特許第5689085号(P5689085)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5689085
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】車両用操作ペダル装置
(51)【国際特許分類】
   G05G 1/30 20080401AFI20150305BHJP
   G05G 1/44 20080401ALI20150305BHJP
【FI】
   G05G1/30 E
   G05G1/44
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-35522(P2012-35522)
(22)【出願日】2012年2月21日
(65)【公開番号】特開2013-171463(P2013-171463A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2013年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】津隈 智弘
【審査官】 高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−112614(JP,A)
【文献】 特開2010−247757(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/120586(WO,A1)
【文献】 特開平11−115430(JP,A)
【文献】 特開平11−078817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 23/02
B60T 7/06
G05G 1/30
G05G 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の上下方向に配設され、下端部に設けられたペダルシートが車両前側へ踏込み操作される長手状の中空ペダルアームを有し、該中空ペダルアームに加えられたペダル操作力を、該中空ペダルアームに相対回動可能に連結される出力部材に伝達する車両用操作ペダル装置において、
前記中空ペダルアームは、上下の長手方向に沿って車両前側および後側に2分割された断面がU字形状の一対の前側半割体および後側半割体にて構成されており、開口側が対向するように組み合わされて車両幅方向の両側に位置する側端部が互いに一体的に接合されることにより中空の筒形状とされている一方、
前記出力部材に相対回動可能に連結される連結部を有して前記中空ペダルアームに一体的に固設された板状の連結プレートを備えるとともに、
前記前側半割体および前記後側半割体にはそれぞれスリット状の第1貫通穴および第2貫通穴が設けられており、
前記連結プレートは、前記第1貫通穴および前記第2貫通穴を通って前記中空ペダルアームを車両前後方向に挿通させられている
ことを特徴とする車両用操作ペダル装置。
【請求項2】
前記中空ペダルアームは、前記後側半割体の一対の側端部が、それぞれ前記前側半割体の一対の側端部の外側に重ね合わされるように組み合わされて一体的に接合されている
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用操作ペダル装置。
【請求項3】
前記連結プレートは、前記中空ペダルアームから外部に突き出す前記連結部を含む両端部がそれぞれ溶接により該中空ペダルアームに一体的に固設されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用操作ペダル装置。
【請求項4】
前記連結プレートは、前記第1貫通穴内に部分的に挿入され、前記連結部が該第1貫通穴から車両前側へ突き出す状態で溶接により前記中空ペダルアームに一体的に固設されており、
該連結プレートに連結される前記出力部材には、前記ペダル操作力により車両前側へ押し出す押圧荷重が加えられる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用操作ペダル装置。
【請求項5】
前記連結プレートは、前記中空ペダルアームから外部に突き出す前記連結部を含む両端部がそれぞれ溶接により該中空ペダルアームに一体的に固設されている
ことを特徴とする請求項4に記載の車両用操作ペダル装置。
【請求項6】
前記連結プレートには、前記中空ペダルアームの中空内に位置する部分に、前記第2貫通穴の長手方向へ突き出す突起が設けられている
ことを特徴とする請求項5に記載の車両用操作ペダル装置。
【請求項7】
前記連結プレートの前記連結部であって、前記第1貫通穴から外側へ突き出す部分には、該第1貫通穴の長手方向へ突き出す突起が設けられている
ことを特徴とする請求項5に記載の車両用操作ペダル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用操作ペダル装置に係り、特に、断面がU字形状の一対の半割体を接合して中空ペダルアームが構成される車両用操作ペダル装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の上下方向に配設され、下端部に設けられたペダルシートが車両前側へ踏込み操作される長手状の中空ペダルアームを有し、その中空ペダルアームに加えられたペダル操作力を、その中空ペダルアームに相対回動可能に連結される出力部材に伝達する車両用操作ペダル装置が知られている。特許文献1に記載の装置はその一例で、中空ペダルアームは、車両幅方向に2分割された断面がU字形状(浅いコの字形状乃至は皿形状)の一対の半割体にて構成されており、開口側が対向するように組み合わされて車両前後方向の両側に位置する側端部が互いに一体的に接合されることにより中空の筒形状とされている。また、一対の半割体にはそれぞれ連結穴が設けられ、両方の連結穴を貫通するように連結ピンが配設されて、出力部材である連結リンクやプッシュロッドがその連結ピンの軸心(連結軸心)まわりに相対回動可能に連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−181442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このように中空ペダルアームを車両幅方向に2分割した構造の車両用操作ペダル装置においては、車両前後方向の両側に接合部が位置し、その車両後側の接合部が運転席側から見えるため見栄えが悪いとともに、誤って足や手が接合部に触れると怪我する可能性があった。
【0005】
これに対し、未だ公知ではないが、上記中空ペダルアームを車両前後方向に2分割し、車両幅方向の両側に位置する側端部を一体的に接合して中空の筒形状とすることが考えられる。図7の中空ペダルアーム100はその一例で、長手方向と直角に切断した断面図であり、断面U字形状の一対の前側半割体32および後側半割体34にて構成されているとともに、車両幅方向の両側に位置する側端部32aおよび34a、32bおよび34bがそれぞれ溶接により一体的に接合されている。その場合に、出力部材を連結するためのクレビスピン30を挿通させる連結穴102a、102bを一対の半割体32、34の接合部に設けると、中空ペダルアーム100の強度低下の原因になるため、例えば前側半割体32の側壁部に設けられるが、前後寸法Lが大きくなり、重量が大きくなったり製造コストが高くなったりする。また、一対の連結穴102a、102bは、高い精度で同心に設ける必要があるため、例えば図8に示すように一対のパンチ104a、104bが対向して配置された寄せ型プレスを用いて同時に加工することが望ましいが、一対のダイス106a、106bや、スクラップ108を落下させるための排出通路110を前側半割体32の一対の側壁の内側に設ける必要があり、幅寸法Dが大きくなって、この点でも重量増やコスト高の原因になる。二股状のクレビスを用いて出力部材を連結する場合、幅寸法Dの増加により汎用のクレビスを使用できなくなり、製造コストが一層高くなる可能性もある。
【0006】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、一対の半割体を接合して中空ペダルアームが構成される車両用操作ペダル装置において、前後寸法Lや幅寸法Dに関する設計の自由度が制約されることなくコンパクトで軽量且つ安価に構成できるとともに、接合部による見栄えの悪化や怪我が抑制されるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、第1発明は、車両の上下方向に配設され、下端部に設けられたペダルシートが車両前側へ踏込み操作される長手状の中空ペダルアームを有し、その中空ペダルアームに加えられたペダル操作力を、その中空ペダルアームに相対回動可能に連結される出力部材に伝達する車両用操作ペダル装置において、(a) 前記中空ペダルアームは、上下の長手方向に沿って車両前側および後側に2分割された断面がU字形状の一対の前側半割体および後側半割体にて構成されており、開口側が対向するように組み合わされて車両幅方向の両側に位置する側端部が互いに一体的に接合されることにより中空の筒形状とされている一方、(b) 前記出力部材に相対回動可能に連結される連結部を有して前記中空ペダルアームに一体的に固設された板状の連結プレートを備えるとともに、(c) 前記前側半割体および前記後側半割体にはそれぞれスリット状の第1貫通穴および第2貫通穴が設けられており、(d) 前記連結プレートは、前記第1貫通穴および前記第2貫通穴を通って前記中空ペダルアームを車両前後方向に挿通させられていることを特徴とする。
【0008】
第2発明は、第1発明の車両用操作ペダル装置において、前記中空ペダルアームは、前記後側半割体の一対の側端部が、それぞれ前記前側半割体の一対の側端部の外側に重ね合わされるように組み合わされて一体的に接合されていることを特徴とする。
【0009】
第3発明は、第1発明または第2発明の車両用操作ペダル装置において、前記連結プレートは、前記中空ペダルアームから外部に突き出す前記連結部を含む両端部がそれぞれ溶接によりその中空ペダルアームに一体的に固設されていることを特徴とする。
【0010】
第4発明は、第1発明または第2発明の車両用操作ペダル装置において、(a) 前記連結プレートは、前記第1貫通穴内に部分的に挿入され、前記連結部がその第1貫通穴から車両前側へ突き出す状態で溶接により前記中空ペダルアームに一体的に固設されており、(b) その連結プレートに連結される前記出力部材には、前記ペダル操作力により車両前側へ押し出す押圧荷重が加えられることを特徴とする。
【0011】
第5発明は、第4発明の車両用操作ペダル装置において、前記連結プレートは、前記中空ペダルアームから外部に突き出す前記連結部を含む両端部がそれぞれ溶接によりその中空ペダルアームに一体的に固設されていることを特徴とする。
この第5発明は、第4発明の一実施態様であるが、実質的に前記第3発明の一実施態様でもある。
【0012】
第6発明は、第5発明の車両用操作ペダル装置において、前記連結プレートには、前記中空ペダルアームの中空内に位置する部分に、前記第2貫通穴の長手方向へ突き出す突起が設けられていることを特徴とする。
【0013】
第7発明は、第5発明の車両用操作ペダル装置において、前記連結プレートの前記連結部であって、前記第1貫通穴から外側へ突き出す部分には、その第1貫通穴の長手方向へ突き出す突起が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
このような車両用操作ペダル装置においては、中空ペダルアームが車両前後方向に2分割された一対の前側半割体および後側半割体にて構成されており、開口側が対向するように組み合わされて車両幅方向の両側に位置する側端部が互いに一体的に接合されることにより中空の筒形状とされているため、運転席側からはその接合部が見え難くなって見栄えが向上するとともに、接合部によって足等を怪我することが抑制される。また、中空ペダルアームに一体的に固設された連結プレートの連結部に出力部材が連結されるため、中空ペダルアームの両側部に連結穴を設けて連結ピン等を配設する場合に比較して、前記前後寸法Lや幅寸法Dに関する設計の自由度が制約されることがなく、所定の連結強度を確保しつつ中空ペダルアームをコンパクトで軽量且つ安価に構成できる。
更に、前側半割体および後側半割体にそれぞれスリット状の第1貫通穴および第2貫通穴が設けられ、連結プレートはそれ等の第1貫通穴および第2貫通穴を通って中空ペダルアームを車両前後方向に挿通させられているため、第1貫通穴および第2貫通穴によって連結プレートの2箇所が位置決めされ、中空ペダルアームに対する連結プレートの取付姿勢が安定するとともに取付作業が容易になる。また、第1貫通穴および第2貫通穴の位置を変更することにより連結プレートの配設位置を適宜設定することが可能で、中空ペダルアームのレバー比や車両幅方向のオフセット量が異なる車両にも容易に転用できるとともに、複数種類の中空ペダルアームに対して連結プレートを共通化することが可能で、更なるコストダウンを図ることができる。
【0015】
第2発明では、後側半割体の一対の側端部がそれぞれ前側半割体の一対の側端部の外側に重ね合わされるように組み合わされて一体的に接合されているため、運転席側から接合部が一層見え難くなり、見栄えが更に向上するとともに足等の怪我が一層効果的に抑制される。
【0016】
第3発明では、中空ペダルアームから外部に突き出す前記連結部を含む連結プレートの両端部がそれぞれ溶接により中空ペダルアームに一体的に固設されているため、連結プレートを強固に中空ペダルアームに固設することができる。
【0018】
第5発明では、中空ペダルアームから外部に突き出す前記連結部を含む連結プレートの両端部がそれぞれ溶接により中空ペダルアームに一体的に固設されているため、連結プレートを強固に中空ペダルアームに固設することができる。
【0019】
第6発明では、連結プレートのうち中空ペダルアームの中空内に位置する部分に、第2貫通穴の長手方向へ突き出す突起が設けられているため、連結プレートを中空ペダルアームに接合する溶接が剥がれた場合でも、第2貫通穴の長手方向の端部近傍の後側半割体の内壁面に突起が当接することにより連結プレートが第2貫通穴から抜け出すことが防止され、その連結プレートを介して出力部材にペダル操作力が伝達される。
【0020】
第7発明では、連結プレートの連結部であって第1貫通穴から外側へ突き出す部分に、その第1貫通穴の長手方向へ突き出す突起が設けられているため、連結プレートを中空ペダルアームに接合する溶接が剥がれた場合でも、第1貫通穴の長手方向の端部近傍の前側半割体の外壁面に突起が当接することにより連結プレートが第1貫通穴内に没入することが防止され、その連結プレートを介して出力部材にペダル操作力が伝達される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施例である車両用操作ペダル装置を示す斜視図である。
図2図1の車両用操作ペダル装置の操作ペダルを示す図で、(a) は左側面図、(b) は運転席側から見た正面図、(c) は右側面図である。
図3図2における III−III 断面部分の拡大断面図である。
図4図2におけるIV−IV断面部分の拡大断面図である。
図5図1の車両用操作ペダル装置の中空ペダルアームを構成している一対の半割体を接合する前の状態で、連結プレートと共に示した斜視図である。
図6】本発明の他の実施例を説明する図で、図4に対応する断面図である。
図7】本発明の背景技術(未公知)を説明する図で、図3に対応する断面図である。
図8図7の背景技術に関し、前側半割体の一対の側壁に連結穴を加工する際の加工方法を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、比較的大きなペダル操作力が加えられる常用ブレーキ用或いは駐車ブレーキ用の車両用操作ペダル装置に好適に適用されるが、アクセルペダル装置やクラッチペダル装置等にも適用され得る。中空ペダルアームは、車両の上下方向に配設されるが、必ずしも完全な垂直状態である必要はなく、前後方向に傾斜していても良く、例えばペダルシートが設けられる下端部が運転席側(車両後側)へ傾斜する姿勢で配設され、上端部において車両幅方向と略平行な支持軸心まわりに揺動可能に支持されるのが一般的である。また、必ずしも一直線である必要はなく、車両の前後方向或いは左右方向へ曲げられていても良いなど、全体として上下方向の成分を含んで配設されるものであれば良い。
【0023】
中空ペダルアームは、上下の長手方向に沿って車両前側および後側に2分割された断面がU字形状の一対の前側半割体および後側半割体にて構成されるが、U字形の断面形状は角張ったU字形状(コの字形状)でも、半円形状や半楕円形状でも良く、開口側の側端縁に外側へ曲げられた鍔状のフランジを有するハット断面形状でも良い。そして、開口側が対向するように組み合わされて車両幅方向の両側に位置する側端部が互いに一体的に接合されるが、例えば両方の半割体の側端部を重ね合わせてアーク溶接等の溶接手段で接合できるし、接着剤等の他の接合手段で接合することも可能である。また、開口側の側端縁を突き合わせてアーク溶接などで接合することもできるし、ハット断面形状の場合、フランジをクリンチ加工やかしめ加工などで機械的に接合することもできるなど、種々の接合態様が可能である。この接合は、中空ペダルアームの長手方向に連続的に行うことが望ましいが、断続的に行うだけでも良い。一対の半割体としては、溶接が可能な金属製の板材(鋼板など)が好適に用いられ、プレス加工によって断面U字形状に成形することが望ましい。
【0024】
上記中空ペダルアームには連結プレートが一体的に固設され、連結ピン等を介して例えば支持軸心と平行な連結軸心まわりに相対回動可能に出力部材が連結されるが、出力部材は、例えばブレーキブースタのプッシュロッドや、中間レバーと中空ペダルアームとを連結する連結リンク、或いはペダル操作力を電気的に検出するために操作ペダルに反力を付与するシミュレーション装置の反力部材などである。連結プレートは、例えば中空ペダルアームの支持軸心とペダルシートとの間の中間部分に、連結部が車両前側すなわち中空ペダルアームの踏込み方向側へ突き出すように配設され、連結ピン等を介して連結される出力部材を車両前側へ押圧するように構成されるが、ペダル操作に伴って出力部材が引っ張られるように構成することも可能で、連結プレートの配設場所は適宜定められる。第4発明〜第7発明は、ペダル操作に伴って出力部材に押圧荷重が加えられる場合で、引張荷重が加えられる場合は、例えば後側半割体に設けられる第2貫通穴から連結部を車両後側へ突出させるとともに、連結プレートに設ける突起は、連結プレートがその第2貫通穴から外部へ抜け出さないように、第2貫通穴の内側や第1貫通穴の外側に位置する部分に突設される。なお、中空ペダルアームの支持軸心よりも車両上方側に連結プレートを配設することも可能である。
【0025】
連結プレートは、例えば単一の平面内に位置する平板状に構成されるが、中空ペダルアームに車両上下方向(支持軸心と直角方向)に設けられたスリット状の貫通穴内に部分的に挿入され、連結部がその貫通穴から外部に突き出すように配設される場合、その貫通穴から突き出す部分でクランク状に曲げられていても良いし、L字形状に曲げられて中空ペダルアームの前壁部や後壁部に溶接固定することもできるなど、種々の態様が可能である。連結プレートの連結部は、例えば中空ペダルアームの支持軸心と直角な平面内に位置するように平坦に構成されるとともに、その支持軸心と平行に連結穴が設けられ、連結ピンを介して出力部材が相対回動可能に連結される。この連結プレートも、溶接が可能な金属製の板材(鋼板など)が好適に用いられ、アーク溶接等の溶接手段で中空ペダルアームに一体的に固設されるが、ねじや接着剤等の他の固設手段で固設することも可能である。
【0026】
第2発明では、後側半割体の一対の側端部が前側半割体の一対の側端部の外側に重ね合わされるように組み合わされるが、他の発明の実施に際しては、後側半割体の一対の側端部が前側半割体の一対の側端部の内側に重ね合わされるように組み合わされても良いし、一方は内側で他方は外側に重ね合わされるようにしても良い。それ等の側端部は、例えばアーク溶接等の溶接によって接合できるが、連結プレートが溶接可能な金属材料であれば、同時に連続して連結プレートを中空ペダルアームに溶接することが可能であり、生産性が向上して製造コストを一層低減できる。
【0027】
5発明のように連結プレートが第1貫通穴および第2貫通穴を共に貫通させられる場合、連結プレートはそれ等の第1貫通穴および第2貫通穴のどちら側から挿入されても良いし、前側半割体および後側半割体を一体的に接合する前に連結プレートを両者の間に配置して、その連結プレートの両端部がそれぞれ第1貫通穴および第2貫通穴から外側へ突き出す状態で一対の半割体を接合するようにしても良い。一対の半割体を接合して中空ペダルアームとした後に、第1貫通穴或いは第2貫通穴から連結プレートを挿入して中空ペダルアームに溶接しても良い。
【0028】
第6発明では、連結プレートのうち中空ペダルアームの中空内に位置する部分に突起が設けられ、溶接が剥がれた場合でもその突起が第2貫通穴の長手方向の端部近傍に当接して、連結プレートが第2貫通穴から抜け出さないようになっているが、他の発明の実施に際してはこのような突起は必ずしも必要ない。突起は、できるだけ第2貫通穴に近接した部分に設けることが望ましく、例えば後側半割体の後壁部に接するように設けることもできるが、少なくとも中空ペダルアームの中空内に位置する部分に設けられれば良い。また、第2貫通穴の長手方向の両端部すなわち連結プレートの両側部に設けることが望ましいが、何れか一方の側部に設けるだけでも良い。突起の突出寸法は、連結プレートが第2貫通穴から抜け出さないように適宜定められ、例えば第2貫通穴と連結プレートとの間の隙間寸法に応じて設定される。具体的には、両側の突起の突出寸法が何れも隙間寸法よりも大きいことが望ましい。第7発明の突起は、連結プレートの連結部であって第1貫通穴から外側へ突き出す部分に設けられる点が、上記第6発明の突起と相違するが、その突起を設ける位置や突出寸法は第6発明の突起と同様にして適宜定められる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用された車両用操作ペダル装置10を示す斜視図で、常用ブレーキ用のブレーキペダル装置であり、車体に一体的に固設されるブラケット14には操作ペダル12が揺動可能に配設される。図2は、この操作ペダル12を説明する図で、(a) は左側面図、(b) は運転席側から見た正面図、(c) は右側面図である。また、図3図2の(a) における III−III 断面部分の拡大断面図で、図4図2の(b) におけるIV−IV断面部分の拡大断面図である。
【0030】
操作ペダル12は、車両の上下方向に配設される長手状の中空ペダルアーム16と、その中空ペダルアーム16の下端部に固設されて運転者により踏込み操作されるペダルシート18とを備えている。中空ペダルアーム16は、ペダルシート18が設けられる下端部が運転席側すなわち車両後側へ傾斜する姿勢で配設されているとともに、上端部には車両幅方向に貫通するように円筒形状のカラー20が一体的に固設されており、そのカラー20内を貫通するようにブラケット14に設けられた支持軸22により、その支持軸22の軸心Oまわりに回動可能に支持されている。支持軸22の軸心Oは支持軸心である。なお、図1および図2は、何れも操作ペダル12が踏込み操作される前の初期位置の状態である。
【0031】
上記中空ペダルアーム16の中間部、すなわちカラー20よりも下方で上下方向の中央よりも上方部分には、連結プレート24が車両前側へ突き出すように一体的に固設されている。この連結プレート24には、図4に示すように出力部材26が二股状(U字状)のクレビス28およびクレビスピン30を介して支持軸心Oと平行な連結軸心Sまわりに相対回動可能に連結され、操作ペダル12に加えられたペダル操作力が連結プレート24からクレビスピン30を介して出力部材26に伝達され、車両前側へ押圧される。出力部材26は、例えばブレーキブースタのプッシュロッドで、車両前側へ押圧されることによりペダル操作力に応じたブレーキ力が発生させられる。連結軸心Sはクレビスピン30の軸心で、クレビスピン30は連結ピンに相当する。
【0032】
上記中空ペダルアーム16は、上下の長手方向に沿って車両前側および後側に2分割された一対の前側半割体32および後側半割体34によって構成されている。図5は、一対の前側半割体32および後側半割体34を接合する前の状態で、連結プレート24と共に示した斜視図であり、半割体32、34は何れも鋼板等の溶接可能な金属板材をプレスにより曲げ加工したもので、それぞれ断面が角張ったU字形状を成している。そして、そのU字形状の開口側が互いに対向する姿勢で組み合わされて、車両幅方向の両側に位置する側端部32aおよび34a、32bおよび34bがそれぞれ一体的に接合されることにより、閉断面の中空の角筒形状(直角四角形)とされている。本実施例では、図3から明らかなように後側半割体34の一対の側端部34a、34bがそれぞれ前側半割体32の一対の側端部32a、32bの外側に重ね合わされるように組み合わされ、側端部34a、34bの端縁に沿って長手方向に連続的にアーク溶接等の溶接手段で隅肉溶接が施されることにより、一対の半割体32、34が一体的に接合されて中空ペダルアーム16が構成されている。図1図2、および図3の第1溶接部W1は、この側端部32aおよび34aの溶接部、或いは側端部32bおよび34bの溶接部である。
【0033】
前記連結プレート24は、ペダル操作力を伝達できる所定の強度を確保するために前記半割体32、34よりも厚肉の平坦な鋼板等の溶接可能な金属板材にて構成されている。前側半割体32の前壁部32cおよび後側半割体34の後壁部34cには、それぞれ支持軸心Oと直角な方向すなわち上下方向に一直線にスリット状の第1貫通穴40、第2貫通穴42が設けられており、連結プレート24はそれ等の第1貫通穴40および第2貫通穴42を共に貫通して中空ペダルアーム16を車両前後方向に挿通するように配設されている。そして、その中空ペダルアーム16から車両前後方向の外側へ突き出す両端部にそれぞれアーク溶接等の溶接手段で隅肉溶接が施されることにより、それ等の前側半割体32、後側半割体34に一体的に固設されている。第1貫通穴40、第2貫通穴42は、それぞれ連結プレート24の板厚と略等しい幅寸法で設けられているとともに、連結プレート24の幅寸法よりも僅かに大きい長さ寸法を有する。図3の第2溶接部W2は、連結プレート24と前側半割体32との溶接部で、図1図2、および図3の第3溶接部W3は、連結プレート24と後側半割体34との溶接部である。
【0034】
連結プレート24は、全体が単一の平面内に位置するように平板形状を成しており、前記第1貫通穴40および第2貫通穴42を貫通させられることにより、支持軸心Oに対して略直角な一平面内に位置する姿勢で中空ペダルアーム16に固設されている。このように連結プレート24が支持軸心Oに対して略直角な一平面内に配置されるように、第2貫通穴42は第1貫通穴40に対応して設けられており、第1貫通穴40の位置は、車両毎に設定される操作ペダル12のレバー比や車両幅方向のオフセット量に応じて適宜定められる。また、連結プレート24は、第1貫通穴40から外部に突き出す連結部44、および第2貫通穴42から外部に突き出す突出部46を備えており、連結部44には連結穴44hが設けられて、軸受等を介して前記クレビスピン30が挿通させられるようになっている。突出部46の基端側、すなわち中空ペダルアーム16の中空内に位置する部分であって後側半割体34の後壁部34cに近接する部分には、第2貫通穴42の長手方向の両側へ突き出すように一対の突起48が設けられている。これ等の突起48の突出寸法t1は、何れも第2貫通穴42と突出部46との間の隙間寸法(第2貫通穴42の長さ寸法−突出部46の幅寸法)よりも大きく、前記第2溶接部W2および第3溶接部W3が共に剥がれた場合でも、突起48が後壁部34cの内壁面に当接させられることにより、連結プレート24が第2貫通穴42から抜け出すことが防止され、ペダル操作力が連結プレート24を介して確実に出力部材26に伝達される。連結プレート24が中空ペダルアーム16に固設された状態において、後側半割体34の後壁部34cに接するように突起48を設けることも可能である。
【0035】
このような連結プレート24は、例えば図5に示すように前側半割体32および後側半割体34を一体的に接合する前にそれ等の間に配置され、連結部44が前側半割体32の内側から第1貫通穴40内に嵌め入れられるとともに、突出部46が後側半割体34の内側から第2貫通穴42内に嵌め入れられる。そして、その状態で前側半割体32の側端部32a、32bと後側半割体34の側端部34a、34bとが重ね合わされるように組み合わせ、それ等の側端部32aおよび34a、32bおよび34bをアーク溶接等の溶接手段により溶接するとともに、連続して連結プレート24の連結部44および突出部46をそれぞれ前側半割体32の前壁部32c、後側半割体34の後壁部34cに溶接する。これにより、連結プレート24が溶接により一体的に固設された中空ペダルアーム16が得られ、更にカラー20やペダルシート18が溶接等で一体的に固設されることにより操作ペダル12が得られる。
【0036】
なお、上記連結プレート24には、所定の強度を維持しつつ軽量化を図るために、中空ペダルアーム16内に位置して第2溶接部W2、第3溶接部W3から離れた中央部分に抜き穴50が設けられている。また、中空ペダルアーム16は、連結プレート24が配設される長手方向の中間部が車両後側へ膨出するように全体的に滑らかに湾曲させられているが、後側半割体34の中間部すなわち連結プレート24が固設される部分には内側へへこみ変形させられた凹所52が設けられているとともに、その凹所52の上下には絞り加工等により部分的に外側(車両後側)へ突出変形させられた凸部54が設けられ、薄肉による軽量化を維持しつつ所定の強度を確保している。
【0037】
このような本実施例の車両用操作ペダル装置10においては、中空ペダルアーム16が車両前後方向に2分割された一対の前側半割体32および後側半割体34にて構成されており、開口側が対向するように組み合わされて車両幅方向の両側に位置する側端部32aおよび34a、32bおよび34bがそれぞれ一体的に接合されることにより中空の筒形状とされているため、運転席側からはその接合部(第1溶接部W1)が見え難くなって見栄えが向上するとともに、接合部によって足等を怪我することが抑制される。
【0038】
また、中空ペダルアーム16に一体的に固設された連結プレート24の連結部44に出力部材26が連結されるため、図7の中空ペダルアーム100のように左右の両側部に連結穴102a、102bを設けてクレビスピン30を配設する場合に比較して、前後寸法Lや幅寸法Dに関する設計の自由度が制約されることがなく、所定の連結強度を確保しつつ中空ペダルアーム16をコンパクトで軽量且つ安価に構成できる。
【0039】
また、後側半割体34の一対の側端部34a、34bがそれぞれ前側半割体32の一対の側端部32a、32bの外側に重ね合わされるように組み合わされ、その側端部32aおよび34a、32bおよび34bがそれぞれ隅肉溶接によって一体的に接合されているため、運転席側から接合部が一層見え難くなり、見栄えが更に向上するとともに足等の怪我が一層効果的に抑制される。
【0040】
また、前側半割体32および後側半割体34が溶接によって接合されるため、連結プレート24も同時に連続して溶接で中空ペダルアーム16に固設することが可能で、生産性が向上して製造コストを一層低減できる。
【0041】
また、連結プレート24は、前側半割体32に設けられた第1貫通穴40、および後側半割体34に設けられた第2貫通穴42を通って中空ペダルアーム16を車両前後方向に挿通させられ、連結部44がその第1貫通穴40から車両前側へ突き出す状態で溶接により中空ペダルアーム16に一体的に固設されているため、第1貫通穴40および第2貫通穴42の位置を変更することにより連結プレート24の配設位置を適宜設定することが可能で、中空ペダルアーム16のレバー比や車両幅方向のオフセット量が異なる車両にも容易に転用できるとともに、複数種類の中空ペダルアーム16に対して連結プレート24を共通化することが可能で、更なるコストダウンを図ることができる。
【0042】
また、連結プレート24は、上記第1貫通穴40から外側へ突き出す連結部44、第2貫通穴42から外側へ突き出す突出部46が、それぞれ隅肉溶接により前側半割体32、後側半割体34に一体的に固設されるため、連結プレート24が強固に中空ペダルアーム16に固設されるとともに、第1貫通穴40および第2貫通穴42によって連結プレート24の2箇所が位置決めされるため、中空ペダルアーム16に対する連結プレート24の取付姿勢が安定するとともに取付作業(溶接)が容易になる。
【0043】
また、連結プレート24のうち中空ペダルアーム16の中空内に位置する部分には、第2貫通穴42の長手方向へ突き出す突起48が設けられており、連結プレート24を中空ペダルアーム16に固設する第2溶接部W2、第3溶接部W3が何れも剥がれた場合でも、第2貫通穴42の長手方向の端部近傍の後壁部34cの内壁面に突起48が当接することにより連結プレート24が第2貫通穴42から抜け出すことが防止されるため、その連結プレート24を介して出力部材26にペダル操作力が確実に伝達される。特に、本実施例では連結プレート24の両側部に一対の突起48が設けられているため、連結プレート24の姿勢が大きく変化することが防止され、連結プレート24を介してペダル操作力が適切に出力部材26に伝達される。
【0044】
なお、上記実施例では、連結プレート24のうち中空ペダルアーム16の中空内に位置する部分に突起48が設けられていたが、図6に示す連結プレート60のように連結部44の両側部に突起62を設けることもできる。すなわち、第1貫通穴40から外側へ突き出す部分であって前側半割体32の前壁部32cに近接する部分に、その第1貫通穴40の長手方向へ突き出すように一対の突起62を設けても良い。これ等の突起62の突出寸法t2は、何れも第1貫通穴40と連結部44との間の隙間寸法(第1貫通穴40の長さ寸法−連結部44の幅寸法)よりも大きい。これにより、連結プレート60を中空ペダルアーム16に固設する第2溶接部W2および第3溶接部W3が共に剥がれた場合でも、突起62が第1貫通穴40の長手方向の端部近傍の前壁部32cの外壁面に当接することにより連結プレート60が第1貫通穴40内に没入することが防止され、ペダル操作力が連結プレート60を介して確実に出力部材26に伝達される。また、連結プレート60の両側部に一対の突起62が設けられているため、連結プレート60の姿勢が大きく変化することが防止され、連結プレート60を介してペダル操作力が適切に出力部材26に伝達される。連結プレート60が中空ペダルアーム16に固設された状態において、前側半割体32の前壁部32cに接するように突起62を設けることも可能である。なお、図6の連結プレート60は前記連結プレート24に比較して突起62が相違するだけで、他の部分は連結プレート24と実質的に同じであるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0045】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0046】
10:車両用操作ペダル装置 16:中空ペダルアーム 24、60:連結プレート 26:出力部材 32:前側半割体 32a、32b:側端部 32c:前壁部 34:後側半割体 34a、34b:側端部 34c:後壁部 40:第1貫通穴 42:第2貫通穴 44:連結部 48、62:突起 S:連結軸心 W1、W2、W3:溶接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8