【文献】
Toshitaka Yamakawa, Takeshi Yamakawa, Michiyasu Suzuki, and Masami Fujii,"Epileptogenic ECoG Monitoring and Brain Stimulation Using a Multifunctional Microprobe for Minimall,Advances in Neuro-Information Processing,ドイツ,Springer-Verlag,2009年,第5506巻、パート1,p.369−376
【文献】
山家智之 白石泰之 西條芳文 関根一光 圓山重直 中里信和,“熱電子局所冷却装置と術中脳波マッピングを用いた脳外科手術局所機能診断”,財団法人中谷電子計測技術振興財団年報,日本,財団法人中谷電子計測技術振興財団,2007年 8月15日,第21号,p.58−62
【文献】
HANS E. BAKKEN, HIROTO KAWASAKI, HIROYUKI OYA, JEREMY D. W. GREENLEE, AND MATTHEW A. HOWARD III,"A device for cooling localized regions of human cerebral cortex",Journal of Neurosurgery,米国,American Association of Neurological Surgeons,2003年 9月,第99巻、第3号,p.604−608
【文献】
内山城司 倉田雄二 斉藤俊 中野公彦 藤岡裕士 藤井正美 鈴木倫保,“大脳皮質局所冷却による神経活動電位変化〜てんかん性異常放電抑制メカニズムの考察〜”,バイオエンジニアリング講演会講演論文集,日本,社団法人日本機械学会,2008年 1月24日,第20回、第07−49号、625,p.409−410
【文献】
藤井正美 鈴木倫保,“てんかんの新しい治療:局所脳冷却療法”,医学のあゆみ,日本,2010年 3月 6日,第232巻、第10号,p.1062−1068
【文献】
Etienne Pralong, Claudio Pollo, Jocelyne Bloch, Jean-Guy Villemure, Roy Thomas Daniel, Marie-Helene,"Recording of ventral posterior lateral thalamus neuron response to contact heat evoked potential in,Neuroscience Letters,IE,Elsevier Ireland Ltd.,2004年,第367巻,p.332−335
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
筒状ケーシングと、該筒状ケーシング内先端側に配設された冷却手段、温度検知手段を備えてなるハンドヘルドモジュールと、前記温度検知手段からの温度検知信号に応じて局所脳表を所定温度に制御するための冷却制御部とを備えてなり、前記ハンドヘルドモジュールの先端側を大脳局所に接触させ脳表を所定温度に冷却して大脳局所の状態をモニタリングするために用いる大脳局所冷却プローブであって、前記筒状ケーシング内先端側に配設された冷却手段がペルチエ素子であり、該ペルチエ素子の後側である発熱面に接して冷却液流通部が配設され、該冷却液流通部と前記ハンドヘルドモジュール外に設けられた放熱部とを管路で連結して冷却液を循環させ放熱を行うようにし、前記ペルチエ素子の前面に金属板を配設して前記筒状ケーシング先端面として露出するようにし、該金属板内に前記温度検知手段を埋め込むようにして配接したことを特徴とする大脳局所冷却プローブ。
筒状ケーシングと、該筒状ケーシング内先端側に配設された冷却手段、温度検知手段を備えてなるハンドヘルドモジュールと、前記温度検知手段からの温度検知信号に応じて局所脳表を所定温度に制御するための冷却制御部とを備えてなり、前記ハンドヘルドモジュールの先端側を大脳局所に接触させ脳表を所定温度に冷却して大脳局所の状態をモニタリングするために用いる大脳局所冷却プローブであって、前記筒状ケーシング内先端側に配設された冷却手段がペルチエ素子であり、該ペルチエ素子の後側である発熱面に接して冷却液流通部が配設され、該冷却液流通部と前記ハンドヘルドモジュール外に設けられた放熱部とを管路で連結して冷却液を循環させ放熱を行うようにし、前記ペルチエ素子の前面に金属板を配設して前記筒状ケーシング先端面として露出するようにし、該金属板内に前記温度検知手段及び脳波検知電極を埋め込むようにして配接したことを特徴とする大脳局所冷却プローブ。
筒状ケーシングと、該筒状ケーシング内先端側に配設された冷却手段、温度検知手段を備えてなるハンドヘルドモジュールと、前記温度検知手段からの温度検知信号に応じて局所脳表を所定温度に制御するための冷却制御部とを備えてなり、前記ハンドヘルドモジュールの先端側を大脳局所に接触させ脳表を所定温度に冷却して大脳局所の状態をモニタリングするために用いる大脳局所冷却プローブであって、前記筒状ケーシング内先端側に配設された冷却手段がペルチエ素子であり、該ペルチエ素子の後側である発熱面に接して冷却液流通部が配設され、該冷却液流通部と前記ハンドヘルドモジュール外に設けられた放熱部とを管路で連結して冷却液を循環させ放熱を行うようにし、前記ペルチエ素子の前面に金属板を配設して前記筒状ケーシング先端面として露出するようにし、該金属板内に前記温度検知手段を埋め込むようにして配設し、前記金属板を脳波検知電極として用いるようにしたことを特徴とする大脳局所冷却プローブ。
前記ハンドヘルドモジュールが5〜10mmの範囲内の直径を有する円筒形状であり、前記ハンドヘルドモジュール先端部の温度を5〜15℃の範囲内の所定温度に制御するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の大脳局所冷却プローブ。
それぞれ筒状ケーシングと、該筒状ケーシング内先端側に配設された冷却手段と、温度検知手段とを備えてなる複数の冷却用モジュールを各冷却用モジュールの冷却先端面が同一平面内にあるように揃えて配設したものを1つのケーシング内に収容してなるマッピングモジュールと、
前記マッピングモジュールの各冷却用モジュールにおける温度検知手段からの温度検知信号に応じて局所脳表を所定温度に制御するための冷却制御部と、
前記マッピングモジュールにおける複数の冷却用モジュールのうち1つを選択し該選択された1つの冷却用モジュールのみについて冷却作用を行わせるようにするための冷却用モジュール選択手段と、
選択された前記冷却用モジュールの冷却作用に応じてモニタリングされた大脳局所の応答についての情報を入力するための応答入力手段と、
該応答入力手段により入力された情報を蓄積しマッピングデータを生成するためのマッピングデータ生成手段と、
を備えてなり、
前記マッピングモジュールにおける各冷却用モジュールの冷却手段がペルチエ素子であり、該ペルチエ素子の後側である発熱面に接して冷却液流通部が配設され、前記複数の冷却用モジュールにおける冷却液流通部からの冷却液の流入管路及び流出管路がそれぞれ冷液用放熱部及び温液用放熱部のいずれか一方に連結可能にされ、選択された1つの冷却用モジュールに対して冷液の冷却液を循環させ、他の冷却用モジュールに対して温液の冷却液を循環させてそれぞれ前記冷液用放熱部及び温液用放熱部において放熱を行うようにしたことを特徴とする脳機能マッピング装置。
それぞれ筒状ケーシングと、該筒状ケーシング内先端側に配設された冷却手段と、温度検知手段とを備えてなる複数の冷却用モジュールを各冷却用モジュールの冷却先端面が同一平面内にあるように揃えて配設したものを1つのケーシング内に収容してなるマッピングモジュールと、
前記マッピングモジュールの各冷却用モジュールにおける温度検知手段からの温度検知信号に応じて局所脳表を所定温度に制御するための冷却制御部と、
前記マッピングモジュールにおける複数の冷却用モジュールのうち1つを選択し該選択された1つの冷却用モジュールのみについて冷却作用を行わせるようにするための冷却用モジュール選択手段と、
選択された前記冷却用モジュールの冷却作用に応じてモニタリングされた大脳局所の応答についての情報を入力するための応答入力手段と、
該応答入力手段により入力された情報を蓄積しマッピングデータを生成するためのマッピングデータ生成手段と、
を備えてなり、
前記マッピングモジュールにおける各冷却用モジュールの冷却手段がペルチエ素子であり、該ペルチエ素子の後側である発熱面に接して冷却液流通部が配設され、前記複数の冷却用モジュールにおける冷却液流通部からの冷却液の流入管路及び流出管路がそれぞれ冷液用放熱部及び温液用放熱部のいずれか一方に連結可能にされ、選択された1つの冷却用モジュールに対して冷液の冷却液を循環させ、他の冷却用モジュールに対して温液の冷却液を循環させてそれぞれ前記冷液用放熱部及び温液用放熱部において放熱を行うようにし、前記マッピングモジュールにおける各冷却用モジュールのペルチエ素子の前面に金属板を配設して各冷却用モジュールの筒状ケーシング先端面として露出するようにし、該金属板内に前記温度検知手段を埋め込むようにして配接したことを特徴とする脳機能マッピング装置。
それぞれ筒状ケーシングと、該筒状ケーシング内先端側に配設された冷却手段と、温度検知手段とを備えてなる複数の冷却用モジュールを各冷却用モジュールの冷却先端面が同一平面内にあるように揃えて配設したものを1つのケーシング内に収容してなるマッピングモジュールと、
前記マッピングモジュールの各冷却用モジュールにおける温度検知手段からの温度検知信号に応じて局所脳表を所定温度に制御するための冷却制御部と、
前記マッピングモジュールにおける複数の冷却用モジュールのうち1つを選択し該選択された1つの冷却用モジュールのみについて冷却作用を行わせるようにするための冷却用モジュール選択手段と、
選択された前記冷却用モジュールの冷却作用に応じてモニタリングされた大脳局所の応答についての情報を入力するための応答入力手段と、
該応答入力手段により入力された情報を蓄積しマッピングデータを生成するためのマッピングデータ生成手段と、
を備えてなり、
前記マッピングモジュールにおける各冷却用モジュールの冷却手段がペルチエ素子であり、該ペルチエ素子の後側である発熱面に接して冷却液流通部が配設され、前記複数の冷却用モジュールにおける冷却液流通部からの冷却液の流入管路及び流出管路がそれぞれ冷液用放熱部及び温液用放熱部のいずれか一方に連結可能にされ、選択された1つの冷却用モジュールに対して冷液の冷却液を循環させ、他の冷却用モジュールに対して温液の冷却液を循環させてそれぞれ前記冷液用放熱部及び温液用放熱部において放熱を行うようにし、前記マッピングモジュールにおける各冷却用モジュールのペルチエ素子の前面に金属板を配設して各冷却用モジュールの筒状ケーシング先端面として露出するようにし、前記マッピングモジュールの各冷却用モジュールの先端面における金属板を脳波検知電極として用いるようにしたことを特徴とする脳機能マッピング装置。
前記マッピングモジュールを構成する各冷却用モジュールが5〜10mmの範囲内の直径を有する円筒形状であり、前記冷却用モジュール先端部の温度を5〜15℃の範囲内の所定温度に制御するものであることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の脳機能マッピング装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明による大脳局所冷却プローブ及び脳機能マッピング装置について説明する。大脳局所冷却プローブは冷却用のハンドヘルドモドュールを用いて大脳局所に冷却作用を与え、それに対する大脳局所の応答を検査してモニタリングするものである。脳機能マッピング装置は、大脳局所冷却プローブに用いられる冷却モジュールを複数配置したマッピングモジュールを構成し、それを用いて脳機能のマッピングを行うものである。
【0018】
〔大脳局所冷却プローブ〕
図1は、本発明による大脳局所冷却プローブを用いて大脳のモニタリングを行う状況を示す。
図1において、大脳局所冷却プローブはハンドヘルドモジュールM、放熱部A、制御処理部Bからなる。ハンドヘルドモジュールMは筒状の外形を有し、ペルチエ素子を用いた冷却部、センサーによる検出部を備え、先端を大脳局所に接触させて冷却する機能を有する。
【0019】
放熱部AはハンドヘルドモジュールMにおけるペルチエ素子による発熱を放熱するための循環する冷却液のリザーバ、循環用ポンプ等を備え、冷却液の流入管路、流出管路によりハンドヘルドモジュールMに連結されている。制御処理部BはハンドヘルドモジュールMと、放熱部Aとに配線により接続され、ハンドヘルドモジュールMにおけるペルチエ素子の動作制御を行うとともにハンドヘルドモジュールMにおける温度検知素子により検出された温度、脳波信号等を受けて信号処理を行い、放熱部Aにおける冷却液循環用ポンプの動作制御を行う。冷却液としては、比熱が比較的大きく生体安全性が高い生理食塩水、リンゲル液、純粋等を用いる。
【0020】
図2はハンドヘルドモジュールMの外観を斜視図で示している。ハンドヘルドモジュールMは大脳局所冷却のためその先端面を大脳局部に接触させるようにしたものであり、生体適合性の面からポリプロピレン等の材質で形成され、外形が滑らかな円筒形状としたケーシング1内に冷却用ペルチエ素子、放熱用冷却液循環部の要素が収容されている。冷却用ペルチエ素子の前面に銀等の熱伝導率の高い材質よる金属板3が添設され、ケーシング1の先端面に露出している。ケーシング1の後端壁部1aはケーシング1を閉塞するものであるが、ペルチエ素子の放熱用冷却液循環のための流入管路、可撓性樹脂材質による流出管路5a,5b、温度検知素子、脳波検知電極からの検出信号送出用の配線8,9、ペルチエ素子の動作のための配線10が後端壁部1aを通り抜けている。
図2で配線8,9,10を1本で代表させて示してある。
【0021】
図3(a)はハンドヘルドモジュールMのケーシング1を縦方向の面で破断して内部を示す図であり、
図3(b)はケーシング内の先端部側に収容される個々の要素を示す斜視図である。
図3(a),(b)において、ペルチエ素子2の前面(冷却側)に金属板3が添設されペルチエ素子2の後面(発熱側)には冷却液流通部4の前面が接触する形で配設されている。金属板3は生体安全性として好適で熱伝導率が高い銀等の材質のものとする。冷却液流通部4は内部が箱状の閉鎖空間になっており、壁部でペルチエ素子の発熱側からの熱を伝達するため銀等の熱伝導率の高い材質で形成し、またプローブ操作時にキンクを生じない材質のものとする。冷却液流通部4には流入管路、流出管路5a,5bを通じて冷却液が循環する。
【0022】
図3(b)においては、金属板3、ペルチエ素子2、冷却液流通部4を離した状態で示してある。金属板3において熱電対等による温度検知素子6、脳波検知電極7が埋め込まれる形で設けられている。8は温度検知素子6からの検出信号を伝送する配線、9は脳波検知電極(ECoG電極)からの検知信号を伝送する配線であり、10はペルチエ素子駆動制御のための配線である。脳波検知電極7としては、金属板3自体を用いるようにしてもよい。
図3(a)において、配線9,10を1本で代表させて示してある。
【0023】
図3(a)に示すように、金属板3、ペルチエ素子2、冷却液流通部4がハンドヘルドモジュールMのケーシング1先端側に密接した状態で配設され、金属板3がケーシング1の先端面に露出し、その周囲をケーシング1の壁部が密封するように保持している。ハンドヘルドモジュールMの先端側は大脳局所に接する部分であり、金属板3とその周囲を密封保持するケーシング1の部分とが滑らかに接続し、先端面の隅部が適度に丸みをもつ形状とするのがよい。
【0024】
後端壁部1aはケーシング1の後端部を閉塞し、冷却液循環のための流入管路、流出管路5a,5b、配線8,9,10は後端壁部1aを通り抜けている。円筒形状のケーシング1と後端壁部1aとを合わせたハンドヘルドモジュールMの外径寸法は、長さ150mm、直径5〜10mm程度であるのが好適である。流入管路、流出管路5a,5b、配線8,9,10は後端壁部1aの箇所またはそれよりケーシングの外方においてコネクタにより接離可能な形態としてもよい。
【0025】
図4は放熱部A、制御処理部Bの構成をより詳細に示す図である。放熱部Aは冷却液循環用ポンプ21、冷却液の貯留のためのリザーバ22、リザーバ冷却部23を備えている。冷却液循環用ポンプ21は流入管路、流出管路5a、5bによりハンドヘルドモジュールM内の冷却液流通部4に連結され、冷却液流通部4とリザーバ22との間での冷却液の循環を行う。リザーバ22にはリザーバ冷却部23が付設されている。ペルチエ素子での発熱のためリザーバに還流される冷却液は温度が上昇しており、リザーバ22においてはこれを所定温度まで冷却する。リザーバ冷却部23ではリザーバ22において冷却液を効率的に冷却するための、ガス冷却、ペルチエ素子冷却等による冷却手段を備える。リザーバ冷却部23での冷却液の冷却を効率的に行うには、リザーバ22としてある長さの巡回管路を形成し、それに沿って周囲から冷却手段で冷却する形態の冷却手段がよい。
【0026】
制御処理部Bはプローブ動作制御部31、冷却液循環制御部32、スイッチ・設定入力部33、データ処理部34を備えている。プローブ動作制御部31は配線8,9,10を介してハンドヘルドモジュールM側と接続されており、配線8を介して温度検知素子6からの信号を受け、配線9を介して脳波検知電極7からの信号を受ける。温度検知信号からAD変換して得られたデータに基づいて配線10を介して脳局所を設定温度に冷却するようにペルチエ素子2の動作の制御を行うとともに、ペルチエ素子2の冷却動作に伴う発熱分を冷却液流通部4内に流通する冷却液により放熱すべく冷却液の循環を制御するための温度制御に関するデータを冷却液循環制御部32に伝送する。また、脳波検知電極7からの信号に基づくデータはさらにデータ処理部34に伝送される。データ処理部34としては、検知信号のAD変換、温度制御、ペルチエ素子動作制御等のための制御回路を備えるものである。
図4で配線8,9,10は1本で代表させて示してあり、また、流入管路、流出管路5a,5bも1本で代表させて示してある。
【0027】
冷却液循環制御部32はプローブ制御部31から伝送された温度制御に関するデータに応じて冷却液循環を行うように冷却液循環ポンプの動作を制御するものであり、そのための制御回路を備える。スイッチ・設定入力部33は大脳局所冷却プローブの全体的な動作のオン・オフ、冷却温度の設定・入力のためのキー等を備えるものである。
【0028】
ペルチエ素子2を動作させた時の発熱が冷却液流通部4を通って循環する冷却液により放熱がなされることによって大脳局部の冷却が効率的になされるのであるが、ペルチエ素子2の電源オフ後には冷却液の循環を同時に停止せず、3〜5分程度の時間循環させることが必要である。これは冷却液循環を同時に停止させることによりプローブ温度が急上昇するのを防止するためである。
【0029】
図4において、大脳局所冷却プローブを動作させるための電源部に関して特に図示していないが、放熱部Aにおけるポンプ21、リザーバ冷却部23の動作、制御処理部Bの各制御回路の動作のために電源部から電力が供給される。電源部は通常のAC電源からアダプタにより整流変圧する形態のものが用いられる。また、大脳局所冷却プローブを用い、ハンドヘルドモジュールの先端を大脳局所に接触させモニタリングする際に、その位置の情報を取得することが望まれるが、これについては例えば既存のナビシステムを援用することによりなされる。
【0030】
本発明による大脳局所冷却プローブは以上のように構成されるものであり、ハンドヘルドモジュール内の冷却液流通部4に冷却液を循環させた状況でペルチエ素子を駆動して大脳局所の冷却を行い、この冷却を大脳局所に対する刺激として応答を得て、大脳局所の状態のモニタリングを行うことができる。
【0031】
本発明による大脳局所冷却プローブの使用形態について示すと、次のようになる。
(a)全身麻酔下で病変摘出及びモニタリングに必要な範囲での開頭を行う。
(b)開頭終了後、麻酔を中止し患者の覚醒状態を得る。
(c)大脳局所冷却プローブの動作状態において所定温度に設定した上でハンドヘルドモジュール先端部を大脳局所に接触させ脳波信号を検知することを含め解剖学的に予想される言語野あるいは運動野を中心に脳機能のモニタリングを行う。
冷却に際しては、ハンドヘルドモジュール先端部の温度を例えば5〜15℃の範囲内の所定温度になるようにし、冷却前、冷却中、冷却終了後の患者の神経症状(言語機能、四肢運動機能)の変化を観察する。
(d)言語機能は物品呼称で評価する。運動機能は上肢挙上、離握手、下肢挙上、足指運動で評価する。
(e)冷却部位及び周辺の脳波を測定し、電気的活性の変化についても観察する。
これらの全測定を60分以内に終了する。
大脳局所冷却プローブを用いたこれらの測定を有効、効率的に行う上で、至適温度及び冷却時間についての評価、設定を行うことが好ましい。
【0032】
〔脳機能マッピング装置〕
脳機能マッピング装置は、大脳局所冷却プローブにおいて局所を冷却するために用いられるハンドヘルドモジュールと同様の冷却用のモジュールを複数用い、その冷却先端面を縦横に配列されるように並設しマッピングモジュールとして構成したものを用いる。
図5は、そのように構成したマッピングモジュールを備える脳機能マッピング装置の全体的構成を示すものである。
【0033】
図5において、MMは複数の冷却用モジュールを、その先端面が同一平面内にあるように揃えて配設したマッピングモジュールである。マッピングモジュールを構成する冷却用モジュールは、
図2,3に示される大脳局所冷却プローブにおけるハンドヘルドモジュールと同様に筒状ケーシングの先端側に配設されたペルチエ素子を、その発熱面側に接して配設された冷却液流通部に冷却液を循環させた上で選択的に動作させる構成によるものであり、マッピングを行う際にはマッピングモジュールの複数の冷却用モジュールのうちの特定の1本を選択して局所の冷却を行うようにする。
【0034】
各マッピングモジュールMMを動作させるための構成は、基本的には
図4に示される大脳局所冷却プローブと同様に放熱部A、制御処理部Bを備えているが、特に異なるのは、放熱部Aが温液用放熱部A
wと冷液用放熱部A
cとに分かれており、流路切換器CVにより切り換えて温液、冷液を循環させるようにしたことと、複数の冷却用モジュールのうちの1つにおけるペルチエ素子を選択的に動作させるペルチエ素子切換スイッチSW、複数の冷却用モジュールからの使用するものの選択、マッピングモジュールMMによる大脳局所の検査位置、検査項目の指定、応答の入力を行うための設定入力ボードIBを備えることである。温液用放熱部A
wと冷液用放熱部A
cとはそれぞれ冷却液循環用ポンプ、冷却液の貯留のためのリザーバ、リザーバ冷却部を備えている。
【0035】
図6はマッピングモジュールMMの各冷却用モジュールへの配線、配管の連結形態を示している。冷却用モジュールはn×mとして配列されるものとして、これをM
11,M
12,………,M
mnのように並置して示してある。各冷却用モジュール内のペルチエ素子を動作させるための配線a
11,a
12,………,a
mnは各冷却用モジュールM
11,M
12,………,M
mnからペルチエ素子切換スイッチSWに接続されており、スイッチSWでの切り換えにより選択された配線により各冷却用モジュールのペルチエ素子に動作電流が供給される。
【0036】
各冷却用モジュールM
11,M
12,………,M
mnの温度検知素子及び脳波検知電極からの配線はまとめてb
11,b
12,………,b
mnで表されているが、それぞれペルチエ素子動作制御部41に接続されている。各冷却用モジュールM
11,M
12,………,M
mnの冷却液流通部からの配管(流入管路、流出管路)はまとめてc
11,c
12,………,c
mnで表されており、流路切換器CVに連結されている。
【0037】
スイッチSWでの切り換えにより選択された冷却用モジュールに対して冷液用放熱部A
cからの冷却液を循環させ、他の冷却用モジュールに温液用放熱部A
wからの冷却液を循環させるように流路切換器CVにより流路の切り換えがなされる。流路切換器CVは温液用管路c
wで温液用放熱部A
wと連結され、また、冷液用管路c
cで冷液用放熱部A
cと連結されている。
【0038】
選択された特定の冷却用モジュールに冷液用放熱部A
cからの冷液を循環させ、他の冷却用モジュールに温液用放熱部A
wからの温液を循環させるための流路切換器CVは例えば
図7のように構成される。
図7では配管の位置関係が
図6とは上下逆になっており、円筒形容器をなす流路切換器CV本体部(鎖線で示してある)に対し、その上面において温液用放熱部A
wからの連結管路c
wが連結部FJで連結され、冷液用放熱部A
cからの連結管路c
cが流路切換器CV本体部の上面の中心位置で連結部RJで連結されている。
【0039】
連結部FJは固定的なものであり流路切換器CV本体内への温液の流入・流出がなされるものである。連結部RJはロータリージョイントとして選択連結管路CTの一方の端部に連結されている。選択連結管路CTの他方の単部は流路切換器CV本体部の下側に配設された回動可能なリング状駆動体Rの一箇所に内方に突出して設けられた連結部RCに連結されており、連結部RCではさらに下方に冷液を流通させるように連通している。選択連結管路CTは熱伝導率の小さい材質で形成されるのがよい。
【0040】
選択連結管路CTの下側端部の位置と同一半径円周上に複数の通孔h
11,h
12,………が形成され、それぞれの通孔の下側に冷却用モジュールと連結される流入管路ないし流出管路c
11,c
12,……が連結されている。リング状駆動体Rはパルスモータまたは超音波モータ等により駆動され、連結部の円周方向への移動により選択された配管(流入管路、流出管路c
11,c
12,………)が選択連結管路CTを経て冷液用の連結管路c
cと連結される。選択された配管以外の配管は流路切換器CV本体内部を介して温液用の連結管路c
wと連結される。
【0041】
リング状駆動体Rの回動動作により連結部RCに連結された選択連結管路CTを所望の通孔(h
11,h
12,………のいずれか)の位置にもたらすと、選択された配管(流入管路、流出管路)のみに冷液用放熱部A
cからの冷液が循環し、他の配管には温液用放熱部A
wからの温液が循環することになる。
【0042】
温液用放熱部A
wでは常時通常の脳表と同程度の温液を循環させるようにするため、35℃前後の冷却液を循環させる。冷液用放熱部A
cでは選択された冷却用モジュールで局所を冷却するために5℃〜15℃の冷却液を循環させるのがよい。また、配管としてc
11,c
12,………で代表して図示しているが、それぞれの冷却用モジュールからの流入管路と流出管路の2系統の配管があり、流路切換器CVもそれに応じて同等のものを2系統分だけ備えることになる。
【0043】
流路切換器CV本体部は冷液と温液との循環の切り換えを行うためのものであり、貯留のためのものではないので、できるだけ本体部の容量は小さいものとするのがよい。また、流路切換器CVは選択された冷却用モジュールのみに冷液を循環させ、他の冷却用モジュールには温液を循環させるように切り換える作用をなすものであり、前述とは異なる形態として、それぞれの流入管路、流出管路ごとに切換弁により冷液と温液とを切り換えて流通させるようにしてもよい。
【0044】
図8はマッピングモジュールの部分の外形を示すものであり、ここでは16本(4×4)の冷却用モジュールM
11,M
12,………,M
44を並置した場合について示している。各冷却用モジュールの冷却先端面を同一平面内に揃えて配置し、全体をケーシングFで保持している。後側の連結部CPは放熱部A
w、A
c、制御部Bのペルチエ阻止制御部41への配管、配線の接続部になっている。
【0045】
制御処理部BはマッピングモジュールMMの各冷却用モジュールにおけるペルチエ素子動作制御部41、冷却液循環制御部42、データ処理部43を備えている。ペルチエ素子動作制御部41には各冷却用モジュールの温度検知素子、脳波検知電極からの配線b
11,b
12,………,b
mnが接続されるとともに、配線dでペルチエ素子切換スイッチSWと接続され、配線gで流路切換器CVと接続されている。配線dはスイッチSWにより選択されたペルチエ素子についての情報を受ける配線と選択されたペルチエ素子に動作電流を供給する配線とをまとめて示している。
【0046】
ペルチエ素子動作制御部41では各冷却用モジュールからの配線b(b
11,b
12,………,b
mn)により各温度検知素子、脳波検知電極からの信号を受けており、スイッチSWにより選択された冷却用モジュールに関して大脳局所の冷却温度が設定された値になるようにその選択されたペルチエ素子を動作させるための電流を供給する。また、配線gを介してリング状駆動体Rの回動動作を制御する。
【0047】
冷却液循環制御部42はペルチエ素子動作制御部41で受けた温度制御に関するデータに応じて冷却液循環を行うように冷却液循環ポンプの動作を制御するものであり、配線qを介して温液用放熱部A
wでのポンプによる冷却液の循環、冷却液の温度制御を行い、配線pを介して冷液用放熱部A
cでのポンプによる冷却液の循環、冷却液の温度制御を行う。
【0048】
ペルチエ素子2を動作させた時の発熱が冷却液流通部4を通って循環する冷却液により放熱がなされることによって大脳局部の冷却が効率的になされるのであるが、ペルチエ素子の動作停止後に冷却液の循環を同時に停止せず、3〜5分程度の時間循環させるように冷却液循環の制御行うことが必要である。これは冷却液循環を同時に停止させることによりプローブ温度が急上昇するのを防止するためである。
【0049】
ペルチエ素子動作制御部41で受けた温度検知信号、脳波検知信号はAD変換された形でデータ処理部43に伝送され、さらに、設定入力ボードIBで設定入力されたデータがデータ処理部43に伝送される。データ処理部43では、温度検知信号に基づくデータの解析を行うとともに、設定入力されたデータに応じたマッピングデータを形成し、それらのデータを蓄積し、逐次ディスプレイDPに表示する。
【0050】
設定入力ボードIBはマッピングを行う際に検査項目等を選択し、入力を行うために用いられ、例えば
図9に示されるような形態となる。
図9で、左側の検査位置はマッピングモジュールにおける複数の冷却用モジュールのうちのいずれを選択し探査を行うかについて指定するためのボタンが配置されている。このボタンで選択された冷却用モジュールのペルチエ素子を配線a,dを介して動作させるようにスイッチSWを介して切換えがなされるとともに、いずれの冷却モジュールが選択されたかについて情報がデータ処理部43に伝送される。
【0051】
図9で中央位置の検査項目としては、選択された冷却用モジュールでの大脳局所の冷却に対する応答としての検査すべき項目を指定するボタンが配置されている。また、右側の応答のボタンは、各検査項目について、検査対象の大脳局所での応答により応答の有無、正常・異常等の判定内容を指定入力するためのボタンが配置されている。これらのボタンの選択により、各検査位置、検査項目について、応答を判定した結果が入力され、データ処理部43に伝送される。
【0052】
設定入力ボードIBにおける設定入力ボタンの配置は脳機能マッピング装置による検査項目等の内容に応じたものとする。左側の冷却用モジュール選択用ボタンは冷却用モジュールの配列、構成に応じたものであり、検査項目、応答のボタンもそれらの形態に応じたものとして配設される。設定入力ボタンは押下式ボタンあるいはタッチパネル式等の形態とすることができる。さらに、設定入力ボード下部にはマッピング装置の動作のオンオフ・スイッチ、マッピングモジュールでの冷却による温度の設定部が配設する。
【0053】
設定入力ボードIBの機能はキー、ボタン等の操作によるハードウエアとしての構成のほか、脳機能マッピング装置の制御に関するプログラムを形成し、設定入力ボードとしての所定操作事項、項目をレイアウトしたものをディスプレイ画面として表示し、コンピュータ上のキー操作で設定、入力を行うようにしてもよい。
【0054】
前述のような構成による脳機能マッピング装置により脳機能のマッピングを行う操作過程は、大脳局所冷却プローブで大脳局所の状態のモニタリングを行う場合と同様の段階を経て進められる。
すなわち、
(a)全身麻酔下で病変摘出及びマッピングに必要な範囲での開頭を行う。
(b)開頭終了後、麻酔を中止し患者の覚醒状態を得る。
(c)大脳局所冷却プローブの動作状態において所定温度に設定した上でマッピングモジュール先端部を大脳局所に接触させ脳波信号を検知することを含め解剖学的に予想される言語野あるいは運動野を中心に脳機能のマッピングを行う。
冷却に際しては、マッピングモジュールの冷却用モジュール先端部の温度を例えば5〜15℃の範囲内の所定温度になるようにし、冷却前、冷却中、冷却終了後の患者の神経症状(言語機能、四肢運動機能)の変化を観察する。
(d)言語機能は物品呼称で評価する。運動機能は上肢挙上、離握手、下肢挙上、足指運動で評価する。
(e)冷却部位及び周辺の脳波を測定し、電気的活性の変化についても観察する。
という過程で進められる。
【0055】
マッピングの実施の際に、設定入力ボードIBにおける脳機能マッピング装置のオンオフ・スイッチの操作により装置を動作させ、温度設定部によりマッピングモジュールによる冷却温度を設定する。設定された温度に対する大脳局所の冷却温度はペルチエ素子の動作、冷却液循環により制御され、その結果がディスプレイに表示される。所定温度であることを確認した後に、マッピングモジュールを用いてマッピングを行う。
【0056】
初めに、検査位置のボタンにより冷却用モジュールM
11,M
12,………,M
mnのうちの1つを選択指定し、その指定された冷却用プローブのみについてペルチエ素子が冷却動作状態になるとともに冷液が循環する状態になり、他の冷却用モジュールはペルチエ素子が非動作状態になるとともに温液が循環する状態になっている。その状態で、被検者の示す応答を逐次検査していく。この操作は、例えば、M
11の冷却用プローブを指定している時に、右手についての応答を確認し、「右手」のボタンを押し、その時の応答の有無、正常か異常かについて、応答のボタンを押して入力を行う。このような操作により、左手、右足、……等の検査項目について順次応答を確認し、応答ボタンによる入力を行っていく。
【0057】
各冷却用プローブについての検査項目、それについての応答として入力されたデータは順次データ処理部のメモリーに蓄積され、冷却用モジュールM
11,M
12,………,M
mnの全体について行った検査項目、応答の結果のデータは脳機能マッピングデータとなる。
【0058】
図10は、脳機能マッピングデータを表示する場合の一例を示しており、背景としての大脳はイメージ的に合わせて示したものであり、ディスプレイ上にはマッピングモジュールMMの部分についての表示がなされ、
図10ではマッピングデータのうち、言語野に関するものとして、M
22,M
23,M
32,M
33において異常となっている結果が表示されているものである。
【0059】
本発明による大脳局所冷却プローブ、冷却用のモジュールを複数備えて構成されたマッピング装置では、冷却手段での冷却を刺激として作用させて応答を得るものであり、電極を用いて刺激を与える場合のように痙攣発作を誘発することはなく、安全性、信頼性の高いものとなる。