(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5689084
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】バックルスイッチおよびシートベルトバックル、ならびにシートベルト装置
(51)【国際特許分類】
H01H 15/14 20060101AFI20150305BHJP
A44B 11/25 20060101ALI20150305BHJP
B60R 22/48 20060101ALI20150305BHJP
H01H 1/60 20060101ALI20150305BHJP
【FI】
H01H15/14
A44B11/25
B60R22/48 103
H01H1/60
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-15577(P2012-15577)
(22)【出願日】2012年1月27日
(65)【公開番号】特開2013-157141(P2013-157141A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2013年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】503175047
【氏名又は名称】オートリブ株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 剛珠
【審査官】
出野 智之
(56)【参考文献】
【文献】
実開平04−101611(JP,U)
【文献】
実開昭57−195944(JP,U)
【文献】
実開昭62−182416(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 15/14
A44B 11/25
B60R 22/48
H01H 1/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートベルトバックルに設置され、該シートベルトバックルにシートベルトタングプレートが連結されているか否かを検知するバックルスイッチであって、
前記シートベルトバックルの内部に設置される基板と、
前記基板上に設けられる固定接点と、
前記基板に該基板上をスライド可能に取り付けられ、前記シートベルトタングプレートの着脱動作に連動してスライドするスライダ部と、
前記スライダ部に設けられ、前記基板上をスライドすることで前記固定接点に対して接触または非接触のいずれかの状態となる、薄板状の金属から形成された可動接点と、を備え、
前記可動接点は、
前記スライダ部から前記基板に向かって突出し、前記固定接点に接触してこれと通電する主要通電部と、
前記主要通電部の近傍にて該主要通電部の周囲を囲う形状に形成され、前記スライダ部から前記基板に向かって突出し、該主要通電部から該スライダ部のスライド方向の外側に離れた位置で前記固定接点に接触し、前記スライドによって該固定接点上の堆積物を除去する第2清掃部とを有し、
前記主要通電部と前記第2清掃部とは、前記薄板状の金属に曲げ加工を施し、該主要通電部が前記基板に向かって該第2清掃部よりも垂直に近い姿勢で突出するように一体的に形成することを特徴とするバックルスイッチ。
【請求項2】
請求項1に記載のバックルスイッチを備えることを特徴とするシートベルトバックル。
【請求項3】
請求項2に記載のシートベルトバックルを備えることを特徴とするシートベルト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられるシートベルト装置と、このシートベルト装置に含まれるシートベルトバックルおよびシートベルトバックルの内部に設けられるバックルスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、シートベルトには、乗員がシートベルトを装着しているか否かを検知する検知装置が設けられている。検知装置を設けたシートベルトは、その装着・非装着の如何によって、エアバッグの膨張展開時の展開出力を自動調整したり、シートベルトを巻き取るモータ付きリトラクタを自動制御したりすることが可能になっている。このような検知装置は、主にシートベルトバックル(バックル)内にバックルスイッチとして設けられていて、バックル内でのタングプレートの着脱を検知している。
【0003】
例えば、特許文献1には、バックルスイッチと、バックルスイッチを備えたバックルが記載されている。このバックルスイッチの主要な構成要素は、バックルに固定されている固定接点と、タングプレートの着脱動作に連動して固定接点上をスライドする移動接点(以下、可動接点と称する。)である。特許文献1では、固定接点に凹凸が生じていても可動接点が有効に接触するよう、可動接点の先端が細かなくし状になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−190906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1で言及されている固定接点の凹凸以外にも、接点同士の通電を妨げる事象は存在する。その代表的なものが、外部から浸入した塵・埃などの異物や、経年使用によって内部で発生した異物の固定接点表面への堆積である。特に、通常のバックルスイッチでは、固定接点は基板上に設置されていて、可動接点は樹脂製等のスライダ部に設置されて基板に取り付けられている。このスライダ部が基板上をスライドする構成となっているが、これによって、基板とスライダ部との間で磨耗が起こり、生じた塵埃が固定接点上に堆積するおそれがある。また、固定接点および可動接点は、通常であれば同系素材(例えば、同じ素材でのメッキ処理が施されている等)で形成されていて、同じ材質の物同士の摩擦はより磨耗が生じやすいためにこれらから塵埃が発生するおそれもある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、外部から浸入または経年使用によって発生した異物による接点の導電性低下を防止した耐久性の高いバックルスイッチと、このバックルスイッチを備えたシートベルトバックル、およびこれらを含んだシートベルト装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかるバックルスイッチの代表的な構成は、シートベルトバックルに設置され、シートベルトバックルにシートベルトタングプレートが連結されているか否かを検知するバックルスイッチであって、シートベルトバックルの内部に設置される基板と、基板上に設けられる固定接点と、基板に基板上をスライド可能に取り付けられ、シートベルトタングプレートの着脱動作に連動してスライドするスライダ部と、スライダ部に設けられ、基板上をスライドすることで前記固定接点対して接触または非接触のいずれかの状態となる可動接点と、を備え、スライダ部は、基板に向かって突出してこれに接触し、スライドによって固定接点上の堆積物を除去する第1清掃部を有することを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、固定接点の表面に堆積物等が生じるような事象があったとしても、第1清掃部によって堆積物等は除去されるため、固定接点と可動接点との導電性を保つことができる。このようにして当該バックルスイッチは耐久性が高められていて、経年使用に耐えることが可能になっている。
【0009】
上記の第1清掃部は、ブラシであってもよい。ブラシ形状であれば、堆積物を掃き落とすことができ、固定接点を効率よく清掃可能である。
【0010】
上記の第1清掃部は、弾性を有する板状のフラップであってもよい。フラップであれば、堆積物をかき落とすように除去することができ、これによっても固定接点を効率よく清掃可能である。
【0011】
上記の第1清掃部は、繊維素材で形成されていてもよい。この構成であれば、拭き取り作用によって、固定接点を清掃することができる。
【0012】
上記の第1清掃部は、スポンジ状素材で形成されていてもよい。この構成によっても、固定接点を拭き取り清掃することができる。
【0013】
上記の可動接点は、薄板状の金属から成形されていて、基板に向かって突出し、固定接点に接触してこれと通電する主要通電部と、主要通電部の近傍であって主要通電部から2つのスライド方向のうち少なくとも一方に離れた位置に設けられ、基板に向かって突出してこれに接触し、スライドによって固定接点上の堆積物を除去する第2清掃部を有していてもよい。例えば、第2清掃部は板状の構成とすることができ、これによって固定接点上の堆積物をかき落とすこと等が可能になる。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明にかかるシートベルトバックルの代表的な構成は、上記のバックルスイッチを備えることを特徴とする。この構成によれば、耐久性の高いシートベルトバックルを実現することが可能になる。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明にかかるシートベルト装置の代表的な構成は、上記のシートベルトバックルを備えることを特徴とする。この構成によれば、耐久性の高いシートベルト装置を実現することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、外部から浸入または経年使用によって発生した異物による接点の導電性低下を防止した耐久性の高いバックルスイッチと、このバックルスイッチを備えたシートベルトバックル、およびこれらを含んだシートベルト装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明にかかるシートベルト装置の概要を例示した図である。
【
図2】
図1のバックルスイッチを例示した図である。
【
図3】
図1のバックルとタングプレートとの連結前の状態を例示した図である。
【
図4】
図3のバックルとタングプレートとの連結後の状態を例示した図である。
【
図5】
図2(b)のスライダ部の各変形例を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
(シートベルトバックル装置)
図1は、本発明にかかるシートベルト装置100の概要を例示した図である。
図1に示すように、シートベルト装置100は、シートベルトバックル(以下、「バックル102」と記載する。)およびシートベルトタングプレート(以下、「タングプレート104」と記載する。)を含んで構成されている。特に、当該シートベルト装置100では、バックル102の耐久性、特にその内部に設置されているバックルスイッチ106の耐久性が向上している。
【0020】
バックルスイッチ106は、バックル102にタングプレート104が連結されているか否かを電気的に検知する部位である。バックル102の内部には、タングプレート104との連結を解除する解除ボタン108や、各種内部部材を設置するフレーム110などが設けられている。そしてバックルスイッチ106は、バックル102の内部の隅であって、フレーム110と外装112との間に設置されている。このバックルスイッチ106は、大きく分けて、基板114と、この基板114の上をスライドするスライダ部116とによって構成されている。
【0021】
図2は、
図1のバックルスイッチ106を例示した図である。このうち、
図2(a)はバックルスイッチ106の分解図である。
図2(a)に例示するように、基板114は絶縁体によって構成されていて、この上には導電体で構成された固定接点118が設けられている。固定接点118は平面的に金メッキを施すことで形成されている。本実施形態では3つの固定接点118が設けられていて、これらのうちいずれか2つに可動接点120が接触し通電することで、タングプレート104(
図1参照)の連結の如何を検知して外部へ知らせる構成となっている。詳しくは、中央が共通接点118aで、バックル102の奥側(図中右側)が連結状態検知用接点118b、バックル102の入口側(図中左側)が非連結状態検知用接点118cである。なお、固定接点118の数等は例示に過ぎず、さらに多数であったり、もしくは2列で配置されていたりしてもよい。
【0022】
当該バックルスイッチ106では、固定接点118に塵埃などの異物が堆積してその導電性を低下させることがないよう、この固定接点118の表面をスライダ部116等によって清掃することが可能になっている。
【0023】
スライダ部116は樹脂製であって、ツメ117(
図2(b)参照)によって基板114にはめ合わせることが可能になっている。このスライダ部116は、可動接点120を取り付け、この可動接点120を固定接点118に接触させたまま、基板114の上をその長手方向へスライドする。
図2(b)は
図2(a)のスライダ部116の裏側を例示した図である。スライダ部116には、そのスライド方向(自体の長手方向)の両端において、第1清掃部122a・122bがそれぞれ設けられている。第1清掃部122a・122bは、基板114へ向かって突出するようブラシ状に形成されていて、固定接点118上の堆積物を効率よく掃き落とすことが可能になっている。
【0024】
再び
図2(a)を参照する。可動接点120は、薄い金属板に曲げ加工等を施すことで形成されている。可動接点120は、スライダ部116のスライドによって、固定接点118に対して接触または非接触のいずれかの状態となる。可動接点120のうち、特に2つの主要通電部124a・124bが、固定接点118と通電するための主要な部位である。そして、このそれぞれの主要通電部124a・124bからスライド方向(基板114の長手方向)に離れた位置には、第2清掃部126a・126bが設けられている。第2清掃部126a・126bは、主要通電部124a・124bの周囲を囲う形状に形成されている。第2清掃部126a・126bもまた、基板114に向かって突出していて、これに接触する。そして、スライドによって固定接点118上の堆積物をかき落とすように除去する。
【0025】
図3は、
図1のバックル102とタングプレート104との連結前の状態を例示した図である。
図3(a)は、
図1のA−A断面図に対応している。
図3(a)に例示するように、スライダ部116のピン128は、イジェクタ130の端部132と連結している。イジェクタ130は、タングプレート104をバックル102から解放する際に機能する部位であって、フレーム110の底面134に設けられている。フレーム110の側壁136の下部には溝が設けられていて、イジェクタ130の端部132はこの溝からフレーム110の外部へ露出している。
【0026】
図3(b)は、
図3(a)のスライダ部116の内部を例示した図である。
図3(b)に例示するように、固定接点118へは、ブラシ状の第1清掃部122a・122b、および可動接点120の第2清掃部126a・126bが接触している。
【0027】
図4は、
図3のバックル102とタングプレート104との連結後の状態を例示した図である。
図4(a)は、
図3(a)のバックル102にタングプレート104を挿入した状態を例示している。
図4(a)に例示するように、タングプレート104の先端はイジェクタ130に接触し、イジェクタ130はバックル102の奥へと押し込まれる。
図4(b)は、
図4(a)のスライダ部116の内部を例示した図である。イジェクタ130が奥へ押し込まれることによって、スライダ部116も基板114の上を奥へスライドする。その際、第1清掃部122bおよび第2清掃部126bによって固定接点118上の堆積物140が掃き落とすようにして除去される。
【0028】
なお、バックル102内におけるイジェクタ130の奥側には不図示のスプリングが接続していて、タングプレート104の挿入に応じてこのスプリングが圧縮される構成となっている。そして、解除ボタン108(
図1参照)を押すと、スプリングの圧縮力が解放され、この力でイジェクタ130が押されてタングプレート104を勢いよくバックル102から押し出す構成となっている。この際にもスライダ部116は、
図4(a)の状態から
図3(a)の状態へとスライドし、固定接点118を清掃する。このようにして、スライダ部116は、タングプレート104の着脱動作に連動してスライドし清掃を行う構成となっている。
【0029】
以上説明したように、当該バックルスイッチ106であれば、固定接点118の表面に堆積物等が生じるような事象があったとしても、第1清掃部122a・122bおよび第2清掃部126a・126bによって堆積物等は除去されるため、固定接点118と可動接点120との導電性を保つことができる。このようにして当該バックルスイッチ106およびバックル102、ならびにシートベルト装置100は耐久性が高められていて、長い期間での経年使用にも耐えることが可能になっている。
【0030】
図5は、
図2(b)のスライダ部116の各変形例を例示した図である。各変形例は、それぞれの第1清掃部の構成において、
図2(b)に例示したスライダ部116と異なっている。
【0031】
図5(a)は、第1変形例であるスライダ部200を例示している。このスライダ部200では、第1清掃部202a・202bが、板状のフラップとして形成されている。フラップは弾性を有するとよく、例えば樹脂で形成することができる。この第1清掃部202a・202bによれば、堆積物をかき落とすように除去することができ、これによっても固定接点118(
図2(a)参照)を効率よく清掃することができる。
【0032】
図5(b)は、第2変形例であるスライダ部300を例示している。このスライダ部300では、第1清掃部302a・302bが、繊維素材(例えば、フェルトなど)で形成されている。この構成であれば、堆積物を拭き取るように除去することができ、このようにして固定接点118(
図2(a)参照)を清掃する構成とすることも可能である。
【0033】
図5(c)は、第3変形例であるスライダ部400を例示している。このスライダ部400では、第1清掃部402a・402bがスポンジ状素材で形成されている。この構成によっても、固定接点118(
図2(a)参照)を拭き取るように清掃することが可能である。
【0034】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、以上に述べた実施形態は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も、各種の方法で実施または遂行できる。特に本願明細書中に限定される主旨の記載がない限り、この発明は、添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨の記載がない限り、それに限定されるものではない。
【0035】
したがって、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、車両に設けられるシートベルト装置と、このシートベルト装置に含まれるシートベルトバックルおよびシートベルトバックルの内部に設けられるバックルスイッチに利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
100 …シートベルト装置、102 …バックル、104 …タングプレート、106 …バックルスイッチ、108 …解除ボタン、110 …フレーム、112 …外装、114 …基板、116・200・300・400 …スライダ部、117 …ツメ、118 …固定接点、118a …共通接点、118b …連結状態検知用接点、118c …非連結状態検知用接点、120 …可動接点、122a・122b …第1清掃部、124a・124b …主要通電部、126a・126b …第2清掃部、128 …ピン、130 …イジェクタ、132 …イジェクタの端部、134 …フレームの底面、136 …フレームの側壁、140 …堆積物、202a・202b …第1変形例の第1清掃部、302a・302b …第2変形例の第1清掃部、402a・402b …第3変形例の第1清掃部