(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
装置などの組立ラインでは、ワークを搬送するコンベヤに沿って作業ステーションが配置されており、各作業ステーションでは、指定された部品をコンベヤで搬送されたワークに組付けるようになっている。
このような従来の組立ラインの中には、ワークに組付ける部品を搬送するコンベヤ(部品用のコンベヤ)が、ワークを搬送するコンベヤに対して並列に設けられているものがあり、この部品用のコンベヤは、ワークに組付ける部品が載置されたワークベースを、コンベヤにより搬送されるワークと同期させて、作業ステーションに搬送するようになっている。
【0003】
部品用のコンベヤを有する組立ラインでは、ワークに組付けられる総ての部品が、部品用のコンベヤのスタート位置でワークベースに搭載されるようになっている。しかし、ワークベースの大きさは限られているので、一部の部品は、作業ステーション毎に纏められて、作業ステーション毎に用意された専用のトレーに収容されるようになっている。
【0004】
図7は、従来の組立ラインにおける部品用のコンベヤの模式図であって、トレーを重ねたトレー組立体を説明する図である。
図8は、トレー組立体の分解斜視図であって、部品の保持部材が備える折り畳み式の脚部を説明する図である。
【0005】
図7に示すようにワークベース101には、作業ステーション毎に用意されたトレー102(102a〜102f)が載置されており、各トレー102には、各作業ステーションでワークに組付ける部品(図示せず)が載置されている。
ワークベース101では、コンベヤによる搬送方向における一方側に、組立ラインにおける最初の作業ステーションA用のトレー102aが配置されており、他方側に、作業ステーションB〜F用のトレー102b〜102fを重ねたトレー組立体が配置されている。
【0006】
組立ラインでは、最初の作業ステーションAにおいてトレー102a内の部品がワークに組付けられたのち、これに続く作業ステーションB(図示せず)でトレー102b内の部品がワークに組付けられると、次の作業ステーションCでの組付け作業のために、トレー102bがトレー102aの上に重ねられるようになっている。
そして、作業ステーションCでの部品の組付けが終了すると、次の作業ステーションでの組付け作業のために、トレー102cがトレー102bの上に重ねられ、以降作業ステーションを経る毎に、部品の組付けが終わったトレーが、トレー102aの上側に順番に重ねられて、最後の作業ステーションFでの部品の組付けが終了すると、新たなトレー組立体が形成されるようになっている。
【0007】
図8に示すように、各トレー102には、部品を保持するための保持部材103が収容されており、この保持部材103には、部品を保持するための凹部103a〜103cが、保持する部品形状に応じて決まる形状で形成されている。
【0008】
ここで、保持部材103で保持される部品は、その大きさや形状が異なっており、保持部材103に載置された各部品の高さも異なっている。そのため、トレー102を重ねた際に、保持部材103で保持された部品が、上方で隣接する他のトレー102と干渉すると、トレー102を安定した状態で重ねることができなくなってしまう。
そのため、従来では、保持部材103に、上方で隣接する他のトレー102側に延びる脚部104を設けて、他のトレー102との間に隙間Sを確保することで、保持部材103に載置された部品と、他のトレー102とが干渉することを防止している。
【0009】
また、部品用のコンベヤ100では、ワークベース101に載置された部品のワークへの組付けが総て終了すると、コンベヤ100aの下側に設けた戻り用のコンベヤ100bにより、ワークベース101がスタート位置に戻されるようになっている。
ここで、戻り用のコンベヤ100bでは、その上方にコンベヤ100aが位置しており、高さ方向に十分な空間を確保できないことが多い。そのため、部品のワークへの組付けの終了後に、重ねられたトレー102a〜102fの組立体を、そのまま戻り用のコンベヤ100bで搬送しようとすると、トレー102a〜102fがコンベヤ100aと干渉して、スタート位置に戻すことができなくなる場合がある。
【0010】
重ねられたときのトレーの高さを抑える技術として、例えば特許文献1に開示されたものがある。この特許文献1には、盆の四隅に脚部が設けられたお膳(トレー)であって、お膳を重ねたときに、お膳の脚部が、下方に位置する他のお膳の脚部に設けた孔に挿入されて、重ねたお膳の高さが抑えられるようにしたものが開示されている。
【0011】
しかし、特許文献1のものは、お膳を単体で使用することを前提としており、複数のお膳を重ねて使用することができないようになっている。
そのため、特許文献1の技術を上記した部品搬送用のトレーに適用しても、上記した課題を解決することができなかった。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、自動変速機の本体に組付けられる部品(組付け部品)を搬送するコンベヤで使用されるトレー10の場合を例に挙げて説明をする。
図1は、実施の形態にかかるトレー10の斜視図であり、
図2は、トレー10を説明する図であって、(a)は、(b)におけるA−A矢視図に相当する側面図であり、(b)は、トレー10を上方から見た平面図であり、(c)は、(b)におけるB−B断面図であり、(d)は、(b)におけるC−C断面図である。
図3は、
図2の(b)におけるD−D断面図であって、トレー10の上に重ねた他のトレー10を仮想線で示した図であり、(a)は、向きを揃えてトレー10を重ねた場合を、(b)は、向きを180度変えて重ねた場合を、それぞれ示す図である。
図4の(a)は、向きを揃えて複数のトレー10を重ねたトレー組立体Aの斜視図であり、(b)は、向きを交互に180度ずつ変えて複数のトレー10を重ねたトレー組立体Bの斜視図である。
【0020】
使用時においてトレー10は、高さ方向に複数重ねられた状態で、部品用のコンベヤで搬送されるワークベースに載置されるようになっている。
ここで、実施の形態にかかるトレー10は、向きを揃えて重ねると、隣接する他のトレー10との間に高さ方向の隙間Sが確保され、向きを交互に180度ずつ変えて重ねると、各トレー10が、隣接する他のトレー10との間に隙間を生じることなく重ねられるようになっている。なお、この点については、トレー10の構成を説明した後に、詳細に説明をする。
【0021】
図1に示すように、トレー10には、複数の組付け部品(図示せず)を保持する保持部材1が載置されている。この保持部材1には、組付け部品を保持するための凹部1a〜1cが、それぞれ保持される組付け部品の形状などに合わせて形成されており、保持部材1で保持される組付け部品の各々が、それぞれ対応する凹部1a〜1cで保持されるようになっている。
【0022】
図2に示すように、トレー10は、保持部材1が載置される底板部11と、底板部11の外周縁を全周に亘って囲む側壁部12と、底板部11の下面に固定された脚部13と、を備えており、底板部11には、貫通穴14が形成されている。
【0023】
底板部11は、上面視において略矩形形状(長方形形状)を有する板状部材であり、この底板部11の四隅には、曲面加工が施されている。
【0024】
側壁部12は、底板部11の外周縁の全周に亘って設けられており、この側壁部12は、底板部11を基準として一方側の上方と、他方側の下方に、それぞれ高さh1、h2を有している(h1>h2)。
そして、実施の形態では、トレー10を上方から見て、底板部11の長手方向(軸線X方向)の一方側の側壁部12aと、他方側の側壁部12bのうちの何れか一方には、後記するマークMが設けられている(
図2の(a)参照)。
【0025】
ここで、以下の説明では、底板部11を上方から見た場合に、底板部11の長手方向(軸線X方向)における一方と他方に位置する側壁部12を、それぞれ側壁部12a、12bと標記し、この長手方向に直交する方向(軸線Y方向)における一方と他方に位置する側壁部12を、それぞれ側壁部12c、12dと標記する。そして、各側壁部を特に区別しないときには、側壁部12と標記する。
【0026】
図3の(a)に示すように、側壁部12aの上端121側の外周には、補強用のリブ15が溶接により固定されており、このリブ15は、側壁部12の周方向の全周に亘って設けられている(
図2の(b)参照)。
リブ15の上端15aは、側壁部12の上端121よりも上方に位置しており、向きを交互に180度ずつ変えて複数のトレー10を重ねたときに、上方に位置する他のトレー10の側壁部12の下端122が、リブ15の内側に挿入されるようになっている。
【0027】
なお、リブ15は、その断面が円形を成しているので、向きを交互に180度ずつ変えて複数のトレー10を重ねるときに、上側に重ねられる他のトレー10の位置決め用のガイドとして機能するようになっている。また、ガイドとして機能した後は、上方に重ねられた他のトレー10の側壁部12の下端122が、リブ15に内嵌した状態となるので、高さ方向に重ねたトレー10の横方向の位置ずれが、リブ15により防止されるようになっている
【0028】
脚部13は、底板部11の下面にボルトBで固定された円筒形状の部材であり、実施の形態では、合計4つの脚部13が、底板部11の下面に固定されている。
脚部13は、底板部11の直交方向に沿って、底板部11から離れる方向に向けて突出しており、各トレー10の側壁部12aが上方から見て同じ方向に位置するように、トレー10を向きを揃えて高さ方向に重ねたときに、下方に位置する他のトレー10の底板部11に載置されるようになっている。
【0029】
図3の(a)に示すように、この脚部13は、複数のトレー10を高さ方向に重ねたときに、下方に位置する他のトレー10との間に高さ方向の隙間を確保するスペーサとして機能するものであり、少なくとも側壁部12の高さh1よりも大きい高さであって、重ねたトレー10とトレー10の間に、所定の高さSの隙間が確保可能な高さh3(h3>h1)を有している。
【0030】
円筒形状の脚部13の内径は、底板部11から離れる方向で2段階に拡径しており、下端側の大径部13aの内径D1は、上端側(底板部11)側の小径部13bの内径D2よりも大きい径(D2>D1)に設定されている。
脚部13は、底板部11を貫通して小径部13bに螺入したボルトBにより、底板部11の下面に固定されており、この状態においてボルトBの頭部B1は、底板部11の上面から突出している。
【0031】
実施の形態では、向きを揃えてトレー10を高さ方向に重ねたときに、脚部13の先端側(下端側)の大径部13a内に、下方に位置する他のトレー10のボルトB(頭部B1)が収容されて、高さ方向に重ねたトレー10の横方向の位置ずれが、脚部13の大径部13aとボルトBの頭部B1により抑えられるようになっている。
ここで、大径部13aの内径D1は、トレー10の重ね易さを優先して、ボルトBの頭部B1の最大の外径D3よりも大きい径(D1>D3)に設定されているが、重ね合わせたトレー10の位置ずれ防止を優先して、大径部13aの内径D1と、頭部B1の外径D3を同じ(D1=D3)、または内径D1のほうが外径D3よりも僅かに大きくなるように設定しても良い。
【0032】
トレー10における脚部13の位置を説明する。
図2に示すように、トレー10を上方から見ると、脚部13は、底板部11の長手方向(軸線X方向)の一方側(側壁部12a側)と他方側(側壁部12b)側にそれぞれ2つずつ設けられている。
そして、一方側と他方側に設けられた2つの脚部13は、それぞれ、底板部11の長手方向に直交する方向(軸線Y方向)で間隔を開けて設けられており、実施の形態では、軸線Y方向における一方側の側壁部12cと、他方側の側壁部12dの近傍に位置している。軸線Y方向における脚部13、13の離間距離L1を広く取って、トレー10を重ねた状態での部品の収容可能面積を広げるためである。
【0033】
底板部11の長手方向(軸線X方向)において、側壁部12a側の脚部13、13は、それぞれ側壁部12aの近傍に位置しており、側壁部12b側の脚部13、13は、底板部11に形成された貫通穴14の分だけ、側壁部12bから側壁部12a側にオフセットした位置に設けられている。底板部11の長手方向における脚部13、13の離間距離L2もまた、トレー10を重ねたときの部品の収容可能面積を広げるために、可能な限り広くなるように設定されている。
【0034】
底板部11には、脚部13と同数の貫通穴14が設けられており、実施の形態では、
図2の(b)において右側に位置する側壁部12aが左側に来るように、上方から見たときのトレー10の向きを180度変えたときに、上方から見て脚部13と重なる位置に貫通穴14が設けられている。
貫通穴14は、脚部13を挿通可能な大きさで形成されており、下方に位置する他のトレー10に対して向きを180度変えてトレー10を重ねたときに、脚部13が、下方に位置する他のトレー10の貫通穴14に挿入されるようになっている(
図3の(b)参照)。
【0035】
以下、トレー10を、合計5つのトレー10を重ねたトレー組立体Aとして使用する場合を例に挙げて、使用時におけるトレー10の重ね方と、重ね方によるトレー組立体の高さの変化を説明する。
なお、以下の説明では、高さ方向に重ねられた各トレー10を区別する場合には、符号10a〜10eを用いて標記し、区別しない場合には、符号10を用いて標記する。
【0036】
始めに、トレー10の各々に自動変速機に組付けられる部品が載置されているトレー組立体Aでは、上方からから見て、側壁部12aの向きが揃うように、トレー10a〜10eが重ねられている(
図4の(a)、
図5の(a)参照)。
【0037】
図5の(a)に示すように、この状態では、下方に位置する他のトレー10の底板部11に脚部13が載置された状態となるので、下方に隣接する他のトレー10との間に、脚部13の長さに応じた隙間Sが確保されることになる。
これにより、トレー10に載置された部品が、上方に位置する他のトレー10と干渉することなく、各トレー10で保持されることになる。
【0038】
この
図4の(a)、
図5の(a)に示す状態のトレー組立体Aは、部品用のコンベヤのスタート位置で用意されて、ワークベースに載置されたのち、自動変速機の組立ラインにおける最初の作業ステーションに運ばれることになる。
ワークベースが最初の作業ステーションに達すると、
図4の(a)において一番上のトレー10aに載置された部品が、自動変速機の本体に組付けられることになる。
そして、トレー10aに載置された部品の組付けが完了すると、トレー10aが、トレー組立体から取り外されて、ワークベースの他の位置に載置されることになる。
そうすると、トレー10bが一番上になるので、このトレー10bに載置された組付け部品が、次の作業ステーションにおいて、自動変速機の本体に組付けられることになる。
【0039】
そして、トレー10bに載置された部品の組付けが完了すると、トレー10bが取り外されて、トレー10aの上に重ねられる。
この際、トレー10bの向きを180度変えて、トレー10bの側壁部12bがトレー10aの側壁部12a側に来るようにしてトレー10aに重ねる(
図5の(b)参照)。そうすると、トレー10bの脚部13と、下方に位置する他のトレー10aの貫通穴14の位置が整合しているので、トレー10bの脚部13がトレー10aの貫通穴14に挿入されて、トレー10aとトレー10bとが高さ方向に、ほぼ隙間なく重ねられることになる。
【0040】
その後、トレー組付体Aで一番上にあるトレーに載置された部品の組付けが完了するたびに、部品の組付けが終わったトレーが、既に部品の組付けが終了してトレー10aの上方に重ねられたトレー組付体の一番上のトレーに重ねられることになる。
そして、部品の組付けが終了したトレーを重ねる際に、トレーの向きを交互に180度ずつ変えて重ねて行くと、最終的に、部品の組付けが終了したトレーからなる新たなトレー組付体B(
図4の(b)、
図5の(b)参照)が完成することになる。
【0041】
このトレー組付体Bでは、一番下のトレー10aに対して向きが180度変えられたトレー10b、10dの脚部13が、それぞれ下方に位置する他のトレー10a、10cの貫通穴14内に挿入され、さらにトレー10c、10eの脚部13が、それぞれ下方に位置する他のトレー10b、10dの貫通穴14内に挿入されるので、高さ方向に重ねたトレー10a〜10eが隙間なく重ねられた状態となる(
図4の(b)、
図5の(b)参照)。
これにより、向きを交互に180度ずつ変えてトレー10を重ねたときのトレー組立体Bの高さH2(ワークベース101からの高さ)が、向きを揃えてトレー10を重ねていたときの組立体Aの高さH1(ワークベース101からの高さ)よりも、低い高さとなる。
この状態で、トレー10c〜10eの脚部13の大径部13aが、下方に位置するトレー10a〜10dのボルトB(頭部B1)をその内側に収容した状態となるので、高さ方向に重ねたトレー10の横方向の位置ずれが抑えられることになる。
【0042】
さらに、実施の形態では、トレー組付体Bの高さH2が、戻り用のコンベヤで搬送可能な高さとなるように設定されており、重ねられた状態でのトレーの安定性を確保しつつ、使用後における重ねられたトレーの高さが低くなるようにされている。
【0043】
なお、実施の形態では、トレー10を重ねてトレー組付体Bとしたときに、上方から見て同一方向に位置する側壁部にマークMが設けられており、部品の組付けが終了したのち、トレー10の向きを交互に180度ずつ変えて重ねるときに、トレー10の向きが正しいか否かが、目視により判るようにされている。
そのため、
図4の(b)の場合、トレー10a、10c、10eでは、側壁部12bの外側面にマークM(
図2の(a)参照)が設けられ、トレー10b、10dでは、反対側の側壁部12aの外側面に、マークMが設けられている。
【0044】
以上の通り、実施の形態では、自動変速機に組付けられる部品(ワーク)が載置されるトレー10であって、トレー10の下面には、向きを揃えてトレー10を高さ方向に重ねたときに、下方に位置する他のトレー10の底板部11に載置されて、他のトレー10との間に高さ方向の隙間を確保する脚部13が、下方に突出して設けられており、
トレー10では、部品の保持部材1が載置される底板部11(載置部)の下面に、4つの脚部13が固定されており、
脚部13は、上面視における底板部11の幅方向(軸線X方向)における一方側と他方側に、それぞれ2つずつ設けられていると共に、一方側と他方側に設けられた2つの脚部13、13は、底板部11の幅方向の直交方向(軸線Y方向)で所定間隔を空けて配置されており、
底板部11では、トレー10の向きを、向きを揃えて高さ方向に重ねたときの向きから180度変えたときに脚部13が来る位置に、それぞれ脚部13を挿通可能な大きさの貫通穴14が形成されている構成とした。
【0045】
このように構成すると、向きを揃えてトレー10を高さ方向に重ねると、トレー10に固定された脚部13により、下方に位置する他のトレー10との間に高さ方向の隙間が確保され、向きを180度変えてトレー10を重ねると、脚部13が下方に位置する他のトレー10の貫通穴14に挿通されて、重ねられたトレー10、10の間の高さ方向の隙間が狭められる。
これにより、重ねられたトレー10、10の間の高さ方向の隙間を調整可能するために、脚部13を、従来のトレーのように起立位置と収容位置との間で回動可能にして、脚部13の向きを変えられるようにする必要がなく、脚部13をトレー10に固定できるので、重ねられた状態でのトレー10の安定性を確保しつつ、回動式の脚を用いずに、使用後に重ねられたトレー10の高さを低くできる。
また、従来の回動式の脚を採用していた場合には、部品の組付けが終了したトレーを重ねるときに、脚の向きを変える操作が必要であったが、トレー10は、回動式の脚を採用していないので、従来の場合に必要とされていた脚の向きを変える操作を必要としない。よって、作業工数が従来に比して少なくなるので、作業効率の改善と作成コストの低減が可能となる。
【0046】
さらに、トレー10は、上面視において略矩形形状の底板部11を全周に亘って囲む側壁部12を備えており、トレー10の積層方向における脚部13の高さh3は、側壁部12の同方向における高さh1よりも大きい高さに設定されている構成とした。
【0047】
このように構成すると、部品の保持部材1を、底板部11から脱落させることなく保持できると共に、向きを揃えてトレー10を重ねたときに、トレー10とトレー10の間に高さ方向の隙間を確実に確保することができる。
さらに、上側に重ねたトレー10の幅方向へ移動が、側壁部12により規制されるので、コンベヤによる搬送時の振動でトレー10が幅方向に移動しても、重ねられたトレーが崩れることを好適に防止できる。
【0048】
また、底板部11の上面には、脚部13を底板部11に固定するボルトBの頭部B1が突出しており、脚部13の下方に位置する他のトレー10側の下端には、ボルトBの頭部B1を収容可能な大径部13aが設けられている構成とした。
【0049】
このように構成すると、トレー10を高さ方向に重ねたときに、脚部13の先端側(下端側)の大径部13a内に、下方に位置する他のトレー10のボルトB(頭部B1)が収容されて、高さ方向に重ねたトレー10の横方向の位置ずれが、脚部13の大径部13aとボルトBの頭部B1により抑えられる。
これにより、高さ方向に重ねられた複数のトレー10の横揺れが抑えられて、重ねられたトレー10が安定するので、重ねられたトレー10がワークベースに載置されてコンベヤにより搬送される際に、搬送時の振動で、重ねられたトレー10が大きく揺れることを防止して、重ねられたトレー10が崩れる虞を低減できる。
【0050】
さらに、側壁部12は、底板部11を基準として高さ方向の一方側の上方と、他方側の下方とに、それぞれ高さh1、h2を有しており、
側壁部12の上端121側の外周には、リブ15が全周に亘って設けられていると共に、リブ15の上端15aは、側壁部12の上端121よりも上方に位置しており、向きを180度変えてトレー10を重ねたときに、上方に位置する他のトレー10の側壁部12の下端122が、リブ15の内側に挿入される構成とした。
【0051】
このように構成すると、トレー10を重ねたときに、上方に重ねられた他のトレー10の側壁部12の下端122が、リブ15に内側に挿入された状態となるので、高さ方向に重ねたトレー10の横方向の位置ずれがリブ15により防止される。これにより、部品の組付けが終了した後に重ねられたトレー10の横揺れが、リブ15により抑えられるので、重ねられたトレー10の安定性を向上させて、重ねられたトレー10が崩れる虞を低減できる。
【0052】
さらに、本発明は、高さ方向に少なくとも2つ以上のトレー10を重ねて構成されたトレー組立体であって、上方から見たトレー10の向きを交互に180度ずつ変えてトレー10を重ねたときに、重ねられたトレー10の各々では、底板部11を囲む側壁部12のうち、上方から見て同方向に位置する側壁部(12aまたは12b)に、目印となるマークMが設けられている構成とした。
【0053】
このように構成すると、部品の組付けが終了したのち、トレー10の向きを交互に180度ずつ変えて重ねるときに、トレー10の向きが正しいか否かが、目視により判るようになる。これにより、部品の組付けが終了したのち、重ねられたトレー10の高さが、重ねるときの向きの間違いにより、予定されていた高さよりも高くなることを防止できるので、重ねられたトレー10が、戻り用のコンベヤにおいて上方に位置するコンベヤと干渉することを好適に防止できる。
【0054】
なお、部品を載置したトレー10を向きを揃えて重ねたときに、上方から見て同方向に位置する側壁部(例えば側壁部12a)に、前記したマークMと異なる目印を設けて、部品を載置したトレー10を向きを揃えて重ねるときの目印を、前記したマークとは別に設けるようにしても良い。
部品を載置したトレー10を重ねるときに、重ねようとしているトレー10の向きを誤まると、当該トレー10が重ねられる他のトレー10に載置された部品が、トレー10の底板部11に干渉して、部品が傷ついてしまう虞がある。
部品を載置したトレー10を向きを揃えて重ねときに、揃えるべき向きが判るように目印が設けられていると、かかる問題の発生を好適に予防できる。
【0055】
前記した実施の形態では、脚部13がトレー10とは別体に設けられて、トレー102ボルトBで固定されている場合を例示したが、脚部13をトレー10と一体に設けた構成としても良い。かかる場合、底板部11の上面のボルトBの頭部B1が位置していた部分に、ボルトに代えて突起を設けることで、前記した実施の形態の場合と同様の作用効果が奏されることになる。
【0056】
前記した実施の形態では、トレー10が高さ方向に重ねられたトレー組立体における各トレー10の脚部13の長さが、総て同じである場合を例示した。しかし、各トレー10は、それぞれ割り当てられた作業ステーションにおける組付け部品を収容するものであるので、トレー10に載置する部品の大きさに応じて、脚部13の高さ方向の長さが異なるトレーを重ねたトレー組立体としても良い。
かかる場合、部品の組付けが終了して重ねられたトレー10では、重ねられたトレー10、10が必ずしも隙間なく重ねられた状態にはならない。
しかし、この場合であっても、向きを交互に180度ずつ変えて重ねたトレーでは、脚部13の高さの少なくとも一部が、下側に位置する他のトレーの高さの範囲内に収容されて、収容された高さの分だけ、トレー10の向きを180度変えて重ねたときの高さが低くなる。
【0057】
よって、脚部13の長さが異なる複数のトレー10を重ねて構成されるトレー組立体の場合であっても、向きを揃えてトレーを重ねたときよりも、向きを交互に180度ずつ変えて重ねたときの高さを、低くすることができる。
これにより、向きを交互に180度ずつ変えて重ねたときの高さを、戻り用コンベヤに応じて決まる高さに設定することで、種々の大きさの部品を載置可能なトレー組立体であって、部品の搬送時に使用されるコンベヤの下方に、部品の搬送後のトレー組立体をスタート位置に戻すための戻り用のコンベヤが設けられた種々の組立ラインに利用可能なトレー組立体とすることができる。
【0058】
以下、トレー10が備える脚部13と貫通穴14の変形例を説明する。
図6は、トレー10における脚部と貫通穴の位置関係を説明する図であり、(a)は、前記した第1の実施の形態の場合の脚部13と貫通穴14との位置関係を模式的に示した図である。(b)〜(d)は、脚部と貫通穴の変形例を説明するための模式図である。
【0059】
前記した実施の形態のトレー10では、脚部13と貫通穴14とが、それぞれ4つずつ設けられている場合(
図6の(a)参照)を例示したが、脚部の数とその形状は、トレー10を、崩れる虞なく重ねることができる範囲内で適宜変更可能である。
【0060】
例えば、
図6の(b)に示すように、脚部13の数を3つにしても良い。かかる場合、トレー10Aの長手方向(軸線X方向)における一方側(側壁部12a側)の脚部を、軸線Y方向における中央に配置し、上方から見たときのトレー10Aの向きを、軸線Xと軸線Yの交差点P周りに180度変えたときに脚部13Aが来る位置に、脚部13を挿通可能な貫通穴14を設けることで、前記した実施の形態の場合と同様の作用効果が奏されることになる。
さらに、トレー10Aの場合、軸線X方向で一方側の脚部13と、他方側の脚部13、13を、それぞれ側壁部12a、12bの近傍に位置させて、軸線X方向における脚部13の離間距離L2を、最も広く取ることができる。これにより、トレー10における部品の載置可能な面積を広くできる。
【0061】
この場合において、
図6の(c)に示すように、側壁部12a側の貫通穴14、14の間に位置する脚部の幅Wを軸線Y方向に広げて、重ねたときのトレー10の安定性が向上するようにしても良い。
さらに、
図6の(d)に示すように、軸線Y方向の幅が広い脚部を採用する場合には、トレー10における脚部の数を2つにして、側壁部12a側と、側壁部12b側に設けるようにしても良い。
このようにすることによっても、前記した実施の形態の場合と同様の作用効果が奏されることになる。
【0062】
前記した実施の形態では、上面視において略長方形形状の底板部を備えるトレーの場合を例示したが、例えば上面視において略正方形形状の底板部を備えるトレーとしても良い。かかる場合には、トレーの向きを略90度ずつ変えて重ねたときに、下方に位置する他のトレーの貫通穴に脚部が挿入されるように、脚部と貫通穴の位置を設定することで、前記した実施の形態の場合と同様の作用効果が奏されることになる。