(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
開放位置と閉鎖位置との間で直進動可能なドアと、該ドアを移動させる通常駆動機構と、前記ドアを、前記通常駆動機構によって移動させられた位置にかかわらず、強制的に前記開放位置及び前記閉鎖位置のいずれかに定められた強制位置に位置付ける強制駆動機構とを有する自動ドア装置であって、
前記強制駆動機構は、
前記ドアの直進動経路と平行となるように設置され、ピストンが往復動可能に収容されるとともに両端部のそれぞれに大気中に開放する細孔の形成されたシリンダと、
該シリンダに沿って、前記ドアの開放位置と閉鎖位置のうちの前記強制位置に定められていない位置側の待機位置と、前記強制位置側の動作位置との間で直進動可能に設けられた駆動部材と、
該駆動部材を前記動作位置に向けて付勢する付勢機構と、
該付勢機構による付勢力によって前記動作位置に移動させられる前記駆動部材と係合可能に前記ドアに固定された受け部材と、
前記駆動部材を前記付勢機構による付勢力に抗して前記待機位置に解放可能に保持する保持機構と、
前記駆動部材の直進動に伴って前記ピストンが前記シリンダ内で移動するように、前記駆動部材と前記ピストンとを連結する連結機構とを有する自動ドア装置。
前記駆動部材の前記待機位置への移動に伴って前記ピストンが移動する側の前記シリンダの端部に形成された前記細孔は、前記第2ワイヤが通る孔である請求項3記載の自動ドア装置。
前記駆動部材の前記動作位置への移動に伴って前記ピストンが移動する側の前記シリンダの端部に形成された前記細孔のサイズを調整する調整機構を有する請求項1乃至4のいずれかに記載の自動ドア装置。
前記シリンダを複数有し、該複数のシリンダのそれぞれに対して前記連結機構が設けられ、前記複数のシリンダそれぞれのピストンが対応する連結機構によって前記駆動部材に連結された請求項1乃至6のいずれかに記載の自動ドア装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述したような従来の自動ドア装置では、もともとドアが強制的に移動させられるべき位置またはその近傍、例えば、閉鎖位置にある場合には、火災等の緊急時に保持機構が伸縮移動部の先端部を解放すると、スプリングにより収縮する伸縮移動部の先端部がドアに固定された係合板に衝突することになる。特に、耐火構造のドアはその重量も大きく、伸縮移動部の伸縮力にてその重量の大きいドアを強制的に移動させるには、比較的大きな引っ張り力のスプリングによって伸縮移動部を収縮させる必要がある。このため、保持機構が延びた状態の伸縮移動部の先端部を解放すると、その伸縮移動部の先端部はかなりの速度で移動するので、非常に大きな力でドアに固定された係合板に衝突する。従って、伸縮移動部の先端部及び係合板の強度を特別大きくする必要があるとともに、係合板のドアへの固定構造も大がかりなものとなる。
【0005】
また、このような自動ドア装置では、火災等の緊急時に備えて各部の動作点検を定期的に行う必要がある。ドアを強制的に開放位置または閉鎖位置に移動させる動作の点検においては、伸縮移動部の先端部がドアに固定された係合板に高速で衝突すると、その衝突音が非常に大きい。このため、その点検作業環境が悪くなり、また、周辺への騒音も大きなものとなってしまう。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、もともとドアが強制的に移動させられるべき位置又はその近傍にあっても、より静粛に当該ドアをその位置に位置付けることのできる自動ドア装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る自動ドア装置は、開放位置と閉鎖位置との間で直進動可能なドアと、該ドアを移動させる通常駆動機構と、前記ドアを、前記通常駆動機構によって移動させられた位置にかかわらず、強制的に前記開放位置及び前記閉鎖位置のいずれかに定められた強制位置に位置付ける強制駆動機構とを有する自動ドア装置であって、前記強制駆動機構は、前記ドアの直進動経路と平行となるように設置され、ピストンが往復動可能に収容されるとともに両端部のそれぞれに大気中に開放する細孔の形成されたシリンダと、該シリンダに沿って、前記ドアの開放位置と閉鎖位置のうちの前記強制位置に定められていない位置側の待機位置と、前記強制位置側の動作位置との間で直進動可能に設けられた駆動部材と、該駆動部材を前記動作位置に向けて付勢する付勢機構と、該付勢機構による付勢力によって前記動作位置に移動させられる前記駆動部材と係合可能に前記ドアに固定された受け部材と、前記駆動部材を前記付勢機構による付勢力に抗して前記待機位置に解放可能に保持する保持機構と、前記駆動部材の直進動に伴って前記ピストンが前記シリンダ内で移動するように、前記駆動部材と前記ピストンとを連結する連結機構とを有する構成となる。
【0008】
このような構成により、付勢機構によって動作位置に向けて付勢される駆動部材が保持機構によって該付勢機構の付勢力に抗して待機位置に保持された状態から、当該保持機構が駆動部材を解放すると、付勢機構の付勢力によって駆動部材が待機位置から動作位置に向かって直進動する。その際、駆動部材に連結機構によって連結されたピストンがシリンダ内を移動する。ピストンが移動する側のシリンダ内の空気が端部の細孔から吐出しつつ圧縮され、その空気が圧縮されていくことにより移動するピストンに抗力が作用する。このピストンに作用する抗力によって当該ピストンに連結された駆動部材の直進動する速度が低減される。速度の低減された状態で駆動部材がドアに固定された受け部材に係合し、駆動部材が付勢機構の付勢力によって動作位置まで移動する際に、該駆動部材によって受け部材を介してドアが押されて強制位置に位置付けられる。
【0009】
本発明に係る自動ドア装置において、前記駆動部材は、前記シリンダの外周面を摺動する摺動ブロックと、前記受け部材が係合可能となるように前記摺動
ブロックに設けられた突起部材とを有する構成とすることができる。
【0010】
このような構成により、シリンダにガイドされながら駆動部材が直進動するようになるので、他にガイド機構を設けることなく、確実に該シリンダに沿って、駆動部材が待機位置と動作位置との間で直進動できるようになる。
【0011】
また、本発明に係る自動ドア装置において、前記連結機構は、前記駆動部材の前記待機位置側の端部に固定されて第1プーリに掛けられて前記シリンダ内にその一端部から入り、前記ピストンの一端部に固定された第1ワイヤと、前記駆動部材の前記動作位置側の端部に固定されて第2プーリに掛けられて前記シリンダ内にその他端部から入り、前記ピストンの他端部に固定された第2ワイヤとを有し、前記駆動部材の直進動に伴って前記第1ワイヤ及び第2ワイヤにて連結された前記ピストンが前記シリンダ内で前記駆動部材と逆方向に直進動する構成にすることができる。
【0012】
このような構成により、駆動部材、第1ワイヤ、シリンダ内のピストン、及び第2ワイヤが環状に連結した構造になるので、シリンダに沿って駆動部材が直進動すれば、それに連動してシリンダ内のピストンが確実に駆動部材と逆方向に直進動するようになる。
【0013】
また、本発明に係る自動ドア装置において、前記駆動部材の前記待機位置への移動に伴って前記ピストンが移動する側の前記シリンダの端部に形成された前記細孔は、前記第2ワイヤが通る孔である構成とすることができる。
【0014】
このような構成により、駆動部材の待機位置への移動に伴ってピストンが移動する側のシリンダの端部に特別な細孔を形成しなくても、第2ワイヤが通る孔から、ピストンの移動に伴うシリンダ内への空気の引き込み及び空気の吐出がなさるようになる。
【0015】
更に、本発明に係る自動ドア装置において、前記駆動部材の前記動作位置への移動に伴って前記ピストンが移動する側の前記シリンダの端部に形成された前記細孔のサイズを調整する調整機構を有する構成とすることができる。
【0016】
このような構成により、駆動部材の動作位置への移動に伴ってピストンが移動する側のシリンダの端部に形成された細孔のサイズを調整することができるようになるので、前記駆動部材が動作位置に移動する際にシリンダ内を移動するピストンの圧縮される空気による抗力の大きさを調整することができる。これにより、駆動部材の移動位置への移動速度を調整することができるようになる。
【0017】
また、本発明に係る自動ドア装置において、前記保持機構は、前記駆動部材に設けられたフック部材と、通電されたソレノイドの吸引作用によって吸引位置に保持された状態のプランジャに連結され、前記フック部材に係合するロック部材とを有し、前記プランジャの前記ソレノイドによる吸引作用が解除されたときに前記付勢機構の付勢力によって前記駆動部材とともに前記動作位置の方向に付勢されるフック部材の前記ロック部材との係合が解放される構成とすることができる。
【0018】
このような構成により、ソレノイドを通電した状態で、該ソレノイドに吸引されるプランジャに連結されたロック部材が、駆動部材に設けられたフック部材に係合することにより、付勢機構の付勢力に抗して前記駆動部材を待機位置に保持することができる。そして、ソレノイドへの通電が遮断されてプランジャの該ソレノイドによる吸引作用が解除されると、フック部材とロック部材との係合が解放されて、駆動部材は付勢機構の付勢力によって待機位置から動作位置まで直進動する。
【0019】
更に、本発明に係る自動ドア装置において、前記シリンダを複数有し、該複数のシリンダのそれぞれに対して前記連結機構が設けられ、前記複数のシリンダそれぞれのピストンが対応する連結機構によって前記駆動部材に連結された構成とすることができる。
【0020】
このような構成により、複数のシリンダ内に収容された複数のピストンのそれぞれが連結機構によって駆動部材に連結されるので、駆動部材の移動に伴って各シリンダ内で移動するピストンに作用する抗力が重畳して当該駆動部材に作用するようになる。その結果、該駆動部材の移動速度をより低減させることができるようになる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る自動ドア装置によれば、駆動部材に連結機構によって連結されるシリンダ内のピストンによって、駆動部材の待機位置から動作位置への直進動に際しての移動速度を低減させることができるので、もともとドアが強制的に移動させられるべき位置又はその近傍にあっても、駆動部材がドアに固定された受け部材に衝突する際の衝撃力をより小さくすることができ、より静粛に当該ドアをその位置に位置付けることができる。その結果、駆動部材や受け部材、また、受け部材のドアへの取付けを特別強固な構造にする必要がなく、ドアを強制的に開放位置または閉鎖位置に移動させる動作の点検においても、騒音の発生を最小限度に抑えることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の一形態に係る自動ドア装置の全体構成を示す図である。
【
図2】
図1に示す自動ドア装置に用いられる強制駆動機構の正面外観を示す図である。
【
図3】
図1に示す自動ドア装置に用いられる強制駆動機構の側方外観を示す図である。
【
図4】
図1に示す自動ドア装置に用いられる強制駆動機構の下方外観を示す図である。
【
図5】強制駆動機構に用いられるシリンダの断面構造を示す断面図である。
【
図6A】強制駆動機構に用いられるシリンダの一方端部の詳細構造を示す断面図(その1)である。
【
図6B】強制駆動機構に用いられるシリンダの一方端部の詳細構造を示す断面図(その2)である。
【
図7A】スライドユニット(駆動部材)を保持した状態の保持機構を示す図である。
【
図7B】スライドユニット(駆動部材)の保持を解放した状態の保持機構を示す図である。
【
図8】自動ドア装置において通常駆動機構によって駆動されるドアの開放位置Pdoから閉鎖位置Pdcへの直進動が完了した状態を示す図である。
【
図9】自動ドア装置において強制駆動機構によって駆動されるドアが開放位置Pdoから強制位置として決められた閉鎖位置Pdcに強制移動させられる状態を示す図である。
【
図10】自動ドア装置において強制駆動機構によってドアが強制位置(閉鎖位置Pdc)に位置付けられた状態を示す図である。
【
図11】待機位置Pwにあるスライドユニット(駆動部材)と閉鎖位置にあるドアに固定された受け金具(受け部材)との関係を示す図である。
【
図12】動作位置Poにあるスライドユニットがドアに固定された受け金具(受け部材)を押して当該ドアを閉鎖位置(強制位置)に位置付けた状態を示す図である。
【
図13】スライドユニットが待機位置Pwから動作位置Poに直進動して閉鎖位置(強制位置)にあるドアに固定された受け金具(受け部材)に向かう途中の状態の強制駆動機構を示す図である。
【
図14】自動ドア装置において、強制駆動機構のスライドユニットが閉鎖位置(強制位置)にあるドアに固定された受け金具(受け部材)に向かう途中の状態を示す図である。
【
図15A】1本のシリンダを用いた場合のスライドユニットの移動距離と移動速度の関係を示す特性図である。
【
図15B】2本のシリンダを用いた場合のスライドユニットの移動距離と移動速度との関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0024】
本発明の実施の一形態に係る自動ドア装置は、
図1に示すように構成される。この自動ドア装置において開放位置と閉鎖位置との間で直進動するドアは、防火扉としても使用されるものであって、火災の発生時には、強制的に閉鎖位置(強制位置)に位置付けられるようになっている。
【0025】
図1において、ドア10の上縁に固定された一対の戸車ユニット12a、12bがレール24上を移動しつつ、当該ドア10が開放位置Pdoと閉鎖位置Pdcとの間で直進動するようになっている。この自動ドア装置は、レール24に沿って開放位置Pdoと閉鎖位置Pdcとの間でドア10を移動させる通常駆動機構20と、ドア10を通常駆動機構20によって移動させられた位置にかかわらず、強制的に強制位置として決められた、例えば、閉鎖位置Pdcに移動させて位置付ける強制駆動機構30とを有している。
【0026】
通常駆動機構20は、駆動用のモータ21と、レール24に沿ってドア10の移動範囲に基づいて決められた間隔をもって配置された一対のプーリ23a、23bと、これらプーリ23a、23bに巻きかけられた環状の駆動ベルト22とを有し、モータ21がギア等の動力伝達機構(図示略)を介して一方のプーリ23aを正逆回転させることにより、駆動ベルト22が正逆の循環動するようになっている。ドア10の上縁には戸車ユニット12a、12bに挟まれるようにブラケット11が固定されており、駆動ベルト22に固定されて、駆動ベルト22の正逆の循環動にともなって2つのプーリ12a、12bの間で左右動する取付け金具13がブラケット11に固定されている。このような通常駆動機構20では、モータ21による駆動ベルト22の正逆の循環動にともなって取り付け金具13が一対のプーリ23a、23bの間で左右動すると、この取り付け金具13と一体となるドア10が開放位置Pdoと閉鎖位置Pdcとの間で、戸車ユニット12a、12bによってレール24に沿って案内されつつ、直進動する。
【0027】
強制駆動機構30は、前述した通常駆動機構20に並列的に配置されている。強制駆動機構30の詳細な構成は、
図2、
図3、
図4及び
図5に示される。なお、
図2は、強制駆動機構30の正面外観を示し、
図3は、強制駆動機構30の側方外観を示し、
図4は、構成駆動機構の下方外観を示し、そして、
図5は、強制駆動機構に用いられるシリンダの断面構造を示している。
【0028】
図1とともに
図2〜
図5を参照して、強制駆動機構30は、前述した通常駆動機構20の駆動ベルト22に平行となるように設置された第1シリンダ31a及び第2シリンダ31bの2つのシリンダを備えている。第1シリンダ31aと第2シリンダ31bとは、上下方向に所定の間隔をもって配置され(
図2、
図3参照)、それらの両端部がベース板41、42に固定されている。第1シリンダ31a及び第2シリンダ31bにはスライドユニット32(駆動部材)が摺動自在に嵌合している。スライドユニット32は、第1シリンダ31a及び第2シリンダ31bに摺動自在に嵌合する摺動ブロック321の前面に金具322が固定された構造となっている。金具322は、摺動ブロック321の前面に対して垂直に立ち上がる駆動金具部322a(突起部材)と、当該摺動ブロック321から第2シリンダ31bに沿うように突出して一方のベース板41に向けて延びるフック金具部322bとが形成された構造となっている(
図2、
図4参照)。
【0029】
ベース板42には、伸縮可能なゼンマイばね33が設けられており、ゼンマイばね33の先端がスライドユニット32(摺動ブロック321)の端部に固定されている。スライドユニット32はゼンマイばね33の戻し力によって常にベース板42側の動作位置Poに向けて付勢された状態となっている。前記ゼンマイばね33の設けられたベース板4と逆側のベース板41には、保持機構35が設けられている。保持機構35は、その詳細な構造については後述するが、スライドユニット32から突出したフック金具部322bを解放可能に係止する構造となり、ゼンマイばね33によって動作位置Poに向けて付勢されるスライドユニット32をその付勢力に抗して待機位置Pwに保持させる。
【0030】
第1シリンダ31a内にピストン311aが往復動可能に収容され、また、第2シリンダ31b内にも同様にピストン311bが往復動可能に収容されている。なお、各ピストン311a、311bの外周面と対応するシリンダ31a、31bの内周面との間がシール部材(図示略)によって密封され、各シリンダ31a、31bにおいて、ピストン311a、311bの部分を通した空気の流れが阻止されるようになっている。
【0031】
第1シリンダ31a及び第2シリンダ31bに沿って直進動するスライドユニット32と第1シリンダ31a内のピストン311aとが第1連結機構36aによって連結され、また、スライドユニット32と第2シリンダ31b内のピストン311bとが第2連結機構36bによって連結されている。第1連結機構36aは、第1シリンダ31aの一端部に対向するようにベース板41に設けられたプーリ362a(第1プーリ)と、第1シリンダ31aの他端部に対向するようにベース板42に設けられたプーリ364a(第2プーリ)と、2つのワイヤ361a、363aとから構成されている。そして、スライドユニット32(摺動ブロック321)の待機位置Pw側の端部に固定されたワイヤ361a(第1ワイヤ)がプーリ362aに掛けられて第1シリンダ31aの一端部の細孔からその内部に入り、ピストン311aの一端部に固定され、スライドユニット32(摺動ブロック321)の動作位置Po側の端部に固定されたワイヤ363a(第2ワイヤ)がプーリ364aに掛けられて第1シリンダ31aの他端部の細孔からその内部に入り、ピストン311aの他端部に固定されている。
【0032】
第2連結機構36bは、第2シリンダ31bの一端部に対向するようにベース板41に設けられたプーリ362b(第1プーリ)と、第2シリンダ31bの他端部に対向するようにベース板42に設けられたプーリ364b(第2プーリ)と、2つのワイヤ361b、363bとから構成されている。そして、スライドユニット32(摺動ブロック321)の待機位置Pw側の端部に固定されたワイヤ361b(第1ワイヤ)がプーリ362bに掛けられて第2シリンダ31bの一端部の細孔からその内部に入り、ピストン311bの一端部に固定されている。また、スライドユニット32(摺動ブロック321)の動作位置Po側の端部に固定されたワイヤ363b(第2ワイヤ)がプーリ364bに掛けられて第2シリンダ31bの他端部の細孔からその内部に入り、ピストン311bの他端部に固定されている。
【0033】
このようしてスライドユニット32(摺動ブロック321)、第1シリンダ31a内のピストン311a及び2つのワイヤ361a、363aが環状に連結され、それと並列的に、スライドユニット32、第2シリンダ31b内のピストン311b及び2つのワイヤ361b、363bが環状に連結される。これにより、第1シリンダ31a及び第2シリンダ31b上を摺動してスライドユニット32(摺動ブロック321)が直進動すると、それに連動して第1シリンダ31a及び第2シリンダ31b内で各ピストン311a、311bがスライドユニット32の移動方向と逆方向に直進動する。
【0034】
図5に第1及び第2シリンダ31a、31bを代表して第2シリンダ31bの断面構造が示されるように、シリンダ31bのベース板42に固定された端部に形成された細孔312bは、ピストン311bとスライドユニット32とを連結するワイヤ363bの通孔としての機能とともに、ピストン311bの移動によって圧縮されるシリンダ31b内の当該ピストン311bと細孔312bの形成された端部との間の空気を徐々に排出する機能を有している。一方、
図6Aに第1及び第2シリンダ31a、31bを代表して第1シリンダ31aの端部の断面構造が拡大して示されるように、シリンダ31aのベース板41に固定された逆側の端部にも、ワイヤ361aの通孔としての細孔が形成されているが、この細孔には、シール部材315aがつめられて、各シリンダ31a内の空気がこの細孔から排出されないようになっている。このシール部材315aの詰められる細孔の形成された各シリンダ31aの端部には、別途、リーク孔313aが形成されている。このリーク孔313aには、その開口サイズを調整するための調整ネジ314aが嵌め込まれている。そして、
図6Bに示されるように、この調整ネジ314aを操作してリーク孔313aの開口サイズを調整することにより、ピストン311aの移動によって圧縮される空気のリーク孔313aからの排出のし易さを調整することができる。
【0035】
ベース板41に設けられた保持機構35は、
図7A及び
図7Bに示すように構成されている。
【0036】
この保持機構35は、直動式のソレノイドユニット351と、L字状のロック部材354と、ソレノイドユニット351のプランジャ351bとロック部材354の一端部とを連結する連結部材352とを備えている。ソレノイドユニット351のソレノイド本体351aは常時通電されてプランジャ351bを引き込んでいる(
図7Aに示す状態)。プランジャ351bの端部と連結部材352の一端部とが結合ピン353aによって回動自在に結合され、ロック部材354の一端部と連結部材352の他端部とが結合ピン353bによって回動自在に結合されている。ロック部材354の連結部材352に結合される端部と逆側の端部には引っ掛けピン355が設けられており、スライドユニット32から延びるフック金具部322bの先端がロック部材354の引っ掛けピン355に引っ掛かるようになっている。
【0037】
このような保持機構35では、ソレノイドユニット351のソレノイド本体351aが通電されてプランジャ351bがソレノイド本体351aに引き込まれた通常状態において、
図7Aに示すように、ゼンマイばね33の付勢力に抗して待機位置Pwに位置付けられたスライドユニット32のフック金具部322bがロック部材355の引っ掛けピン355に引っ掛けられて、当該スライドユニット32が待機位置Pwに保持される(ロック状態)。一方、ソレノイド本体351aの通電が遮断されると(非通電)、スライドユニット32がゼンマイばね33によって動作位置Poに向かって引っ張れるのに伴って、
図7Bに示すように、ソレノイドユニット351のプランジャ351bがソレノイド本体351aから引き出される。プランジャ351bがソレノイド本体351aから引き出されると、プランジャ351b、連結部材352及びロック部材354の連結状態が緩んで、ロック部材354が連結部材352の連結ピン353bを中心に僅かに回動し、フック金具部322bからロック部材354の引っ掛けピン355が外れる(解放状態)。このように、フック金具部322bからロック部材354の引っ掛けピン355が外れると、スライドユニット32がゼンマイばね33の付勢力(戻し力)によって引っ張られて動作位置Poに向かって移動する。
【0038】
図1に戻って、ドア10の上縁に固定されたブラケット11の所定部位には、強制駆動機構30におけるスライドユニット32の直進動の経路にまで延びる受け金具34(受け部材)が固定されている。スライドユニット32が保持機構35から解放されてゼンマイばね33の戻り力によって待機位置Pwから動作位置Poまで直進動する際に、スライドユニット32の駆動金具部322aが、受け金具34に係合し、この受け金具34を押すことによって、ドア10が強制位置として決められた閉鎖位置Pdcに位置付けられる。
【0039】
上述した構造の自動ドア装置の動作について説明する。
【0040】
通常時において、強制駆動機構30におけるスライドユニット32のフック金具322bが、
図7Aに示すように、保持機構35におけるロック部材354の引っ掛けピン355に引っ掛かって、ゼンマイばね33によって動作位置Po方向に付勢されるスライドユニット32が待機位置Pwに保持された状態となっている(
図1及び
図11参照)。このとき、各シリンダ31a、31b内のピストン311a、311bは、待機位置Pwに保持されるスライドユニット32と逆側の動作位置Po側に位置している(
図11参照)。この状態で、通常駆動機構20(モータ21、プーリ23a、23b、駆動ベルト22)により、ドア10は、保持機構35によって待機位置Pwに保持されたスライドユニット32に干渉することなく、
図1に示す開放位置Pdoと
図8に示す閉鎖位置Pdcとの間を直進動する(ドア10の通常の開閉動作)。
【0041】
火災が発生し、監視員が積極的に、あるいは、通電経路の火災によって、強制駆動機構30における保持機構35のソレノイド本体351aへの通電が遮断されると、スライドユニット32(フック金具部322b)の保持機構35(ロック部材354の引っ掛けピン355)による保持状態が解放され(
図7B参照)、ゼンマイばね33によって引っ張られるスライドユニット32が待機位置Pwから第1シリンダ31a及び第2シリンダ31b上を摺動して動作位置Poまで移動する。このとき、ドア10が開放位置Pdoにあると、スライドユニット32の駆動金具部322aが、
図11に示すように待機位置Pwの近傍に位置する受け金具34に当たり、スライドユニット32の動作位置Poまでの移動によって、受け金具34を介してドア10が閉鎖位置Pdcの方向に押され、
図9に示すように、スライドユニット32と一体となってドア10が閉鎖位置Pdcに向けて移動する。そして、スライドユニット32が
図12に示すように動作位置Poに達すると、ドア10は、
図10に示すように、強制位置として決められた閉鎖位置Pdcに位置付けられる。
【0042】
なお、上記のように強制駆動機構30が動作する際には、通常駆動機構20のモータ21には通電されていないことは勿論、制動もかけられていないので、駆動ベルト22に取り付け金具13を介して結合するドア10は、通常駆動機構20から大きな抵抗力を受けることなく、スライドユニット32とともに移動し得る。
【0043】
スライドユニット32が待機位置Pwから動作位置Poまで移動する際に、各シリンダ31a、31b内においてピストン311a、311bが、スライドユニット32の移動方向とは逆方向に、
図11及び
図12に示すように、動作位置Po側から待機位置Pw側に移動する。そのピストン311a、311bの移動当初においては、各シリンダ31a、31bのピストン311a、311bの両側の空間が両端部に形成された細孔(312b、313a:
図5、
図6A、
図6B参照)にて大気に開放されてその両空間がともに大気圧となっていることから、各ピストン311a、311bは、スライドユニット32の移動に伴って比較的高速に移動する。その過程で、各シリンダ31a、31bのベース板41側の端部に設けられたリーク孔313a(
図6A及び
図6B参照)から空気が吐出されるものの、各ピストン311a、311bの移動に伴ってベース板41側(待機位置Pw側)の空間の空気が圧縮され、その空気が圧縮されていくことにより移動する各ピストン311a、311bに抗力が作用する。この各ピストン311a、311bに作用する抗力によって当該各ピストン311a、311bに連結されたスライドユニット32は、その速度が低減されつつ移動して動作位置Poに至る。
【0044】
このように移動するスライドユニット32の駆動金具部322aによって押される受け金具34と一体となったドア10も、開放位置Pdoから当初比較的高速に移動するものの、途中から徐々に速度を落としつつ閉鎖位置Pdcに向かって移動し、最終的に閉鎖位置Pdcに位置付けられる。
【0045】
ゼンマイばね33によって引っ張られるスライドユニット32が待機位置Pwから第1シリンダ31a及び第2シリンダ31b上を摺動して動作位置Poまで移動するときに、前述した場合と異なり、もともとドア10が強制的に移動させるべき閉鎖位置Pdcにあると、前述した各シリンダ31a、31b内の各ピストン311a、311bの動きによって、各ピストン311a、311bに連結するスライドユニット32が、
図13に示すように、当初、待機位置Pwから比較的高速にて移動し、ある位置Pからより低速になって移動してドア10に固定される受け金具34に、
図14に示すように近接し、ドア動作位置Poに達したときに、スライドユニット32の駆動金具部322aが受け金具34に突き当たる。この状態で受け金具34の動きが規制され、受け金具34と一体となるドア10が閉鎖位置Pdcに位置付けられる。
【0046】
上述したような自動ドア装置によれば、スライドユニット32に第1及び第2連結機構36a、36bによって連結される各シリンダ31a、31b内のピストン311a、311bによって、スライドユニット32の待機位置Pwから動作位置Poへの直進動に際しての移動速度を低減させることができるので、もともとドア10が強制的に移動させられるべき閉鎖位置Pdcにあっても、スライドユニット32の駆動金具部322aがドア10に固定された受け金具34に衝突する際の衝撃力をより小さくすることができ、より静粛に当該ドア10を閉鎖位置Pdcに位置付けることができる。その結果、スライドユニット32の金具322(駆動金具部322a)や受け金具34、また、受け金具34のドア10への取付けを特別強固な構造にする必要がなく、ドア10を強制的に閉鎖位置Pdcに移動させる動作の点検においても、騒音の発生を最小限度に抑えることができるようになる。
【0047】
また、ドア10が強制的に移動させられるべき位置ではない開放位置Pdoにある場合には、より低速にて、そして、より小さい運動エネルギーをもってドア10が閉鎖位置Pdcに位置付けられるようになるので、万が一、人がドア10に挟まれることがあっても、その人に対する被害を最小限にとどめることができる。
【0048】
更に、ドア10を強制的に閉鎖位置Pdcに移動させる動作の点検が終了した後に、各シリンダ31a、31bの端部に形成されたリーク孔313a(
図6A及び
図6B参照)から高圧の空気を各シリンダ31a、31bに注入することにより、各ピストン311a、311bを動作前の位置に戻すこと、即ち、各ピストン311a、311bに連結されるスライドユニット32をゼンマイばね33の戻り力に抗して待機位置Pwに戻すことを比較的容易に行うことができる。
【0049】
なお、前述した自動ドア装置の強制駆動機構30では、2つのシリンダ31a、31bを用いたが、1つのシリンダを用いるものであってもよい。1つのシリンダを用いた場合におけるスライドユニット32の移動距離と移動速度との関係は、例えば、
図15Aに示すようになり、また、2つのシリンダ31a、31bを用いた場合におけるスライドユニット32の移動距離と移動速度との関係は、例えば、
図15Bに示すようになる。より短い距離にて、速度をより低減させるには、2つのシリンダ31a、31bを用いることが有利である。よって、特にストロークが長い扉では2つのシリンダを用いることによって一層好ましい性能を得ることができるが、1つのシリンダでも実用可能な性能を得ることはできる。また、1つのシリンダであっても、シリンダの断面積を調整することによって、2つのシリンダ31a、31bを用いた場合の特性に近づけることも可能である。
【0050】
また、各シリンダ31a、31bのベース板41側の端部に形成されたリーク孔313aの開口のサイズを調整ネジ314aによって調整することにより、シリンダ31a、31b内でのピストン311a、311bの移動速度、即ち、スライドユニット32の移動速度を調整することができる。
【0051】
なお、シリンダの数は、3つ以上であってもよい。ただし、3つ以上のシリンダを用いる場合、更に構造が複雑になるとともに、3つ以上のピストンが各シリンダ内で同調して移動するように調整することが更に難しくなる。
【0052】
また、前述した自動ドア装置は、防火扉として使用されるものであって、火災の発生時には、ドアを強制位置として決められた閉鎖位置Pdcに位置付けるものであったが、避難用扉として使用されるものとして、火災の発生時に、ドアを強制位置として決められた開放位置Pdoに位置付けるものであってもよい。