特許第5689600号(P5689600)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5689600
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】多孔性層、その製造方法およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/25 20060101AFI20150305BHJP
   C03C 17/30 20060101ALI20150305BHJP
   C03C 17/42 20060101ALI20150305BHJP
   C03C 17/34 20060101ALI20150305BHJP
【FI】
   C03C17/25 Z
   C03C17/30 Z
   C03C17/42
   C03C17/34 A
【請求項の数】19
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2009-536775(P2009-536775)
(86)(22)【出願日】2007年11月13日
(65)【公表番号】特表2010-509175(P2010-509175A)
(43)【公表日】2010年3月25日
(86)【国際出願番号】FR2007052336
(87)【国際公開番号】WO2008059170
(87)【国際公開日】20080522
【審査請求日】2010年11月12日
(31)【優先権主張番号】0654886
(32)【優先日】2006年11月14日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユイニヤール,アルノー
(72)【発明者】
【氏名】ロオー,ナタリー
(72)【発明者】
【氏名】ベツソン,ソフイー
【審査官】 山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−314715(JP,A)
【文献】 特開平07−138046(JP,A)
【文献】 特開2005−249982(JP,A)
【文献】 特開2006−145709(JP,A)
【文献】 特開2006−070264(JP,A)
【文献】 ZHANG,SYNTHESIZE OF POROUS TIO2 THIN FILM OF PHOTOCATALYST BY CHARGED MICROEMULSION TEMPLATING,MATERIALS CHEMISTRY AND PHYSICS,2005年10月15日,V93 N2-3,P508-515
【文献】 ISKANDAR FERRY,OPTICAL BAND GAP AND ULTRALOW DIELECTRIC CONSTANT MATERIALS PREPARED BY A SIMPLE DIP COATING PROCESS,JOURNAL OF APPLIED PHYSICS,米国,AMERICAN INSTITUTE OF PHYSICS,2003年 6月 1日,V93 N11,P9237-9242
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 15/00−23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前駆体ゾルを熟成すること(このゾルは、水性溶媒中の、ドーピング処理されたまたはドーピング処理されていないシリカの、コーティング構成材料前駆体である。);
前記前駆体ゾルを、水性溶媒中に分散された実質的に球状または卵状の形を有するポリマービーズおよび水性溶媒中に分散されたオイルのナノ液滴からなる群から選択され、かつ少なくとも20nmであり100nmを超えないサイズの細孔形成剤と混合すること;
基板上へ付着;
前記細孔形成剤の周りへの前駆体の縮合;および
少なくとも600℃での熱処理
の逐次ステップを含み、
熟成するステップにおいて用いる水性溶媒は、有機溶媒を含まず、
前記熱処理が、曲げ/成形処理であってかつその後に任意に強化処理が行なわれるものであるか、あるいは、前記熱処理はその後に強化処理が行なわれるものであり、
前記細孔形成剤は、前記熱処理によって除去される
ことを特徴とする、ガラス基板(1、1’)上のゾル−ゲルタイプの多孔性コーティング(2、2’)の製造方法。
【請求項2】
前記細孔形成剤が、40nmから100nmの範囲のポリマービーズを含み、前記ポリマービーズは、
ポリメチルメタクリレート(PMMA)、
メチル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸コポリマー、
ポリカーボネート、
ポリエステル、および
ポリスチレン
からなる群から選択されるいずれかのポリマーから製造される
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細孔形成剤が、コロイド状分散体であるか、または、前記ゾルを生成するための使用された溶媒に対応する水性溶媒に再分散できる粉末の形態である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記熱処理が、少なくとも600℃でかつ15分を超えない時間で行われる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記熱処理が、少なくとも600℃でかつ5分を超えない時間で行われる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
120℃以下の温度での溶媒の除去を含まない、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記熱処理の後に、強化処理が行われる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記熱処理が、曲げ/成形処理である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
コーティングの高密度化のための低温での熱処理を行わない、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
多孔性コーティング(2、2’)が、次のドーパント:Al、Zr、B、Sn、Znの少なくとも1種によりドーピング処理された、ハイブリッドまたは無機のシリカに基づくことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
シリカの多孔性コーティングが、疎水性および/または疎油性のグラフト化層により被覆されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
シリカの多孔性コーティングが、アルカリ金属に対するバリアおよび/または接着促進剤であり得る下層上に配置されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
シリカの多孔性コーティングが、アルカリ金属に対するバリアおよび/または接着促進剤であり得かつシリカをベースとする下層上に配置されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
シリカの多孔性コーティング(2、2’)が、600nmまたは550nmにて、高密度の同じ無機材料の無機コーティングの屈折率より少なくとも0.1小さい屈折率を有することを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
シリカの多孔性コーティング(2、2’)が多孔性の多層の状態にあり、この多層の多孔性コーティングは、異なるサイズの細孔を、異なる比率にて有することを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
多孔性コーティング(2、2’)の厚さが、単一層または多層かに関わらず、100と200nmの間であることを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
基板(1、1’)が、輸送手段用の、曲げ/形成処理をされたサンルーフまたは曲げ/形成処理をされ強化処理をされたサンルーフのための板ガラスである、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
有機発光デバイスの透明基板(1、1’)としての、被覆された面が外面である、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの光起電力電池(4、4’、4”)を備えるソーラーモジュール(10、10’)の、被覆された(12)が外面である透明外側基板(1)である、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔性材料の分野に関し、特に多孔性コーティング、その製造方法およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ゾル−ゲル法によって得られる本質的に無機物の多孔性コーティングは、すでに知られている。こうして、文書EP1329433号は、5と50g/lの間の濃度を有するポリエチレングリコールtert−フェニルエーテル(「トリトン」と呼ばれる)に基づく細孔形成剤を用いて、酸性媒体中で加水分解されたテトラエトキシシラン(TEOS)ゾルから製造される多孔性コーティングを開示する。この細孔形成剤の500℃での燃焼は細孔を生成する。ガラス基板に付けられた時、このコーティングは、店の窓に用いられるまたは太陽電池の効率を上げるために用いられる反射防止コーティングとなる。
【0003】
本発明の目的は、利用できる多孔性コーティングの範囲、特に工業的規模で製造され得るものの範囲をさらに広げることであり、このコーティングは、特に、光学的、電気的、磁気的、物理的または化学的な、新しい機能または性質を基板に付与するために、または一層好ましくは、知られている性質を向上させるために、基板上に付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1329433号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、最も特別には、耐久性を有し、容易に実施できる多孔性コーティングを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のために、本発明は、ゾル−ゲルタイプで本質的に無機物の少なくとも1種の多孔性コーティングにより少なくとも部分的に被覆された基板を提供し、このコーティングは閉鎖細孔を有し、この最小特性寸法は、想定される機能および/または用途に応じて、平均で、少なくとも20nm、好ましくは少なくとも40nmであり、同時に、好ましくは依然としてサブミクロンのサイズにある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明による多孔性コーティングの横断面の走査電子顕微鏡写真である。
図2】本発明による多孔性コーティングの横断面の走査電子顕微鏡写真である。
図3】本発明による多孔性コーティングの横断面の走査電子顕微鏡写真である。
図4】本発明による多孔性コーティングの上面の走査電子顕微鏡写真である。
図4a】本発明による多孔性コーティングの横断面の走査電子顕微鏡写真である。
図4b】本発明による多孔性コーティングの横断面の走査電子顕微鏡写真である。
図5】むき出しのDiamantタイプのエキストラ−クリアガラス、または本発明のよる多孔性コーティングにより被覆された様々な基板の透過スペクトルを示すグラフである。
図6】むき出しのPlaniluxガラス、またはそれぞれの面に本発明の多孔性コーティングを有する基板の透過スペクトルを示すグラフである。
図7】むき出しのDIAMANTガラス、または本発明のよる多孔性コーティングにより被覆された基板の試験前および様々な試験後の透過スペクトルを示すグラフである。
図8】本発明による多孔性コーティングにより被覆された基板が組み込まれたソーラーモジュールを示す図である。
図9】本発明による多孔性コーティングにより被覆された基板が組み込まれたソーラーモジュールを示す図である。
図10】本発明による多孔性コーティングにより被覆された基板が組み込まれたソーラーモジュールを示す図である。
図11】本発明による多孔性コーティングにより被覆された基板が組み込まれた薄く着色された発光ラミネート板ガラスを示す図である。
図12】有機発光デバイス(このデバイスの基板は、むき出しであるまたは本発明による多孔性コーティングによりその外面に被覆されている。)の角度の関数としての透過率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
第1に、出願人は、大きな細孔の方が、その性質、特に光学的性質(光の透過および反射、屈折率など)を劣化させやすい水または有機汚染物質による影響を受け難いことを見出した。これは、天候の気まぐれな変化に常に曝されているカーテンウォールまたは太陽電池の場合に一層重要である。
【0009】
第2に、所望の分布で空間に分布され得る、十分に限定されたサイズ(特性寸法)および/または形状の細孔を得ることは、特に非線形光学およびオプトエレクトロニクスの分野における、根本的な努力目標を表す。本発明による多孔性コーティングは低細孔蛇行性(tortuosity)を有する。
【0010】
細孔形成の規則性は、特に、性質が材料の量に、また粒子のサイズ、形状または配置に結び付いている時に、基板表面に渡って均一である効果または性質を生ずることが望まれる用途で重要であり、これは、特に、光学的性質(反射防止、屈折率の組合せなど)に関してそうである。
【0011】
そういうわけで、本発明による多孔性コーティングは、最も特別には、基板または場合による下層との境界から出発して空気または別の媒体との境界に達するまで、その厚さ全体を通して実質的に均一な分布を有し得る。均一な分布は、最も特別には、コーティングの等方性を確立するために有用であり得る。
【0012】
細孔の最小特性寸法(また、好ましくは最大寸法も)は、より一層好ましくは少なくとも30nmであり得るが、好ましくは100nmを超えない、または80nmさえ超えない。これは、想定される用途に、またコーティングの厚さに依存する。
【0013】
細孔は、さらに、サイズが単分散であり得るが、その場合、細孔のサイズは、20nmの最小値、好ましくは40nmの最小値、より一層好ましくは50nmの最小値に設定されるが、好ましくは100nmを超えない。これは、想定される用途に、またコーティングの厚さに依存する。
【0014】
閉鎖細孔のほとんど(80%以上)は、20と80nmの間の、最小特性寸法を、好ましくはさらに最大寸法を、有し得る。
【0015】
細孔の体積での比率は、10%と90%の間で、好ましくは80%以下であり得る。
【0016】
本発明による多孔性コーティングは力学的に安定である−それは高い細孔濃度でさえ崩れない。細孔は、容易に互いに分離し、よく独立させることができる。さらに、本発明による多孔性コーティングの凝集力および力学的一体性は優れている。最も特別で好ましいのは、本質的に連続した固体相を含み、こうして、主として(ナノ)粒子またはクリスタリットの状態の固体相ではなく、むしろ高密度の細孔壁を形成している多孔性コーティングである。
【0017】
細孔は、特に米の粒のような、細長い形状を有し得る。より一層好ましくは、細孔は実質的に球状または卵状の形を有し得る。閉鎖細孔のほとんど、またはそれらの少なくとも80%さえもが、実質的に同じ所定の形状を、特に、細長く、実質的に球状または卵状の形を有することが好ましい。
【0018】
本発明のよる多孔性コーティングは、可視および/または近赤外における反射防止機能に関連して、有利には、10nmと10μm(これらの境界値は含まれる)の間、特に50nmと1μmの間、より一層特別には100と200nmの間、特に100と150nmの間の厚さを有し得る。
【0019】
多く化学元素が多孔性コーティングの主成分と成り得る。これは、本質的な構成材料として、元素:Si、Ti、Zr、AlまたはW、Sb、Hf、Ta、V、Mg、Mn、Co、Ni、Sn、ZnおよびCeの少なくとも1つによる少なくとも1つの化合物を含み得る。これは、特に、前記元素の少なくとも1つの単純酸化物または混合酸化物であり得る。
【0020】
好ましくは、本発明による多孔性コーティングは、特に、ガラス基板とのその接着性およびその適合性のために、本質的にシリカ系であり得る。
【0021】
コーティングの細孔構造はゾル−ゲル合成法に依存し、この方法は、本質的に無機物(すなわち、無機物、または無機物/有機物のハイブリッド)の材料が、特に、十分に限定された(複数の)サイズおよび/または(複数の)形状(細長い、球状、卵状など)の適切に選択された細孔形成剤と共に、凝結することを可能にする。細孔は、好ましくは、空である、または可能性として充填され得る。
【0022】
そういうわけで、テトラエトキシシラン(TEOS)から、ナトリウム、リチウムもしくはカリウムシリケートから、または次の一般式の有機シラン前駆体から得られるハイブリッド材料から生成するシリカを選択することが可能である。
Si(OR4−n
ここで、nは、0と2の間の整数であり、Rは、C2x+1タイプのアルキル官能基であり、Rは、例えば、アルキル、エポキシ、アクリレート、メタクリレート、アミン、フェニルまたはビニル官能基が含まれる有機基である。これらのハイブリッド化合物は、一緒に混合されて、またはそれら自体で、適切なpHで、水溶液として、または水/アルコール混合物として使用され得る。
【0023】
ハイブリッドコーティングとして、メチルトリエトキシシラン(MTEOS)−非反応性有機基を有する有機シラン−系コーティングを選択することが可能である。MTEOSは、3つの加水分解性の基、および非反応性のメチルである有機部分を有する有機シランである。
【0024】
有機官能基を保持することが望ましい場合、抽出溶媒は、特に、選択された有機細孔形成剤を除去するために、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)のときTHFが選択され得る。本発明による多孔性コーティングは、少なくとも1種の固体細孔形成剤を用いて得られ得る。固体細孔形成剤は、細孔形成剤のサイズを慎重に選択することによって、コーティングの細孔サイズを変える可能性を提供する。
【0025】
先行技術の局在化されていない細孔形成剤は、不定形のものであり、構造内で制御不能に膨張する。本発明による固体細孔形成剤は、細孔サイズのより良い制御(特に、大きなサイズの達成)、細孔組織のより良い制御(特に、均一な分布)、およびコーティング中の細孔含量のより良い制御ならびにより良い再現性を達成することを可能にする。
【0026】
本発明による固体細孔形成剤は、また、知られている他の細孔形成剤、例えば、溶液(場合によって加水分解された形の)中の、陽イオン界面活性剤分子のミセル、または陰イオンもしくは非イオン界面活性剤または両親媒性分子(例えばブロックコポリマー)のミセルとは区別される。このような細孔形成剤は、狭いチャネル状の細孔、または2と5nmの間の小さいサイズの多かれ少なかれ丸い細孔を生成する。
【0027】
しかし、1つのコーティング(単一層か多層であるかに関わらず)に、様々な形状および/または細孔サイズを併せ持つことが有用であり得る。
【0028】
本発明による細孔形成剤は、単一成分または多成分であっても、無機物または有機物またはハイブリッドであってもよく、好ましくは中実である、または中空でさえあり得る。
【0029】
細孔形成剤は、好ましくは粒子状、好ましくは(準)球状であってよい。粒子は、好ましくは、1個ずつよく独立しており、そのために細孔サイズが容易に制御されることを可能にしている。細孔形成剤の表面が粗いかまたは滑らかであるかは重要でない。
【0030】
中空細孔形成剤として、特に、中空シリカビーズを挙げることができる。中実細孔形成剤として、特にコア/シェル材料を有する、単一成分または2成分のポリマービーズを挙げることができる。
【0031】
選択されたポリマー細孔形成剤は、細孔がこの細孔形成剤の形状およびサイズを実質的に有し得る多孔性コーティングを得るために、好ましくは除去され得る。
【0032】
固体の、特にポリマーの細孔形成剤は、いくつかの形態で入手可能であり得る。これは、溶液中で安定であり得る−通常、コロイド状分散体が用いられる−または、これは、ゾルを生成するために使用される溶媒に該当する水性溶媒もしくはアルコール溶媒、またはこの溶媒に相溶する溶媒に再分散できる粉末状であり得る。
【0033】
特に、次のポリマーの1つからなる細孔形成剤が選択され得る:
−ポリメチルメタクリレート(PMMA);
−メチル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸コポリマー;
−ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレンなど
またはこれらの材料のいくつかの組合せ。
【0034】
本発明による多孔性コーティングを生成するために使用される別のタイプの細孔形成剤は、第1液体、特にオイル系のもののナノ液滴(これらは、第2の特に水系の液体中に分散されており、第1液体および第2液体は非混和性である。)の形態であり得る。例えば、これはナノエマルジョンであり得る。
【0035】
ナノ液滴は、十分に限定されたサイズを有する細孔形成剤として働く。ナノ液滴を除去した後、ナノ液滴のサイズを有する実質的に球状の細孔が得られる。
【0036】
第2液体は、好ましくは水系であり得るが、コーティングの構成材料を凝結させるのに役立ち得る。好ましくは、コーティング構成材料の前駆体ゾルは、この第2の液体と相溶し、ナノエマルジョンを不安定化しないように第1液体とは不相溶であるように選択され得る。
【0037】
ナノ液滴は、特に、安定性を確保する界面活性剤系により水性媒体中に分散されたオイルのナノ液滴であり得る。これらのナノ液滴は、通常、界面活性剤の存在下に、水性相中で、オイル相を機械的に細分化することによって製造される。所望のサイズのナノ液滴は、特に、高圧ホモジナイザーに少なくとも1回それらを通すことによって得ることができる。
【0038】
特に、化粧品および健康に関する分野において使用されるナノエマルジョンが、例えば、WO02/05683に記載のものが選択され得る。
【0039】
本発明でのナノ液滴は、動物系または植物系オイル、ミネラルオイル、合成オイル、シリコーンオイル、炭化水素、特に脂肪族炭化水素およびこれらの混合物から好ましくは選択される少なくとも1種のオイルを含み得る。
【0040】
次のオイルが特に選択され得る:
−パラフィンオイル;および
−炭化水素植物オイル。
【0041】
本発明による多孔性コーティングの耐加水分解性をさらに向上させるために、疎油性および/または疎水性のグラフト化層、例えば、US−A−5368892およびUS−A−5389427に記載のフッ素化有機シラン系のもの、さらには、欧州特許出願第692463号に記載の(複数の)加水分解性フッ素化アルキルシラン系のもの、特に次の式のパーフルオロアルキルシランを、上に重ねるために選択することがまた可能である。
【0042】
CF−(CF−(CH−SiX
ここで、nは0から12であり、mは2から5であり、Xは加水分解性官能基、例えば塩素化された基またはアルコキシ基である。
【0043】
コーティングにより被覆されようとする表面の特質に応じて、その基板へのコーティングの接着を促進するためにおよび/または十分な品質のこの接着を得るために、プライマー層を介在させることが推奨されるまたは必要でさえあり得る。この目的のために、多孔性コーティングの構成材料の前駆体を含む組成物のpH以上の等電ポテンシャル(isoelectric potential)を有する層が、基板が該組成物と接触する前に基板に付着される。特に、テトラハロシランまたはテトラアルコキシシランタイプのプライマー下層が、欧州特許出願第0484746号に示されるように、選択され得る。
【0044】
好ましくは、本発明の多孔性コーティングは、シリカ系、または、二酸化ケイ素、準化学量論的酸化ケイ素およびオキシ炭化ケイ素、オキシ窒化ケイ素もしくはオキシ炭窒化ケイ素系から選択される少なくとも部分的に酸化されたケイ素誘導体の下層を介在させて形成される。
【0045】
下層は、すぐ下にある表面がソーダ−石灰−シリカガラスからなる時に、該下層がアルカリ金属に対するバリアとしての機能を果たすので、有用であると分かる。
【0046】
下層は、すぐ下にある表面がプラスチックからなる時に、下層が多孔性コーティングの接着を向上させることができるので、有用であると分かる。
【0047】
それ故に、この下層は、有利には、Si、Oおよび場合によって炭素および窒素を含む。しかし、これはまた、ケイ素に比べて小さい比率の材料、例えば、Al、ZnまたはZrのような金属も含み得る。下層は、ゾル−ゲル法または熱分解、特に化学気相堆積(CVD)によって付着され得る。後者の技術は、SiOまたはSiOの層を、特にガラス基板の場合にフロートガラスのリボン上に直接付着させることによって、全く容易に得ることを可能にする。しかし、真空技術を用いて、例えばSiターゲット(場合によってドーピングされている)または亜酸化ケイ素ターゲットを用いる(反応性雰囲気、例えば、酸化および/または窒化雰囲気において)カソードスパッタリングによって、付着を実施することもまた可能である。この下層は、好ましくは、少なくとも5nmの厚さ、特に10と200nmの間、例えば、80と120nmの間の厚さを有する。
【0048】
コーティングの構成材料は、それが特定の波長で透明であるように、好ましくは選択され得る。さらに、コーティングは、高密度の(細孔のない)同じ無機材料のコーティングの屈折率より、少なくとも0.1小さく、より一層好ましくは0.2または0.3小さい、600nmおよび/または550nmでの屈折率を有し得る。好ましくは、600nmおよび/または550nmでのこの屈折率は、1.3以下、または1.1以下、または、実に1に近い値(例えば、1.05)であり得る。
【0049】
目安を示すと、600nmで、ナノ多孔性シリカコーティングは、通常、約1.45の屈折率を有し、酸化チタンコーティングは約2の屈折率を有し、ジルコニウムコーティングは約1.7の屈折率を有する。
【0050】
屈折率は、必要であれば、細孔体積の関数として調節され得る。次の式が、屈折率を計算するために、第1近似として使用され得る:
n=fn+(1−f)npore
ここで、fはコーティングの構成材料の体積分率であり、nは、その屈折率であり、nporeは、細孔の屈折率であり、それらが空である場合、通常1に等しい。
【0051】
シリカを選択することによって、屈折率は、任意の厚さで、1.05まで容易に下げられ得る。
【0052】
コーティングの厚さも、また、適切な溶媒含量を選択することによって調節され得る。
【0053】
反射防止用途では、効果は、屈折率が基板の屈折率の平方根に等しく(すなわち、1.5の屈折率のガラスでは1.23の屈折率)、屈折率×厚さの積が波長の4分の1に等しい時に、最適である;また好ましくは、多孔性コーティングの屈折率は1.3未満であり、厚さは、約600nmでの最小反射では、約120nmである、または、550nmに対しては約110nmであり得る。
【0054】
本発明による多孔性コーティングの屈折率は、変化せず、環境にほとんど影響を受けない。
【0055】
コーティングの構成材料は、ハイブリッドまたは無機シリカのいずれにしても、すでに説明したように、この材料の低屈折率のゆえに、好ましくはシリカであり得る。この場合、シリカは、良好な耐性が必要とされる用途(カーテンウォール、戸外用途など)の場合に、その耐加水分解性をさらに向上させるために、有利にはドーピング処理され得る。ドーパント元素は、好ましくは、Al、Zr、B、SnおよびZnから選択され得る。ドーパントは、好ましくは10mol%に達することがあり、より一層好ましくは5mol%までのモル濃度で、Si原子を置き換えるように導入される。
【0056】
本発明に関連する範囲内で、厳密さ無しに、「コーティング」という用語は、1つだけの層(単一層)または層の重なり(多層)のいずれかを意味すると理解されるべきである。
【0057】
利点のある設計において、コーティングは、多孔性の多層の形態にあり、この多層の複数の多孔性コーティングは様々なサイズおよび/または様々な量の細孔を有し得る。特に、反射防止機能をより一層改善するために、厚さが増加するにつれて減少する可視屈折率を有する多層積層体が得られるように、多孔度が厚さと共に(したがって多層を有する基板から遠ざかるにつれて)増加する層を製造することが、好ましいことであり得る。多層は、平均屈折率が1.2から1.25にて、好ましくは、100と150nmの間の、好ましくは約120nmの厚さを有し得る。各単一層の屈折率×厚さの積の和は、屈折率×単一層等価物の厚さの積と同じであり得る。
【0058】
第1の例において、1.5の屈折率の基板で、基板に最も近い多孔性層は、1.4の屈折率を有し(または、それは、多孔性でないシリカ層でさえあり得る。)、最も離れた多孔性層は1.1または1.05の屈折率を有し得る。
【0059】
第2の例において、(基板から始まって)1.35に等しい屈折率n1および40nm±10nmの厚さの第1層、1.25に等しい屈折率n2および40nm±10nmの厚さの第2層、ならびに1.15に等しい屈折率n3および40nm±10nmの厚さの最後の第3層を備えるコーティングが選択される。
【0060】
多孔性コーティングは、連続または非連続であってよく、被覆された基板の主面全体を実質的に占め得る。
【0061】
さらに、基板は、好ましくは、本質的に透明な基板、特に、ガラスおよび/または(複数の)ポリマーもしくはプラスチック系のものであり得る。
【0062】
多孔性コーティングを有する基板は、通常、様々な輪郭(contour)を有する本質的に平面の、または2次元の形(例えば、プレートまたはディスクなど)を有するが、それはまた、本質的に平らな表面の集合体例えば、立方体または平行六面体の形、またはそれ以外からなる容積のある形または3次元の形も有し得る。
【0063】
基板は、平坦なまたは湾曲した、有機物または無機物、特に、シート、スラブ、管、繊維またはファブリックの形態のガラスであり得る。
【0064】
ガラス材料の例を示すために、通常のソーダ−石灰組成物(場合によって、熱または化学的手段によって、硬くされているまたは強化されている。)、ホウケイ酸アルミニウムもしくはホウケイ酸ナトリウム、または任意の他の組成物のフロートガラスを挙げることができる。
【0065】
ガラスは、着色されている(colored)、全体に薄く着色されている(bulk−tinted)、または装飾層を有し得る。
【0066】
ガラスは、クリアまたはエキストラ−クリア(extra−clear)であってよく、非常に低含量の(複数の)酸化鉄を含み得る。例えば、それは、Saint Gobain Glassによって「DIAMANT」商品群の下に販売されているガラスの1つであり得る。
【0067】
有利には、多孔性コーティングにより被覆される主面は、1ミリメートルのほんの一部分の程度から数ミリメートルの範囲、特に、0.001mmから5mmの範囲(例えば、1から5mmの範囲)の深さを特に有する、窪んだまたは盛り上がった輪郭体(feature)(例えば、角錐の輪郭体)の形の巨視的な凹凸(relief)を有し得る。
【0068】
好ましくは、前記輪郭体は、互いに可能な限り接近しており、例えば、1mm未満離れた、好ましくは0.5mm未満離れた、より一層好ましくは切れ目なく続く、それらの基部を有する。
【0069】
前記輪郭体は、例えば、円錐形、または多角形の底面(例えば、三角形または正方形または長方形または六角形または八角形の底面)を有する角錐形を有することができ、該輪郭体は、可能性として、凸形(すなわち、構造が付与された表面の基本面から突き出ている)である、または凹形(すなわち、プレートの本体に窪みを成している)であり得る。
【0070】
円錐形または角錐形を有する輪郭体の場合には、該円錐または該角錐の先端角の1/2が70°未満、好ましくは60°未満、例えば25°から50°の範囲であることが好ましい。
【0071】
例えば、構造が付与されプリントされた平坦なガラスとして、Saint Gobain Glassによって「ALBARINO」商品群の下に販売されているガラスを選択できる。
【0072】
このように構造が付与され、被覆された表面を有する透明基板は、次の効果を併せ持つ。
例えば、その表面に、整列し全く切れ目なく続く凹の輪郭体(この輪郭体は四角錐の形を有する)の配列を有する構造化されたプレートを開示するWO2003/046617(参照により組み込む)に例示されている光トラッピング;および
反射防止の面。
【0073】
プラスチックの例を示すために、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリカーボネート(PC)もしくはポリウレタン(PU)、熱可塑性エチレン/酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート/ポリエステルコポリマー、エチレン/ノルボルネンもしくはエチレン/シクロペンタジエン型のシクロオレフィンコポリマー、イオノマー樹脂、例えば、ポリアミンによって中和されたエチレン/(メタ)アクリル酸コポリマー、熱硬化もしくは熱架橋性ポリマー、例えば、ポリウレタン、不飽和ポリエステル(UPE)、エチレン/酢酸ビニルコポリマーなど、またはこれらの材料のいくつかの組合せを挙げることができる。
【0074】
この基板は、好ましくは、前記タイプのガラス材料またはプラスチックからなる。それは、1枚のシート、組み合わせた数枚のシートから形成されたラミネート、でなければ、嵩のある物体(被覆されようとする物体表面は、通常、滑らかであるが必ずしも平面ではない。)からなり得る。基板は、ラミネーション中間層であってもよい。
【0075】
この基板は、ソーダ−石灰−シリカガラス、特に、エキストラ−クリアガラスからなる板ガラスであってよく、被覆された基板は、
−600nmおよび/または550nmにて、好ましくは全波長域で、91%以上、または92%以上、または93%もしくは94%以上でさえある光線透過、すなわち、透明担体基板の光線透過における、通常、少なくとも2%の増加、または3%もしくは4%でさえある増加;
−7%以下、または4%以下でさえある、600nmおよび/または50nmでの、または好ましくは全可視域での、光線反射;
を有し得る。
【0076】
特性波長として、光起電力用途では600nmが好ましくは選択され、他方、店の窓の反射防止用途では550nmが代わりに選択される。
【0077】
多孔性コーティングにより被覆された基板の用途、特に反射防止用途は数多くある:
−水槽、店の窓、温室、カウンターガラス面、または絵を保護するための板ガラスのような実用的な板ガラスとして;
−都市の備品(ディスプレイパネル、バス待合所など)または屋内装飾(装飾パネル)用、または家具(家具壁など)用;
−風防、後部の窓、サンルーフまたは側面の窓のタイプの、航空、海上または陸上(鉄道もしくは道路)輸送手段用;
−建築物(窓、フランス窓)用;および
−家庭−電気用途(冷蔵庫の扉、オーブンの扉、家具のショーケース、ガラス−セラミックプレート)。
【0078】
特に、屋内用途として、美術館のショーケースを作るための絵を保護することを意図する板ガラス、ディスプレイキャビネット、内部仕切り(病院、無塵室、制御室)、テレビおよび録音スタジオ、翻訳ブースもまた挙げることができる。屋外用途として、店の窓、レストランのガラス付き柱間、コントロールタワー(空港および港のための)、ならびに、戸外の分離用ガラス(スタジアムなどで観客を隔てるための)もまた挙げることができる。指示または広告パネル(鉄道の駅、空港などのための)および産業機械(クレーン、トラクター)を運転する機関士室もまた挙げることができる。
【0079】
最も一般に行われている反射防止用途では、その目的は、基板の光透過を増すために、基板の光反射を減らすことである。したがって、それらは、可視領域の波長を考慮に入れさえすれば最適化される。
【0080】
これらの一般に行われている反射防止用途におけるより良い効率のために、基板は、好ましくは、その主面のそれぞれに多孔性コーティングを有し得る。
【0081】
各面が反射防止コーティングにより被覆されたこの基板は、550nmにて、または好ましくは全可視領域にて、92%以上、または95%以上でさえある、または96%から97%以上でさえある光透過を、すなわち、典型的には、透明担体基板の光透過における少なくとも3%、またはさらに5%もしくは6%の増加を有し得る。
【0082】
こうして、さらに、被覆された基板は、広帯域の反射防止では、400と1200nmの間の波長領域で少なくとも90%の透過を有し得る。
【0083】
さらに、本発明による多孔性コーティングにより被覆された基板は、有機発光デバイス(OLED)のための基板(コーティング面が外面である)として使用され得る。
【0084】
この多孔性コーティングは、すでに生じた光線の取出しを増すことを可能にする。斜めの入射(特に約30°)での取出しが最適に選択され得る。
【0085】
有機発光積層体の例は、例えば、文書US6645645に記載されている。
【0086】
OLEDは通常、用いられる有機材料に応じて2つに大きく分類される。発光層が小さい分子である場合、デバイスはSM−OLED(低分子有機発光ダイオード)と呼ばれる。有機発光層がポリマーである場合、デバイスはPLED(ポリマー発光ダイオード)と呼ばれる。
【0087】
さらに、特定の用途で、透明基板の透過を、可視領域においてだけでなく、向上させる必要が、やはりあり得る。これは、特にソーラーパネル、殊に、太陽熱捕集器または光起電力電池(例えば、シリコン電池)の場合である。
【0088】
このような光起電力電池は、それらのエネルギー変換効率を特徴付けるそれらの量子効率を最大化するために、光起電力電池が可視部において、しかしまたそれを超えて、最も特別には、近赤外において捕捉する最大量の太陽エネルギーを吸収する必要がある。
【0089】
したがって、それらの効率を増すためには、光起電力電池にとって重量な波長において、このガラスを通しての太陽エネルギーの透過を最適化することが明らかである。
【0090】
可視波長および近赤外波長に渡る範囲において高い光透過を得ることによって、高いエネルギー変換効率を確保することが可能であり、この高い透過は、電池内で、この変換効率を実際に決める特性パラメータIsc(短絡電流)の変化により生じる。
【0091】
このように、本発明の別の主題は、少なくとも1つの光起電力電池のための外側基板としての、本発明による被覆された基板であり、被覆面は言うまでもなく外面(電池の反対側)である。
【0092】
一般的に言えば、このタイプの製品は、直列につながれ、2つの基板(外側基板は透明で、特にガラスである)の間に置かれた、光起電力電池の形で販売されている。「ソーラーモジュール」の名称で呼ばれ、販売されているのは、基板と(複数の)光起電力電池とのこの組合せである。
【0093】
それ故に、被覆された基板(その外面が被覆されている)は、特に、単結晶もしくは多結晶Si型(例えば、ウェハ)またはa−SiまたはCIS、CdTe、GaAsもしくはGaInP型の1つまたは複数の光起電力電池を含むソーラーモジュールの外側透明基板であり得る。
【0094】
本発明によるソーラーモジュールの一実施形態において、被覆されたエキストラ−クリアガラスを用いると、本発明によるソーラーモジュールは、反射防止コーティングを含まないエキストラークリアガラスからなる外側基板を用いるモジュールに比べて、その効率が、全電流密度として表して、少なくとも2.5%もしくは2.9%、または実に3.5%まで向上する。
【0095】
ソーラーモジュールの一実施形態において、このソーラーモジュールは、平坦であるように選択され、特に薄く着色されたガラスであり得る第1基板、および光起電力電池を、特にガラスからなり積層中間層を用いて第1基板に積層された平坦な第2基板と組み合わせて含み得る。さらに、低屈折率多孔性コーティングが、第1基板の積層面に付着され得る、または第1基板に面する側の積層中間層面にすら付着され得る。
【0096】
本発明はまた、平坦な第1基板(これは、好ましくは、ガラス、特に、クリアまたは薄く着色されたガラスからなる。)、および、積層中間層を用いて第1基板に積層された平坦な第2基板(これは、好ましくは、ガラスからなる。)を含む多重ガラスユニットにも関し得る。さらに、低屈折率多孔性コーティングが、第1基板の積層面に付着され得る、または第1基板に面する側の積層中間層面にすら付着され得る。
【0097】
この多重ガラスユニットは、前記の全ての用途に使用され得る(建築、自動車、屋内および屋外用途などのために)。
【0098】
この多孔性コーティングは、外側ガラスと光起電力電池との間の、または第1と第2基板との間の光学的セパレータとしての役目を果たす。このように、所望の外観、例えば着色したまたは薄く着色した外観を保つことが可能であり、これは、建築物のカーテンウォールでは特に有用である。この効果は、可能な最低の屈折率が選択された場合に、最高となる。
【0099】
また、後者の積層の適用において、好ましくはすでに上に記載された(大きな細孔、ビーズまたはナノ液滴などによって製造される)低屈折率多孔性コーティングは、第1基板の屈折率nより小さい屈折率nを有し得るので、特に、その結果、n−nは、好ましくは全可視領域に渡って、0.1以上、または0.2以上でさえあり、例えば0.4に達する。
【0100】
特に、屈折率1.5のガラス第1基板では、1.4または実に1.1まで小さい屈折率nが選択され得る。
【0101】
光学的セパレータを成す多孔性コーティングの厚さは、好ましくは、200nm以上、または400nm以上でさえあり得るが、好ましくは1μm未満である。
【0102】
第3の積層構成において、発光積層構造が提案され、この構造は、
−所定の屈折率がn、特に、クリアもしくはエキストラ−クリアガラスからなる、またはプラスチックでもよい透明で平坦な第1基板;
−全体に薄く着色された平坦な第2基板、特に、薄く着色されたガラス;
−第1と第2基板との間の積層中間層;
−光学的セパレータを成す多孔性コーティング、積層中間層に、または第1基板に付着される、この多孔性コーティングは、屈折率がnであり、差n−nは、好ましくは全可視領域に渡って、0.1以上、または0.2以上でさえあり、例えば0.4に達する;
−第1基板の端部に連結された光源、特に、発光ダイオード(LED);および
−多孔性コーティングと第1基板の間の内部後方散乱ネットワーク、および/または、第1基板の外面の外部散乱ネットワーク;
を含む。
【0103】
光学的セパレータを成す多孔性コーティングは、光導波管を成す透明な第1基板の中に、光線を反射する。
【0104】
多孔性コーティングの厚さは、好ましくは、200nm以上、または400nm以上でさえあり得るが、好ましくは1μm未満である。
【0105】
例えば、特に、1.5の屈折率のガラス第1基板では、多孔性コーティングは、1.4から1.1の屈折率を有するように選択され得る。
【0106】
内部後方散乱ネットワークの場合には、この多孔性コーティングは、内部ネットワークの間にだけ付着され得る、そうでなければ、内部ネットワークも覆う。
【0107】
内部ネットワークは後方散乱であり、好ましくは、50%以上、または80%以上でさえある拡散反射率を有する。
【0108】
外部ネットワークは散乱であり、光を取り出す役目を果たし、好ましくは、50%以上、または80%以上でさえある拡散透過率を有する。
【0109】
散乱または後方散乱ネットワークは、例えば0.2mmから2mmの範囲で、好ましくは1mm未満の幅(平均で)を有し、ミクロンサイズの厚さ、例えば、5から10μmの厚さの散乱輪郭体から形作られ得る。散乱輪郭体の間の間隔(平均で)は、0.2と5mmの間であり得る。ネットワークを形作るために、コーティングに構造が付与され得る。
【0110】
散乱または後方散乱ネットワークは、好ましくは、本質的に無機物であり、無機バインダーおよび/または無機散乱粒子に基づき得る。
【0111】
後方散乱ネットワークの例を示すために、仏国特許出願FR2809496に記載の散乱層を選択することが可能である。
【0112】
薄く着色された第2基板は、例えば、太陽から来る熱を保存し得る。一定の透明性が、例えば、海上輸送または地上輸送手段(自動車、産業用の運搬手段など)のルーフ用として、外部を見るために、保持され得る。
【0113】
Saint−Gobain Glassによって販売されているVENUS製品群のガラスVG10またはVG40が、例えば、選択され得る。
【0114】
ガラスVENUS VG10は、次の特性を有する:厚さに応じて、10と15%の間のT、および8と12.5%の間のT(TE−PM2規格による)。ガラスVENUS VG40は、次の特性を有する:厚さに応じて、35と42%の間のT、および22と28%の間のT(TE−PM2規格による)。
【0115】
建築用途のために、例えば、Saint−Gobain Glassによって販売されているPARSOL製品群の全体に薄くブロンズ、灰色または緑色に着色されたガラスを用いることが可能である。例えば、ガラスPARSOL GRISは、次の特性を有する:厚さに応じて、26と55%の間のT(光源D65の下で)、および29と57%の間のT(PM2規格による)。
【0116】
発光は、装飾的であっても、周囲になじむものであっても、有色であってもそうでなくてもよい。発光は、意図される用途(意匠文字付きガラス、薄く着色されたガラス、装飾ガラスなど)に応じて、均質であることもそうでないこともある。
【0117】
発光ラミネート構造において、被覆された中間層、または好ましくは、被覆された第1基板は、すでに上で記載された多孔性コーティングにより被覆された基板であり得る。
【0118】
発光ラミネート構造は、最も特別には、発光ルーフ、運搬手段のドア、建築物のための発光2重ガラスユニット、屋外または屋内用途、例えば、カーテンウォール、仕切り、ドア、窓、テーブルまたは棚であり得る。
【0119】
積層構造のこれらの例において、光学的セパレータを成す多孔性コーティングは、代わりに、先行技術の様々な技術を用いて形作られてもよい。
【0120】
第1の実施形態において、細孔は、ナノスケールのビーズ、例えばシリカビーズの目の詰んでいない積み重なりの隙間であり、このコーティングは、例えば文書米国特許出願公開第2004/0258929号明細書に記載されている。
【0121】
第2の実施形態において、多孔性コーティングは、NH蒸気によって高濃度化された濃厚シリカゾル(シリカオリゴマー)を付着させることによって得られ、このコーティングは、例えば、文献、国際公開第2005/049757号パンフレットに記載されている。
【0122】
第3の実施形態において、多孔性コーティングは、文書EP1329433に記載されているように、やはりゾル−ゲルタイプのものであり得る。多孔性コーティングは、また、他の知られている細孔形成剤:溶液(可能性として、加水分解された形の)中の陽イオン界面活性剤分子のミセル、または、陰イオンもしくは非イオン界面活性剤、または両親媒性分子(例えばブロックコポリマー)のミセルを用いても得ることができる。
【0123】
ラミネーション中間層として、特に、熱可塑性樹脂のシート、例えば、ポリウレタン(PU)、ポリビニルブチラール(PVB)もしくはエチレン−酢酸ビニル(EVA)のシート、または熱架橋性(エポキシもしくはPU)または紫外線架橋性(エポキシ、アクリル樹脂)である多成分または1成分樹脂のシートを選択することが可能である。
【0124】
さらに、本発明による多孔性コーティングを有する基板が板ガラスである場合、被覆される時に、板ガラスは、強化(または曲げ)処理のために、350℃以上、好ましくは500℃以上、または600℃以上でさえある温度で熱処理され得る。好ましくは、板ガラスは強化ガラスである。
【0125】
これは、本発明による多孔性コーティングが、クラックを生じることなく、またその光学的性質、耐久性および耐加水分解性における認められる低下なしに、高温の熱処理に耐えることができるためである。このように、ガラスが、通常500℃と700℃の間で熱処理される前に、特に、それを強化および曲げ/成形する前に、如何なる問題も生じることなく、多孔性コーティングを付着できることは、熱処理の前に付着を実施することが工業的観点からより簡単であるために、利点のあることになる。こうして、担体ガラスが熱処理を受けることを意図されているかどうかに関わらず、1つの反射防止構成を得ることが可能である。
【0126】
コーティングを高密度化し、可能であれば細孔形成剤を除去するために、通常、350℃と450℃の間のより低温での熱処理を前もって実施する必要はない。このように、多孔性コーティングの高密度化/生成は、強化または曲げ処理の間に実施され得る。
【0127】
さらに、本発明の別の主題は、多孔性コーティングを有する基板の製造方法であり、この方法は次の逐次ステップを含むゾル−ゲルタイプのものである:
−ゾルを熟成すること、このゾルは、溶媒、特に水性および/またはアルコール性溶媒中の、ドーピング処理されたまたはドーピング処理されていないシリカ酸化物タイプの、特にハライドまたはケイ素アルコキシドのような加水分解性化合物の、コーティング構成材料前駆体である;
−粒子の形態の固体ポリマー細孔形成剤、および/または、第1液体、特にオイル中のナノ液滴の形態の液体細孔形成剤と混合すること、ナノ液滴は、非混和性の、特に水系の第2液体中に分散されており、粒子またはナノ液滴は、好ましくは、サイズ(小さい方および/または大きい方の特性寸法)が、少なくとも20nm、特に40と100nmの間である;
−基板上への付着;
−細孔形成剤の周りでの前駆体の縮合;
−少なくとも500℃での、少なくとも600℃でさえの、15分を超えず、好ましくは5分を超えない時間の熱処理、特に強化および/または曲げ/成形処理。
【0128】
固体細孔形成剤は、有利には、ビーズ、好ましくは、特に、PMMA、メチルメタクリレート/アクリル酸コポリマーまたはポリスチレンタイプの、ポリマービーズを含み得る。
【0129】
ナノ液滴の形態の液体細孔形成剤は、有利には、前記オイルを含み得る。
【0130】
このように、熱処理は、細孔形成剤を除去するステップ、およびコーティングを高密度化するために縮合を完了させるステップを含み得る。
【0131】
基板への付着は、噴霧によって、またはシリカゾルへの浸漬およびそこからの引き上げ(ディップコーティング)によって、スピンコーティングによって、フローコーティングもしくはロールコーティングによって実施され得る。
【0132】
前記方法は、さらに、120℃以下のまたは100℃以下の温度での溶媒の除去を含み得る。
【0133】
特にプラスチックまたはガラス基板(特に、すでに強化されたもの)の場合におよび/またはハイブリッドゾルを用いる場合に有用な、第1の変形形態として、選択された前記ポリマー細孔形成剤は、ポリマー抽出溶媒(例えばPMMAの場合にはTHF)の添加によって除去されてよく、高密度化は、例えば、UV架橋性(メタクリレート、ビニル、アクリレートなど)官能基を有するハイブリッドシリカゾルでは、UV処理によって実施され得る。
【0134】
プラスチックおよび/またはガラス基板(特に、すでに強化された)の場合に有用な、第2の変形形態として、コーティング構成材料の前駆体ゾルは、例えばフローコーティングによって付着される、リチウム、ナトリウムまたはカリウムシリケートである。プラスチック(またはガラス)基板の場合において、選択された前記ポリマー細孔形成剤は、ポリマー抽出溶媒(例えばPMMAの場合にはTHF)の添加によって除去され、高密度化は、100℃以下、例えば80℃の温度で、可能性として送風と共に、赤外乾燥によって行われる。
【0135】
ガラス基板の場合には、選択された前記ポリマー細孔形成剤の除去、および高密度化は、350℃以上で実施され得る。
【0136】
本発明の詳細および利点のある特徴は、これから、図を用いる以下の非限定的実施例から明らかになる。
【0137】
図1から4bは、本発明による多孔質コーティングの横断面及び上面の走査電子顕微鏡写真である。
図5から7は、むき出しの基板または本発明のよるまたは比較例による多孔質コーティングにより被覆された様々な基板の透過スペクトルを示すグラフである。
図8から10は、本発明による多孔質コーティングにより被覆された基板が組み込まれたソーラーモジュール3例を示す図である。
図11は、本発明による多孔質コーティングにより被覆された基板が組み込まれた、薄く着色された発光ラミネート板ガラスを示す図である。
図12は、有機発光デバイス(このデバイスの基板は、むき出しであるまたは本発明による多孔質コーティングによりその外面に被覆されている。)の角度の関数としての透過率を示すグラフである。
【実施例】
【0138】
製造実施例
・シリーズ1
厚さ2.1mmのフロートガラス(エキストラ−クリアのソーダ−石灰−シリカガラス、例えば、Saint−Gobain Glassにより販売されているガラスDiamant)から10cm×10cmの寸法の試料を切り出した。これらの試料をRBS溶液により洗い、次いで、すすぎ洗いし、乾燥し、45分間UVオゾン処理を行った。
【0139】
これらの試料の各々のスズ面、すなわちバス(bath)面に、本発明による多孔性コーティングを付けようとした。フロートガラスは、選択された厚さおよび屈折率を場合によって調節することによって、約50から100nmの厚さを有する、例えば、SiO、SiOCまたはSiNのタイプの、アルカリ金属バリア下層を備えていてもよい。
【0140】
多孔性コーティングの形成方法を下に記載する。
【0141】
この方法の第1ステップは、液体処理組成物(以後、「ゾル」と呼ぶ)を調製することからなっていた。
【0142】
ゾルは、20.8gのテトラエチルオルソシリケート、18.4gの無水エタノール、およびHClを用いて酸性にしたpH=2.5の7.2gの水溶液を混合することによって得た。対応するモル比は、1:4:4であった。この組成物は、アルコキシド前駆体を完全に加水分解するために、好ましくは、4時間混合した。
【0143】
この方法の第2ステップは、上で得たシリカゾルを、試料に応じて、様々な比率で、様々なタイプの細孔形成剤(すなわち、サブミクロンのポリマービーズ)と混合することからなっていた。
【0144】
第1の構成(試行1から4)において、エタノール中に分散したPMMAビーズを組み入れた(20wt%)。様々な量のビーズを、広い屈折率範囲を得るために加えた。所定のエタノール含量が、所望のコーティング厚さに合わせて優先される。これらのビーズは、Malvern Nano ZS装置を用いる動的光散乱によって測定して、80nm±10nmの全平均直径を有していた。
【0145】
第2の構成(試行5から6)において、シリカゾルは、水に分散した、メチルメタクリレート/アクリル酸コポリマーのビーズを含むポリマー分散体に組み入れた(16wt%、pH=4で)。これらのビーズは、Malvern Nano ZS装置を用いる動的光散乱によって測定して、75nm±30nmの全平均直径を有していた。
【0146】
第3ステップは、0.45μmフィルターにより好ましくは予め濾過した、混合物の付着であった。付着は、ガラスの第1面(スズすなわちバス面の側)にスピンコーティングによって実施した。回転速度は、例えば1000回転/分であった。
【0147】
他の同等の付着技術は、ディップコーティング、スプレーコーティング、ラミナー(laminar)コーティング、ロールコーティングおよびフローコーティングである。
【0148】
第4ステップは熱処理に対応していた。
【0149】
こうして、試料1から6の第1の部分は、ビーズを除去し、コーティングを高密度化し、(複数の)溶媒を除去するために、450℃で3時間加熱した。好ましくは、ゾルの付着後、過度に激しい加熱のせいで現れるクラックの危険を減らすために、前もっての溶媒除去ステップ(例えば、100℃で1時間)が場合によって実施され得る。
【0150】
試料1から6の第2の部分には、ビーズを除去し、コーティングを高密度化し、強化ガラスを得ることを可能にする、640℃で10分間の強化処理を行った。好ましくは、ゾルの付着後、過度に激しい加熱のせいで現れるクラックの危険を減らすために、前もっての溶媒除去ステップ(例えば、100℃で1時間)が場合よっては実施され得る。
【0151】
場合による第5ステップは、オーバーレイヤーを付け加えることからなっていた。こうして、試料1から6の一部は、特に、戸外または湿った雰囲気における用途を考慮して、耐加水分解性をさらに向上させるために、欧州特許出願公開第799873号明細書に記載のAquacontrol(登録商標)の手順に従ってパーフルオロシランCF(CFCHCHSi(OH)により機能付与した。
【0152】
プラスチック基板の場合には、第4ステップだけを修正した:ビーズは、特定の溶媒を用いて除去し、コーティングを高密度化するための80℃での熱処理、および/またはUV処理を実施することが必要なこととして残された。
【0153】
図1および2は、試料2および3の横断面の走査電子顕微鏡写真を示す。
【0154】
図3および4は、それぞれ、試料5の横断面および底面の走査電子顕微鏡写真を示す。
【0155】
全ての試料で、多孔性コーティング2が、ガラス基板1との境界から空気との境界まで、その厚さ全体を通して、よく個別化され、均一に分布した細孔20を有することを見出した。
【0156】
多孔性コーティング2の表面は、クラックの生成なしにポリマービーズを除去したおかげで、著しく滑らかであった。へーズは0.5%未満であった。
【0157】
PMMAビーズを用いると、多孔性コーティングの細孔は、50と70nmの間のサイズを有していたが、これは、前記ビーズのサイズに近かった。
【0158】
メチルメタクリレート/アクリル酸コポリマーのビーズを用いると、多孔性コーティングの細孔は、30と70nmの間の大きさを有しており、前記ビーズのサイズのバラツキを実質的に再現していた。
【0159】
下の表1に、試行1から6のコーティングの様々な特性を記す。
【0160】
【表1】
【0161】
コーティングの厚さは、SEM顕微鏡写真を用いて求めた。
【0162】
水溶液中、5から30%の量の、別の前駆体、特に、ナトリウム、リチウムまたはカリウムシリケートが選択され得る。
【0163】
こうして、変形形態として、プラスチックまたはガラス基板の場合に、カリウム、ナトリウムまたはリチウムシリケートをバインダーとして選択し、ビーズは、特定のポリマー抽出溶媒(例えば、PMMAの場合にはTHF)と、その後の80℃での乾燥(例えば、送風と共に赤外加熱によって)によってか、またはビーズを除去するための350℃以上での少なくとも1時間の熱処理によってかのいずれかで、除去した。
【0164】
・シリーズ2
Diamantガラスの試料をシリーズ1と同様に調製した。
【0165】
シリカゾルは、塩酸によりpH=2.5に酸性化した水中におけるテトラエチルオルソシリケート(TEOS)の加水分解によって製造した。配合物中のTEOSの質量濃度は40%であった。ゾルは、激しく撹拌しながら90分間で加水分解した(最初に濁っていた溶液が透明になった。)。
【0166】
使用した固体細孔形成剤は、水に懸濁したアクリルビーズ(40%の固形分含量;pH=5)の固体細孔形成剤であった。これらのビーズは、Malvern Nano ZS装置を用いる動的光散乱によって測定して、70nm±20nmの全平均直径を有する。
【0167】
細孔形成剤を組み入れた後、厚さを調節するために、配合物を、塩酸を用いて酸性化した水(pH=2.5)により希釈した。
【0168】
別の実施形態において、シリカにドーピングする目的で、アルミナ前駆体を配合物に添加した。この前駆体はアルミニウムアセチルアセトネートすなわちAl(acac)であった。それは、ケイ素の代わりとして、5mol%の量で導入した。実際には、Al(acac)は、ゾルに添加する前に、希釈水に溶かした。細孔形成剤は最後に配合物に添加した。
【0169】
様々な配合物を、2000rpmでスピンコーティングによって付着させた。次いで、試料は、700℃で3分間、直ちに熱処理した。
【0170】
様々な試行の詳細を表2に記す。
【0171】
【表2】
【0172】
コーティングは約110nmの厚さ、および約70nmの細孔を有していた(SEM観察)。
【0173】
・シリーズ3
この第3のシリーズでは、細孔形成剤だけがシリーズ2のそれと異なっていた。この場合、細孔形成剤は、水中のパラフィンオイル(16.5wt%)のナノエマルジョンであった。オイルの液滴のサイズは、Malvern Nano ZS装置を用いる動的光散乱によって測定して、32nm±10nmであった。
【0174】
エマルジョンが不安定になることを防ぐために、水に配合したシリカゾルを用いた。
【0175】
試行6および7におけるように、シリカにアルミナをドーピングすることが可能であった。
【0176】
コーティングを付着させ、次いで、シリーズ2におけると同じ条件下に熱処理した。
【0177】
様々な試行の詳細を表3に記す。
【0178】
【表3】
【0179】
コーティングは、約110nm厚さ、および30nmの細孔を有していた(SEM観察)。
【0180】
図4aおよび4bは、それぞれ、シリーズ3タイプの横断面の走査電子顕微鏡写真を示す。
【0181】
図4aは、ガラス1上の薄い多孔性コーティング2’を示し、図4bは、ガラス1上の厚い多孔性コーティング2’を示す。
【0182】
光学的性質
下の表4は、コーティング1から10の可視屈折率を示す。
【0183】
【表4】
【0184】
図5は、むき出しのDiamantタイプのエキストラ−クリアガラス(曲線A)、および試行1の試料についての、400と1200nmの間の透過Tプロファイルを示す:
−第1の試料、450℃で熱処理し、フルオロシランのグラフト化はなし(曲線B);
−第2の試料、640℃で熱処理し、フルオロシランをグラフト化した(曲線C);
−第3の試料、640℃で熱処理し、フルオロシランのグラフト化はなし(曲線D);
−第4の試料、640℃での熱処理なしで、フルオロシランをグラフト化した(曲線E)。
【0185】
この図は、むき出しの比較例のガラスに比べて、試行1の試料での、可視における光透過の3または4%の増加、および近赤外における2%の増加を示す。グラフト化も、640℃での処理も光学的性質に影響を及ぼさない。
【0186】
400−1200nmの全範囲を通して、透過Tは90%を超えており、特に、400と700nmの間では93%以上である。
【0187】
さらに、反射Rは、400と700nmの間で約5から5.5%、700と1200nmの間では約8%で、ほぼ一定である。
【0188】
類似の結果を、試行2から10の試料で得た。
【0189】
変形形態として、DIAMANTエキストラ−クリアガラスを、2.1mmの厚さを有するPLANILUXタイプのクリアガラスに置き換えて、シリーズ1から3の場合に上に記載した方法によるコーティングを付着させた。
【0190】
このようにして、図6は、むき出しのPlaniluxガラス(曲線A’)、およびそれぞれの面に多孔性コーティング(それぞれのコーティングは450℃で処理した。)を有する第2の試料(曲線B’)について、300と1200nmの間の透過Tプロファイルを示す。
【0191】
後者の試料は、従来の反射防止用途:店の窓、絵を保護するための板ガラス、店のカウンターのためのものであった。
【0192】
図6は、「2面コーティング」試料での、可視における透過Tの5から6%の増加、550nmでの96%の透過を示す。さらに、反射Rは、400と700nmの間で約2−2.5%、特に550nmでは1.9で、ほぼ一定であり、片面コーティングでの約5%と比較される。
【0193】
試験
試料1から6に様々な試験を行った(下で詳細に説明する)。
【0194】
耐久性を決定するための第1の試験は、IEC 61250規格に従って、しばしば「気候試験(climate test)」と呼ばれる。コーティングは、−40℃から+80℃の20回の熱サイクルを受けた。
【0195】
第2の試験として、これらのコーティングに、雰囲気を85%の相対湿度に制御したチャンバ内に85℃で1000時間コーティングを置くことからなる耐湿熱性試験を行った(IEC 61215規格)。
【0196】
第3の試験として、これらのコーティングに、DIN 50021規格により中性塩噴霧(neutral salt fog)またはNSF試験として知られている耐化学薬品性試験を行った。プロトコールは次の通りであった:コーティングを、50g/lのNaClを含み、pH7の水性噴霧に、35℃の温度で500時間曝した。
【0197】
このようにして、図7は、コーティングのないDIAMANTガラス(曲線A”)およびシリーズ1の次の試料についての300と1200nmの間の光透過プロファイルを示す:
−640℃で熱処理し、グラフト化有りおよび無しの試料、如何なる試験も行っていない(曲線B”);
−640℃で熱処理し、グラフト化有りおよび無しの試料、第1の試験を行った(曲線C”);
−640℃で熱処理し、グラフト化有りおよび無しの試料、第2の試験を行った(曲線D”);
−640℃で熱処理した試料、第3の試験を行った(曲線E”)。
【0198】
この図は、光の反射および屈折率と全く同様に、光透過が変わらないことを示す。
【0199】
試料7から10には、次の試験を行った:
−上で定めた湿熱試験;および
−DIN 61200規格による耐摩耗性(Opel)試験。
【0200】
表5は、これらの2つの試験の前後で、シリコン系光起電力モジュールの場合に反射防止コーティングによって得られるエネルギー利得の値を記す。
【0201】
エネルギー利得は次のように定義される。
【0202】
【数1】
ここで、IARおよびIは、それぞれ、反射防止コーティング有りおよび無しで得た電流密度である。
【0203】
電流密度は次のように定義される。
【0204】
【数2】
ここで、
D(λ)は、太陽放射スペクトルであり;
T(λ)は、ガラスの透過スペクトルであり;また
cell(λ)は、波長λでの光起電力電池の量子効率である。ここでは、シリコン電池を考えた。
【0205】
【表5】
【0206】
これらの試験は、耐加水分解性に関するアルミナドーピングの明白な効果を示す。このドーピングは、機械的な耐性の低下を生じるが、これは、オイルナノエマルジョンのタイプの細孔形成剤の場合に比較的小さい。
【0207】
上記の方法はまた、次のように修正され得る。
【0208】
他の知られている細孔形成剤、例えば、溶液(場合によって、加水分解された形の)中の陽イオン界面活性剤分子のミセル、または陰イオンもしくは非イオン界面活性剤、または両親媒性分子(例えば、ブロックコポリマー)のミセルがまた、ビーズと共に組み入れられ得る。このような細孔形成剤は、2と5nmの間の小さなサイズの多かれ少なかれ丸い細孔の狭いチャネル状の細孔を生じる。陽イオン界面活性剤は、セチルトリメチルアンモニウムブロミドであってよく、材料の前駆体は、酸性媒体中の加水分解により得られるその形:Si(OH)で溶液中にあり、界面活性剤:Siのモル比は10−4と0.5の間である。
【0209】
変形形態として、多孔性コーティングは、巨視的な凹凸によりテクスチャ化された面、特に、Saint−Gobain GlassによるガラスALBARINOのようなプリントされラミネートされたエキストラ−クリアガラス、でなければSaint−Gobain GlassによるPLANILUXタイプのクリアガラスをコーティングするように選択され得る。
【0210】
別の変形形態として、厚さを増すにつれて増大する多孔度を好ましくは有する、多孔性コーティングの積層体もまた提供され得る。
【0211】
ソーラーモジュール
試料1、6および10を、ソーラーモジュールの外側ガラス板として好ましいとして選択した。
【0212】
図8に示すモジュール10は、次のように作製した:その外側の面(空気に面する側)12に反射防止多孔性コーティング2を備えたガラス板1を、その内側の面11によりガラス板3(「内側」の板と呼ばれる)に取り付けた。この内側のガラス板3は、厚さ2.1mmのクリアまたはエキストラ−クリア強化ガラスからなっていた。
【0213】
より詳細には、光起電力電池4を、2つのガラス板1、3の間に置き、次いで、欧州特許出願公開第0739042号明細書の教示に従って、板の間のスペースに、ポリウレタン系硬化性ポリマーを注入した。
【0214】
それぞれの光起電力電池4は、知られている様に、p/n接合を形成しているシリコンウェハと、前面および背面の印刷電気接点とからなっていた。シリコン光起電力電池は、他の半導体(例えば、CIS、CdTe、a−Si、GaAs,GaInP)を用いる太陽電池に置き換えることができる。
【0215】
比較のために、前記のものと同じであるが、本発明による反射防止多孔性コーティングを含まないエキストラ−クリアガラスからなる外側ガラス板を有するソーラーモジュールを組み立てた。
【0216】
全電流密度として表した効率の増加は、従来のモジュールに比べて、約2.9%であった。
【0217】
図9に示す第1の変形形態において、モジュール10’は、その外側の面12に多孔性コーティング2、その内側の面に、例えば、a−Si、CdTe,GaAsまたはGaInP型の1つまたは複数の薄膜光起電力電池4’を有するガラス板1を備えていた。
【0218】
より詳細には、通常通りに、それぞれの光起電力電池は次の積層を備えていた:
−透明導電(TCO)層;
−a−Si型活性層(単一層または多層);および
−金属反射体(例えば、銀またはアルミニウムからなる)。
【0219】
図10に示す第2の変形形態において、光起電力電池4”は、ガラス板3上のCIS型のものであった。
【0220】
光起電力電池4”は、例えばEVAからなる、ラミネーション中間層5により、第1ガラス板1’にラミネートした。第1ガラス板1と同様に、可能な最低の屈折率および少なくとも150nmの厚さを有する、好ましくは試料3、4または5の低屈折率多孔性コーティングを、その内部ラミネーション面11に有する薄く着色されたガラス板1’を、好ましいとして選択した。
【0221】
例えばカーテンウォール上の、このタイプのモジュールは、薄く着色されたガラスの色を保持する。
【0222】
場合によって、外部反射防止コーティング、特に、例えば、試料1、および6から10の多孔性コーティングが付加され得る。
【0223】
変形形態として、ラミナートされた単一ガラスパネルを形成することができ、多孔性コーティングは光学的セパレータを成す。
【0224】
発光ラミネート構造
以下を備える発光自動車ルーフ100を製造した:
−約1.5に等しい屈折率nの平坦で透明な第1基板1、例えば、クリアまたはエキストラ−クリアガラス;
−全体に薄く着色された平坦な第2基板1”、特にガラスVG10のような薄く着色されたガラス;
−第1と第2基板の間のラミネーション中間層5、例えばPVB中間層;
−第1ガラス板上に付着し、光学的セパレータを成す不連続多孔性コーティング2”、このコーティング2”は、例えば1.1の屈折率n、および400nmの厚さを有する;
−第1ガラス基板1の溝に好ましくは収納された発光ダイオード6の形の、第1基板の端部から照らすための光源;および
−所望の発光に応じて、適切な寸法の輪郭体の形の、多孔性コーティングと第1基板の間の内部後方散乱ネットワーク7。
【0225】
多孔性コーティングとして、前記試行のコーティングの1つを、必要である場合、厚さを合わせて、選択することができる。
【0226】
OLEDデバイス
図12は、コーティングのない基板、または、その外面に多孔性コーティング(例えば試行1から10の場合においてすでに記載の製造方法を用い、本発明に従ってナノ粒子またはナノ液滴タイプの細孔形成剤により得られる)をコーティングした基板を組み入れた有機発光デバイスの角度の関数として透過率を例示する。
【0227】
曲線200の形は、全ての光線が、ガラス/空気の境界での入射角に関わらず、ガラスから取り出される理想的な場合に対応する。
【0228】
曲線300は、コーティングのないガラス板に対応する。
【0229】
曲線400は、0°での取出しの最適化のために、多孔性コーティングにより被覆されたガラス板に対応する。
【0230】
曲線500は、32°での取出しの最適化のために、多孔性コーティングにより被覆されたガラス板に対応する。
【0231】
曲線600は、40°での取出しの最適化のために、多孔性コーティングにより被覆されたガラス板に対応する。
【0232】
さらに、次の式:
【0233】
【数3】
(式中、
−Tθは、光線の入射角θの関数としての光透過に対応し;また
−Rθは、0°と、ガラスと空気の間での屈折臨界角との間で、光線の入射角θの関数としての矩形プロフィールであり、R(x)の大きさは1に規格化されており、したがって、形状比Aは理想的配置構成からのずれを定める)
によって定義される規格化形状比(normalized form ratio)Aを表6に記す。所定の角度でのそれぞれの取出しの最適化のために、好ましい屈折率および厚さが得られる。
【0234】
【表6】
【0235】
多孔性コーティングにより、形状比のかなりの程度の増加が認められる。
図1
図2
図3
図4
図4a
図4b
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12