〜6アルキル基からなる群から選択される1つまたは2つの置換基を有していてもよいC6〜10アリール基が好ましい。
【0026】
式(I)によって表される化合物の好ましい例としては、R2が式(iii)によって表される基である化合物が挙げられる、式中、
Zは、酸素原子であり、
R5a、R5bおよびR5dは、水素原子であり、
R5cは、ハロゲン原子または5員もしくは6員の単環式複素環式基によって置換されていてもよいC6〜10アリール基である。先に説明した通り、5員または6員の単環式複素環式基は、窒素原子および酸素原子からなる群から選択される1〜3個のヘテロ原子を含有することができ、C1〜6アルキル基によって置換されていてもよい。
【0027】
好ましい例の中でも、式(I)によって表される化合物のより好ましい例としては、Xが水素原子であり、Yが水酸基であり、R5cが、C1〜6アルキル基によって置換されていてもよい1,2,4-オキサジアゾリルによって置換されているフェニル基である化合物が挙げられる。
【0028】
本発明のピリミドン誘導体の好ましい例としては、以下を挙げることができる。
(S)-5'-フルオロ-2-[2-(4-フルオロ-フェニル)-モルホリン-4-イル]-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
(R)-5'-フルオロ-1-メチル-2-(3-メチル-モルホリン-4-イル)-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
(S)-5'-フルオロ-2-(3-フルオロメチル-モルホリン-4-イル)-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
(S)-5'-フルオロ-1-メチル-2-{2-[4-(5-メチル-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル)-フェニル]-モルホリン-4-イル}-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
5'-フルオロ-1-メチル-2-[3-(4-ピロリジン-1-イル-フェニル)-ピペリジン-1-イル]-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
4-[4-(5'-フルオロ-1-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-[4,4']ビピリミジニル-2-イル)-ピペラジン-2-イル]-ベンゾニトリル、
【0029】
2-[4-(2,3-ジメチル-フェニル)-ピペラジン-1-イル]-5'-フルオロ-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
2-[2-(3,4-ジメトキシ-フェニル)-エチルアミノ]-5'-フルオロ-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
2-[2-(4-クロロ-フェニル)-2-オキソ-エチルアミノ]-5'-フルオロ-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、
5'-フルオロ-1-メチル-2-{メチル-[2-(4-ニトロ-フェニル)-エチル]-アミノ}-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン、および
(S)-5-ヒドロキシ-1-メチル-2-{2-[4-(5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)フェニル]モルホリン-4-イル}-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン。
【0030】
上記の化合物のいずれかの薬学的に許容される塩も好ましい。
上記の式(I)によって表される化合物の薬学的に許容される塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸などの無機酸との塩、および酢酸、プロピオン酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸などの有機酸との塩が挙げられる。
【0031】
上記の式(I)によって表される化合物に加えて、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物およびその水和物も使用することができる。上記の式(I)によって表される化合物は、1つ以上の不斉炭素原子を有する場合がある。かかる不斉炭素原子の立体化学に関して、それらは独立に、(R)または(S)立体配置のいずれでもよく、化合物は、光学異性体またはジアステレオ異性体などの立体異性体として存在する場合がある。純粋形態の任意の立体異性体、立体異性体の任意の混合物、ラセミ体などは、本発明の範囲に含まれる。
【0032】
本発明の好ましい化合物の例を、以下に記載の表1に示す。しかし、本発明の範囲は以下の化合物によって限定されない。
【0033】
【表1】
【0034】
上記の式(I)によって表されるピリミドン誘導体は、例えば以下に説明する方法に従って製造することができる。
【0035】
【化4】
【0036】
化合物(II)は、例えば後述の参考例1に記載の通り製造することができる。次いで化合物(II)を、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N-エチルピペリジン、N-メチルモルホリンおよび1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エンなどの塩基の存在下で、1〜100時間にわたって0℃〜200℃の範囲の適切な温度で、窒素もしくはアルゴン雰囲気下または通常の大気下において式(III)またはその塩と反応させて、所望の化合物(I)を得ることができる。
【0037】
反応のための溶媒の例としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、tert-ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール溶媒;ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、イソプロピルエーテルなどのエーテル溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ヘキサメチルリン酸トリアミドなどの非プロトン性極性溶媒、水などが含まれる。一般に、使用される塩基に適した単一の溶媒または2つ以上の溶媒の混合物を使用することができる。
【0038】
TPK1阻害剤は、アルツハイマー病の治療に有効な薬物をもたらすことができ、インビトロでTPK1阻害活性を有する多くの構造的に多様な種類の化合物が既に開示されている。しかし、TPK1阻害剤の新規の構造の設計は、インビトロおよびインビボ活性、キナーゼ選択性、ADME、PK/PDプロファイルならびに物理的特性における複数の改善により、臨床的により有効な化合物をもたらすと期待される。
【0039】
本化合物は、Aβの細胞毒性を抑制することによって、虚血性脳血管障害(Biochem J.359、1頁(2001年))、外傷性頭部損傷(Trends in Molecular Medicine 8、126頁(2002年))、ダウン症候群、脳アミロイド血管症、レビー小体病に起因する脳出血などの治療的処置のための医薬として使用できる可能性もある。さらに本化合物は、進行性核上性麻痺(Acta Neuropathol.104、583頁(2002年))などの神経変性疾患(Current Opinion in Neurobiology 12、275頁(2002年))、亜急性硬化性全脳炎パーキンソニズム、脳炎後パーキンソニズム、ボクサーの脳症、グアム島パーキンソニズム-認知症複合、レビー小体病、ピック病(Acta Neuropathol.104、583頁(2002年))、大脳皮質基底核変性症(Acta Neuropathol.104、583頁(2002年) 前頭側頭認知症(Acta Neuropathol.104、583頁(2002年))、血管性認知症、外傷性損傷、脳および脊髄外傷、末梢神経障害、網膜症および緑内障ならびに筋萎縮性側索硬化症(European Journal of Neuroscience、第22巻、301〜309頁、2005年)、ならびにインスリン非依存性糖尿病(Biochem J.359、1頁(2001年))、肥満、躁うつ病および統合失調症、脱毛症などの他の疾患の治療的処置のための医薬として使用できる可能性がある。
【0040】
さらにTPK1の阻害は、乳がん、非小細胞(non-small)肺癌、甲状腺がん、TまたはB細胞白血病およびある種のウイルス誘発性腫瘍などのがんの治療に有用となり得る。例えば、TPK1の活性な形態は、結腸直腸(colorectral)がん患者の腫瘍において増大することが示されており、結腸直腸がん細胞におけるTPK1の阻害は、p53依存性アポトーシスを活性化し、腫瘍成長に拮抗する。
【0041】
ヒトTPK1の阻害剤は、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)に見出されたこの酵素のオルソログであるpfGSK3を阻害することもでき、その結果、これらはマラリアの治療に使用され得る(Biochimica et Biophysica Acta 1697、181〜196頁、2004年)。
最近のデータによれば、TPK1阻害剤は、尋常性天疱瘡の治療または予防において使用できる可能性がある。
【0042】
したがって本発明の化合物は、アルツハイマー病の予防的および/または治療的処置を根本的に可能にする医薬の活性成分として有用である。さらに本発明の化合物は、虚血性脳血管障害、ダウン症候群、孤立性脳アミロイド血管症に起因する脳出血、進行性核上性麻痺、亜急性硬化性全脳炎パーキンソニズム、脳炎後パーキンソニズム、ボクサーの脳症、グアム島パーキンソニズム-認知症複合、レビー小体病、ピック病、大脳皮質基底核変性症、前頭側頭認知症、血管性認知症、外傷性損傷、脳および脊髄外傷、末梢神経障害、網膜症および緑内障、インスリン非依存性糖尿病、肥満、躁うつ病、統合失調症、脱毛症、乳がん、非小細胞肺癌、甲状腺がん、TまたはB細胞白血病、ある種のウイルス誘発性腫瘍、筋萎縮性側索硬化症、マラリア、尋常性天疱瘡、ならびにがん化学療法によって誘発される好中球減少症の予防的および/または治療的処置のための医薬の活性成分として有用でもある。
【0043】
上記例示した疾患の中でも、本発明の化合物は、インスリン非依存性糖尿病、アルツハイマー病、虚血性脳血管障害、進行性核上性麻痺、ピック病、大脳皮質基底核変性症、前頭側頭認知症、外傷性損傷ならびに脳および脊髄外傷、筋萎縮性側索硬化症、ならびにマラリアの予防的および/または治療的処置のための医薬の活性成分として特に有用である。これらの疾患の中でも、アルツハイマー病がより好ましい。
【0044】
本発明の化合物は、良好な安全性および良好な薬物動態を有するので、該化合物は医薬として好ましい特徴を有する。
本発明の医薬の活性成分として、上記の式(I)によって表される化合物およびその薬理学的に許容される塩、ならびにその溶媒和物およびその水和物からなる群から選択される物質を使用することができる。上記物質自体を、本発明の医薬として投与することができるが、活性成分としての上記物質および1以上の医薬用添加物を含む医薬組成物の形態で医薬を投与することが望ましい。本発明の医薬の活性成分として、2種以上の上記物質を組み合わせて使用することができる。
【0045】
医薬組成物の種類は、特に限定されず、上記組成物は、経口または非経口投与のための任意の製剤として提供することができる。例えば医薬組成物は、例えば顆粒、細粒、散剤、硬質カプセル、軟質カプセル、シロップ、エマルジョン、懸濁液、溶液などの経口投与のための医薬組成物の形態に、または静脈内、筋肉内もしくは皮下投与のための注射剤、点滴、経皮調製物、経粘膜調製物、経鼻ドロップ剤、吸入剤、坐剤などの非経口投与のための医薬組成物の形態に製剤化することができる。注射剤または点滴は、凍結乾燥させた調製物の形態などの粉末調製物として調製することができ、使用直前に生理食塩水などの適切な水性媒体に溶解させることによって使用することができる。ポリマーでコーティングした調製物などの徐放調製物は、脳内に直接投与することができる。
【0046】
医薬組成物の製造に使用される医薬用の添加物の種類、活性成分に対する医薬用の添加物の含量比、および医薬組成物の調製方法は、当業者により適切に選択され得る。無機もしくは有機物質、または固体もしくは液体物質を、医薬用の添加物として使用することができる。一般に、医薬用の添加物は、活性成分の重量に対して1重量%〜90重量%の範囲の比で組み込むことができる。
【0047】
固体医薬組成物の調製に使用される添加剤の例としては、例えば、ラクトース、スクロース、デンプン、タルク、セルロース、デキストリン、カオリン、炭酸カルシウムなどが挙げられる。経口投与のための液体組成物の調製のためには、水または植物油などの通常の不活性賦形剤を使用することができる。液体組成物は、不活性賦形剤に加えて、湿潤剤、懸濁助剤、甘味剤、芳香剤、着色剤および保存剤などの助剤を含有することができる。液体組成物は、ゼラチンなどの吸収性材料から製造されたカプセルに充填することができる。非経口投与、例えば注射剤、坐剤のための組成物の調製に使用される溶媒または懸濁媒体の例としては、水、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ベンジルアルコール、オレイン酸エチル、レシチンなどが挙げられる。坐剤に使用される基剤材料の例としては、例えば、カカオ脂、乳化カカオ脂、ラウリン酸脂質、ウィテップゾールが挙げられる。
【0048】
本発明の医薬の投与の用量および頻度は、特に限定されず、予防的および/または治療的処置の目的、疾患の種類、患者の体重または年齢、疾患の重症度などの条件に応じて適切に選択することができる。一般に、成人一人に経口投与するための1日用量は、0.01〜1,000mg(活性成分の重量)とすることができ、その用量は、1日1回もしくは分割部分として1日数回、または数日に1回投与することができる。医薬が注射剤として使用される場合、投与は、成人一人に対して好ましくは0.001〜3000mg(活性成分の重量)の1日用量で連続的または間欠的に実施することができる。
【実施例】
【0049】
実施例を参照して、本発明をより具体的に説明する。しかし本発明の範囲は、以下の実施例に限定されない。実施例の化合物番号は、上記の表中の番号に対応する。
【0050】
製造実施例
参考例1:2-クロロ-5'-フルオロ-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オンの製造
【化5】
【0051】
(1)1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(27.1g、0.178mmol)を、5-フルオロオロチン酸(中間体2、31.0g、0.178mmol)のジメチルホルムアミド(93ml)溶液に添加した。30分間撹拌した後、ヨウ化エチル(27.8g、0.178mmol)をその溶液に添加し、その混合物を60℃で2時間加熱した。水(186ml)をその混合物に添加し、得られた沈殿物を濾過によって収集し、水で洗浄し、乾燥させて、5-フルオロオロチン酸エチルを得た(中間体3、23.9g、66%)。
【0052】
(2)5-フルオロオロチン酸エチル(中間体3、23.9g、0.1181mmol)を、N,N-ジエチルアニリン(12.8ml、0.080mmol)およびオキシ塩化リン(48.9g、0.319mol)の混合物に90℃で添加し、混合物を4時間還流させた。その溶液を氷水に注ぎ、次いで重炭酸ナトリウムを添加してpH8にした。反応混合物を酢酸エチルで抽出し、5%硫酸水素カリウム水溶液およびブラインで洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン/酢酸エチル=4/1)によって精製して、エチル2,6-ジクロロ-5-フルオロピリミジン-4-カルボキシレートを得た(中間体4、26.1g、93%)。
【0053】
(3)トリエチルアミン(32.8g、0.324mmol)を、エチル2,6-ジクロロ-5-フルオロピリミジン-4-カルボキシレート(中間体4、25.9g、0.108mmol)のテトラヒドロフラン(390ml)溶液に添加した。5%パラジウム-炭素(5.2g)を添加し、その混合物を水素ガス雰囲気下で3時間撹拌した。反応系中の固体を濾過によって除去し、濾液を酢酸エチルで抽出し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液およびブラインで洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン/酢酸エチル=5/1)によって精製して、エチル5-フルオロピリミジン-4-カルボキシレートを得た(中間体5、11.8g、64%)。
【0054】
(4)リチウムビス(トリメチルシリル)アミドのヘキサン(1.05mol/L、75ml)溶液を、酢酸エチル(8.67g、98.5mmol)のテトラヒドロフラン(200ml)溶液に-80℃で添加した。混合物を40分間撹拌した後、エチル5-フルオロピリミジン-4-カルボキシレート(中間体5、9.79g)のテトラヒドロフラン(200ml)溶液を-80℃で添加し、その混合物を室温で3時間撹拌した。反応混合物を5%硫酸水素カリウム水溶液に添加し、ジクロロメタンで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧下で蒸発させて、エチル3-(5-フルオロピリミジン-4-イル)-3-オキソ-プロピオネートを得た(中間体6(ケトおよびエノール形態の混合物)、12.7g、99%)。
【0055】
(5)1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(7.96g、52.3mmol)を、エチル3-(5-フルオロピリミジン-4-イル)-3-オキソ-プロピオネート(中間体6、11.1g、52.3mmol)、N-メチルチオ尿素(9.43g、0.105mol)のエタノール(33ml)溶液に60℃で添加し、次いでその混合物を90℃で14時間撹拌した。反応混合物を2%硫酸水素カリウム水溶液に添加し、得られた沈殿物を濾過によって収集し、水で洗浄し、乾燥させた。得られた沈殿物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ジクロロメタン/酢酸エチル=20/1)によって精製して、5'-フルオロ-2-メルカプト-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オンを得た(中間体7、2.51g、20%)。
【0056】
(6)ジメチルホルムアミド(7.5ml)および1,2-ジクロロエタン(7.5ml)の混合溶媒中の5'-フルオロ-2-メルカプト-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン(中間体7、2.51g、10.5mmol)の懸濁液を、オキシ塩化リン(2.94ml、31.5mmol)に0℃で添加し、混合物を40℃で60分間撹拌した。溶液をジクロロメタン(100ml)に注ぎ、反応混合物を飽和硫酸水素ナトリウム水溶液に加えた。有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で濃縮した。得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ジクロロメタン/酢酸エチル=20/1)によって精製して、2-クロロ-5'-フルオロ-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン(中間体1)を褐色固体として得た(1.73g、68%)。
【0057】
参考例2:エチル3-オキソ-3-(ピリミジン-4-イル)-2-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メトキシ}プロパノエートの製造
【化6】
【0058】
(1)2-ヒドロキシ酢酸エチル(2.00g、19.2mmol)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(2.73g、21.1mmol)のジクロロメタン(50ml)中混合物に、2-(クロロメトキシ)エチルトリメチルシラン(3.52g、21.1mmol)を室温で添加した。混合物を終夜撹拌し、水とジクロロメタンで分離した。有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン/酢酸エチル=93/7)によって精製して、{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メトキシ}酢酸エチル(中間体8)を無色油として得た(3.50g、14.9mmol、78%)。
【0059】
(2)N,N-ジイソプロピルアミン(1.58g、15.6mmol)のテトラヒドロフラン(9.0ml)溶液に、1.6M n-ブチルリチウムヘキサン溶液(9.9ml、15.8mmol)を-10℃において窒素雰囲気下で滴下添加した。混合物を室温に温め、30分間撹拌した。混合物を-78℃に冷却し、テトラヒドロフラン(9.0ml)中{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メトキシ}酢酸エチル(中間体8、3.50g、14.9mmol)を、-78℃でゆっくり添加した。30分後、テトラヒドロフラン(9.0ml)中ピリミジン-4-カルボン酸エチル(2.07g、13.6mmol;この化合物はWO2007/011065に従って合成した)を滴下添加し、混合物を-78℃で2時間撹拌した。混合物を室温まで温め、飽和塩化アンモニウム水溶液に注いだ。有機層を酢酸エチルで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン/酢酸エチル=75/25)によって精製して、エチル3-オキソ-3-ピリミジン-4-イル-2-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メトキシ}プロパノエート(中間体9)を薄黄色油として得た(2.86g、8.40mmol、62%)。
【0060】
参考例3:(S)-3-フルオロメチル-モルホリン塩酸塩(化合物3の製造における中間体)の製造
【化7】
【0061】
(1)氷冷した水素化ナトリウム(鉱油中60%、11.6g、290mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(50ml)懸濁液に、窒素雰囲気下でN,N-ジメチルホルムアミド(50ml)中N-ベンゾイル-D-セリン(20g、96mmol)を添加し、1時間撹拌した。臭化ベンジル(11.4ml、d=1.438、96mmol)をその溶液に添加し、室温で5時間撹拌した。得られた溶液を氷水に注ぎ、ジエチルエーテルで洗浄した。水相を4N塩酸によって酸性にした後、溶液をクロロホルムによって抽出し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧下で溶媒を除去して、粗N-ベンゾイル-O-ベンジル-D-セリン(33.3g)を得、次の工程でさらなる精製なしに使用した。
【0062】
(2)N-ベンゾイル-O-ベンジル-D-セリンのテトラヒドロフラン(100ml)溶液に、1Mボラン-テトラヒドロフラン錯体(テトラヒドロフラン溶液中1M、500ml、500mmol)を、0℃において窒素雰囲気下で添加した。その混合物を室温で15時間撹拌した。メタノール(100ml)を滴下した後、溶媒を減圧下で除去した。メタノール(200ml)および1N水酸化ナトリウム水溶液(300ml)を残渣に添加し、溶液を3時間還流させた。メタノールを減圧下で除去した後、溶液を水と酢酸エチルで分離し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を除去して、粗(S)-2-ベンジルアミノ-3-ベンジルオキシ-プロパン-1-オール(28.17g)を無色油として得、さらなる精製なしに次の工程で使用した。
【0063】
(3)(S)-2-ベンジルアミノ-3-ベンジルオキシ-プロパン-1-オール(28.17g)のジクロロメタン(300ml)溶液に、トリエチルアミン(16.7ml、d=0.726、120mmol)および塩化クロロアセチル(9.6ml、d=1.418、120mmol)を0℃で添加し、溶液を1時間撹拌した。得られた溶液を、1N塩酸とジクロロメタンで分離した。有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣を2-プロパノール(200ml)に溶解し、次いで水酸化カリウム(13g、200mmol)を添加した。混合物を室温で15時間撹拌し、溶媒を減圧下で除去した。残渣を水と酢酸エチルで分離した。有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=1/1)によって精製して、(R)-4-ベンジル-5-ベンジルオキシメチル-モルホリン-3-オンを黄色がかった油として得た(21.52g、D-セリンから72%)。
【0064】
(4)(R)-4-ベンジル-5-ベンジルオキシメチル-モルホリン-3-オン(23g、73.9mmol)、パラジウム炭素(7.4g)のエタノール(150ml)および酢酸(50ml)溶液を、40℃において水素ガス雰囲気下で4時間撹拌した。濾過後に溶媒を除去し、その後、酢酸をトルエンと共にさらに2回共沸除去して、粗(R)-4-ベンジル-5-ヒドロキシメチル-モルホリン-3-オンを得、それを次の反応でさらなる精製なしに使用した。
【0065】
(5)ビス(2-メトキシエチル)アミノサルファートリフルオリド(Deoxo-Fluor(登録商標)、75g、339mmol)を、(R)-4-ベンジル-5-ヒドロキシメチル-モルホリン-3-オンのジクロロメタン(50ml)溶液に室温で添加し、その溶液を8時間還流させた。メタノールおよび水を氷冷した溶液に添加した後、その溶液を水と酢酸エチルで分離し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、(S)-4-ベンジル-5-フルオロメチル-モルホリン-3-オン(13.6g、82%)を黄色油として得た。
【0066】
(6)ボランテトラヒドロフラン錯体溶液(テトラヒドロフラン中1.0M、200ml)を、(S)-4-ベンジル-5-フルオロメチル-モルホリン-3-オン(13.6g、60.9mmol)のテトラヒドロフラン(100ml)溶液に、0℃において窒素雰囲気下で添加し、得られた溶液を室温に温め、15時間撹拌した。メタノールを溶液に滴下添加し、溶媒を減圧下で除去した。メタノール(150ml)および1M水酸化ナトリウム水溶液(150ml)を残渣に添加し、溶液を3時間還流させた。溶媒を除去した後、残渣を酢酸エチルと水で分離し、有機溶媒を硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン/酢酸エチル=100/1〜1/1)によって精製して、(S)-4-ベンジル-3-フルオロメチル-モルホリンを得た(6.5g、51%)。
【0067】
(7)(S)-4-ベンジル-3-フルオロメチル-モルホリン(6.5g、31mmol)の1,2-ジクロロエタン(30ml)溶液に、クロロギ酸1-クロロエチル(10ml、d=1.325、92.7mmol)を室温で添加した。混合物を5時間還流させた。反応混合物を室温に冷却し、次いで1,2-ジクロロエタンを減圧下で除去した後、メタノールを添加した。混合物を1時間還流させ、真空中で濃縮した。2-プロパノールの添加および真空中での濃縮を2回反復し、得られた固体を酢酸エチルで洗浄し、濾過して、(S)-3-フルオロメチル-モルホリン塩酸塩(3.1g、65%)を固体として得た。
【0068】
実施例1:(S)-5'-フルオロ-2-[2-(4-フルオロ-フェニル)-モルホリン-4-イル]-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン(化合物1)の製造
【化8】
【0069】
(S)-2-(4-フルオロフェニル)-モルホリン塩酸塩(0.19g、0.87mmol;この化合物はWO2007/011065に従って合成した)および2-クロロ-5'-フルオロ-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン(中間体1、0.20g、0.83mmol)のテトラヒドロフラン(5mL)中混合物に、トリエチルアミン(0.35mL、2.5mmol)を室温で添加した。反応混合物を8時間撹拌し、1N塩酸に注いだ。クロロホルムによる抽出を行い、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機溶媒を減圧下で除去し、残渣をエタノールから結晶化させて、(S)-5'-フルオロ-2-[2-(4-フルオロ-フェニル)-モルホリン-4-イル]-1-メチル-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン(0.25g、0.65mmol、78%)を無色結晶として得た。
【0070】
実施例2:(S)-5-ヒドロキシ-1-メチル-2-{2-[4-(5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)フェニル]モルホリン-4-イル}-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン(化合物11)の製造
【化9】
【0071】
(1)(S)-2-{2-[4-(5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)フェニル]モルホリン-4-イル}-5-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メトキシ}-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン
(2S)-2-[4-(5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)フェニル]モルホリン塩酸塩(900mg、3.20mmol;この化合物はWO2008/078837に従って合成した)および1H-ピラゾール-1-カルボキサミジン塩酸塩(493mg、3.36mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(2.0ml)中混合物に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(910mg、7.04mmol)を室温で添加し、3時間撹拌した。ジエチルエーテルをその混合物に添加し、有機溶媒をデカンテーションによって除去した。次いで、エチル3-オキソ-3-ピリミジン-4-イル-2-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メトキシ}プロパノエート(中間体2、1.64g、4.80mmol)、炭酸カリウム(1.55g、11.2mmol)およびエタノール(4.0ml)を、得られた溶液に添加した。10時間還流させた後、その混合物を水に注いだ。有機化合物をクロロホルムで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;クロロホルム/メタノール=98/2)によって精製して、(S)-2-{2-[4-(5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)フェニル]モルホリン-4-イル}-5-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メトキシ}-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オンを薄黄色固体として得た(159mg、0.281mmol、9%)。
【0072】
(2)(S)-5-ヒドロキシ-1-メチル-2-{2-[4-(5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)フェニル]モルホリン-4-イル}-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン
(S)-2-{2-[4-(5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)フェニル]モルホリン-4-イル}-5-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メトキシ}-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オン(60mg、0.11mmol)のアセトニトリル(1.1ml)溶液に、ヘキサメチルジシラザン(21mg、0.13mmol)を室温で添加した。その混合物を1時間還流させ、次いで(クロロメチル)ジメチルクロロシラン(15mg、0.11mmol)を添加した。その混合物を3時間還流させた。減圧下で濃縮した後、残渣をテトラヒドロフラン(1.1ml)に溶解し、フッ化セシウム(130mg、0.85mmol)を添加した。その混合物を2時間還流させた。その混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ、クロロホルムで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;クロロホルム/メタノール=99/1)によって精製して、(S)-5-ヒドロキシ-1-メチル-2-{2-[4-(5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)フェニル]モルホリン-4-イル}-1H-[4,4']ビピリミジニル-6-オンを薄黄色固体として得た(14mg、31μmol、29%)。
【0073】
上記の方法と同様にして、以下の表の化合物を製造した。以下の表の化合物番号は、好ましい化合物の上記表に示した番号に対応する。
【0074】
【表2】
【0075】
実験1:ウシ大脳TPK1によるP-GS1のリン酸化に対する本発明の医薬の阻害活性
100mMのMES-水酸化ナトリウム(pH6.5)、1mM酢酸マグネシウム、0.5mMのEGTA、5mMのβ-メルカプトエタノール、0.02%Tween 20、10%グリセロール、12μg/mlのP-GS1、41.7μMの[γ-32P]ATP(68kBq/ml)、ウシ大脳TPK1および表に示した化合物を含有する混合物(最終混合物は、10%DMSOの存在下で調製した試験化合物の溶液に由来する1.7%DMSOを含有した)を、反応系として使用した。ATPの添加によってリン酸化を開始し、反応を25℃で2時間実施し、次いで氷上で冷却して21%過塩素酸を添加することによって停止させた。反応混合物を12,000rpmで5分間遠心分離し、P81濾紙(ワットマン)に吸着させ、その濾紙を75mMリン酸で4回、水で3回、アセトンで1回洗浄した。濾紙を乾燥させ、液体シンチレーションカウンターを使用して残留放射活性を測定した。結果を以下の表に示す。試験化合物は、TPK1によるP-GS1のリン酸化を著しく阻害した。この結果は、本発明の医薬がTPK1活性を阻害し、それによってAβの神経毒性およびPHFの形成を抑制すること、ならびに本発明の医薬が、アルツハイマー病および上記疾患の予防的および/または治療的処置に有効であることを強く示唆している。
【0076】
【表3】
【0077】
実験2:タウリン酸化に対するインビボ阻害活性
試験化合物を、5〜6週齢の体重25〜35gの雄性CD-1マウス(日本チャールス・リバー株式会社)に1、3、10、30mg/kgで経口投与し(0.5%Tween/H2O懸濁液)、1時間後にマウスを断頭し、皮質を迅速に除去した後、液体N2で凍結させた。皮質を、2.3%SDSホモジナイズ緩衝液(62.5mMトリス-HCl、2.3%SDS、それぞれ1mMのEDTA、EGTAおよびDTT、0.2μMの4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホニルフッ化物(AEBSF)、13μMベスタチン、1.4μMのE-64、0.1mMロイペプチン、30nMアプロチニンを含有するプロテアーゼ阻害剤カクテル(sigma P2714)、pH6.8)で直接ホモジナイズし、4℃において15000×gで15分間遠心分離した。タンパク質濃度を、DCタンパク質アッセイキット(BIO-RAD)を使用して決定した。上清を試料緩衝液(62.5mMトリス-HCl、25%グリセロール、2%SDS、0.01%ブロモフェノールブルー、pH6.8)で希釈して、タンパク質濃度を約0.5〜2mg/mgに調節し、次いで5分間煮沸した。試料10μgを10%SDS-PAGEミニスラブゲルに適用し、PVDF膜上に移した。膜を、5%脱脂乳を含有するPBSで室温において1時間インキュベートし、次いでpS396抗体(BIOSOURCE)を用いて4℃で終夜プローブした。抗ウサギIgG HRP結合抗体(Promega)を2次抗体として使用した。膜を、ECLキット(Amerasham Bioscience)によって視覚化し、LAS1000(富士フィルム)によって検出した。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の化合物はTPK1阻害活性を有しており、神経変性疾患(例えばアルツハイマー病)および前記疾患などのTPK1の異常亢進によって引き起こされる疾患の予防的および/または治療的処置のための医薬の活性成分として有用である。