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特許5689591超音波診断装置及び超音波画像処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5689591
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】超音波診断装置及び超音波画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/08 20060101AFI20150305BHJP
【FI】
   A61B8/08
【請求項の数】17
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2009-132305(P2009-132305)
(22)【出願日】2009年6月1日
(65)【公開番号】特開2010-274043(P2010-274043A)
(43)【公開日】2010年12月9日
【審査請求日】2012年5月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100100952
【弁理士】
【氏名又は名称】風間 鉄也
(74)【代理人】
【識別番号】100101812
【弁理士】
【氏名又は名称】勝村 紘
(74)【代理人】
【識別番号】100070437
【弁理士】
【氏名又は名称】河井 将次
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(74)【代理人】
【識別番号】100127144
【弁理士】
【氏名又は名称】市原 卓三
(72)【発明者】
【氏名】嶺 喜隆
【審査官】 宮澤 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−087601(JP,A)
【文献】 特開2009−112468(JP,A)
【文献】 特開2007−125169(JP,A)
【文献】 特開2008−188417(JP,A)
【文献】 特開2001−340350(JP,A)
【文献】 特開2004−105502(JP,A)
【文献】 特開2005−058584(JP,A)
【文献】 特開2006−055407(JP,A)
【文献】 特開2009−160013(JP,A)
【文献】 特開2010−187731(JP,A)
【文献】 特表2004−504879(JP,A)
【文献】 特表2006−523115(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/090484(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の比較対象の境界面が第1の領域として設定された第1のボリュームデータと、第2の比較対象の境界面が第2の領域として設定された第2のボリュームデータとの空間的な位置合わせを行う位置合わせ手段と、
前記第1の比較対象の境界面と、前記第2の比較対象の境界面との間の距離を求め、前記距離に応じた色彩を割り当てる情報生成手段と、
前記割り当てられた色彩に基づいて超音波画像を生成する画像生成手段と、
前記生成された超音波画像を表示する表示手段と、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
所定の医用画像診断装置によって取得され第1の比較対象を含む第1のボリュームデータと、超音波診断装置によって取得され第2の比較対象を含む第2のボリュームデータと、の空間的な位置合わせを行う位置合わせ手段と、
前記第1のボリュームデータにおける前記第1の比較対象の境界面を基準とする第1の領域と、前記第2のボリュームデータにおける前記第2の比較対象の境界面を基準とする第2の領域とを、特定する領域特定手段と、
前記第1の領域と前記第2の領域との間の位置関係に関する情報を生成する情報生成手段と、
前記第1の領域と前記第2の領域との間の距離に応じてカラーコードに変換された前記各位置関係に関する情報を、前記第1の領域又は前記第2の領域上の対応する位置に割り当てることで、前記前記位置関係に関する情報を含む超音波画像を生成する画像生成手段と、
前記生成された超音波画像を表示する表示手段と、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
所定の医用画像診断装置によって取得され第1の比較対象を含む第1のボリュームデータと、超音波診断装置によって取得され第2の比較対象を含む第2のボリュームデータと、の空間的な位置合わせをリアルタイムで行う位置合わせ手段と、
前記第1のボリュームデータにおける前記第1の比較対象の境界面を基準とする第1の領域と、前記第2のボリュームデータにおける前記第2の比較対象の境界面を基準とする第2の領域とを、リアルタイムに特定し更新する領域特定手段と、
前記第1の領域と前記第2の領域との間の位置関係に関する情報をリアルタイムに生成し更新する情報生成手段と、
前記第1の領域と前記第2の領域との間の距離に応じてカラーコードに変換された前記各位置関係に関する情報を、前記第1の領域又は前記第2の領域上の対応する位置に割り当てることで、前記前記位置関係に関する情報を含む超音波画像をリアルタイムに生成し更新する画像生成手段と、
前記生成された超音波画像をリアルタイムに表示する表示手段と、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
前記画像生成手段は、前記第1或いは前記第2の比較対象の境界面に対応する位置に、前記距離に応じた色を割り当てることにより前記超音波画像を生成する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記第1のボリュームデータは、超音波焼灼治療前の治療対象を前記第1の比較対象として取得されるものであり、
前記第2のボリュームデータは、超音波焼灼治療中において、被検体に穿刺される穿刺針の所定位置を基準として定義される焼灼領域を前記第2の比較対象としてリアルタイムで取得されるものであること、
を特徴とする請求項1乃至のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記第1の領域は、前記第1の比較対象の境界面よりも所定量だけ大きな領域として特定されることを特徴とする請求項1乃至のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記情報生成手段は、前記生成された位置関係に関する情報に基づいて、前記穿刺針の位置修正を支援するための支援情報を生成し、
前記画像生成手段は、前記支援情報を含む前記超音波画像を生成すること、
を特徴とする請求項2又は3記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記医用画像診断装置は、超音波診断装置、X線コンピュータ断層撮影装置、磁気共鳴イメージング装置、核医学診断装置のいずれかであることを特徴とする請求項2又は3記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記位置合わせ手段は、前記第1のボリュームデータ及び前記第2のボリュームデータを用いて計算される相互情報量、エントロピー、相互相関量、ボリュームデータを用いた差分値のうちの少なくとも一つの指標に基づいて、前記位置合わせを行うことを特徴とする請求項1乃至のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記位置合わせ手段は、前記第1のボリュームデータ及び前記第2のボリュームデータのそれぞれに設定された関心領域について、前記指標を計算することを特徴とする請求項記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記位置合わせ手段は、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SIC(Application Specific Integrated Circuit)のいずれかによって構成されていることを特徴とする請求項1乃至10のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項12】
超音波走査によって取得された第1のボリュームデータに第1の比較対象の境界面が第1の領域として設定し、超音波走査によって取得された第2のボリュームデータに第2の比較対象の境界面が第2の領域として設定する設定手段と、
前記第1のボリュームデータと前記第2のボリュームデータとの空間的な位置合わせを行う位置合わせ手段と、
前記第1の比較対象の境界面と、前記第2の比較対象の境界面との間の距離を求め、前記距離に応じた色彩を割り当てる情報生成手段と、
前記割り当てられた色彩に基づいて超音波画像を生成する画像生成手段と、
前記生成された超音波画像を表示する表示手段と
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項13】
超音波走査によってリアルタイムに取得された第1のボリュームデータに第1の比較対象の境界面が第1の領域として設定し、超音波走査によってリアルタイムに取得された第2のボリュームデータに第2の比較対象の境界面が第2の領域として設定する設定手段と、
前記第1のボリュームデータと前記第2のボリュームデータとの空間的な位置合わせをリアルタイムに行う位置合わせ手段と、
前記第1の比較対象の境界面と、前記第2の比較対象の境界面との間の距離をリアルタイムに求め、前記距離に応じた色彩を割り当てる情報生成手段と、
前記割り当てられた色彩に基づいて超音波画像を生成する画像生成手段と、
前記生成された超音波画像を表示する表示手段と、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項14】
前記領域特定手段は、自動境界検出により前記各境界面を検出することを特徴とする請求項2又は3記載の超音波診断装置。
【請求項15】
コンピュータに、
第1の比較対象の境界面が第1の領域として設定された第1のボリュームデータと、第2の比較対象の境界面が第2の領域として設定された第2のボリュームデータとの空間的な位置合わせを実行させる位置合わせ機能と、
前記第1の比較対象の境界面と、前記第2の比較対象の境界面との間の距離を求めさせ、前記距離に応じた色彩を割り当てさせる情報生成機能と、
前記割り当てられた色彩に基づいて超音波画像を生成させる画像生成機能と、
前記生成された超音波画像を表示させる表示機能と、
を実現させることを特徴とする超音波画像処理プログラム。
【請求項16】
コンピュータに、
超音波走査によって取得された第1のボリュームデータに第1の比較対象の境界面が第1の領域として設定させ、超音波走査によって取得された第2のボリュームデータに第2の比較対象の境界面が第2の領域として設定させる設定機能と、
前記第1のボリュームデータと前記第2のボリュームデータとの空間的な位置合わせを実行させる位置合わせ機能と、
前記第1の比較対象の境界面と、前記第2の比較対象の境界面との間の距離を求めさせ、前記距離に応じた色彩を割り当てさせる情報生成機能と、
前記割り当てられた色彩に基づいて超音波画像を生成し更新させる画像生成機能と、
前記生成された超音波画像を表示させる表示機能と、
を実現させることを特徴とする超音波画像処理プログラム。
【請求項17】
コンピュータに、
超音波走査によってリアルタイムに取得された第1のボリュームデータに第1の比較対象の境界面が第1の領域として設定させ、超音波走査によってリアルタイムに取得された第2のボリュームデータに第2の比較対象の境界面が第2の領域として設定させる設定機能と、
前記第1のボリュームデータと前記第2のボリュームデータとの空間的な位置合わせをリアルタイムに実行させる位置合わせ機能と、
前記第1の比較対象の境界面と、前記第2の比較対象の境界面との間の距離をリアルタイムに求めさせ、前記距離に応じた色彩を割り当てさせる情報生成機能と、
前記割り当てられた色彩に基づいて超音波画像を生成させる画像生成機能と、
前記生成された超音波画像を表示させる表示機能と、
を実現させることを特徴とする超音波画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断において、比較すべき対象領域間の境界面間の距離の比較を容易にするために、複数のボリュームデータ間の位置合わせ・関心領域に対する境界面の設定・境界面間の距離計測、および位置情報のパラメトリック表示を行う超音波診断装置及び超音波画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断は、超音波プローブを体表から当てるだけの簡単な操作で心臓の拍動や胎児の動きの様子がリアルタイム表示で得られ、かつ安全性が高いため繰り返して検査を行うことができる。この他、システムの規模がX線、CT、MRIなど他の診断機器に比べて小さく、ベッドサイドへ移動していっての検査も容易に行えるなど簡便な診断手法であると言える。この超音波診断において用いられる超音波診断装置は、それが具備する機能の種類によって様々に異なるが、小型なものは片手で持ち運べる程度のものが開発されており、超音波診断はX線などのように被曝の影響がなく、産科や在宅医療等においても使用することができる。
【0003】
また、近年においては、二次元アレイプローブ(複数の超音波振動子が二次元マトリックス状に配列されたプローブ)、メカニカル4Dプローブ(超音波振動子列をその配列方向と直交する方向に機械的に煽りながら超音波走査を実行可能なプローブ)等を用いて、時系列な超音波画像のボリュームデータ群を取得し、三次元超音波画像をリアルタイムに生成・表示することが可能になっている。さらに、三次元位置合わせの技術により、異なる複数のボリュームデータ間の位置合わせをすることができる。このボリュームデータ間の位置合わせ技術を利用すれば、例えば、治療前において取得されたボリュームデータ内における腫瘍領域と、治療後において取得されたボリュームデータ内における治療域とを視覚的に比較することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の超音波診断装置においては、例えば次のような問題がある。
【0005】
まず、三次元画像上において、比較しようとする対象領域間の三次元的な位置関係を、定量的に把握することができない。特に、超音波焼灼治療を行う場合、治療前の腫瘍に対して、5mm以上のマージン領域が維持された治療域を確保する必要があるが、従来の装置では、この様なマージン領域を確保できたか否かを客観的に判断することはできない。さらに、超音波診断装置を用いたリアルタイムでのモニタリングは、呼吸や画像取得時の姿勢等に起因する体動が発生しやすい。係る状況下で、定量的情報なしに比較しようとする対象領域間の三次元的な位置関係を判断することは、困難である。
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、三次元画像上において、比較しようとする対象領域間の三次元的な位置関係を、定量的且つ迅速に把握することができる超音波診断装置及び超音波画像処理プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
【0008】
一実施形態に係る超音波診断装置は、第1の比較対象の境界面が第1の領域として設定された第1のボリュームデータと、第2の比較対象の境界面が第2の領域として設定された第2のボリュームデータとの空間的な位置合わせを行う位置合わせ手段と、前記第1の比較対象の境界面と、前記第2の比較対象の境界面との間の距離を求め、前記距離に応じた色彩を割り当てる情報生成手段と、前記割り当てられた色彩に基づいて超音波画像を生成する画像生成手段と、前記生成された超音波画像を表示する表示手段と、を具備することを特徴とするものである。
他の実施形態に係る超音波診断装置は、所定の医用画像診断装置によって取得され第1の比較対象を含む第1のボリュームデータと、超音波診断装置によって取得され第2の比較対象を含む第2のボリュームデータと、の空間的な位置合わせを行う位置合わせ手段と、前記第1のボリュームデータにおける前記第1の比較対象の境界面を基準とする第1の領域と、前記第2のボリュームデータにおける前記第2の比較対象の境界面を基準とする第2の領域とを、特定する領域特定手段と、前記第1の領域と前記第2の領域との間の位置関係に関する情報を生成する情報生成手段と、前記第1の領域と前記第2の領域との間の距離に応じてカラーコードに変換された前記各位置関係に関する情報を、前記第1の領域又は前記第2の領域上の対応する位置に割り当てることで、前記前記位置関係に関する情報を含む超音波画像を生成する画像生成手段と、前記生成された超音波画像を表示する表示手段と、を具備することを特徴とするものである。
他の実施形態に係る超音波診断装置は、所定の医用画像診断装置によって取得され第1の比較対象を含む第1のボリュームデータと、超音波診断装置によって取得され第2の比較対象を含む第2のボリュームデータと、の空間的な位置合わせをリアルタイムで行う位置合わせ手段と、前記第1のボリュームデータにおける前記第1の比較対象の境界面を基準とする第1の領域と、前記第2のボリュームデータにおける前記第2の比較対象の境界面を基準とする第2の領域とを、リアルタイムに特定し更新する領域特定手段と、前記第1の領域と前記第2の領域との間の位置関係に関する情報をリアルタイムに生成し更新する情報生成手段と、前記第1の領域と前記第2の領域との間の距離に応じてカラーコードに変換された前記各位置関係に関する情報を、前記第1の領域又は前記第2の領域上の対応する位置に割り当てることで、前記前記位置関係に関する情報を含む超音波画像をリアルタイムに生成し更新する画像生成手段と、前記生成された超音波画像をリアルタイムに表示する表示手段と、を具備することを特徴とするものである。
他の実施形態に係る超音波診断装置は、超音波走査によって取得された第1のボリュームデータに第1の比較対象の境界面が第1の領域として設定し、超音波走査によって取得された第2のボリュームデータに第2の比較対象の境界面が第2の領域として設定する設定手段と、前記第1のボリュームデータと前記第2のボリュームデータとの空間的な位置合わせを行う位置合わせ手段と、前記第1の比較対象の境界面と、前記第2の比較対象の境界面との間の距離を求め、前記距離に応じた色彩を割り当てる情報生成手段と、前記割り当てられた色彩に基づいて超音波画像を生成する画像生成手段と、前記生成された超音波画像を表示する表示手段と、を具備することを特徴とするものである。
他の実施形態に係る超音波診断装置は、超音波走査によってリアルタイムに取得された第1のボリュームデータに第1の比較対象の境界面が第1の領域として設定し、超音波走査によってリアルタイムに取得された第2のボリュームデータに第2の比較対象の境界面が第2の領域として設定する設定手段と、前記第1のボリュームデータと前記第2のボリュームデータとの空間的な位置合わせをリアルタイムに行う位置合わせ手段と、前記第1の比較対象の境界面と、前記第2の比較対象の境界面との間の距離をリアルタイムに求め、前記距離に応じた色彩を割り当てる情報生成手段と、前記割り当てられた色彩に基づいて超音波画像を生成する画像生成手段と、前記生成された超音波画像を表示する表示手段と、を具備することを特徴とするものである。
一実施形態に係る超音波画像処理プログラムは、コンピュータに、第1の比較対象の境界面が第1の領域として設定された第1のボリュームデータと、第2の比較対象の境界面が第2の領域として設定された第2のボリュームデータとの空間的な位置合わせを実行させる位置合わせ機能と、前記第1の比較対象の境界面と、前記第2の比較対象の境界面との間の距離を求めさせ、前記距離に応じた色彩を割り当てさせる情報生成機能と、前記割り当てられた色彩に基づいて超音波画像を生成させる画像生成機能と、前記生成された超音波画像を表示させる表示機能と、を実現させることを特徴とするものである。
他の実施形態に係る超音波画像処理プログラムは、コンピュータに、超音波走査によって取得された第1のボリュームデータに第1の比較対象の境界面が第1の領域として設定させ、超音波走査によって取得された第2のボリュームデータに第2の比較対象の境界面が第2の領域として設定させる設定機能と、前記第1のボリュームデータと前記第2のボリュームデータとの空間的な位置合わせを実行させる位置合わせ機能と、前記第1の比較対象の境界面と、前記第2の比較対象の境界面との間の距離を求めさせ、前記距離に応じた色彩を割り当てさせる情報生成機能と、前記割り当てられた色彩に基づいて超音波画像を生成し更新させる画像生成機能と、
前記生成された超音波画像を表示させる表示機能と、を実現させることを特徴とするものである。
他の実施形態に係る超音波画像処理プログラムは、コンピュータに、超音波走査によってリアルタイムに取得された第1のボリュームデータに第1の比較対象の境界面が第1の領域として設定させ、超音波走査によってリアルタイムに取得された第2のボリュームデータに第2の比較対象の境界面が第2の領域として設定させる設定機能と、前記第1のボリュームデータと前記第2のボリュームデータとの空間的な位置合わせをリアルタイムに実行させる位置合わせ機能と、前記第1の比較対象の境界面と、前記第2の比較対象の境界面との間の距離をリアルタイムに求めさせ、前記距離に応じた色彩を割り当てさせる情報生成機能と、前記割り当てられた色彩に基づいて超音波画像を生成させる画像生成機能と、前記生成された超音波画像を表示させる表示機能と、を実現させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
以上本発明によれば、三次元画像上において、比較しようとする対象領域間の三次元的な位置関係を、定量的且つ迅速に把握することができる超音波診断装置及び超音波画像処理プログラムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本実施形態に係る超音波診断装置のブロック構成を示した図である。
図2図2は、本焼灼治療支援機能を用いたRFA治療前検査における処理の流れを示したフローチャートである。
図3図3は、ステップ4、ステップS5における処理の内容を示す概念図である。
図4図4は、異なる第1のボリュームデータと第2のボリュームデータとの間の位置対応付け処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図5図5は、RFA治療前において表示される、同じ断面に対応する超音波画像、X線CT画像等の表示例を示している。
図6図6は、本焼灼治療支援機能を用いたRFA治療の処理の流れを示したフローチャートである。
図7図7は、RFA治療前において表示される、同じ断面に対応する超音波画像、X線CT画像、ボリュームレンダリング画像等の表示例を示している。
図8図8は、患部の境界面と焼灼領域の境界面との間の距離計算手法の一例を説明するための図である。
図9図9(a)、(b)は、境界面間の最短距離に関する情報をパラメトリック表示する超音波画像の表示形態の一例を説明するための図である。
図10図10は、患部領域の中心と焼灼領域の中心との間の距離を用いて生成された、穿刺針(の先端位置)の修正を支援する情報の表示例を示した図である。
図11図11は、本焼灼治療支援機能を用いて、穿刺治療完了から所定時間(例えば5分)経過後における治療効果の検査、穿刺治療完了から所定日程(例えば一ヶ月)経過後におけるRFA治療後検査を実行する場合の処理の流れを示したフローチャートである。
図12図12は、本焼灼治療支援機能を用いて治療効果の検査を行う場合に表示される治療前後の期間に亘る超音波画像の表示例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0019】
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置のブロック構成を示した図である。同図に示すように、本超音波診断装置本体11は、超音波プローブ12、入力装置13、モニタ14、超音波送信ユニット21、超音波受信ユニット22、Bモード処理ユニット23、ドプラ処理ユニット24、画像生成ユニット25、画像メモリ26、画像合成部27、制御プロセッサ28、焼灼治療支援情報生成ユニット29、内部記憶ユニット31、インターフェースユニット33を具備している。
【0020】
装置本体11に内蔵される超音波送信ユニット21および受信ユニット22等は、集積回路などのハードウェアで構成されることもあるが、ソフトウェア的にモジュール化されたソフトウェアプログラムである場合もある。以下、個々の構成要素の機能について説明する。
【0021】
超音波プローブ12は、超音波受信ユニット21からの駆動信号に基づき超音波を発生し、被検体からの反射波を電気信号に変換する複数の圧電振動子、当該圧電振動子に設けられる整合層、当該圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有している。当該超音波プローブ12から被検体Pに超音波が送信されると、当該送信超音波は、体内組織の音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、エコー信号として超音波プローブ12に受信される。このエコー信号の振幅は、反射することになった反射することになった不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。また、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合のエコーは、ドプラ効果により移動体の超音波送信方向の速度成分を依存して、周波数偏移を受ける。
【0022】
なお、本実施形態に係る超音波プローブ12は、ボリュームデータを取得可能なものとして、二次元アレイプローブ(複数の超音波振動子が二次元マトリックス状に配列されたプローブ)、又はメカニカル4Dプローブ(超音波振動子列をその配列方向と直交する方向に機械的に煽りながら超音波走査を実行可能なプローブ)であるとする。しかしながら、当該例に拘泥されず、超音波プローブ12として例えば一次元アレイプローブを採用し、これを手動によって揺動させながら超音波走査をすることでも、ボリュームデータを取得することは可能である。
【0023】
入力装置13は、装置本体11に接続され、オペレータからの各種指示、条件、関心領域(ROI)の設定指示、種々の画質条件設定指示等を装置本体11にとりこむための各種スイッチ、ボタン、トラックボールの他、マウス、キーボード等を有している。
【0024】
モニタ14は、画像生成回路25からのビデオ信号に基づいて、生体内の形態学的情報や、血流情報を画像として表示する。また、モニタ14に表示される三次元画像は、入力装置13からの所定の指示により、断面位置や表示形式、観察方向などを変えることができる。
【0025】
超音波送信ユニット21は、パルス発生器21A、送信遅延部21Bおよびパルサ21Cを有している。パルサ回路では、所定のレート周波数fr Hz(周期;1/fr秒)で、送信超音波を形成するためのレートパルスが繰り返し発生される。また、遅延回路では、チャンネル毎に超音波をビーム状に集束し且つ送信指向性を決定するのに必要な遅延時間が、各レートパルスに与えられる。パルス発生器は、このレートパルスに基づくタイミングで、プローブ12に駆動パルスを印加する。
【0026】
超音波送信ユニット22は、プリアンプ22A、A/D変換器、受信遅延部、加算器等を有している。プリアンプでは、プローブ12を介して取り込まれたエコー信号をチャンネル毎に増幅する。受信遅延部は、増幅されたエコー信号に対し受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与え、その後加算器において加算処理を行う。この加算により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
【0027】
Bモード処理ユニット23は、受信ユニット22からエコー信号を受け取り、対数増幅、包絡線検波処理などを施し、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータを生成する。このデータは、画像生成回路24に送信され、反射波の強度を輝度にて表したBモード画像としてモニタ14に表示される。
【0028】
ドプラ処理ユニット23は、受信ユニット22から受け取ったエコー信号から速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の血流情報を多点について求める。得られた血流情報は画像生成ユニット25に送られ、平均速度画像、分散画像、パワー画像、これらの組み合わせ画像としてモニタ14にカラー表示される。
【0029】
画像生成ユニット25は、超音波スキャンの走査線信号列を、テレビなどに代表される一般的なビデオフォーマットの走査線信号列に変換し、表示画像としての超音波診断画像を生成する。画像生成ユニット25は、画像データを格納する記憶メモリを搭載しており、例えば診断の後に操作者が検査中に記録された画像を呼び出すことが可能となっている。なお、当該画像生成ユニット25に入る以前のデータは、「生データ」と呼ばれることがある。また、画像生成ユニット25は、逐次取得される複数の超音波データを用いて、時系列のボリュームデータを生成する。
【0030】
画像メモリ26は、画像生成ユニット25から受信した画像データを格納する記憶メモリから成る。この画像データは、例えば診断の後に操作者が呼び出すことが可能となっており、静止画的に、あるいは複数枚を使って動画的に再生することが可能でなる。
【0031】
内部記憶ユニット31は、後述する焼灼治療支援機能を実現するための専用プログラム、画像生成・表示処理を実行するための制御プログラムや、診断情報(患者ID、医師の所見等)、診断プロトコル、送受信条件、超音波画像データ、他のモダリティにおいて取得された画像データ、その他のデータ群が保管されている。また必要に応じて、画像メモリ26中の画像の保管などにも使用される。内部記憶ユニット31のデータは、インタフェースユニット33を経由して外部周辺装置へ転送することも可能となっている。
【0032】
制御プロセッサ28は、情報処理装置(計算機)としての機能を持ち、本超音波診断装置本体の動作を制御する制御手段である。制御プロセッサ28は、内部記憶ユニット31から後述する焼灼治療支援機能を実現するための専用プログラム等を読み出してメモリ上に展開し、各種処理に関する演算・制御等を実行する。
【0033】
焼灼治療支援情報生成ユニット29は、後述する焼灼治療支援機能に従う処理を実行し、支援情報を生成する。当該焼灼治療支援情報生成ユニット29が実行する各種処理については、後で詳しく説明する。
【0034】
インタフェースユニット33は、入力装置13、ネットワーク、新たな外部記憶装置(図示せず)に関するインタフェースである。当該装置によって得られた超音波画像等のデータや解析結果等は、インタフェースユニット33により、ネットワークを介して他の装置に転送可能である。また、X線コンピュータ断層撮影装置、磁気共鳴イメージング装置、核医学診断装置等の他のモダリティーによって取得された画像データを、インタフェースユニット33により、ネットワークを介して当該超音波診断装置に取り込むことができる。
【0035】
(焼灼治療支援機能)
次に、本超音波診断装置が具備する焼灼治療支援機能について説明する。この機能は、穿刺針を用いて患部(治療対象)をラジオ波焼灼(Radiofrequency Ablation:RFA)治療する場合に、RFA治療前検査、RFA治療中、RFA治療後検査のそれぞれの場面において、異なるボリュームデータ間の空間的な位置対応付けを実行し、位置対応付けされたボリュームデータ群を用いて、比較しようとする対象領域間の三次元的な位置関係を、定量的且つ迅速に把握可能な支援情報を提供するものである。なお、以下においては、説明を具体的にするため、肝臓癌をRFA治療する場合を例とする。しかしながら、患部を肝臓癌とするのは、あくまでも一例であり、本願発明の技術的思想は、患部が肝臓癌である場合に拘泥されず、例えば乳癌の術前化学療法において、腫瘍の収縮の経時変化の定量的な把握等にも有効である。
【0036】
(RFA治療前検査)
図2は、本焼灼治療支援機能を用いたRFA治療前検査における処理の流れを示したフローチャートである。同図に示すように、まず、肝臓癌の位置大きさを確認し治療計画を立てるために、造影CT撮影(ダイナミックCT、CTA、CTAP等)、磁気共鳴イメージング等により、肝臓に関するボリュームデータを取得する(ステップS1)。
【0037】
次に、取得したボリュームデータを用いて、MPR画像、ボリュームレンダリング画像等が生成・表示される(ステップS2)。表示された画像を観察しながら人為的に或いは境界検出処理等によって自動的に患部(肝臓癌)に対応する領域を特定し、その境界面を設定する(ステップS3)。
【0038】
次に、RFA治療における超音波プローブのアプローチ位置を決定するために、組織ハーモニックイメージング(THI)、造影剤を用いた四次元超音波走査等を実行し、肝臓に関するボリュームデータを取得する(ステップS4)。続いて、取得したボリュームデータを用いて、MPR画像、ボリュームレンダリング画像等が生成・表示される(ステップS5)。なお、図3に、ステップ4、ステップS5における処理の内容を概念的に示した。
【0039】
次に、焼灼治療支援情報生成ユニット29は、造影CT撮影等によって取得されたボリュームデータ(CTボリュームデータ等)と、超音波走査によって取得されたボリュームデータ(超音波ボリュームデータ)との位置対応付けを実行する(ステップS6)。なお、焼灼治療支援情報生成ユニット29には、この位置対応付け処理を行う少なくとも一部の構成として、例えばGPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SIC(Application Specific Integrated Circuit)等を採用することができる。
【0040】
図4は、異なる第1のボリュームデータと第2のボリュームデータ(ステップS6の例では、CTボリュームデータ等と超音波ボリュームデータ)との間の位置対応付け処理の流れを説明するためのフローチャートである。同図に示すように、まず、焼灼治療支援情報生成ユニット29は、二つのボリュームデータのうち、一方のボリュームデータ(図の例では第2のボリュームデータ:volume2)の座標系を他方のボリュームデータ(図4の例では、第1のボリュームデータ)の座標系に合わせるための座標変換を実行する(ステップS61)。
【0041】
次に、焼灼治療支援情報生成ユニット29は、第1のボリュームデータと第2のボリュームデータとを用いて、各ボリュームデータ毎に類似度に関する特徴量(指標)を計算し(ステップS62)、各ボリュームデータに対応する特徴量を用いて、第1のボリュームデータと第2のボリュームデータとの位置ずれを評価するための評価関数を計算する(ステップS63)。なお、上記類似度に関する特徴量としては、ボリュームデータ或いはボリュームデータに設定された関心領域(ROI)内のデータを用いて計算される相互情報量、エントロピー、相互相関量、ボリュームデータを用いた差分値、或いはこれらの組み合わせ等を挙げることができる。
【0042】
次に、焼灼治療支援情報生成ユニット29は、評価関数の値が最適値基準を満たすか否かを判定する(ステップS64)。ステップS74において、「評価関数の値が最適値基準を満たす」と判定した場合には、焼灼治療支援情報生成ユニット29は、本位置対応付け処理を終了する。一方、「評価関数の値が最適値基準を満たさない」と判定した場合には、焼灼治療支援情報生成ユニット29は、評価関数の値が最適値基準を満たすまで変換パラメータを変更し、ステップS61乃至S64までの処理を繰り返す(ステップS65)。
【0043】
次に、画像生成ユニット25は、位置が対応付けられたCTボリュームデータと、超音波ボリュームデータをと用いて、治療前の患部領域を好適に観察するための超音波画像、X線CT画像を生成する。生成された超音波画像、X線CT画像は、モニタ14に所定の形態で表示される(ステップS7)。
【0044】
図5は、RFA治療前において表示される、位置対応付けされた超音波画像、X線CT画像、MRI画像等の表示例を示している。図5に示すような、複数のモダリティによって取得された複合的な患部画像に従って、焼灼領域サイズ及び穿刺針の刺入位置、経路が決定される(ステップ8)。なお、焼灼領域サイズは、例えば肝臓癌境界面に5mm以上のマージンを取るように設定される。また、この様な焼灼領域サイズのマージンの値は、所定の形態で画像に表示されることが好ましい。位置対応付けされたCTボリュームデータ及び超音波ボリュームデータ、決定された焼灼領域及び穿刺針の刺入位置等を含むボリュームレンダリング画像等は、内部記憶ユニット31に記憶される。
【0045】
(RFA治療中)
図6は、本焼灼治療支援機能を用いたRFA治療の処理の流れを示したフローチャートである。同図に示すように、まず、RFA治療前検査において決定された焼灼領域及び穿刺針の刺入位置等を含むボリュームレンダリング画像等を再生し、最終的な超音波プローブのアプローチ位置を決定する(ステップS10)。
【0046】
次に、組織ハーモニックイメージング(THI)、造影剤を用いた四次元超音波走査等を実行し、患部に関するボリュームデータを取得する(ステップS11)。続いて、取得したボリュームデータを用いて、MPR画像、ボリュームレンダリング画像等が逐次生成・表示される(ステップS12)。
【0047】
次に、焼灼治療支援情報生成ユニット29は、事前に造影CT撮影等によって取得されたボリュームデータ(事前ボリュームデータ)と、超音波走査によってリアルタイムで取得されたボリュームデータ(リアルタイムボリュームデータ)との位置対応付けを実行し、その結果(対応関係)を保存する(ステップS13)。位置対応付け処理の具体的内容は、上述の通りである。
【0048】
次に、対応付けされた各ボリュームデータを用いて、MPR画像、ボリュームレンダリング画像等が生成・表示される。術者は、例えば対応付けされたリアルタイムボリュームデータを用いて断面位置、表示形式、観察方向が異なる種々の画像を表示させ、その中からRFA治療中の術中判定やRFA治療後の効果判定に有用と思われる画像を選択し、モニタリングに用いる断面を決定する(ステップS14)。
【0049】
次に、制御プロセッサ28は、所定の操作に応答して、リアルタイムにボリュームデータを更新し、ステップS14において決定された断面に対応する超音波画像をリアルタイムで生成・表示する。術者は、表示される超音波画像を用いて患部と穿刺針の位置や穿刺針の経路等をモニタリングしながら、患部への穿刺術を実行する(ステップS15)。
【0050】
次に、穿刺針が患部に到達すると、制御プロセッサ28は、所定の操作に応答して、患部を含む三次元領域を超音波走査し、再び患部に関するボリュームデータを取得し、事前ボリュームデータと、リアルタイムボリュームデータとの位置対応付けを実行した後、治療前の患部領域を示すためのX線CT画像、MR画像と、焼灼中の患部領域を示すための超音波画像と、焼灼後の患部領域を示すための超音波画像とを所定の形態で表示する(ステップS16)。
【0051】
図7は、RFA治療中において、位置対応付けされた超音波画像、X線CT画像、MR画像の表示例を示した図である。同図左の4画面表示では、左上が治療前のX線CT画像、右上が治療前の造影超音波画像、左下が焼灼中の超音波画像像、左下が焼灼後の造影超音波像である。これらの4画像はボリュームレベルで位置対応付けが行われているため、一つの画像の向き等を変更するだけで、他の画像も連動して変更し表示することができる。図7の例では、焼灼前の患部(腫瘍)は、左上のX線CT画像において明瞭に映像化されている。また、焼灼後の患部は、右下の造影超音波画像において明瞭に映像化されている。
【0052】
次に、焼灼治療支援情報生成ユニット29は、事前に設定された患部の境界面と、現在の穿刺針の先端位置と予め設定された焼灼領域サイズとから設定される焼灼領域の境界面との間の距離(例えば最短距離)を計算する(ステップS17)。なお、この患部の境界面と焼灼領域の境界面との間の距離の計算手法には、特に限定はない。例えば、図8に示すように、焼灼領域の境界面を複数の微小領域S1に、患部の境界面を複数の微小領域S2にそれぞれ分割する。そして、微小領域S1と微小領域S2との全ての組み合わせにつきその間の距離を計算し、最も小さいものをそれぞれ微小領域S1と患部の境界面との距離、微小領域S2と焼灼領域の境界面との最短距離とする。
【0053】
次に、画像生成ユニット25は、計算された各微小領域S1、S2毎の距離を用いて、境界面間の最短距離をパラメトリック表示するための超音波画像を生成する。すなわち、画像生成ユニット25は、患部の境界面及び焼灼領域の境界面の一方(例えば焼灼領域の境界面)に、小領域S1毎に計算された距離に応じて異なる色彩が割り当てられた超音波画像を生成する。生成された超音波画像は、画像合成ユニット27において所定の情報を合成され、モニター14に表示される(ステップS18)。
【0054】
図9(a)、(b)は、境界面間の最短距離に関する情報をパラメトリック表示する超音波画像の表示形態の一例を説明するための図である。図9(a)においては、患部の境界面及び焼灼領域の境界面が異なる色彩のワイヤーフレームで表示されている。図9(b)は、焼灼領域の境界面の各微小領域S1に、ステップS17において計算された、患部の境界面までの距離に応じた色彩を割り当てることで、患部の境界面と焼灼領域の境界面との間の最短距離情報をパラメトリック表示した例である。この例では、境界面間の距離が短く治療としてリスクの大きいエリアを例えば赤色で表示し、境界面間の距離が大きく、治療としてリスクが小さいエリアを例えば青色で表示する。この様なパラメトリック表示により、患部の各部位と焼灼領域との最短距離を一覧することができ、焼灼のマージンが不足して再発のリスク高いエリアを俯瞰して把握することができる。境界面間の距離情報を目的に合わせてカラーコードに変換して、パラメトリック表示することも可能である。
【0055】
次に、焼灼治療支援情報生成ユニット29は、計算された患部の領域と焼灼領域との最短距離に基づいて、現在の焼灼領域が、患部+マージンを十分に含むように設定されているか否かを判定(評価)する(ステップS19)。その結果、「現在の焼灼領域が患部+マージンを十分に含むように設定されていない」と判定された場合には、「現在の焼灼領域が患部+マージンを十分に含むように設定されている」と判定されるまで、穿刺針の刺し直し、ステップS15〜ステップS19の各処理が繰り返し実行される。
【0056】
なお、「現在の焼灼領域が患部+マージンを十分に含むように設定されていない」と判定された場合、例えば、患部領域の中心と焼灼領域の中心とを計算し、各中心間の距離を用いて穿刺針(の先端位置)の修正を支援する情報を生成し、例えば図10に示すように表示するようにしてもよい。同図の例では、各領域の中心位置間の距離とRFA治療としてリスクの減少する針先位置の変更方向が示されている。
【0057】
また、ステップS18における判定は、計算された患部の領域と焼灼領域との最短距離に基づいて、焼灼治療支援情報生成ユニット29が自動的に判定する場合を例示した。しかしながら、当該例に拘泥されず、例えば、患部の各部位と焼灼領域との最短距離がパラメトリック表示された超音波画像に基づいて、術者が人為的に判定し、或いは微調整するようにしてもよい。
【0058】
ステップS19において「現在の焼灼領域が患部+マージンを十分に含むように設定されている」と判定されると、所定のタイミングで患部の焼灼が実行される。焼灼が実行される間、制御プロセッサ28は、焼灼状況をモニタリング可能な三次元画像を取得するために、焼灼領域を含む三次元領域の超音波走査を継続して実行する(ステップS20)。術者は、リアルタイムで表示される超音波画像によって状況をモニタリングしながら、例えば対応付けされたリアルタイムボリュームデータを用いて、予定していた領域(すなわち、患部領域+マージンを含む領域)内が完全に焼灼されているか否かを判定する。その結果、焼灼が不十分であると判定された場合には、追加の焼灼治療が実行される。
【0059】
(RFA治療後検査)
図11は、本焼灼治療支援機能を用いて、穿刺治療完了から所定時間(例えば5分)経過後における治療効果の検査、或いは穿刺治療完了から所定日程(例えば一ヶ月)経過後におけるRFA治療後検査を実行する場合の処理の流れを示したフローチャートである。同図に示すように、まず、患部(焼灼完了領域)を含む三次元領域を超音波走査し、再び患部に関するボリュームデータを取得する(ステップS21)。焼灼治療支援情報生成ユニット29は、焼灼治療前の(造影CT撮影等によって取得された)ボリュームデータと、焼灼治療中において取得された超音波ボリュームデータと、治療後の現在においてリアルタイムで取得されているボリュームデータとの位置対応付けを実行する(ステップS22)。そして、対応付けされた各ボリュームデータを用いて、MPR画像、ボリュームレンダリング画像等が生成・表示される(ステップS23)。術者は、例えば対応付けされたリアルタイムボリュームデータを用いて断面位置、表示形式、観察方向が異なる種々の画像を表示させ、その中から患部に関する治療効果を比較するのに有用と思われるRFA治療前画像、RFA治療中画像、RFA治療後画像をそれぞれ選択する(ステップS24)。選択された画像は、例えば図12に示すような形態でモニタ14に表示される。
【0060】
次に、表示された画像を観察しながら人為的に或いは境界検出処理等によって自動的に、対応付けされたボリュームデータにおいて、RFA治療前の患部領域とRFA治療後の焼灼完了領域とが特定され、各領域の境界面が設定される(ステップS25)。
【0061】
焼灼治療支援情報生成ユニット29は、対応付けされたボリュームデータを用いて、例えばRFA治療前の患部領域の境界面と、RFA治療後の焼灼完了領域の境界面との間の距離を計算する(ステップS26)。画像生成ユニット25は、計算された距離を用いて、境界面間の距離をパラメトリック表示するための超音波画像を生成する。生成された超音波画像は、画像合成ユニット27において所定の情報を合成され、所定の形態にてモニター14に表示される(ステップS27)。RFA治療前の患部領域の境界面と、RFA治療後の焼灼完了領域の境界面との間の距離は、表示された超音波画像によって、支援情報としてカラーコードで示されている。従って、術者は、図12に示された治療前後の期間に亘る複数枚の画像や境界面距離がカラーコード化された画像を観察することで、焼灼が十分でない領域の有無や、RFA治療後の経過を客観的に判定することができる。
【0062】
(効果)
以上述べた構成によれば、穿刺針を用いて患部(治療対象)をRFA治療する場合に、RFA治療前検査、RFA治療中、RFA治療後検査のそれぞれの場面において、異なるボリュームデータ間の空間的な位置対応付けを実行し、位置対応付けされたボリュームデータ群を用いて、患部領域の境界面と焼灼領域の境界面との間の三次元的な距離情報を、患部領域の境界面及び焼灼領域の境界面と共に、例えば焼灼領域の境界面にカラーコード化して表示する。従って、術者は、患部領域の境界面と焼灼領域の境界面との間の位置関係を定量的且つ迅速に把握することができる。このとき、焼灼領域を、焼灼すべき患部領域に対して適切なマージンを加えて定義することで、患部領域の境界面と焼灼領域の境界面との間の位置関係に注意するのみで、適切なマージンを維持して焼灼を実行することができたか否かを容易に把握することができる。さらに、患部領域の境界面と焼灼領域の境界面との間の三次元的な距離情報に基づいて、穿刺針の位置を修正をするための支援情報を生成し提供することができる。術者は、提供された支援情報に従って穿刺針の位置を修正させることで、適切なマージンが確保された好適な焼灼治療を実現することができる。
【0063】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。具体的な変形例としては、例えば次のようなものがある。
【0064】
(1)本実施形態に係る各機能は、当該処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記録媒体に格納して頒布することも可能である。
【0065】
(2)上記実施形態においては、穿刺治療中において超音波診断装置を利用して患部領域をモニタリングを行いなから、焼灼治療支援機能を用いたRFA焼灼を実行する例について説明した。しかしながら、モニタリングに用いる医用画像診断装置は、超音波診断装置に拘泥されず、例えばX線CT装置、磁気共鳴イメージング装置、X線診断装置、核医学診断装置(PET、SPECT)等の他のモダリティを用いるようにしてもよい。
【0066】
(3)上記実施形態においては、球面として定義される焼灼領域を例示した。しかしながら、焼灼領域は、楕円球、その他任意の形状を用いて定義することが可能である。また、一回の処理で焼灼できる領域が患部領域が大きい場合には、穿刺針を順次移動させて、焼灼領域内の全てを焼灼する必要がある。係る場合には、既に焼灼されている領域と未だ焼灼されていない領域とで異なる色彩を割り当てて、区別できるように表示することが好ましい。
【0067】
(4)上記実施形態においては、異なる複数のボリュームデータ間において対応付けを行い、各ボリュームデータにおいて定義された各比較対象領域間の距離を計算し、その結果を例えばカラーコード表示する場合を例示した。これに対し、同一ボリュームデータにおいて複数の比較対象領域を定義し、これらについて領域間の距離を計算し、その結果を例えばカラーコード表示等を行うようにしてもよい。係る場合には、位置対応付け処理は不要となる。超音波診断装置によって取得可能な同一のボリュームデータとしては、例えばカラードプラモード撮影において取得されるBモードボリュームデータとドプラデータなどがある。
【0068】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上本発明によれば、三次元画像上において、比較しようとする対象領域間の三次元的な位置関係を、定量的且つ迅速に把握することができる超音波診断装置及び超音波画像処理プログラムを実現することができる。
【符号の説明】
【0070】
1…超音波診断装置、11…装置本体、12…超音波プローブ、13…入力装置、14…モニター、21…超音波送信ユニット、22…超音波受信ユニット、23…Bモード処理ユニット、24…ドプラ処理ユニット、25…画像生成ユニット、26…画像メモリ、27…画像合成ユニット、28…制御プロセッサ(CPU)、29…焼灼治療支援情報生成ユニット、31…記憶ユニット、33…インターフェースユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12