特許第5689166号(P5689166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5689166骨接合プレート成形具及び骨接合プレート成形方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5689166
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】骨接合プレート成形具及び骨接合プレート成形方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/58 20060101AFI20150305BHJP
   A61L 31/00 20060101ALI20150305BHJP
【FI】
   A61B17/58
   A61L31/00 B
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-501070(P2013-501070)
(86)(22)【出願日】2012年2月21日
(86)【国際出願番号】JP2012054123
(87)【国際公開番号】WO2012115103
(87)【国際公開日】20120830
【審査請求日】2013年7月19日
(31)【優先権主張番号】特願2011-34394(P2011-34394)
(32)【優先日】2011年2月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090608
【弁理士】
【氏名又は名称】河▲崎▼ 眞樹
(72)【発明者】
【氏名】奥野 政樹
(72)【発明者】
【氏名】柏谷 亮
(72)【発明者】
【氏名】灘 克也
【審査官】 井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−341595(JP,A)
【文献】 特表2002−505142(JP,A)
【文献】 特開昭63−074631(JP,A)
【文献】 特開平04−305436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/58
A61B 17/80
A61L 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の軸線又は平行な二本の軸線に沿って相対的に移動し得る二つの部材に、熱可塑性ポリマーからなる骨接合プレートを挟んで成形する三次元的曲面形状の成形面を備えた雄型と雌型を、軸線方向に対向させて取付け、かつ、二つの部材に握り部をそれぞれ設けて、握り部を手で握ることにより雄型と雌型で骨接合プレートを挟めるようにしたことを特徴とする骨接合プレート成形具。
【請求項2】
二つの部材に雄型と雌型をそれぞれ取替え可能に取付けたことを特徴とする請求項1に記載の骨接合プレート成形具。
【請求項3】
雄型と雌型の少なくとも一方が、骨接合プレートの成形時に骨接合プレートの片面全体を覆う広さの成形面を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の骨接合プレート成形具。
【請求項4】
二つの部材を軸線に沿って離反させる方向に付勢する付勢手段を備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の骨接合プレート成形具。
【請求項5】
二つの部材が、共通の縦軸線に沿って相対的に移動し得る、筒状部材とこの筒状部材に摺動可能に挿入された棒状部材であり、
棒状部材の上端と筒状部材の上端に握り部がそれぞれ設けられており、
雌型が筒状部材の下端部の片側に突き出して取替え可能に取付けられており、
雄型が、棒状部材の下端から筒状部材の縦割溝部を貫いて片側へ突き出すロッドに取替え可能に取付けられて、雌型と縦軸線の方向に対向している、
ことを特徴とする請求項1に記載の骨接合プレート成形具。
【請求項6】
状部材の外周面と筒状部材の内周面との隙間に圧縮コイルスプリングが配置されて、棒状部材の外周面に形成されたバネ受け部と筒状部材の内周面に形成されたバネ受け部との間に張設されていることを特徴とする請求項5に記載の骨接合プレート成形具。
【請求項7】
熱可塑性ポリマーからなる骨接合プレートを、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載さた骨接合プレート成形具の握り部を手で握ることにより該骨接合プレート成形具の雄型と雌型で挟む工程と、骨接合プレートを雄型と雌型で挟んだまま、その軟化温度以上に加熱して軟化させる工程と、軟化させた骨接合プレートを雄型と雌型で挟んだまま、その軟化温度より低温に冷却して固化させる工程とを含むことを特徴とする骨接合プレート成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は骨接合プレートの成形具と成形方法に関し、更に詳しくは、熱可塑性ポリマーからなる骨接合プレートを三次元的曲面形状に成形するための簡便な成形具と成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体内分解吸収性の熱可塑性ポリマーからなる骨接合プレートを用いて、骨折部位や骨切り部位の接合固定が行われるようになってきた。このように骨接合プレートを用いて骨折部位や骨切り部位を接合固定する場合は、当然のことながら、その部位の骨の起伏形状その他の解剖学的形状にほぼ合致するように、骨接合プレートを三次元的曲面形状に成形したり、折曲げ加工することが望まれる。
【0003】
ところで、金属製の骨接合プレートを折曲げ加工する工具として、図20に示すように、2本のアーム100a,100bの枢軸101より先端側に、二股状の顎部102aと、この二股状の顎部102aに噛み合う棒状の顎部102bを設けた「やっとこ型」の工具103が知られている(特許文献1)。この工具103は、図示のように骨接合プレート104の一端部を他の工具105で固定しながら、骨接合プレート104のロッド部104aを二股状の顎部102aと棒状の顎部102bで挟むことにより、骨接合プレート104のロッド部104aを折曲げ加工するものである。
【0004】
また、本出願人も、熱可塑性ポリマーからなる骨接合プレートを段形状に折曲げ加工する加工器具として、骨接合プレートを挟持する挟持部を先端に設けた左右のアームをその交叉部で回動可能に枢着した鉗子型の加工器具であって、挟持部の相対向する面を、先端に近づくほど横幅を段階的に縮小して横幅の異なる複数の挟持面に区分し、この相対向する面の横幅の段階的な縮小に対応して挟持部の両側面に段部を設けた加工器具を既に提案した(特許文献2)。この鉗子型の加工器具は、挟持部の所望の横幅を有する挟持面を選択して、加熱により軟化させた骨接合プレートを挟持部の該選択挟持面で挟持し、骨接合プレートの一端側と他端側を挟持部の側面に沿わせて互いに反対方向に折曲げることにより、平らな骨接合プレートを所望の段差寸法を有する段形状の骨接合プレートに正確に折曲げ加工できる便利な加工器具である。
【0005】
一方、生体吸収性メッシュを骨上のインプラント受容部位に移植する際に、生体吸収性メッシュをそのガラス転移温度を越える温度に加熱して骨上のインプラント受容部位に直接載せ、生体吸収性メッシュをインプラント受容部位の解剖学的三次元形状に輪郭合わせをした後、ガラス転移温度より低い温度に冷却、固化して、生体吸収性メッシュを三次元形状に成形する方法が知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−209061号公報
【特許文献2】特願2010−51381号公報
【特許文献3】特願2007−516787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1の工具は、骨接合プレートを折曲げ加工することはできても、骨折部位や骨切り部位の骨の解剖学的形状にほぼ合致するように骨接合プレートを三次元的曲面形状に成形できないという問題があった。しかも、この工具は作業者によって骨接合プレートの折曲げ角度にバラツキが生じ、同じ作業者でも、加工の度に折曲げ角度が多少異なるという問題があった。
【0008】
これに対し、前記特許文献2の加工器具は、誰が折曲げ加工しても、平らな骨接合プレートを、所望の段差寸法を有する段形状の骨接合プレートに正確に折曲げ加工できる優れた器具であるが、この加工器具も、骨折部位や骨切り部位の骨の解剖学的形状にほぼ合致するように骨接合プレートを三次元的曲面形状に成形できないものであった。
【0009】
一方、前記特許文献3の生体吸収性メッシュの成形方法は、生体吸収性メッシュをインプラント受容部位の解剖学的三次元形状にほぼ合致する三次元的曲面形状に成形することはできるが、ガラス転移温度より高い温度に加熱した生体吸収性メッシュをインプラント受容部位に直接載せて成形するため、インプラント受容部位に熱による悪影響を及ぼす恐れがあり、安全な成形方法とは言い難いものであった。また、この成形方法は、面積が大きい生体吸収性メッシュなどには適用できるとしても、それより小さくて使用個数が多い骨接合プレートの成形方法としては実用的と言い難く、適用が困難なものであった。
【0010】
本発明は上記事情の下になされたもので、その解決しようとする課題は、熱可塑性ポリマーからなる骨接合プレートを三次元的曲面形状に再現性良く成形できる骨接合プレート成形具と、この成形具を用いた簡便で安全な成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係る骨接合プレート成形具は、共通の軸線又は平行な二本の軸線に沿って相対的に移動し得る二つの部材に、熱可塑性ポリマーからなる骨接合プレートを挟んで成形する三次元的曲面形状の成形面を備えた雄型と雌型を、軸線方向に対向させて取付け、かつ、二つの部材に握り部それぞれ設けて、握り部を手で握ることにより雄型と雌型で骨接合プレートを挟めるようにしたことを特徴とするものである。
【0012】
本発明の骨接合プレート成形具においては、二つの部材に雄型と雌型をそれぞれ取替え可能に取付けることが好ましい。そして、雄型と雌型の少なくとも一方が、骨接合プレートの成形時に骨接合プレートの片面全体を覆う広さの成形面を備えていることが好ましい。
た、二つの部材を軸線に沿って離反させる方向に付勢する付勢手段を備えていることが好ましい。
【0013】
本発明に係る骨接合プレート成形具の好ましい具体的形態は、二つの部材が、共通の縦軸線に沿って相対的に移動し得る、筒状部材とこの筒状部材に摺動可能に挿入された棒状部材であり、棒状部材の上端と筒状部材の上端に握り部がそれぞれ設けられており、雌型が筒状部材の下端部の片側に突き出して取替え可能に取付けられており、雄型が、棒状部材の下端から筒状部材の縦割溝部を貫いて片側へ突き出すロッドに取替え可能に取付けられて、雌型と縦軸線の方向に対向しているものである。
そして、この具体的形態においては、棒状部材の外周面と筒状部材の内周面との隙間に圧縮コイルスプリングが配置されて、棒状部材の外周面に形成されたバネ受け部と筒状部材の内周面に形成されたバネ受け部との間に張設されていることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る骨接合プレート成形方法は、熱可塑性ポリマーからなる骨接合プレートを、本発明に係る上記骨接合プレート成形具の握り部を手で握ることにより該骨接合プレート成形具の雄型と雌型で挟む工程と、骨接合プレートを雄型と雌型で挟んだまま、その軟化温度以上に加熱して軟化させる工程と、軟化させた骨接合プレートを雄型と雌型で挟んだまま、その軟化温度より低温に冷却して固化させる工程とを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の骨接合プレート成形具を使用し、本発明の成形方法に従って、熱可塑性ポリマーからなる骨接合プレートを成形するときは、まず、二つの部材の握り部を手で握って二つの部材を共通の軸線又は平行な二本の軸線に沿って相対的に移動させることにより、雄型と雌型の成形面の間に熱可塑性ポリマーからなる骨接合プレートを弾性変形させながら挟み込む。次いで、骨接合プレートを雄型と雌型で挟んだまま、その軟化温度以上に加熱して軟化させることにより、骨接合プレートを雄型と雌型の成形面の三次元的曲面形状の通りに塑性変形させる。そして、この塑性変形させた骨接合プレートを雄型と雌型で挟んだまま、軟化温度より低い温度に冷却して固化させることにより、雄型と雌型の成形面の三次元的曲面形状の通りに骨接合プレートの形状を固定して、再現性良く三次元的曲面形状に成形する。
このように、本発明の骨接合プレート成形具を用いた成形方法は、三次元的曲面形状の成形面を備えた雄型と雌型で骨接合プレートを挟んで加熱、軟化させた後、冷却、固化して成形するものであるから、誰が成形作業を行っても、雄型と雌型の成形面の三次元的曲面形状の通りに骨接合プレートを再現性良く成形することができ、また、前記特許文献3のように加熱により軟化させたメッシュを生体骨のインプラント受容部位に直接載せて三次元的曲面形状に成形するものではないので、安全である。
【0016】
本発明の骨接合プレート成形具において、二つの部材に雄型と雌型をそれぞれ取替え可能に取付けたものは、雄型と雌型を、所望の三次元的曲面形状の成形面を備えた雄型と雌型にそれぞれ取り替えることによって、骨接合プレートを所望の三次元的曲面形状に成形することができる。
そして、雄型と雌型の少なくとも一方が、骨接合プレートの成形時に骨接合プレートの片面全体を覆う広さの成形面を備えていると、骨接合プレートを部分的に成形する場合でも、当該成形面により骨接合プレートの片面全体を安定良く支持して高精度で骨接合プレートを部分的に成形することができる。
【0017】
また、本発明の骨接合プレート成形具のように、二つの部材に握り部をそれぞれ設けたものは、握り部を手で握って二つの部材を容易に移動させることができるので、雄型と雌型で骨接合プレートを挟む作業がし易くなる。
そして、本発明の骨接合プレート成形具において、二つの部材を軸線に沿って離反させる方向に付勢する付勢手段を備えたものは、握り部から手を離すだけで、付勢手段により二つの部材が離反方向に移動して雄型と雌型が開くため、成形された骨接合プレートの取出しが容易になる。
【0018】
更に、前述した好ましい具体的形態の骨接合プレート成形具は、構造が簡単で安価に製造でき、しかも、操作性が良好で、筒状部材と棒状部材を縦軸線に沿って相対的に移動させることにより、雄型と雌型との間に骨接合プレート挟んで三次元的曲面形状に再現性良く成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る骨接合プレート成形具の正面図である。
図2】同骨接合プレート成形具の側面図である。
図3】同骨接合プレート成形具の縦断面図である。
図4】雄型と雌型で骨接合プレートを挟んだ状態の同骨接合プレート成形具の縦断面図である。
図5】同骨接合プレート成形具の雄型の一例を示すもので、(a)はその平面図、(b)はその背面図、(c)はその断面図である。
図6】同骨接合プレート成形具の雌型の一例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその平面図、(c)はその断面図である。
図7】雄型の他の例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその側面図、(c)はその背面図、(d)はその底面図である。
図8】雌型の他の例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその平面図、(c)はその背面図、(d)はその断面図である。
図9】(a)は骨接合プレートの材料プレートの平面図、(b)は同材料プレートから切り出した骨接合プレートの一例を示す平面図、(c)は三次元的曲面形状に成形された同骨接合プレートの斜視図である。
図10】雄型の更に他の例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその平面図、(c)はその側面図である。
図11】雌型の更に他の例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその平面図、(c)はその側面図である。
図12】(a)は三次元的曲面形状に成形された骨接合プレートの他の例を示す斜視図、(b)は同骨接合プレートの側面図である。
図13】雄型の更に他の例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその平面図、(c)はその底面図、(d)はその側面図、(e)はその背面図である。
図14】雌型の更に他の例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその平面図、(c)はその側面図、(d)はその底面図である。
図15】三次元的曲面形状に成形された骨接合プレートの他の例を示す斜視図である。
図16】雄型の更に他の例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその平面図、(c)はその底面図、(d)はその側面図、(e)はその背面図である。
図17】雌型の更に他の例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその平面図、(c)はその底面図、(d)はその側面図である。
図18】三次元的曲面形状に成形された骨接合プレートの更に他の例を示す斜視図である。
図19】本発明の他の実施形態に係る骨接合プレート成形具の側面図である。
図20】従来の骨接合プレートを折曲げ加工する工具を示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明に係る骨接合プレート成形具の代表的な実施形態を詳細に説明する。
【0021】
図1図4に示す骨接合プレート成形具は、棒状部材1が筒状部材2に摺動可能に挿入されており、これら二つの部材1,2が共通の縦軸線C1に沿って上下方向に相対的に移動できるように構成されている。棒状部材1は、図3に示すように、その上半部に筒体1aが外嵌着されて異径の棒状部材に構成されており、この筒体1aの下端が圧縮コイルスプリング4の上端を受けるバネ受け部1bとなっている。そして、棒状部材1の上端には、握り部3Aがローレットノブ付きのネジ3cでT字形に取付けられている。
【0022】
上記筒状部材2は、図3に示すように、円筒部2aの下端に角筒部2bを一体に連結固定したものであって、この筒状部材2の円筒部2aの上端には、上記握り部3Aと対をなす握り部3Bが溶接でT字形に固定されている。この筒状部材2の円筒部2aと角筒部2bとの連結部分の内周面にはバネ受け部2cが形成されており、このバネ受け部2cと棒状部材1の外周面の前記バネ受け部1bとの間には、棒状部材1と筒状部材2を共通の縦軸線C1に沿って互いに離反させる方向に付勢する付勢手段として、圧縮コイルスプリング4が張設されている。
【0023】
上記筒状部材2の角筒部2bは、一辺の長さが円筒部2aの外径よりも大きいほぼ正方形の横断面形状を有する角筒部であって、図1図3に示すように、この角筒部2bの一側面(前側面)には縦割溝部2dが形成されている。そして、この角筒部2bの下端の左右両側と後側には水平基板5が設けられており、左右両側の水平基板5は前方へ延びている。従って、この骨接合プレート成形具は、これらの水平基板5によって安定良く縦置きできるようになっている。
【0024】
前記棒状部材1の下端には、連結部材6を介してロッド7が直角に連結されており、このロッド7は筒状部材2の角筒部2bの縦割溝部2dを貫いて片側(前方)へ突き出している。そして、このロッド7に雄型8の貫通孔8aを嵌挿することにより、雄型8が脱着、取替え可能に取付けられている。
【0025】
また、図1図2に示すように、筒状部材2の角筒部2bの左右側壁部の下端部には、片側(前方)へ突き出す2本のピン9,9が植設されており、これらのピン9,9に雌型10の貫通孔10a,10aを嵌挿することによって、雌型10が上記雄型8と縦軸線C1の方向(上下方向)に対向して脱着、取替え可能に取付けられている。
【0026】
雄型8は、図5(a)に示すように略円形の平面形状を有するもので、図5(b)(c)に示すように前後方向に貫通する貫通孔8a(前記ロッド7が挿入される貫通孔)が穿設されており、この雄型8の下面は、図5(b)(c)に示すような凸球面形状の成形面8bとなっている。
これに対し、雌型10は、図6(b)に示すように略正方形の平面形状を有するもので、図6(a)に示すように前後方向に貫通する二つの貫通孔10a,10a(前記ピン9,9が挿入される貫通孔)が穿設されており、この雌型10の上面は、図6(c)に示すような凹球面形状の成形面10b(雄型8の凸球面形状の成形面8bに対応する凹球面形状の成形面)となっている。
【0027】
なお、雄型8と雌型10の成形面8b,10bは、この実施形態のような凸球面形状と凹球面形状に限定されるものではなく、骨折部位や骨切り部位の解剖学的形状にほぼ合致するような種々の三次元的曲面形状となし得ることは言うまでもない。
また、この実施形態の雄型8と雌型10は、骨接合プレートの両面全体を覆う広さの成形面8b,10bを備えているが、雄型8と雌型10の少なくとも一方の成形面が骨接合プレートの片面全体を覆う広さの成形面であれば、当該成形面により骨接合プレートの少なくとも片面全体を安定良く支持して高精度で骨接合プレートを部分的に成形することが可能である。
【0028】
以上のような構成の骨接合プレート成形具を使用し、本発明の成形方法に従って骨接合プレートを成形するときは、予め、熱可塑性ポリマーからなる材料プレートから骨接合プレートを切り出す。材料プレートとしては、熱可塑性ポリマーからなるものであればポリマー種、厚さ及び孔の有無等が特に限定されるものではないが、ポリ−L−乳酸やポリ−D,L−乳酸あるいはそれらの共重合体や乳酸−ポリグリコール酸共重合体などの生体内分解吸収性の熱可塑性ポリマーからなる、無数の孔があいた厚さ1mm程度のプレートや、上記の生体内分解吸収性の熱可塑性ポリマーにハイドロキシアパタイト(HA)あるいはトリカルシウムフォスフェート(TCP)などのバイオセラミックス粉粒を含んだ複合材料からなる、無数の孔があいた厚さ1mm程度のプレートが好ましく使用される。
【0029】
材料プレートからの骨接合プレートの切り出しが終わると、最初の工程において、骨接合プレート成形具の握り部3A,3Bを手で握り締めながら、棒状部材1と筒状部材2を縦軸線C1に沿って上下方向に相対的に移動させ、図4に示すように、雄型8の成形面8bと雌型10の成形面10bとの間に骨接合プレートPを双方の型8,10からずれないように僅かに弾性変形させて挟み込む。このとき、前記のポリ−L−乳酸やポリ−D,L−乳酸からなる骨接合プレートPは、ある程度の柔軟性があるので、割れる心配はない。
【0030】
上記のように骨接合プレートPを雄型8と雌型10で挟み、そのまま次の工程で骨接合プレートPをその軟化温度以上に加熱して軟化させ、骨接合プレート成形具の握り部3A,3Bを手でさらに握り締めながら、棒状部材1と筒状部材2を縦軸線C1に沿って上下方向に相対的に移動させ、骨接合プレートPを雄型8と雌型10の成形面8b,10bの凸球面形状及び凹球面形状の通りに塑性変形させる。加熱手段としては、温水に浸漬するか、或いは、温風を当てるなどの手段が好適であるが、場合によっては、雄型8又は/及び雌型10に内蔵したヒーターや温水流路等の加熱手段で加熱するようにしてもよい。加熱温度は骨接合プレートPの軟化温度以上であれば特に制限されないが、軟化温度よりも1〜50℃程度高い温度で加熱することが好ましく、例えば、上記のポリ−L−乳酸やポリ−D,L−乳酸からなる軟化温度65℃の骨接合プレートPの場合は、66〜115℃程度に加熱するのが適当である。
【0031】
加熱が完了すると、次の工程で、塑性変形した骨接合プレートPを雄型8と雌型10で挟んだまま、軟化温度より低い温度に冷却して骨接合プレートPを固化させ、雄型8と雌型10の成形面8b,10bの凸曲面形状及び凹曲面形状の通りに骨接合プレートPの形状を固定して成形を完了する。冷却手段としては、室温で自然放冷するなどの手段を採用してもよいが、冷水に浸漬したり、冷風を当てるのが好適である。
【0032】
骨接合プレートPの成形が完了すると、握り部3A,3Bから手を放し、圧縮コイルスプリング4の復元弾発力で、棒状部材1と筒状部材2を縦軸線C1に沿って離反する方向に移動させ、雄型8と雌型10を開いて骨接合プレートPを取り出せばよい。
図5に示す雄型8と図6に示す雌型10で成形される丸皿形の骨接合プレートPは、例えば膝蓋骨、頭蓋顎顔面骨等の骨折部位や骨切り後の骨片の接合に適している。また、股関節寛骨臼底の欠損部分を補う足場としても有用である。
【0033】
尚、図示はしていないが、雄型8と雌型10の間に骨接合プレートPを挟んだ状態で、棒状部材1の握り部3Aと筒状部材3Bをロックベルトなどの仮固定手段で仮固定すると、握り部3A,3Bから手を放しても雄型8と雌型10が開くことがなく、確実に骨接合プレートPを挟み続けることができるので好ましい。
【0034】
上記のように、この骨接合プレート成形具を用いた成形方法は、三次元的曲面形状(凸球面形状及び凹球面形状)の成形面8b,10bを備えた雄型8と雌型10で骨接合プレートPを挟んで加熱、軟化させた後、冷却、固化して成形するものであるから、誰が成形作業を行っても、雄型8と雌型10の成形面8b,10bの三次元的曲面形状の通りに骨接合プレートを再現性良く成形することができ、また、加熱により軟化させた骨接合プレートPを骨折部位や骨切り部位に直接当てて三次元的曲面形状に成形するものではないので、安全性の面でも優れたものと言える。
【0035】
図7図8は、成形面8a,10bの形状が異なる雄型8と雌型10の他の例を示したものである。この雄型8と雌型10は、図9(a)に示す材料プレートMPから切り出した図9(b)に示すコテ形の骨接合プレートPを、図9(c)に示すような三次元的曲面形状(コテ形のプレート全体が湾曲し且つ脚片の付根部分で段形状に屈曲した形状)に成形するための、複雑な三次元的曲面形状の成形面8b,10bを備えたものである。この雄型8と雌型10も、前記棒状部材1の下端から前方に突き出したロッド7に嵌挿される貫通孔8aと、前記筒状部材2の角筒部2bの下端部から前方に突き出した2本のピン9,9に嵌挿される二つの貫通孔10a,10aが穿孔されており、いずれも脱着、取替え可能に取付られるようになっている。
これらの雄型8と雌型10で成形される図9(c)の骨接合プレートPは、例えば橈骨遠位部、橈骨近位部(橈骨頭)、尺骨遠位部、上腕骨近位部および遠位部、脛骨近位部等の骨折部位や骨片の接合に適している。
【0036】
図10図11は、成形面8b,10bの形状が異なる雄型8と雌型10の更に他の例を示したものである。この雄型8と雌型10は、図9(a)に示す材料プレートMPから切り出した方形の骨接合プレートを、図12(a)(b)に示すような三次元的曲面形状の骨接合プレートP(U字状の横断面を有し、長さ方向に弓なりに反り上がったU字溝形状の骨接合プレートP)に成形するための、三次元的曲面形状の成形面8b,10bを備えたものである。この雄型8と雌型10も、前記棒状部材1の下端から前方に突き出したロッド7に嵌挿される貫通孔8aと、前記筒状部材2の角筒部2bの下端部から前方に突き出した2本のピン9,9に嵌挿される二つの貫通孔10a,10aが穿孔されており、いずれも脱着、取替え可能に取付られるようになっている。
これらの雄型8と雌型10で成形される図12の骨接合プレートPは、例えば手指骨、中足骨、上腕骨、前腕骨(橈骨、尺骨)、大腿骨、脛骨、腓骨等の骨幹部のように骨近位部および骨遠位部から骨幹部にかけて縮径している部位の骨折部位や骨片の接合に適している。
【0037】
図13図14は、成形面8b,10bの形状が異なる雄型8と雌型10の更に他の例を示したもので、この雄型8と雌型10は、図9(a)の材料プレートMPから切り出した図9(b)に示すコテ形の骨接合プレートPを、図15に示すような三次元的曲面形状の骨接合プレートP(コテ形のプレートの脚片がその付根部分でV字状に屈曲した形状の骨接合プレートP)に成形するための、三次元的曲面形状の成形面8b,10bを備えている。この雌型10には位置決め用の複数(3本)の小ピン10cが突設されており、これらの小ピン10cをコテ形のプレートPの孔に挿入すると、コテ形のプレートPを正確に位置決めして成形できるようになっている。この雄型8と雌型10も、前記棒状部材1の下端から前方に突き出したロッド7に嵌挿される貫通孔8aと、前記筒状部材2の角筒部2bの下端部から前方に突き出した2本のピン9,9に嵌挿される二つの貫通孔10a,10aが穿孔されており、いずれも脱着、取替え可能に取付られるようになっている。
これらの雄型8と雌型10によって成形される図15の骨接合プレートPは、生体骨の鋭角に曲がっている部位、例えば、鼻骨、橈骨、尺骨、脛骨、腓骨等の骨接合や、関節や腱への干渉を避けて骨中にプレートの一部を埋植したい場合の骨折部位の接合に適している。
【0038】
図16図17は、成形面8b,10bの形状が異なる雄型8と雌型10の更に他の例を示したもので、この雄型8と雌型10は、図9(a)の材料プレートMPから切り出した方形の骨接合プレートを、図18に示すような三次元的曲面形状の骨接合プレートP(U字状の横断面を有し、長さ方向に凹湾曲したU字溝形状の骨接合プレートP)に成形するための、三次元的曲面形状の成形面8b,10bを備えている。この雄型8と雌型10も、前記棒状部材1の下端から前方に突き出したロッド7に嵌挿される貫通孔8aと、前記筒状部材2の角筒部2bの下端部から前方に突き出した2本のピン9,9に嵌挿される二つの貫通孔10a,10aが穿孔されており、いずれも脱着、取替え可能に取付られるようになっている。
これらの雄型8と雌型10によって成形される図18の骨接合プレートPは、例えば、第一中手骨(親指の中手骨)、第一中足骨等の骨幹部のように骨近位部および骨遠位部から骨幹部にかけて外側に湾曲している部位の骨折部位、骨片の接合に適している。
【0039】
なお、図5図7図10図13図16に示す雄型8はいずれも、貫通孔8aの後端部内周面にキー溝(不図示)が形成されており、この貫通孔8aに前記ロッド7を嵌挿すると、ロッド7の付根部分に形成されたキー(不図示)が上記キー溝に係合して、雄型8が回転不能に取付けられるようになっている。
【0040】
図19は本発明の骨接合プレート成形具の他の実施形態を示したものである。この骨接合プレート成形具は、一方の棒状部材1を他方の棒状部材11のリング部11aに摺動可能に挿通すると共に、他方の棒状部材11を一方の棒状部材1の上端に取付けられた握り部3Aの孔に摺動可能に挿通することによって、双方の棒状部材1,11が平行な二本の縦軸線C2,C3に沿って上下方向に相対的に移動できるように構成されている。そして、他方の棒状部材11の中間部には、上記握り部3Aと対をなす握り部3Bが設けられ、双方の棒状部材1,11を縦軸線C2,C3に沿って離反する方向に付勢する圧縮コイルスプリング4が、一方の棒状部材1を取り巻いて握り部3Aと上記リング部11aとの間に張設されている。
【0041】
更に、一方の棒状部材1の下端には、連結部材6を介してロッド7が直角に連結固定されて前方に突き出しており、このロッド7には三次元的曲面形状(凸球面形状)の成形面8bを備えた雄型8が脱着、取替え可能に取付けられている。そして、他方の棒状部材11の下端部には、前方へ突き出す2本のピン9が植設されており、このピン9には雄型8の成形面8bに対応する三次元的曲面形状(凹球面形状)の成形面10bを備えた雌型10が、雄型8と対向して、脱着、取替え可能に取付けられている。なお、5は他方の棒状部材の下端に設けられた基板、3cは握り部3Aを一方の棒状部材1の上端に固定するローレットノブ付きのネジ、3dは他方の棒状部材11の上端に抜止め部材3eを固定するローレットノブ付のネジである。
【0042】
このような骨接合プレート成形具も、握り部3A,3Bを手で握り締めながら双方の棒状部材1,11を平行な縦軸線C2,C3に沿って上下方向に相対的に移動させることにより、雄型8の成形面8bと雌型10の成形面10bとの間に骨接合プレートを挟み込み、骨接合プレートを雄型8と雌型10で挟んだまま加熱、軟化させて雄型形8と雌型10の成形面8b,10bの三次元的曲面形状の通りに可塑変形させ、さらに冷却、固化させて骨接合プレートの形状を固定することにより、骨接合プレートを再現性良く三次元的曲面形状に成形することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の骨接合プレート成形具及び骨接合プレート成形方法は、雄型と雌型のそれぞれの成形面の形状を種々変更することによって、熱可塑性樹脂プレートを所望の三次元的曲面形状に成形する用途に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 棒状部材
1b バネ受け部
2 筒状部材
2a 筒状部材の円筒部
2b 筒状部材の角筒部
2c バネ受け部
2d 縦割溝部
3A,3B 握り部
4 圧縮コイルスプリング(付勢手段)
7 ロッド
8 雄型
8a 貫通孔
8b 雄型の成形面
9 ピン
10 雌型
10a 貫通孔
10b 雌型の成形面
11 他方の棒状部材
P 骨接合プレート
図1
図2
図3
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図5
図6
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