特許第5688907号(P5688907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5688907
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】流体機械
(51)【国際特許分類】
   F03B 11/00 20060101AFI20150305BHJP
   F03B 3/02 20060101ALI20150305BHJP
【FI】
   F03B11/00 B
   F03B3/02
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-22381(P2010-22381)
(22)【出願日】2010年2月3日
(65)【公開番号】特開2011-157934(P2011-157934A)
(43)【公開日】2011年8月18日
【審査請求日】2012年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】511238158
【氏名又は名称】日立三菱水力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】中村 裕樹
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−308461(JP,A)
【文献】 特開2002−235652(JP,A)
【文献】 特開2000−130603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 11/00
F03B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングに流路が形成され、回転軸が前記ケーシングに回転自在に支持され、前記回転軸と一体に回転可能な羽根車が前記流路に配置され、前記羽根車の下流側で前記流路の内周面と前記羽根車におけるリング形状をなすシュラウドの外周面との間の隙間にシール構造が形成された流体機械において、
前記シール構造は、
前記流路の内周面に形成されるリング形状をなす凹部の底面と前記シュラウドの外周面から前記凹部の底面へ突出するように形成されるリング形状をなす凸部の先端面とが前記隙間より狭い第1の間隔で対向する第1シール部と、
前記シュラウドの先端部を前記流路の内周面に沿って下流側に延出させることにより構成され、該第1シール部より下流側で前記流路の内周面と前記シュラウドの外周面とが前記隙間より狭い第2の間隔で対向する第2シール部とを有し、
前記第1シール部は、前記シュラウドの外周面と前記凸部の上流端と前記凹部の底面とで囲まれた第1の空間と、前記シュラウドの外周面と前記凸部の下流端と前記凹部の下流端と前記凹部の底面とで囲まれた第2の空間とを連通し、
前記第2シール部は、前記第2の空間と連通し、
前記第2の空間は、前記シュラウドの外周面に垂直な方向の幅が前記第1の間隔及び前記第2の間隔のいずれよりも広く、且つ、前記凸部の下流端から前記凹部の下流端に至る方向の幅が前記第1の間隔及び前記第2の間隔のいずれよりも広く、
前記第2シール部を構成する円筒部は、前記シュラウドの下端部に一体もしくは別の部材として固定され、
前記円筒部は、前記シュラウドの内周面における前記凸部に対応する領域に重なるように前記シュラウドに固定され、
前記円筒部は、前記円筒部における前記凸部に対応した部分から下流側の先端部に向って肉厚が漸減されるように構成されており、且つ、前記円筒部における前記凸部に対応した部分から上流側の先端部に向って肉厚が漸減されるように構成されている
ことを特徴とする流体機械。
【請求項2】
前記凹部の下流端は、前記凹部の底面と前記凹部のない前記流路の内周面との間の段差を形成している
ことを特徴とする請求項1に記載の流体機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、水車やポンプ水車などとして使用される流体機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、従来の流体機械としてのポンプ水車は、回転軸の下端部に、シュラウドとクラウンと複数のランナベーンとコーンとからなる羽根車が装着されて構成される。従って、流路を下降する用水により羽根車が回転すると、羽根車の回転軸が回転することで、この回転軸に連結された発電機が駆動して発電を行う。一方、駆動源により回転軸を駆動して羽根車を回転すると、羽根車の回転により流路の用水が吸い上げられ、圧力を上昇して吐出する。
【0003】
このようなポンプ水車にて、羽根車は、正面側にリング形状をなすシュラウドが位置し、背面側にリング形状をなすクラウンが位置しており、シュラウドとケーシングとの間、並びに、クラウンとケーシングとの間にそれぞれ隙間が設けられることで、羽根車が回転可能となっている。しかし、この羽根車の上流側と下流側では圧力差が生じることから、羽根車の回転時に、この隙間から漏水が発生してしまう。この漏水は羽根車を回転させないので、用水の位置エネルギを電力エネルギに変換することができない。そのため、従来、シュラウドとケーシングの間、クラウンとケーシングとの間に、それぞれシール部を設けることで、この漏水を抑制している。
【0004】
このようなシール部を有する水車としては、下記特許文献1、2に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−133094号公報
【特許文献2】特開2002−235652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来の水車にて、特許文献1、2に記載されたフランシス水車では、シュラウドと下カバー(ケーシング)との間に、幅の狭い2つの段部からなるシール部(シール用連通路)を設けることで、隙間からの漏水を防止している。
【0007】
しかし、シュラウドと下カバーとの間に2つの段部からなるシール部を設ける場合、下カバー(ケーシング)、または、シュラウドに2つの段付部を形成しなければならず、加工コストが増加し、製品が高価なものとなってしまう。
【0008】
本発明は上述した課題を解決するものであり、ケーシングと羽根車との間の隙間に高いシール性能を確保する一方で、加工コストの低減を可能とする流体機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明の流体機械は、ケーシングに流路が形成され、回転軸が前記ケーシングに回転自在に支持され、前記回転軸と一体に回転可能な羽根車が前記流路に配置され、前記羽根車の下流側で前記流路の内周面と前記羽根車におけるリング形状をなすシュラウドの外周面との間の隙間にシール装置が配置される流体機械において、前記シール装置は、前記流路の内周面に形成されるリング形状をなす凹部と前記シュラウドの外周面に形成されるリング形状をなす凸部とが前記隙間より狭い所定隙間で対向する第1シール部と、該第1シール部より下流側で前記流路の内周面と前記シュラウドの外周面とが前記隙間より狭い所定隙間で対向する第2シール部とを有する、ことを特徴とするものである。
【0010】
従って、ケーシング側にリング形状をなす凹部を形成する一方、シュラウド側にリング形状をなす凸部を形成すると共に、ケーシング側に対向するようにシュラウドを延出するだけで、複数のシール部を設けることができ、ケーシングと羽根車との間の隙間に高いシール性能を確保することができる一方で、加工コストの低減を可能とすることができる。
【0011】
本発明の流体機械では、前記第2シール部は、前記第1シール部の下流側に所定間隔をもって配置されることを特徴としている。
【0012】
従って、羽根車とケーシングとの間に所定間隔で2つのシール部を設けることとなり、構造の簡素化、低コスト化を可能とすることができる。
【0013】
本発明の流体機械では、前記シュラウドは、先端部が前記流路の内周面に沿って下流側に延出することで前記第2シール部を構成することを特徴としている。
【0014】
従って、シュラウドの先端部を流路の内周面、つまり、ケーシングに沿って延出するだけで第2シール部を設けることができ、更なる構造の簡素化、低コスト化を可能とすることができる。
【0015】
本発明の流体機械では、前記第2シール部を構成する円筒部は、前記シュラウドの先端部に別部材として固定されることを特徴としている。
【0016】
従って、第1シール部のみ設けられる既存の流体機械であっても、シュラウドの先端部に別部材としての円筒部を固定するだけで第2シール部を構成することができ、容易にケーシングと羽根車との間のシール性能を向上することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の流体機械によれば、ケーシングと羽根車のシュラウドとの間の隙間にシール装置を配置し、このシール装置を、流路の内周面に形成される凹部とシュラウドの外周面に形成される凸部とが狭い所定隙間で対向する第1シール部と、第1シール部より下流側で流路の内周面とシュラウドの外周面とが狭い所定隙間で対向する第2シール部とで構成したので、ケーシングと羽根車との間の隙間に高いシール性能を確保することができる一方で、加工コストの低減を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の実施例1に係る流体機械としてのポンプ水車を表す概略図である。
図2図2は、実施例1のポンプ水車におけるシール部を表す概略図である。
図3図3は、実施例1のポンプ水車における流量に対する効率を表すグラフである。
図4図4は、本発明の実施例2に係る流体機械としてのポンプ水車におけるシール部を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る流体機械の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明の実施例1に係る流体機械としてのポンプ水車を表す概略図、図2は、実施例1のポンプ水車におけるシール部を表す概略図、図3は、実施例1のポンプ水車における流量に対する効率を表すグラフである。
【0021】
実施例1では、本発明の流体機械を、ポンプ水車に適用して説明する。本実施例のポンプ水車は、所謂、フランシス形ポンプ水車であり、揚水を行うポンプとしての機能を有すると共に、発電を行う水車としての機能を有している。即ち、実施例1のポンプ水車は、取水口から導水路及び水圧鉄管を介して用水を取り込むポンプとして機能すると共に、取り込んだ用水により発電を行って放水路を介して用水を排水口へ排出する水車として機能する。
【0022】
以下、実施例1のポンプ水車について詳細に説明する。図1に示すように、ポンプ水車11は、図示しない発電機に基端部(図1にて上端部)が連結された回転軸12と、この回転軸12の先端部(図1にて下端部)に固定されて一体に回転するランナ(羽根車)13とを有している。そして、用水によるランナ13の回転に伴って回転軸12が回転することで、発電機が発電を行うことができ、一方、例えば、夜間に、この発電機により回転軸12を介してランナ13を回転することで、揚水を行うことができる。
【0023】
回転軸12は、鉛直方向に沿って配設され、ケーシング14に軸受15を介して回転自在に支持されている。ランナ13は、この回転軸12の下端部に一体回転可能に固結されている。
【0024】
ランナ13は、クラウン16とシュラウド17と複数のランナベーン18とコーン19により構成されている。クラウン16は、円盤形状をなし、中心部16aが回転軸12の先端部にキー12aにより固定されている。シュラウド17は、湾曲したリング形状をなし、クラウン16と同軸上に配設されている。複数のランナベーン18は、クラウン16とシュラウド17との間に挟まれるように、各端部が両者の端面に固定されており、周方向に均等間隔で配置されている。コーン19は、先端部(図1にて、下端部)が細くなる円錐形状をなし、クラウン16における中心部16aに同軸をなして複数のボルト20により固定されている。
【0025】
ケーシング14は、ランナ13の下方に鉛直方向に沿って第1流路21が形成され、ランナ13の側方に水平方向に沿って第2流路22が形成されており、この第1流路21は、ランナ13を通して第2流路22に連通している。本実施例のポンプ水車11が水車として機能する場合、第2流路22がランナ13へ用水が流入する用水流入口として機能し、第1流路21がランナ13から用水が流出する用水流出口として機能する。一方、ポンプ水車11がポンプとして機能する場合、第1流路21がランナ13により用水が吸入される用水吸入口として機能し、第2流路22がランナ13により高圧となった用水が吐出される用水吐出口として機能する。
【0026】
ランナ13は、シュラウド17の外周面17aとケーシング14の流路21,22の内周面14aとの間に回転隙間S1が設けられており、この回転隙間S1に第1シール装置23が設けられている。また、ランナ13は、クラウン16の上端面とケーシング14の流路22の内周面との間に回転隙間S2が設けられており、この回転隙間S2に第2シール装置24が配設されている。
【0027】
この第1シール装置23において、図1及び図2に示すように、ケーシング14は、第2流路22から第1流路21に至る過程で、内周面14aにリング形状をなす凹部31が用水の流れ方向に沿って形成されている。ランナ13は、シュラウド17における少なくともその一部がこの凹部31内に入り込み、シュラウド17の外周面17aと凹部31の底面31a(流路内周面14a)との間に回転隙間S1が確保されている。
【0028】
また、シュラウド17は、第1流路21側(下流側)の端部近傍の外周部にリング形状をなす凸部32が形成されており、この凸部32は、少なくともその一部が凹部31内に入り込み、凸部32の外周面32a(シュラウド外周面17a)と凹部31の底面31aとの間に回転隙間S1より狭い第1シール隙間(所定隙間)S11が確保されている。更に、シュラウド17は、この凸部32より更に先端部側(第1流路21側)に円筒部33が形成されており、この円筒部33は、凹部31から出てこの凹部31のない第1流路21の内周面14aに沿って下流側に延設され、円筒部33の外周面33a(シュラウド外周面17a)と第1流路21の内周面14aとの間に回転隙間S1より狭い第2シール隙間(所定隙間)S12が確保されている。この場合、円筒部33の外周面33aと、第1流路21の内周面14aとは、ほぼ平行をなすように形成されている。また、円筒部33は下流側の先端に向かって、その肉厚が漸減されるように滑らかに形成されている。
【0029】
ここで、シュラウド17における凸部32の外周面32aとケーシング14における凹部31の底面31aとが対向して形成される第1シール隙間S11により、本発明の第1シール部34が構成される。また、シュラウド17における円筒部33の外周面33aとケーシング14における第1流路21の内周面14aとが対向して形成される第2シール隙間S12により、本発明の第2シール部35が構成される。
【0030】
この場合、第2シール部35を構成する第2シール隙間S12は、第1シール部34を構成する第1シール隙間S11の下流側に所定間隔をもって配置されている。即ち、ケーシング14の凹部31内にて、第2流路22から第1流路21にかけて、回転隙間S1が確保され、凹部31の端部側(下流側)近傍で、凸部32により第1シール隙間S11が確保され、再び、回転隙間S1が確保された後、凹部31のない第1流路21の内周面14aに沿った円筒部33により第2シール隙間S12が確保されている。
【0031】
また、第2シール装置24において、図1に示すように、ケーシング14は、第2流路22の上方側にも凹部36が形成され、クラウン16のフランジ部16bにおける少なくともその一部がこの凹部36内に入り込み、両者の間に回転隙間S2が確保されている。また、ケーシング14は、凹部36に連続して複数の段付き凹部が形成される一方、クラウン16は、フランジ部16bに連続して複数の段付き凸部が形成され、この複数の段付き凸部が複数の段付き凹部に対向し、両者の間に回転隙間S2より狭い複数のシール隙間が確保されている。このクラウン16の段付き凸部とケーシング14における段付き凹部とが対向して形成されるシール隙間により第2シール装置24が構成される。
【0032】
このように構成された実施例1のポンプ水車11では、このポンプ水車11が水車として機能する場合、図1に矢印Aで表すように、用水が第2流路22からランナ13に流れ込み、この用水がランナ13を回転することで、ランナ13と共に回転軸12が回転し、発電を行うことができる。そして、ランナ13を回転させた用水は、第1流路21に流れる。
【0033】
一方、ポンプ水車11がポンプとして機能する場合、図8に矢印Bで表すように、回転軸12と共にランナ13が回転することで、第1流路21の用水がランナ13により吸い上げられ、第2流路22に吐出し、揚水を行うことができる。
【0034】
このとき、ランナ13より上流側の第2流路22では、第1流路21より高圧となることから、第2流路22の用水がシュラウド17とケーシング14(流路21,22の内周面14a)との回転隙間S1に入り込み、第1流路21側に流れる。ところが、実施例1では、この回転隙間S1に第1シール装置23が配設されている。そのため、回転隙間S1に流れ込んだ用水は、第1シール装置23における第1シール部34及び第2シール部35によりその流れが抑止される。即ち、回転隙間S1の用水は、第1シール部34から回転隙間S1を通して第2シール部35に至ることで、急縮流れ、急拡流れ、急縮流れが繰り返されるため、シュラウド17とケーシング14との間における用水の漏れ量が低減される。また、シュラウド17とケーシング14との間から漏れた用水は、第1流路21の内周面14aに沿って、即ち、主流の流れ方向と平行に流出して主流と合流することとなる。
【0035】
また、前述と同様に、第2流路22の用水がクラウン16のフランジ部16bとケーシング14(流路22の内周面)との回転隙間S2に入り込み、クラウン16の中心部16a側に流れやすくなる。ところが、この回転隙間S2に第2シール装置24が配設されているため、第2シール装置24によりその流れが抑止される。
【0036】
実施例1のポンプ水車11は、上記のように構成したことで、図3に示すように、従来のポンプ水車に比べて、発電効率の向上を図ることができる。特に、低流量運転から所定の定常運転で使用される領域にて、大幅な効率の向上を可能とすることができる。
【0037】
このように実施例1のポンプ水車にあっては、ケーシング14に流路21,22を形成し、このケーシング14に回転軸12を回転自在に支持し、回転軸12と一体に回転可能なランナ13を流路21,22に配置し、ランナ13の下流側で第1流路21の内周面14aとランナ13におけるシュラウド17の外周面17aとの間の回転隙間S1に第1シール装置23を配置し、この第1シール装置23として、第2流路22の内周面14aに形成される凹部31とシュラウド17の外周面17aに形成される凸部32とが回転隙間S1より狭い第1シール隙間S11で対向する第1シール部34と、第1シール部34より下流側で第2流路22の内周面14aとシュラウド17の先端部に形成される円筒部33とが回転隙間S1より狭い第2シール隙間S12で対向する第2シール部35を設ける。
【0038】
従って、ケーシング14(流路21,22の内周面14a)にリング形状をなす凹部31を形成する一方、シュラウド17の外周面17aにリング形状をなす凸部32を形成すると共に、ケーシング14(流路21の内周面14a)にシュラウド17の円筒部33の外周面33aを対向させるだけで、2つのシール部34,35を設けることができる。そのため、ケーシング14の加工が容易となり、加工コストの低減を可能とすることができる。また、シール部34,35によりランナ13とケーシング14との間の隙間に高いシール性能を確保することができ、発電効率、または、水車効率を向上することができる。
【0039】
また、実施例1のポンプ水車では、第2シール部35を第1シール部34の下流側に所定間隔をもって配置している。従って、ランナ13とケーシング14との間に所定間隔で2つのシール部34,35を設けることとなり、ここでの流れは、急縮流れ、急拡流れ、急縮流れとなり、シュラウド17とケーシング14との間における用水の漏れ量を低減することができると共に、構造の簡素化、低コスト化を可能とすることができる。
【0040】
また、実施例1のポンプ水車では、シュラウド17の先端部を第1流路21の内周面14aに沿って下流側に延出する円筒部33を設けることで、第2シール部35を構成することを特徴としている。従って、シュラウド17の先端部を第1流路21の内周面14a、つまり、ケーシング14に沿って下流側に延出するだけで第2シール部35を設けることができ、更なる構造の簡素化、低コスト化を可能とすることができる。
【実施例2】
【0041】
図4は、本発明の実施例2に係る流体機械としてのポンプ水車におけるシール部を表す概略図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0042】
実施例2のポンプ水車において、図4に示すように、ランナ13を構成するシュラウド41は、湾曲したリング形状をなし、複数のランナベーン18の端部に固定されている。ケーシング14は、第1流路21に至る過程で、内周面14aにリング形状をなす凹部31が用水の流れ方向に沿って形成されている。ランナ13は、シュラウド41における少なくともその一部がこの凹部31内に入り込み、シュラウド41の外周面41aと凹部31の底面31aとの間に回転隙間S1が確保されている。そして、シュラウド41は、第1流路21側の端部近傍の外周部にリング形状をなす凸部42が形成されており、この凸部42は、少なくともその一部が凹部31内に入り込み、凸部42の外周面42a(シュラウド外周面41a)と凹部31の底面31aとの間に回転隙間S1より狭い第1シール隙間(所定隙間)S11が確保されている。
【0043】
また、シュラウド41は、この凸部42より更に先端部側(第1流路21側)に別部材としての円筒部43が固定されている。即ち、この円筒部43は、凹部31の外側で、基端部がシュラウド41の先端部に溶接により固定され、先端部が凹部31のない第1流路21の内周面14aに沿って下流側に延設されることで、円筒部43の外周面43a(シュラウド外周面41a)と第1流路21の内周面14aとの間に回転隙間S1より狭い第2シール隙間(所定隙間)S12が確保されている。この場合、円筒部43の外周面43aと、第1流路21の内周面14aとは、ほぼ平行をなすように形成されている。また、円筒部43は下流側の先端に向かって、その肉厚が漸減されるように滑らかに形成されている。また、円筒部43の内周面43bは、シュラウド41の内周面41bと滑らかに繋がって主流の流路を形成するように、シュラウド41に溶接固定された後にグラインダー等で仕上げ加工される。なお、流路を滑らかに形成できれば溶接でなくてもよく、ロウ付やボルトなどを用いて固定してもよい。
【0044】
ここで、シュラウド41における凸部42の外周面42aとケーシング14における凹部31の底面31aとが対向して形成される第1シール隙間S11により、本発明の第1シール部44が構成される。また、シュラウド41における円筒部43の外周面43aとケーシング14における第1流路21の内周面14aとが対向して形成される第2シール隙間S12により、本発明の第2シール部45が構成される。そして、第1シール部44と第2シール部45により第1シール装置46が構成される。
【0045】
なお、実施例2における第1シール装置46の作用については、上述した実施例1と同様であることから、説明は省略する。
【0046】
このように実施例2のポンプ水車にあっては、ランナ13におけるシュラウド41の凸部42と、ケーシング14の凹部31との間に第1シール隙間S11を有する第1シール部44を形成すると共に、シュラウド41の下流側先端部に別部材として円筒部43を固定し、この円筒部43と第1流路21との間に第2シール隙間S12を有する第2シール部45を形成し、この第1シール部44と第2シール部45により第1シール装置46を構成している。
【0047】
従って、第1シール部44のみが設けられる既存のポンプ水車に対して、シュラウド41の先端部に別部材としての円筒部43を固定するだけで、第2シール部45を構成することができ、ケーシング14側を追加工することなく、容易にランナ13とケーシング14との間のシール性能を向上することができる。
【0048】
なお、上述した各実施例では、シール装置として第1シール部と第2シール部を設けたが、第1シール部と第2シール部との間に凸部と凹部からなる第3シール部を1つ以上設けてもよい。
【0049】
また、上述した各実施例では、本発明のシール装置を第1シール装置として適用したが、第2シール装置として適用してもよい。
【0050】
また、上述した各実施例では、本発明の流体機械をポンプ水車に適用したが、単なる水車やポンプ、または、給水ポンプなどの流体機械にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係る流体機械は、流路の凹部とシュラウドの凸部と間に第1シール部を設けると共に、流路とシュラウドとの間に第2シール部を設けることで、ケーシングと羽根車との間の隙間に高いシール性能を確保する一方で、加工コストの低減を可能とするものであり、水車、ポンプ水車、給水ポンプなどの流体機械に適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
11 ポンプ水車
12 回転軸
13 ランナ(羽根車)
14 ケーシング
16 クラウン
17,41 シュラウド
18 ランナベーン
21 第1通路
22 第2通路
23,46 第1シール装置
24 第2シール装置
31,36 凹部
32,42 凸部
33,43 円筒部
34,44 第1シール部
35,45 第2シール部
図1
図2
図3
図4