特許第5689056号(P5689056)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5689056
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】気管切開チューブ
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/04 20060101AFI20150305BHJP
【FI】
   A61M16/04 Z
【請求項の数】15
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-515689(P2011-515689)
(86)(22)【出願日】2009年6月18日
(65)【公表番号】特表2011-525834(P2011-525834A)
(43)【公表日】2011年9月29日
(86)【国際出願番号】IB2009052625
(87)【国際公開番号】WO2009156922
(87)【国際公開日】20091230
【審査請求日】2012年5月18日
(31)【優先権主張番号】12/163,173
(32)【優先日】2008年6月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】310007106
【氏名又は名称】キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100089266
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 陽一
(72)【発明者】
【氏名】ケノフスキー、マイク
(72)【発明者】
【氏名】シューマッハ、ジェイムズ
【審査官】 鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/100426(WO,A1)
【文献】 特開平6−197981(JP,A)
【文献】 特表平6−509971(JP,A)
【文献】 特表2006−528524(JP,A)
【文献】 特表平3−501220(JP,A)
【文献】 特開昭61−41470(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/019102(WO,A2)
【文献】 特表2007−502190(JP,A)
【文献】 特開2005−177504(JP,A)
【文献】 特表平8−509394(JP,A)
【文献】 特開平3−173577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/04
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カニューレをなし、かつ近位端の近傍にフランジを備える気管切開チューブであって、
上側部分と、遠位部分とを有し、
前記上側部分が、前記フランジから前記チューブの遠位端に向かって前記チューブの全長の3分の2以下の長さに渡って遠位方向に延在し、かつ、補強されており、
前記上側部分の外面に複数のロッドが配設され、前記ロッドが中空ルーメンを有し、前記中空ルーメンが空気又は液体を輸送する機能を提供することを特徴とする気管切開チューブ。
【請求項2】
請求項1に記載の気管切開チューブであって、
リマーから作製した、5マイクロメートル以上、25マイクロメートル以下の厚さを有するバルーンカフを備えることを特徴とする気管切開チューブ。
【請求項3】
請求項に記載の気管切開チューブであって、
前記中空ルーメンが、前記バルーンカフを膨張させるために空気又は液体を輸送する機能を提供することを特徴とする気管切開チューブ。
【請求項4】
請求項に記載の気管切開チューブであって、
前記中空ルーメンが、バルーンカフの上側及び下側の両方においてシャフトに沿って液体分泌物を移送する役割を果たすために空気又は液体を輸送する機能を提供することを特徴とする気管切開チューブ。
【請求項5】
請求項1に記載の気管切開チューブであって、
前記遠位部分が、前記上側部分よりも硬さが低いことを特徴とする気管切開チューブ。
【請求項6】
請求項1に記載の気管切開チューブであって、
前記遠位部分を、前記上側部分の作製に用いられるポリマーよりも硬さが低いポリマーから作製したことを特徴とする気管切開チューブ。
【請求項7】
請求項に記載の気管切開チューブであって、
硬さが互いに異なる複数のポリマーの混合物から作製したことを特徴とする気管切開チューブ。
【請求項8】
請求項1に記載の気管切開チューブであって、
前記フランジが柔軟性を有することを特徴とする気管切開チューブ。
【請求項9】
請求項に記載の気管切開チューブであって、
前記ポリマーがポリウレタンであることを特徴とする気管切開チューブ。
【請求項10】
請求項に記載の気管切開チューブであって、
前記フランジから前記遠位端までの曲線長さが70mm以上、100mm以下であることを特徴とする気管切開チューブ。
【請求項11】
請求項に記載の気管切開チューブであって、
前記フランジから前記遠位端までの曲線長さが75mm以上、95mm以下であることを特徴とする気管切開チューブ。
【請求項12】
請求項に記載の気管切開チューブであって、
前記フランジから前記遠位端までの曲線長さが80mm以上、90mm以下であることを特徴とする気管切開チューブ。
【請求項13】
請求項1に記載の気管切開チューブであって、
前記フランジから前記遠位端までのなす角度が85度以上、120度以下であることを特徴とする気管切開チューブ。
【請求項14】
請求項1に記載の気管切開チューブであって、
前記フランジから前記遠位端までのなす角度が95度以上、115度以下であることを特徴とする気管切開チューブ。
【請求項15】
請求項1に記載の気管切開チューブであって、
前記フランジから前記遠位端までのなす角度が100度以上、110度以下であることを特徴とする気管切開チューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気管切開チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場では、ベンチレータまたはレスピレータを用いて患者の肺の機械的換気が行われる。上記の人工呼吸器は、患者に換気ガスを供給するためのホースセット、すなわち換気用チューブ若しくはチューブ回路に接続される。換気用チューブの患者側端部は、通常、患者の下気道への直接的かつ確実なアクセスを可能にする気管換気カテーテル若しくはチューブに接続される。気管カテーテルは、気管壁と気管換気チューブシャフトとの間を塞ぎ、肺の陽圧換気を可能にする膨張式のシーリングバルーン要素、すなわち「カフ」を備えている。
【0003】
一般的に、患者の挿管チューブを、気管壁に形成された瘻孔から気管内に直接挿管される気管切開チューブに切り替える決定がなされるまでは、気管カテーテルの一種であり口から挿管される気管内チューブ(ETチューブ)が何日間も使用される。気管内チューブはいくつかの研究において人工呼吸器関連肺炎(VAP)の発症率の増加と関連付けられているため、気管切開術はますます増えつつあり、かつVAPの発生率を減少させるために入院中の早い時期に行われるようになってきている。
【0004】
気管切開手技は、気管へのアクセスを可能にするために、首(頸部)の皮膚に小さい横切開部を形成することを伴う。気管は生体器官としては特に高い柔軟性及び弾性を有するので、気管壁の一部を切除して開口部を形成するよりも、気管壁に小孔を形成した後にその孔を拡張する方が、早期に治癒することが分かっている。気管瘻孔の拡張後、瘻孔を通じて気管切開チューブを挿入し、バルーンカフを膨張させ、その後、気管切開チューブをベンチレータに接続する。
【0005】
気管切開チューブを気管内に挿入するのに要する力に起因して、チューブにねじれやへこみ(collapse)が生じ得る。この問題を避けるためには高度な注意が必要とされるため、気管切開手技の実施に要する時間が長くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,637,435号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
気管切開チューブの挿管をより迅速にかつ安全に成功させることができるデバイスが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、気管切開チューブがへこむという問題を概ね克服した新規な気管切開チューブが提供される。気管切開チューブは、チューブの位置によって互いに異なる曲がりやすさを有する。前記チューブが接触し得る気管後壁を傷つけないように、前記チューブの遠位部分は高い柔軟性を有している。気管軟骨輪に起因して気管切開術中及び気管切開チューブの留置後に大きな力がかかる前記チューブの近位部分は、低い柔軟性を有している。上側部分すなわち近位部分は、チューブにおけるフランジとシーリングカフの近位端との間の長さの3分の2以下の長さである。下側部分すなわち遠位部分は、チューブにおけるシーリングカフの近位端とチューブ遠位端との間の部分である。そして、本発明の気管切開チューブにおいては、上側部分の外面には、低い柔軟性を有するように複数のロッドが配設され、前記ロッドが中空ルーメンを有し、前記中空ルーメンが空気又は液体を輸送する機能も提供するようにしている。
即ち、本発明によれば、カニューレをなし、かつ近位端の近傍にフランジを備える気管切開チューブであって、上側部分と、遠位部分とを有し、前記上側部分が、前記フランジから前記チューブの遠位端に向かって前記チューブの全長の3分の2以下の長さに渡って遠位方向に延在し、かつ、補強されており、前記上側部分の外面に複数のロッドが配設され、前記ロッドが中空ルーメンを有し、前記中空ルーメンが空気または液体を輸送する機能を提供することを特徴とする気管切開チューブが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】カニューレが除去された状態の気管切開チューブ26を示す図である。
図2】気管切開チューブ26にローディングカテーテル50を装着した状態を示す図である。
図3】気管カフを膨張させた状態の、気管内における気管切開チューブの最終位置を示す図である。
図4】気管切開チューブと共に使用される交換可能型(使い捨て式)のカニューレを示す図でる。
図5】気管切開チューブに交換可能型カニューレを装着した状態を示す図である。
図6】シャフトの上側部分に補強ワイヤが配設された気管切開チューブを示す図である。
図7】シャフトの上側部分の外面に沿って補強ロッドが配設された気管切開チューブを示す図である。
図8図7に示す補強ロッドが中空ルーメンを有する場合を示す図である。
図9】シャフトの上側部分の外面に沿って補強リングが配設された気管切開チューブを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
気管切開術は、患者が気管を通じて直接的に呼吸することを可能にする救命手技である。気管切開術はまた、人工呼吸器関連肺炎(VAP)の発症を予防または抑制すると、多くの人々に考えられている。しかし残念ながら、この救命手技は、比較的時間がかかり、現在の技術では多数のステップ及び器具を必要とし、かつ、手技を成功裏に完了させるためには前記器具を無菌状態に維持しかつ適切に機能させなればならない。先細の拡張器と気管切開チューブローディングカテーテルまたはオブトラトールとを使用することにより、気管切開手技を大幅に向上させることができる。
【0011】
アメリカン・ヘリテイジ・ステッドマン医学辞典2001年版(American Heritage Stedman's Medical dictionary 2001)によれば、拡張器は、管、腔、血管または開口部を拡張するための器具または物質である。気管切開チューブを挿管するために拡張器を使用して気管瘻孔を拡張した後、気管切開チューブはそのフランジ70が患者の皮膚に当接するまで挿入される。
【0012】
気管切開チューブが図1に示されている。気管切開チューブはその近位端に、該チューブを患者の皮膚に取り付けるためのフランジ70を備えている。フランジの隅部には、該フランジを患者に縫合するために用いられる縫合孔が形成されている。チューブ26は、チューブを気管内に挿管した後に、ベンチレータと連結させるための近位端72を有している。気管切開チューブ26は、該チューブの遠位端の近傍に設けられたバルーンカフ30に加圧ガス(通常は空気)を供給するための膨張ライン76の取付位置を有している。上側部分、すなわち、チューブのシャフト74の上側3分の1ないし3分の2は、フランジの下側(遠位側)から遠位方向に延出しており、この部分は、チューブの挿管時に最も大きいストレス(応力)を受ける領域である。所望であれば本開示に従ってチューブ全体を強化することができるが、チューブの上側部分だけを補強することにより、チューブの挿管をより成功的に行うことができるようにする共に、気管後部と接触し得るシャフト下側部分によって気管を傷つけないようにすることができる。
【0013】
気管切開チューブを患者の気管内に挿管するために、挿管前にローディングカテーテル50が気管切開チューブ26内に滑入される(図2)。ローディングカテーテル把持部52は、例えばスロット64及びタブ62を有する係合機構によって、気管切開チューブ26の近位端に対して着脱可能に係合される。タブ62は把持部52の左右両側に設けられており、気管切開チューブ26の近位端に設けられたスロット64と互いに係合される。いったん係合されると、把持部は自由に回転できなくなる。当業者であれば、把持部52をチューブ26に係合させる別の方法を容易に考えつくことができるであろう。
【0014】
ローディングカテーテル50をその内側に装着した気管切開チューブ26(図2)が、随意的に、本出願人により本出願と同日出願された特許出願「握りやすい先細の拡張器(Easy Grip Tapered Dilator)」に従った拡張器の助けを借りて、気管内に挿入される。チューブを気管内に挿管したら、チューブ26だけを気管24内に残して、ローディングカテーテル50及び他の除去可能な部品は気管切開チューブ26を通じて引き出される(図3)。
【0015】
ローディングカテーテル50は、気管切開チューブ26に対して着脱可能に係合されている把持部52の気管切開チューブ26の近位端に対する係合を解除し、把持部52をチューブ26から引き出すことにより、気管切開チューブから除去される。この係合解除を実現するための1つの方法は、ローディングカテーテル把持部52を回転させることである。この回転動作によって、この系に存在し得る静止摩擦に打ち勝って、タブ62及びスロット64によるローディングカテーテル把持部52をチューブ26に係合させている係合機構が解除され、ローディングカテーテル把持部52が気管切開チューブ26の近位端から外れる。この回転動作は、チューブ26のみを留置して、気管切開チューブ26の内側ルーメンを通じて全てのローディング部品をユーザが引き出すことを可能にする。明らかなことであるが、先端部12が気管切開チューブ26を通過することができるように、先端部12の最大直径は気管切開チューブ26の直径よりも若干小さくある必要がある。気管切開チューブ26が挿管されたら、チューブカフ30を膨張させ、チューブ26をベンチレータ(図示しない)に接続して、使用する(図3)。
【0016】
気管切開チューブ26は、その下側(遠位)部分の外周面上にバルーンカフ30を備えている。バルーンカフ30は、ベンチレータを使用して気管切開チューブを介して人工呼吸を行うために、気管内の通常の空気の流れを遮断する役割を果たす。前記カフは、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタラート(PETP)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)またはポリオレフィンなどの、柔軟で曲げやすいポリマーから作製することが望ましい。前記カフはとても薄くすべきであり、約25マイクロメートル以下の厚さ、例えば20マイクロメートル、15マイクロメートル、10マイクロメートル、さらには5マイクロメートル程度の厚さにすべきである。また、前記カフは、約30mmHO以下の圧力、例えば25mmHO、20mmHO、15mmHOまたはそれ以下の圧力で作動する低圧カフであることが望ましい。そのようなカフは米国特許第6,802,317号に記載されている。米国特許第6,802,317号には、患者の気管を可能な限り密閉的に塞ぐためのカフが記載されており、前記カフは、患者の声門の下方の気管を塞ぐためのカフバルーンと、空気チューブとを含んでいる。カフバルーンは、空気チューブと接続されており、完全膨張状態のときは気管の直径よりも大きいサイズに膨張する。また、カフバルーンは、柔軟で曲げやすい壁厚が0.01mm以下の箔材から作製されており、患者の気管内でカフバルーンを膨張させたときに少なくとも1つの垂れ状のひだ部(draped fold)が形成されるように構成されている。少なくとも1つの垂れ状のひだ部は、その端部にループ(loop)を有している。ループの直径は、分泌物がループを通過して自由に流れるのを妨げることができるような小径に形成されている。そのようなカフの別の説明は、米国特許第6,526,977号に記載されている。米国特許第6,802,317号には、患者の気管を可能な限り密閉的に塞ぐための拡張器が記載されている。前記カフは、患者の声門の下方の気管を塞ぐためのカフバルーンと、空気チューブとを含んでいる。カフバルーンは、空気チューブと接続されており、完全膨張状態のときは気管の直径よりも大きいサイズに膨張する。また、カフバルーンは、柔軟で曲げやすい箔材から作製されており、患者の気管内でカフバルーンを完全に膨張させたときに少なくとも1つの垂れ状のひだ部が形成されるように構成されている。少なくとも1つの垂れ状のひだ部は、分泌物が肺に吸い込まれて分泌物吸引に関連する感染症が発症することを防止すべく、ひだ部によって生じる毛細管力によってバルーンの表面を通過する分泌物の自由な流れを捕えることができるような毛細管サイズを有している。
【0017】
気管切開チューブ26を患者の喉部に取り付けるためのフランジ70が、気管切開チューブ26の近位端に設けられている。フランジ70は、ベンチレーター連結部72が設けられているチューブ26の近位端の近傍においてチューブ26の左右両側に延出している。フランジ70は、柔軟性を有し、非刺激性であり、かつチューブ26を固定するために患者の喉部に縫合することができる。フランジのサイズは、患者の身体サイズ及びニーズに応じて様々であり得る。チューブ26はまた、チューブ近位端から遠位端31まで延在する中空シャフト74を含む。
【0018】
また、気管切開チューブ26と共に、使い捨て式のカニューレ80(図4)を使用することもできる。カニューレ80は、チューブ近位端から気管切開チューブ内に挿入される(図5)。このような使い捨て式カニューレ80は、細菌増殖を最小限に抑えるために、定期的に交換される。カニューレ80は、ポリオレフィン、ポリウレタン、ナイロンなどのプラスチック材料から作製され、望ましくは半剛体である。カニューレ80は、抗細菌及び/または抗ウイルスコーティング、あるいは、有害生物の増殖を減少させるのを助ける他の活性物質で処理され得る。カニューレ80は、ローディングカテーテル50の装着方法と同様の方法によって、すなわち、カニューレの遠位端82に設けられたタブ84をチューブ26のスロット64と係合させることによって気管切開チューブ26に装着される。
【0019】
フランジ70は、幅が6cmないし12cmで高さが1cmないし6cm、より具体的には幅が7cmないし10cmで高さが2cmないし5cm、さらに具体的には幅が8cmないし9cmで高さが2cmないし4cmであることが望ましい。フランジ70から気管切開チューブ26の遠位端31までの距離は、曲線距離で70mmないし100mmであり、望ましくは約75mmないし95mmであり、より望ましくは80mmないし90mmである。気管切開チューブにおけるフランジから遠位端までのなす角度は、85度ないし120度、望ましくは95度ないし115度、より望ましくは100度ないし110度である。気管切開チューブ及びフランジの作製に適する材料には、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリオレフィン、及び他の生体適合性ポリマーが含まれる。選択されるポリマーに応じて、気管チューブ及びフランジは、透明、半透明または不透明であり得る。
【0020】
気管切開チューブのシャフト74の上側部分の強度を高めるための1つの方法は、シャフトを、チューブとは異なる硬さの材料から作製することである。当業者に既知の1つの適切な硬さ測定方法は、デュロメーターASTM D2240硬さ試験である。シャフトの上側部分は、例えば、シャフトの下側部分よりも相対的に硬いポリマーから作製され得る。上側部分と下側部分を例えばポリウレタンなどの同一種類の材料から作製すると、同じ方法で及びほぼ同じ条件でチューブ形状にすることが可能となり、上側部分と下側部分とを強固でかつ継ぎ目のない一体的に形成することができる。シャフトの上側部分と下側部分は、同じ1つの金型で同時に射出成形することができ、例えば、上側部分は55Dショア硬さを有するポリウレタンから、下側部分は80Aショア硬さを有するポリウレタンから作製することができる。作製されたシャフトは、上側部分と下側部分とで曲げやすさが互いに異なる。
【0021】
気管切開チューブの上側部分と下側部分を互いに異なる硬さを有するポリマーから作製する代わりに、硬さが互いに異なる複数のポリマーの混合物を使用し、上側部分では硬性ポリマーの比率が高く、下側部分に向かうに従って硬性ポリマーの比率が次第に減少するようにする方法もある。繰り返すが、このことは、当業者に既知の射出成形方法を用いて達成することができる。
【0022】
チューブの強度を高めるための別の方法は、チューブの周囲にワイヤ100を巻回することである(図6)。しかし残念ながら、金属ワイヤは、X線、MRIまたはその他の走査法の妨げとなるので、金属ワイヤを用いる場合は、患者が金属ワイヤと接触しないように、チューブシャフトの内外面の内側に配置し、チューブの壁部に完全に埋め込まれるようにするべきである。この実施形態に使用するのに適した金属には、チタン、コバルト、ステンレス鋼などがある。
【0023】
シャフトの外面をプラスチックワイヤにより補強することもできるが、シャフト外面ににワイヤを配置すると、チューブの挿管時に気管瘻孔の縁部に引っかかるので、チューブの挿入がより難しくなる。適切なプラスチックには、ポリテトラフルオロエチレン(PTPE)、フルオロエチレンプロピレン(FEP)及び、その他の溶融温度が比較的高い材料が含まれる。どのようなタイプであっても、ワイヤ補強を適用すると、チューブシャフト74を単一種類の材料のみから作製することが可能となる。予め作製されたワイヤを、作製後の気管切開チューブ上を滑らせて装着する。あるいは、チューブが製造されたときにチューブに埋め込まれた状態となるように、射出成形前に、ワイヤを気管切開チューブモールド内に配置する。ワイヤによる補強は、シャフトの上側部分にワイヤを1インチあたり3回ないし20回巻回する(2cmあたり1.2回ないし8回巻回する)ことにより、望ましくは1インチあたり5回ないし10回巻回する(1cmあたり2回ないし4回巻回する)ことによりなされる。
【0024】
気管切開チューブの強度を高めるための別の方法は、チューブの外周面上の様々な位置において、チューブの側面に沿って補強ロッド101を配置することである(図7)。補強ロッドは、気管切開チューブよりも曲がりにくい材料から作製され、作製後のチューブに取り付けられる。あるいは、ロッドは、チューブの作製に使用されるポリマーよりも硬いポリマーを使用してチューブと共に射出成形される。また、図8に示すように、ロッド101は、バルーンカフを膨張させる役割やバルーンカフの上側及び下側の両方においてシャフトに沿って液体分泌物を移送する役割を果たすために空気または液体を輸送する機能を提供するルーメン102を壁部内に有することもできる。
【0025】
チューブの強度を高めるためのさらなる別の方法は、チューブの周囲に同心円状リングを装着させることである(図9)。ロッドの場合と同様に、リングは、作製後のチューブに追加されるか、チューブと共に射出成形され得る。チューブを作製するポリマーの種類に関係なく、チューブの強度はリングの形状によって大幅に高められるので、リング102の剛性は、チューブよりも高くあり得るが必ずしもチューブよりも高くある必要はない。ロッド101及びリング102の幅は、1mmないし8mmであり得る。
【0026】
この出願は、同一出願人により同日に出願された特許出願グループのうちの1つである。このグループには、Brian J. Cuevasによる米国特許出願第12/147,817号明細書(標題:握りやすい先細の拡張器)、Brian J. Cuevasによる米国特許出願第12/147,873号明細書(標題:気管切開術の実施方法)、Brian J. Cuevasによる米国特許出願第12/163,065号明細書(標題:拡張器ローディングカテーテル)、Brian J. Cuevasによる米国特許出願第12/147,952号明細書(標題:気管切開チューブ用のバタフライ型フランジ)、Brian J. Cuevasによる米国特許出願第12/163,173号明細書(標題:気管切開チューブ)、Brian J. Cuevasによる米国意匠出願第29/320,497号の(標題:バタフライ型フランジ)、Brian J. Cuevasによる米国意匠出願第29/320,492号の(標題:先細の拡張器ハンドル)、Brian J. Cuevasによる米国意匠出願第29/320,500号の(標題:瘻孔パッド)が含まれる。これらの文献は、この参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0027】
当業者に理解されるように、本発明の変更形態及び変形形態は当業者の能力の範囲内にあると考えられる。本発明者は、そのような変更形態及び変形形態が本発明の範囲内にあることを意図している。また、本発明の範囲は、本明細書に開示されている特定の実施形態に限定されるものと解釈されるべきではなく、先述の開示を踏まえて添付の請求項にのみ従うものであると理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9