特許第5689819号(P5689819)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5689819ポリエチレン系樹脂発泡粒子、およびポリエチレン系樹脂型内発泡成形体
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  • 特許5689819-ポリエチレン系樹脂発泡粒子、およびポリエチレン系樹脂型内発泡成形体 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5689819
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】ポリエチレン系樹脂発泡粒子、およびポリエチレン系樹脂型内発泡成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/18 20060101AFI20150305BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20150305BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20150305BHJP
   C08K 5/05 20060101ALI20150305BHJP
【FI】
   C08J9/18CES
   C08L23/04
   C08K5/10
   C08K5/05
【請求項の数】14
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2011-549946(P2011-549946)
(86)(22)【出願日】2011年1月14日
(86)【国際出願番号】JP2011000163
(87)【国際公開番号】WO2011086937
(87)【国際公開日】20110721
【審査請求日】2013年12月2日
(31)【優先権主張番号】特願2010-7233(P2010-7233)
(32)【優先日】2010年1月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】中山 清敬
(72)【発明者】
【氏名】吉田 融
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−017079(JP,A)
【文献】 特開2002−226621(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/075208(WO,A1)
【文献】 特開昭64−001741(JP,A)
【文献】 特開2002−097295(JP,A)
【文献】 国際公開第97/018260(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00− 9/42
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡倍率10倍以上50倍以下であるポリエチレン系樹脂発泡粒子であって、
ポリエチレン系樹脂100重量部に対し、グリセリンおよび/またはポリエチレングリコールを0.05重量部以上2重量部以下含んでなり、
示差走査熱量測定(DSC)により得られるDSC曲線において、低温側融解ピークと高温側融解ピークの2つの融解ピークを示し、かつ、100℃以上前記低温側融解ピーク温度以下の領域に更にショルダーを有し、前記ショルダーの熱量(Qs)が、低温側融解ピークの熱量(Ql)の0.2%以上3%以下であることを特徴とする、ポリエチレン系樹脂発泡粒子。
【請求項2】
ポリエチレン系樹脂100重量部に対し、グリセリンを0.05重量部以上2重量部以下含んでなることを特徴とする、請求項に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子。
【請求項3】
発泡倍率10倍以上50倍以下であるポリエチレン系樹脂発泡粒子であって、
示差走査熱量測定(DSC)により得られるDSC曲線において、低温側融解ピークと高温側融解ピークの2つの融解ピークを示し、かつ、100℃以上前記低温側融解ピーク温度以下の領域に更にショルダーを有し、前記ショルダーの熱量(Qs)が、低温側融解ピークの熱量(Ql)の0.2%以上3%以下であり、
前記低温側融解ピークの熱量(Ql)と、前記高温側融解ピークの熱量(Qh)から算出した、高温側融解ピーク熱量の比率(Qh/(Ql+Qh)×100)(%)が20%以上55%以下であることを特徴とする、ポリエチレン系樹脂発泡粒子。
【請求項4】
ポリエチレン系樹脂100重量部に対し、グリセリン、ポリエチレングリコール、炭素数が10以上25以下の脂肪酸のグリセリンエステルから選ばれる少なくとも1種を0.05重量部以上2重量部以下含んでなることを特徴とする、請求項3に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子。
【請求項5】
ポリエチレン系樹脂が、少なくとも直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂を含んでなることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子。
【請求項6】
ポリエチレン系樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂80重量%以上99重量%以下および低密度ポリエチレン系樹脂1重量%以上20重量%以下(両者の合計100重量%)であることを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子。
【請求項7】
平均気泡径が150μm以上400μm以下であることを特徴とする、請求項1〜の何れか一項に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子。
【請求項8】
少なくとも2回の発泡工程を経て得られることを特徴とする、請求項1〜の何れか一項に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子。
【請求項9】
一段目の発泡工程が、密閉容器内に、ポリエチレン系樹脂粒子を二酸化炭素と共に水系分散媒に分散させ、ポリエチレン系樹脂粒子の軟化温度以上の温度まで加熱、加圧した後、密閉容器の内圧よりも低い圧力域に放出する工程であることを特徴とする、請求項に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子。
【請求項10】
請求項1〜の何れか一項に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子を型内発泡成形してなることを特徴とする、ポリエチレン系樹脂型内発泡成形体。
【請求項11】
ポリエチレン系樹脂粒子に二酸化炭素を含浸させ、次いで、発泡して得られるポリエチレン系樹脂発泡粒子を、水蒸気と接触させて、更に高発泡倍率とするポリエチレン系樹脂発泡粒子の製造方法であって、
前記ポリエチレン系樹脂発泡粒子は、ポリエチレン系樹脂100重量部に対し、グリセリンおよび/またはポリエチレングリコールを0.05重量部以上2重量部以下含んでなり、
前記ポリエチレン系樹脂発泡粒子は、示差走査熱量測定(DSC)により得られるDSC曲線において、低温側融解ピークと高温側融解ピークの2つの融解ピークを示し、かつ、100℃以上前記低温側融解ピーク温度以下の領域に更にショルダーを有し、前記ショルダーの熱量(Qs)が、低温側融解ピークの熱量(Ql)の0.2%以上3%以下であり、かつ、発泡倍率が10倍以上50倍以下であることを特徴とする、ポリエチレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項12】
ポリエチレン系樹脂粒子に二酸化炭素を含浸させ、次いで、発泡して得られるポリエチレン系樹脂発泡粒子を、水蒸気と接触させて、更に高発泡倍率とするポリエチレン系樹脂発泡粒子の製造方法であって、
前記ポリエチレン系樹脂発泡粒子は、示差走査熱量測定(DSC)により得られるDSC曲線において、低温側融解ピークと高温側融解ピークの2つの融解ピークを示し、かつ、100℃以上前記低温側融解ピーク温度以下の領域に更にショルダーを有し、前記ショルダーの熱量(Qs)が、低温側融解ピークの熱量(Ql)の0.2%以上3%以下であり、かつ、発泡倍率が10倍以上50倍以下であり、
前記低温側融解ピークの熱量(Ql)と、前記高温側融解ピークの熱量(Qh)から算出した、高温側融解ピーク熱量の比率(Qh/(Ql+Qh)×100)(%)が20%以上55%以下であることを特徴とする、ポリエチレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項13】
ポリエチレン系樹脂発泡粒子に接触させる水蒸気の圧力が、0.045MPa(ゲージ圧)以上0.15MPa(ゲージ圧)以下である、請求項11または12に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項14】
密閉容器内に、ポリエチレン系樹脂粒子を二酸化炭素と共に水系分散媒に分散させ、ポリエチレン系樹脂粒子の軟化温度以上の温度まで加熱、加圧した後、密閉容器の内圧よりも低い圧力域に放出して得たポリエチレン系樹脂発泡粒子を、水蒸気と接触させて更に高発泡倍率とする、請求項11〜13の何れか一項に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝材、緩衝包材、通い箱、断熱材などに用いられるポリエチレン系樹脂発泡粒子、および該ポリエチレン系樹脂発泡粒子を型内発泡成形してなるポリエチレン系樹脂型内発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン系樹脂発泡粒子を金型内に充填し、水蒸気等で加熱成形して得られる型内発泡成形体は、型内発泡成形体の長所である形状の任意性、軽量性、断熱性などの特徴を持つ。
【0003】
ポリエチレン系樹脂発泡粒子の製法としては、様々な製法が知られており、ポリエチレン系樹脂粒子を架橋した後、発泡剤である二酸化炭素を気体状態で接触させて含浸し、その後、水蒸気加熱して発泡させる方法(例えば、特許文献1)が知られている。
【0004】
また、特許文献2および3には、ポリエチレン系樹脂粒子を二酸化炭素(ドライアイス)と共に水系分散媒に分散させ、加温加圧して二酸化炭素を含浸させ、その後低圧域に放出して発泡させてポリエチレン系樹脂発泡粒子を得た後、該ポリエチレン系樹脂発泡粒子に内圧を付与し、スチームで加熱して更に発泡させた、ポリエチレン系樹脂発泡粒子が開示されており、このポリエチレン系樹脂発泡粒子は気泡径が250μm以上であり、また、示差走査熱量測定(DSC)において、低温側融解ピークと高温側融解ピークの2つの融解ピークを有し、高温側融解ピーク熱量が3.5〜35J/gであることが開示されている。
【0005】
また、発泡剤として前述した水系分散媒の水を用いる方法も知られており、効率的に水を吸収させるために、親水性化合物としてエチレン系アイオノマーをポリエチレン系樹脂に混合して用いている(例えば、特許文献4)。
【0006】
また、発泡剤として水や二酸化炭素を用いると共に、新規な親水性化合物としてポリエチレングリコールやグリセリンを用いる技術もある(例えば、特許文献5)。
【0007】
また、一度の発泡では高発泡倍率の発泡粒子が得られにくい場合、得られた発泡粒子を再度発泡させて高発泡倍率の発泡粒子を得る方法も知られている。
【0008】
特許文献2〜4に開示されているポリエチレン系樹脂発泡粒子には、示差走査熱量測定(DSC)において、低温側融解ピークと高温側融解ピークの2つの融解ピークを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平4−372630号公報
【特許文献2】特開2000−17079号公報
【特許文献3】特開平2−75636号公報
【特許文献4】特開平10−204203号公報
【特許文献5】国際公開2009/075208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これまで、上述の高発泡倍率のポリエチレン系樹脂発泡粒子を用いて型内発泡成形する場合、型内発泡成形体の表面にしわやボイドが発生する、型内発泡成形体端部(エッジ部)の融着レベルが悪く外観不良である、といった問題が散見され、型内発泡成形体の商品価値の低下や型内発泡成形体の生産性の悪化をもたらすことが頻発していた。
【0011】
本発明は、特に型内発泡成形体端部(エッジ部)の融着レベルが良好であると共に、外観も優れ、加えて型内発泡成形体表面のしわやボイドもなく、表面性に優れた(表面が美麗な)、高発泡倍率のポリエチレン系樹脂型内発泡成形体を製造するための、ポリエチレン系樹脂発泡粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ポリエチレン系樹脂発泡粒子の示差走査熱量測定(DSC)により得られるDSC曲線において、低温側融解ピークと高温側融解ピークの2つの融解ピークを示しているポリエチレン系樹脂発泡粒子であって、100℃以上前記低温側融解ピーク温度以下の領域に更にショルダーを有するポリエチレン系樹脂発泡粒子を使用して型内発泡成形を行うことにより、上記課題が解決することを見出し、本発明の完成に至った。
【0013】
すなわち、本発明は、以下の構成よりなる。
[1] 発泡倍率が10倍以上50倍以下であるポリエチレン系樹脂発泡粒子であって、示差走査熱量測定(DSC)により得られるDSC曲線において、低温側融解ピークと高温側融解ピークの2つの融解ピークを示し、かつ、100℃以上前記低温側融解ピーク温度以下の領域に更にショルダーを有し、前記ショルダーの熱量(Qs)が、低温側融解ピークの熱量(Ql)の0.2%以上3%以下であることを特徴とする、ポリエチレン系樹脂発泡粒子。
[2] ポリエチレン系樹脂100重量部に対し、グリセリン、ポリエチレングリコール、炭素数が10以上25以下の脂肪酸のグリセリンエステルから選ばれる少なくとも1種を0.05重量部以上2重量部以下含んでなることを特徴とする、[1]記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子。
[3] ポリエチレン系樹脂100重量部に対し、グリセリンおよび/またはポリエチレングリコールを0.05重量部以上2重量部以下含んでなることを特徴とする、[1]または[2]に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子。
[4] ポリエチレン系樹脂100重量部に対し、グリセリンを0.05重量部以上2重量部以下含んでなることを特徴とする、[1]〜[3]の何れか一項に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子。
[5] ポリエチレン系樹脂が、少なくとも直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂を含んでなることを特徴とする、[1]〜[4]の何れか一項に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子。
[6] ポリエチレン系樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂80重量%以上99重量%以下および低密度ポリエチレン系樹脂1重量%以上20重量%以下(両者の合計100重量%)であることを特徴とする、[1]〜[5]の何れか一項に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子。
[7] 前記低温側融解ピークの熱量(Ql)と、前記高温側融解ピークの熱量(Qh)から算出した、高温側融解ピーク熱量の比率(Qh/(Ql+Qh)×100)(%)が20%以上55%以下であることを特徴とする、[1]〜[6]の何れか一項に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子。
[8] 平均気泡径が150μm以上400μm以下であることを特徴とする、[1]〜[7]の何れか一項に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子。
[9] 少なくとも2回の発泡工程を経て得られることを特徴とする、[1]〜[8]の何れか一項に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子。
[10] 一段目の発泡工程が、密閉容器内に、ポリエチレン系樹脂粒子を二酸化炭素と共に水系分散媒に分散させ、ポリエチレン系樹脂粒子の軟化温度以上の温度まで加熱、加圧した後、密閉容器の内圧よりも低い圧力域に放出する工程であることを特徴とする、[9]に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子。
[11] [1]〜[10]の何れか一項に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子を型内発泡成形してなることを特徴とする、ポリエチレン系樹脂型内発泡成形体。
[12] ポリエチレン系樹脂粒子に二酸化炭素を含浸させ、次いで、発泡して得られるポリエチレン系樹脂発泡粒子を、水蒸気と接触させて、更に高発泡倍率とするポリエチレン系樹脂発泡粒子の製造方法であって、
示差走査熱量測定(DSC)により得られるDSC曲線において、低温側融解ピークと高温側融解ピークの2つの融解ピークを示し、かつ、100℃以上前記低温側融解ピーク温度以下の領域に更にショルダーを有し、前記ショルダーの熱量(Qs)が、低温側融解ピークの熱量(Ql)の0.2%以上3%以下であり、かつ、発泡倍率が10倍以上50倍以下であることを特徴とする、ポリエチレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
[13] ポリエチレン系樹脂発泡粒子に接触させる水蒸気の圧力が、0.045MPa(ゲージ圧)以上0.15MPa(ゲージ圧)以下である、[12]記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
[14] 密閉容器内に、ポリエチレン系樹脂粒子を二酸化炭素と共に水系分散媒に分散させ、ポリエチレン系樹脂粒子の軟化温度以上の温度まで加熱、加圧した後、密閉容器の内圧よりも低い圧力域に放出して得たポリエチレン系樹脂発泡粒子を、水蒸気と接触させて更に高発泡倍率とする、[12]または[13]に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明のポリエチレン系樹脂発泡粒子を用いれば、型内発泡成形を行って高発泡倍率のポリエチレン系樹脂型内発泡成形体を製造する場合において、型内発泡成形体端部(エッジ部)の融着レベルが良好であると共に、外観も優れ、更には型内発泡成形体表面のしわやボイドもなく、表面性に優れた(表面が美麗な)ポリエチレン系樹脂型内発泡成形体が得られる。
【0015】
また、グリセリン、ポリエチレングリコール、炭素数が10〜25である脂肪酸のグリセリンエステルから選ばれる少なくとも1種を含有させた場合、環境適合性に優れた発泡剤である二酸化炭素や水を用いて製造したポリエチレン系樹脂発泡粒子により、上述した優れたポリエチレン系樹脂型内発泡成形体を得やすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のポリエチレン系樹脂発泡粒子の示差走査熱量測定(DSC)により得られるDSC曲線の一例である。低温側融解ピークと高温側融解ピークの2つの融解ピークを有していると共に、100℃以上であって該低温側融解ピーク温度以下の領域に更にショルダーを有している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のポリエチレン系樹脂発泡粒子は、発泡倍率10倍以上50倍以下であって、示差走査熱量測定(DSC)により得られるDSC曲線において、低温側融解ピークと高温側融解ピークの2つの融解ピークを示し、かつ、100℃以上前記低温側融解ピーク温度以下の領域に更にショルダーを有し、前記ショルダーの熱量(Qs)が、低温側融解ピークの熱量(Ql)の0.2%以上3%以下であることを特徴とする、ポリエチレン系樹脂発泡粒子である。
【0018】
ここで、ポリエチレン系樹脂発泡粒子の示差走査熱量測定によって得られるDSC曲線とは、ポリエチレン系樹脂発泡粒子1mg以上10mg以下を、示差走査熱量計を用いて、10℃/分の昇温速度にて40℃から190℃まで昇温した際に得られるDSC曲線である。
【0019】
本発明のポリエチレン系樹脂発泡粒子のDSC曲線は、図1に示すように、低温側融解ピークと高温側融解ピークの2つの融解ピークを示す。ここで、高温側融解ピークとは、DSC曲線において高温側のピークのことであり、低温側融解ピークとは、前記高温側融解ピークよりも低温側に存在するピークをいう。
【0020】
なお、本発明においては、低温側融解ピークの熱量(Ql)および、高温側融解ピークの熱量(Qh)を、次のように定義する。
すなわち、DSC曲線の低温側融解ピークおよび高温側融解ピークの2つの融解ピーク間において最も吸熱量が小さくなる点をAとし、点AからDSC曲線に対して、それぞれ接線を引き、高温側の接点をB、低温側の接点をCとした時、線分ABとDSC曲線で囲まれた部分が高温側融解ピークの熱量(Qh)とし、線分ACとDSC曲線で囲まれた部分が低温側融解ピークの熱量(Ql)とする。
【0021】
本発明のポリエチレン系樹脂発泡粒子において最も重要な点は、ポリエチレン系樹脂発泡粒子のDSC曲線において、100℃以上であって低温側融解ピーク温度以下の領域に、更にショルダーを有することである。
【0022】
本発明のポリエチレン系樹脂発泡粒子のDSC曲線は、図1に示すように、100℃以上前記低温側融解ピーク温度以下の領域に、にショルダーを有する。
ここで、ショルダーの熱量(Qs)は、DSC曲線におけるショルダーの高温側の裾に相当する変曲点をDとし、点DからDSC曲線の低温側に向かって接線を引き、その接点をEとした時の、線分DEとDSC曲線によって囲まれた部分の熱量をいい、前記低温側融解ピークの熱量(Ql)に包含されるものである。
【0023】
なお、本発明において、100℃以上であって前記低温側融解ピーク温度以下の領域のショルダーは、上記点Dより低温側であって点Eより高温側のDSC曲線に存在する変曲点が、100℃以上であって低温側融解ピーク温度以下の領域に存在すればよく、例えばショルダーの低温側の裾に当たる点Eが100℃未満であっても構わない。
【0024】
このような、DSC曲線においてショルダーを有するポリエチレン系樹脂発泡粒子は、例えば、次のような方法を組み合わせることによって得やすい傾向がある。
(1)一旦、ポリエチレン系樹脂発泡粒子を得た後、このポリエチレン系樹脂発泡粒子に無機ガス、例えば空気や窒素、二酸化炭素等を含浸して内圧を付与し、その後、特定の圧力の水蒸気と接触させるといった、少なくとも2回の発泡工程を経る方法、
(2)ポリエチレン系樹脂100重量部に対し、グリセリン、ポリエチレングリコール、炭素数が10以上25以下の脂肪酸のグリセリンエステルから選ばれる少なくとも1種を0.05重量部以上2重量部以下含んでなるポリエチレン系樹脂粒子を発泡させる方法、
(3)複数のポリエチレン系樹脂をブレンド、特に直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂と低密度ポリエチレン系樹脂をブレンドしたポリエチレン系樹脂粒子を原料として使用する方法、等が挙げられる。
【0025】
本発明のポリエチレン系樹脂発泡粒子のDSC曲線におけるショルダーの熱量(Qs)の低温側融解ピークの熱量(Ql)中に占める割合((Qs/Ql)×100(%)であり、以下、「ショルダー比」という場合がある)は0.2%以上3%以下であり、好ましくは0.2%以上1.6%以下である。ショルダー比が0.2%未満の場合、得られるポリエチレン系樹脂型内発泡成形体の端部(エッジ部)の融着レベルや外観が低下する傾向にあり、ポリエチレン系樹脂型内発泡成形体の表面性も低下する傾向にある。ショルダー比が3%を超えるポリエチレン系樹脂発泡粒子を得ようとした場合、ポリエチレン系樹脂発泡粒子同士が合着してブロッキングしてしまい、その後の型内発泡成形に供することができなくなる場合がある。
ここで、ポリエチレン系樹脂型内発泡成形体の端部(エッジ部)とは、型内発泡成形体の面と面が交差する稜線部を言い、一般的には、融着が不十分である場合、エッジ部を構成しているポリエチレン系樹脂発泡粒子が欠けやすい部分である。
【0026】
本発明におけるポリエチレン系樹脂発泡粒子のショルダーの熱量(Qs)は、低温側融解ピークの熱量(Ql)にも依存するため一概には言えないが、概ね0.01J/g以上0.5J/g以下が好ましい。
ショルダーの熱量(Qs)が0.01J/g未満の場合、得られるポリエチレン系樹脂型内発泡成形体の端部(エッジ部)の融着レベルや外観が低下する傾向にあり、ポリエチレン系樹脂型内発泡成形体の表面性も低下する傾向にある。また、ショルダーの熱量(Qs)が0.5J/gを超えるポリエチレン系樹脂発泡粒子を得ようとした場合、ポリエチレン系樹脂発泡粒子同士が合着してブロッキングしてしまい、その後の型内発泡成形に供することができなくなる場合がある。
【0027】
一方、高温側融解ピーク熱量(Qh)の比率(Qh/(Ql+Qh)×100(以下、DSC比という場合がある))の値としては特に制限は無いが、好ましくは20%以上55%以下である。20%未満の場合、ポリエチレン系樹脂発泡粒子の発泡力が高すぎ、型内発泡成形する際の初期の段階で金型表面付近(型内発泡成形体表層部分)の発泡粒子のみが一気に発泡して発泡粒子同士が融着し、その結果、型内発泡成形に用いられる水蒸気が内部の発泡粒子まで浸透せず、型内発泡成形体内部が融着しない融着不良の型内発泡成形体となってしまう傾向がある。また、55%を超える場合は、ポリエチレン系樹脂発泡粒子の発泡力が低すぎ、型内発泡成形体全体が融着不良となったり、あるいは融着させるために高い成形圧が必要となる傾向がある。
【0028】
本発明のポリエチレン系樹脂発泡粒子の発泡倍率は、10倍以上50倍以下である。好ましくは12倍以上35倍以下である。10倍未満では、DSC曲線において、100℃以上低温側融解ピーク温度以下の領域に更にショルダーを有するポリエチレン系樹脂発泡粒子を得ることが困難である。また、50倍を超えると型内発泡成形したポリエチレン系樹脂型内発泡成形体の圧縮強度などの機械特性が低下する傾向にある。
【0029】
なお、本発明において、ポリエチレン系樹脂発泡粒子の発泡倍率とは、ポリエチレン系樹脂発泡粒子の重量w(g)を測定後、エタノールの入ったメスシリンダー中に沈め、メスシリンダーの界面上昇分(水没法)にて体積v(cm3)を測定し、ポリエチレン系樹脂発泡粒子の真比重ρb=w/vを求め、発泡前のポリエチレン系樹脂粒子の密度ρrとの比(ρr/ρb)である。
【0030】
また、本発明のポリエチレン系樹脂発泡粒子の平均気泡径について特に制限は無いが、150μm以上400μm以下が好ましい。150μm未満では型内発泡成形した際にポリエチレン系樹脂型内発泡成形体表面のシワが目立ち、表面性が低下する傾向にある。また、400μmを超えると型内発泡成形して得られたポリエチレン系樹脂型内発泡成形体の緩衝特性が低下する傾向にある。
【0031】
なお本発明において平均気泡径は、無作為に選んだ10個の発泡粒子に対して、セル膜が破壊されないように充分注意して発泡粒子のほぼ中央を切断し、その切断面をマイクロスコープで観察し、表層部を除く部分に長さ1000μmに相当する線分を引き、当該線分が通る気泡数nを測定し、気泡径を1000/n(μm)で算出することにより得て、これらの気泡径の平均値を、平均気泡径とする。
【0032】
本発明で用いられるポリエチレン系樹脂としては、高密度ポリエチレン系樹脂、中密度ポリエチレン系樹脂、低密度ポリエチレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂、等が挙げられる。これらの中でも、高発泡のポリエチレン系樹脂型内発泡成形体が得られる点から、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂を用いることが好ましい。
また、密度の異なる直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂を複数ブレンドして用いることも可能である。更には、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂に、高密度ポリエチレン系樹脂、中密度ポリエチレン系樹脂、低密度ポリエチレン系樹脂の少なくとも1種をブレンドして用いることもできる。
【0033】
複数のポリエチレン系樹脂をブレンドして用いることは、型内発泡成形する際の成形可能な圧力範囲が広がると共に、ポリエチレン系樹脂発泡粒子とした際にショルダーを有しやすいことから、本発明においては好ましい態様である。
特に、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂と低密度ポリエチレン系樹脂とのブレンドがより好ましい。
【0034】
直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂と低密度ポリエチレン系樹脂のブレンド比率としては、ショルダーを有しやすいこと、および、ポリエチレン系樹脂発泡粒子とする際の発泡性の観点から、両者の合計を100重量%とした場合、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂80重量%以上99重量%以下および低密度ポリエチレン系樹脂1重量%以上20重量%以下であることが好ましく、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂90重量%以上98重量%以下および低密度ポリエチレン系樹脂2重量%以上10重量%以下であることがより好ましい。
なお、本発明における低密度ポリエチレン系樹脂とは、多くの分岐を有する、いわゆる高圧法ポリエチレンのことであり、ほとんど分岐を有さない直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂とは区別される。
【0035】
前記直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂としては、例えば、融点115℃以上130℃以下、密度0.915g/cm3以上0.940g/cm3以下、メルトインデックス0.1g/10分以上5g/10分以下のものを用いることができる。なお、メルトインデックスとはJIS K7210に準拠し、温度190℃、荷重2.16kgで測定した値である。
【0036】
また、前記直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂は、エチレン以外の共重合するコモノマーを含んでいてもよい。エチレンと共重合するコモノマーとしては、炭素数4以上18以下のα−オレフィンを用いることができ、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、1−オクテンなどが挙げられ、これらは単独で用いても良く、2種以上併用しても良い。共重合体の密度が前記範囲となるためには、コモノマーは概ね3重量%以上12重量%以下共重合することが好ましい。
【0037】
前記低密度ポリエチレン系樹脂としては、例えば、融点が100℃以上120℃以下、密度が0.910g/cm3以上0.930g/cm3以下、メルトインデックスが0.1g/10分以上100g/10分以下のものを用いることができる。
なお、メルトインデックスとはJIS K7210に準拠し、温度190℃、荷重2.16kgで測定した値である。
【0038】
また、前記低密度ポリエチレン系樹脂は、エチレン以外の共重合するコモノマーを含んでいてもよい。エチレンと共重合するコモノマーとしては、炭素数4以上18以下のα−オレフィンを用いることができ、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、1−オクテンなどが挙げられ、これらは単独で用いても良く、2種以上併用しても良い。
【0039】
本発明において、ポリエチレン系樹脂粒子中に、グリセリン、ポリエチレングリコール、炭素数が10以上25以下の脂肪酸のグリセリンエステルから選ばれる少なくとも1種を、親水性化合物として含有させることが好ましい。
【0040】
なお、ポリエチレングリコールとは、エチレングリコールが重合した構造を有する非イオン性の水溶性ポリマーであり、分子量は概ね5万以下のものである。本発明で使用するポリエチレングリコールは、平均分子量が200以上9000以下であることが好ましく、より好ましくは200以上600以下である。
また、炭素数が10以上25以下の脂肪酸のグリセリンエステルの中では、ステアリン酸とグリセリンからなるモノエステル、ジエステル、あるいはトリエステルが好ましく、これらのエステルを混合して用いても良い。
【0041】
グリセリン、ポリエチレングリコール、炭素数が10以上25以下の脂肪酸のグリセリンエステルから選ばれる少なくとも1種を含有させることにより、高発泡倍率のポリエチレン系樹脂発泡粒子を容易に得ることができるようになる。これらの化合物の中でも、低含有量で高発泡倍率のポリエチレン系樹脂発泡粒子を得やすく、更に型内発泡成形体にしたときの端部(エッジ部)の融着レベルが良好で外観に優れる観点からは、グリセリンおよび/またはポリエチレングリコールがより好ましく、最も好ましくはグリセリンである。
【0042】
グリセリン、ポリエチレングリコール、炭素数が10以上25以下の脂肪酸のグリセリンエステルよりなる群から選ばれる少なくとも1種は、ポリエチレン系樹脂100重量部に対し、0.05重量部以上2重量部以下含有させることが好ましく、0.05重量部以上0.5重量部以下含有させることがより好ましい。グリセリン、ポリエチレングリコール、炭素数が10以上25以下の脂肪酸のグリセリンエステルから選ばれる少なくとも1種の含有量が0.05重量部未満では発泡倍率が上がりにくい傾向があり、また、型内発泡成形体にしたときの端部(エッジ部)の融着の改善レベルが小さくなる傾向にある。一方、2重量部を超えて含有させても、発泡倍率の更なる向上は発現し難い傾向にある。
【0043】
なお、本発明の目的を損なわない程度に他の親水性化合物を併用することも可能である。他の親水性化合物とは、具体例として、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、ホウ砂、ホウ酸カルシウム、ホウ酸亜鉛等の水溶性無機物;メラミン、イソシアヌル酸、メラミン・イソシアヌル酸縮合物等の吸水性有機物;セチルアルコール、ステアリルアルコールといった炭素数12以上18以下の脂肪アルコール類、などが挙げられ、更には、1,2,4−ブタントリオール、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、D−マンニトール、エリスリトール、ヘキサントリオール、キシリトール、D−キシロース、イノシトール、フルクトース、ガラクトース、グルコース、マンノース等も挙げることができる。
【0044】
本発明において、発泡の時に気泡核の形成を促す発泡核剤を含有させることができる。
発泡核剤としては、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、カオリン、硫酸バリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、ゼオライト等の無機物質、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウムなどの脂肪酸金属塩などが挙げられる。これらの発泡核剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用しても良い。これらの中でも、タルク、炭酸カルシウム、ステアリン酸カルシウムが好ましい。更に粒径分布がシャープであることが望ましい。
【0045】
発泡核剤の添加量は使用する発泡核剤によって異なり、一概には決めることが出来ないが、ポリエチレン系樹脂100重量部に対して、0.005重量部以上2重量部以下であることが好ましく、0.01重量部以上1重量部以下であることがより好ましい。また、発泡核剤としてタルクを使用する場合、ポリエチレン系樹脂100重量部に対して、0.005重量部以上1重量部以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.01重量部以上0.5重量部以下、より好ましくは0.02重量部以上0.2重量部以下である。
【0046】
発泡核剤の添加量が0.005重量部より少ない場合は、ポリエチレン系樹脂発泡粒子の発泡倍率を大きくすることができなかったり、気泡の均一性が低下してしまう場合がある。発泡核剤の添加量が2重量部より多い場合はポリエチレン系樹脂発泡粒子の平均気泡径が小さくなり過ぎ、型内発泡成形性が不良となる傾向にある。
【0047】
また、相溶化剤、帯電防止剤、着色剤(カーボンブラック、ケッチェンブラック、鉄黒、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、コバルトバイオレット、コバルトブルー、紺青、群青、黄鉛、亜鉛黄、バリウム黄などの無機顔料、ペリレン系、ポリアゾ系、キナクリドン系、フタロシニアン系、ペリノン系、アントラキノン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系などの有機顔料)、安定剤、耐候剤、難燃剤などの各種添加剤は本発明の効果を損なわない程度に適宜添加可能である。
【0048】
本発明のポリエチレン系樹脂発泡粒子を製造するに当たっては、まず、ポリエチレン系樹脂粒子を製造する。
【0049】
ポリエチレン系樹脂粒子を製造する方法としては、押出機を用いる方法が挙げられる。具体的には、ポリエチレン系樹脂に予め必要に応じた親水性化合物や発泡核剤、その他の添加剤をブレンドし、これを押出機に投入して溶融混練し、ダイスより押出し、冷却した後、カッターにて細断することで粒子形状とすることができる。あるいは、液体状の親水性化合物を用いる場合は、押出機の途中で、溶融させたポリエチレン系樹脂に親水性化合物を液体状で添加し、混練しても良い。また、押出機にポリエチレン系樹脂を投入するホッパー部分において、親水性化合物を液体状で定量供給してもよい。その際、蒸散を少なくするため、押出機のシリンダー、ダイス部の温度を250℃以下、より好ましくは220℃以下の低めにすることが望ましい。
【0050】
このようにして得たポリエチレン系樹脂粒子を用いて、本発明のポリエチレン系樹脂発泡粒子を製造することができる。
【0051】
ポリエチレン系樹脂発泡粒子の製造方法の好ましい態様として、密閉容器内に、ポリエチレン系樹脂粒子を発泡剤と共に、水系分散媒に分散させ、ポリエチレン系樹脂粒子の軟化温度以上の温度まで加熱、加圧した後、発泡剤が含浸されたポリエチレン系樹脂粒子を密閉容器の内圧よりも低い圧力域(通常は大気圧)に放出する発泡工程を経て得るという、水分散系でポリエチレン系樹脂発泡粒子を製造する方法が挙げられる。
【0052】
具体的には、密閉容器にポリエチレン系樹脂粒子、水系分散媒、必要に応じて分散剤等を仕込んだ後、必要に応じて、密閉容器内を真空引きした後、次いで密閉容器内の圧力が1MPa(ゲージ圧)以上2MPa以下(ゲージ圧)になるまで発泡剤を導入し、その後ポリエチレン系樹脂の軟化温度以上の温度まで加熱する。加熱することによって密閉容器内の圧力が約1.5MPa(ゲージ圧)以上5MPa以下(ゲージ圧)まで上がる。必要に応じて、発泡温度付近にてさらに発泡剤を追加して所望の発泡圧力に調整、さらに発泡温度への温度微調整を行いつつ、0分を超えて120分以下の間ホールドし、次いで、密閉容器の内圧よりも低い圧力域(通常は大気圧)に放出してポリエチレン系樹脂発泡粒子を得る。
【0053】
発泡剤の導入は上記以外の方法でもよく、例えば、密閉容器にポリエチレン系樹脂粒子、水系分散媒、必要に応じて分散剤等を仕込んだ後、必要に応じて密閉容器内を真空引きした後、ポリエチレン系樹脂の軟化温度以上の温度まで加熱しながら発泡剤を導入しても良い。また、密閉容器にポリエチレン系樹脂粒子、水系分散媒、必要に応じて分散剤等を仕込んだ後、発泡温度付近まで加熱し、この時点で発泡剤を導入しても良い。
【0054】
なお、発泡倍率や平均気泡径の調整方法としては、例えば、低圧域に放出する前に二酸化炭素、窒素、空気あるいは発泡剤として用いた物質を圧入することで密閉容器内の内圧を高め、発泡時の圧力開放速度を調節し、更には、低圧域への放出中にも二酸化炭素、窒素、空気あるいは発泡剤として用いた物質を密閉容器内に導入して圧力を制御することにより、発泡倍率や平均気泡径の調整を行うことができる。
【0055】
本発明のポリエチレン系樹脂発泡粒子は、前述したとおり示差走査熱量測定(DSC)により得られるDSC曲線において、低温側融解ピークと高温側融解ピークの2つの融解ピークを示す。このような2つの融解ピークを有するポリエチレン系樹脂発泡粒子は、前述の水分散系でのポリエチレン系樹脂発泡粒子を製造する方法において、低圧域に放出する前の密閉容器内温度(おおむね発泡温度)を適切な値に設定すると共に、該温度付近で適切な時間ホールドすることにより容易に得られる。密閉容器内温度としては、通常、基材となるポリエチレン系樹脂の融点−10℃以上、好ましくは融点−5℃以上、融解終了温度未満、好ましくは融解終了温度−2℃以下の温度から選定すれば良い。また、密閉容器内温度でホールドする時間(以下、ホールド時間とも言う)としては、0分を超えて120分以下であり、好ましくは2分以上60分以下、より好ましくは10分以上40分以下である。
【0056】
ここで、前記ポリエチレン系樹脂の融点とは、示差走査熱量計によってポリエチレン系樹脂1mg以上10mg以下を40℃から190℃まで10℃/分の速度で昇温し、その後40℃まで10℃/分の速度で冷却し、再度190℃まで10℃/分の速度で昇温した時に得られるDSC曲線における、2回目の昇温時の融解ピーク温度である。また、融解終了温度とは、2回目の昇温時の融解ピークのすそが高温側でベースラインの位置に戻ったときの温度である。
【0057】
なお、前述したDSC比は、密閉容器内温度やホールド時間を適宜調節することで、調整することが可能である。
【0058】
ポリエチレン系樹脂粒子を分散させる密閉容器には特に制限はなく、発泡粒子製造時における容器内圧力、容器内温度に耐えられるものであればよいが、例えばオートクレーブ型の耐圧容器があげられる。
【0059】
本発明で用いられる発泡剤としては、プロパン、ブタン、ペンタン等の飽和炭化水素類、ジメチルエーテル等のエーテル類、メタノール、エタノール等のアルコール類、空気、窒素、二酸化炭素、水等の無機ガスが挙げられる。中でも特に環境負荷が小さく、燃焼危険性も無いことから、二酸化炭素や水を用いることが望ましい。
【0060】
前記水系分散媒としては水のみを用いることが好ましいが、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等を水に添加した分散媒も使用できる。特に、本発明において親水性化合物を含有させる場合、水系分散媒中の水も発泡剤として作用し、発泡倍率向上に寄与する。
【0061】
水系分散媒中、ポリエチレン系樹脂粒子同士の合着を防止するために、分散剤を使用することが好ましい。分散剤として、第三リン酸カルシウム、第三リン酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、タルク、クレー等の無機系分散剤が例示できる。
【0062】
また、分散剤と共に分散助剤を使用することが好ましい。分散助剤の例としては、N−アシルアミノ酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド等のカルボン酸塩型、アルキルスルホン酸塩、n−パラフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩等のスルホン酸塩型、硫酸化油、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩等の硫酸エステル型、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンリン酸塩、アルキルアリルエーテル硫酸塩等のリン酸エステル型等の陰イオン界面活性剤をあげることができる。また、マレイン酸共重合体塩、ポリアクリル酸塩等のポリカルボン酸型高分子界面活性剤、ポリスチレンスルホン酸塩、ナフタルスルホン酸ホルマリン縮合物塩などの多価陰イオン高分子界面活性剤も使用することができる。
【0063】
これらの中でも、分散剤として第三リン酸カルシウム、第三リン酸マグネシウム、硫酸バリウムまたはカオリンから選ばれる一種以上と、分散助剤としてn−パラフィンスルホン酸ソーダを併用することが好ましい。
【0064】
分散剤や分散助剤の使用量は、その種類や、用いるポリエチレン系樹脂の種類と使用量によって異なるが、通常、水系分散媒100重量部に対して、分散剤0.1重量部以上3重量部以下を配合することが好ましく、分散助剤0.001重量部以上0.1重量部以下を配合することが好ましい。また、ポリエチレン系樹脂粒子は、水系分散媒中での分散性を良好なものにするために、通常、水系分散媒100重量部に対して、20重量部以上100重量部以下使用するのが好ましい。
【0065】
以上に述べた水分散系でポリエチレン系樹脂発泡粒子を製造する方法の他に、水系分散媒を用いず、例えば、密閉容器中でポリエチレン系樹脂粒子に直接発泡剤を接触させ、発泡剤を含浸して発泡性ポリエチレン系樹脂粒子を得た後、この発泡性ポリエチレン系樹脂粒子に水蒸気を接触させるなどして発泡させ、ポリエチレン系樹脂発泡粒子を得ることもできる。
【0066】
以上のように、ポリエチレン系樹脂粒子からポリエチレン系樹脂発泡粒子を得る一段目の発泡工程を一段発泡工程と称す場合があり、このようにして得たポリエチレン系樹脂発泡粒子を「一段発泡粒子」と呼ぶ場合がある。この一段発泡粒子は、製造する際の発泡剤の種類にも依るが、発泡倍率が10倍に達しない場合がある。更には、一段発泡粒子のDSC曲線において、100℃以上であって低温側融解ピーク温度以下の領域にショルダー(以下、単にショルダーと呼ぶ場合がある)が現れない場合がある。このような場合は、一段発泡粒子に無機ガス、例えば空気や窒素、二酸化炭素等を含浸して内圧を付与した後、特定の圧力の水蒸気と接触させることにより、一段発泡粒子よりも発泡倍率が向上した、DSC曲線においてショルダーを有する本発明のポリエチレン系樹脂発泡粒子を得ることができる。この様にポリエチレン系樹脂発泡粒子をさらに発泡させてより発泡倍率の高いポリエチレン系樹脂発泡粒子とする工程を二段発泡工程と称す場合がある。二段発泡工程を経ることにより、発泡倍率を向上させたり、DSC曲線においてショルダーが現れる発泡粒子を得ることができる。このような二段発泡工程を経て得られるポリエチレン系樹脂発泡粒子を「二段発泡粒子」と呼ぶ場合がある。
【0067】
二段発泡工程とは、具体的には、一段発泡粒子に無機ガス、例えば空気や窒素、二酸化炭素等を含浸して内圧を付与した後、特定の圧力の水蒸気と接触させることにより、一段発泡粒子よりも発泡倍率が向上した二段発泡粒子を得る工程である。
【0068】
ここで、二段発泡工程における水蒸気の圧力は、ショルダーを有する二段発泡粒子を得る際に非常に重要であり、二段発泡粒子の発泡倍率を考慮した上で、0.045MPa(ゲージ圧)以上0.15MPa(ゲージ圧)以下で調整することが好ましく、より好ましくは0.05MPa(ゲージ圧)以上0.1MPa(ゲージ圧)以下である。0.045MPa(ゲージ圧)未満ではショルダーが発現しない場合があり、0.15MPa(ゲージ圧)を越えると、ショルダーは発現するものの、得られる二段発泡粒子同士が合着してブロッキングしてしまい、その後の型内発泡成形に供することができなくなる傾向がある。
【0069】
一段発泡粒子に含浸する無機ガスの内圧は、二段発泡粒子の発泡倍率および、ショルダーの有無やショルダー比の大きさに影響を及ぼす二段発泡工程の水蒸気圧力を考慮して適宜変化させることが望ましいが、0.2MPa以上(絶対圧)0.6MPa以下(絶対圧)であることが好ましい。0.2MPa(絶対圧)未満であれば発泡倍率を向上させるために高い圧力の水蒸気が必要となり、二段発泡粒子がブロッキングする傾向にある。0.6MPa(絶対圧)を超えると、所望の発泡倍率を得るための水蒸気圧力が低くなり、ショルダーを有さない二段発泡粒子となる傾向がある。
【0070】
このように、一段発泡工程、二段発泡工程の少なくとも2回の発泡工程を経て得られるポリエチレン系樹脂発泡粒子は、ショルダーを有する傾向があるため、本発明において好ましい態様である。なお、発泡倍率やショルダーの発現状況に応じて、二段発泡工程と同様の発泡工程を繰り返し、すなわち、三段発泡工程を経て、本発明のポリエチレン系樹脂発泡粒子としても良い。
【0071】
以上のような一段発泡工程、二段発泡工程は、従来より知られてはいるが、ポリエチレン系樹脂発泡粒子のDSC曲線においてショルダーが現れる発泡粒子を得るために、二段発泡時の一段発泡粒子に含浸する無機ガスの内圧や、二段発泡工程の水蒸気圧力の調整に着目した先行技術は無く、本発明のショルダー比を有するポリエチレン系樹脂発泡粒子から得られるポリエチレン系樹脂型内発泡成形体の端部(エッジ部)の融着レベルや外観が優れたものになることは知られていない。
【0072】
特に、本発明のDSC曲線においてショルダーが現れるポリエチレン系樹脂発泡粒子の中でも、グリセリン、ポリエチレングリコール、炭素数が10以上25以下の脂肪酸のグリセリンエステルから選ばれる少なくとも1種を含有するポリエチレン系樹脂発泡粒子や、ポリエチレン系樹脂として直鎖状低密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンを併用しているポリエチレン系樹脂発泡粒子において、ポリエチレン系樹脂型内発泡成形体の端部(エッジ部)の融着レベルや外観が更に優れたものになることについては、本発明において初めて見出されたものである。
【0073】
以上のようにして得られたポリエチレン系樹脂発泡粒子は、従来から知られている型内発泡成形により、型内発泡成形体にすることができる。例えば、イ)ポリエチレン系樹脂発泡粒子を無機ガス、例えば空気や窒素、二酸化炭素等で加圧処理してポリエチレン系樹脂発泡粒子内に無機ガスを含浸させ所定のポリエチレン系樹脂発泡粒子内圧を付与した後、金型に充填し、水蒸気で加熱融着させる方法、ロ)ポリエチレン系樹脂発泡粒子をガス圧力で圧縮して金型に充填し、ポリエチレン系樹脂発泡粒子の回復力を利用して、水蒸気で加熱融着させる方法、ハ)特に前処理することなくポリエチレン系樹脂発泡粒子を金型に充填し、水蒸気で加熱融着させる方法、などの方法が利用し得る。
【実施例】
【0074】
以下、実施例および比較例をあげて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0075】
なお、実施例および比較例における評価は、以下の方法により行なった。
【0076】
(ポリエチレン系樹脂発泡粒子のDSC測定)
示差走査熱量計(DSC)[セイコーインスツルメンツ(株)製、DSC6200型]を用いて、ポリエチレン系樹脂発泡粒子3〜6mgを10℃/分の昇温速度で40℃から190℃まで昇温したときに得られる、1回目の昇温時のDSC曲線より、各融解ピーク温度、あるいは融解熱量を求めた。
【0077】
(発泡倍率)
発泡粒子3g以上10g以下程度を取り、60℃で6時間乾燥した後、23℃、湿度50%の室内で状態調節し、重量w(g)を測定後、エタノールの入ったメスシリンダー中に沈め、メスシリンダーの水位上昇分(水没法)にて体積v(cm3)を測定し、発泡粒子の真比重ρb=w/vを求め、発泡前のポリエチレン系樹脂粒子の密度ρrとの比から発泡倍率K=ρr/ρbを求めた。なお、以下に示す実施例および比較例においては、発泡前のポリエチレン系樹脂粒子の密度ρrはいずれも0.93g/cm3であった。
【0078】
(平均気泡径)
得られた予備発泡粒子のうち、無作為に10このセル膜が破壊されないように充分注意して発泡粒子のほぼ中央を切断し、その切断面をマイクロスコープで観察した。表層部を除く部分に長さ1000μmに相当する線分を引き、該線分が通る気泡数nを測定し、気泡径を1000/n(μm)で算出した。同様のことを10個の発泡粒子で行い、それぞれ算出した気泡径の平均値を、平均気泡径とした。
【0079】
(成形体融着性)
型内発泡成形体設計外形寸法が400mm×300mm×50mmの金型を用い、成形圧力を0.08MPa(ゲージ圧)から0.14MPa(ゲージ圧)の範囲において0.01MPa間隔で型内発泡成形後、23℃で2時間静置し、次に65℃で24時間養生したのち、23℃の室内に4時間放置して評価対象の型内発泡成形体を得た。この型内発泡成形体表面にナイフで約5mmの深さのクラックを入れたのち、このクラックに沿って型内発泡成形体を割り、破断面を観察し、破断面の全粒子数に対する破壊粒子数の割合を求め、成形体融着率とした。この融着率が70%以上に達する最低成形圧力を融着性の指標とした。
【0080】
(成形体の表面性)
成形圧力0.11MPa(ゲージ圧)で型内発泡成形した型内発泡成形体の表面について以下の基準で評価した。
○:しわや粒間がほとんどなく、表面凹凸も目立たず美麗である。
△:しわや粒間があり、表面凹凸がやや目立つ。
×:しわや粒間に加え、ヒケがあり、外観が明らかに不良である。
【0081】
(成形体エッジ部(端部)の融着および外観)
成形圧力0.11MPa(ゲージ圧)で成形した型内発泡成形体のエッジ部(端部)について以下の基準で評価した。
○:隣り合う発泡粒子同士がいずれの部分においてもきれいに融着しており、発泡粒子の間に隙間がない。
△:隣り合う発泡粒子同士が融着していない箇所が少し見られる。
×:隣り合う発泡粒子同士が融着していない箇所が多数見られる。
【0082】
(成形体の寸法収縮率)
成形圧力0.11MPa(ゲージ圧)で成形した前述の型内発泡成形体の長手寸法(400mm方向)を測定し、対応する金型寸法に対する、金型寸法と型内発泡成形体の寸法との差の割合を対金型寸法収縮率とし、以下の基準で評価した。なお、寸法測定にはMitutoyo製デジタルノギスを用いた。
○:対金型寸法収縮率が3%以下。
△:対金型寸法収縮率が3%を超えて7%以下。
×:対金型寸法収縮率が7%より大きい。
【0083】
(実施例1)
[樹脂粒子の作製]
直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(MI=2.0g/10分、融点122℃)100重量部に対し、グリセリン(ライオン(株)製、精製グリセリンD)を0.2重量部プリブレンドし、次に発泡核剤としてタルク(林化成(株)製、タルカンパウダーPK−S)0.03重量部を加えブレンドした。50mmφ単軸押出機に供給し、樹脂温度210℃で溶融混練した後、直径1.8mmの円筒ダイより押出し、水冷後、カッターで切断し、円柱状の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子(1.3mg/粒)を得た。
[発泡樹脂粒子の作製]
得られた直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子100重量部を、純水200重量部、第3リン酸カルシウム0.5重量部およびn−パラフィンスルホン酸ソーダ0.05重量部とともに耐圧密閉容器に投入した後、脱気し、攪拌しながら二酸化炭素7.5重量部を耐圧密閉容器内に入れ、122℃に加熱した。この時の耐圧密閉容器内の圧力は3.5MPa(ゲージ圧)であった。122℃に到達後この温度で25分間ホールドし、次いで、密閉容器下部のバルブを開いて、水分散物(樹脂粒子および水系分散媒)を、オリフィスを通じて大気圧下の発泡筒に放出して発泡粒子(一段発泡粒子)を得た。この際、放出中は耐圧密閉容器内の圧力が低下しないように、二酸化炭素を追加圧入して圧力を保持した。また、前記発泡筒には蒸気を吹き込んで加温した状態とし、放出されてくる発泡粒子と蒸気が接触するようにした。
得られた一段発泡粒子は示差走査熱量測定において、117℃と128℃に2つの融点を示し、DSC比は32%であり、ショルダーは有していなかった。また、発泡倍率、平均気泡径を測定した結果、発泡倍率8倍、平均気泡径150μmであった。
ここで得た一段発泡粒子を60℃にて6時間乾燥させた後、耐圧容器内にて、加圧空気を含浸させて、内圧を0.39MPa(絶対圧)にした後、0.07MPa(ゲージ圧)の水蒸気と接触させることで二段発泡させた。得られた二段発泡粒子は示差走査熱量測定において、118℃(低温側融解ピーク温度)と128℃(高温側融解ピーク温度)に2つの融点を示すと共に、00℃以上前記低温側融解ピーク温度以下の領域に、にショルダーを有し、DSC比は41%であり、ショルダー比は0.5%であった。また、発泡倍率、平均気泡径を測定した結果、発泡倍率27倍、平均気泡径270μmであった。
[型内成形体の作製]
次に、この二段発泡粒子を400mm×300mm×50mmの金型内に導入し、型内発泡成形を行った。型内発泡成形は、成形圧力を0.08MPaから0.14MPa(ゲージ圧)の範囲において0.01MPa間隔で行い、いずれの成形圧力においても排気/一方/逆一方/両面加熱時間は3/7/7/10秒とした。得られた型内発泡成形体について、融着性、表面性、エッジ部外観、寸法収縮率を評価した。結果を表1に示す。
【0084】
(実施例2〜10)
添加剤種や発泡条件などを表1に記載の条件にした以外は、実施例1と同様にして、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子、一段発泡粒子、二段発泡粒子、型内発泡成形体を得て、評価した。それぞれの結果を表1に示す。なお、実施例9において4.5mg/粒の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子を得る際には、直径3mmの円筒ダイを用いた。
【0085】
【表1】
【0086】
(比較例1〜4)
添加剤種や発泡条件などを表2に記載の条件にした以外は、実施例1と同様にして、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子、一段発泡粒子、二段発泡粒子、型内発泡成形体を得て、評価した。
なお、比較例2は、二段発泡粒子を得た後、同様の操作で三段発泡粒子を得て、これを型内発泡成形に供した。
また、比較例3は二段発泡を行わず、一段発泡粒子を型内発泡成形に供した。
比較例4では二段発泡工程において0.16MPa(ゲージ圧)の水蒸気を用いたところ、得られた二段発泡粒子同士が合着・ブロッキングし、型内発泡成形に供することができなかった。それぞれの結果を表2に示す。
【0087】
【表2】
【0088】
実施例と比較例との比較から、型内発泡粒子に供するポリエチレン系樹脂発泡粒子がショルダー比0.2%以上3%以下であるショルダーを有することにより、型内発泡成形体のエッジ部の融着や外観が良好となることが判る。
【0089】
実施例3とその他の実施例との比較から、型内発泡粒子に供するポリエチレン系樹脂発泡粒子がショルダーを有し、かつグリセリン、ポリエチレングリコール、炭素数が10以上25以下の脂肪酸のグリセリンエステルから選ばれる少なくとも1種を含むことにより、型内発泡成形体のエッジ部の融着や外観が更に良好となることが判る。
実施例1、比較例1、比較例3および比較例4の比較から、二段発泡がショルダーを発現させるための有力な手段の一つであることが判るが、喩えグリセリンが添加されていても、二段発泡における水蒸気圧力が低すぎるとショルダーが発現せず、その結果、型内発泡成形体のエッジ部の融着や外観が悪いものとなってしまうことが判る。逆に、二段発泡における蒸気圧力が高すぎると、二段発泡粒子が合着・ブロッキングして、型内発泡成形に供することができなくなることが判る。
図1