(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る作業車両1の側面図である。本実施形態において、作業車両1は、ホイールローダである。
図1に示すように、作業車両1は、車体フレーム2と、作業機3と、走行輪4,5と、運転室6とを備えている。作業車両1は、走行輪4,5が回転駆動されることにより走行する。作業車両1は、作業機3を用いて掘削等の作業を行うことができる。
【0024】
車体フレーム2には、作業機3および走行輪4が取り付けられている。作業機3は、作業機ポンプ23(
図2参照)からの作動油によって駆動される。作業機3は、ブーム11とバケット12とを有する。ブーム11は、車体フレーム2に装着されている。作業機3は、リフトシリンダ13とバケットシリンダ14とを有している。リフトシリンダ13とバケットシリンダ14とは、油圧シリンダである。リフトシリンダ13の一端は車体フレーム2に取り付けられている。リフトシリンダ13の他端はブーム11に取り付けられている。リフトシリンダ13が作業機ポンプ23からの作動油によって伸縮することによって、ブーム11が上下に揺動する。バケット12は、ブーム11の先端に取り付けられている。バケットシリンダ14の一端は車体フレーム2に取り付けられている。バケットシリンダ14の他端はベルクランク15を介してバケット12に取り付けられている。バケットシリンダ14が、作業機ポンプ23からの作動油によって伸縮することによって、バケット12が上下に揺動する。
【0025】
車体フレーム2には、運転室6及び走行輪5が取り付けられている。運転室6は、車体フレーム2上に載置されている。運転室6内には、オペレータが着座するシートや、後述する操作装置などが配置されている。車体フレーム2は、前フレーム16と後フレーム17とを有する。前フレーム16と後フレーム17とは互いに左右方向に揺動可能に取り付けられている。
【0026】
前フレーム16には、作業機3が取り付けられている。後フレーム17には、運転室6が載置されている。また、後フレーム17には、後述するエンジン21及びトランスミッション24などの装置が搭載されている。トランスミッション24は、エンジン21の前方に位置している。
【0027】
作業車両1は、ステアリングシリンダ18を有している。ステアリングシリンダ18は、前フレーム16と後フレーム17とに取り付けられている。ステアリングシリンダ18は、油圧シリンダである。ステアリングシリンダ18が、後述するステアリングポンプ30からの作動油によって伸縮することによって、作業車両1の進行方向が左右に変更される。
【0028】
図2は、作業車両1の構成を示す模式図である。
図2に示すように、作業車両1は、エンジン21、作業機ポンプ23、トランスミッションポンプ29、ステアリングポンプ30、トランスミッション24、走行装置25などを備えている。
【0029】
エンジン21は、例えばディーゼルエンジンである。エンジン21は、走行装置25、作業機ポンプ23、トランスミッションポンプ29、ステアリングポンプ30などを駆動するための駆動力を発生させる。
【0030】
作業機ポンプ23とトランスミッションポンプ29とステアリングポンプ30とは、油圧ポンプである。作業機ポンプ23とトランスミッションポンプ29とステアリングポンプ30とは、エンジン21からの駆動力によって駆動される。
【0031】
作業機ポンプ23は、可変容量型の油圧ポンプである。作業機ポンプ23から吐出された作動油は、作業機制御弁41を介して、上述したリフトシリンダ13とバケットシリンダ14とに供給される。
【0032】
トランスミッションポンプ29は、固定容量型の油圧ポンプである。トランスミッションポンプ29から吐出された作動油は、クラッチ制御弁32を介して、後述するトランスミッション24の各種のクラッチに供給される。
【0033】
ステアリングポンプ30は、可変容量型の油圧ポンプである。ステアリングポンプ30から吐出された作動油は、ステアリング制御弁43を介して、上述したステアリングシリンダ18に供給される。
【0034】
トランスミッション24は、エンジン21からの駆動力を走行装置25に伝達する。トランスミッション24は、エンジン21からの駆動力を変速して出力する。トランスミッション24の構成については後に詳細に説明する。
【0035】
走行装置25は、エンジン21によって駆動される。走行装置25は、伝達軸46と、アクスルシャフト45と、上述した走行輪5とを有する。伝達軸46は、トランスミッション24からの駆動力をアクスルシャフト45に伝達する。アクスルシャフト45は、車幅方向に延びており、走行輪5に接続されている。アクスルシャフト45は、トランスミッション24からの駆動力を走行輪5に伝達する。これにより、走行輪5が回転する。
【0036】
次に、トランスミッション24の構成について詳細に説明する。トランスミッション24は、入力軸61と、第1動力取り出し機構22(以下、「第1PTO22」と呼ぶ)と、第2動力取り出し機構27(以下、「第2PTO27」と呼ぶ)と、歯車機構62と、出力軸63と、第1モータMG1と、第2モータMG2と、第3モータMG3と、を備えている。
【0037】
入力軸61には、エンジン21からの回転が入力される。歯車機構62は、入力軸61の回転を出力軸63に伝達する。出力軸63は、上述した走行装置25に接続されており、歯車機構62からの回転を走行装置25に伝達する。
【0038】
第1PTO22は、入力軸61に接続されており、エンジン21からの駆動力の一部を作業機ポンプ23及びトランスミッションポンプ29に伝達する。第2PTO27は、第1PTO22と並列に入力軸61に接続されており、エンジン21からの駆動力の一部をステアリングポンプ30に伝達する。
【0039】
歯車機構62は、エンジン21からの駆動力を伝達する機構である。歯車機構62は、モータMG1, MG2, MG3の回転速度の変化に応じて、入力軸61に対する出力軸63の回転速度比を変化させるように構成されている。歯車機構62は、FR切換機構65と、変速機構66とを有する。
【0040】
FR切換機構65は、前進用クラッチCFと、後進用クラッチCRと、各種のギアとを有している。前進用クラッチCFと後進用クラッチCRとは、油圧式クラッチである。前進用クラッチCFの接続及び切断と、後進用クラッチCRの接続及び切断とが切り換えられることによって、FR切換機構65から出力される回転の方向が切り換えられる。
【0041】
変速機構66は、中間軸67と、第1遊星歯車機構68と、第2遊星歯車機構69と、Hi/Lo切替機構70と、出力ギア71と、を有している。中間軸67は、FR切換機構65に連結されている。第1遊星歯車機構68及び第2遊星歯車機構69は、中間軸67と同軸上に配置されている。
【0042】
第1遊星歯車機構68は、第1サンギアS1と、複数の第1遊星ギアP1と、複数の第1遊星ギアP1を支持する第1キャリアC1と、第1リングギア部材Rm1を有している。第1サンギアS1は、中間軸67に連結されている。複数の第1遊星ギアP1は、第1サンギアS1と噛み合い、第1キャリアC1に回転可能に支持されている。第1キャリアC1の外周部には、第1キャリアギアGc1が設けられている。第1リングギア部材Rm1の内周には、第1リングギアR1が設けられている。第1リングギアR1は、複数の遊星ギアP1に噛み合うとともに回転可能である。また、第1リングギア部材Rm1の外周には、第1リング外周ギアGr1が設けられている。
【0043】
第2遊星歯車機構69は、第2サンギアS2と、複数の第2遊星ギアP2と、複数の第2遊星ギアP2を支持する第2キャリアC2と、第2リングギア部材Rm2とを有している。第2サンギアS2は第1キャリアC1に連結されている。複数の第2遊星ギアP2は、第2サンギアS2と噛み合い、第2キャリアC2に回転可能に支持されている。第2リングギア部材Rm2の内周には、第2リングギアR2が設けられている。第2リングギアR2は、複数の遊星ギアP2に噛み合うとともに回転可能である。第2リングギア部材Rm2の外周には、第2リング外周ギアGr2が設けられている。第2リング外周ギアGr2は出力ギア71に噛み合っており、第2リングギアR2の回転は出力ギア71を介して出力軸63に出力される。
【0044】
Hi/Lo切替機構70は、トランスミッション24における駆動力伝達経路を、車速が高い高速モード(Hiモード)と車速が低い低速モード(Loモード)で切り替えるための機構である。このHi/Lo切替機構70は、Hiモード時にオンにされる第2クラッチCHと、Loモード時にオンにされる第1クラッチCLとを有している。第2クラッチCHは、第1リングギアR1と第2キャリアC2とを接続又は切断する。また、第1クラッチCLは、第2キャリアC2と固定端72とを接続又は切断し、第2キャリアC2の回転を禁止又は許容する。
【0045】
なお、各クラッチCH,CLは油圧式クラッチであり、各クラッチCH,CLには、それぞれトランスミッションポンプ29からの作動油が供給される。各クラッチCH,CLへの作動油は、クラッチ制御弁32によって制御される。
【0046】
第1モータMG1と第2モータMG2と第3モータMG3とは、電気エネルギーによって駆動力を発生させる駆動モータとして機能する。また、第1モータMG1と第2モータMG2と第3モータMG3とは、入力される駆動力を用いて電気エネルギーを発生させるジェネレータとしても機能する。
【0047】
第1モータMG1の回転軸Sm1には第1モータギアGm1が固定されている。第1モータギアGm1は、第1キャリアギアGc1に噛み合っている。第2モータMG2の回転軸Sm2には第2モータギアGm2が固定されている。第2モータギアGm2は、第1リング外周ギアGr1に噛み合っている。
【0048】
第3モータMG3は、第1モータMG1と第2モータMG2とを補助する。変速機構66は、モータ切替機構73を有しており、モータ切替機構73は、第3モータMG3による補助対象を、第1モータMG1と第2モータMG2とに選択的に切り換える。
【0049】
詳細には、モータ切替機構73は、第1モータクラッチCm1と、第2モータクラッチCm2と、第1接続ギアGa1と、第2接続ギアGa2とを有する。第3モータMG3の回転軸Sm3には第3モータギアGm3が接続されており、第3モータギアGm3は、第1接続ギアGa1に噛み合っている。第1モータクラッチCm1は、第1モータMG1の回転軸Sm1と第1接続ギアGa1との接続及び切断を切り換える。第1接続ギアGa1は、第2接続ギアGa2と噛み合っている。第2モータクラッチCm2は、第2モータMG2の回転軸Sm2と第2接続ギアGa2との接続及び切断を切り換える。
【0050】
第1モータクラッチCm1と第2モータクラッチCm2とは油圧式のクラッチである。各モータクラッチCm1, Cm2には、それぞれトランスミッションポンプ29からの作動油が供給される。各モータクラッチCm1, Cm2への作動油は、クラッチ制御弁32によって制御される。
【0051】
第1モータクラッチCm1が接続され、且つ、第2モータクラッチCm2が切断されている状態では、第3モータギアGm3は、第1モータMG1を補助する。第2モータクラッチCm2が接続され、且つ、第1モータクラッチCm1が切断されている状態では、第3モータギアGm3は、第2モータMG2を補助する。
【0052】
第1モータMG1は第1インバータI1を介してキャパシタ64に接続されている。第2モータMG2は第2インバータI2を介してキャパシタ64に接続されている。第3モータMG3は第3インバータI3を介してキャパシタ64に接続されている。
【0053】
キャパシタ64は、モータMG1,MG2,MG3で発生するエネルギーを蓄えるエネルギー貯留部として機能する。すなわち、キャパシタ64は、各モータMG1,MG2,MG3の合計発電量が多いときに、各モータMG1,MG2,MG3で発電された電力を蓄電する。また、キャパシタ64は、各モータMG1,MG2,MG3の合計電力消費量が多いときに、電力を放電する。すなわち、各モータMG1,MG2,MG3は、キャパシタ64に蓄えられた電力によって駆動される。なお、キャパシタに代えてバッテリーが蓄電手段として用いられてもよい。
【0054】
作業車両1は、制御部31を備える。制御部31は、モータMG1,MG2,MG3への指令トルクを示す指令信号を各インバータI1, I2, I3に与える。また、制御部31は、各クラッチCF,CR,CH,CL,Cm1,Cm2のクラッチ油圧を制御するための指令信号をクラッチ制御弁32に与える。クラッチ制御弁32は、各クラッチCF,CR,CH,CL,Cm1,Cm2を制御するための複数のバルブを含む。
【0055】
制御部31からの指令信号によってモータMG1,MG2,MG3及びクラッチCF,CR,CH,CL,Cm1,Cm2が制御されることにより、トランスミッション24の変速比及び出力トルクが制御される。以下、トランスミッション24の動作について説明する。
【0056】
ここでは、エンジン21の回転速度を一定に保ったまま車速が0から前進側に加速する場合におけるトランスミッション24の概略動作を、
図3及び
図4を用いて説明する。
図3は、各モードにおけるモータMG1,MG2,MG3の機能とクラッチの状態とを示している。Loモードは、L1モードとL2モードとを有する。Hiモードは、H1モードとH2モードとを有する。
図3において、“M”は、モータMG1,MG2,MG3が駆動モータとして機能していることを意味する。”G”は、モータMG1,MG2,MG3がジェネレータとして機能していることを意味する。”O”は、クラッチが接続状態であることを意味する。”X”は、クラッチが切断状態であることを意味する。
【0057】
図4は、車速に対する各モータMG1,MG2,MG3の回転速度を示したものである。エンジン21の回転速度が一定である場合には、車速は、トランスミッション24の回転速度比に応じて変化する。回転速度比は、入力軸61の回転速度に対する出力軸63の回転速度の比である。従って、
図4において車速の変化は、トランスミッション24の回転速度比の変化に一致する。すなわち、
図4は、各モータMG1,MG2,MG3の回転速度とトランスミッション24の回転速度比との関係を示している。
図4において、実線が第1モータMG1の回転速度、破線が第2モータMG2の回転速度、一点鎖線が第3モータMG3の回転速度を示している。
【0058】
車速が0以上V1未満の領域では、第1クラッチCLが接続され、第2クラッチCHが切断され、第1モータクラッチCm1が接続され、第2モータクラッチCm2が切断される(L1モード)。第2クラッチCHが切断されているので、第2キャリアC2と第1リングギアR1とが切断される。第1クラッチCLが接続されるので、第2キャリアC2が固定される。また、第1接続ギアGa1が第1モータMG1の回転軸Sm3に接続され、第2接続ギアGa2が第2モータMG2の回転軸Sm2から切断される。これにより、第3モータギアGm3と第1接続ギアGa1と第1モータクラッチCm1とを介して、第3モータMG3が第1モータMG1に接続される。また、第2モータクラッチCm2が切断されるので、第3モータMG3は第2モータMG2から切断される。
【0059】
このL1モードにおいては、エンジン21からの駆動力は、中間軸67を介して第1サンギアS1に入力され、この駆動力は第1キャリアC1から第2サンギアS2に出力される。一方、第1サンギアS1に入力された駆動力は第1遊星ギアP1から第1リングギアR1に伝達され、第1リング外周ギアGr1及び第2モータギアGm2を介して第2モータMG2に出力される。第2モータMG2は、このL1モードにおいては、主としてジェネレータとして機能しており、第2モータMG2によって発電された電力の一部は、キャパシタ64に蓄電される。
【0060】
また、L1モードにおいては、第1モータMG1及び第3モータMG3は、主として電動モータとして機能する。第1モータMG1及び第3モータMG3の駆動力は、第1モータギアGm1→第1キャリアギアGc1→第1キャリアC1の経路で第2サンギアS2に出力される。以上のようにして第2サンギアS2に出力された駆動力は、第2遊星ギアP2→第2リングギアR2→第2リング外周ギアGr2→出力ギア71の経路で出力軸63に伝達される。
【0061】
車速がV1以上V2未満の領域では、第1クラッチCLは接続され、第2クラッチCHは切断され、第1モータクラッチCm1が切断され、第2モータクラッチCm2が接続される(L2モード)。従って、第2接続ギアGa2が第2モータMG2の回転軸Sm2に接続され、第1接続ギアGa1が第1モータMG1の回転軸Sm1から切断されている。これにより、第3モータギアGm3と第1接続ギアGa1と第2接続ギアGa2と第2モータクラッチCm2とを介して、第3モータMG3が第2モータMG2に接続される。また、第1モータクラッチCm1が切断されるので、第3モータMG3は第1モータMG1から切断される。
【0062】
このL2モードにおいては、エンジン21からの駆動力は、中間軸67を介して第1サンギアS1に入力され、この駆動力は第1キャリアC1から第2サンギアS2に出力される。一方、第1サンギアS1に入力された駆動力は第1遊星ギアP1から第1リングギアR1に伝達され、第1リング外周ギアGr1及び第2モータギアGm2を介して第2モータMG2に出力される。また、駆動力は、第2モータギアGm2から第2モータクラッチCm2と第2接続ギアGa2と第1接続ギアGa1と第3モータギアGm3を介して、第3モータMG3に出力される。第2モータMG2及び第3モータMG3は、このL2モードにおいては、主としてジェネレータとして機能しており、第2モータMG2及び第3モータMG3によって発電された電力の一部は、キャパシタ64に蓄電される。
【0063】
また、L2モードにおいては、第1モータMG1は、主として電動モータとして機能する。第1モータMG1の駆動力は、第1モータギアGm1→第1キャリアギアGc1→第1キャリアC1の経路で第2サンギアS2に出力される。以上のようにして第2サンギアS2に出力された駆動力は、第2遊星ギアP2→第2リングギアR2→第2リング外周ギアGr2→出力ギア71の経路で出力軸63に伝達される。
【0064】
車速がV2以上V3未満の領域では、第1クラッチCLが切断され、第2クラッチCHが接続され、第1モータクラッチCm1が切断され、第2モータクラッチCm2が接続される(H1モード)。このH1モードでは、第2クラッチCHが接続されているので、第2キャリアC2と第1リングギアR1とが接続される。また、第1クラッチCLが切断されるので、第2キャリアC2が解放される。従って、第1リングギアR1と第2キャリアC2の回転速度とは一致する。また、第2接続ギアGa2が第2モータMG2の回転軸Sm2に接続され、第1接続ギアGa1が第1モータMG1の回転軸Sm1から切断されている。これにより、第3モータギアGm3と第1接続ギアGa1と第2接続ギアGa2と第2モータクラッチCm2とを介して、第3モータMG3が第2モータMG2に接続される。また、第1モータクラッチCm1が切断されるので、第3モータMG3は第1モータMG1から切断される。
【0065】
このH1モードでは、エンジン21からの駆動力は第1サンギアS1に入力され、この駆動力は第1キャリアC1から第2サンギアS2に出力される。また、第1サンギアS1に入力された駆動力は、第1キャリアC1から第1キャリアギアGc1及び第1モータギアGm1を介して第1モータMG1に出力される。このH1モードでは、第1モータMG1は主としてジェネレータとして機能するので、この第1モータMG1で発電された電力の一部は、キャパシタ64に蓄電される。
【0066】
また、H1モードでは、第2モータMG2と第3モータMG3とは、主として電動モータとして機能する。第3モータMG3の駆動力は、第3モータギアGm3から第1接続ギアGa1と第2接続ギアGa2と第2モータクラッチCm2とを介して第2モータMG2の回転軸Sm2に伝達される。そして、第2モータMG2の駆動力と第3モータMG3の駆動力とが、第2モータギアGm2→第1リング外周ギアGr1→第1リングギアR1→第2クラッチCHの経路で第2キャリアC2に出力される。以上のようにして第2サンギアS2に出力された駆動力は第2遊星ギアP2を介して第2リングギアR2に出力されるとともに、第2キャリアC2に出力された駆動力は第2遊星ギアP2を介して第2リングギアR2に出力される。このようにして第2リングギアR2で合わさった駆動力が、第2リング外周ギアGr2及び出力ギア71を介して出力軸63に伝達される。
【0067】
車速がV3以上V4未満の領域では、第1クラッチCLが切断され、第2クラッチCHが接続され、第1モータクラッチCm1が接続され、第2モータクラッチCm2が切断される(H2モード)。このH2モードでは、第1接続ギアGa1が第1モータMG1の回転軸Sm3に接続され、第2接続ギアGa2が第2モータMG2の回転軸Sm2から切断される。これにより、第3モータギアGm3と第1接続ギアGa1と第1モータクラッチCm1とを介して、第3モータMG3が第1モータMG1に接続される。また、第2モータクラッチCm2が切断されるので、第3モータMG3は第2モータMG2から切断される。
【0068】
このH2モードでは、エンジン21からの駆動力は第1サンギアS1に入力され、この駆動力は第1キャリアC1から第2サンギアS2に出力される。また、第1サンギアS1に入力された駆動力は、第1キャリアC1から第1キャリアギアGc1及び第1モータギアGm1を介して第1モータMG1及び第3モータGm3に出力される。このH2モードでは、第1モータMG1及び第3モータGm3は主としてジェネレータとして機能するので、この第1モータMG1及び第3モータGm3で発電された電力の一部は、キャパシタ64に蓄電される。
【0069】
また、H2モードでは、第2モータMG2は主として電動モータとして機能する。第2モータMG2の駆動力は、第2モータギアGm2→第1リング外周ギアGr1→第1リングギアR1→第2クラッチCHの経路で第2キャリアC2に出力される。以上のようにして第2サンギアS2に出力された駆動力は第2遊星ギアP2を介して第2リングギアR2に出力されるとともに、第2キャリアC2に出力された駆動力は第2遊星ギアP2を介して第2リングギアR2に出力される。このようにして第2リングギアR2で合わさった駆動力が、第2リング外周ギアGr2及び出力ギア71を介して出力軸63に伝達される。
【0070】
なお、以上は前進駆動時の説明であるが、後進駆動時においても同様の動作となる。
【0071】
次に、トランスミッション24の構造について説明する。
図5は、トランスミッション24の断面の一部を示す図である。
図5に示すように、トランスミッション24は、ハウジング28を有する。ハウジング28は、第1遊星歯車機構68と第2遊星歯車機構69とを収容している。第2遊星歯車機構69は、第1遊星歯車機構68と同心に配置されている。第2遊星歯車機構69は、第1遊星歯車機構68の軸線方向(一点鎖線Ax1参照)に第1遊星歯車機構68から離れて配置されている。
【0072】
第1サンギアS1は中間軸67に連結されている。第1遊星ギアP1は、第1サンギアS1の径方向外方に配置されている。第1キャリアC1は、第1支持ピン74を介して第1遊星ギアP1を回転可能に支持している。第1リングギア部材Rm1は、第1キャリアC1及び第1遊星ギアP1の径方向外方に位置している。第1リングギアR1は、第1遊星ギアP1の径方向外方に配置されている。
【0073】
第2サンギアS2は、第1キャリアC1に連結されている。第2サンギアS2の径方向外方には第2遊星ギアP2が配置されている。第2遊星ギアP2は、第2支持ピン75を介して第2キャリアC2に回転可能に支持されている。第2リングギア部材Rm2は、第2キャリアC2及び第2遊星ギアP2の径方向外方に位置している。第2リングギアR2は、第2遊星ギアP2及び第2キャリアC2の径方向外方に配置されている。
【0074】
なお、本実施形態において径方向外方とは、径方向において第1遊星歯車機構68及び第2遊星歯車機構69の軸線Ax1から離れる方向を意味するものとする。また、径方向内方とは、径方向において第1遊星歯車機構68及び第2遊星歯車機構69の軸線Ax1に近づく方向を意味するものとする。
【0075】
第1クラッチCLと第2クラッチCHとは、軸線方向において、第1遊星歯車機構68と第2遊星歯車機構69との間に配置される。第1クラッチCLは、軸線方向において、第2クラッチCHと第2遊星歯車機構69との間に配置される。詳細には、第1クラッチCLは、軸線方向において、第2クラッチCHと第2遊星ギアP2との間に配置される。第2クラッチCHは、軸線方向において、第1クラッチCLと第1遊星歯車機構68との間に配置される。詳細には、第2クラッチCHは、軸線方向において、第1クラッチCLと第1遊星ギアP1との間に配置される。第2クラッチCHは、第1クラッチCLの外径よりも小さな外径を有する。第1クラッチCLは、第2キャリアC2の径方向外方に配置されている。第2クラッチCHは、第1リングギア部材Rm1の径方向外方に配置されている。
【0076】
第1クラッチCLは、複数のクラッチ板を有する。複数のクラッチ板は、軸線方向に並んで配置されている。複数のクラッチ板の一部は、固定端72に対して軸線方向に移動可能に取り付けられている。固定端72は、ハウジング28に固定されている。複数のクラッチ板の残りは、第2キャリアC2に対して軸線方向に移動可能に且つ第2キャリアC2と共に回転するように取り付けられている。
【0077】
トランスミッション24は、第1ピストン52と戻しバネ53とを有する。第1ピストン52は、第1クラッチCLのクラッチ板を押圧することで第1クラッチCLを接続するように構成される。第1ピストン52は、第1クラッチCLと軸線方向に並び、且つ、第2クラッチCHの径方向外方に配置されている。第1ピストン52の一部は、第1遊星歯車機構68の径方向外方に配置されている。詳細には、第1ピストン52の一部は、第1遊星歯車機構68の第1遊星ギアP1の径方向外方に配置されている。
【0078】
戻しバネ53は、第1クラッチCLと軸線方向に並び、且つ、第2クラッチCHの径方向外方に配置されている。戻しバネ53は、第1ピストン52を第1クラッチCLから離れるように付勢する。戻しバネ53はコイルスプリングである。
【0079】
第2クラッチCHは、複数のクラッチ板を有する。複数のクラッチ板は、軸線方向に並んで配置されている。複数のクラッチ板の一部は、第2キャリアC2に対して軸線方向に移動可能に且つ第2キャリアC2と共に回転するように、第2キャリアC2に取り付けられている。複数のクラッチ板の残りは、第1リングギア部材Rm1に対して軸線方向に移動可能に且つ第1リングギア部材Rm1と共に回転するように設けられている。
【0080】
詳細には、第1リングギア部材Rm1は、第1リングギア筒部58と第2リングギア筒部59とを有する。第1リングギア筒部58の内周には、上述した第1リングギアR1が設けられている。第2リングギア筒部59の外径は、第1リングギア筒部58の外径よりも小さい。第2リングギア筒部59は、第2キャリアC2の径方向内方に配置されている。第2クラッチCHの複数のクラッチ板の一部は、第2リングギア筒部59の外周に取り付けられている。
【0081】
なお、上述した第1リング外周ギアGr1の外径は、第1リングギア筒部58の外径よりも大きい。第1リング外周ギアGr1の外径は、第2キャリアC2の外径よりも大きい。第1ピストン52は、第1リングギア筒部58の径方向外方に位置している。第1ピストン52は、第1リング外周ギアGr1と軸線方向に並んでいる。
【0082】
トランスミッション24は、第2ピストン85を有する。第2ピストン85は、第2クラッチCHの複数のクラッチ板を押圧することで第2クラッチCHを接続するように構成される。第2ピストン85は、第2クラッチCHと軸線方向に並んで配置されている。第2ピストン85は、第1クラッチCLの径方向内方に配置される。第2ピストン85は、第2キャリアC2の径方向内方に配置されている。
【0083】
次に、第2キャリアC2の構造について説明する。
図6は、第2キャリアC2の断面図である。
図6に示すように、第2キャリアC2は、円板部54と、筒部55と、遊星ギア配置部56と、を有する。
【0084】
円板部54は、第1遊星歯車機構68及び第2遊星歯車機構69の軸心と同心に配置される。円板部54は、第2遊星ギアP2の第2支持ピン75の一端(以下、「第1端部751」と呼ぶ)を支持するための複数の第1支持部541を有する。第1支持部541は、円板部54に設けられた孔である。第1支持部541は、円板部54を軸線方向に貫通している。第1支持部541には、第2支持ピン75の第1端部751が挿入される。円板部54は、円板部54の中心において円板部54を貫通する中心孔542を有する。
【0085】
詳細には、円板部54は、円板本体部81と、第1フランジ部82と、第2フランジ部83と、第3筒部84とを有する。円板本体部81は、上述した第1支持部541を有する。第1フランジ部82は、円板本体部81から第1遊星歯車機構68に向かって軸線方向に突出している。第1フランジ部82には、第2キャリアC2を支持する第1軸受けB1(
図5参照)が取り付けられる。第1フランジ部82の外径は、第2フランジ部83の外径よりも小さい。
【0086】
第2フランジ部83は、第1遊星歯車機構68に向かう方向と反対の方向に向かって円板本体部81から軸線方向に突出している。第2フランジ部83には、第2キャリアC2を支持する第2軸受けB2(
図5参照)が取り付けられる。第2フランジ部83は、第1支持部541よりも内径側に配置されている。
【0087】
第3筒部84は、第1遊星歯車機構68に向かう方向と反対の方向に向かって円板本体部81から軸線方向に突出している。第3筒部84は、円板本体部81と同心に配置されている。第3筒部84は、円板本体部81と別体であり、ボルト等の固定部材86によって円板本体部81に固定されている。上述した中心孔542は、円板本体部81に設けられる第1孔部811と、第3筒部84に設けられる第2孔部841とを有する。第1孔部811と第2孔部841とは同心に配置されており、互いに連通している。第1孔部811には、中間軸67(
図5参照)の端部が挿入される。第2孔部841には、軸部材57が挿入される。軸部材57の内部には作動油を供給するための第1供給流路Sp1と第2供給流路Sp2とが設けられている。
【0088】
筒部55は、円板部54の軸線方向に円板部54から離れて配置される。筒部55は、円板部54と同心に配置される。筒部55は、第1筒部87と第2筒部88とを有する。第1筒部87と第2筒部88とは、別体である。
【0089】
第1筒部87は、遊星ギア配置部56に接続されている。第1筒部87は、軸線方向に垂直な第1端面871と第2端面872とを有する。第1筒部87は、複数の第2支持部873とピストン取付部874とを含む。第2支持部873は、第2遊星ギアP2の第2支持ピン75の他端(以下、「第2端部752」と呼ぶ)を支持する。第2支持部873は、第1端面871に設けられている。第2支持部873は、第1端面871から凹んだ形状を有する。第2端部752は、第2支持部873に挿入される。ピストン取付部874には、第2ピストン85が取り付けられる。ピストン取付部874は、第2端面872に設けられる。ピストン取付部874は、第2端面872から凹んだ形状を有する。第2ピストン85の端部が、ピストン取付部874に挿入される。ピストン取付部874と第2ピストン85の端部との間には、油室851が形成される。
【0090】
第2筒部88は、第1筒部87と同心に配置されている。第2筒部88は、第1筒部87に接続される。第2筒部88は、第1筒部87の径方向外方に配置される。第2筒部88の内周は、第1筒部87の外周と接続されている。軸線方向においては、第2筒部88は、第1筒部87よりも長い。第2筒部88は、軸線方向において第1遊星歯車機構68に向かう方向に第1筒部87の第2端面872から突出している。第2筒部88は、第1クラッチ取付部881と第2クラッチ取付部882とを有する。第2筒部88の径方向内方には、第2ピストン85が配置される。
【0091】
第1クラッチ取付部881には、第1クラッチCLが取り付けられる。第2クラッチ取付部882には、第2クラッチCHが取り付けられる。第1クラッチ取付部881は、第2筒部88の外周に設けられる。詳細には、第1クラッチ取付部881は、第1クラッチCLの複数のクラッチ板が取り付けられ、軸線方向に延びる複数の溝(スプライン)である。第2クラッチ取付部882は、第2筒部88の内周に設けられる。詳細には、第2クラッチ取付部882は、第2クラッチCHの複数のクラッチ板が取り付けられ、軸線方向に延びる複数の溝(スプライン)である。第1クラッチ取付部881は、第1筒部87の径方向外方に配置される。第2クラッチ取付部882は、第1筒部87の第2端面872と軸線方向に並んでいる。
【0092】
遊星ギア配置部56は、軸線方向において円板部54と筒部55との間に配置される。詳細には、遊星ギア配置部56は、軸線方向において円板本体部81と第1筒部87との間に配置される。遊星ギア配置部56は、第2遊星ギアP2が配置される空間561と、円板部54と筒部55とを連結する連結部562とを有する。上述した第1フランジ部82は、遊星ギア配置部56の径方向内方に配置されている。
【0093】
第2キャリアC2は、第1作動油流路91と第2作動油流路92とを有する。第1作動油流路91は、第1クラッチCLを潤滑するための作動油を第1クラッチ取付部881に供給するための流路である。第2作動油流路92は、第2ピストン85を駆動するための作動油をピストン取付部874に供給するための流路である。
【0094】
第1作動油流路91は、円板部54と筒部55との内部に設けられる。第1作動油流路91は、円板部54に設けられる第1入口911を有する。第1入口911は、円板部54の中心孔542の内面に設けられる。詳細には、第1入口911は、円板本体部81の第1孔部811に設けられている。
【0095】
第1作動油流路91は、第1上流側流路912と第1下流側流路913とを有する。第1上流側流路912は、円板部54の内部に設けられ、第1入口911と第1支持部541とを接続する。第1下流側流路913は、筒部55の内部に設けられる。第1下流側流路913は、第2支持部873と第1クラッチ取付部881とを接続する。第2支持ピン75の内部には作動油の流路753が設けられている。第2支持ピン75の流路753は、第1上流側流路912と第1下流側流路913とを接続している。クラッチを潤滑するための作動油は、第1入口911から第1作動油流路91を通って第1クラッチ取付部881に供給される。
【0096】
第1下流側流路913は、接続流路918と、第1流路914と、集合流路915と、複数の第2流路916と、複数の出口917と、を有する。なお、
図6においては、複数の第2流路916の1つのみに符号916を付して他は省略している。また、複数の出口917の1つのみに符号917を付して他は省略している。
【0097】
接続流路918は、第2支持部873に接続されている。接続流路918は、軸線方向に延びている。接続流路918の直径は、第1流路914の直径よりも大きい。第1流路914は、接続流路918から筒部55の径方向に延びる。第1流路914は、第2支持部873と集合流路915とを接続している。集合流路915は、筒部55の周方向に延びる。集合流路915は、第2筒部88の内周に設けられている。複数の第2流路916は、集合流路915と複数の出口917とを接続する。複数の出口917は、第2筒部88の外周に設けられている。複数の出口917は、第1クラッチ取付部881に接続される。
【0098】
第2作動油流路92は、円板部54と遊星ギア配置部56の連結部562と筒部55との内部に設けられる。第2作動油流路92は、円板部54に設けられる第2入口921を有する。第2入口921は、円板部54の中心孔542の内面に設けられる。詳細には、第2入口921は、第3筒部84の第2孔部841に設けられている。従って、第1入口911と第2入口921とは、第2キャリアC2の軸線方向に互いに離れて配置されている。第2ピストン85を駆動するための作動油は、第2入口921から第2作動油流路92を通ってピストン取付部874に供給される。
【0099】
第2作動油流路92は、第2上流側流路922と、第2下流側流路923と、中間流路924と、を有する。第2上流側流路922は、円板部54の内部に設けられる。第2上流側流路922は、第2入口921に接続される。第2下流側流路923は、筒部55の内部に設けられる。第2下流側流路923は、ピストン取付部874に接続される。すなわち、第2下流側流路923は、ピストン取付部874と第2ピストン85との間の油室851に接続される。中間流路924は、連結部562の内部に設けられる。中間流路924は、第2上流側流路922と第2下流側流路923とを接続する。
【0100】
なお、第1上流側流路912と第2上流側流路922とは、共に第2キャリアC2の外周に達している。第2上流側流路922は、第2キャリアC2の外周においてプラグ89によって閉じられている。従って、第2キャリアC2の外周からドリル加工等の加工によって第1上流側流路912と第2上流側流路922とを形成しても、第2上流側流路922から作動油が漏れることを防止することができる。これにより、第2ピストン85の動作への影響を抑えることができる。一方、第1上流側流路912は、プラグによって閉じられなくてもよい。第1上流側流路912から作動油の漏れは、第2支持ピン75によって抑えられる。また、第1上流側流路912を流れる作動油は、潤滑に用いられるものであり、第2キャリアC2の外部に漏れてもハウジング28内に留まるため、問題は生じない。
【0101】
上述したように、第2孔部841には、軸部材57が挿入される。軸部材57の第1供給流路Sp1と第2供給流路Sp2とは互いに接続されておらず、独立して設けられている。軸部材57は第1出口571と第2出口572とを有する。第1出口571は、第1供給流路Sp1に接続されている。第1出口571は、軸部材57の軸線方向における端面に設けられている。第2出口572は、第2供給流路Sp2に接続されている。第2出口572は、軸部材57の外周に設けられている。軸部材57が第2孔部841に取り付けられることで、第1出口571が第1孔部811内の空間を介して第1入口911に接続される。また、第2出口572が、第2入口921と接続される。クラッチの潤滑に適した圧力の作動油が、第1供給流路Sp1を介して第1入口911に供給される。また、第2ピストン85の駆動を制御するための圧力の作動油が、第2供給流路Sp2を介して第2入口921に供給される。
【0102】
本実施形態にかかる作業車両1は、次の特徴を有する。
【0103】
第2キャリアC2は、第1クラッチCLと第2クラッチCHとを支持するだけではなく、第2ピストン85も支持する。このため、第2キャリアC2の近傍に第2キャリアC2とは別の第2ピストン85の支持構造が設けられる場合と比べて、トランスミッション24を小型化することができると共に、トランスミッション24の構造を簡素化することができる。
【0104】
また、第2キャリアC2がピストン取付部874を有するので、第2ピストン85を駆動するための第2作動油流路92を第2キャリアC2の内部に設けることができる。さらに、第2キャリアC2が第1クラッチ取付部881を有するので、第1クラッチCLを潤滑するための第1作動油流路91を第2キャリアC2の内部に設けることができる。これにより、トランスミッション24の構造を簡素化することができ、トランスミッション24の組立性を向上させることができる。
【0105】
さらに、第1入口911と第2入口921とは共に円板部54に設けられている。すなわち、第1入口911と第2入口921とは、第1クラッチCLと第2クラッチCHと第2ピストン85とが取り付けられる筒部55ではなく、遊星ギア配置部56に対して、その反対側に配置される。このため、第1クラッチCL、第2クラッチCH、第2ピストン85、第2サンギアS2、或いは、第1キャリアC1などの部品との干渉を避けて、第1入口911と第2入口921とに作動油を供給するため軸部材57を容易に配置することができる。
【0106】
第1入口911と第2入口921とは、第2キャリアC2の軸線方向に互いに離れて配置される。これにより、第1入口911と第2入口921とに別系統の油圧回路を容易に接続することができる。すなわち、第1クラッチCLの潤滑のための油圧回路と、第2ピストン85の駆動のための油圧回路とを、それぞれ容易に第1入口911と第2入口921とに接続することができる。
【0107】
第1入口911と第2入口921とは、円板部54の中心孔542の内面に設けられる。このため、軸部材57を中心孔542に通すことで、軸部材57内の第1供給流路Sp1及び第2供給流路Sp2を介して、第1入口911と第2入口921とに作動油を供給することができる。
【0108】
第1作動油流路91において、第1流路914は、筒部55の径方向に延びているので、第2キャリアC2の遠心力によって、作動油が効率よく集合流路915に送られる。作動油は、集合流路915において拡散されて複数の第2流路916に送られる。そして、複数の第2流路916のそれぞれから複数の出口917を通って作動油が第1クラッチCLに供給される。これにより、第1クラッチCLの広範囲に均一に作動油を供給することができる。
【0109】
ピストン取付部874は、第1筒部87の第2端面872に設けられる。第1クラッチ取付部881は、第2筒部88の外周に設けられる。第2クラッチ取付部882は、第2筒部88の内周に設けられる。このため、第1クラッチCL、第2クラッチCH、及び第2ピストン85をコンパクトに第2キャリアC2の周囲に配置することができる。
【0110】
第1筒部87と第2筒部88とは、別体である。このため、第2キャリアC2の形状が複雑化しても容易に製造することができる。
【0111】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0112】
作業車両は、ホイールローダに限らず、モータグレーダ或いは油圧ショベルなどの他の種類の車両であってもよい。
【0113】
本発明は、EMTに限らずHMTなどの他の種類のトランスミッションに適用されてもよい。例えば、HMTでは、第1モータMG1は、油圧モータ及び油圧ポンプとして機能する。第2モータMG2は、油圧モータ及び油圧ポンプとして機能する。また、第3モータMG3は、油圧モータ及び油圧ポンプとして機能する。第1モータMG1と第2モータMG2と第3モータMG3とは、可変容量型のポンプ/モータであり、制御部31によって容量が制御される。或いは、モータを備えないトランスミッションに本発明が適用されてもよい。
【0114】
トランスミッション24の構成は上記の実施形態の構成に限られない。例えば、2つの遊星歯車機構68,69の各要素の形状、連結、配置は、上記の実施形態の形状、連結、配置に限定されるものではない。遊星歯車機構の数は2つに限らず3つ以上であってもよい。モータの数は3つに限らず、2つ以下、或いは4つ以上であってもよい。例えば、第3モータMG3が省略されてもよい。
【0115】
第2キャリアC2の形状は、上記の実施形態の形状に限られず、変更されてもよい。第1作動油流路91及び/又は第2作動油流路92の配置が変更されてもよい。第1筒部87と第2筒部88とは一体であってもよい。
【課題】トランスミッションを小型化しつつ、トランスミッションの構造の複雑化を抑えて組立性を向上させることができるキャリア、遊星歯車機構、トランスミッション、及び作業車両を提供する。
【解決手段】キャリアC2は、円板部54と、筒部55と、遊星ギア配置部56と、第1作動油流路91と、第2作動油流路92と、を備える。筒部は、遊星ギアの支持ピンを支持するための第2支持部と、第1クラッチ取付部と、第2クラッチ取付部と、第2クラッチを駆動するためのピストンを取り付けるためのピストン取付部と、を有する。第1作動油流路は、円板部に設けられる第1入口を有する。第1クラッチを潤滑するための作動油は、第1入口から第1作動油流路を通り第1クラッチ取付部に供給される。第2作動油流路は、円板部に設けられる第2入口を有する。ピストンを駆動するための作動油は、第2入口から第2作動油流路を通りピストン取付部に供給される。