特許第5688977号(P5688977)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5688977
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】誘電体導波管の入出力接続構造
(51)【国際特許分類】
   H01P 3/16 20060101AFI20150305BHJP
   H01P 1/20 20060101ALI20150305BHJP
   H01P 5/107 20060101ALI20150305BHJP
【FI】
   H01P3/16
   H01P1/20 A
   H01P5/107 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-4603(P2011-4603)
(22)【出願日】2011年1月13日
(65)【公開番号】特開2012-147286(P2012-147286A)
(43)【公開日】2012年8月2日
【審査請求日】2013年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003089
【氏名又は名称】東光株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小島 洋
(72)【発明者】
【氏名】矢部 貴潔
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 一洋
【審査官】 麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−142884(JP,A)
【文献】 特開2002−043807(JP,A)
【文献】 特開2002−237701(JP,A)
【文献】 特開2000−151211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P1/20−1/219、7/00−7/10
H01P3/00−3/20
H01P5/00−5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体導波管の入出力電極とプリント基板のストリップ線路とを接続する誘電体導波管の入出力接続構造において、
前記誘電体導波管は、
底面に誘電体露出部に囲まれるとともに前記誘電体露出部の周囲に導体膜が配置された略円形状の入出力電極からなり、前記誘電体露出部を横切り前記入出力電極と前記導体膜を接続するショートスタブを具え、
前記プリント基板は、表面に略円形状の島状電極と前記島状電極に間隔をおいて囲む表面グランドパターンと、
裏面にストリップ線路と前記ストリップ線路に間隔をおいて囲む裏面グランドパターンとを具え、
前記島状電極の略中心と前記ストリップ線路の一端、および、
前記表面グランドパターンと前記裏面グランドパターンとが接続され、
前記誘電体導波管の入出力電極と、前記プリント基板の島状電極とが接続されたことを特徴とする誘電体導波管の入出力構造。
【請求項2】
前記表面グランドパターンと、前記裏面グランドパターンは、前記島状電極周辺を囲むように複数のスルーホール群を介して接続されている
ことを特徴とする請求項に記載の誘電体導波管の入出力接続構造。
【請求項3】
前記誘電体露出部を横切る前記ショートスタブの幅は、前記入出力電極の直径より小さい
ことを特徴とする請求項に記載の誘電体導波管の入出力接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体導波管と、それを実装するプリント基板との入出力接続構造に関するものであり、特に入出力接続構造の広帯域化に係わる。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体通信機器が普及し、移動体通信では2GHz帯程度までの周波数が利用されてきている。これらの通信のための基地局には、誘電体導波管からなる共振器を組み合わせた誘電体導波管フィルタが用いられてきた。
誘電体導波管フィルタは、誘電体の波長短縮効果により小型軽量化でき、プリント基板に直接実装可能である。
【0003】
しかし、誘電体導波管とプリント基板で用いられるストリップ線路とでは、伝送される電磁波のモードが異なるので、誘電体導波管フィルタをプリント基板に直接実装して利用するには、ストリップ線路と誘電体導波管へのモード変換構造が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−77907号公報
【特許文献2】特開2010−141644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図6は従来の誘電体導波管の入出力接続構造を示す分解斜視図である。
図6(a)に示すように、誘電体導波管60は、直方体形状の誘電体からなる誘電体ブロックの外装を被覆する導体膜62で被覆され、底面に誘電体が露出する誘電体露出部に囲まれた導体からなる島状の入出力電極61が形成されている。
プリント基板70の表面には、導体からなる略円形状の島状電極71が設けられており、表面グランドパターン74に囲まれた中心部に略円形の導体膜からなる島状電極71が表面グランドパターン74と間隔を開けて分離され絶縁された状態で形成されている。
プリント基板70の裏面には、ストリップ線路72が形成され、島状電極71とストリップ線路72がスルーホール73を介して接続されている。
誘電体導波管60の入出力電極61がプリント基板70の島状電極71に配置され接続される。
この誘電体導波管の入出力接続構造は、適用可能な比帯域幅の範囲が狭いという問題があった。
【0006】
この問題に対する解決策として、図6(b)に示す誘電体導波管の入出力接続構造が考案されている。
図6(b)に示すように、誘電体導波管80は、直方体形状の誘電体からなる誘電体ブロックの外装を導体膜82で被覆され、誘電体ブロックの底面に誘電体が露出する誘電体露出部に囲まれた導体からなる略四角形状の入出力電極81が形成されている。
プリント基板100の表面には、ストリップ線路102が設けられており、ストリップ線路102の先端に略四角形状の島状電極101が形成され、その島状電極101の周囲に、島状電極101を囲むように、島状電極101とは絶縁された導体からなる表面グランドパターン104が形成されている。
誘電体導波管80の底面は、表面が導体からなるスペーサ90を介してプリント基板100の表面と接合され、誘電体導波管80の入出力電極81がプリント基板100の島状電極101とスペーサ90による間隔をおいて対向するように配置される。
この誘電体導波管の入出力接続構造は、5GHz以上の周波数で比帯域幅を広くすることができる。
しかし、上記した誘電体導波管の入出力接続構造は、部品点数が増加してしまい、電磁結合させるために誘電体導波管の寸法が比較的長くなる等、小型軽量化の障害となるとともに、入出力接続構造も複雑になってしまう。
【0007】
本発明は、簡易な構成で、誘電体導波管のプリント基板への配置が容易であり、低損失で広帯域な誘電体導波管の入出力接続構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の問題を解決するために本発明の誘電体導波管の入出力接続構造は、
底面に誘電体露出部に囲まれるとともに前記誘電体露出部の周囲に導体膜が配置された略円形状の入出力電極からなり、前記誘電体露出部を横切り前記入出力電極と前記導体膜を接続するショートスタブを具え、
前記プリント基板は、表面に略円形状の島状電極と前記島状電極に間隔をおいて囲む表面グランドパターンと、
裏面にストリップ線路と前記ストリップ線路に間隔をおいて囲む裏面グランドパターンとを具え、
前記島状電極の略中心と前記ストリップ線路の一端、および、前記表面グランドパターンと前記裏面グランドパターンとが接続され、
前記誘電体導波管の入出力電極と、前記プリント基板の島状電極とが接続された
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の誘電体導波管の入出力接続構造によれば、部品点数を増加させずに、低損失で広帯域な誘電体導波管の入出力接続構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の誘電体導波管の入出力接続構造を説明するための分解斜視図である。
図2図1の誘電体導波管とプリント基板の対向する面を説明するための図である。
図3】本発明の誘電体導波管の入出力接続構造を用いた誘電体導波管フィルタの一実施例を示す図である。
図4図3の実施例の比帯域幅を示すグラフである。
図5図3の実施例の伝送特性を示すグラフである。
図6】従来の誘電体導波管の入出力接続構造を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明の一実施例を示す誘電体導波管の入出力接続構造の分解斜視図である。
図1に示すように、誘電体導波管10は、直方体形状の誘電体からなる誘電体ブロックの外装を被覆する導体膜12に囲まれ、誘電体ブロックの底面に誘電体が露出する誘電体露出部に囲まれた導体からなる略円形状の入出力電極11が形成されている。入出力電極11と導体膜12は、誘電体露出部を横切る導体からなるショートスタブ13を介して接続されている。
プリント基板20の表面には、導体からなる略円形状の島状電極21が設けられており、その島状電極21の周囲に間隔をおいて囲むように導体からなる表面グランドパターン24が形成されている。なお、島状電極21と表面グランドパターン24は絶縁されている。
プリント基板20の裏面には、一方の端を図示しない外部回路に接続するストリップ線路22と、ストリップ線路と間隔をおいて囲む導体からなる裏面グランドパターン25とが形成されている。
島状電極21は、島状電極21の略中心に設けられたスルーホール23を介してストリップ線路22と接続されている。
表面グランドパターン24と裏面グランドパターン25とは島状電極21の周辺を囲むように設けられた複数のスルーホールからなるスルーホール群26を介して接続されている。
誘電体導波管10は、誘電体導波管10の入出力電極11とプリント基板20の島状電極21とが接続され、及び、誘電体導波管10の導体膜12とプリント基板20の表面グランドパターン24とが接続されるようにプリント基板20に配置される。
【0012】
図2は、図1の誘電体導波管の入出力電極とプリント基板の島状電極を説明するための図である。図2(a)は誘電体導波管の底面図を示し、図2(b)はプリント基板の上面図を示す。
図2(a)に示すように、誘電体導波管10の入出力電極11は直径dを有し、入出力電極11と入出力電極11を囲む導体膜12とが誘電体露出部を横切る幅wを有するショートスタブ13により接続されている。ショートスタブ13の誘電体露出部を横切る幅wは入出力電極11の直径dより小さい。
図2(b)に示すように、プリント基板20の表面の島状電極21は直径dを有し、島状電極21と一定の間隔をおいて囲む表面グランドパターン24からなる。
島状電極21の直径dは入出力電極11の直径dより小さくすることにより、誘電体導波管の位置決めを容易にできる。
【0013】
図3は本発明の誘電体導波管の入出力接続構造を用いた誘電体導波管フィルタの一実施例である。
誘電体導波管フィルタ30は、誘電体導波管の共振器の段数n=5としたものである。誘電体ブロックの外装を導体膜で被覆した直方体形状の誘電体導波管31〜35からなる。誘電体導波管31〜35は一列に並べられ、各々の誘電体導波管は、対向する側面に設けられた誘電体の露出する結合窓40により結合されている。両端の誘電体導波管31、35は、それぞれの底面の誘電体が露出する誘電体露出部に、導体からなる略円形状の入出力電極41、42が形成され、入出力電極41、42と各導体膜とはショートスタブ43、43により接続されている。
プリント基板50の表面には、略円形状の島状電極51、52が設けられており、その島状電極51、52の周囲に島状電極51、52を囲むように、表面グランドパターン54が形成されている。島状電極51、52と表面グランドパターン54とは絶縁されている。プリント基板50の裏面には、図示しないストリップ線路が設けられており、そのストリップ線路の周囲にストリップ線路を囲むように、裏面グランドパターンが形成されている。ストリップ線路と裏面グランドパターンとは絶縁されている。
誘電体導波管フィルタ30は、入出力電極41と島状電極51、及び、入出力電極42と島状電極52とが接続されるように基板50に配置される。
【0014】
図4は、図3の本発明の導波管の入出力接続構造を用いた誘電体導波管フィルタにおいて、ショートスタブの幅と入出力電極の直径を変化させた場合の比帯域幅を示すグラフである。
図4において、横軸は入出力電極の直径d[mm]、縦軸は比帯域幅を示し、特性2はショートスタブの幅wを2.0[mm]、特性1はショートスタブの幅wを1.0[mm]、特性3はショートスタブが無い場合を示す。
なお、比帯域幅は、中心周波数f=2.6[GHz]、リターンロスRL=20[dB]、誘電体導波管の共振器の個数n=5として計算した。
【0015】
図5は、図3に示した誘電体導波管フィルタ30のプリント基板50に実装された状態における伝送特性を示すグラフである。中心周波数f=2.6[GHz]、ショートスタブの幅wは1.0[mm]、入出力電極の直径dは4.6[mm]であり、実線は本発明の誘電体導波管の入出力接続構造を用いた誘電体導波管フィルタの場合であり、点線は、比較のためにショートスタブの無い誘電体導波管フィルタの場合の伝送特性を示すグラフである。
グラフにおいて横軸は比帯域幅、縦軸は伝送特性[dB]を示す。
【0016】
図4図5の結果より、ショートスタブを設け、ショートスタブの幅と入出力電極の直径を所望の大きさにすることにより広帯域化することができる。
【0017】
以上述べたように、本発明の誘電体導波管の入出力接続構造を用いることで部品点数を最小に抑え、誘電体導波管の入出力電極とプリント基板の島状電極の配置を容易に接続でき、多少の位置ずれにおいても特性に対する影響を少なくできる。その結果、簡易な構成でプリント基板との配置を容易に接続することができ、低損失で広帯域な誘電体導波管の入出力接続構造を提供できる。
【0018】
また、島状電極21の周辺に設けられたスルーホール群26により、入出力接続構造部での不要な電磁波の放射が抑えられるとともに、入出力接続構造部の間のアイソレーションを高め、入出力接続構造の効率をさらに高めることができる。
また、ストリップ線路22は、プリント基板20に複数の配線層を有する多層基板の内層に設けてもよい。さらに、ショートスタブの位置は、どの位置でもよい。さらにまた、ストリップ線路22は必ずしも必要ではない。プリント基板の裏面に直接コネクタを配置し、コネクタとスルーホールを直接接続すれば、ストリップ線路22は不要である。
【符号の説明】
【0019】
10、31〜35、60、80 誘電体導波管
20、50、70、100 プリント基板
30 誘電体導波管
40 結合窓
90 スペーサ
11、41、42、61、81 入出力電極
12、62、82 導体膜
13、43 ショートスタブ
21、51、52、71、101 島状電極
22、72、102 ストリップ線路
23、73 スルーホール
24、54、74、104 表面グランドパターン
25 裏面グランドパターン
26 スルーホール群
図1
図2
図3
図4
図5
図6