【文献】
日装連技能テキスト プラスチック床材編,日本,日本室内装飾事業協同組合連合会,1987年 4月 1日,99頁−102頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記床用接着剤の凸条群の一部の凸条が上記継目の片側に位置し、残りの凸条が上記継目の反対側に位置し、いずれの凸条も上記継目と交差していないことを特徴とする請求項1に記載の継目構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記周知の継目処理方法では、継目のシーリング材や溶接樹脂などの継目処理材が太陽光や温度変化によって劣化してくると、止水性が低下して雨水等が床被覆材の継目から浸透するという問題があった。
【0006】
一方、前記特許文献1の防水シートの施工方法は、接合膜層が防水シートの端縁部分で被覆されているため太陽光などによって早期に劣化することはないが、この接合膜層と防水シートの端縁部分を全面に亘って水密的に熱融着又は溶剤溶着又は接着剤接着することが容易でないため、部分的に接合不良箇所や水の侵入路ができやすく、また、結合膜層にはピンホールなどの欠損部が生じる虞れもあるため、防水性(止水性)が完全とは言い難いものであった。
【0007】
本発明は上記事情の下になされたもので、その解決しようとする課題は、床被覆材の継目を閉塞する継目処理材が劣化しても、長期間にわたって充分な防水性(止水性)を確保できる床被覆材の継目構造と継目施工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の
請求項1に係る床被覆材の継目構造は、床用接着剤で床下地に接着された床被覆材の継目構造であって、床被覆材の継目は継目処理材で閉塞されており、上記継目の下方の床下地表面には、上記継目の全長にわたり上記継目に沿って相互間隔をあけて並列する複数条の上記床用接着剤の凸条からなる凸条群が形成されており、上記継目及びその両側の床被覆材の端縁部と、上記床用接着剤の凸条群との間には、上記継目の全長にわたる帯状体が設けられており、上記帯状体の表面と床被覆材の端縁部の裏面は貼着剤で貼着され、上記帯状体の裏面と床下地表面は上記床用接着剤の凸条群で接着されて
おり、上記床用接着剤の凸条群が形成された継目下方の床下地表面以外の床下地表面には、床用接着剤の自由な曲線状の凸条が複数条づつ形成されて床被覆材が接着されている、ことを特徴とするものである。
【0009】
本発明の
請求項1に係る床被覆材の継目構造では、上記床用接着剤の凸条群の一部の凸条が上記継目の片側に位置し、残りの凸条が上記継目の反対側に位置し、いずれの凸条も上記継目と交差していない構成と
するのがよい。
また、本発明の請求項3に係る床被覆材の継目構造は、床用接着剤で床下地に接着された床被覆材の継目構造であって、床被覆材の継目は継目処理材で閉塞されており、上記継目の下方の床下地表面には、上記継目の全長にわたり上記継目に沿って相互間隔をあけて並列する複数条の上記床用接着剤の凸条からなる凸条群が形成されており、上記床用接着剤の凸条群の少なくとも両側端の凸条が上記継目と交差することなく上記継目の両側に位置し、少なくとも両側端の凸条を除いた残りの全部又は一部の凸条が上記継目と交差して
おり、上記継目及びその両側の床被覆材の端縁部と、上記床用接着剤の凸条群との間には、上記継目の全長にわたる帯状体が設けられており、上記帯状体の表面と床被覆材の端縁部の裏面は貼着剤で貼着され、上記帯状体の裏面と床下地表面は上記床用接着剤の凸条群で接着されている、ことを特徴とするものである。
そして、本発明の請求項4に係る床被覆材の継目構造は、床用接着剤で床下地に接着された床被覆材の継目構造であって、床被覆材の継目は継目処理材で閉塞されており、上記継目の下方の床下地表面には、上記継目の全長にわたり上記継目に沿って相互間隔をあけて並列する複数条の上記床用接着剤の凸条からなる凸条群が形成されており、上記継目及びその両側の床被覆材の端縁部と、上記床用接着剤の凸条群との間には、上記継目の全長にわたる帯状体が設けられており、上記帯状体の表面と床被覆材の端縁部の裏面は貼着剤で貼着され、上記帯状体の裏面と床下地表面は上記床用接着剤の凸条群で接着されており、上記帯状体の幅が20〜500mmであり、上記床用接着剤の凸条群の幅が30〜600mmであって、上記床用接着剤の凸条群が上記帯状体の幅よりも広い幅で形成されている
、ことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の請求項5に係る床被覆材の施工法は、床用接着剤で床下地に接着される床被覆材の継目施工法であって、床下地における床被覆材の継目が形成される予定の箇所の表面に、予定の継目の全長にわたり予定の継目に沿って相互間隔をあけて並列する複数条の床用接着剤の凸条からなる凸条群を形成する工程と、上記床用接着剤の凸条群の上に予定の継目の全長にわたる帯状体を重ねる工程と、双方の床被覆材の端縁部を上記帯状体の上に重ねて、床被覆材の継目を予定の箇所に形成する工程と、双方の床被覆材の上記端縁部を捲り上げて、上記帯状体の表面に貼着剤を塗布する工程と、捲り上げた双方の床被覆材の上記端縁部を再び上記帯状体の上に重ねて、その上から押圧する工程と、双方の床被覆材の継目を継目処理材で閉塞する工程と、上記床用接着剤の凸条群が形成される床下地表面以外の床下地表面に、床用接着剤の自由な曲線状の凸条を複数条づつ形成する工程と、上記床用接着剤の自由な曲線
状の凸条が複数条づつ形成された床下地表面に床被覆材を接着する工程と、を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の床被覆材の継目構造は、以下のように三重の防水(止水)機能を発揮できる構造であるため、雨水等が床被覆材の継目から床被覆材と床下地の間に浸透、拡散するのを確実に防止することができる。
即ち、床被覆材の継目は継目処理材で閉塞されているので、継目からの雨水等の浸入は、まず、継目を閉塞する継目処理材によって防止されることになる。
そして、継目処理材が太陽光の直射や気温変化などで経時的に劣化し、床被覆材の継目から雨水等が浸入するようになっても、継目両側の床被覆材端縁部の裏面に貼着剤で貼着された、継目の全長にわたる帯状体によって、継目両側の床被覆材と床下地との間への雨水等の浸透、拡散が防止されることになる。特に、この帯状体は床用接着剤の凸条群で床下地に接着され、この凸条群によって帯状体の表面が床被覆材の端縁部の裏面に強く押付けられた状態で貼着剤により貼着されているため、帯状体の表面には凸条群に対応した貼着強度及び密着性の高い線状貼着領域が形成されており、この線状貼着領域によって浸入雨水等の継目両側への浸透、拡散が確実に防止されることになる。しかも、帯状体や貼着剤は床被覆材に覆われて太陽光の直射を受けることがなく、寒暖気の影響も直接受けないので、経時的に劣化しにくく、それ故、長期間にわたって上記の防水(止水)効果が持続することになる。
更に、上記の帯状体が劣化して亀裂や破れなどが生じ、雨水等が帯状体の下側の床下地に漏れるようになった場合でも、帯状体を床下地に接着している床用接着剤の凸条群の各凸条が、雨水等を継目の両側へ浸透、拡散させないように堰き止める止水壁の役目を果たすため、この床用接着剤の凸条群によって雨水等の継目両側への浸透、拡散が防止されることになる。そして、この床用接着剤の凸条群による防水(止水)効果も、該凸条群が太陽光や寒暖気による劣化を生じにくいため、長期間にわたって持続されることになる。
このように、本発明の床被覆材の継目構造は、継目を閉塞する継目処理材と、継目両側の床被覆材端縁部の裏面に貼着剤で貼着された帯状体と、この帯状体を床地面に接着する床用接着剤の凸条群とによって、三重の防水(止水)機能を発揮できる構造であるため、床被覆材の継目から床被覆材と床下地の間に雨水等が浸透、拡散するのを確実に防止することができる。
【0012】
上記のような優れた防水効果を奏する本発明の床被覆材の継目構造は、前述した本発明の床被覆材の継目施工法によって作業性良く施工することができる。特に、本発明の継目施工法は、捲り上げた双方の床被覆材の上記端縁部を再び上記帯状体の上に重ねて、その上から押圧する工程を含んでおり、この押圧工程によって、帯状体の裏面と床下地表面を床用接着剤の凸条群で強固に接着すると共に、帯状体の表面と床被覆材の端縁部の裏面を貼着剤で線状貼着領域を形成しながら強固かつ水密的に貼着することができるので、継目の防水性を一層高めることができる。
【0013】
また、本発明の継目構造において、床用接着剤の凸条群の一部の凸条が継目の片側に位置し、残りの凸条が継目の反対側に位置し、いずれの凸条も継目と交差していない構成としたものは、この床用接着材の凸条群に対応して、帯状体の表面と床被覆材の端縁部の裏面を貼着する貼着剤の線状貼着領域も、一部の線状部が継目の片側に位置し、残りの線状部が継目の反対側に位置し、いずれの線状部も継目と交差しない状態となるので、継目処理材の劣化等により継目から帯状体の上に浸入した雨水等の帯状体両側への拡散が、継目の片側に位置する一部の線状部と反対側に位置する残りの線状部によって確実に阻止されることになる。そして、帯状体の経年劣化等に伴って帯状体の下側へ浸入した雨水等の両側への拡散は、継目の片側に位置する床用接着剤の一部の凸条と反対側に位置する残りの凸条によって確実に阻止されることになる。
【0014】
一方、本発明の
請求項3に係る継目構造
のように、床用接着剤の凸条群の少なくとも両側端の凸条が継目と交差することなく継目の両側に位置し、少なくとも両側端の凸条を除いた残りの全部又は一部の凸条が継目と交差している構成としたものは、この床用接着剤の凸条群に対応して、帯状体の表面と床被覆材の端縁部の裏面を貼着する貼着剤の線状貼着領域も、少なくとも両側端の線状部が継目と交差することなく継目の両側に位置し、少なくとも両側端の線状部を除いた残りの全部又は一部の線状部が継目と交差している状態となるので、継目処理材の劣化等により継目から帯状体の上に浸入した雨水等の帯状体両側への拡散が、継目の両側に位置する、線状貼着領域の少なくとも両側端の線状部によって確実に阻止されることになる。そして、帯状体の経年劣化等に伴って帯状体の下側へ浸入した雨水等の両側への拡散は、継目の両側に位置する、床用接着剤の少なくとも両側端の凸条によって確実に阻止されることになる。
また、上記のように床用接着剤の両側端の凸条を除いた残りの全部又は一部の凸条が継目と交差している構成としたものは、前記のように全ての凸条が継目と交差しない構成としたものに比べると、床用接着剤の凸条群を継目に対して正確に平行となるように形成する必要がないので、凸条群の形成を容易に行うことができる。
【0015】
更に、本発明の
請求項4に係る継目構造
のように、帯状体の幅が20〜500mmであり、床用接着剤の凸条群の幅が30〜600mmであって、床用接着剤の凸条群が帯状体の幅よりも広い幅で形成されているものは、
上記効果に加えて、凸条群や帯状体が継目に対して若干斜めになったり、継目のいずれか片側に多少偏位していても、余裕をもって確実に防水(止水)効果を発揮させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【0018】
図1は本発明の一実施形態に係る床被覆材の継目構造の平面図、
図2は
図1のA−A線拡大断面図(同継目構造の横断面図)であって、1は共通廊下、ベランダ、バルコニーなどのコンクリート製の床下地を示しており、この床下地1には合成樹脂製の床被覆材2,2が床用接着剤3で貼着されている。そして、互いに隣接する床被覆材2,2の継目4はV溝状に形成されて、継目処理材5で水密的に閉塞されており、更に、床被覆材2の継目以外の端面はシーリング材6で水密的にシールされている。
【0019】
図2,
図3に示すように、継目4の下方の床下地1表面には、継目4の全長にわたり継目4に沿って相互間隔をあけて並列する複数条の床用接着剤の凸条3aからなる凸条群30aが形成されている。各凸条3aは直線状であることが理想的であるが、若干蛇行していてもよい。この床用接着剤の凸条群30aは、
図3,
図4(a)に示すように、いずれの凸条3aも継目4と斜めに交差しないように継目4に沿って平行に形成されており、凸条群30aの一部の凸条3aが継目の片側に位置し、残りの凸条3aが継目の反対側に位置している。本実施形態の凸条群30aは、継目4の片側に位置する凸条3aの数と反対側に位置する凸条3aの数を同数として、継目4が凸条群30aの幅方向中心線上に位置するようにしているが、継目4の両側に位置する凸条3aの数に少し差をつけて、継目4が凸条群30aの幅方向中心線のいずれか片側に少し偏位するようにしてもよい。
【0020】
また、床用接着剤の凸条群30aは、
図4(b)に示すように、少なくとも両側端の凸条3aが継目4と斜めに交差することなく継目4の両側に位置し、少なくとも両側端の凸条3aを除いた残りの全部又は一部の凸条3aが継目4と斜めに交差するように、継目4に沿って若干斜め方向に形成してもよい。
但し、
図4(c)に示すように、凸条群30aの全ての凸条3aが継目4と斜めに交差するように凸条群30aを継目4に対して斜めに形成してはならない。このように斜めに形成すると、後述するように、継目4の両端近傍部から浸入した雨水等が継目4の両側へ浸透、拡散するのを両側端の凸条3aによって阻止できなくなり、本発明の目的を十分達成できないからである。
【0021】
上記の床用接着剤の凸条群30aは、継目4の下方の床下地1表面に、
図7に示すような櫛目ごて10を用いて床用接着剤3を継目4に沿って塗布することにより形成されたものであるが、例えば、先端に複数の吐出孔のある接着剤用チューブやカートリッジの該吐出口から床用接着剤を吐出させることによって形成されたものでもよい。
尚、継目4の下方の床下地表面以外の床下地1の表面に塗布された床用接着剤3も同様の櫛目ごて10で塗布されたものであり、床用接着剤3の自由な曲線状の凸条が複数条づつ形成されている。
【0022】
図1,
図2に示すように、上記継目4及びその両側の床被覆材2,2の端縁部2a,2aと、上記床用接着剤の凸条群30aとの間には、継目4の全長にわたる合成樹脂製の帯状体7が設けられており、この帯状体7の表面と床被覆材2,2の端縁部2a,2aの裏面は貼着剤8で貼着されている。そして、この帯状体7の裏面と床下地1表面は、床用接着剤の凸条群30aで接着されている。このように帯状体7の裏面が床用接着剤の凸条群30aの各凸条3aによって支持された状態で床下地1に接着されると、帯状体7の各凸条3aによる支持部分の表面が、貼着剤8を介して床被覆材2,2の端縁部2a,2aの裏面に押圧された状態で貼着されることになるため、帯状体7の表面には、凸条群30aの各凸条3aに対応して、貼着強度及び密着性が大きい貼着剤8の線状貼着領域が形成されることになる。
図2では、この貼着剤8の線状貼着領域に該当する部分を黒く塗りつぶして模式的に示している。
【0023】
帯状体7の幅や床用接着剤の凸条群30aの幅は特に限定されないが、継目4から浸入した雨水等が継目両側の床被覆材2,2と床下地1の間に浸透、拡散するのを余裕をもって阻止するためには、帯状体7の幅を20〜500mmとし、床用接着剤の凸条群30aの幅を30〜600mmとして、床用接着剤の凸条群30aを帯状体7の幅よりも広い幅で形成することが望ましい。
【0024】
上記のような床被覆材の継目構造であると、床被覆材2,2の継目4が継目処理材5で閉塞されているので、継目4からの雨水等の浸入は、まず、継目4を閉塞する継目処理材5によって防止されることになる。
そして、継目処理材5が太陽光の直射や気温変化などで経時的に劣化し、床被覆材2,2の継目4から雨水等が浸入するようになっても、継目4両側の床被覆材端縁部2a,2aの裏面に貼着剤8で貼着された帯状体7によって、継目4両側の床被覆材2,2と床下地1の間への雨水等の浸透、拡散が防止されることになる。その場合、帯状体7の表面は、前述した貼着剤8の線状貼着領域によって、継目4両側の床被覆材端縁部2a,2aの裏面に強固に密着性良く貼着されているので、雨水等の継目4両側への浸透、拡散は確実に防止されることになる。
更に、帯状体7が劣化して亀裂などが生じ、雨水等が帯状体7の下側の床下地1に漏れるようになった場合でも、帯状体7を床下地1に接着している床用接着剤の凸条群30aの各凸条3aが、雨水等を継目4の両側へ浸透、拡散させないように堰き止める止水壁の役目を果たすため、この床用接着剤の凸条群30aによって雨水等の継目4両側への浸透、拡散が防止されることになる。
この床被覆材の継目構造は、上記のように継目4を閉塞する継目処理材5と、継目4両側の床被覆材端縁部2a,2aの裏面に貼着剤8で貼着された帯状体7と、この帯状体7を床地面1に接着する床用接着剤の凸条群30aとによって、三重の防水(止水)機能が発揮される構造であるため、床被覆材2,2の継目4から床被覆材2,2と床下地1の間に雨水等が浸透、拡散するのを確実に防止することができる。しかも、帯状体7や貼着剤8や床用接着剤の凸条群30aは床被覆材2,2などに覆われ、太陽光の直射を受けたり寒暖気の影響を直接受けたりすることがないので経時的に劣化しにくく、それ故、長期間にわたって上記の防水(止水)作用を持続して発揮することができる。
【0025】
この床被覆材の継目構造における床用接着剤の凸条群30aは、
図4(a)に示すように、一部の凸条3aが継目4の片側に位置し、残りの凸条3aが継目4の反対側に位置し、いずれの凸条3aも継目4と交差しないように形成されているため、この床用接着材の凸条群30aに対応して、帯状体7の表面と床被覆材2,2の端縁部2a,2aの裏面を貼着する貼着剤8の前記線状貼着領域も、一部の線状部が継目4の片側に位置し、残りの線状部が継目4の反対側に位置し、いずれの線状部も継目4と交差しない状態となっており、この継目4の片側に位置する一部の線状部と反対側に位置する残りの線状部によって、継目4から帯状体7の上に浸入する雨水等の帯状体7両側への拡散を確実に阻止することができる。そして、帯状体7の経年劣化等に伴って帯状体7の下側へ浸入する雨水等の両側への拡散は、継目4の片側に位置する床用接着剤の一部の凸条3aと反対側に位置する残りの凸条3aによって確実に阻止することができる。
【0026】
これに対し、
図4(b)に示すように、床用接着剤の凸条群3aの少なくとも両側端の凸条3aが継目4と交差することなく継目4の両側に位置し、少なくとも両側端の凸条3aを除いた残りの全部又は一部の凸条3aが継目4と交差するように凸条群30aが形成されている場合は、この床用接着剤の凸条群30aに対応して、帯状体7の表面と床被覆材2,2の端縁部2a,2aの裏面を貼着する貼着剤8の前記線状貼着領域も、少なくとも両側端の線状部が継目4と交差することなく継目4の両側に位置し、少なくとも両側端の線状部を除いた残りの全部又は一部の線状部が継目4と交差している状態となるので、継目4の両側に位置する少なくとも両側端の線状部によって、継目4から帯状体7の上に浸入する雨水等の帯状体7両側への拡散を確実に阻止することができる。そして、帯状体7の経年劣化等に伴って帯状体7の下側へ浸入する雨水等の両側への拡散は、継目4の両側に位置する、床用接着剤の少なくとも両側端の凸条3aによって確実に阻止することができる。
【0027】
上記の床被覆材の継目構造における床下地1は、前述したコンクリート製の床下地に限定されるものではなく、モルタル製の床下地など、建築物に採用される一般的な床下地がいずれも適用可能である。また、床被覆材2としては、バルコニー、ベランダ、廊下などに敷設される外装用の軟質塩化ビニル樹脂製やオレフィン樹脂製の床シートが好適に使用され、かかる床シートは長尺シート状のものでも、タイル状のものでもよい。
【0028】
床被覆材2や帯状体7を床下地1に接着する床用接着剤3としては、ウレタン系、エポキシ系、アクリル系、変成シリコーン系などの硬化型の床用接着剤が使用され、特に、耐水性に優れたウレタン系やエポキシ系(2液混合型でも水分硬化型等の1液型でもよい)が好ましく使用される。また、ゴム系の床用接着剤等も使用される。
【0029】
継目4の下方の床下地1表面に形成される床用接着剤の凸条群30aは、帯状体7を重ねて接着する前の凸条3aの高さが0.5〜5mm(本実施形態では2mm程度)、凸条3aの幅が0.5〜5mm(本実施形態では2mm程度)、凸条3aの相互間隔が0.5〜6mm(本実施形態では3mm程度)となるように形成することが望ましく、このような寸法で形成すると、帯状体7を接着するときに圧迫されて、最終的に、凸条3aの高さが0.1〜3mm(本実施形態では0.5mm程度)、凸条3aの幅が0.5〜5mm(本実施形態では3mm程度)、凸条の相互間隔が0.5〜6mm(本実施形態では3mm程度)となり、各凸条3aが雨水等の継目両側への浸透、拡散を堰き止める止水壁の役目を十分果たせるようになる。
【0030】
本実施形態の床用接着剤の凸条群30aは、前述したように、
図7に示す櫛目ごて10を用いて床用接着剤3を継目4下方の床下地1表面に塗布することで形成されたものであり、この櫛目ごて10は、図示のように逆V形の櫛目10aを間隔をあけて横一列に形成し、逆V形の櫛目10aの高さaを2mm、幅cを2mm、櫛目の相互間隔bを3mmに設定したものであるので、形成される凸条群30aの凸条3aは上記のように高さが2mm、幅が2mm、相互間隔が3mmとなる。
【0031】
尚、継目4の下方の床下地表面以外の床下地1の表面に塗布された床用接着剤3も、前述したように櫛目ごて10で塗布することによって自由曲線状の凸条を複数条ずつ形成したものであり、各凸条の高さ、幅、相互間隔などは上記凸条群30aの凸条3aのそれらと同様である。
【0032】
本実施形態の継目構造では、床用接着剤の凸条群30aの長さと継目4の長さが同一とされているが、凸条群30aの長さと継目4の長さを同一にする必要は必ずしもない。例えば、床用被覆材2の前縁及び後縁の防水性(止水性)を向上させるために、床下地1の前縁と後縁に沿って床用接着剤3の複数条の凸条が形成されるように床用接着剤3を櫛目ごて10で塗布するような場合には、床用接着剤の凸条群30aの長さが、床下地1の前縁と後縁に沿って床用接着剤3の凸条を形成した分だけ、継目4の長さよりも短くなるが、それでもよい。
【0033】
また、
図5に示すように、床用接着剤の凸条群30aの端部に細帯状の止水部材9を凸条群30aを横切る方向に設けて、凸条群30aの凸条3a相互間の各溝部3bの端部を閉塞したり、止水部材9に代えて接着剤や貼着剤を凸条群30aの各溝部3bの端部に充填して閉塞することが望ましい。このように凸条群30aの各溝部3bの端部を閉塞すると、床被覆材2の前縁及び後縁の端面をシールするシーリング材6が劣化、破損した場合でも、凸条群30aの溝部3bへの雨水等の浸入を阻止できる利点がある。
【0034】
床用接着剤の凸条群30aの上に重ねられる帯状体7としては、床被覆材2と同質又は相溶性のある合成樹脂からなるもの、或いは、溶剤や接着剤で床被覆材2と溶着可能又は接着可能な合成樹脂からなるものが使用され、例えば、床被覆材2が軟質塩化ビニル樹脂製の床被覆材である場合は、塩化ビニル樹脂を主成分とする帯状体が適しており、特に、取り扱いの関係から、軟質塩化ビニル樹脂よりなる帯状体が好ましく使用される。
【0035】
かかる帯状体7は単層体でも積層体でもよく、例えば、補強のために中間層又は最下層として樹脂繊維やガラス繊維からなる補強繊維層を積層したものや、中間層又は最下層として金属薄板を積層したものも好ましく使用される。特に、後者の金属薄板を積層した帯状体7は、強度が向上することに加えて、床被覆材2,2の継目4をV溝状にカットする際に誤って帯状体7が切断されるのを、金属薄板によって防止できる利点がある。更に、最上層とその下側の層を異なる色に着色した積層体からなる帯状体7も好ましく使用され、このような帯状体7は、床被覆材2,2の継目4をV溝状にカットする際に誤って帯状体7の表面を切除すると、下層の異なる色が視認され、帯状体7を損傷したことが直ちに判るので、帯状体7を補修したり新しい帯状体に交換するなどの対策を施すことができる利点がある。
【0036】
この帯状体7の幅は、前述したように、余裕をもって防水作用を発揮できるように20〜500mm程度であることが望ましく、また、厚みは0.1〜3mm程度であることが望ましい。0.1mmよりも薄い帯状体7は、継目4を例えば樹脂溶接棒などの継目処理材5を用いて熱風で溶接する際に、熱風で孔があく虞れがあり、一方、3mmよりも厚い帯状体7は、コストが高く、取扱い性が悪いことに加えて、継目4両側の床被覆材2,2の端縁部2a,2aの盛り上がりが目立つので見栄えが悪くなる。帯状体7の更に好ましい厚みは0.3〜1mm程度である。
【0037】
帯状体7の表面と継目4両側の床被覆材2,2の端縁部2a,2aの裏面を貼着する貼着剤8としては、テトラヒドロフラン(THF)、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサンなどのいずれか単独又はこれらの混合物からなる所謂「シーム液」(前記溶剤の単独又は混合物に塩化ビニル樹脂などの可溶性樹脂10質量%以下を添加したものも含む)、或いは、前記溶剤の単独又は混合物に塩化ビニル樹脂などの可溶性樹脂を10(10を含まない)〜50質量%程度溶解した所謂「ドープセメント」、或いは、変性シリコン系やウレタン系の公知の接着剤などが使用される。このような貼着剤8は、粘度が低い場合は帯状体7の表面に刷毛塗りしたり、洗浄瓶から注出して塗布すればよく、粘度が高い場合はコテなどで塗り拡げればよい。
【0038】
本実施形態の継目4は、両側の床被覆材2,2の端面をカットしてV溝状に形成し、このV溝状の継目4に継目処理材5を充填して閉塞しているが、床被覆材2,2の端面をカットしないで突き合わせて継目4を形成し、継目処理材として溶剤を用いて該継目4を溶着して閉塞してもよい。
【0039】
継目4に充填する継目処理材5としては、エポキシ系、ウレタン系、シリコーン系、変成シリコーン系などのシーリング材や、床被覆材2との融着性の良い熱可塑性樹脂の溶接棒などが好ましく使用される。また、継目4を溶着する継目処理材としては、前記のシーム液やドープセメントなどが好ましく使用される。
これらの継目処理材5で継目4を閉塞処理すると、継目4の仕上がりが美麗になり、継目4からの雨水等の浸入、及び、継目4からの床被覆材2,2の捲くれ上がりを防止することができる。
【0040】
次に、
図6を参照して、本発明に係る床被覆材の継目施工法の一実施形態を、工程順に説明する。
【0041】
図6(a)に示すように、最初の床用接着剤塗布工程において、床下地1における床被覆材の継目が形成される予定の箇所の表面に、予定の継目の全長にわたり予定の継目に沿って相互間隔をあけて並列する複数条の床用接着剤の凸条3aからなる凸条群30aを形成する。この床用接着剤の凸条群30aは、既述したように、
図7に示す櫛目ごて10を使用し、床用接着剤を予定の継目に沿って真っ直ぐに塗布すれば簡単に形成することができる。
床用接着剤の凸条群30aを形成する場合、
図4(a)に示すように、凸条群30aの一部の凸条3aが予定の継目4の片側に位置し、残りの凸条3aが予定の継目4の反対側に位置し、いずれの凸条3aも予定の継目4と斜めに交差しないように、凸条群30aを継目4の方向に一致させて形成してもよいし、
図4(b)に示すように、少なくとも両側端の凸条3aが予定の継目4と斜めに交差することなく予定の継目4の両側に位置し、少なくとも両側端の凸条3aを除いた残りの全部又は一部の凸条3aが予定の継目4と斜めに交差するように、凸条群30aを予定の継目4に沿って若干斜め方向に形成してもよい。
【0042】
尚、
図6では図示していないが、凸条群30aを形成した以外の床下地1には床用接着剤3を塗布することになる。床下地1に床用接着剤3を塗布する工程は、何れの工程において行ってもよい。例えば、凸条群30aの形成時に、床用接着剤3を塗布すると、一度に塗布作業ができるので、作業効率が高い。また、後述する帯状体7を凸条群30a上に重ねる工程の後に行うと、形成した凸条群30aの凸条3aが他の作業中に乱されることがないので、これも好ましい。さらには、凸条群30aの形成前に、端縁部2a,2aを残して床下地1に塗布し、床下地1に床被覆材2,2を接着しておいてもよい。この場合は、接着されていない床被覆材の端縁部2a,2aを捲り上げて、床用接着剤の凸条群30aを床下地1の継目形成予定箇所に形成すればよい。このようにすると、作業者が接着済みの床被覆材2,2の上で作業できるので、これまた好ましい。そして、さらに言うと、継目4を継目処理材5で閉塞した後、端縁部2a,2a以外の床被覆材2,2を捲り上げて行うこともできる。
【0043】
床用接着剤の凸条群30aの形成が終わると、
図6(b)に示すように、次の工程で床用接着剤の凸条群30aの上に、予定の継目の全長にわたる帯状体7を予定の継目に沿って重ねる。この際、帯状体7は凸条群30aの両側からはみださないようにして重ねることが望ましい。
【0044】
そして、更に次の工程で、
図6(c)に示すように、双方の床被覆材2,2の端縁部2a,2aを帯状体7の上に重ねて、床被覆材2,2の継目4を予定の箇所に形成する(尚、この継目4は、予め双方の床被覆材2,2の端縁部2a,2aの先端を重ねてカッターで重ね切りしておけば、継目4に大きな隙間が生じることなく綺麗に、簡単に調整することができる)。本実施形態では、双方の床被覆材2,2の突き合わせ端面を更に斜めにカットするV溝切り作業を行って、V溝状の継目4を形成しているが、このV溝切り作業は省略してもよい。尚、このV溝切り作業を行ったときは、誤って帯状体7を損傷していないかどうかを確認し、損傷していることが判った場合は、損傷部分を修復するか、又は、新しい帯状体と交換する。
【0045】
継目4の形成が終わると、更に次の工程で、
図6(d)に示すように双方の床被覆材2,2の端縁部2a,2aを捲り上げ、帯状体7の表面に貼着剤8を塗布する。この貼着材8の塗布は、前述したように刷毛でベタ塗りするなど、貼着剤8の性状によって公知の手段を採ればよい。尚、帯状体7の表面への貼着剤8の塗布は、端縁部2a,2aを帯状体7の上に重ねて継目4を形成する直前に行うこともできる。この場合は、端縁部2a,2aを捲り上げて貼着剤8を塗布する必要がなく、工数を省くことができる。
【0046】
貼着剤8の塗布が終わると、更に次の工程で、
図6(e)に示すように、捲り上げた双方の床被覆材2,2の端縁部2a,2aを再び帯状体7の上に重ねて、その上から転圧ローラ11などで押圧し、帯状体7の表面と床被覆材の端縁部2a,2aの裏面を貼着剤8で貼着すると共に、帯状体7の裏面と床下地1の表面を床用接着剤の凸条群30aで接着する。このように転圧ローラ11などで押圧しながら接(貼)着すると、前述したように、凸条群30aの各凸条3aによって支持された帯状体7の支持部分の表面が、貼着剤8を介して床被覆材2,2の端縁部2a,2aの裏面に押圧された状態で貼着されることになるため、帯状体7の表面には、凸条群30aの各凸条3aに対応して、貼着強度及び密着性が大きい貼着剤8の線状貼着領域が形成されることになり、この線状貼着領域の各線状部によって優れた防水(止水)性が発揮されるようになる。
【0047】
上記のように転圧ローラ11などで押圧すると、帯状体7や床被覆材の端縁部2aに皺が生じて雨水の浸透路が帯状体7と床被覆材の端縁部2a,2aとの間にできたり、帯状体7が部分的に破損したりする場合があり、また、貼着剤8の塗布ムラなどによって帯状体7と床被覆材の端縁部2a,2aとの間に雨水の浸透路ができている場合もある。従って、転圧ローラ11などで押圧した後、貼着剤8として用いる前記シーム液やドープセメントを、継目4から帯状体7と床被覆材の端縁部2a,2aの間に注入して、雨水などの浸透路を塞ぐことが望ましい。
【0048】
尚、前記の継目4のV溝切り作業は、上記の接(貼)着工程が終わってから行うようにしてもよい。
【0049】
そして、最後の工程で、
図6(f)に示すように、双方の床被覆材2,2の継目4を継目処理材5で閉塞し、床被覆材の継目施工を完了する。この継目処理材5による継目4の閉塞処理は、前述したように、継目処理材5としてシーリング材や溶接樹脂棒やシーム液を使用し、継目4にシーリング材を充填したり、継目4を溶接樹脂棒で樹脂溶接したり、シーム液やドープセメントで継目4を溶着したりすればよい。
【0050】
上記のように、本発明の継目施工法は簡便で施工性が良く、防水(止水)性に優れた本発明の継目構造を効率良く施工することができる。