【文献】
GUIGNARD,A 3 TEV E+E-LINEAR COLLIDER BASED ON CLIC TECHNOLOGY,CERN EUROPEAN ORGANIZATION FOR NUCLEAR RESEARCH. CERN 2000-008, [ONLINE],2000年 7月28日,URL,http://preprints.cern.ch/yellowrepl2000/2000-008/pl.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0008】
本発明の態様は、加速器構造体と、加速器の構成部材を劣化させることなく高い電界を使用できる方法とを提供することによって、前記技術分野のニーズにこたえる。シングルモード又はマルチモードを有する共振キャビティに、駆動ビーム及び加速ビームを照射することにより高電界の露出時間を減少させることによって、破壊限界を大きくする(広げる)。好ましい伝達比は、共振キャビティに関連する離調によって達成され得る。態様では、高伝達比の達成を可能にするために、共振から離調する複数の調和関係にあるモードの駆動ビームによって励起されるキャビティを有する2ビーム加速器のRFキャビティ構造体を含む。キャビティの電界は、駆動ビーム及び加速ビームの経路に関して対称であってもよい。
【0009】
本発明の態様はまた、2ビーム加速器のビームの焦点調節を可能にする変形4極磁石を提供することによって、前記技術分野のニーズにこたえる。
【0010】
態様は、駆動ビームを供給する駆動ビーム源と、前記駆動ビームに平行な加速ビームを供給する加速ビーム源と、前記駆動ビーム及び前記加速ビームの経路に配置された離調高調波キャビティとを備え、前記駆動ビーム及び前記加速ビームの経路に垂直な前記キャビティの面は、前記駆動ビーム及び前記加速ビームがそれぞれ前記面を通過する入射位置及び出射位置に少なくとも一つの開口を有する2ビーム加速器装置を含むことが可能である
。なお、前記離調高調波キャビティは、その共振周波数が、前記駆動ビームのバンチの周波数と異なる周波数に調整されたキャビティである。
【0011】
さらに、態様は、軸対称のキャビティであり、前記駆動ビーム及び前記加速ビームはコリニアである離調キャビティであって、前記駆動ビーム及び前記加速ビームの経路に垂直な前記キャビティの面に、前記キャビティの両側各々に一つの開口を有するキャビティを含むことが可能である。
【0012】
さらに、態様は、正弦曲線プロファイルの平面壁を有する変形ピルボックス形状を有する離調キャビティを含むことが可能である
。具体的には、前記離調キャビティは、円筒状ピルボックス形状に対して径方向延出部を有するように変形された変形ピルボックス形状に形成され、前記径方向延出部の端壁は正弦曲線プロファイルで形成されている。
【0013】
さらに、態様は、6面の共振キャビティであるキャビティと、矩形で、かつ、前記駆動ビーム及び前記加速ビームがそれぞれ前記駆動ビーム及び前記加速ビームの経路に垂直な前記キャビティの面と交わる位置に第1開口及び第2開口を有する、前記キャビティの面とを含み、前記第1開口及び前記第2開口の中央は、前記面の
長さの4分の1をdとする距離2dで
長さ方向に離間され、最も接近する側壁から距離dで長さ方向に離間され、側壁間で
幅方向に等しく離間されることが可能である。
【0014】
さらに、態様は、駆動ビーム電流と約90°位相がずれる駆動ビーム電圧を有する駆動ビームと、前記駆動ビーム電圧と略同じ位相である加速ビーム電流と、前記駆動ビーム電流と約180°位相がずれる加速ビーム電圧とを有する加速ビームとを含むことが可能である。
【0015】
さらに、態様は、2:1、2.582:1又は2:1.291の比を有する、前記駆動ビーム及び前記加速ビームの経路に垂直な前記共振キャビティの面の長さ及び幅と、2〜4mmの範囲の
厚さを有する壁を備え、金属、例えば、銅からなる共振キャビティと、次のI2及びI3を最小化する、2つのビームの進行方向に平行する前記キャビティの寸法とを含むことが可能である。
【数1】
【数2】
ここで、Gは前記共振キャビティの加速勾配であり、Eは前記共振キャビティのピーク電界であり、tは時間であり、Tは効率的なパルス幅である。
【0016】
さらに、前記2ビーム加速器装置は、複数の隣り合う共振キャビティを含むキャビティセットを備えることが可能である。共振キャビティの各々は、多数のピース、及び、前記キャビティを形成するために各
共振キャビティのピースを一つに保持し、互いに前記共振キャビティの位置を維持する
保持デバイス、及び/又は、前記
キャビティセットを囲むポンピングマニホールドを備えることが可能である。
【0017】
さらに、2ビーム加速器装置は、加速ビームと同じ方向に進行する駆動ビーム、又は、加速ビームの方向と反対方向に進む駆動ビームを含むことが可能である。
【0018】
さらに、2ビーム加速器装置は、例えば、4つの磁石と、4つの磁石の中央にある中央経路と、磁石の一つの中にあり、磁性材料でライニングされたチャネルを含む開口とを有する変形4極磁石等の、集束装置を含むことが可能である。
【0019】
さらに、態様は、駆動ビームを供給する工程と;前記駆動ビームに平行な加速ビームを供給する工程と;前記駆動ビーム及び前記加速ビームを、前記駆動ビーム及び前記加速ビームの経路に配置された離調高調波キャビティを通過させる工程とを備える粒子ビームを加速する方法であって、前記駆動ビーム及び前記加速ビームの経路に垂直な前記キャビティの面は、前記駆動ビーム及び前記加速ビームがそれぞれ前記面を通過する位置で、前記キャビティの両側各々に少なくとも一つの開口を有する方法を含むことが可能である
。なお、前記離調高調波キャビティは、その共振周波数が、前記駆動ビームのバンチの周波数と異なる周波数に調整されたキャビティである。
【0020】
さらに、態様は、軸対称のキャビティである離調キャビティを含むことが可能である。前記駆動ビーム及び前記加速ビームはコリニアであり、前記キャビティは、前記駆動ビーム及び前記加速ビームの経路に垂直な前記キャビティの面に、前記キャビティの両側各々に一つの開口を有する。
【0021】
さらに、態様は、正弦曲線プロファイルの平面壁を有する変形ピルボックス形状を有する離調キャビティを含むことが可能である
。具体的には、前記離調キャビティは、円筒状ピルボックス形状に対して径方向延出部を有するように変形された変形ピルボックス形状に形成され、前記径方向延出部の端壁は正弦曲線プロファイルで形成されている。
【0022】
さらに、態様は、前記駆動ビーム及び前記加速ビームの経路に配置された6面の共振キャビティであるキャビティと、矩形で、かつ、前記駆動ビーム及び前記加速ビームがそれぞれ前記駆動ビーム及び前記加速ビームの経路に垂直な前記キャビティの面を通過する位置に第1開口及び第2開口を有する、前記キャビティの面とを含むことが可能である。前記第1開口及び前記第2開口の中央は、前記面の
長さの4分の1をdとする距離2dで
長さ方向に離間され、最も接近する側壁から距離dで
長さ方向に離間され、側壁間で
幅方向に等しく離間されている。
【0023】
さらに、態様は、駆動ビーム電流と約90°位相がずれる駆動ビーム電圧を有する駆動ビームと、前記駆動ビーム電圧と略同じ位相である加速ビーム電流、及び、前記駆動ビーム電流と約180°位相がずれる加速ビーム電圧を有する加速ビームとを含むことが可能である。
【0024】
さらに、態様は、2:1、2.582:1又は2:1.291の比を有する、前記駆動ビーム及び前記加速ビームの経路に垂直な前記共振キャビティの面の長さ及び幅と、2〜4mmの範囲の幅を有する壁を備える共振キャビティと、金属、例えば、銅からなる共振キャビティと、次のI
2及びI
3を最小化する、2つのビームの進行方向に平行する前記キャビティの寸法とを含むことが可能である。
【数3】
【数4】
ここで、Gは前記共振キャビティの加速勾配であり、Eは前記共振キャビティのピーク電界であり、tは時間であり、Tは効率的なパルス幅である。
【0025】
さらに、態様は、前記駆動ビーム及び前記加速ビームを、互いに隣り合うように配置された複数の共振キャビティを含むキャビティセットを通過させる工程と;前記駆動ビーム及び前記加速ビームを、集束装置、例えば、4つの磁石の一つにある、磁性材料でライニングされたチャネルを含む開口を有する変形4極磁石を通過させる工程とを含むことが可能である。さらに、本方法は、前記駆動ビーム及び前記加速ビームの一方を4極磁石の中央を通過させ、前記駆動ビーム及び前記加速ビームの他方を磁石の開口の中のライニングされたチャネルを通過させる工程;及び/又は、前記駆動ビーム及び前記加速ビームを、第2の集束装置、例えば、4つの磁石の一つにある、磁性材料でライニングされた第2のチャネルを含む開口を有する第2の変形4極磁石を通過させる工程を含むことが可能である。さらに、本方法は、前記駆動ビーム及び前記加速ビームの他方を第2の4極磁石の中央を通過させる工程と、駆動ビーム又は加速ビームを第2の変形4極磁石の磁石にある開口中の第2のライニングされたチャネルを通過させる工程とを備えることが可能である。
【0026】
さらに、態様は、
前記離調キャビティを励起するとき、駆動ビームで位相固定される先行パルス駆動ビーム電流を駆動することにより、及び/又は、駆動ビームのビームプロファイルの振幅及び位相の少なくとも一つを変更することによって、充填時間を減少する工程を含むことが可能である
。なお、充填時間は、前記キャビティが初期励起から定常状態に達するまでの時間である。
【0027】
さらに、本方法は、駆動ビーム及び加速ビームを同じ方向に駆動する工程、又は、駆動ビーム及び加速ビームを反対方向に駆動する工程を含むことが可能である。
【0028】
さらに、態様は、変形4極磁石を備える、第1粒子ビーム及び第2粒子ビームを有する2ビーム粒子加速器の集束装置であって、前記変形4極磁石は、4つの磁石と;中央の開口と;前記第1粒子ビームを通過させるように構成された前記中央の開口中のチャネルと;前記チャネルを囲む非磁性材料と;前記4つの磁石の一つにある開口と;前記第2粒子ビームを通過させるように構成された前記磁石にある開口中の第2チャネルと;前記第2チャネルを囲む非磁性材料と;前記第2チャネルの非磁性材料の内側をライニングする磁性材料とを含む集束装置を含むことが可能である。
【0029】
さらに、集束装置は、前記第1の変形4極磁石と直列な、第2及び第3の変形4極磁石を備えることが可能である。第1、第2及び第3の変形4極磁石の各々は、第1粒子ビームが第1、第2及び第3の変形4極磁石の中央の開口のチャネルを通過し、第2粒子ビームが第1、第2及び第3の変形4極磁石ごとの4つの磁石の一つの中のチャネルを通過するように位置付けされる。
【0030】
さらに、集束装置は、前記第1、第2及び第3の変形4極磁石と直列な、第4、第5及び第6の変形4極磁石を備えることが可能である。第4、第5及び第6の変形4極磁石は、第2粒子ビームが第4、第5及び第6の変形4極磁石の中央の開口のチャネルを通過し、第1粒子ビームが第4、第5及び第6の変形4極磁石ごとの4つの磁石の一つの中のチャネルを通過するように位置付けされる。
【0031】
さらに、態様は、第1粒子ビーム及び第2粒子ビームを有する2ビーム粒子加速器のビームを集束する方法であって、4つの磁石と;中央の開口と;前記中央の開口中のチャネルと;前記チャネルを囲む非磁性材料と;前記4つの磁石の一つにある開口と;前記磁石にある開口中の第2チャネルと;前記第2チャネルを囲む非磁性材料と;前記第2チャネルの非磁性材料の内側をライニングする磁性材料とを含む第1の変形4極磁石を供給する工程と、同時に、前記第1の変形4極磁石において、前記第1粒子ビームを、前記中央の開口を通過させ、前記第2粒子ビームを、前記第2チャネルを通過させる工程とを備える方法を含むことが可能である。
【0032】
さらに、態様は、前記第1の変形4極磁石と直列な、第2及び第3の変形4極磁石を供給する工程と、前記第1粒子ビームを、前記第2及び第3の変形4極磁石の中央の開口中のチャネルを通過させる工程と、前記第2粒子ビームを、前記第2及び第3の変形4極磁石の第2チャネルを通過させる工程とを含むことが可能である。
【0033】
さらに、本方法は、前記第1、第2及び第3の変形4極磁石と直列な、第4、第5及び第6の変形4極磁石を供給する工程と;前記第2粒子ビームを、前記第4、第5及び第6の変形4極磁石の中央の開口中のチャネルを通過させる工程と;前記第1粒子ビームを、前記第4、第5及び第6の変形4極磁石の第2チャネルを通過させる工程とを含むことが可能である。
【0034】
上述の目的及び関連した目標の達成に対して、1以上の態様が、明細書において十分に説明され、かつ、特に特許請求の範囲に挙げられた形態を含む。以下の記載及び添付図面は1以上の態様の特定の例示的形態を詳細に説明する。しかしながら、これらの形態は、様々な態様の原理を用いることが可能な様々な方法の一部のみを示している。そして、本記載には、そのような態様のすべてとその均等物を含むことが意図される。
【発明を実施するための形態】
【0036】
開示した態様は、開示した態様を説明して限定しない図面とともに説明され、図面中の同様の符号は同様のエレメント示す。
図を参照して様々な実施形態を説明する。以下の説明において、説明のために、多くの具体的な詳細事項が1以上の実施形態の理解を与えるために記載されている。しかしながら、そのような態様は、これらの具体的な詳細事項によらずに実施されてもよいことは明らかであろう。
【0037】
上述の通り、加速勾配を制限する破壊に関連する問題は、粒子加速器に主な原因がある。破壊の可能性は、加速器の構成部材が曝される電界の強度と、そのピーク電界に曝される時間とによって決まる。ピーク磁界に曝される時間が短ければ、キャビティ面で低減されたパルスの加熱を引き起こし、この結果、加速器の構成部材の破壊及び劣化を減らす。
【0038】
このような劣化を回避するために、必要なときのみ加速電界を強め、それ以外では弱めることができる方法で、粒子を加速する加速電界が形成されるような離調型加速器の構成体に、シングルモード又はマルチモードの加速キャビティを組み込むことができる。従って、RF界が各基本RF周期のほんの一部の期間のみでそのピーク値に到達するように、キャビティは複数の調和関係にある固有モードにおいて励起される。本発明の態様は、特に、電子、陽電子、μ中間子、プロトン、重イオンのビームの加速用に使用されることが可能である。この点は破壊及びパルス加熱の閾値を上昇させるのに役立つ。さらに、2つのビームは同じキャビティを行き来する(traverse)ので、駆動ビームから加速ビームにRFエネルギーを結合させるための伝達エレメントは必要ない。
【0039】
図3aは、単一正弦波の高調波パターンを示す。キャビティを介して粒子バンチ(particle bunch)の通過する間のわずかな時間のみ、RFエネルギーを粒子バンチに焦点をあわせる。高調波のエネルギー波は、粒子バンチと相互作用するのに必要な位置で、最大値30に到達する。
図3bは、3つの高調波を用いた加速用RFエネルギーパターンを示す。
【0040】
図4b〜
図4fは、複数の高調波が重ね合わされたときの低減された露出時間を示す。
図4aは、
図4b〜
図4fの各々に対して、横軸が時間を表し、縦軸が電界の強度を表すことを示す。例えば、
図4bは、単一の高調波に対して、電界に対する露出時間を示す。各曲線に対して、露出時間のパーセンテージは、最も強度の大きい電界の、95%、90%及び80%への露出に対して記載されている。すなわち、T
0.95は最も強度の大きい電界の95%に曝されている露出時間のパーセンテージであり、T
0.90は最も強度の大きい電界の90%に曝されている露出時間のパーセンテージであり、T
0.80は最も強度の大きい電界の80%に曝されている露出時間のパーセンテージである。
【0041】
図4c及び
図4eは、様々な2つの高調波の重ね合わせを使用した実施例を示す。
図4d及び
図4fは、3つの高調波の重ね合わせを使用した実施例を示す。最も強度の強い電界の95%である電界に曝されている露出時間は、単一の高調波の20%に対して6%に減少されている。同様に、最も強度の強い電界の90%への露出は、単一の高調波の29%に対して9%に、最も強度の強い電界の80%への露出は、単一の高調波の41%に対して12%に減少されている。従って、多数の高調波の重ね合わせ、例えば、
図4fに示した3つの高調波の重ね合わせによって、強い電界への露出時間の大きさを劇的に減少することができる。
【0042】
図5は、
図4bの単一の高調波と、
図4fの3つの高調波の場合の露出時間の大きさを示すグラフを表す。第1の網掛け領域501、502及び503はそれぞれ、単一の高調波の最も強い電界の、95%以上、90%以上、80%以上の大きさを示す。
【0043】
領域504、505、506は同様に、それぞれ、3つの高調波の最も強い電界の、95%以上、90%以上、80%以上の大きさを示す。
【0044】
従って、これらのグラフは、電界エネルギーにおいて多数の高調波が有益に露出時間の大きさを減少することにより、破壊の欠点を有することなく、さらなる高電界の利用を支援するということを示す。
【0045】
マルチモードキャビティを有するために、キャビティは高調波のスペクトルを有さなければならない。各モードは、周期的な干渉処理をするために、同じ周波数の間隔で互いに離間される必要がある。この種のスペクトルを有する最もシンプルなキャビティは、TM
ii0モードで動作する辺長aの箱型キャビティであり、その固有周波数はf
ii0=ic/√2aで与えられる。これらのモード間の周波数分離は、最も低いモードの固有周波数f
110=c/√2aで与えられる。偶数iのモードは軸上に零電界を有し、そして軸上でビームと相互作用しない。ビームと相互作用するモードは、周波数f、3f、5f、…等を有する。
図6a及び
図6bは、箱型キャビティの奇数モードと偶数モードを示す。
【0046】
矩形又は箱型のキャビティを用いた一実施例はまた、2ボックスキャビティ(two-box cavity)、2セルキャビティ(two-cell cavity)、デュアルボックスキャビティ(dual-box cavity)として、明細書において同じ意味で言及されている。そして、共振キャビティは、共通壁を取り除かれた2つのボックスとして構成された、6面キャビティを備える。従って、キャビティはともに設置された2つのボックスの外側寸法を有する、6面の箱型キャビティであってもよい。キャビティは、駆動ビームと加速ビームの経路に沿って、2ビーム加速器内に設置される。ビーム経路に垂直なボックス表面は、駆動ビームのチャネルと加速ビームのチャネルのための開口を含む。
図7は、開口701を有するキャビティ700の表面を示す。点線は、キャビティ700が2つのボックスと、破線で示されるように各ボックスの中央に位置するビームチャネルのための開口701と、また破線で示されるように取り除かれた共通壁702とからなることを示す。キャビティの他の表面は実質的に孔が開いていない(solid)。各ビームチャネルは、キャビティを形成するそれぞれの「ボックス」の一つの中央を通るように位置付けられている。
【0047】
従って、
図7が示すように、長さ方向に、各ビームの開口は、最も接近する壁から距離d、他のビームから距離2dに離間される。換言すれば、壁からの距離は、長さ方向に、d及び3dである。ビームの開口は、幅方向に、壁から等距離である。
【0048】
真空ポンプ及び集束光学部品を本発明の態様の2ビーム加速器に含むことはできるが、マイクロ波の外部放射源、外部RF源、又は、駆動チャネルと加速器チャネルの間の伝達構造の必要はない。キャビティは、離調した駆動ビームと加速ビームをキャビティに通すことにより、加速ビームにエネルギーを与えるように構成されている。
【0049】
図8に示すように、キャビティの横寸法である、長さlと幅wは、モードの周波数を制御する。一実施例では、長さは141.324mmであり、幅は70.662mmである。いつくかの実施例では、長さが幅の2倍であり、かつ、幅が箱型ボックスの一面と長さが同じであることに留意されたい。一方、
図7に関連して上記のように、長さは2つの箱型ボックスの長さに包含される。従って、キャビティの他の横寸法は、キャビティの長さ:幅の比に対して、2:1の比が使用され得る。
図8に示すように、2つのビームは、お互いに約7cmの距離を保ち、キャビティを通過する。矢印は駆動ビームと加速ビームが反対方向に駆動されることを示すけれども、駆動ビームと加速ビームはまた、同じ方向に駆動されてもよい。
【0050】
他の実施例は、軸対称のキャビティ又は円筒状のキャビティ、例えば、以下に詳説する変形ピルボックス型キャビティ等を含んでもよい。円筒は、例えば、旋盤等を用いて容易に組み立てられ、スムーズかつ素早く曲げられるが、ボックスを形成するのは困難であり、大規模な機械加工を要求する。円筒状のキャビティはまた、望ましくない鋭利な角を回避する。その上、モードのスペクトルは非矩形のキャビティで造るのが容易ではなく、実施例は変形ピルボックス型キャビティに関してさらに詳説される。
【0051】
図8において、キャビティのギャップ幅はhとして示される。ギャップ幅hはモードの周波数を決定しないけれども、ギャップは駆動ビーム及び加速ビームがキャビティを通過するとき、両ビームの粒子が進む距離である。最適なギャップ幅は、キャビティに用いられるモードの数により変化する。例えば、長さ141.324mm及び幅70.662mmで、壁の厚さ3mmのキャビティに対して、TM
1,2,0モードの共振周波数は3GHzで固定される。しかし、駆動バンチ周波数(drive bunch frequency)及びモード周波数TM
3,6,0、TM
5,10,0、TM
1,14,0、TM
7,2,0は変えられる。この説明として、最適なhはシングルモードケースfに対して25mmであり、2モードケースf,3fに対して15mmであり、3モードケースf,3f,5fに対して10mmである。これは高周波数であるために起き、粒子がギャップで費やす時間の長さはRF周期と比較されなければならない。時間の長さがRF周期と比較できる場合、加速における損失は、粒子がギャップに存在する間に電界が変化するために起きる。従って、より高い周波数が用いられたとき、狭いギャップを用いることが有益である。しかしながら、ギャップが狭い場合、キャビティを通過することによりエネルギー利得はより小さくなる。従って、増設キャビティが、より狭いキャビティで同じ加速を得るために必要となる。粒子は、振動周期の半分より短い時間、又は波長の半分で、ギャップを通過する必要がある。
【0052】
シングルモードのキャビティを有するシングルモードの加速器は、より大きなキャビティギャップを用い、そしてより少ないキャビティを要求するので、製造し易い。一方、上述のように、マルチモードキャビティは、シングルモードキャビティよりもより少ない露出時間を有する。
【0053】
(壁の厚さ)
図9は、キャビティの壁の厚さを示す。2ビームがキャビティ内の開口を通ると、熱がキャビティ内で生成される。キャビティの壁の厚さは、熱を除去できるキャビティの壁の周囲に、壁が熱を伝えられるように選択されるべきである。特に、壁の厚さは2〜4mmの範囲内で、例えば3mmである。壁がミリメーターの厚さよりさらに薄い場合、壁はあまりにも薄くかつ弱くなる可能性がある。一方、4mmをはるかに超える壁の厚さは、加速器内で空間を無駄にし始める。従って、厚さは、実用上必要な構造上の強度、空間の効果的な使用、そして、キャビティの周囲に熱を伝えられることをバランスするように選択される。
【0054】
(離調)
例えば、2:1の横比率を有するキャビティを用いる加速器において、複数の調和関係にあるモードが、例えば
図10に示されるf
110等のバンチ周波数を有する駆動ビームを駆動することによってキャビティ内で励起され得る。2ボックスキャビティは、一連の等距離モードという要求特性を享受する。
【0055】
図11及び
図12はそれぞれ、3つの高調波による箱型キャビティ内に存在する、電界及び磁界を示す。これらの図において、Tは時間を表す。従って、
図11は、T=0で、電界はキャビティの中央にピークを有する。T=0.3によって、ピークは消滅した。
図12は、3つの動作高調波による箱型キャビティ内の磁界を示す。T=0で、磁界は存在しないが、T=0.5で、磁界はキャビティの周囲の周りで高レベルに到達する。
図12の磁界は、
図11の電界と位相の不一致がある。これらの図は、電界がすぐに崩壊することを示す。
【0056】
各ボックスの中央で、動作モードは、零磁界を有している間、最大電界に到達する。従って、共振キャビティ内の各「ボックス」の中央は、駆動ビーム及び加速ビームに対して理想的な場所であるように見える。しかしながら、加速チャネルと駆動チャネルの電界は等しい。従って、伝達比率は、高々1であり、その構造は加速器として役に立たない。
【0057】
2つのチャネルは1の加速勾配をもたらす同じ電界を有するので、ビームのこれらの位置を選択するのは有益ではないように思われるけれども、キャビティを離調することによって伝達比を有意に増加することができる。
【0058】
図13aは、損失のない離調キャビティの動作を示す。そして、損失のある離調キャビティが
図13bに示される。理想共振回路において、電圧と電流が互いに同調する。共振回路を作動させる場合、例えば、離調キャビティ内で、損失がないとき、駆動ビームと加速ビームの電流と電圧は90°位相がずれている。従って、キャビティ内の電界のピークは、駆動電流バンチの通過後、4分の1周期起きる。電圧が電流より進んでいるか遅れているかは、周波数が共振周波数よりも高い又は低いか否かによって決まる。加速された粒子バンチは同調され、任意の時間で到達する。従って、駆動ビームの電圧と加速ビームの電流は同相であると同時に(その結果、駆動ビームによって加速ビームの粒子に仕事がなされる)、加速ビームの電圧と駆動ビームの電流は180°位相がずれている(そして、加速されたブームによって駆動ビームの粒子に仕事がなされる)。これにより、変圧比χは電流の比率αと等しくなるので、すなわち、χ=α=I
D/I
A(ここで、I
Dは駆動ビーム電流であり、I
Aは加速ビーム電流である)となるので、加速ビームによるエネルギー利得が駆動ビームによるエネルギー損失と等しくなる。
【0059】
図13aは、駆動ビームに対する電圧が垂直に向くと同時に、電流が水平に向く、離調を示す。従って、電圧と電流とは位相がずれている。加速ビームがある時間で入射された場合、加速電流は駆動電流と同調すると同時に、加速ビームからの電圧は駆動電流と180°ずれている。この状態において、駆動ビームによる電界は非常に弱く、理想ケースにおいては零(zero)である。従って、駆動ビーム又は強高電流ビーム(strong high current beam)はほとんど減速しない。これに対して、駆動ビームからの電圧がキャビティに入る位置で最も高いとき、加速ビームはキャビティに同時に入るので、90°遅れて到着する加速ビームは非常に強い電圧を受ける。加速ビームの弱い電流は、加速ビームの電圧の一部を駆動ビームに付加されるが、あまり大きくない。
【0060】
しかしながら、実在する全てのキャビティは損失を受け、従って、位相角は、
図13bに示すように、若干共振はずれ(off resonance)である。この状態はほとんど、小さな減速電圧が上述の大きな加速電圧と同調することを除いて同じである。共振はずれは、電圧は電流より遅れ又は進み、離調の記号と程度により決定される。
【0061】
駆動ビームと加速ビームは、v/fで離間された計画的な連続粒子バンチ又は多数のバンチである。ここで、vは本質的に、高度に相対論的な粒子の光速の、粒子バンチの速度であり、fはバンチの周波数である。キャビティは、第1モードに対してはfより大きく又はfより小さく、マルチモードに対しては2f,3f,4f,・・・より大きく又は小さく、すべてのモードに対してほとんど同じである離調分数Δnf/fにより離調される。従って、キャビティはビーム周波数に関して離調される。加速ビームは、約数である整数によって、駆動ビームと異なる周波数を有してもよいことに留意されたい。従って、例えば、加速ビームは、駆動ビームの粒子バンチの2,3等ごとにのみ起きる粒子バンチを有してもよい。
【0062】
離調の大きさを、キャビティの寸法によって制御することができる。例えば、より大きな寸法は負の離調の原因となり、より小さな離調は正の離調を提供する。所望の離調の大きさを提供するために、例えば、矩形ボックスキャビティの長さ又は円筒状のキャビティの半径を、増加又は減少してもよい。テストビームと駆動ビームの間の最適位相遅れを、離調調整によって提供することができる。
【0063】
キャビティ損失の場合、伝達比は効率ηを乗じた電流比によって与えられる。すなわち、
【数5】
ここで、モードは品質ファクターQ、共振周波数ω、キャビティとバンチの間の周波数差Δω、及び電流間の位相差φ(I
DとI
Aの間の角度)を有する。現実には、品質ファクターQは無限大ではなく、失ったエネルギーの程度を提供する。
【0064】
離調キャビティを用いる2ビーム加速の原理は、いずれのビーム種の質量により決定されない。従って、このメカニズムを、電子又はプロトン駆動ビームのいずれかに用いられる、プロトン、μ中間子、又は重イオンの2ビーム加速に適用してもよい。
【0065】
図14a及び
図14bは、離調キャビティに対する、駆動ビーム中の粒子バンチと加速ビームの粒子バンチによって起こる電界を示す。
図14aは、シングルモードキャビティの、時間(t)に対するキャビティのギャップ中の電界を示し、
図14bは同様に、2モードキャビティの電界を示す。
【0066】
各モードの離調調整を別々に行うことにより、駆動ビームに対する減速勾配から広がるエネルギーを部分的に補うことができる。
図14a及び
図14bは、動作モードの電界が、駆動ビーム粒子バンチ1401がキャビティ内のギャップを通過する時点で零(zero)に近づき、これに対して、電界が最大値に近づくと加速ビーム粒子バンチ1402が到達するということを示す。電界が負であると、電界は通過するバンチを減速する。従って、
図14a及び
図14bの駆動ビーム粒子バンチは減速され、一部のエネルギーを失う。電界が正であるとき、電界は通過するバンチにエネルギーの増加をもたらす。
【0067】
例えば、
図14b等、多数の高調波をサポートするキャビティに付加的な利点がある、粒子バンチが勾配に到達するとき、バンチに対して電界が不安定になる可能性がある。これは、はじめにバンチに到達する粒子がバンチの後方でのエネルギーと異なるエネルギーを受け、かつ、バンチがバンチ前後で異なる減少率を有する場合、バンチがその形状を維持しない可能性があるということを意味する。
図14bにおいて、1つの高調波からの電界が上昇曲線を有し、また他の高調波からの電界が下降曲線を有する時点で、駆動ビーム粒子バンチが到達するように加速器を構成してもよい。このような状況において、2つの効果は互いに補い、そして、駆動ビーム粒子バンチを安定化するのに役立つ。
【0068】
離調の大きさは、加速器中で用いられる各キャビティ又は加速器内の一連のキャビティに対して同じでもよい。このことは、「固定離調(fixed detuning)」と呼ばれる。同じ加速器内で異なるキャビティにおいて離調、例えば、「交互離調(alternate detuning)」と呼ばれる交互に並ぶキャビティにおいて交互に並ぶ符号の離調の大きさを変化するのに用いることはまた有益である可能性がある。
【0069】
離調を、要望通り連続する順番で、正に離調されたM個のキャビティと、次に負に離調されたM個のキャビティとを順々に実行してもよい。これは、例えば、弱い相対論的な粒子に対する加速器内に適用してもよい。
【0070】
(キャビティセット)
図15及び
図16は、説明に役立つキャビティセットの例示的態様を示す。
図16は、互いに隣接して配置された4つのキャビティセットを示す。例えば、共振キャビティは、共振キャビティを形成するために組み立てられた6つのピース1502a〜1502fからなる組を形成することによって製造される。6つのピースは、2つの開口1501が、2つのビームの進行方向に垂直に組み立てられた各壁に形成されるように形成される。これらの開口により、2つのビームがキャビティを通過することができる。駆動ビームと加速ビームは特定の開口を通過することは要求されず、また、2つのビームは特定の方向にキャビティを通過することも要求されない。上述の通り、好ましくは、2セルキャビティは金属製である。従って、6つのピースを、例えば、金属ブロックからピースをミル処理する等により、金属で形成することができる。典型的例示では、2セルキャビティのピースは銅のブロックからミル処理が行なわれてもよい。
【0071】
図15は、多数のキャビティが互いに隣接して配置されるように、例えば、溝付き保持デバイス(slotted holding device)(
図17の1503)を用いることによって、各キャビティの6つのピース1502a〜1502fが組み立てられることを示す。このことは、誤ったモデルと航跡場(wake-fields)をなくすのに役立つ。
図15は、駆動ビームと加速ビームの経路に垂直な面を有するキャビティの側面の6つのピースを示す。開口1501により、2つのビームがキャビティを通過することができる。類似する開口をキャビティの反対側に備え、この結果、キャビティから抜け出る2つのビームのための空間を形成する。
【0072】
キャビティの複数部分を形成するために6つの独立した部分を個々にミル処理を行うことによって、キャビティを容易に高精度に製造することができる。
【0073】
図16は、隣接するキャビティの壁の間に例示的な分離を示す破線1505を用いた、例示的な4つのキャビティの組合せを示す。本図では、キャビティは壁を共有し、破線で分離されない。他の実施形態では、キャビティが分離する壁を含んでもよい。しかしながら、2つのビームに対する経路を形成するために、いくつものキャビティを組み合せてもよい。例えば、
図17は、例示的な8個のキャビティ1504からなるセットを示す。理論的には、キャビティセットは膨大な数のキャビティを含んでもよい。しかしながら、配置精度の必要性とビーム集束の必要性とのバランスを考えると、キャビティセットの長さを1mより短く、例えば、20〜100cmの範囲にしてもよい。従って、一つのキャビティセットは、2つのデュアルボックスキャビティから数十個のデュアルボックスキャビティまで含んでもよい。
【0074】
(キャビティギャップ)
図8及び
図9のキャビティギャップ幅hを、特定の式を用いることによって決定することができる。例えば、破壊の確率は、積(E
n×T)により決定することができる。ここで、Tは事実上のパルス幅であり、指数nは2又は3でもよい。式I
2とI
3は、破壊の確率に関する潜在的情報を提供する。ここで、Gは加速勾配であり、Tは加速されたバンチ間の時間である。従って、I
2とI
3は、マルチモードキャビティ又はシングルモードキャビティの使用を通じて生じる、予定される一定量の利得を与える。
【数6】
【数7】
【0075】
図18a及び
図18bは、正方形2セルキャビティ、又は、2:1の長さ:幅の比を有し、3,9,15GHzで動作モードを有し、厚さ3mmの壁からなる共振キャビティに対する、I
2とギャップ幅及びI
3とギャップ幅の典型的例示を示す。これらの式に基づいて、式I
2とI
3を最小にするために、又は破壊の確率を最小にするために、キャビティギャップ幅を選択してもよい。最適なギャップ幅は、モードの量によって異なる。
図18a及び
図18bは、厚さ3mmで、70.662mm単位で141.324mmの横寸法を有するキャビティに対して計算されている。2〜3の高調波に対して最適ギャップは9mmであり、一方、1つの高調波に対して最適ギャップは20mmである。これらの図はまた、全体的に見て、破壊の確率は単一の高調波の実施例よりも3つの高調波に対する方が低いということを示す。しかしながら、上述した通り、2又は3モードが用いられたとき、キャビティギャップがより小さいので、3つの高調波が用いられた場合、より多くのキャビティが用いられる必要がある。
【0076】
従って、
図18a及び
図18bは、マルチモードキャビティがシングルモードキャビティよりも有益にI
2とI
3を最小にするということを示す。モードにおける増加はキャビティを通過する周波数に好ましくない増加を含むので、実際には、マルチモードは4モード又はそれより少ないモードに限定されることに留意されたい。周波数が増加すると、キャビティギャップ幅は制限されなければならず、キャビティごとに受ける加速の大きさを制限する。
【0077】
(正方形キャビティ)
正方形キャビティに対して、キャビティ本来の固有モードは調和関係にある固有周波数ω
mnを有する。従って、側辺Lの正方形ボックスのTM
nm0モードに対して、正方形キャビティは、(ω
mnL/πc)
2=n
2+m
2の関係を有する。ここで、cは光速であり、(n,m)は(x,y)電界の横方向の変化に対する値である。電界は縦のz方向に均一にされる。n=m、ω
mn=√2nπc/Lのとき、この種のモードは、調和関係にある固有周波数を有する。所望のモードがキャビティの中央でピークとなる電界を有するという場合、偶数値のnは変化されるべきではない。しかしながら、この種のモードで他のモードではない選択的な外部励起は、困難であり、各モードに対する別個の位相固定の高周波数源を、複雑な結合手法に加えて必要とすることもある。奇数調波モードだけの励起は、周波数ω
11=√2πc/Lでキャビティの軸に沿って入射された一連の荷電バンチ(charge bunches)からなる駆動ビームを用いて、効果的に達成することができる。
【0078】
(非正方形キャビティ)
正方形2ボックスキャビティは、2ビーム加速器に対する露出時間の減少を可能にする唯一の共振キャビティ寸法ではない。他の典型的例示では、中央の壁が取り除かれた2矩形(two-rectangular)ボックスキャビティを含み、各矩形は、1:1.291又は1:√(5/3)の長さ:幅の比を有する。従って、2ボックスキャビティの組み合わせた寸法は、2.582:1の横長:幅の比を有してもよい。さらに、2ボックスキャビティの組み合わせた寸法は、1:1.291の横長:幅の比を有してもよい。
図19aは適切な寸法を有するシングルボックスを示し、
図19bは中央の壁が取り除かれた
図19aの寸法のデュアルボックスキャビティを示す。上述の同じ長さと幅の寸法を有する正方形キャビティは、一定のモードの組は多数の高調波の動作周波数を有する。1901は、駆動ビームと加速ビームが通過するキャビティのチャネル又は部分である。同様に、各々が個々に1:1.291の比を有する2ボックスの寸法を有するキャビティに関して、TM
iiモード、例えば、TM
11−f;TM
13,TM
22−2f;TM
33−3f,TM
51,TM
44−4f;TM
55−5f;TM
39,TM
66−6f;TM
77−7f等は、高調波のモードを有することができる。モードTM
22,TM
44,TM
66は、ビーム位置で零電界を有する。従って、これらのモードはビームと相互に作用はしない。本典型的例示では、奇数高調波だけでなく、すべての高調波が動作する。従って、動作スペクトルは、f、2f、3f、4f、…を含んでもよい。
【0079】
本実施形態では、TM
110モードは、固有周波数ω
11=√(8/5)πc/Lを有し、また、TM
nn0モードはnω
11と等しい固有周波数を有する。しかし、これらのモードの中には、奇数nのモードのみが、正方形キャビティと同様に、中心に位置するビームと合わさる。モードTM
1,2,0、TM
3,9,0、TM
5,1,0、TM
1,13,0、TM
5,15,0はそれぞれ、2ω
11、4ω
11、6ω
11、8ω
11、及び10ω
11の固有周波数を有し、また中央に位置するビームと合わさる。従って、本キャビティは、スペクトル的に、正方形ボックスキャビティの例と比較して擬似モードの高密度量を有する。
【0080】
(円筒状キャビティ)
他の実施形態は、円筒状で、軸対象のキャビティを含んでもよい。このタイプのキャビティは、正方形又は矩形のキャビティに起こる可能性がある、尖った角における電界増強を回避する。円筒状キャビティは、ファクターQの最大化と、製造の容易化を促進する。例えば、金属製の円筒状キャビティ等の円筒状キャビティを、旋盤上で組み立てることができる。
図20a、
図20b及び
図21は、3つの軸対象の調和関係にあるモードを有する軸対称キャビティの実施態様を示す。このキャビティは、変形円筒状ピルボックスとして明細書に言及される。通常の平面の端壁は、正弦曲線を形成するプロファイルを描く。
図20a及び
図20bはそれぞれ、変形ピルボックス型キャビティの斜視図及び断面図を示す。
【0081】
図21は、変形ピルボックス型キャビティの典型的例示の例示的寸法を示す。例えば、同一線上の駆動ビームと加速ビームが通過する中央のチャネル2001は、約4mmの半径を有してもよい。中央のキャビティ部分に至る湾曲2002は、約5mmの曲率半径を有するように形成される。径方向延出部2003は、中央軸の各側面に約46.43mm延出することができる。径方向延出部2003の幅は、中央軸に近い径方向延出部の最も太い部分から、径方向延出部の一方の側で1.37mmそして他方の側で11.42mmの減少を伴い、径方向延出部の端部で約4.75mmであってもよい。平面の端壁2004は正弦曲線のプロファイルで形成される。
【0082】
図22は、調和関係にある固有周波数の、1モードM1、2モードM2、3モードM3の、例示的な軸対称の、変形ピルボックス型キャビティの電界マップを示す。このキャビティの最初の3つの軸対象モードのモード固有周波数及びQファクターは、3.00045GHz,5.645×10
3;6.00359GHz,8.52024×10
3;8.99912GHz,1.12881×10
4である。周波数を3、6、及び9GHzに近づけるために、変形ピルボックス型実施態様をさらに変形することができる。明細書に示すように、偶数の指数を有するモードをスキップする必要なく動作するという点で有益である。これは、最初のモードを越えるモードの周波数を低くし、減少した通過時間を回避するからである。上述の通り、より高い周波数はより短い通過時間を必要とする。一連のキャビティ、又はキャビティセットは、加速器セクションを構成するのに利用できる可能性がある。
【0083】
(集束)
粒子ビーム、例えば、駆動ビームや加速ビーム等を搬送するとき、周期的集束装置又は機構は、衝突に必要な真っ直ぐで狭い経路を持続することを確実にするのに役立つ。従来の装置は、単一ビームを集束するために構築されていた。2ビーム加速器においては、2ビームは、例えば、互いから数cmに接近して位置付けられる。2つのビームが異なるエネルギーを有し、離れた領域を通過すると、異なる集束システムが離れたビームに適用される。基本的な高調波のS帯周波数のセクションは、各ビームを別々に集束するためにビームチャネルを分離する十分な空間を提供することができる。
【0084】
単一ビームを集束する従来の方法は、4極磁石(“quad”)を用いるものである。4極磁石は、交互に、N極、S極、N極、S極と着磁された4極を有する。従って、4極磁石の軸では、磁界が存在しないが、中央から離れた位置では、中央に戻る迷走荷電粒子を搬送する磁界が存在する。従って、4極磁石の配置は、荷電粒子のビームを中央経路に集束することによってレンズに似たように機能する。ビームを集束するために、3つの4極磁石セットを利用することができる。
【0085】
しかしながら、2ビーム加速器は、両方のビームが集束される必要があり、接近して位置付けられる2つのビームを有する。そして、2つのビームは4極磁石の中央を通過することができない。
【0086】
図23は、標準的な4極磁石に関連する問題を解決する、2ビーム加速器の例示的集束装置の態様を示す。変形4極磁石2300の中央2302は、非磁性材料2303を備える。従って、非磁性材料2303を通過するビームは、標準的な4極磁石に対して上述したように、変形4極磁石2300によって集束される。磁石の一つに形成された開口2304は、非磁性材料2305から構成される他の中央部分を含む。非磁性材料内側には、磁界を中和する、磁性材料、例えば鉄又は他の金属の内層2306がある。従って、変形4極磁石の中央2303を通過するビームは、変形4極磁石の磁界によって集束され、そして、変形4極磁石の一つの中の開口2304、2305、2306を通過するビームは集束する電界を受けない。
【0087】
交互に並ぶ変形4極磁石の複数セットを、2つの粒子ビームを集束するために組み合わせて使用することができる。例えば、第1の4極磁石セットを、加速ビームを集束するために、加速ビームが中央部分2303を通過するように、一方、駆動ビームが4つの磁石の一つの中のチャネル2306を通過して磁界を受けないように構成してもよい。第2の変形4極磁石セットを、駆動ビームが駆動ビーム粒子を集束するために変形4極磁石の中央部分を通過し、一方加速ビームが、磁界から加速ビームを保護するために磁性材料のライニングで構成された変形4極磁石の一つの中の開口を通過する方法で、第1の4極磁石セットと隣り合わせて配置してもよい。変形4極磁石の開口を、4つの磁石のいずれにも配置することができる。その結果、2つのビームセットは集束される。
【0088】
異なる変形4極磁石セットが2つのビームを集束するために使用されるとき、単一の加速器内で異なるエネルギーのビームと相互作用する変形4極磁石を選択することができる。
【0089】
(加速器システム)
図24は、上述したように、共振キャビティセット2405に、離調した駆動ビーム2403を送信する外部駆動ビーム源2401と、離調した加速ビーム2404を送信する外部加速ビーム源2402とを備える例示的加速器を示す。
図7〜
図9、
図15〜
図17及び
図19と関連して述べたように、共振キャビティを寸法化することができる。キャビティセット2405は、周囲のポンピングマニホールド(pumping manifold)2406を有することを示す。特に、加速器は真空源を必要とし、キャビティセットを囲むポンピングマニホールドを介して真空源を提供することができる。例えば、
図15及び
図16に示した6つのピースの間のギャップは、周囲のマニホールドに通じることができる。これにより、加速器に沿ってポンピング機構用の付加的な空間の必要性を減少する。しかしながら、ポンピングマニホールドは他の場所に置かれてもよい。
【0090】
2つのキャビティセット2405は
図24に示されるが、実在する加速器はビーム線に沿って配置された多数のキャビティセットの列を含んでもよい。また、上述したように、各セットは多数の独立した共振キャビティを含んでもよい。
【0091】
集束装置2407は、駆動ビームと加速ビームを集束するために、隣り合う複数のキャビティセット2405の間に位置付けられることができる。特に、明細書では、変形4極磁石型集束機構を使用することができる。
図24は、駆動ビーム2403用に3つの変形4極磁石セット2408と、加速ビーム2404用に3つの変形4極磁石セット2409とを示す。各変形4極磁石は4つの磁石2410を含み、その一つは
図23と関連して述べられたように、開口とチャネルと共に変形されている。しかしながら、所望のビームの集束量を得るために、セット中の変形4極磁石の数を変更することができる。同様に、単一の変形4極磁石又は単一の変形4極磁石セットを、2つのビームの一つを集束するために、キャビティの隣り合う複数のセット2405の間に配置することができる。
【0092】
駆動ビームは加速ビームの上の位置に示されているけれども、2つのビームはいずれの位置であってもよい。さらに、以下に述べるように、駆動ビームと加速ビームは、同じ方向又は反対方向に駆動されてもよい。駆動ビームと加速ビームが反対方向に通過する場合、加速ビーム源は外部駆動ビーム加速器とキャビティセット2405の反対側に位置付けられる。
【0093】
(両方向への加速)
本発明の加速装置及び加速方法の態様は、駆動ビームの速度に満たない加速チャネル中の位相速度で、いずれの方向にも粒子を加速できる離調共振キャビティを有することを含む。
【0094】
離調の符号はすべてのキャビティにおいて同じであり、加速チャネル中の位相速度は駆動チャネルにおける値及び方向と同じ値及び同じ方向を有する。
【0095】
しかしながら、隣のキャビティの離調符号が反対であり、構造が周期λ/4を有する場合、加速チャネル内の位相速度は反対方向の駆動チャネル内の位相速度と同値である。従って、駆動ビームの方向と反対方向に、通過するビームを加速することができる。
【0096】
さらに、交互離調構造の周期がλを超えない場合、加速チャネル内の位相速度は、駆動チャネル内で同じ方向の位相速度よりもかなり小さい。従って、高勾配陽子2ビーム加速器(high-gradient proton two-beam accelerator)は電子駆動ビームを使用することが可能である。
【0097】
例えば、陽子等の重粒子が電子よりもかなりゆっくりと動くので、加速チャネル内の位相速度が駆動チャネル内の位相速度よりも小さいということは重要である。従って、低い位相速度は陽子と同期するために必要である。
【0098】
(コリニア伝播)
態様はまた、コリニア(co-linear)2ビーム加速器を含み、駆動ビームと加速ビームは同じチャネルに沿って伝播する。粒子ビームは、一連の周期的で密な(tight)バンチとしてモデル化される。この例において、減速された駆動粒子バンチと加速粒子バンチはまた、明細書において、互いに関して共線的に(co-linearly)移動する「テストバンチ(test bunches)」と呼ばれる。駆動粒子バンチとテストバンチを、例えば、テストバンチが均一に駆動粒子バンチ間に交互に配置されるように、同じ周波数で入射することができる。
【0099】
2つのビームが共線的に伝播するとき、さらに反対方向にビームを伝播することが可能である。例えば、駆動ビームがキャビティのz軸方向に伝播するとき、加速ビームはキャビティのz軸方向に沿って前方又は後方のいずれかに伝播することができる。
【0100】
コリニア配置を用いる加速器において、テストバンチ中の粒子は、駆動粒子バンチ中の粒子の約2倍の平均エネルギー損失を超えてはならない割合でエネルギーを得ることができる。従って、伝達比は通常、2の値を超えない。離調キャビティを使用するけれども、伝達比を加速用の実用レベルまで増加することができる。
【0101】
図25は、コリニア伝播を有する例示的加速器を示す。加速器は、固有キャビティセット2504に、離調したコリニア駆動ビーム及びコリニア加速ビーム2503を送信する外部駆動ビーム源2501及び外部加速ビーム源2502を備える。外部加速ビーム源2502を、2つビームが同方向に又は逆方向に伝播するか否かにより、駆動ビーム源2501と同じ側又は反対側に位置付けることができる。共振キャビティは、例えば、
図20〜
図22に関連して述べられた変形ピルボックス型実施態様のように、軸対象のキャビティであってもよい。2つのキャビティセット2504は
図25に示されるが、実在する加速器はビーム線に沿って配置された多数のキャビティセットの列を含んでもよい。また、上述したように、各セットは多数の独立した共振キャビティを含んでもよい。
【0102】
集束装置2505は、駆動ビームと加速ビームを集束するために、隣り合う複数のキャビティセット2504の間に位置付けられることができる。特に、4つの磁石2506を有する4極磁石型集束機構を使用することができる。
【0103】
(充填時間の減少)
離調キャビティの励起は、同調されたキャビティに関して、通常の指数関数的なキャビティ電界の増加が重ね合わされた離調周波数の間隔で干渉ビートを有することを除き、充填時間(filling time)を含む。キャビティ充填時間の間に消えるエネルギーは効率の悪さを表し、そのエネルギーがなくなることは多くの用途に有益である。
【0104】
本発明の実施態様は、効果的なビーム充填時間を減少するために、ビームの振幅又は位相を変更することを含む。駆動電流Iは周波数ωで、キャビティ固有周波数ω
0=√(1/LC)からわずかに離調される。ここで、Lは、例えばボックスキャビティの長さであり、Cは_である。わずかな離調に対して、Δω=ω−ω
0である。
【0105】
一の実施態様では、メイン電流I
2に先立つ先行パルス電流(prepulse current)I
1を注入することによって、充填時間を減少することができる。例えば、
図27aは、t=−t
1でパルス幅Tとともに上昇し、電圧V
1を誘導し、t=0でステップパルス電流I
2が続く例示的先行パルス電流I
1を示す。V
1は次式で表される。
【数8】
【0106】
ここで、
【数9】
となり、品質ファクターQは、Q=R/ω
0となる。L=RCω
0である。I
1を、
【数10】
となるように選択することができる。I
1とI
2は位相固定され、先行パルス幅は、整数に相当するnにより、T=nπ/Δωとしてもよい。
【0107】
他の実施態様では、第1のステップ電流I
1の振幅又は位相を、次のステップ電流I
2に対して、
図26b及び
図26cに示すように調節することができる。
図26bで示すように、第1の電流I
1がI
1=I
2/(1±e
−T/τ)となるように、I
1はI
2と位相固定され、ステップ幅T=2nπ/ωをΔω=ω/mで離調するように使用することができる。
【0108】
図26cに示すように、位相を(2Δω−ω)Tに変化させることができる。ここで、I
1=I
2e
i(2Δω−ω)Tとなるように、定数ΔωT>π/6を有するe
−T/τ=2cosΔωTが成り立つ。
【0109】
(パラメータ間のバランス)
図27a〜
図27dは、変更電流率
【0111】
(以下、S(▼スティグマ▲)と表記する。)と正規化された離調Δの各々の関数として、効率ηと、テスト粒子によって見られる正規化された勾配εと、伝達比Tとの相互関係を示す。
図27dは、Tとηの関数としてεを示す。
【0112】
図27aと
図27bは、効率と加速勾配εの間のトレードオフを示す。
図27aは、効率ηが大きな離調Δと大きな電流率S(▼スティグマ▲)に対して大きいことを示し、一方、
図27bは、加速勾配εが約1である離調ファクターΔによりピークに達し、電流率S(▼スティグマ▲)が増加すると下降することを示す。
図27cは、伝達比Tが電流率S(▼スティグマ▲)の強い関数であり、電流率S(▼スティグマ▲)が増加すると減少することを示し、しかし、伝達比Tが離調Δの弱い関数であり、離調Δが小さい場合を除いて、この場合Tも小さい。
図27dは、伝達比Tと効率ηが増加すると、加速電界εが下降することを示す。従って、
図27a〜
図27dは、加速を最適化するために、これらのパラメータ間でトレードオフがあることを示す。これらの関係は、キャビティデザインを最適化することに関して指針を与える。
【0113】
これらの関係は、特定のアプリケーションに対する構造デザインの最適化に関して指針を与える。基本パラメータのキャビティは、加速されたテスト粒子によって見られる電界振幅E
Tをピークに達せさせ、駆動ビームと加速ビームとの間の出力転送効率ηをピークに達せさせる。そして、伝達比Tを製造及び性能を最適化するために変更することができる。これらのパラメータは、キャビティの離調δ=Δω/ωと、キャビティの品質ファクターQと、2つのビーム間の変更電流率S(▼スティグマ▲)とにより決定される。各ビームはビーム電流及び正規化された粒子速度βによって唯一特徴付けられ、ビームエネルギー又はビーム粒子体積によって特徴付けられないということに留意することは重要である。
【0114】
(例示的電子加速器)
例示的電子加速器は、n=1に対する固有周波数であるn次高調波のTM
0n0類似モードを引き起こす、
図20〜
図22に示したキャビティと類似の銅により変形ピルボックス型キャビティを用いることができる。駆動ビームは、例えば100.8Aであり、加速ビームは、例えば4.8Aとしてもよい。14MWの平均出力を有する3.0TeVのc.o.m.コライダーの場合、1.5TeVの各加速ビームに対して、平均電流は9.33×10
−6Aである。バンチの周波数は3.0GHz、ガウスのバンチ長さは15ps(4.5mm)、キャビティギャップ幅は3.65mm、そして、キャビティ間の壁の厚さは1mmとすることができる。150MV/mを超える加速勾配は、伝達比13:1及びビーム−ビーム出力転送効率60%を有する、キャビティの離調Δω/ω=0.9×10
−3に対して予測される。従って、2.5GeVの駆動ビームは、約200mの有効長を有するセクションで、約30GeVで加速ビームエネルギーを増加させるはずである。50個のセクションは、10kmの総有効長で、1.5TeVに加速される。壁の損失は小さい。
図28は、付加的な例示的パラメータを示す。
【0115】
駆動ビームと加速ビームとの間の相対位相を変更する必要があることを除いて、関連する陽電子加速器を同じ方法で提供することができる。
【0116】
(例示的陽子加速器)
交互に並んだ離調キャビティ構造は、高電流電子駆動ビームと反対方向のlow-βの陽子ビームとの間で同期を提供することができる。例えば、中高変圧比を示すコリニア2ビーム加速器を用いることができ、コリニア2ビーム加速器は、効率を最大化し、費用を最小化する高出力電子駆動ビーム用のビームエネルギーを選択するときに柔軟性を提供する。例えば、10MW、1.0GeVの陽子駆動加速器を用いることができる。
図29〜
図31は、そのような陽子加速器の例示的実施態様のパラメータを示す。電子駆動電流は25.2A、陽子加速電流は2.4A、2.4GWの陽子パルス出力を与え、4.2×10−3の負荷ファクターが10MWの平均ビーム出力を与える。バンチの周波数を3.0GHzとし、がススバンチを15ps長としてもよい。表の説明文に記載されたように、キャビティの周波数を、Δω/ω値で交互に離調することができる。駆動バンチは8.4nCであると同時に、陽子のバンチは各々0.8nC、すなわち5×10
9陽子/バンチである。
【0117】
これらの図は、合理的に効率的な常伝導型10MW、1GeV陽子駆動加速器は、約50m未満の実効長を有し、50MeVの陽子入射器(proton injector)と電子駆動線形加速器に対する空間を含まないことを可能にするということを示す。
【0118】
(利点とCLICとの比較)
マルチモードキャビティの利点と、例えばCLIC等の他の粒子加速器との比較に関する予測は、発明の名称を"MULTI-MODE, MULTI-FREQUENCY, TWO- BEAM ACCELERATING STRUCTURE"とする米国仮出願第61/146,581号と、"Two-Beam, Multi-Mode Detuned Accelerating Structure" by S. Yu. Kazakov, S. V. Kuzikov, V.P. Yakolev, and J. L. Hirshfield, 2009 American Institute of Physics 978-0-7354-0617-0/09, Advanced Accelerator Concepts 13th Workshop, pages 439-444に記載されており、それらの内容全体は参照することにより明細書に組み込まれる。
【0119】
2ビーム、マルチモード、離調型加速器構造(two-Beam, Multi-Mode Detuned Accelerating Structure)の態様は、CLICの加速器構造に相当する結果を提供する。表1は、http://clic-meeting.web.cern.ch/clic-meeting/clictable2007.htmlで公開されたCLICのパラメータを記載したもので、その内容全体は参照することにより明細書に組み込まれる。
【0121】
従って、CLICデザインに対して、出力効率η
P=(I
A×U
A)/(I
D×U
D)=0.344、エネルギー効率η
Q=(Q
TA×U
A)/(Q
TD×U
D)=0.222、伝達効率η
T=0.65×0.277=0.180、そして、変圧比χ=62.5/2.142=29.18である。そして、効率は、18〜34%の範囲に収まる。
【0122】
次表は、明細書に記載された加速器構造の態様がCLICパラメータと比較した有利な結果を提供することを示す。例えば、シングルモード、デュアルモード、トリプルモードの2ボックスキャビティは、表2に示されるパラメータを提供する。
【0124】
ここで、Gは加速勾配、Q
dは駆動バンチの荷電、I
driveは駆動電流、I
accは加速電流、Q
accは加速バンチの荷電、χは変圧比であり、効率は駆動ビームから加速ビームへのエネルギー変換を測定し、E_maxはキャビティ内の任意の位置で起きる最大電界であり、そして、df
1/f
1は比例離調を測定した。
【0125】
3つに具体例で示されるように、効率はCLICの範囲の値以上である。従って、本発明の実施態様は、シングルモードキャビティ、デュアルモードキャビティ、トリプルモードキャビティとして構成されると、CLICの効率に匹敵又はその効率を超える。従って、トリプルモードキャビティは露出時間のさらなる減少を提供することができるのに対して、シングルモードキャビティでさえ、高電界への露出を顕著に減少するとともに必要な効率を提供する。同様に、Qd=33.6nC、G=100MV/mで変圧比が、CLICの変圧比に匹敵し又はその変圧比より優れている。
【0126】
隣り合うチャネルを通過する2つのビームは、2つのビームの一方が他のビームを乱す航跡場をもたらし、ビームが経路からそれることを引き起こすと懸念されるかもしれない。しかしながら、"Two-Beam, Multi-Mode Detuned Accelerating Structure" by S. Yu. Kazakov, S. V. Kuzikov, V.P. Yakolev, and J. L. Hirshfield, 2009 American Institute of Physics 978-0-7354-0617-0/09, Advanced Accelerator Concepts 13th Workshop, pages 439-444にさらに詳細に記載されているように、駆動ビームの横方向航跡場が加速ビームに悪影響を及ぼさないように、駆動ビームからの短距離横方向航跡場をかなり弱める。
【0127】
CLICについて言及するけれども、本発明の態様を、コライダーに用いられる態様の域を超えて、粒子加速器に利用することができる。例えば、粒子ビームの加速はまた、内科治療及び原子力発電に利用される可能性もある。強い陽子ビームの生成は、研究目的だけでなく、実用的な目的のために利用される可能性がある。例えば、科学研究用の衝突の域を超えて、実用用途に陽子ビームを利用するために、電子ビームのエネルギーを陽子ビームに入れるかもしれない。陽子ビームを陽子線癌治療の一部、臨界前の原子炉用の陽子源、又は、放射性廃棄物を処理する反応器用の陽子源として利用することができる。他の典型的例示として、強い粒子ビーム又は強い短X線を、分子調整用又は遺伝子構造の変更用に利用することができる。例えば、上記の目的のために、本発明の態様を用い、高品質電子ビームを創り出すことができる。
【0128】
その上、説明された態様は、特定のタイプの粒子加速器に限定されない。原理は、陽子、電子等の加速器に、同様に適用できる。
【0129】
さらに、用語「又は(or)」は、特段の定めがない又は内容から明らかでない限り、排他的な「or」よりもむしろ包括的な「or」を意味することを意図している。不定冠詞「a」及び「an」は、本明細書及び特許請求の範囲に使用される場合、一般的に、特段の定めがない又は内容から単数形であることが明らかでない限り、「1又はそれ以上」を意味する。
【0130】
様々な実施態様が、多くの装置、構成要素、モデュール等を含むシステムに関して示される。図と関連して説明された、付加的な装置、構成要素、モデュール等が様々なシステムに含まれ、及び/又は、装置、構成要素、モデュール等すべてが含まれないということが理解されるだろう。また、これらの取り扱い方の組合せを利用することができる。
【0131】
上記開示は例示的態様及び/又は実施形態を説明すると同時に、様々な変更及び変形が特許請求の範囲によって規定され、記載された態様及び/又は実施形態の範囲から離れることなく行うことができることに留意すべきである。さらに、記載された態様及び/又は実施形態の要素が単数形で記載されているけれども、単数形に限定することが明確に言及されていなければ、複数形も考慮される。さらに、特に明記しない限り、態様及び/又は実施形態の全部又は一部を他の態様及び/又は実施形態の全部又は一部に利用することができる。