【実施例】
【0029】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用された車両用操作ペダル装置10を示す斜視図で、常用ブレーキ用のブレーキペダル装置であり、車体に一体的に固設されるブラケット14には操作ペダル12が揺動可能に配設される。
図2は、この操作ペダル12を説明する図で、(a) は左側面図、(b) は運転席側から見た正面図、(c) は右側面図である。また、
図3は
図2の(a) における III−III 断面部分の拡大断面図で、
図4は
図2の(b) におけるIV−IV断面部分の拡大断面図である。
【0030】
操作ペダル12は、車両の上下方向に配設される長手状の中空ペダルアーム16と、その中空ペダルアーム16の下端部に固設されて運転者により踏込み操作されるペダルシート18とを備えている。中空ペダルアーム16は、ペダルシート18が設けられる下端部が運転席側すなわち車両後側へ傾斜する姿勢で配設されているとともに、上端部には車両幅方向に貫通するように円筒形状のカラー20が一体的に固設されており、そのカラー20内を貫通するようにブラケット14に設けられた支持軸22により、その支持軸22の軸心Oまわりに回動可能に支持されている。支持軸22の軸心Oは支持軸心である。なお、
図1および
図2は、何れも操作ペダル12が踏込み操作される前の初期位置の状態である。
【0031】
上記中空ペダルアーム16の中間部、すなわちカラー20よりも下方で上下方向の中央よりも上方部分には、連結プレート24が車両前側へ突き出すように一体的に固設されている。この連結プレート24には、
図4に示すように出力部材26が二股状(U字状)のクレビス28およびクレビスピン30を介して支持軸心Oと平行な連結軸心Sまわりに相対回動可能に連結され、操作ペダル12に加えられたペダル操作力が連結プレート24からクレビスピン30を介して出力部材26に伝達され、車両前側へ押圧される。出力部材26は、例えばブレーキブースタのプッシュロッドで、車両前側へ押圧されることによりペダル操作力に応じたブレーキ力が発生させられる。連結軸心Sはクレビスピン30の軸心で、クレビスピン30は連結ピンに相当する。
【0032】
上記中空ペダルアーム16は、上下の長手方向に沿って車両前側および後側に2分割された一対の前側半割体32および後側半割体34によって構成されている。
図5は、一対の前側半割体32および後側半割体34を接合する前の状態で、連結プレート24と共に示した斜視図であり、半割体32、34は何れも鋼板等の溶接可能な金属板材をプレスにより曲げ加工したもので、それぞれ断面が角張ったU字形状を成している。そして、そのU字形状の開口側が互いに対向する姿勢で組み合わされて、車両幅方向の両側に位置する側端部32aおよび34a、32bおよび34bがそれぞれ一体的に接合されることにより、閉断面の中空の角筒形状(直角四角形)とされている。本実施例では、
図3から明らかなように後側半割体34の一対の側端部34a、34bがそれぞれ前側半割体32の一対の側端部32a、32bの外側に重ね合わされるように組み合わされ、側端部34a、34bの端縁に沿って長手方向に連続的にアーク溶接等の溶接手段で隅肉溶接が施されることにより、一対の半割体32、34が一体的に接合されて中空ペダルアーム16が構成されている。
図1、
図2、および
図3の第1溶接部W1は、この側端部32aおよび34aの溶接部、或いは側端部32bおよび34bの溶接部である。
【0033】
前記連結プレート24は、ペダル操作力を伝達できる所定の強度を確保するために前記半割体32、34よりも厚肉の平坦な鋼板等の溶接可能な金属板材にて構成されている。前側半割体32の前壁部32cおよび後側半割体34の後壁部34cには、それぞれ支持軸心Oと直角な方向すなわち上下方向に一直線にスリット状の第1貫通穴40、第2貫通穴42が設けられており、連結プレート24はそれ等の第1貫通穴40および第2貫通穴42を共に貫通して中空ペダルアーム16を車両前後方向に挿通するように配設されている。そして、その中空ペダルアーム16から車両前後方向の外側へ突き出す両端部にそれぞれアーク溶接等の溶接手段で隅肉溶接が施されることにより、それ等の前側半割体32、後側半割体34に一体的に固設されている。第1貫通穴40、第2貫通穴42は、それぞれ連結プレート24の板厚と略等しい幅寸法で設けられているとともに、連結プレート24の幅寸法よりも僅かに大きい長さ寸法を有する。
図3の第2溶接部W2は、連結プレート24と前側半割体32との溶接部で、
図1、
図2、および
図3の第3溶接部W3は、連結プレート24と後側半割体34との溶接部である。
【0034】
連結プレート24は、全体が単一の平面内に位置するように平板形状を成しており、前記第1貫通穴40および第2貫通穴42を貫通させられることにより、支持軸心Oに対して略直角な一平面内に位置する姿勢で中空ペダルアーム16に固設されている。このように連結プレート24が支持軸心Oに対して略直角な一平面内に配置されるように、第2貫通穴42は第1貫通穴40に対応して設けられており、第1貫通穴40の位置は、車両毎に設定される操作ペダル12のレバー比や車両幅方向のオフセット量に応じて適宜定められる。また、連結プレート24は、第1貫通穴40から外部に突き出す連結部44、および第2貫通穴42から外部に突き出す突出部46を備えており、連結部44には連結穴44hが設けられて、軸受等を介して前記クレビスピン30が挿通させられるようになっている。突出部46の基端側、すなわち中空ペダルアーム16の中空内に位置する部分であって後側半割体34の後壁部34cに近接する部分には、第2貫通穴42の長手方向の両側へ突き出すように一対の突起48が設けられている。これ等の突起48の突出寸法t1は、何れも第2貫通穴42と突出部46との間の隙間寸法(第2貫通穴42の長さ寸法−突出部46の幅寸法)よりも大きく、前記第2溶接部W2および第3溶接部W3が共に剥がれた場合でも、突起48が後壁部34cの内壁面に当接させられることにより、連結プレート24が第2貫通穴42から抜け出すことが防止され、ペダル操作力が連結プレート24を介して確実に出力部材26に伝達される。連結プレート24が中空ペダルアーム16に固設された状態において、後側半割体34の後壁部34cに接するように突起48を設けることも可能である。
【0035】
このような連結プレート24は、例えば
図5に示すように前側半割体32および後側半割体34を一体的に接合する前にそれ等の間に配置され、連結部44が前側半割体32の内側から第1貫通穴40内に嵌め入れられるとともに、突出部46が後側半割体34の内側から第2貫通穴42内に嵌め入れられる。そして、その状態で前側半割体32の側端部32a、32bと後側半割体34の側端部34a、34bとが重ね合わされるように組み合わせ、それ等の側端部32aおよび34a、32bおよび34bをアーク溶接等の溶接手段により溶接するとともに、連続して連結プレート24の連結部44および突出部46をそれぞれ前側半割体32の前壁部32c、後側半割体34の後壁部34cに溶接する。これにより、連結プレート24が溶接により一体的に固設された中空ペダルアーム16が得られ、更にカラー20やペダルシート18が溶接等で一体的に固設されることにより操作ペダル12が得られる。
【0036】
なお、上記連結プレート24には、所定の強度を維持しつつ軽量化を図るために、中空ペダルアーム16内に位置して第2溶接部W2、第3溶接部W3から離れた中央部分に抜き穴50が設けられている。また、中空ペダルアーム16は、連結プレート24が配設される長手方向の中間部が車両後側へ膨出するように全体的に滑らかに湾曲させられているが、後側半割体34の中間部すなわち連結プレート24が固設される部分には内側へへこみ変形させられた凹所52が設けられているとともに、その凹所52の上下には絞り加工等により部分的に外側(車両後側)へ突出変形させられた凸部54が設けられ、薄肉による軽量化を維持しつつ所定の強度を確保している。
【0037】
このような本実施例の車両用操作ペダル装置10においては、中空ペダルアーム16が車両前後方向に2分割された一対の前側半割体32および後側半割体34にて構成されており、開口側が対向するように組み合わされて車両幅方向の両側に位置する側端部32aおよび34a、32bおよび34bがそれぞれ一体的に接合されることにより中空の筒形状とされているため、運転席側からはその接合部(第1溶接部W1)が見え難くなって見栄えが向上するとともに、接合部によって足等を怪我することが抑制される。
【0038】
また、中空ペダルアーム16に一体的に固設された連結プレート24の連結部44に出力部材26が連結されるため、
図7の中空ペダルアーム100のように左右の両側部に連結穴102a、102bを設けてクレビスピン30を配設する場合に比較して、前後寸法Lや幅寸法Dに関する設計の自由度が制約されることがなく、所定の連結強度を確保しつつ中空ペダルアーム16をコンパクトで軽量且つ安価に構成できる。
【0039】
また、後側半割体34の一対の側端部34a、34bがそれぞれ前側半割体32の一対の側端部32a、32bの外側に重ね合わされるように組み合わされ、その側端部32aおよび34a、32bおよび34bがそれぞれ隅肉溶接によって一体的に接合されているため、運転席側から接合部が一層見え難くなり、見栄えが更に向上するとともに足等の怪我が一層効果的に抑制される。
【0040】
また、前側半割体32および後側半割体34が溶接によって接合されるため、連結プレート24も同時に連続して溶接で中空ペダルアーム16に固設することが可能で、生産性が向上して製造コストを一層低減できる。
【0041】
また、連結プレート24は、前側半割体32に設けられた第1貫通穴40、および後側半割体34に設けられた第2貫通穴42を通って中空ペダルアーム16を車両前後方向に挿通させられ、連結部44がその第1貫通穴40から車両前側へ突き出す状態で溶接により中空ペダルアーム16に一体的に固設されているため、第1貫通穴40および第2貫通穴42の位置を変更することにより連結プレート24の配設位置を適宜設定することが可能で、中空ペダルアーム16のレバー比や車両幅方向のオフセット量が異なる車両にも容易に転用できるとともに、複数種類の中空ペダルアーム16に対して連結プレート24を共通化することが可能で、更なるコストダウンを図ることができる。
【0042】
また、連結プレート24は、上記第1貫通穴40から外側へ突き出す連結部44、第2貫通穴42から外側へ突き出す突出部46が、それぞれ隅肉溶接により前側半割体32、後側半割体34に一体的に固設されるため、連結プレート24が強固に中空ペダルアーム16に固設されるとともに、第1貫通穴40および第2貫通穴42によって連結プレート24の2箇所が位置決めされるため、中空ペダルアーム16に対する連結プレート24の取付姿勢が安定するとともに取付作業(溶接)が容易になる。
【0043】
また、連結プレート24のうち中空ペダルアーム16の中空内に位置する部分には、第2貫通穴42の長手方向へ突き出す突起48が設けられており、連結プレート24を中空ペダルアーム16に固設する第2溶接部W2、第3溶接部W3が何れも剥がれた場合でも、第2貫通穴42の長手方向の端部近傍の後壁部34cの内壁面に突起48が当接することにより連結プレート24が第2貫通穴42から抜け出すことが防止されるため、その連結プレート24を介して出力部材26にペダル操作力が確実に伝達される。特に、本実施例では連結プレート24の両側部に一対の突起48が設けられているため、連結プレート24の姿勢が大きく変化することが防止され、連結プレート24を介してペダル操作力が適切に出力部材26に伝達される。
【0044】
なお、上記実施例では、連結プレート24のうち中空ペダルアーム16の中空内に位置する部分に突起48が設けられていたが、
図6に示す連結プレート60のように連結部44の両側部に突起62を設けることもできる。すなわち、第1貫通穴40から外側へ突き出す部分であって前側半割体32の前壁部32cに近接する部分に、その第1貫通穴40の長手方向へ突き出すように一対の突起62を設けても良い。これ等の突起62の突出寸法t2は、何れも第1貫通穴40と連結部44との間の隙間寸法(第1貫通穴40の長さ寸法−連結部44の幅寸法)よりも大きい。これにより、連結プレート60を中空ペダルアーム16に固設する第2溶接部W2および第3溶接部W3が共に剥がれた場合でも、突起62が第1貫通穴40の長手方向の端部近傍の前壁部32cの外壁面に当接することにより連結プレート60が第1貫通穴40内に没入することが防止され、ペダル操作力が連結プレート60を介して確実に出力部材26に伝達される。また、連結プレート60の両側部に一対の突起62が設けられているため、連結プレート60の姿勢が大きく変化することが防止され、連結プレート60を介してペダル操作力が適切に出力部材26に伝達される。連結プレート60が中空ペダルアーム16に固設された状態において、前側半割体32の前壁部32cに接するように突起62を設けることも可能である。なお、
図6の連結プレート60は前記連結プレート24に比較して突起62が相違するだけで、他の部分は連結プレート24と実質的に同じであるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0045】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。