(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記陰極は、銅、金、鉄、ニッケル、ステンレス、チタン、カーボン、又は導電性樹脂製である請求項1乃至6の何れか1項に記載の亜鉛または亜鉛合金バレル電気めっき方法。
上記めっき液は、上記バレルに設けられた陰極に形成された多数の穴を介して上記バレルに流入し又は上記バレルから流出される請求項1乃至7の何れか1項に記載の亜鉛または亜鉛合金バレル電気めっき方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開昭49−130号公報に記載されたバレルめっき装置を用いて電気めっきを行う場合、被めっき物は、バレルに挿入された陰極と接触することにより陰極電位にされる。従って、バレル内の被めっき物の数量が少ない場合には、陰極と被めっき物の接触、又は被めっき物同士の接触が十分に確保されず、一部の被めっき物が通電不良を起すいという問題がある。多数のめっき物のうちの一つでも通電不良が生じると、バイポーラ現象が発生して、めっき未着、密着不良、不均一なめっきの原因となり、良好なめっき被膜を得ることができなくなる。また、被めっき物が多い場合には、めっきに必要な総電流量が大きくなり、また、浴電圧も高くなる。この大きな電流が、バレル外部の陽極からバレルの壁面に設けられた穴を通って流れるため、そこに電流が集中し、焦げと呼ばれるめっき金属の異常析出が発生するという問題がある。
【0005】
特に、昨今多く使用されている均一電着性タイプのノーシアンアルカリ亜鉛めっきや、亜鉛合金めっきでは、めっき添加剤の吸着力が強いためバイポーラ現象が発生しやすく、被めっき物に接触不良が発生した場合には、めっき未着や密着不良が顕著に発生するという問題がある。
【0006】
従って、本発明は、被めっき物の量の多少に関わらず、めっき未着やフクレや剥離などの密着不良が発生しにくく、めっき皮膜にこげや光沢不良のない均一なめっき被膜を得ることができるバレル電気めっき方法を提供することを目的としている。
特に、本発明は、亜鉛または亜鉛合金を、被めっき物に効率良くめっきすることができるバレル電気めっき方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、金属の表面に亜鉛または亜鉛合金めっきを施すバレル電気めっき方法であって、内壁面に陰極が設けられたバレル内に被めっき物を収容する段階と、被めっき物を収容したバレルをめっき液に浸漬する段階と、バレルの中に、バレルの内壁面から離間して配置された陽極と陰極の間に電圧を印可すると共に、バレルを回転、揺動、又は振動させ、陽極を回転、揺動、又は振動させる段階と、を有
し、 陽極は、陽極から被めっき物への電流が流れる穴が形成され、且つ被めっき物の陽極への偶発的な接触を防止する陽極カバーによって覆われていることを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明においては、バレルに収容された被めっき物は、バレルの内壁面に設けられた陰極に導通する。バレルはバレル駆動部により回転、揺動、又は振動される。また、陽極はバレルの中に
、バレルの内壁面から離間して配置され、陽極駆動部により回転、揺動、又は振動される。
【0009】
このように構成された本発明によれば、陰極がバレルの内壁面に設けられているので被めっき物と陰極との導通が確実に確保されると共に、陽極がバレルの中に配置され、陽極駆動部により回転、揺動、又は振動されるので、浴電圧の過度の上昇を防止することができる。これにより、被めっき物の量の多少に関わらず、良好なめっき被膜を得ることができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、陽極に印可される電圧は、めっき液の中に浸漬された陽極電気接点を介して印加される。
このように構成された本発明によれば、陽極電気接点が、めっき液の中に浸漬されているので、バレルめっき装置全体の構成を簡単にすることができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、陽極に印可される電圧は、チタン製の陽極電気接点を介して印加される。
このように構成された本発明によれば、陽極電気接点の接点部がめっき液の中に浸漬されていても、接点の接触抵抗を低く抑えることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、陽極は、円筒又は円柱形状である。
このように構成された本発明によれば、陽極を簡単に形成することができる。
本発明において、好ましくは、陽極は、不溶性陽極又は可溶性陽極である。
本発明において、好ましくは、陰極は、導電性を有する材料で形成されている。
【0013】
本発明において、好ましくは、陰極は、銅、金、鉄、ニッケル、ステンレス、チタン、カーボン、又は導電性樹脂製である。
本発明において、好ましくは、めっき液は、バレルに設けられた陰極に形成された多数の穴を介してバレルに流入し又はバレルから流出される。
このように構成された本発明によれば、バレルをめっき液槽に浸けることにより、被めっき物をめっき液に浸けることができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、被めっき物は、バレルの内壁面全体を覆うように形成された陰極と接触する。
このように構成された本発明によれば、被めっき物と陰極との導通を、より確実にすることができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、被めっき物は、バレル内に配置された三角柱状山型の邪魔板によって混合される。
このように構成された本発明によれば、バレル内の被めっき物を、より効果的に混合することができるので、形成されるめっき層をより均一にすることができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、バレルは、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、又は
ポリテトラフルオロエチレン製である。
【発明の効果】
【0017】
本発明のバレル電気めっき方法によれば、被めっき物の量の多少に関わらず、めっき未着やフクレや剥離などの密着不良が発生しにくく、めっき皮膜にこげや光沢不良のない均一なめっき被膜を得ることができる。
特に、本発明のバレル電気めっき方法によれば、亜鉛または亜鉛合金を、被めっき物に効率良くめっきすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
本発明は、陽極をバレル内中央に配置し、陰極をバレル内壁面に配置し、陽極を回転、揺動、又は振動させ、バレル壁面の陰極を揺動、回転、又は振動させてめっきするバレル電気めっき装置を用いてめっきを行う亜鉛、亜鉛合金めっき方法により、常に被めっき品に通電されるようにした陰極接点の改善、極間距離の短縮による浴電圧の低下、及び電流集中の防止による電流密度の均一化を図ることができ、均一なめっき皮膜を得ることができるという知見に基づいて為されたものである。また、本発明は、バレル内に設置された陽極を回転させながらめっきすることにより、陽極電流効率の改善、浴電圧の上昇を防止することができ、皮膜の均一性、こげ防止効果をさらに高め、高電流密度作業が可能になると言う知見に基づいて為されたものである。
【0020】
まず、
図1乃至
図5を参照して、本発明のバレル電気めっき方法を実施するために使用されるバレルめっき装置を説明する。
図1はバレルめっき装置の正面図であり、
図2は左側面図であり、
図3は右側面図である。また、
図4は、バレルの断面図である。
図5は、陽極にプラス電圧を付与する陽極電気接点の機構を示す図である。
【0021】
図1乃至3に示すように、バレルめっき装置1は、2枚のフレーム板2a、2bと、このフレーム板に対して揺動可能に支持され、陰極が設けられたバレル4と、このバレル4が揺動する中心軸線上に配置された陽極6と、バレル駆動部であるバレル駆動用モーター8と、陽極駆動部である陽極駆動用モーター10と、陰極と陽極6の間に電圧を印可する電源部11と、を有する。
【0022】
バレルめっき装置1は、鉄製の不溶性陽極を使用した、バレル電気めっき装置である。この装置は、バレル4に、ボルト、ねじ等の小物物品を収容し、バレルめっき装置1を所定の位置までめっき液槽のめっき液の中に漬ける。次いで、陽極駆動用モーター10を起動して陽極6を回転させながら、バレル4を所定の周期で揺動させると共に、陽極6とバレル4に設けられた陰極の間に電流を流すことにより、バレル4内の小物物品に亜鉛又は亜鉛合金めっきを施すものである。
【0023】
電源部11は、本実施形態においては、陰極と陽極6の間にパルス状の電圧を印可するパルス電源部である。
フレーム板2a、2bは、絶縁体で形成された2枚の平板であり、3本の連結棒2c、2d、2eにより、平行に連結されている。また、フレーム板2a、2bには、それらの間にバレル4を揺動可能に支持するための軸受けが設けられている。なお、本実施形態においては、フレーム板2a、2bは、ポリ塩化ビニル製である。
【0024】
図4に示すように、バレル4は、両端に配置された2つの大径のバレル歯車12と、これらを連結するように配置された金属製の薄板14と、陽極カバー16と、陰極端子18と、邪魔板20と、を有する。
【0025】
薄板14は、凹形に折り曲げられ、半八角形断面を有するバレルを形成し、被めっき物(図示せず)が、この内側に収容される。薄板14は、多数の小穴が設けられた銅板であり、その内側表面は内壁面に設けられた陰極として機能する。使用時においては、めっき液は、薄板14の多数の小穴を通って流入し、又は流出する。
【0026】
なお、本実施形態においては、バレル自体を導電性を有する材料で形成して陰極を構成しているが、変形例として、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等の絶縁体で形成されたバレルの内壁面に導体の陰極板を取り付けても良い。また、本実施形態においては、薄板14は銅製であるが、他の金属として、金、鉄、ニッケル、ステンレス、チタン、或いは、カーボン、導電性樹脂によりバレル4を構成することもできる。
【0027】
陽極カバー16は、5枚の板状の部材で形成され、バレル4の中に配置される陽極6の概ね下半分を覆うように配置されている。この陽極カバー16により、被めっき物の数量が多い場合等において、被めっき物の陽極6への偶発的な接触が防止される。陽極カバー16には多数の小穴が形成されており、これらの小穴を通って、陽極から被めっき物に電流が流れるように構成されている。なお、本実施形態においては、陽極カバー16はポリ塩化ビニル製である。
【0028】
陰極端子18は、薄板14の両側から延びる金属製の細長い板であり、電源部11のマイナス側の端子に接続される(
図1)。
邪魔板20は、折り曲げられた薄板14の角部に配置された角柱状の部材であり、この邪魔板20により、バレル4の内側に三角形状の断面の山を形成している。邪魔板20は、バレル4の内側に山を形成することにより、バレル4が揺動された際に、被めっき物が良く混合されるようにしている。
【0029】
図1乃至3に示すように、陽極6は、両端部の直径が小さく構成されている段付き軸状の鉄製の円柱であり、その両端部は各フレーム板2a、2bを貫通して延びている。これにより、陽極6は、フレーム板2a、2bに対して回転可能に支持されている。また、陽極6の一方の段部には陽極駆動用歯車22が取り付けられている。変形例として、陽極6を中空に形成し、円筒状としても良い。また、陽極6は、プラスチック及び/又は金属で形成された中空円筒の表面に、可溶性又は不溶性の陽極材を交換可能に取り付けることにより構成することもできる。陽極には、鉄の他、ニッケル、亜鉛等を使用することができる。好ましくは、陽極6の表面にゴルフボールのディンプル状の凹凸を形成しておく。
【0030】
図3に示すように、バレルめっき装置1の上部に配置された陽極駆動用モーター10は、フレーム板2bに取り付けられた伝動用歯車24a、24b、24cを介して陽極駆動用歯車22を回転駆動する。これにより、陽極6が回転駆動される。
【0031】
一方、
図2に示すように、バレルめっき装置1の上部に配置されたバレル駆動用モーター8は、フレーム板2aに取り付けられた伝動用歯車26a、26bを介してバレル歯車12を駆動する。また、バレル歯車12には、突起12a、12bが設けられている。バレル歯車12が陽極6を中心に回転すると、突起12a、12bが移動され、これによりフレーム板2aに回動可能に取り付けられたロッド28が回動される。回動されたロッド28の先端部は、その両側に配置されたマイクロスイッチ30a、30bをオン又はオフに切り替える。即ち、
図2において、バレル歯車12が反時計回りに回転されると、突起12aがロッド28の下端部を左方向に押し、ロッド28は時計回りに回動される。これにより、ロッド28の上端部がマイクロスイッチ30aを押して、これをオンにする。マイクロスイッチ30aがオンにされると、バレル駆動用モーター8の回転が反転され、バレル歯車12は時計回りに回転されるようになる。
【0032】
バレル歯車12が時計回りに回転されると、突起12bがロッド28の下端部を右方向に押し、ロッド28は反時計回りに回動される。これにより、ロッド28の上端部がマイクロスイッチ30bを押して、これをオンにする。マイクロスイッチ30bがオンにされると、バレル駆動用モーター8の回転が反転され、バレル歯車12は再び反時計回りに回転されるようになる。以上の作用を繰り返すことにより、バレル4は、約90゜の角度範囲に亘って揺動運動される。
【0033】
次に、
図5を参照して、陽極電気接点部の構成を説明する。
図5に示すように、陽極電気接点部は、棒状の陽極端子32と、この陽極端子32を付勢するコイルスプリング34と、陽極6と接触する固定側の部材である固定側接点部材36と、内部に陽極端子32を通す絶縁スリーブ38と、コイルスプリング34による付勢力を調節するスプリング調節ボルト40と、を有する。なお、使用時において、陽極電気接点部はめっき液の中に浸漬され、固定側接点部材36に対して陽極6が摺動される。
【0034】
陽極端子32は、上部が細く形成された段付きの軸であり、その上端は電源部11のプラス端子に接続され、下端には固定側接点部材36が取り付けられている。また、陽極端子32の細くなった上部は、コイルスプリング34に通されており、陽極端子32の段部がコイルスプリング34の下端と係合されるようになっている。
【0035】
固定側接点部材36は、チタン製であり、陽極端子32の下端部に螺合されている。また、固定側接点部材36の底面は、陽極6の小径部と広い接触面積で摺動するように、円筒面に形成されている。陽極電気接点の固定側である固定側接点部材36の底面と、陽極電気接点の可動側である鉄製の陽極6が接触しながら陽極6が回転される。これにより、電源部11のプラス端子から陽極端子32、固定側接点部材36を介して陽極6に電流が流れる。
なお、変形例として、固定側接点部材36及び/又は陽極電気接点の可動側を、チタン、チタン合金等の耐腐食性の金属材料で構成することもできる。
【0036】
絶縁スリーブ38は、ポリ塩化ビニル製のパイプであり、陽極端子32及びコイルスプリング34を覆うように配置される、また、スプリング調節ボルト40は、中心にボアが形成されたポリ塩化ビニル製のボルト状の部材であり、絶縁スリーブ38の上部に螺合されるように形成されている。スプリング調節ボルト40は、そのボアに陽極端子32が貫通され、スプリング調節ボルト40の先端がコイルスプリング34の上端を押圧するように配置される。このため、スプリング調節ボルト40を回転させることにより、コイルスプリング34を圧縮する力が変化し、固定側接点部材36を陽極6に押し付ける力を調節することができる。
【0037】
次に、バレルめっき装置1を使用した本発明のバレル電気めっき方法の一例を説明する。
まず、バレルめっき装置1のバレル4に、被めっき物である例えば鉄材のボルト、ねじ等の小物物品を入れる。これにより、各被めっき物は、バレル4の内壁面に直接接触して、又は、バレル4の内壁面に接触している他の被めっき物を介して陰極と導通される。なお、被めっき物である基体としては、鉄の他、ニッケル、銅などの各種金属、及びこれらの合金、あるいは亜鉛置換処理を施したアルミニウムなどの金属や合金が挙げられる。また、被めっき物としては、ボルト、ナット、ワッシャー、プレス小物品や直方体、円柱、円筒、球状物など種々の形状のものが挙げられる。
【0038】
バレル4に被めっき物を入れた後、バレルめっき装置1を、めっき液が入れられためっき槽に所定の位置まで浸す。具体的には、バレル4及び陽極6が完全にめっき液に浸かり、バレル駆動用モーター8及び陽極駆動用モーター10が、めっき液の液面よりも上方に位置するようにバレルめっき装置1をめっき液に浸す。なお、本発明に用いられる亜鉛、亜鉛合金めっき液としては、例えば、硫酸浴、アンモン浴、カリ浴などの酸性浴、アルカリノーシアン浴、アルカリシアン浴等のアルカリ浴が挙げられる。特に、亜鉛めっきでは、アルカリノーシアン浴(DipsolNZ−200,NZ−100,NZ−87浴)を用いるのが好ましい。
【0039】
また、亜鉛合金めっきとしては、亜鉛−鉄合金めっき、亜鉛−ニッケル合金めっき、亜鉛−コバルト合金めっき等が挙げられる。特に、アルカリノーシアン浴からのニッケル共析率12〜18%の亜鉛−ニッケル合金めっき浴が好ましい。
【0040】
次に、バレル駆動用モーター8及び陽極駆動用モーター10を起動する。陽極6は、陽極駆動用モーター10の駆動力により、陽極6の中心軸線を中心に約50〜100rpmで回転される。一方、バレル4のバレル歯車12は、バレル駆動用モーター8の駆動力により約1rpmの回転速度で回転駆動され、約90゜回動される毎に回転方向が反転されるように揺動される。
【0041】
また、電源部11により、陽極端子32と陰極端子18との間に例えばパルス状の50A−10Vの電流を流す。これにより、電流は、陽極端子32、固定側接点部材36、陽極6、めっき液、被めっき物、陰極(バレル4の内壁面)を通って流れる。なお、陽極端子32と陰極端子18との間に流す電流は、直流でも良い。また、浴温は、めっき液に依存するが、一般的には15〜50゜C、好ましくは、25〜35゜Cとする。電流密度は、0.1〜15A/dm
2、好ましくは、0.5〜5A/dm
2の電解条件で行うのがよい。なお、めっきを行う間は、濾過器(図示せず)を使用して、バレル4内のめっき液を循環させるのがよい。
【0042】
さらに、バレル4が揺動されることにより、バレル4内の被めっき物が混合され、被めっき物の表面に均一なめっき層が形成される。また、バレル4内に設けられた邪魔板20は、バレル4内における被めっき物の混合が促進され、より均一なめっき層が形成される。また、バレル4の内壁面が陰極を構成しているので、被めっき物の数量が少なく、被めっき物同士が接触していない状態であっても、被めっき物の陰極への導通が確保され、バイポーラ現象の発生が防止される。さらに、陽極6の周囲には陽極カバー16が配置されているので、被めっき物の数量が多い場合でも、被めっき物の陽極6への直接接触が防止される。
【0043】
また、めっき液に浸漬されている陽極6は回転されているので、陽極6の周囲にめっき液の流れが常に生成され、浴電圧(陽極端子32と陰極端子18の間の電圧)異常な上昇を防止することができる。さらに、陽極6がバレル4の中の、陰極に比較的近い位置に配置され、陽極6を囲むように被めっき物が配置されるので、陽極6の被めっき物に対する露出面積が大きくなり、電流集中による黒色析出物や、焦げの発生が防止される。
所定時間後、電源部11による電圧の印加を停止し、バレルめっき装置1をめっき液槽から引き上げで、めっき作業を終了する。本方法により任意の厚さの亜鉛及び亜鉛合金めっきを形成することができるが、めっきの厚さは1μm以上であるのが好ましく、より好ましくは5〜25μmである。
【実施例】
【0044】
次に、本発明のバレル電気めっき方法を使用して、実際にめっきを行った実施例を説明する。
実施例1
陰極を銅板、陽極を鉄としたバレルめっき装置1(20kgバレル)を使用して、M8のボルトに亜鉛めっきを施した。ボルトの投入量は、1〜20kgの間で変化させた。まず、前処理として、アルカリ脱脂、アルカリ電解洗浄及び酸洗を行った。また、めっき浴の組成は、亜鉛8g/l、苛性ソーダ120g/l、NZ−200S(ディップソール株式会社製)10ml/lを使用した。
めっき条件は、電流密度1A/dm
2、めっき時間40分、浴温25゜Cとした。表1に示すように、亜鉛めっきを施した結果として、投入量1〜20kgの何れにおいても光沢のある亜鉛めっき皮膜を得ることができた。
【表1】
【0045】
実施例2
陰極を銅板、陽極をニッケルとしたバレルめっき装置1(20kgバレル)を使用して、M8のボルトに亜鉛めっきを施した。ボルトの投入量は、1〜20kgの間で変化させた。まず、前処理として、アルカリ脱脂、アルカリ電解洗浄及び酸洗を行った。また、めっき浴の組成は、亜鉛8g/l、ニッケル1.6g/l、苛性ソーダ130g/l、IZ−252S(ディップソール株式会社製)5ml/lを使用した。
めっき条件は、電流密度1A/dm
2、めっき時間50分、浴温25゜Cとした。表2に示すように、亜鉛めっきを施した結果として、投入量1〜20kgの何れにおいても光沢のある亜鉛めっき皮膜を得ることができた。
【表2】
【0046】
比較例1
次に、比較例として、
図6に示した従来のバレルめっき装置を使用して亜鉛めっきを施した結果を説明する。
陰極を銅、陽極を鉄とした
図6に示すバレルめっき装置(20kgバレル)を使用して、M8のボルトに亜鉛めっきを施した。ボルトの投入量は、1〜20kgの間で変化させた。まず、前処理として、アルカリ脱脂、アルカリ電解洗浄及び酸洗を行った。また、めっき浴の組成は、亜鉛8g/l、苛性ソーダ120g/l、NZ−200S(ディップソール株式会社製)10ml/lを使用した。
めっき条件は、電流密度1A/dm
2、めっき時間40分、浴温25゜Cとした。表3に示すように、亜鉛めっきを施した結果として、投入量20kgにおいては光沢のある亜鉛めっき皮膜を得ることができたが、投入量1kg、5kgではめっきが未着であり、投入量10kgではめっきにムラができた。
【表3】
【0047】
比較例2
陰極を銅、陽極をニッケルとした
図6に示した従来のバレルめっき装置(20kgバレル)を使用して、M8のボルトに亜鉛めっきを施した。ボルトの投入量は、1〜20kgの間で変化させた。まず、前処理として、アルカリ脱脂、アルカリ電解洗浄及び酸洗を行った。また、めっき浴の組成は、亜鉛8g/l、ニッケル1.6g/l、苛性ソーダ130g/l、IZ−252S(ディップソール株式会社製)5ml/lを使用した。
めっき条件は、電流密度1A/dm
2、めっき時間50分、浴温25゜Cとした。表4に示すように、亜鉛めっきを施した結果として、投入量20kgにおいては光沢のある亜鉛めっき皮膜を得ることができたが、投入量1kg、5kgではめっきが未着であり、投入量10kgではめっきにムラができた。
【表4】
【0048】
以上のように、実施例1、2においては、被めっき物であるボルトの投入量が少ない場合であっても、常に陰極と被めっき物が接触しているため、めっき未着やめっき不良は発生していないが、従来のバレルめっき装置を使用した比較例1、2においては、被めっき物の投入量が少ない場合には、被めっき物と陰極が十分に接触していないため、めっき未着や、密着不良等のめっき不良が発生した。これは、陰極と十分な導通が得られていない被めっき物にバイポーラ現象が発生したためと考えられる。
【0049】
本発明の実施形態の亜鉛または亜鉛合金バレル電気めっき方法によれば、被めっき物の量に大きな影響を受けることなく、めっき未着やフクレ、剥離などの密着不良もなく、めっき皮膜にこげや光沢不良のない均一なめっき皮膜を得ることができる。このように、本発明は、高品質な亜鉛めっきや亜鉛合金めっきを効率良く施すことができるので、自動車部品、家電部品等、幅広い用途が期待される。
【0050】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、陽極は、バレルの中で回転されていたが、陽極が揺動又は振動されるようにバレルめっき装置を構成することもできる。
【0051】
さらに、上述した実施形態においては、バレルは、揺動され、又は回転されていたが、バレルが振動されるように、バレルめっき装置を構成することもできる。