(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5689092
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】CPAP治療中の無呼吸/低呼吸の決定
(51)【国際特許分類】
A61M 16/00 20060101AFI20150305BHJP
【FI】
A61M16/00 305A
【請求項の数】28
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-97037(P2012-97037)
(22)【出願日】2012年4月20日
(62)【分割の表示】特願2008-557550(P2008-557550)の分割
【原出願日】2007年3月6日
(65)【公開番号】特開2012-161639(P2012-161639A)
(43)【公開日】2012年8月30日
【審査請求日】2012年4月24日
(31)【優先権主張番号】60/779,625
(32)【優先日】2006年3月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500046450
【氏名又は名称】レスメド・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ResMed Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100094318
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 行一
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】アルダー, マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ファルギア, スティーブン, ポール
(72)【発明者】
【氏名】ソマイヤ, チンメイー
【審査官】
倉橋 紀夫
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2005/077447(WO,A1)
【文献】
国際公開第2005/011469(WO,A1)
【文献】
特表2009−528858(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/014114(WO,A1)
【文献】
特表2002−519161(JP,A)
【文献】
特開2002−272847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における無呼吸及び/又は低呼吸イベントの発生を検出するための装置であって、
呼吸流を感知するセンサと、
前記センサから得られる信号から、第1の時間間隔で第1の平均呼吸気流量を繰り返し計算するために用いられる第1のフィルタと、
前記センサから得られる信号から、前記第1の時間間隔よりも短い第2の時間間隔で第2の平均呼吸気流量を繰り返し計算するために用いられる第2のフィルタと、
前記センサ及び前記第1及び第2のフィルタと通信するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記第1の平均呼吸気流量の部分を計算し、
前記第2の平均呼吸気流量を、前記第1の平均呼吸気流量の前記部分と比較し、
前記第2の平均呼吸気流量が前記第1の平均呼吸気流量の前記部分未満である場合に、無呼吸又は低呼吸の開始を決定し、
前記無呼吸又は低呼吸イベントの発生を確認するために、前記第2の平均呼吸気流量を計算し、前記第2の平均呼吸気流量を、前記第1の平均呼吸気流量の前記部分と比較し続け、
前記無呼吸又は低呼吸の開始を決定すると前記無呼吸又は低呼吸が終了するまで前記第1の平均呼吸気流量の計算を止め、
ある期間にわたって前記第2の平均呼吸気流量が前記第1の平均呼吸気流量の前記部分未満である回数を表す第1の値を決定し、
前記期間にわたって前記第2の平均呼吸気流量が前記第1の平均呼吸気流量の前記部分以上である回数を表す第2の値を決定し、
前記第1の値と前記第2の値との間の比較に基づいて前記無呼吸又は低呼吸の終了を決定する、
ことを繰り返すようにプログラムされている、
装置。
【請求項2】
前記部分は約1/4である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記部分は約1/2である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記コントローラは、発生した無呼吸及び/又は低呼吸の数を記録するようにプログラムされている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記第1及び第2のフィルタのうち少なくとも1つが、無限インパルス応答(IIR)フィルタである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記コントローラは、強制振動法を用いて気道の開存性の検出に基づく治療圧力調節を決定するようにプログラムされている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記第2の時間間隔が、10秒未満の期間である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記第2の時間間隔が、少なくとも5秒間である、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記第2の時間間隔が、8秒である、請求項7〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記第1の時間間隔が100秒の時定数である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
正しい平均呼吸気流の値をより迅速に決定できるように、前記第1の時間間隔が、短い時定数に初期設定される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記第1の平均呼吸気流量が、所定値に初期設定される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記所定値が約7.5L/分である、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
プログラムされたコントローラを含む持続陽圧呼吸(CPAP)デバイスを用いて無呼吸又は低呼吸イベントの発生を決定するための方法であって、
人の呼吸気流を表すデータを前記コントローラが得るステップと、
前記人の呼吸気流を表すデータから、第1の時間間隔で第1の平均呼吸気流量を繰り返し計算するステップと、
前記人の呼吸気流を表すデータから、前記第1の時間間隔よりも短い第2の時間間隔で第2の平均呼吸気流量を繰り返し計算するステップと、
前記第1の平均呼吸気流量の部分を計算するステップと、
前記コントローラが、前記第2の平均呼吸気流量を、前記第1の平均呼吸気流量の前記部分と比較するステップと、
前記第2の平均呼吸気流量が前記第1の平均呼吸気流量の前記部分未満である場合に、無呼吸又は低呼吸の開始を前記コントローラが決定するステップと、
前記コントローラが、前記無呼吸又は低呼吸イベントの発生を確認するために、前記第2の平均呼吸気流量を計算し、前記第2の平均呼吸気流量を、前記第1の平均呼吸気流量の前記部分と比較し続けるステップと、
前記無呼吸又は低呼吸の開始を決定すると前記無呼吸又は低呼吸が終了するまで前記第1の平均呼吸気流量の計算を止めるステップと、
ある期間にわたって前記第2の平均呼吸気流量が前記第1の平均呼吸気流量の前記部分未満である回数を表す第1の値を前記コントローラが決定するステップと、
前記期間にわたって前記第2の平均呼吸気流量が前記第1の平均呼吸気流量の前記部分以上である回数を表す第2の値を前記コントローラが決定するステップと、
前記第1の値と前記第2の値との間の比較に基づいて前記無呼吸又は低呼吸の終了を前記コントローラが決定するステップと、
を含む、方法。
【請求項15】
前記部分は約1/4である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記部分は約1/2である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の時間間隔が100秒の時定数である、請求項14〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の平均呼吸気流量が、所定値に初期設定される、請求項14〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記所定値が約7.5L/分である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
正しい平均呼吸気流の値をより迅速に決定できるように、前記第1の時間間隔が、短い時定数に初期設定される、請求項17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記第2の時間間隔が、10秒未満の期間である、請求項14〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の時間間隔が、少なくとも5秒間である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の時間間隔が、8秒である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記コントローラが、無呼吸又は低呼吸の発生を数えるステップと、
前記コントローラが、発生した無呼吸及び/又は低呼吸の数を記録するステップと、
を更に含む、請求項14〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
平均長期換気量もしくは平均短期換気量のどちらか、またはその両方が、無限インパルス応答(IIR)フィルタを用いて計算されるステップを更に含む、請求項14〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記コントローラは、強制振動法を用いて気道の開存性の検出に基づく治療圧力調節を決定するようにプログラムされている、請求項14〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記第1の値が前記第2の値以下である場合に、前記無呼吸又は低呼吸が終了したと決定する、請求項1に記載の装置。
【請求項28】
前記第1の値が前記第2の値以下である場合に、前記無呼吸又は低呼吸が終了したと決定する、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉塞性気道イベントを解消するために、治療圧を調整する自動用量設定装置を用いた、部分的または完全上気道閉塞に対する持続陽圧呼吸(CPAP)療法の施行に関連する。具体的には、本発明は無呼吸/低呼吸イベントの検出に関連する。
【背景技術】
【0002】
睡眠時無呼吸症候群において、睡眠中に呼吸が停止する。気流が10秒以上停止することを「無呼吸」と呼ぶ。無呼吸は、血中酸素の低下をもたらし、ひいては睡眠障害を引き起こす。無呼吸は、従来、呼吸努力を伴わない中枢型と、呼吸努力を伴う閉塞型のいずれかに分類される。ある中枢型無呼吸においては、気道は開いているが、対象は呼吸をしようともしない。逆に、他の中枢型無呼吸およびすべての閉塞型無呼吸においては、気道は閉じている。通常、閉塞は舌または軟口蓋のレベルである。気道も不完全に閉塞している(すなわち狭窄または部分的に開存している)可能性がある。これも低換気(低呼吸)、血中酸素低下および睡眠障害を引き起こす。
【0003】
これらの症候群に対する一般的な治療形態は、持続陽圧呼吸(CPAP)の施行である。CPAP療法を施行するための手技は、技術および特許文献の両方において十分に立証されている。早くは米国特許第4,944,310号(Sullivan)に記述が見られる。簡単に言えば、CPAP療法は、通常4〜20cm H
2Oの範囲の陽圧をかけることにより、気道に対する空気的な補助としての役割を果たす。空気送達ホースを介して、出口が患者の顔に密着して取り付けた鼻(もしくは鼻および/または口)マスクに通じている、モータ駆動の送風機によって、空気が気道に送られる。排気口はマスクに近接する送達チューブに備えられている。マスクは、鼻および/または顔マスクもしくは鼻プロング、ピローまたはカニューラの形態を採ることが可能である。
【0004】
閉塞性呼吸を示唆する異常な呼吸パターンを感知および検出するための様々な技術が既知である。例えば、米国特許第5,245,995号(Sullivanら)は、睡眠中に対象の吸気および呼気圧を測定することにより、いかにして、いびきおよび異常な呼吸パターンを検出することができ、その結果、閉塞前のエピソードまたは他の形態の呼吸障害の早期指摘につながるかを概説している。具体的には、呼吸パラメータのパターンを監視し、所定のパターンが検出された時点でCPAP圧を上げ、理想的には、閉塞エピソードまたは他の形態の呼吸障害を発生させないために空気内圧を上昇させる。米国特許第6,502,572号(Berthon−Jonesら)は、大気圧を上回るように上昇させた治療圧で、患者の気道に接続するマスクに連結された送達チューブから、患者に対して呼吸可能な気体を産生するように動作することができる、制御可能なフロージェネレータ(本明細書において、陽圧デバイスの例として使用される)を有するCPAP治療装置について概説している。センサは、コントローラに提供される、患者の呼吸流量を表す信号を生成する。コントローラは、閾値を下回る呼吸気流の減少から、無呼吸の発生を決定するように動作可能であり、無呼吸が発生した場合は、無呼吸の持続時間を決定し、フロージェネレータに治療圧を上昇させるように動作可能である。‘572の特許は、無呼吸および低呼吸状態にあることを決定することに関わる様々なアルゴリズムに対する明示的な擬似コードを含んでおり、参照することにより本明細書にそれを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、‘572の特許によって開示されるようなデバイスの無呼吸/低呼吸検出アルゴリズムを簡略化し、その結果として、そのメモリ需要を減少し、ノイズに対する感度を低下させ、無呼吸/低呼吸状態である際に長期換気量の決定に関する問題を排除するための改良に関連する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
患者の気道に呼吸可能な気体を治療圧で供給するステップと、
呼吸気流の測定量を決定するステップと、
長期換気量と短期換気量に基づく閾値の比較から、無呼吸/低呼吸の発生を決定するステップであって、長期換気量の決定は、無呼吸/低呼吸イベントの間は更新されず、短期換気量の閾値を上回る超過がある場合、無呼吸/低呼吸イベントは終了したと考えられるステップと、
および、無呼吸/低呼吸状態である間は治療圧を上昇させるステップと、
を備えるCPAPの治療圧を加えるための方法を開示する。
一実施形態において、前記方法は、前記治療圧を、無呼吸/低呼吸状態ではない時に、ある量降下させるステップを含んでもよい。前記量はゼロであってもよい。
【0007】
本発明は、上記方法を実施するためのCPAP治療装置であって、
大気圧を上回るよう上昇させた圧力で呼吸可能な気体を産生するように動作することができる、制御可能なフロージェネレータと、
該フロージェネレータに連結する気体送達チューブと、
該フロージェネレータから該呼吸可能な気体を受け取り、該気体を望ましい治療圧で患者の気道に提供するために該チューブに連結する患者マスクと、
入力信号を受信し、該フロージェネレータの動作、ひいては該治療圧を制御するように動作可能なコントローラと、
患者の呼吸気流を感知し、患者の呼吸気流が決定される該コントローラに対して入力信号を生成するために位置するセンサと、
備え、
該コントローラは、長期換気量と短期換気量に基づく閾値の比較から、無呼吸の発生を決定するように動作可能であり、長期換気量の該決定は、無呼吸/低呼吸イベントの間は更新されず、短期換気量の閾値を上回る超過がある場合、無呼吸/低呼吸イベントは終了したと考えられる、CPAP治療装置をさらに開示する。
【0008】
無呼吸発生の認識は、短時間間隔で平均呼吸気流を計算すること、長時間間隔で平均呼吸気流を計算すること、および、短時間間隔での平均呼吸気流が、長時間間隔での平均呼吸気流の所定の割合未満であるかどうかを決定することにより開始するが、無呼吸が終了するまで長時間間隔での計算は中断することを条件とする。簡略化を図るため、平均はIIRフィルタを用いて計算してもよい。無呼吸または低呼吸イベントの発生および終了は、短時間間隔の閾値を上回る数から決定される。
【0009】
好ましい実施形態において、センサはフローセンサ、およびそこから呼吸気流を得るコントローラを備えてもよい。
一実施形態において、前記コントローラは、前記治療圧を、無呼吸/低呼吸状態ではない時に、ある量降下させるように動作可能であってもよい。前記量はゼロであってもよい。
【0010】
該方法および装置は、気道開存を測定するための「強制振動法」とともに有利に使用することもでき(上記は欧州特許第0 651 971 A1号、米国特許第5,704,345号として言及され、参照することによりその開示を本明細書に援用する)、CPAP圧は、例えば4Hzで1cmH
2Oの振幅を用いて調節され、4Hzで誘発した気流を測定し、気道の伝導率は、誘発した気流の振幅を圧力調節振幅で除すことにより計算され、伝導率が閾値より高い場合のみ治療圧が上昇されるように定められるという追加要件がある。
【0011】
本発明は、いびきまたは吸気流量‐時間曲線における変化など、上気道の不完全閉塞の指標に対応し、独立した圧力上昇と組み合わせることができる。そうすると、上気道の不完全閉塞に対応して圧力を上昇させることで、ほとんどの患者において上気道の先制的な制御を達成することが可能となり、気道閉鎖性無呼吸の発生を予防することができる。この組み合わせは、先制的な制御を達成することができない少数の患者においても、事前にいびきまたは吸気流量−時間曲線における変化が起こることなく、低CPAP圧で発生する気道閉鎖性無呼吸に対応し、CPAP圧を正しく上昇させる。また、この組み合わせは、高圧力によって誘発される気道開放性無呼吸に対応し、CPAP圧を誤って上昇させないようにする。
【0012】
以下、付属の図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明を具体的に表現する装置の略図を示す。
【
図3】換気量を計算するために使用される流量関数の絶対値の一部を示す。
【
図4】典型的な無呼吸とそれに続く正常呼吸、および長期平均と閾値の計算結果を示す。
【
図5】連続するいくつかの無呼吸に伴う呼吸パターンを示す。
【
図6】イベントの持続時間に対する1回換気量の低下のグラフを示す。
【
図7】本発明のアルゴリズムのフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、一実施形態によるCPAP装置の略図を示す。鼻マスクおよび/または顔マスクのどちらであってもよいマスク30は、患者の顔に密着して取り付けられる。新鮮な空気、または酸素富化空気の形態である呼吸可能な気体が、空気吸入口36を備えるモータ駆動タービンまたは送風機34に接続された柔軟なチューブ32を経由してマスク30に進入する。タービンのモータ38は、CPAP治療としてマスク30に供給される空気に加圧を開始し、その圧力を上昇または降下させるために、モータサーボユニット40により制御される。マスク30は、チューブ32とマスク30の分岐点近くにある排気口42も含む。
【0015】
マスク30と排気口42の間に位置するのは線形フロー抵抗素子44である。実際には、活用されない空間の体積を最小限に抑えるため、フロー抵抗素子44を含むマスク30から排気口42までの距離は非常に短い。フロー抵抗素子44のマスク側は、第1の小径管46を介してマスク圧変換器48、および差圧変換器50の入力に接続されている。フロー抵抗素子44のもう一方の側の圧力は、第2の小径管52を介して差圧変換器50のもう一方の入力に伝達される。
【0016】
マスク圧変換器48は、マスク圧に比例して電気信号を生成し、その信号は第1の増幅器53によって増幅され、マルチプレクサ/ADCユニット54およびモータサーボユニット40へと送られる。モータサーボユニット40に与えられた信号の機能は、実際のマスク静圧が、設定点の圧力に極めて近くなるように制御されることを確実にするための一形態のフィードバックである。
【0017】
線形フロー抵抗素子44を横切って感知された差圧は、差圧変換器50からの電気信号として出力され、第2の増幅器56によって増幅される。従って、第2の増幅器56からの出力信号は、マスク内気流の測定量を表す。線形フロー抵抗素子44は、柔軟な羽根絞りを使用して構築することができる。代わりに、固定開口部を使用することも可能であり、その場合は、線形化回路が第1の増幅器53に含まれるか、または表検索などの線形化ステップがコントローラ62の動作に含まれる。
【0018】
第2の増幅器56からの出力信号は、非呼吸性ノイズを排除するために、大抵は上限10Hzのローパスフィルタ58によりローパスフィルタをかけられる。第2の増幅器56の出力信号も、いびき信号を得るために、大抵30〜100Hzのバンド幅のバンドパスフィルタ60をかけることで帯域が制限される。ローパスフィルタ58およびバンドパスフィルタ60双方からの出力は、デジタイザーまたはADCユニット54に提供される。ADCユニット54からの、デジタル化された呼吸気流(FLOW)、いびき、およびマスク圧(P
mask)信号は、大抵は、プログラムメモリ5およびデータ処理記憶メモリを備えるマイクロプロセッサベースのデバイスから構成されるコントローラ62に送られる。
【0019】
コントローラ62は、圧力要求信号を出力し、該信号は、DACユニット64により電圧に変換され、モータサーボユニット40に送られる。この信号は、従って、CPAP療法の施行中に、タービンまたは送風機34によりマスク30に供給される、設定点の圧力P
set(t)を表す。コントローラ62は、多くの処理機能を実行するようにプログラムされている。
【0020】
マスク圧変換器48の代替として、マスクから中の空間へ、またはマスク30への進入点近くの空気送達チューブ32にアクセスできるように、直接圧力/電気固相変換器(表示なし)を取り付けることができる。
【0021】
さらに、フロー変換器または線形フロー抵抗素子44を、マスク30もしくはその近くに取り付けること、また、マスクもしくはその近くでマスク圧を測定することは不便である場合もある。フローおよび圧力変換器が空気圧発生器(タービンまたは送風機34である実施形態において)もしくはその近くに取り付けられた代替配置を
図2に示す。
【0022】
圧力発生器または送風機34の排気口で発生する圧力p
g(t)は、圧力変換器70により測定される。チューブ32を通る流量f
g(t)は、タービンまたは送風機34の出口に備わるフローセンサ72で測定される。チューブ32を通過する際の圧力損失は、チューブを通る流量f
g(t)および、例えば表検索によるチューブの圧力流量特性の情報から、圧力損失計算素子74において計算される。その後、第1の減算素子76において、f
g(t)からチューブの圧力損失を引くことにより、マスク内における圧力p
mが計算される。
【0023】
その後、加算素子78において、マスク内における望ましい設定圧力p
set(t)に、チューブ32を通過する際の圧力損失を加算して、圧力発生器の望ましい瞬間圧力を導き出す。好ましくは、加算素子78からの望ましい圧力がより正確に得られるように、圧力発生器のコントローラは圧力変換器70からの負のフィードバック入力を有する。排気口42を通る流量は、例えば表検索により、排気流量計算素子80において排気の圧力流量特性から、(第1の減算素子76において計算される)マスク内における圧力を用いて計算される。最後に、第2の減算素子82において、チューブ32を通る流量から排気口42を通る流量を引くことにより、マスク内の流量が計算される。
【0024】
移動平均換気量の計算
図3に図示するように、瞬間的または短期の換気量は、<
RAHzのローパスフィルタにかけた呼吸気流の絶対値のJ
ma秒移動平均の半分として計算される。瞬間換気量は、低呼吸の検出に必要である。低呼吸は10秒という短い期間であり得るため、瞬間換気量が計算される時間枠は10秒未満であるべきである。逆に、1回の呼吸は大抵5秒である。よって、瞬間換気量は少なくとも5秒間に渡って計算されるべきである。従って、J
maに対する好ましい値は8秒である。瞬間換気量は、移動窓法を用いて、常に呼吸サイクルにおける時点に関わらず定義される。流量信号の絶対値の半分をとるということは、吸気および呼気流量の平均をとることに等しい。換気量の測定値に含まれる非呼吸性ノイズ(いびき、心臓から発生する気流)を回避するための好ましい<
RAの値は1Hzである。
【0025】
好ましい長期移動平均換気量は次のように計算される。
マスク着脱からマスク装着までの各移行を7.5L/minに初期化する。
向こう2分間、20秒の時定数で流量にローパスフィルタをかける。
その後、100秒の時定数で流量にローパスフィルタをかけるが、無呼吸/低呼吸(後に決定される)の間は長期換気量の更新を中止する。
【0026】
100秒の時定数は、通常の無呼吸または低呼吸の持続時間(20〜40秒)と比較すると長く選択されているが、換気量における真の変化、例えば睡眠状態(何分間も)と比較すると短い。ゼロではなく、7.5L/分(通常の正常値)に初期化することで、正常呼吸の場合に、長期平均がより迅速に真の値に到達する。最初の2分間で低い時定数を用いることも、正しい値をより迅速に求めるのに役立つ。
【0027】
無呼吸の検出
図4は、正常呼吸24回の期間に続く典型的な15秒間の1回の無呼吸を示す。本図面において、破線は長期平均換気量を示す。点線は、長期平均流量の25%に設定した閾値である。実線は、2秒移動平均流量であり、無呼吸中は非常に小さくなり閾値を下回る。
【0028】
図5に示すように、無呼吸が何回か発生する場合は、長期平均換気量が影響を受ける。従って、本発明において、閾値を下回る短期換気量が検出される場合、すなわち無呼吸が示唆される場合、長期換気量の平均化は中断される。
【0029】
低呼吸の検出
短期換気量が長期平均毎分換気量(L/秒)の0.5倍を下回る場合、および換気量が少なくとも10秒間で50%減少した場合、低呼吸として判定される。数学的には、この定義は10秒の矩形枠で呼吸波形を畳み込むことを示し、原則として秒未満まで低呼吸の長さを正確に測定することが不可能になる。従って、
図6に示すように、イベントの持続時間に対する1回換気量の低下のグラフ上で、低呼吸として判定される領域、低呼吸として判定されない領域、およびスプレッドシート上のシミュレーションに基づく形を有する「無関係」領域が存在する。
【0030】
無呼吸/低呼吸の終了
無呼吸/低呼吸の終了を決定するために、短期換気量のいくつのデータポイントが閾値を上回るまたは下回るかの判定が維持される。そして、定期的に判定がチェックされる。閾値を下回るデータポイントの数が、閾値を上回る数よりも多い場合は、無呼吸が続いていると推察される。そうでない場合は、無呼吸/低呼吸イベントは終了したとみなされる。
【0031】
無呼吸/低呼吸検出のステップ
本発明の新しいアルゴリズムの論理図を
図7に図示する。そのステップは次の通りである。
1.流量の絶対値を用いて、IIRフィルタを使用して短期換気量および長期換気量を計算する。無呼吸が検出される場合、また低呼吸が10秒以上検出される場合は、長期換気量を更新しない。
2.短期換気量<長期換気量/4の場合、無呼吸検出を開始、持続時間=2秒に初期化。
3.短期換気量<長期換気量/2の場合、低呼吸検出を開始、持続時間=2秒に初期化。
4.向こう8秒間、無呼吸/低呼吸データが各閾値を上回るまたは下回るかを記録する。
5.8秒後、閾値を下回る数が上回る数より多い場合は、無呼吸および/または低呼吸の状態に入る。
6.その後、4秒間ごとに閾値を上回るまたは下回るか(および増大する無呼吸の持続時間)を記録する。
7.各期間の終わりに、閾値を下回るデータの数が閾値+10を上回るデータの数より多いかをチェックする。
8.多い場合は、無呼吸/低呼吸を記録して正常な状態に入り、そうでない場合は続行する。
【0032】
2段階式CPAP治療またはマスク圧が1回の呼吸内で調節される治療など、より複雑なCPAPの変形も、本明細書に記載する方法を用いて監視および/または制御することができる。
【符号の説明】
【0033】
30…マスク、32…空気送達チューブ、34…送風機、36…空気吸入口、38…モータ、40…モータサーボユニット、42…排気口、44…線形フロー抵抗素子、46…小径管、48…マスク圧変換器、50…差圧変換器、52…小径管、53…増幅器、54…ユニット、56…増幅器、58…ローパスフィルタ、60…バンドパスフィルタ、62…コントローラ、64…ユニット、70…圧力変換器、72…フローセンサ、74…圧力損失計算素子、76…減算素子、78…加算素子、80…排気流量計算素子、82…減算素子。