(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、上記のような超音波式ガスメータでは、伝搬時間エラー遮断という機能がある。これは、測定対象となるガス以外のガスが流路内に侵入している場合、超音波式流速センサや電子回路等が故障した場合、及び、流路内に水が浸入した場合などに、伝搬時間が異常となることに基づいて、エラー判断してガスを遮断する機能である。また、伝搬時間エラーが発生すると超音波式ガスメータに設けられる復帰ボタンを押しても遮断弁は開動作せず、例えば作業員等が設定器を用いて復帰許可電文を超音波式ガスメータに送信して復帰ボタンを押すことにより遮断弁は開動作することとなる。このように、需要者が復帰ボタンを押すだけでは遮断弁を開動作させないようにすることで、簡易な復帰を禁止して安全性や計測性能について保護を図っている。
【0006】
しかし、従来の超音波式ガスメータが新築の一般住宅等に新規に設置された場合、伝搬時間エラーが発生してしまうことがあった。例えば、ガス調整器からガス器具までの間に設置されるガス栓や配管(フレキ管)は、製造工場からの出荷時においてヘリウムガスを用いた気密検査が行われる。そして、ガス栓や配管内にヘリウムガスが残留していた場合、このヘリウムガスが原因となり伝搬時間エラーが発生してしまう。特に、従来の超音波式ガスメータでは、伝搬時間エラーが発生すると復帰ボタンを押すだけでは遮断弁は開動作せず、設定器等を用いて伝搬時間エラー遮断を解除しなければならなくなる。このため、伝搬時間エラーの発生時に作業員が近くに居ればよいが、近くに居ない場合には一般住宅等に出向き、エラー解除する必要があり、工数増加の原因となっていた。
【0007】
そこで、伝搬時間エラー解除についても需要者が復帰ボタンを操作するだけで、簡易にエラー解除できるようにすることが考えられるが、この場合には安全性や計測性能について保護を図ることができなくなってしまう。
【0008】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、安全性や計測性能について保護を図りつつ、伝搬時間エラーの解除による工数増加を抑制することが可能な超音波式ガスメータ及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
また、本発明の超音波式ガスメータは、ガス流路内に間欠的に超音波信号を送信する送信手段と、超音波信号を受信する受信手段と、送信手段により超音波信号が送信されてから、受信手段により超音波信号が受信されるまでの伝搬時間が所定時間範囲内であるかを判断する判断手段と、判断手段により伝搬時間が所定時間範囲内でないと判断された場合に、遮断弁を閉動作させてガス流路におけるガスの流れを止める遮断手段と、所定値以上の流量を初回検出してから規定時間経過後にガス消費の傾向を示すガス消費パターン、及び、流量区分毎の使用時間の少なくとも1つについて学習を開始する学習手段と、学習手段による学習開始前において伝搬時間が所定時間範囲内でないと判断されて遮断弁が閉動作された場合に、
規定の装置から復帰許可電文の入力を要せず、復帰ボタンを押すことにより当該遮断弁を開動作させる復帰手段と、学習手段による学習開始後において伝搬時間が所定時間範囲内でないと判断されて遮断弁が閉動作された場合に、
規定の装置から復帰許可電文が入力されずに復帰ボタンを押す
ことでは遮断弁が開動作され
ず、規定の装置から復帰許可電文が入力されて復帰ボタンが押されることにより遮断弁を開動作させる復帰禁止手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の超音波式ガスメータによれば、学習開始後において伝搬時間が所定時間範囲内でないと判断されて遮断弁が閉動作された場合に、復帰ボタンを押すだけでは遮断弁が開動作されない状態にする。ここで、学習開始後はヘリウムガスがパージされないまま残留している可能性が極めて低い。よって、学習開始後には、超音波式流速センサや電子回路等が故障した場合、及び、流路内に水が浸入した場合などに、伝搬時間が異常となって遮断弁は閉じられることとなる。そして、弁開するためには規定の装置からの信号入力を必要とし、安全性や計測性能について保護を図ることができる。また、学習開始前において伝搬時間が所定時間範囲内でないと判断されて遮断弁が閉動作された場合に、復帰ボタンを押すことにより遮断弁を開動作させる。このため、学習開始前というヘリウムガスがパージされないまま残留している可能性がある場合において遮断弁が閉じられた場合、弁開するためには規定の装置からの信号入力を必要とせず、復帰ボタンを押すことによって弁開できることとなる。よって、伝搬時間エラーの解除による工数増加につながらない。従って、安全性や計測性能について保護を図りつつ、伝搬時間エラーの解除による工数増加を抑制することができる。
【0017】
また、本発明の超音波式ガスメータの制御方法は、ガス流路内に間欠的に超音波信号を送信する送信工程と、超音波信号を受信する受信工程と、送信工程において超音波信号が送信されてから、受信工程において超音波信号が受信されるまでの伝搬時間が所定時間範囲内であるかを判断する判断工程と、判断工程において伝搬時間が所定時間範囲内でないと判断された場合に、遮断弁を閉動作させてガス流路におけるガスの流れを止める遮断工程と、所定値以上の流量を初回検出してから規定時間経過後にガス消費の傾向を示すガス消費パターン、及び、流量区分毎の使用時間の少なくとも1つについて学習を開始する学習工程と、学習工程における学習開始前において伝搬時間が所定時間範囲内でないと判断されて遮断弁が閉動作された場合に、
規定の装置から復帰許可電文の入力を要せず、復帰ボタンを押すことにより当該遮断弁を開動作させる復帰工程と、学習工程における学習開始後において伝搬時間が所定時間範囲内でないと判断されて遮断弁が閉動作された場合に、
規定の装置から復帰許可電文が入力されずに復帰ボタンを押す
ことでは遮断弁が開動作され
ず、規定の装置から復帰許可電文が入力されて復帰ボタンが押されることにより遮断弁を開動作させる復帰禁止工程と、を有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の超音波式ガスメータの制御方法によれば、学習開始後において伝搬時間が所定時間範囲内でないと判断されて遮断弁が閉動作された場合に、復帰ボタンを押すだけでは遮断弁が開動作されない状態にする。ここで、学習開始後はヘリウムガスがパージされないまま残留している可能性が極めて低い。よって、学習開始後には、超音波式流速センサや電子回路等が故障した場合、及び、流路内に水が浸入した場合などに、伝搬時間が異常となって遮断弁は閉じられることとなる。そして、弁開するためには規定の装置からの信号入力を必要とし、安全性や計測性能について保護を図ることができる。また、学習開始前において伝搬時間が所定時間範囲内でないと判断されて遮断弁が閉動作された場合に、復帰ボタンを押すことにより遮断弁を開動作させる。このため、学習開始前というヘリウムガスがパージされないまま残留している可能性がある場合において遮断弁が閉じられた場合、弁開するためには規定の装置からの信号入力を必要とせず、復帰ボタンを押すことによって弁開できることとなる。よって、伝搬時間エラーの解除による工数増加につながらない。従って、安全性や計測性能について保護を図りつつ、伝搬時間エラーの解除による工数増加を抑制することができる。
【0019】
なお、上記規定の装置とは、ガス事業者が手に持って操作し、ガスメータに復帰許可電文を送受信できる設定器(ハンディターミナル)や、網制御装置を介して電話回線を通じて復帰許可電文を送受信できる集中監視システムのセンター設備等を意味する。ガスメータは、この復帰許可電文を受信すると復帰ボタンからの復帰信号入力待ち状態となり、その後、復帰ボタンが押されると遮断弁を復帰(弁開)する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の超音波式ガスメータによれば、安全性や計測性能について保護を図りつつ、伝搬時間エラーの解除による工数増加を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る超音波式ガスメータを示す構成図である。同図に示す超音波式ガスメータ1は、ガス流路内に距離Lだけ離され、かつ、ガス流方向Yに対して角度θをなすように、互いに対向して配置された2つの音響トランスジューサ(送信手段,受信手段)TD1,TD2を有している。
【0023】
2つの音響トランスジューサTD1,TD2は、超音波周波数で作動する例えば圧電式振動子から構成されている。ガス流路には、両音響トランスジューサTD1,TD2の上流側に弁閉によってガス流路を遮断するガス遮断弁(遮断弁)10が設けられている。
【0024】
各トランスジューサTD1,TD2はトランスジューサインタフェース(I/F)回路11a,11bをそれぞれ介して送信回路12及び受信回路13に接続されている。送信回路12は、マイクロコンピュータ(μCOM)14の制御の下で、トランスジューサTD1,TD2の一方を駆動して超音波信号を発生させる信号をパルスバーストの形で送信する。
【0025】
受信回路13は、ガス流路を通過した超音波信号を受信した他方のトランスジューサTD1,TD2からの信号を入力して超音波信号を所定の強さまで増幅する増幅器13aを内蔵している。この増幅器13aの増幅度は、μCOM14によって調整することができる。また、μCOM14には、表示器15及び復帰ボタン16が接続されている。
【0026】
図2は、
図1に示したμCOM14の内部を示す構成図である。μCOM14は、
図2に示すように、プログラムに従って各種の処理を行う中央処理ユニット(CPU)14a、CPU14aが行う処理のプログラムなどを格納した読み出し専用のメモリであるROM14b、及び、CPU14aでの各種の処理過程で利用するワークエリア、各種データを格納するデータ格納エリアなどを有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM14cなどを内蔵している。また、これらはバスライン14dによって互いに接続されている。
【0027】
また、CPU14aは、伝搬時間エラー判断機能(判断手段)、伝搬時間エラー遮断機能(遮断手段)、伝搬時間エラー解除機能、及び、学習機能(学習手段)を有している。
【0028】
伝搬時間エラー判断機能は、一方のトランスジューサTD1,TD2により超音波信号が送信されてから、他方のトランスジューサTD1,TD2により超音波信号が受信されるまでの伝搬時間が所定時間範囲内であるかを判断する機能である。ここで、所定時間範囲とは、本実施形態において160μs以上330μs以下である。一般にガス流路内に測定対象となるガスが満たされている場合、伝搬時間は160μs以上330μs以下の範囲に収まる。
【0029】
一方、測定対象となるガス以外のガスが流路内に侵入している場合、超音波式流速センサや電子回路等が故障した場合、及び、流路内に水が浸入した場合などには、伝搬時間が160μs未満又は330μsを超えることとなる。このため、CPU14aは伝搬時間が所定時間範囲内であるかを判断することで異常状態であるか否かを判断することができる。
【0030】
なお、所定時間範囲を上記の如くした理由は以下の通りである。すなわち、流量10m
3の流量を有するLPガスの流れに逆らって超音波を送受信した場合、伝搬時間は330μsを超えることがないからである。一方、流量10m
3の流量を有する空気の流れに沿って超音波を送受信した場合、伝搬時間は160μsを下回ることがないからである。
【0031】
伝搬時間エラー遮断機能は、伝搬時間エラー判断機能により伝搬時間が所定時間範囲内でないと判断された場合に、ガス遮断弁10を閉動作させてガス流路におけるガスの流れを止める機能である。上記の如く異常状態においてガスを使用させると、安全面及び計測面について保護を図ることができなくなってしまう。このため、伝搬時間エラー遮断機能は、安全面及び計測面について保護を図るべく、ガス遮断弁10を閉動作させる。
【0032】
伝搬時間エラー解除機能は、伝搬時間エラー遮断機能によりガス遮断弁10が閉動作された場合に、設定器20が接続されて復帰許可電文が入力され、且つ復帰ボタン16が押されることによりガス遮断弁10を開動作させる機能である。上記の異常状態においてガスの使用を確実に禁止するためには、需要者による復帰ボタン16の操作のみによってガス遮断弁10が弁開しないことが望ましい。異常状態の回復前に需要者の操作によってガスが再使用されてしまう可能性があるからである。このため、伝搬時間エラー解除機能は、例えば作業員が所持する設定器20からの復帰許可電文の入力を経てガス遮断弁10を開動作させることとしている。
【0033】
学習機能は、ガスの使用状態を学習する機能である。この学習機能は、超音波式ガスメータ1が設置され、21L/h(所定値)以上の流量を初回検出してから1時間(規定時間)経過後に実行される。ここで学習される内容は、ガス消費の傾向を示すガス消費パターンや流量区分毎のガス使用時間である。
【0034】
この学習機能は、学習時において14日間ガス流量を監視し、この14日間を前期3日と後期11日とに分け、ガス遮断弁10を弁閉動作させるための流量遮断値をガス消費パターンに応じて設定する。なお、上記流量遮断値には、合計流量の遮断値と、増加流量の遮断値とがある。また、学習機能は、流量区分毎のガス使用時間を監視し、ガス遮断弁10を弁閉動作させるための連続使用遮断時間を流量区分毎に設定する。
【0035】
さらに、本実施形態において伝搬時間エラー遮断機能は、学習機能による学習開始前においては伝搬時間が所定時間範囲内でないと判断された場合であっても、ガス遮断弁10を閉動作させないこととしている。学習開始前においては、ガス調整器からガス器具までの間のガス栓や配管(フレキ管)内にヘリウムガスが残留しており、パージされていない可能性がある。このため、ガス遮断弁10を閉動作させてしまうと、例えば作業員が超音波ガスメータ1の設置場所まで出向き、設定器20を用いてガス遮断弁10を開動作させることとなってしまう。しかし、本実施形態では学習開始前というヘリウムガスがパージされないまま残留している可能性がある場合において遮断弁は閉じないこととしている。これにより、設定器20等を用いた解除を行う必要がなく、工数増加につながらないようにしている。
【0036】
なお、伝搬時間エラー遮断機能は、学習機能による学習開始後において伝搬時間が所定時間範囲内でないと判断された場合、ガス遮断弁10を閉動作させる。ここで、学習開始後はヘリウムガスがパージされないまま残留している可能性が極めて低い。よって、学習開始後には、超音波式流速センサや電子回路等が故障した場合、及び、流路内に水が浸入した場合などに、伝搬時間が異常となって遮断弁は閉じられることとなる。これにより、安全性や計測性能について保護を図ることができる。
【0037】
次に、本実施形態に係る超音波式ガスメータ1の詳細な動作を、フローチャートを参照して説明する。
図3は、本実施形態に係る超音波式ガスメータ1の制御方法を示すフローチャートであって、ガス遮断弁10の弁閉に関する処理を示している。
【0038】
図3に示すように、CPU14aは、送信回路12を制御してトランスジューサI/F回路11a,11bを動作させることによって、音響トランスジューサTD1,TD2のいずれか一方から超音波信号を送信させる(S1)。次に、他方の音響トランスジューサTD1,TD2は超音波信号を受信し(S2)、CPU14aは、他方の音響トランスジューサTD1,TD2により受信された超音波信号を増幅器13aによって所定強度まで増幅し、伝搬時間を算出する(S3)。なお、伝搬時間の算出は、ガスの流れに対して上流側からの超音波信号の送信、及び、下流側からの超音波信号の送信のそれぞれについて個別に行われる。
【0039】
その後、CPU14aは、ステップS3において算出された伝搬時間が所定時間範囲内であるか否かを判断する(S4)。所定時間範囲内でないと判断した場合(S4:NO)、CPU14aはカウンタ値をインクリメントさせ(S5)、カウンタ値が規定値以上であるか否かを判断する(S6)。ここで、規定値は例えば初期的に「15」であって、可変の数であることが望ましい。
【0040】
カウンタ値が規定値以上でないと判断した場合(S6:NO)、処理はステップS1に移行する。一方、カウンタ値が規定値以上であると判断した場合(S6:YES)、CPU14aは学習前であるか否かを判断する(S7)。学習前でないと判断した場合(S7:NO)、ガス栓や配管(フレキ管)内にヘリウムガスが残留している可能性が少なく真の異常状態と判断できる。このため、CPU14aは、安全性や計測性能について保護を図るべく、ガス遮断弁10を閉動作させる(S8)。その後、
図3に示す処理は終了する。
【0041】
一方、学習前であると判断した場合(S7:YES)、ガス栓や配管(フレキ管)内にヘリウムガスが残留している可能性があるため、真の異常状態でない可能性がある。このため、CPU14aは、設定器20等を用いた解除を行う必要がないようにするために、ガス遮断弁10を閉動作させることなく、カウンタ値をリセットする(S9)。その後、
図3に示す処理は終了する。
【0042】
ところで、伝搬時間が所定時間範囲内であると判断した場合(S4:YES)、伝搬時間は正常であることから、CPU14aは、カウンタ値をリセットし(S9)、その後、
図3に示す処理は終了する。
【0043】
図4は、本実施形態に係る超音波式ガスメータ1の制御方法を示すフローチャートであって、ガス遮断弁10の弁開に関する処理を示している。
図4に示すように、まずCPU14aは、設定器20より復帰許可電文が入力されたか否かを判断する(S11)。
【0044】
設定器20より復帰許可電文が入力されていないと判断した場合(S11:NO)、入力されたと判断されるまで、この処理が繰り返される。一方、設定器20より復帰許可電文が入力されたと判断した場合(S11:YES)、CPU14aは復帰ボタン16が押下されたか否かを判断する(S12)。復帰ボタン16が押下されていないと判断した場合(S12:NO)、復帰ボタン16が押下されたと判断されるまで、この処理が繰り返される。一方、復帰ボタン16が押下されたと判断した場合(S12:YES)、CPU14aは、ガス遮断弁10を開動作させる(S13)。その後、
図4に示す処理は終了する。
【0045】
このようにして、本実施形態に係る超音波式ガスメータ1及びその制御方法によれば、学習開始前においては伝搬時間が所定時間範囲内でないと判断された場合であってもガス遮断弁10を閉動作させない。このため、学習開始前というヘリウムガスがパージされないまま残留している可能性がある場合においてガス遮断弁10は閉じないこととなる。よって、伝搬時間エラーの解除を行う必要が無く、工数増加につながらない。また、学習開始後において伝搬時間が所定時間範囲内でないと判断された場合にガス遮断弁10を閉動作させる。ここで、学習開始後はヘリウムガスがパージされないまま残留している可能性が極めて低い。よって、学習開始後には、超音波式流速センサや電子回路等が故障した場合、及び、流路内に水が浸入した場合などに、伝搬時間が異常となってガス遮断弁10は閉じられることとなる。そして、弁開するためには規定の装置からの信号入力を必要とし、安全性や計測性能について保護を図ることができる。従って、安全性や計測性能について保護を図りつつ、伝搬時間エラーの解除による工数増加を抑制することができる。
【0046】
また、所定時間範囲は、160μs以上330μs以下である。ここで、流量10m
3の流量を有するLPガスの流れに逆らって超音波信号を送受信した場合、伝搬時間は330μsを超えることはない。一方、流量10m
3の流量を有する空気の流れに沿って超音波信号を送受信した場合、伝搬時間は160μsを下回ることがない。このため、流路がLPガスや空気で満たされている場合、伝搬時間は160μs以上330μs以下の範囲に収まる。よって、LPガス向けの超音波式ガスメータにおいて、ヘリウムガスが侵入した場合、超音波式流速センサや電子回路等が故障した場合、及び、流路内に水が浸入した場合などに、伝搬時間が異常となることに基づいて、エラー判断して適切に伝搬時間エラーを判断することができる。
【0047】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態に係る超音波式ガスメータ1及びその制御方法は、第1実施形態のものと同様であるが、処理内容が第1実施形態のものと異なっている。以下、相違点について説明する。
【0048】
第2実施形態に係る超音波式ガスメータ1は、学習前において伝搬時間が所定時間範囲内でない場合、ガス遮断弁10の閉動作を禁止するのではなく、設定器20を用いることなく復帰ボタン16を押すだけで、ガス遮断弁10を開動作させることとしている。
【0049】
次に、第2実施形態に係る超音波式ガスメータ1の詳細な動作を、フローチャートを参照して説明する。
図5は、第2実施形態に係る超音波式ガスメータ1の制御方法を示すフローチャートであって、ガス遮断弁10の弁閉に関する処理を示している。なお、
図5に示すステップS31〜S36、及びステップS40は、
図3に示したステップS1〜S6、及びステップS10と同様の処理であるため、説明を省略する。
【0050】
図5に示すように、カウンタ値が規定値以上であると判断した場合(S26:YES)、CPU14aは学習前であるか否かを判断する(S27)。学習前でないと判断した場合(S27:NO)、ガス栓や配管内にヘリウムガスが残留している可能性が少なく真の異常状態と判断できる。このため、CPU14aは、安全性や計測性能について保護を図るべく、ガス遮断弁10を閉動作させる(S28)。このとき、CPU14aは、設定器20からの復帰許可電文により弁開可能な第1弁閉状態として、ガス遮断弁10を閉動作させる。その後、
図5に示す処理は終了する。
【0051】
一方、学習前であると判断した場合(S27:YES)、ガス栓や配管内にヘリウムガスが残留している可能性があるため、真の異常状態でない可能性がある。このため、CPU14aは、設定器20を用いることなく復帰ボタン16の操作のみによって弁開可能な第2弁閉状態として、ガス遮断弁10を閉動作させる(S29)。その後、
図5に示す処理は終了する。
【0052】
図6は、第2実施形態に係る超音波式ガスメータ1の制御方法を示すフローチャートであって、ガス遮断弁10の弁開に関する処理を示している。
図6に示すように、まずCPU14aは、第1弁閉状態であるか否かを判断する(S31)。第1弁閉状態であると判断した場合(S31:YES)、CPU14aは設定器20より復帰許可電文が入力されたか否かを判断する(S32)。
【0053】
設定器20より復帰許可電文が入力されていないと判断した場合(S32:NO)、入力されたと判断されるまで、この処理が繰り返される。一方、設定器20より復帰許可電文が入力されたと判断した場合(S32:YES)、CPU14aは復帰ボタン16が押下されたか否かを判断する(S33)。復帰ボタン16が押下されていないと判断した場合(S33:NO)、復帰ボタン16が押下されたと判断されるまで、この処理が繰り返される。一方、復帰ボタン16が押下されたと判断した場合(S33:YES)、CPU14aは、ガス遮断弁10を開動作させる(S34)。その後、
図6に示す処理は終了する。
【0054】
このように、第1弁閉状態においては、復帰ボタン16を押しただけではガス遮断弁10を開動作させず、ステップS32の処理が復帰禁止手段として機能することとなる。
【0055】
一方、第1弁閉状態でないと判断した場合(S31:NO)、第2弁閉状態であると判断できることから、CPU14aは復帰ボタン16が押下されたか否かを判断する(S33)。復帰ボタン16が押下されていないと判断した場合(S33:NO)、復帰ボタン16が押下されたと判断されるまで、この処理が繰り返される。一方、復帰ボタン16が押下されたと判断した場合(S33:YES)、CPU14aは、ガス遮断弁10を開動作させる(S34)。その後、
図6に示す処理は終了する。
【0056】
このように、第2弁閉状態においては、復帰ボタン16を押すことによりガス遮断弁10を開動作させ、ステップS33,S34の処理が復帰手段として機能することとなる。
【0057】
このようにして、本実施形態に係る超音波式ガスメータ1及びその制御方法によれば、
学習開始後において伝搬時間が所定時間範囲内でないと判断されてガス遮断弁10が閉動作された場合に、復帰ボタンを押すだけではガス遮断弁10が開動作されない状態にする。ここで、学習開始後はヘリウムガスがパージされないまま残留している可能性が極めて低い。よって、学習開始後には、超音波式流速センサや電子回路等が故障した場合、及び、流路内に水が浸入した場合などに、伝搬時間が異常となってガス遮断弁10は閉じられることとなる。そして、弁開するためには設定器20からの信号入力を必要とし、安全性や計測性能について保護を図ることができる。また、学習開始前において伝搬時間が所定時間範囲内でないと判断されてガス遮断弁10が閉動作された場合に、復帰ボタン16を押すことにより遮断弁を開動作させる。このため、学習開始前というヘリウムガスがパージされないまま残留している可能性がある場合においてガス遮断弁10が閉じられた場合、弁開するためには設定器20からの信号入力を必要とせず、復帰ボタン16を押すことによって弁開できることとなる。よって、伝搬時間エラーの解除による工数増加につながらない。従って、安全性や計測性能について保護を図りつつ、伝搬時間エラーの解除による工数増加を抑制することができる。
【0058】
また、第1実施形態と同様に、ヘリウムガスが侵入した場合、超音波式流速センサや電子回路等が故障した場合、及び、流路内に水が浸入した場合などに、伝搬時間が異常となることに基づいて、エラー判断して適切に伝搬時間エラーを判断することができる。
【0059】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。例えば、上記実施形態において各値は上記した値に限らず、適宜変更可能である。
【0060】
さらに、本実施形態では、ヘリウムガスの残留による工数増加を抑制することを目的としているが、ヘリウムガスに限らず、他のガスによる工数増加を抑制するものであってもよい。
【0061】
なお、上記第1実施形態は、学習前において伝搬時間が所定時間範囲内でない場合、ガス遮断弁10の閉動作を禁止するものである。また、第2実施形態は、学習前において伝搬時間が所定時間範囲内でない場合、ガス遮断弁10の閉動作を禁止するのではなく、設定器20等を用いることなく復帰ボタン16などの操作を行うことで、ガス遮断弁10を開動作させることとしている。このような第1及び第2実施形態は、学習の前後において処理内容を異ならせるという点で、技術的特徴を共通とするものである。