特許第5688758号(P5688758)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5688758
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】車両の車体側部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/02 20060101AFI20150305BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20150305BHJP
   B60J 5/06 20060101ALI20150305BHJP
【FI】
   B62D25/02 B
   B62D25/08 L
   B60J5/06 Z
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-17124(P2011-17124)
(22)【出願日】2011年1月28日
(65)【公開番号】特開2012-158199(P2012-158199A)
(43)【公開日】2012年8月23日
【審査請求日】2013年11月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084272
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 忠雄
(72)【発明者】
【氏名】米谷 典之
(72)【発明者】
【氏名】大久保 安剛
(72)【発明者】
【氏名】林 孝哉
【審査官】 三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−329751(JP,A)
【文献】 実開平02−060657(JP,U)
【文献】 実開昭64−032281(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/02
B62D 25/04
B62D 25/08
B60J 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の幅方向で互いに対面し互いに結合されるアウタ、インナパネルを有して中空閉断面構造とされる車体の側壁と、この側壁に形成されたドア開口と、このドア開口を車体の外側方から開閉可能に閉じるサイドドアと、上記ドア開口の開口縁部におけるアウタパネルに取り付けられ、上記ドアを係脱可能に係止する係止具と、上記側壁の内部空間に設けられ、前、後部が上記アウタパネルにそれぞれ結合されて上記アウタパネルへの上記係止具の取り付け部を補強する補強パネルとを備えた車両の車体側部構造において、
車体の前後方向における上記ドア開口と係止具との間で上下方向に延びる上記補強パネルの中途部の上、下二ヵ所を上記インナパネルに結合し、車体の背面視で、上記上、下二ヵ所の結合部の間における上記インナパネルと補強パネルの中途部とにより中空閉断面構造を形成し、
記補強パネルの中途部を屈曲させて屈曲部を形成し、上記補強パネルの中途部における屈曲部の近傍部分を上記インナパネルに結合したことを特徴とする車両の車体側部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の側壁に形成されたドア開口の開口縁部において、サイドドアを係止する部分を補強する補強パネルを設けた車両の車体側部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記車両の車体側部構造には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、車両の車体側部は、車体の幅方向で互いに対面し互いに結合されるアウタ、インナパネルを有して中空閉断面構造とされる車体の側壁と、この側壁に形成されたドア開口と、このドア開口を車体の外側方から開閉可能に閉じるサイドドアと、上記ドア開口の開口縁部におけるアウタパネルに取り付けられ、上記ドアを係脱可能に係止する係止具と、上記側壁の内部空間に設けられ、前、後部が上記アウタパネルにそれぞれ結合されて上記アウタパネルへの上記係止具の取り付け部を補強する補強パネルとを備えている。
【0003】
上記係止具による係止を解除して、ドアを上記側壁の外側方に移動させれば、上記ドア開口が開かれる。一方、この状態から上記ドアをドア開口側へ移動させれば、このドア開口が閉じられると共にドアが上記係止具に自動的に係止され、この係止状態が維持されてドア開口が閉じられた状態に維持される。
【0004】
ここで、上記したように、ドアがドア開口を閉じてドアが係止具に係止されるときや、この係止具が上記係止状態を維持して車両が走行するときには、上記係止具にはドアから外力が与えられるが、この外力は、上記アウタパネルへの係止具の取り付け部と、この取り付け部を補強している上記補強パネルとによって強固に支持されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−49037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車両の衝突時には、車体内部の車室における乗員や荷物などが、車室側からドアに衝突して衝撃力を与えることがある。この場合、この衝撃力により、ドアは上記側壁の外側方に向かうよう変位しようとし、その一方、上記係止具は、上記ドアをドア開口の開口縁部に係止させた状態を維持しようとする。
【0007】
ここで、上記衝撃力が大きい場合には、上記アウタパネルへの係止具の取り付け部と、この取り付け部を補強している補強パネルとの組み立て体を介し、上記衝撃力は上記補強パネルの周りのアウタパネルの部分に与えられて変形しがちとなる。すると、このアウタパネルの部分の変形により、上記組み立て体が、上記インナパネルから側壁の外側方に向かって離れるよう一体的に変位し、この結果、上記側壁が過大に変形するおそれを生じる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、車両の車体の側壁に形成されたドア開口を閉じ、かつ、その開口縁部に係止されているサイドドアが、車両の衝突時に与えられる衝撃力により上記側壁の外側方に向かって変位しようとする場合、この側壁が過大に変形しないようにすることである。また、これが簡単な構成で、軽量かつ安価に達成できるようにすることである。
【0009】
請求項1の発明は、車体3の幅方向で互いに対面し互いに結合されるアウタ、インナパネル22,23を有して中空閉断面構造とされる車体3の側壁9と、この側壁9に形成されたドア開口13と、このドア開口13を車体3の外側方から開閉可能に閉じるサイドドア14と、上記ドア開口13の開口縁部におけるアウタパネル22に取り付けられ、上記ドア14を係脱可能に係止する係止具19と、上記側壁9の内部空間に設けられ、前、後部が上記アウタパネル22にそれぞれ結合されて上記アウタパネル22への上記係止具19の取り付け部を補強する補強パネル25とを備えた車両の車体側部構造において、
車体3の前後方向における上記ドア開口13と係止具19との間で上下方向に延びる上記補強パネル25の中途部25cの上、下二ヵ所を上記インナパネル23に結合し、車体3の背面視(図4)で、上記上、下二ヵ所の結合部の間における上記インナパネル23と補強パネル25の中途部25cとにより中空閉断面構造を形成し、
【0010】
記補強パネル25の中途部25cを屈曲させて屈曲部25dを形成し、上記補強パネル25の中途部25cにおける屈曲部25dの近傍部分を上記インナパネル23に結合したことを特徴とする車両の車体側部構造である。
【0011】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0012】
本発明による効果は、次の如くである。
【0013】
請求項1の発明は、車体の幅方向で互いに対面し互いに結合されるアウタ、インナパネルを有して中空閉断面構造とされる車体の側壁と、この側壁に形成されたドア開口と、このドア開口を車体の外側方から開閉可能に閉じるサイドドアと、上記ドア開口の開口縁部におけるアウタパネルに取り付けられ、上記ドアを係脱可能に係止する係止具と、上記側壁の内部空間に設けられ、前、後部が上記アウタパネルにそれぞれ結合されて上記アウタパネルへの上記係止具の取り付け部を補強する補強パネルとを備えた車両の車体側部構造において、
車体の前後方向における上記ドア開口と係止具との間で上下方向に延びる上記補強パネルの中途部の上、下二ヵ所を上記インナパネルに結合し、車体の背面視で、上記上、下二ヵ所の結合部の間における上記インナパネルと補強パネルの中途部とにより中空閉断面構造を形成している。
【0014】
このため、車両の車体の側壁に形成されたドア開口を閉じ、かつ、その開口縁部に係止具により形成されているサイドドアが、車両の衝突時の衝撃力を与えられて上記側壁の外側方に向かって変位しようとする場合には、上記衝撃力は、上記係止具を介し側壁のアウタパネルへの上記係止具の取り付け部と、この取り付け部を補強している補強パネルとによって支持されると共に、この補強パネルを介しインナパネルによっても支持される。よって、上記衝撃力が主に上記アウタパネルと補強パネルとによってのみ支持されていた従来の技術に比べ、上記側壁が過大に変形することは、より確実に防止される。
【0015】
また、上記した衝撃力による側壁の変形の防止は、上記補強パネルの中途部を上記インナパネルに結合するという単純な構成で達成できることから、別途補強材を設けないで足りる分、上記側壁の変形の防止は簡単な構成で、軽量かつ安価に達成できる。
【0016】
また、上記補強パネルの中途部を屈曲させて屈曲部を形成し、上記補強パネルの中途部における屈曲部の近傍部分を上記インナパネルに結合している。
【0017】
ここで、前記したようにドアに衝撃力が与えられて、この衝撃力が上記アウタパネルへの係止具の取り付け部と、この取り付け部を補強している補強パネルとによって支持されると共に、この補強パネルを介しインナパネルによっても支持されようとする場合には、上記した補強パネルの中途部の屈曲部は、上記衝撃力に基づく引張力によって直線的に延びるよう容易に変形するおそれがある。そして、このように補強パネルが変形したとすると、この補強パネルを介してのインナパネルによる上記衝撃力の支持は、不十分になりがちとなり、つまり、上記インナパネルに対しアウタパネルが外側方に向かって相対変位するよう側壁が変形しがちとなる。
【0018】
しかし、上記発明によれば、補強パネルの中途部における屈曲部の近傍部分を上記インナパネルに結合したため、上記したように、衝撃力が補強パネルを介しインナパネルによって支持されるとき、上記補強パネルの中途部の屈曲部が直線的に延びるよう変形することは未然に防止される。よって、上記したようにドアに衝撃力が与えられた当初において、上記補強パネルは上記衝撃力に対し直ちに強固に対抗する。
【0019】
この結果、上記ドアに衝撃力が与えられたとき、上記インナパネルに対しアウタパネルが外側方に向かって相対変位するよう側壁が変形し始めることは直ちに防止される。つまり、ドアに衝撃力が与えられた際の側壁の当初の変形が、更に次の変形を誘発して次から次へと変形が拡大する、ということが防止されて、側壁の過大な変形が確実に未然に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図3のI−I線矢視断面図である。
図2】車両の全体側面図である。
図3図2の部分拡大詳細図である。
図4図3のIV−IV線矢視断面図である。
図5図3のV−V線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の車両の車体側部構造に関し、車両の車体の側壁に形成されたドア開口を閉じ、かつ、その開口縁部に係止されているサイドドアが、車両の衝突時に与えられる衝撃力により上記側壁の外側方に向かって変位しようとする場合、この側壁が過大に変形しないようにすることである。また、これが簡単な構成で、軽量かつ安価に達成できるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0022】
即ち、車両の車体側部は、車体の幅方向で互いに対面し互いに結合されるアウタ、インナパネルを有して中空閉断面構造とされる車体の側壁と、この側壁に形成されたドア開口と、このドア開口を車体の外側方から開閉可能に閉じるサイドドアと、上記ドア開口の開口縁部におけるアウタパネルに取り付けられ、上記ドアを係脱可能に係止する係止具と、上記側壁の内部空間に設けられ、前、後部が上記アウタパネルにそれぞれ結合されて上記アウタパネルへの上記係止具の取り付け部を補強する補強パネルとを備えている。車体の前後方向における上記ドア開口と係止具との間で上下方向に延びる上記補強パネルの中途部の上、下二ヵ所を上記インナパネルに結合し、車体の背面視で、上記上、下二ヵ所の結合部の間における上記インナパネルと補強パネルの中途部とにより中空閉断面構造を形成している。また、上記補強パネルの中途部を屈曲させて屈曲部を形成し、上記補強パネルの中途部における屈曲部の近傍部分を上記インナパネルに結合している。
【実施例】
【0023】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0024】
図において、符号1は、自動車で例示される車両であり、矢印Frは、この車両1の進行方向の前方を示している。
【0025】
車両1は、その内部が車室2とされる車体3と、この車体3を走行面4上に支持する前、後車輪5,6とを備えている。上記車体3は、その左右各側部を構成する側壁9を有している。
【0026】
上記側壁9の前、後端部の各下端部に前、後ホイールハウス10,11が形成され、これら前、後ホイールハウス10,11に上記前、後車輪5,6のそれぞれ上半分が収容されている。
【0027】
上記後ホイールハウス10の前方近傍における上記側壁9の部分に車室2の内外を連通させるドア開口13が形成されている。このドア開口13を車体3の外側方から開閉可能に閉じるサイドドア14が設けられる。上記側壁9における上記ドア開口13の上、下部開口縁部、およびこのドア開口13の後方における上記側壁9の部分に、それぞれ前後方向に延びるレール15が設けられる。これらレール15は、上記ドア14を上記ドア開口13側から後方に向かって往、復移動させるよう支持している。つまり、上記ドア14はスライド式のものとされている。
【0028】
上記ドア14を往(後方)移動させれば、このドア14は上記ドア開口13側から一旦車体3の外側方に向かって移動した後、後方移動し、これにより上記ドア開口13が開かれる(図2中一点鎖線)。一方、この状態から上記ドア14を復(前方)移動させれば、このドア14は前方移動した後、車体3の内側方に向かって移動し、これにより上記ドア開口13が閉じられる(図1,3〜5中二点鎖線、図2中実線)。
【0029】
上記ドア開口13の後部開口縁部に締結具17により取り付けられ、上記ドア開口13を閉じたドア14の後端部に取り付けられた被係止具18を係脱可能に係止させる係止具19が設けられる。この係止具19はストライカと言われる。
【0030】
上記側壁9は板金製で、車体3の幅方向で互いに対面し、スポット溶接S1により互いに結合されるアウタ、インナパネル22,23を有し、中空閉断面構造とされている。
【0031】
上記したように、ドア14がドア開口13を閉じた状態では、このドア開口13の開口縁部に対し上記ドア14の外縁部が側壁9の外側方から重なるよう構成されている。この場合、側壁9のアウタパネル22の一般部22aの外面と、ドア14の外面とは互いに面一とされている。
【0032】
車体3の平面断面視(図1,5)で、上記ドア開口13の後部開口縁部における上記側壁9のアウタパネル22は、上記側壁9のアウタパネル22の一般部22aから車体3の内側方かつ前方に向かって傾斜方向に延びる傾斜延出部22bと、この傾斜延出部22bの延出端縁部から前方に向かって延出する前方延出部22cと、この前方延出部22cの延出端縁部から更に前方に延出するフランジ部22dとを備えている。そして、上記アウタパネル22のフランジ部22dと前記インナパネル23の前端縁部とが前記したスポット溶接S1により互いに結合されている。また、上記側壁9の下端部において、上記アウタ、インナパネル22,23の各後端縁部は、それぞれ前記後ホイールハウス11にスポット溶接S2などにより結合されている。
【0033】
上記ドア開口13の後部開口縁部の上下方向の中途部における上記アウタパネル22の傾斜延出部22bに、前記したように係止具19が上下一対(複数)の締結具17,17により取り付けられている。上記ドア開口13の後部開口縁部の内部空間に設けられ、上記アウタパネル22への係止具19の取り付け部を補強する補強パネル25と他の補強パネル26とが設けられている。
【0034】
上記補強パネル25の前部25aは車体3の前後方向に延び、この補強パネル25の前部25aの前端縁部は上記アウタパネル22のフランジ部22dとインナパネル23の前端縁部とに挟まれて、前記スポット溶接S1により互いに結合されている。また、上記補強パネル25の後部25bがその前部25a側から車体3の外側方かつ後方に向かって直線的に延びるよう、車体3の前後方向における上記補強パネル25の中途部25cが屈曲させられ、この中途部25cに屈曲部25dが形成されている。
【0035】
上記補強パネル25の後部25bは上記アウタパネル22の傾斜延出部22bにスポット溶接S3により結合されている。また、上記アウタパネル22の傾斜延出部22b、補強パネル25の後部25b、および他の補強パネル26が互いに重ね合わされて、上記係止具19の締結具17により共締めされて、互いに結合されている。つまり、上記アウタパネル22への上記補強パネル25の後部25bの結合部分に、上記係止具19が締結具17により取り付けられている。
【0036】
また、上記補強パネル25の上端縁部は上記アウタパネル22にスポット溶接S4により結合されている。上記補強パネル25の中途部25cは上記インナパネル23に重ね合わされて締結具である上下一対(複数)の結合具28,28により結合されている。上下方向で、上記上、下結合具28,28の間に上記係止具19が配置されている。より具体的には、車体3の平面断面視(図1,5)で、上記補強パネル25の中途部25cにおける屈曲部25dの近傍部分が、上記結合具28により上記インナパネル23に結合されている。
【0037】
上記補強パネル25は、上記アウタ、インナパネル22,23よりも厚板とされている。上記補強パネル25の下端縁部は折り返されて、断面U字形状となるよう屈曲され、この屈曲補強部25eにより、この補強パネル25の強度と剛性とが高められている。また、上記した上、下結合具28,28間におけるインナパネル23と補強パネル25とは、車体3の背面視(図4)で中空閉断面構造とされている。これらにより、上記アウタパネル22への係止具19の取り付け部が、より補強されている。
【0038】
その他、上記側壁9の車室2側の面にはトリム30が設けられている。
【0039】
上記構成によれば、車体3の前後方向における上記補強パネル25の中途部25cを上記インナパネル23に結合具28により結合している。
【0040】
このため、車両1の車体3の側壁9に形成されたドア開口13を閉じ、かつ、その開口縁部に係止具19により形成されているサイドドア14が、車両1の衝突時の衝撃力Fを与えられて上記側壁9の外側方に向かって変位しようとする場合には、上記衝撃力Fは、上記係止具19を介し側壁9のアウタパネル22への上記係止具19の取り付け部と、この取り付け部を補強している補強パネル25とによって支持されると共に、この補強パネル25を介しインナパネル23によっても支持される。よって、上記衝撃力Fが主に上記アウタパネル22と補強パネル25とによってのみ支持されていた従来の技術に比べ、上記側壁9が過大に変形することは、より確実に防止される。
【0041】
また、上記した衝撃力Fによる側壁9の変形の防止は、上記補強パネル25の中途部25cを上記インナパネル23に結合するという単純な構成で達成できることから、別途補強材を設けないで足りる分、上記側壁9の変形の防止は簡単な構成で、軽量かつ安価に達成できる。
【0042】
また、上記補強パネル25の中途部25cを屈曲させて屈曲部25dを形成した車両の車体側部構造において、上記補強パネル25の中途部25cにおける屈曲部25dの近傍部分を上記結合具28により上記インナパネル23に結合している。
【0043】
ここで、前記したようにドア14に衝撃力Fが与えられて、この衝撃力Fが上記アウタパネル22への係止具19の取り付け部と、この取り付け部を補強している補強パネル25とによって支持されると共に、この補強パネル25を介しインナパネル23によっても支持されようとする場合には、上記した補強パネル25の中途部25cの屈曲部25dは、上記衝撃力Fに基づく引張力によって直線的に延びるよう容易に変形するおそれがある。そして、このように補強パネル25が変形したとすると、この補強パネル25を介してのインナパネル23による上記衝撃力Fの支持は、不十分になりがちとなり、つまり、上記インナパネル23に対しアウタパネル22が外側方に向かって相対変位するよう側壁9が変形しがちとなる。
【0044】
しかし、上記構成によれば、補強パネル25の中途部25cにおける屈曲部25dの近傍部分を上記結合具28により上記インナパネル23に結合したため、上記したように、衝撃力Fが補強パネル25を介しインナパネル23によって支持されるとき、上記補強パネル25の中途部25cの屈曲部25dが直線的に延びるよう変形することは未然に防止される。よって、上記したようにドア14に衝撃力Fが与えられた当初において、上記補強パネル25は上記衝撃力Fに対し直ちに強固に対抗する。
【0045】
この結果、上記ドア14に衝撃力Fが与えられたとき、上記インナパネル23に対しアウタパネル22が外側方に向かって相対変位するよう側壁9が変形し始めることは直ちに防止される。つまり、ドア14に衝撃力Fが与えられた際の側壁9の当初の変形が、更に次の変形を誘発して次から次へと変形が拡大する、ということが防止されて、側壁9の過大な変形が確実に未然に防止される。
【0046】
また、前記したように、補強パネル25の後部25bがその前部25a側から車体3の外側方に向かって直線的に延びるよう上記補強パネル25の中途部25cを屈曲させ、上記アウタパネル22への上記補強パネル25の後部25bの結合部分に上記係止具19を取り付けている。
【0047】
このため、上記アウタパネル22への係止具19の取り付け部と上記インナパネル23とは、上記補強パネル25のうち、直線的に延びる後部25bによって互いに連結されることとなる。よって、前記したようにドア14に衝撃力Fが与えられて、この衝撃力Fが上記アウタパネル22への係止具19の取り付け部と、この取り付け部を補強している補強パネル25とによって支持されると共に、この補強パネル25のうち、上記した直線的に延びる後部25bを介しインナパネル23によっても支持される場合には、上記したようにドア14に衝撃力Fが与えられた当初において、上記補強パネル25の後部25bには直ちに引張応力が生じて、この引張応力が上記衝撃力Fに対し迅速に、かつ、強固に対抗する。
【0048】
この結果、上記ドア14に衝撃力Fが与えられたとき、上記インナパネル23に対しアウタパネル22が外側方に向かって相対変位するよう側壁9が変形し始めることは直ちに防止される。つまり、ドア14に衝撃力Fが与えられた際の側壁9の当初の変形が、更に次の変形を誘発して次から次へと変形が拡大する、ということが、より確実に防止されて、側壁9の過大な変形が確実に未然に防止される。
【0049】
ここで、上記車両1では、その車体3の側壁9に形成されたドア開口13の開口縁部に対し、上記ドア14の外縁部が側壁9の外側方から重なる構造であり、かつ、これらの重なり部の厚さ寸法を大きくすることについては、車体3のコンパクト化や車室2のスペース確保などの観点から限度がある。このため、上記ドア開口13の後部開口縁部の特に前端部の車体3の幅方向における厚さ寸法は小さくなりがちであって、強度と剛性とを十分い確保することは容易でない。
【0050】
しかし、上記した補強パネル25によるドア開口13の開口縁部の補強構造によれば、上記ドア14に衝撃力Fが与えられたときの上記側壁9の過大な変形は、より確実に防止される。
【0051】
なお、以上は図示の例によるが、上記ドア14は、車体3の外側方に向かって往復回動するよう車体3に枢支される片開き式のものであってもよい。また、上記ドア14はフロントドアであってもよい。また、上記結合具28は、リベットや、スポットなどの溶接による結合手段であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 車両
2 車室
3 車体
9 側壁
13 ドア開口
14 ドア
19 係止具
22 アウタパネル
22a 一般部
22b 傾斜延出部
22c 前方延出部
22d フランジ部
23 インナパネル
25 補強パネル
25a 前部
25b 後部
25c 中途部
25d 屈曲部
25e 屈曲補強部
28 結合具
F 衝撃力
図1
図2
図3
図4
図5