(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5689968
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】畜牛の人工授精において使用される精子の数を減少させるための方法および装置
(51)【国際特許分類】
A61D 19/02 20060101AFI20150305BHJP
【FI】
A61D19/02 D
【請求項の数】17
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-524067(P2013-524067)
(86)(22)【出願日】2010年8月10日
(65)【公表番号】特表2013-534152(P2013-534152A)
(43)【公表日】2013年9月2日
(86)【国際出願番号】US2010045028
(87)【国際公開番号】WO2012021127
(87)【国際公開日】20120216
【審査請求日】2013年4月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】513029932
【氏名又は名称】ストラウド,ブラツド・ケイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ストラウド,ブラツド・ケイ
【審査官】
石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−017026(JP,A)
【文献】
特開2006−198158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61D 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
精子数が少ない精液と希釈剤とを使用した、雌のウシの人工授精のための、無カテーテルの、検鏡がない、非外科的方法であって、方法は、
単一の使い捨てシリンジに希釈剤を吸引するステップであって、シリンジは、ウシ精子に対して非毒性である材料で作られる、ステップと、
単一の使い捨て非毒性シリンジ内の希釈剤を精子数が少ない精液と接触させ、希釈剤との授精溶液を形成するステップと、
単一の使い捨て非毒性シリンジと、近位端および遠位端を有する、単一かつ中空の細長い金属ピペットとの間に流体連通を確立するステップであって、金属ピペットの遠位端は丸められ、少なくとも1つの横断方向出口ポートを含む、ステップと、
直腸触診を使用して、連続して、雌のウシの膣を通り、子宮頸を通って、子宮の中に前記単一かつ中空の細長い金属ピペットの遠位端を挿入するステップと、
前記単一かつ中空の細長い金属ピペットを通って雌のウシの中に授精溶液の少なくとも一部を注入するステップと
を包含する、方法。
【請求項2】
希釈剤が、複数回分の無菌袋から単一の使い捨て非毒性シリンジの中に吸引される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
単一の使い捨て非毒性シリンジと単一かつ中空の細長い金属ピペットとの間に流体連通を達成することが、単一の使い捨て非毒性シリンジと単一かつ中空の細長い金属ピペットとの間に流体密封シールを達成するためにピペットの近位端上のルアーコネクタとシリンジ上のルアーコネクタとを接続することによって確立される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
単一の使い捨て非毒性シリンジと単一かつ中空の細長い金属ピペットとの間に流体連通を確立することが、流体密封シールを達成するために、単一の使い捨て非毒性シリンジの一端上のルアーコネクタを覆うように細長いエラストマーチューブの一端を押しやること、および流体密封シールを達成するために、単一かつ中空の細長い金属ピペットの近位端を覆うように細長いエラストマーチューブの他端の一部を押しやることによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
希釈剤と精子数が少ない精液とが、膣の本体の中に注入される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
追加のステップが、
どちらの卵巣が排卵するかを決定するために授精前に排卵検査を行い、卵子を受精させるために精子を輸送する導管として働く子宮角の中に希釈剤と精子数が少ない精液との実質的に全てを注入すること
として追加される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
追加のステップが、
精子数が少ない精液の吸引を容易にして希釈剤と接触させるように、単一の使い捨て非毒性シリンジと1/2ccの精子数が少ない精液ストローとの間にアダプタを配置すること
として追加される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
単一かつ中空の細長い金属ピペットが、3.40ミリメートル(0.134インチ)未満の外径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
子宮頸および子宮での雌のウシの人工授精のための、無カテーテルの、検鏡がない器具であって、器具は、液体希釈剤と精液とを受け取るようにサイズを合わされ配置され、器具は、
近位端と遠位端とを有する単一の使い捨てシリンジであって、単一の使い捨てシリンジが、ウシ精子に対して非毒性である材料で作られ、液体希釈剤と精液とを保持するようにサイズを合わされ配置される、単一の使い捨てシリンジと、
近位端と遠位端とを有する、単一かつ中空の細長い金属ピペットであって、少なくとも1つの横断方向出口ポートが、遠位端の近くに形成され、金属ピペットの外径は、3.40ミリメートル(0.134インチ)未満である、金属ピペットと、
シリンジ内の液体希釈剤と精液とが、単一の使い捨て非毒性シリンジから、前記単一かつ中空の細長い金属ピペットを通って少なくとも1つの横断方向出口ポートを流れ出ることを可能にするように、単一の使い捨て非毒性シリンジの遠位端と前記単一かつ中空の細長い金属ピペットの近位端との間の流体密封接続を達成する手段と、
を備える、器具。
【請求項10】
雌のウシの検査と、それに続く人工授精とのための方法であって、
どちらの卵巣が卵子を作り出すかを決定するために超音波を使用して雌のウシを検査するステップと、
ウシの精子に対して非毒性である材料から作られる単一の使い捨てシリンジに希釈剤を吸引するステップと、
従来の精子数を有する少なくとも1つの精子ストローに由来する精子と単一の使い捨て非毒性シリンジ内の希釈剤を接触させ、希釈剤との授精溶液を形成するステップと、
単一の使い捨て非毒性シリンジと、近位端および遠位端を有する、単一かつ中空の細長い金属ピペットとの間に流体連通を確立するステップであって、遠位端は、平滑な丸い形状を有し、少なくとも1つの横断方向出口ポートを含む、ステップと、
連続して、雌のウシの膣を通り、子宮頸を通って、子宮を通過し、卵子を受精させるために精子を輸送する導管として働く子宮角の中に前記単一かつ中空の細長い金属ピペットの遠位端を挿入するステップと、
前記単一かつ中空の細長い金属ピペットを通って、卵子を受精させるために精子を輸送する導管として働く子宮角の中に授精溶液の実質的に全てを注入し、従来の妊娠率を超える妊娠率をもたらすステップと
を包含する、方法。
【請求項11】
希釈剤が、複数回分の無菌袋から単一の使い捨て非毒性シリンジの中に吸引される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
単一の使い捨て非毒性シリンジと単一かつ中空の細長い金属ピペットとの間に流体連通を達成することが、単一の使い捨て非毒性シリンジと単一かつ中空の細長い金属ピペットとの間に流体密封シールを達成するために、ピペットの近位端上のルアーコネクタとシリンジ上のルアーコネクタとを接続することによって確立される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
単一の使い捨て非毒性シリンジと単一かつ中空の細長い金属ピペットとの間に流体連通を確立することが、流体密封シールを達成するために、単一の使い捨て非毒性シリンジの一端上のルアーコネクタを覆うように細長いエラストマーチューブの一端を押しやり、そして、流体密封シールを達成するために、単一かつ中空の細長い金属ピペットの近位端を覆うように細長いエラストマーチューブの他端の一部を押しやることによって行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
追加のステップが、
精子数が少ない精液の吸引を容易にして希釈剤と接触させるように、単一の使い捨て非毒性シリンジと、1/2cc精液ストローとの間にアダプタを配置すること
として追加される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
単一かつ中空の細長い金属ピペットが、3.40ミリメートル(0.134インチ)未満の外径を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
従来の精子数の精液が、性別選別済みである、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
従来の精子数の精液が、未選別である、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
大部分の乳牛は、従来の人工授精(AI)技術を使用して繁殖させられ、約20%〜約40%の妊娠率となる。凍結精液ストローは、従来のAI技術において使用されるが、各ストローは、約2000万個の未選別精子を保持する。比べて、牧草地の雄牛は、雌牛または若い雌牛と交尾するたびに、何十億個もの精子を残す。さらに、雄牛は、雌が発情期の間に雌とくり返し交尾することを厭わず、雌のウシの生殖器系に莫大な数の精子や大量の精液をさらに増加させる。
【0002】
乳牛の雄牛は、最も多くの牛乳を作り出す雌をつくるように繁殖させられる。これらの望ましい雄牛は、典型的には業界で「雄牛飼育場」と呼ばれる牧場で開発や飼育される。乳牛業界は、従来の精液ストローで使用される精子を作り出す雄牛の遺伝的特徴について非常に神経質である。これらの望ましい雄牛に由来する精液は、雄牛飼育場で収集され、畜牛の所有者などに販売するために冷凍精液ストローにパッケージングされる。2010年には、米国に約25件〜約30件の雄牛飼育場があり、乳牛業界や牛肉業界のために冷凍精液ストローを生産する。しかし、最上級の雄牛に由来する精液ストローに対する市場の要求は、天然の供給を超える(雄牛は、一年の間で、それだけ多くの精液を作り出すことが出来るのみである)。
【0003】
直感的には、精子ストロー内の精子の数の減少は、従来のAI技術を使用した妊娠率を低下させる。しかし、本発明者は、少なくとも従来のAI技術(乳牛で約20%〜約40%)に匹敵する妊娠率を維持しながら、雌の妊娠に必要とされる精子の数を減少させる新たな技術を開発した。結果として、雄牛飼育場は、長期間にわたって、優れた遺伝的特徴を有する単一の牛からより多くの精液ストローを販売し得る。このことは、乳製品販売業者が、最も望ましい雄牛に由来する精子でより多くの雌牛を繁殖させることを可能にする。
【0004】
一部のウシの精液は、性別で選別される。現在の性別選別技術は、比較的遅れている。従って、性別選別ストローは、従来の未選別精液ストローにおいて見出された僅かな数の精子を含む。例えば、雌の子牛の見込みが90%であるストローを納入するためには、最低210万個の選別済精子をストローに配置することが、現在のやり方である。さらに、選別済精液は、より多くの精子を含んでもよいが、雌の子牛の見込みが減少する。選別プロセスの速度は、性別による機械選別の能力の精度と逆相関する(機械選別の速度が速くなれば速くなるほど、精液の性別の決定の精度が低くなる)。性別選別済精液の場合、従来のAI技術で使用するのに適した精子の最低数は、雌の子牛の見込み90%で210万個の精子であるが、選別技術が改善すれば、この数は変化することになる。本発明を使用すると、210万個未満の性別選別精子で、雌の子牛の見込みが90%の、雌の人工授精に適するようになる。性別選別精子は、常に、210万個の精子でストローにパッケージングされるわけではない。
【0005】
長年にわたって、Brad Stroud獣医学博士は、乳牛業界や牛肉業界で妊娠率を増加させる方法を開発しようとしている。Stroud博士によって出願された2件の先願の米国特許出願は、牛肉用畜牛や乳牛用畜牛の全妊娠率を増加させることを目的としている。それらの出願は、2007年7月27日に出願された米国特許出願第11/829,240号明細「Artificial Breeding Techniques for Bovines including Semen Diluents and AI Apparatus」と、2009年7月21日に出願された米国特許出願第12/506,723号明細書「Artificial Breeding Techniques for Bovines Including Semen Diluents and AI Apparatus」とである。これら2件の先願の特許出願は、約2000万個の精子を含む従来の冷凍精液ストローと、性別選別精液とを使用した。これら2件の先願の特許出願のいずれも、望ましい雄牛に由来する精液の不足に対処していなかった。これら2件の先願の特許出願は、それらの出願において開示された方法を使用して人工授精された畜牛の従来の妊娠率を増加させると特許請求している。
【0006】
対照的に、やはりStroud博士による本特許出願は、妊娠率の増加を約束しないが、その代わりに、本発明は、少なくとも従来のAI技術(例えば、乳牛で約20%〜約40%)に匹敵する妊娠率を提供する。本発明は、各精液ストローで使用される、望ましい雄牛に由来する精子の数を顕著に減少させて、より多くの雌牛が、自然の産出によっては制限される貴重な資源を利用することを可能にする。
【0007】
本明細書の
図1に示された先行技術のAIデバイスなどの従来の人工授精デバイスは、当業者には周知である。
図1は、縮尺通りではなく、実際の装置を見たことがない読者のための例示目的のためだけのものである。この金属およびプラスチックのAIデバイスは、使い捨てではない中空の金属バレルと、中空の金属バレルの内側で前後に滑動する金属プランジャと、使い捨てのプラスチックシースとを有する。バレルの遠位端は、精液ストローを受け取るようにサイズを合わされたセレプタクルを有する。従来の精液ストローは、一端において曲げられ、他端においてコットンプラグを有する。
図1の先行技術のAI器具で精液ストローを使用するために、ストローが温められ、それから、曲げられた端が切断される。精液ストローのコットンプラグ端が、従来の先行技術のAIデバイスのレセプタクルに配置される。金属プランジャがコットンプラグと接触する。
【0008】
この先行技術の金属およびプラスチックの使い捨てではないAIデバイスと精液ストローとが、使い捨ての細長いプラスチックシースに挿入される。この理由のために、
図1の従来のAI器具は、「金属およびプラスチックの装置」と呼ばれる。この従来のAI器具において、精液ストローの切断端は、プラスチックシースに係合し、精液のもれを防ぐためのシールを形成する。この設計の先行技術のシースは、当業者には周知である。この先行技術の金属およびプラスチックのデバイスは、雌牛の生殖器に挿入される。希釈剤は使用されない。それから、AI技師は、金属プランジャの上を押し、金属プランジャが、精液ストローを通過するようにコットンプラグを押し、AIデバイスの先端から精液を押し出す。コットンプラグは、雌牛には注入されない。なぜならば、コットンプラグは、プラスチックシート上のシールによって捕らえられるからである。しかし、コットンプラグは、精液の一部を吸収し、その精液の一部は、失われ、雌を受精させることが出来ない。本発明は、細長い金属の単回使用ピペットに接続された使い捨て非毒性シリンジを用いたより単純な解決策を有し、そのピペットの一部分が、雌牛の生殖器に挿入される。
【0009】
本発明の単回使用AI器具は、約18インチの長さで、約0.134インチ(3.4mm)の外径を有し、そのAI器具は、先行技術の金属およびプラスチックのAI器具よりも、若い雌牛の子宮頸を通過するのがずっと容易である。本発明の細長い金属デバイスは中空であり、先行技術のAI器具のようにプランジャが存在したりはしない。本発明のAIデバイスは、先行技術のようにはプラスチックシースが必要であったりはしない。
【0010】
図1の先行技術の金属およびプラスチックのAIデバイスは、デバイスを無菌で維持するためのプラスチックシースと共に使用される。従って、この従来の金属AIデバイスは、各雌牛に対してシースを継続的に取り替えることによって繰り返して使用することが出来る。先行技術の金属およびプラスチックのAIデバイスは、希釈剤を使用せず、精液を注入するだけである。先行技術の金属およびプラスチックのAIデバイスは、使い捨てのプラスチックシースを使用するので、装置の金属部分は、異なる雌牛に対して繰り返して使用することが出来る。言い換えると、使い捨てプラスチックシースは、装置の金属部分を綺麗なままにし、再使用することが出来る。著しく対照的に、本発明のAIデバイスの金属ピペットは、雌牛の生殖器官と直接接触することによって外側が汚染され、精子数の少ない精液によって内側が汚染される。従って、本発明の金属ピペットは、単回使用後に汚染され、先行技術の金属およびプラスチックのAIデバイスのようには再使用することが出来ない。
【0011】
一部のウシAI技師は、時折、特に費用を節約するために、単一の従来の精液ストローで数頭の雌を授精しようとする。特に米国の乳牛業界では、ウシAI技師は、時折、従来のストローの一部分だけを雌牛に注入しようとする。この技術は、本明細書で考察される従来の妊娠率よりも低い妊娠率になると考えられる。この先行技術は、1つの従来のストローを一回に温める。1番目の雌牛で使用されない精液の部分が、解凍後約20分以内で2番目の雌牛に使用されなければならない。
【0012】
Mendozaに対する米国特許第5,147,299号明細書は、AIデバイスを挿入するために、照光式膣鏡を使用する。Mendozaの2番目の特許(米国特許第6,071,231号明細書)は、最初の特許で教示された技術が、低妊娠率をもたらすことを説明する。Mendozaの2番目の特許の教示は、明らかに、Mendozaの最初の特許における教示を超えて妊娠率を増加させるように設計された。
【0013】
Mendozaに対する米国特許第6,071,231号明細書は、「Device and Method for Artificial Insemination of Bovines and other Animals」と題される(’231号特許)。このデバイスは、’231号特許の図面の
図6に最も良く見られる。’231号特許は、2個のシリンジとバルーンカテーテルとを必要とする。照光式膣鏡が、直腸触診よりむしろ、雌牛の生殖器の中への視覚的な挿入を可能にするように使用される。本発明は、雌牛の中への挿入のためには、照光式膣鏡を必要としないが、その代わりに、本発明のAI装置が、直腸触診を使用して挿入される。
【0014】
簡単に言うと、’231号特許の装置は、目視によって挿入されるので、照光式検鏡を必要とするが、本発明は、「感覚」によって挿入される。Mendozaの最初のシリンジは、バルーンカテーテルを膨張させたり収縮させたりするために使用される。Mendozaの2番目のシリンジは、本明細書の
図3に最も良く見られるように、雌牛の中に精液を押し込む目的で希釈剤を注入するために使用される。本発明は、2つのシリンジを使用する代わりに1つのシリンジを使用する。なぜならば、本発明は、バルーンカテーテルを必要としないからである。この構成によって、本発明は、時折、「無カテーテル」と呼ばれる。’231号特許は、2.9%のクエン酸ナトリウム溶液などの希釈剤の使用を教示する。’231号特許は、様々なサイズの動物にとって最適な量の精液と希釈剤とを推奨するが、本特許は、あらゆる動物に対する希釈剤の量に関しては何も言わない。’231号特許は、非常に扱いにくく、2つのシリンジとバルーンカテーテルとの使用を必要とするので、’231号特許は、幅広く使用されない。本発明は、さらに洗練された構成を有し、単一の使い捨て非毒性シリンジが、細長い金属の単回使用ピペットに接続される。
【0015】
Stroudに対する係属中の米国特許出願第11/829240号明細書および米国特許出願第12/506,723号明細書は、細長いプラスチックピペットに接続された使い捨てシリンジを開示する。プラスチックピペットは、技師が子宮頸の3つのリングを通ってプラスチックピペットを誘導することが出来るように充分に堅くなければならず、このことは、特に若い雌牛の場合において、熟練したウシAI技師を必要とする。プラスチックピペットに充分な堅さがない場合には、技師は、a)ピペットを適切に誘導する能力を失い得、貴重な動物を傷つける可能性があり、b)生殖器に精液を適切に配置することが出来ないことにもなり得、および/またはc)子宮頸を通ってピペットを通過させる能力を失うことになり得る。Stroudの’723特許において想像されたような細長いプラスチックピペットの生産には、依然として問題がある。本発明は、したがって技師が子宮頸の3つのリングを通ってデバイスを適切に誘導することが出来る充分な堅さを有する単回使用の金属の細長いピペットを開示する。使い捨てのプラスチックピペットの開発を想像した、Stroudの’240号特許および’723号特許とは異なり、本発明は、雌牛を傷つけたり処置における不必要な遅れを伴ったりすることなく、雌牛の生殖器を通ってデバイスを誘導することを助けるために金属ピペットを使用する。Stroudの’240号特許および’723号特許は、一部のシリンジが精子に対して毒性があることを認識しておらず、さらに、一部の保存条件がシリンジ内で毒性を強めたり作り出したりすることがあり得ることを認識していない。本発明は、非毒性シリンジを使用する。
【0016】
本発明は、以下のようないくつかの利点を有する。第1に、本発明は、先行技術のいずれとも異なり、使い捨ての非毒性シリンジを使用する。第2に、本発明は、先行技術のいずれとも異なり、若い雌牛の中への挿入を容易にする小さい外径を有する。第3に、本発明は、先行技術の一部とは異なり、精子数の少ない精液を使用する。第4に、本発明は、プラスチックピペットを想像したStroudや、金属およびプラスチックのピペットを使用する先行技術のAI器具とは異なり、挿入を容易にする堅い金属ピペットを使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第5,147,299号明細書
【特許文献2】米国特許第6,071,231号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
一部の実施形態において、本発明において開示された手順または方法は、a)精子数の少ない精液と、b)単一の取り外し可能な使い捨て非毒性シリンジと、c)単回使用の中空の細長い金属ピペットと、d)希釈剤とを必要とし得る。
【0019】
ウシAI技師は、本発明の目的のための当業者であると考えられる。ウシAI技師は、典型的には、熟練した個人である。なぜならば、特に、若い雌牛に関して、直腸触診挿入技術を実施するには、巧みに触れることを必要とするからである。毎日毎日雌牛の直腸に腕をくり返し挿入することは、丈夫な体格も必要とする。本発明は、過剰排卵を伴って、または過剰排卵を伴うことなく使用されてもよい。
【0020】
A.精子数の少ない精液
精子数の少ない精液は、少なくとも4つの異なる方法で取得することが出来る。第1の方法は、雄牛飼育場が、少ない精子量で各未選別精液ストローを満たすことである。第2の方法は、乳製品販売業者および/またはウシAI技師が、本明細書で考察される「切除技術」を使用することである。精子数が少ない精液を取得する第3の方法は、性別選別済精液の生成者からのものである。第4の方法は、ウシAI技師が、精液の単一ストローを解凍し、希釈剤と混合し、そして、2頭以上の雌に授精させることである。
【0021】
本発明の一実施形態の教示に従って、雄牛飼育場に由来する、精子量が少ない精液の使用は、それぞれ約2000万個の精子を有する未選別精液ストローを使用した先行技術と比較したときには、匹敵する妊娠率を作り出し得る。凍結および解凍が、ウシ精液の精子の運動性を減少させる。本出願の目的のために、精子数が、凍結前に考察される。精子数が少ない精液の販売は、雄牛飼育場にとっては良いことであり得る。なぜならば、雄牛飼育場は、より価格の高い精液ストローを多数販売することが出来、このことが、さらに多くの収入をもたらし、その収入が、遺伝子プールを改善するために雄牛飼育プログラムに投資されることが出来るからである。
【0022】
精液は、乳牛の場合には、雄の子牛よりも雌の子牛をより多く作り出すための使用のために性別選別される。なぜならば、雌が、牛乳の生産のためには、はるかに価値があるからである。現在、大部分の性別選別済精液ストローは、約210万個の精子有する。精子数が少ない性別選別済精液ストローもまた、生産者には利益があり得る。なぜならば、費用を減らして収入を増やせるからである。性別選別済精液ストローは、現在、1/4ccのストローにパッケージングされ、米国や世界中で使用される。
【0023】
B.毒性の低下
一部のシリンジにおける、エラストマープランジャおよび/または潤滑油が、ウシ精子に対して毒性があることを研究により示された。悪条件下での一部のシリンジの保存が、毒性を作り出したり高めたりし得る。非毒性シリンジが、本明細書において開示され、適切な保存条件が示唆される。「非毒性シリンジ」という用語は、本明細書で使用されるように、シリンジがウシ精子にとって毒性がないことを意味する。
【0024】
C.希釈剤
あらゆる種類の希釈剤が、ウシ精子に適さないものでなければ、本発明の実施の際に使用されてもよい。本発明において使用される希釈剤の量は、ウシAI技師の判断に任される。
【0025】
D.AI装置
本発明の一部の実施形態において、AI器具の外径は、約0.134インチ(3.4mm)であり、
図1に示された、先行技術の金属およびプラスチックのAI器具の外径は、約0.165インチ(4.2mm)である。これは、本発明のAI器具の外径が、
図1の先行技術の金属およびプラスチックのAI器具よりも約0.031インチ(0.8mm)小さいことを意味する。これは大した違いには思えないかもしれないが、若い雌牛が人工授精されているときには、大きな違いとなる。若い雌牛は、まだ出産をしたことがないので、非常に堅い子宮頸を有する。本発明の薄く堅い金属ピペットは、精子量が少ない精液で若い雌牛を人工授精させるのを容易にする。
【0026】
E.AI前排卵検査
ウシは、各角の近くに位置にする卵巣とともに2つの子宮角をもつ。典型的には、これらの卵巣のうちの一方だけが、発情周期毎に1つの卵子を作り出す。卵子を作り出す卵巣の識別は、以下の通り、a)AIの前に行われる両卵巣の超音波検査、またはb)AI前に両卵巣の直腸触診を使用した検査によって決定され得る。これらの「排卵検査」は、本発明の一部の実施形態において、授精の前に必要に応じて行われてもよい。一実施形態において、排卵検査が必要とされる。
【0027】
F.定義
「雌牛」という用語は、本明細書において使用されるように、以前に子牛を生んだ雌のウシを指す。「若い雌牛」や「未経産雌牛」という用語は、本明細書において使用されるように、まだ子牛を生んだことのない雌のウシを指す。初産の若い雌牛は、初めて子牛を生んだウシを指す。「雌」という用語は、本明細書において使用されるように、雌牛と、初産の若い雌牛および若い雌牛との両方を含む。
【0028】
「少ない精子数の精液」、「精子数が少ない精液」という用語、および/または同様な意味の単語は、a)約2000万個未満の未選別精子を有する、雄牛飼育場によって作り出された従来のストローに由来する精液、b)各AI処理において使用される精子の数を効率的に減少させるようにいくつかの部分に切断された、約2000万個の未選別精子を有する従来の精液ストローに由来する精液、c)選別済精液の従来のパッケージングに含有される量よりも少ない精子数を有する性別選別済精液、およびd)複数の雌を授精させることにより、各雌に送達される授精溶液内の精子数を効率的に減少させるために使用される単一の精液ストローに由来する性別選別済または性別未選別の精液を意味する。
【0029】
「従来の精子数」、「従来の精子数の精液」という用語、および/または同様な意味の単語は、a)約2000万個の未選別精子を有する、雄牛飼育場によって作り出された従来のストローに由来する精液、および/またはb)従来のパッケージングにおける性別選別精液を意味する。
【0030】
「従来のパッケージングにおける性別選別済精液」、「選別済精液の従来のパッケージング」という語句、および/または同様な意味の単語は、a)雌の子牛の見込みが90%である、若い雌牛のために意図された、ストロー1つ当たり約210万個の選別済精子、b)雌の子牛の見込みが90%である、過剰排卵雌牛における使用を意図された、1つのストローにおける約500万個の選別済精子、およびc)未選別精液の精子数よりも少ない精子数を有する、商業量で販売される他の選別済精液ストローを意味する。
【0031】
「従来の妊娠率」という用語、または同様な意味の単語は、本明細書において使用されるように、a)乳牛において約20%〜約40%未選別精液を使用すること、b)牛肉用雌牛や乳牛用の若い雌牛において約50%〜約70%未選別精液を使用すること、c)乳牛において約10%〜約30%性別選別済精液を使用すること、d)牛肉用雌牛において約30%〜約40%性別選別済精液を使用すること、e)乳牛用の若い雌牛において約40%〜約50%性別選別済精液を使用すること、およびf)牛肉用の若い雌牛において約40%〜約50%性別選別済精液を使用することを意味する。
【0032】
シリンジに針および/または管を接合するルアー・ロック・システムが、長い間使用されている。ニューヨーク州エッジウッドのQosina Corporationのウェブサイト(www.qosina.com)を参照されたい。
図5に示されるように、ルアーコネクタは、従来のルアーハブと、シリンジ上のルアーロックと、上記のウェブサイトに示されるようなあらゆる種類の他の設計とを含み、他の設計は、かかりを有するコネクタ、ネジを切られたコネクタ、テーパ付きコネクタなどを含む。「ルアーコネクタ」という用語は、本明細書において使用されるように、あらゆる種類のルアーコネクタを意味し、ルアーハブ、ルアーロック、ネジを切られたルアーコネクタ、塗油ルアーハブ、かかり付きルアーハブなどを含むが、それらには限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】雌牛に精液を注入するための、金属プランジャとプラスチックシースとを有する先行技術のAI装置の断面図である。このデバイスは、米国で、そして国際的に幅広く使用されている。このデバイスは、子宮の直腸触診を使用して雌牛の中に挿入される。
【
図2】Mendozaに対する米国特許第6,071,231号に開示された先行技術の装置の切欠図である。このデバイスは、雌牛の中に装置を視覚的に挿入するために、照光式検鏡を使用する。この装置は、バルーンカテーテルを膨張させたり収縮させたりする第1のシリンジと、雌牛の中に希釈剤や精液を注入する第2のシリンジとの2つのシリンジを使用する。
【
図3】
図2の先行技術のMendozaのデバイスの遠位端の断面図であり、バルーンカテーテルが膨張させられている。これは、米国特許第6,071,231号からの図面の転載である。
【
図4】Stroudに対する米国特許出願第12/506,723号に開示された先行技術の装置の断面図である。このデバイスは、子宮の直腸触診を使用して、雌牛に挿入される。この先行技術の装置は、雌牛に希釈剤や精液を注入するために単一のシリンジを使用する。精液ストローに由来する精液は、従来の精子数を有する。
【
図5】本発明の斜視図である。このデバイスは、直腸触診技術を使用して雌に挿入される。この図面においては、使い捨て非毒性シリンジが、中空の細長い金属ピペットに接続されていない。
【
図6】
図5の斜視図であり、非毒性シリンジが、中空の細長い金属ピペットに接続されている。
【
図7】中空の細長い金属ピペットの近位端に接続された、本発明の使い捨て非毒性シリンジを示す、
図6の7−7線に沿った拡大断面図である。
【
図8】中空の細長い金属ピペットの遠位端を示す、
図6の8−8線に沿った拡大断面図である。
【
図9】可撓性管によって使い捨て非毒性シリンジに接続された中空の細長い金属ピペットの代替的実施形態の斜視図である。
【
図10】中空の細長い金属ピペットの遠位端の代替的実施形態の断面図である。
【
図11】中空の細長い金属ピペットの遠位端の別の代替的実施形態である。
【
図12】精液ストローから精液を吸引するために使用される使い捨て非毒性シリンジに接続されたアダプタと1/2cc精液ストローとの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、米国における大部分のウシAI技師によって一般的に使用される先行技術の金属およびプラスチックのAI装置20の断面図である。この装置は、当業者に周知の直腸触診技術を使用して雌牛に挿入される。
【0035】
金属プランジャ22は、このAI装置の細長い金属バレル24の内側で前後に滑動する。AI技師の利便性のために、フィンガタブ26が、金属プランジャの操作を容易にするために、金属バレルの近位端に形成される。レセプタクル28は、金属バレルの遠位端に形成され、1/2cc精液ストローおよび/または1/4cc精液ストローのいずれかを受け取るようにサイズを合わされる。世界規模で、性別選別済精液が、1/4ccの精液ストローに装填される。米国外では、未選別精液もまた、1/4ccストローに装填される。米国では、未選別精液は、1/2cc精液ストローに装填される。
【0036】
この図において、1/2cc精液ストロー30は、金属ショルダ31まで金属バレルのレセプタクルに挿入され、金属ショルダ31で、精液ストローは停止する。精液ストロー30は、一端にコットンプラグ29を有する。これが、AI器具に挿入される端であり、金属プランジャ22と接触する。ウシAI技師がプランジャ22を押した時に、精液44の大部分が、AI器具20から排出されるが、コットンプラグは排出されない。なぜならば、当業者には周知であるように、コットンプラグは、プラスチックシース36によって捕らえられるからである。細長い使い捨てプラスチックシース32は、近位端と遠位端とを有する。このシース32は、細長い金属バレル24と精液ストロー30とを覆って嵌められる。使い捨てプラスチックシースは、雌牛の生殖器への挿入を容易にするように遠位端に形成された先細先端34を有する。プラスチックシース36の内壁は、精液が漏れてAI器具20の中に戻るのを防止するようにプラスチック精液ストロー30の遠位端をシールする。細長い使い捨てプラスチックシースの近位端は、フィンガタブ近くの細長い金属バレルの外面に形成された拡がる先細部40を覆って嵌めるのを容易にするように、約1インチほど半分に分けられるが、図示してはいない。ドーナツ状スライド42は、細長い金属バレルの外面上の先細部に対してシースを機械的に把持するように細長い使い捨てプラスチックシースを覆って嵌められる。ドーナツ状スライドの目的は、雌牛の生殖器への挿入と雌牛の生殖器からの取り出しとの間に、金属バレル上の適切な場所に細長い使い捨てプラスチックシースを維持することである。
【0037】
一部の先行技術の金属およびプラスチックのAI器具は、1/4ccストローを保持するように特に設計され、他のストローは、1/2ccのストローを保持するように特に設計される。
【0038】
図2は、Mendozaに対する米国特許第6,071,231号に開示された先行技術の装置50の切欠図である。先に述べたように、このデバイスは、雌牛54に装置を視覚的に挿入するために、照光式検鏡52を使用する。この装置は、2つのシリンジを使用する。第1のシリンジ56は、バルーンカテーテル58を膨張させたり収縮させたりするために使用され、第2のシリンジ60は、雌牛に希釈剤および精液を注入するために使用される。ウシAI技師は、動物の膣62を開いて内部を見るために、照光式検鏡52を使用する。装置50は、子宮頸64の中に途中まで押し込まれ、バルーンカテーテル58が、子宮頸とのシールを形成するように膨張させられる。希釈流体が、第2のシリンジ60から押し出され、精液サンプルと希釈剤とを子宮66に押し込むのが望ましい。
【0039】
図3は、膨張させられた位置で示されたバルーンカテーテル58を有する、
図2の先行技術のMendozaの装置50の遠位端68の拡大断面図である。
図2および
図3は、米国特許第6,071,231号の図面からの転載である。
図3は、先端72における排出ポートまたはオリフィス70からの精液および希釈剤の排出を示す。複数の排出ポート72が、先端72の頂部と側面とに配置される。1つのポートで充分であり得るが、複数のポートが好ましい。先端72は、米国特許第5,147,299号に示されるように構成されてもよい。先の図面に示されたシリンジ60が押されると、希釈流体が押されて精液ストロー74へと進むことにより、先端72から精液76を押し、先の図面に最も良く見られるように、精液が雌牛の子宮66の中に排出される。先の図面に示された第2のシリンジ60が、最後まで押されると、全ての精液と、希釈流体の大部分とが、排出される。最適な量の希釈剤を送達するために、第2のシリンジに最初に配置される希釈剤の量は、結果として、人工授精デバイス50を満たす量だけ、所望の量よりも多いはずである。チューブ78は、先の図面に示された第1のシリンジ56をバルーンカテーテル58に接続する。第1のシリンジ56は、バルーンカテーテル58を膨張させたり収縮させたりするために使用される。
【0040】
図4は、Stroudに対する米国特許第12/506,723号に開示された先行技術の装置90の断面図である。このデバイスは、全ウシのAIのために米国で使用される標準的な技術である、子宮の直腸触診を使用して、ウシに挿入される。ウシAI技師の手92が、示されるように、雌牛の直腸に挿入される。この直腸触診技術は、当業者には周知である。この装置は、ウシに希釈剤や精液を注入するために1つのシリンジ96を使用し、精液は、従来の精子数を有する精液ストローに由来する。エラストマープランジャを有する従来のシリンジ96は、プラスチックピペット98と流体連通する。シリンジは、コネクタ100によってプラスチックピペットに接続される。
【0041】
図5は、概略的に101という数字で識別される、本発明のAI器具の斜視図である。その器具101は、当業者には周知の直腸触診技術を使用してウシに挿入される。この図において、使い捨て非毒性シリンジ102は、中空の細長い金属ピペット106から接続を断たれている。シリンジは、遠位端に形成されたルアーロック104、または何らかの他の形態のルアーコネクタを有する。中空の細長い金属ピペットは、ルアーハブ108または何らかの他の形態のルアーコネクタに形成され得る近位端107を有する。ピペット109の遠位端は、概ね円形の先端110に形成され得る。少なくとも1つの出口ポート112が、先端110の近くに形成される。ルアーロック104とルアーハブ108とは、この図面に示されるように接続を断たれても、次の図面に示されるように接続されてもよい。
【0042】
図6は、
図5の斜視図であり、使い捨て非毒性シリンジ102が、中空の細長い金属ピペット106に接続されている。ピペット106上の、ルアーハブ108または何らかの他の種類のルアーコネクタは、シリンジ102上の、ルアーロック104または何らかの他の種類の噛み合うルアーコネクタの中に挿入され、これらの構成要素は、互いに係止しシールを形成するまで反対方向にそっと回転させられる。ルアーハブおよびルアーロックの設計および形状は公知である。
【0043】
図7は、中空の細長い金属ピペット106の近位端107に接続された、本発明の使い捨て非毒性シリンジ102の、
図6の7−7線に沿った断面図である。この図面において、希釈剤と精液とが、使い捨て非毒性シリンジに吸引され、授精溶液114を形成する。シリンジのプランジャ120が、ウシAI技師によって押された時に、授精流体が、シリンジから中空の細長い金属ピペットを通って少なくとも1つの出口ポートを流れ出てウシの中に入る。
【0044】
図8は、中空の細長い金属ピペット106の遠位端109の、
図6の8−8線に沿った断面拡大図である。この実施形態において、先端110は丸められ、2つの横断方向出口ポート112および116のそれぞれを有する。これらの出口ポートは、授精溶液がシリンジから中空の細長い金属ピペット106を通って2つの対向する横断方向出口ポートを流れ出てウシの中に入ることを可能にする。
【0045】
ここで
図5、
図6、
図7、および
図8を参照すると、ピペット106上の、ルアーハブ108または何らかの他の種類のルアーコネクタと、シリンジ102上の、ルアーロック104または何らかの他の種類の噛み合うルアーコネクタは、シリンジ102内の授精溶液114が、単一の使い捨て非毒性シリンジ102から中空の細長い金属ピペット106を通って少なくとも1つの出口ポート112を流れ出て雌の子宮に入るのを可能にするために、単一の使い捨て非毒性シリンジ102の遠位端118と、中空の細長い金属ピペット106の遠位端107との間で流体密封接続を達成するために手段である。
【0046】
図9は、可撓性管130によって使い捨て非毒性シリンジ102に接続された中空の細長い金属ピペット106の代替的実施形態152の斜視図である。管は、エラストマーがウシの精子にとって非毒性である場合には、任意の数のエラストマーから形成されてもよい。この実施形態において、ルアースリップ132または何らかの他の種類のルアーコネクタが、使い捨て非毒性シリンジ102の遠位端118に形成される。管130の近位端131は、示されるように、ルアースリップ132を覆って嵌り、ルアースリップ132に対してシールするようにサイズを合わされ配置される。管の遠位端136は、ピペット106の近位端138を覆って嵌り、ピペット106の近位端138に対してシールするようにサイズを合わされ配置される。ピペットの近位端138は、ルアーハブを有していない。むしろ、近位端138から先端110までは、概ね直径が一定である中空のチューブである。授精溶液は、使い捨て非毒性シリンジから非毒性管を通り、金属ピペットを通って少なくとも1つの出口ポートから流れ出る。
【0047】
シリンジ102上の、ルアースリップ132または何らかの他の種類のルアーコネクタ、可撓性管130の近位端131、可撓性管130の遠位端136、およびピペット106の近位端138は、シリンジ102内の授精溶液114が、単一の使い捨て非毒性シリンジ102から中空の細長い金属ピペット106を通って少なくとも1つの出口ポート112を流れ出て雌の子宮の中に入ることを可能にするために、単一の使い捨て非毒性シリンジ102の遠位端と、中空の細長い金属ピペット106の近位端138との間の流体密封接続を達成するための手段である。
【0048】
図10は、中空の細長い金属ピペット106の遠位端109の代替的実施形態の拡大断面図である。この実施形態において、ピペット106の遠位端109は、開いたボア146に形成される。この代替的実施形態は、ウシの膣を通過する間にデブリを閉じ込め得るので、そして他の理由のために、好ましくない。
【0049】
図11は、中空の細長い金属ピペット106の遠位端109の別の代替的実施形態である。この実施形態において、先端110は、ウシを容易に通過することが出来るように平滑な丸い形状に形成される。少なくとも1つの横断方向出口ポート112が、先端110の近くに形成される。
【0050】
図12は、使い捨て非毒性シリンジ102に接続された、アダプタ150と1/2cc精液ストロー148との断面図である。アダプタの目的は、使い捨て非毒性シリンジ102の中への精液ストロー148からの精液の吸引を容易にすることである。使い捨て非毒性シリンジ、アダプタ、および細長い中空の金属ピペットは、ウシAI技師、乳製品製造業者などにキットとしてパッケージングされて販売されてもよい。本発明は、様々な実施形態において、キットにパッケージングされてもよい。例えば、
図9の装置の構成要素が、キットとして販売されてもよい。別の例において、
図6に示された構成要素が、キットとして販売されてもよい。様々な実施形態からの様々な構成要素の構成が、キットとして販売されてもよい。
【0051】
本発明は、少なくとも5つの異なる方法で実施され得る。本明細書において開示される実施形態の全てではないが、一部は、選択肢として、授精前排卵検査を含む。超音波技術を使用して、排卵する卵巣が、授精前に識別されることが出来る。超音波の後に、本発明を使用して、授精溶液が、シリンジから中空の細長い金属ピペットを通って、1つの子宮角、例えば、卵子を受精させるための、精子の導管として働く子宮角だけの中に注入されてもよい。この超音波処理が使用された場合には、中空の細長い金属ピペットの先端が、子宮本体を通過して、排卵された卵子に精子を輸送するための導管として働く適切な子宮角の中に挿入されることにより、排卵している子宮角に精子の大部分を集中させなければならない。超音波検査の代わりに、獣医師や他の技師が、どれが排卵するかを決定するために卵巣を手で触診してもよい。この、手による排卵検査の後に、希釈剤および精子の大部分が、排卵された卵子に精子を輸送するための導管として働く子宮角の中に注入され、少なくとも従来の妊娠率を達成する(排卵を決定するための、超音波評価と手による触診との両方とも、時折、本明細書においては「排卵検査」と呼ばれる)。本発明を実施するための第1の方法は、雄牛飼育場が、以下で記載されるように、所望の雄牛から精液を採取することである。
【0052】
A.雄牛飼育場
雄牛飼育場は、各ストローの精子数を2000万個未満の精子まで減少させる。例えば、精子数が少ない各精液ストローは、約1500万個以下の精子を有することが出来る。精子数が少ないこれらの精液ストローは、次に、当業者には周知の従来の方法で凍結される。精子数が少ないこれらの精液ストローは、雄牛飼育場によって酪農場などに販売される。
【0053】
大規模な乳製品販売業者において、100頭以上の雌のウシが、訓練を受けたウシAI技師によって、所与の日に人工授精させられてもよい。この手順または方法のための「室温」は、華氏約68度〜華氏約80度と定められ、最適には、華氏約74度である。室温である施設において、技師は、希釈剤の複数回利用袋を少なくとも1つと、使い捨て非毒性シリンジをいくつかと、中空の細長い金属ピペットをいくつかとを並べる。
【0054】
1.非毒性使い捨てシリンジ
本発明者らは、当初、あらゆるシリンジが本発明での使用に適していると考えた。しかし実験テストが、反証した。一部のシリンジは、精子に有害なエラストマーおよび/または潤滑剤で生産される。最初に生産されたものとしては、精子に有害ではない一部のシリンジも、華氏約95度を超える暑い倉庫に保存されることによって有害になり得る。出願人は、精子に対して毒性のあるシリンジは、精子数が少ない精液ストローを用いる本発明での使用に適さないと決定した。出願人は、バージニア州バージニアビーチにあるAir−Tite Products Co.,Inc.から入手可能なNorm−Ject(R)使い捨てシリンジが、暑い倉庫に保存されていない場合に限り、それらの使用を推奨する。出願人は、この製造元からの、できる限り新しい当年度生産のシリンジを使用することを推奨する。他の非毒性シリンジは、独国ツットリンゲンのHenke,Sass,Wolf,GmbH(www.henkesasswolf.de)の子会社である、マサチューセッツ州ダドリーのHenke,Sass,Wolf of America,Inc.(www.hswoa.com)から購入されてもよい。具体的には、HSW Norm−Ject(R)使い捨てシリンジもまた、暑い倉庫に保存されない場合に限り、本発明の実施の際の使用に適し得る(出願人には知られていない他のシリンジもまた、ウシ精子に対して非毒性である場合には、本発明での使用に適し得る)。
【0055】
Air−Titeは、ウェブサイト(www.air−tite−shop.com)に、Norm−Ject使い捨てシリンジは、ラテックスを含まず、ゴム、シリコーン油、スチレン、またはDEHPを含まず、DNAを含まないと述べる。ウェブサイトは、下記のことをさらに述べる:「これらのシリンジは、不活性非反応性シリンジを必要とするあらゆる状況に対する選択肢となる。これらのNorm−Ject(R)使い捨てシリンジの組成により、それらは、核医学、羊水穿刺、IVF、胚移植、クロマトグラフィ、および多くの検査法に適応される。それらは、先端がゴムのシリンジよりも化学的耐性があり、ラボラトリーグレードのポリプロピレンやポリウレタンからのみ製造される。ウシ人工授精は、その製品に関するこのウェブサイトの記載において、2010年8月9日現在、製造元によって述べられた用途のうちの1つではないことに留意することが重要である。「非毒性シリンジ」という用語は、本明細書で使用されるように、使い捨てNorm−Ject(R)使い捨てシリンジ、HSW Norm−Ject(R)使い捨てシリンジを意味し、および/またはラテックスを含まず、ゴム、シリコーン油、スチレン、DEHPを含まず、DNAを含まないその他任意のシリンジを意味する。
【0056】
「単一の使い捨て非毒性シリンジ」は、a)単一のウシに対する1回分の授精溶液を含有する、上で考察された非毒性シリンジ、および/またはb)複数のウシに対する複数回分の授精溶液を含有するより大きな非毒性シリンジのうちのいずれかを意味する。テキサス州DFW空港にあるAllflex USA,Inc.(www.allflexusa.comを参照されたい)から入手可能なものなどの、ドローオフシリンジおよび/または自己充填シリンジを含む自動シリンジが使用されてもよいが、汚染の懸念により推奨はしない。やはり上述のAllflexから入手可能なものなどのくり返しシリンジが使用されてもよいが、汚染の懸念により推奨されない。
【0057】
2.希釈剤
ウシAI技師は、この手順で使用するいくつかの公知の希釈剤のうちの任意のものを選択してもよく、それらの希釈剤は、緩衝食塩水、市販の様々な胚洗浄溶液、精液の冷凍保存に使用される市販の様々なエクステンダ、および他の製品を含み、または本明細書では特定されない他の溶液も、適切なpHやオスモル濃度を有し、精子を希釈し精子の生存を支えるように適切に緩衝剤で処理された場合には、有用であると証明され得る。希釈剤のpHは、典型的には約7〜約7.4であり、オスモル濃度は、典型的には約280mOsm/L〜約300mOsm/Lである。
【0058】
本発明の実施に適し得る、市販の様々な胚洗浄溶液は、
a)カナダ国オンタリオ州ベルビルのBioniche Animal Health(www.bionicheanimalhealtyh.com)から全て入手可能な、Syngro Holding Medium、Vigro Complete Flush Solution、Vigro Holding Plus、Vigro Rinsing Solution、
b)ミシガン州ポートヒューロンのPartnar Animal Health(www.partnaranimalhealth.com)から共に入手可能なemP3 Complete Flush、およびemP3 Holding Solution、
c)ニュージーランド国オークランドのICPbio International Ltd.(www.icpbio.com)から入手可能なEmcare Complete Ultra Flush Medium
を含む。
【0059】
雄牛の精液の凍結保存で使用される一部のエクステンダが、本発明の実施の際に希釈剤として使用されてもよいが、他の希釈剤は使用されないことがあり得る。精液エクステンダや精液希釈剤という用語は、業界においては、時折、相互交換可能に使用される。
【0060】
雄牛の精液の冷凍保存で使用されるエクステンダであるTriladylは、細胞の機能を支える温度で精液に対して、ある濃度で毒性がある抗凍結剤グリセロールも含むので、本発明の実施の際に使用するために適した希釈剤ではない。米国特許第6,368,786号(IMV Technologiesに譲渡)に開示された精液エクステンダも、同様に本発明での使用に適していないことを意味するグリセロールを含む。ウィスコンシン州ベロナのMinitube of America(www.minitube.com)から入手可能なBiladyl(R)Fraction Aなどの他の精液エクステンダは、抗凍結剤またはグリセロールを含まず、本発明の実施の際に使用するのに適し得る。本発明は、ウシ精子または雌牛生殖器系に毒性のないあらゆる希釈剤を用いて実施されてもよい。
【0061】
希釈剤は、リンガー溶液などを保持する病院で見つけられる使い捨てビニール袋などの使い捨てビニール袋に含有されてもよい。精子数が少ない精液ストローは、使用する準備が整うまで、デュワーフラスコ内で液体窒素の条件下で凍結されたままである(米国の雄牛飼育場は、一端が曲げられ他端にコットンプラグを有する1/2cc精液ストローを使用する。精液は、曲げられた端と他端のコットンプラグとの間にある)。
【0062】
処置前に希釈剤が室温に到達するまで待つのが最も良い。あるいは、ウシAI技師は、プロセスを手早く処理するために、室温で希釈剤を保持する保存デバイスに希釈剤の袋を維持してもよい。希釈剤が室温に到達すると、技師は、使い捨てシリンジのうちの1つを希釈剤で満たす。米国では、次に、アダプタが、シリンジ上のルアーハブに接続される。技師は、少なくとも約15秒間、華氏約95度〜華氏約98度の温度の温水で精子数が少ない凍結精液ストローを温める。精液が解凍されると、精子数が少ない精液ストローの曲げられた先端が、一対のハサミで切断され、切断端が、アダプタを覆って配置される。シリンジと、アダプタと、精子数が少ない精液ストローとは垂直に保持され、コットンプラグは地面から最も離れている。それから、コットンプラグが切断されてストローから離れ、このことが、精液が重力によってシリンジ内の希釈剤に流出することを可能にし、または代替的に、精液が、精液ストローからシリンジ内の希釈剤に吸引されてもよい。アダプタと使用済み精液ストローとは、シリンジから取り外される。
【0063】
細長い金属の単回使用ピペットが、シリンジ上のルアーハブに接続される。出願人は、細長い金属の単回使用ピペットが、無菌であることを推奨するが、これは本発明の実施に必須ではない。ピペットの遠位端は、直腸触診を使用して、子宮頸の3つのリングを通過して子宮本体まで行くように、雌牛の膣に技師によって挿入される。ウシAI技師は、次に、使い捨てシリンジのプランジャを押し、プランジャは、単回使用の細長い金属ピペットを通って子宮本体の中へとシリンジから希釈剤と精液とを押し出す。シリンジは処分され、単回使用の金属ピペットは、破壊されてもよく、または次の使用まで無菌状態で維持される場合には、殺菌され再使用されてもよい。金属ピペットの価格が充分に低い場合には、金属ピペットは、リサイクル用に捨てられる可能性がある。
【0064】
前部から後部までのウシの生殖器官は、膣と、子宮頸と、子宮本体と、2つの子宮角と、2つの卵管と、2つの卵巣とを有する。先行技術のAI手順の間、約2000万個の未選別精子を含む単一のストローの内容物は、膣、子宮頸を通り、子宮本体の中に配置され、子宮本体は、両方の子宮角と流体連通している。精子の約半分が、自然に、左側の子宮頸に押しやられ、半分が右側に押しやられる。自然に左側に押しやられた精子は、卵子が左側の卵巣から放出された場合には、卵子を受精させる機会がある。自然に右側に押しやられた精子は、卵子が右側の卵巣から放出された場合には、卵子を受精させる機会がある。1つの卵巣だけが、各発情サイクルの間に1つの卵子を放出する。
【0065】
B.切除技術
本発明を実施する第2の方法は、a)各精液ストローに約2000万個の未選別精子を有するか、またはb)性別選別済ストローを有する、従来の精液ストローを使用する「切除技術」を使用することである。最初に、ウシ技師は、僅かな量の液体窒素を注ぐ。次に、凍結精液ストローが、デュワーフラスコから取り出され、僅かな量の液体窒素に配置される。窒素浴の環境下の間、ウシAI技師は、一片の凍結ストローを切断することにより、ストローの本体から切断されたその一片の凍結ストローの精子数を機械的に減少させる。それから、切断された凍結部分は、華氏約95度〜華氏約98度で、希釈剤で満たされた無菌テストチューブに配置される。依然として僅かな量の液体窒素内にあるストローの残りが取り出され、デュワーフラスコに素早く戻される。約15秒から約30秒後、精液は解凍され、テストチューブ内で希釈剤で授精溶液に放出される。ウシAI技師は、次に、テストチューブから単一の使い捨て非毒性シリンジの中に授精溶液を吸引し、ウシAI技師の判断で、単一の使い捨て非毒性シリンジに、追加の希釈剤が、添加されてもよい。代替的に、ウシAI技師は、複数回用袋からシリンジの中により多くの希釈剤アリコートを引き出して、精子数が少ない解凍精液を含有するテストチューブから授精溶液を吸引することが出来る。この方法で、「切除技術」は、少なくとも未性別選別済精液の場合に雌牛1頭につき約2000万個の精子を使用する従来のAI手順に匹敵する妊娠率を維持しながら、少ない数の精子を使用する。ここでもやはり、希釈剤の種類と希釈剤の量とは、ウシAI技師の判断に任せられる。この実施形態は、本明細書で考察されるように、選択肢として、授精前排卵検査を含んでもよい。
【0066】
C.性別選別済精液
本発明を実施するための第3の方法は、精子数が少ない性別選別済精液ストローを用いることである。精液は、乳牛の場合、牛乳生産にとってずっと貴重である雌の子牛をより多く作り出すように性別によって選別される。各性別選別済精液ストローは、先に考察されたように、従来の未選別精液ストローにおいて見つけられる僅かな量の精液を含有する。本願の出願日現在、大部分の性別選別済精液ストローはそれぞれ、約210万個の精子を有する。精子数が少ない性別選別済精液ストローは、これらの従来的にパッケージングされたストローよりもさらに少ない精子を有する。性別選別済精液ストローは、1/4ccストローにパッケージングされ、米国や世界中で使用される。性別選別済精液は、テキサス州ナヴァソタのSexing Technologiesから入手可能であり、全ての雄牛飼育場ではないが、一部の雄牛飼育場から入手可能である。この実施形態は、本明細書で考察されたように、選択肢として、授精前排卵検査を含んでもよい。
【0067】
D.単一ストロー希釈
精子数が少ない精液を使用するための第4の方法は、ウシAI技師が、単一の精液ストローを解凍し、希釈剤と混合し、2頭以上の雌を同時に授精させることである。単一の精液ストローが温められ、授精溶液を形成するように希釈剤と混合される。この溶液は、次に、本発明のAI器具の中に引き込まれる。それから、2頭以上の雌が、この授精溶液の一部分で授精させられる。この「単一ストロー希釈技術」は、未選別精液および選別済精液と共に使用されてもよい。この実施形態は、本明細書で考察したように、選択肢として、授精前排卵検査を含んでもよい。
【0068】
E.従来の精子数を有する精液を用いた授精前排卵検査
先に考察された実施形態の全てが、少なくとも従来の妊娠率を達成するために、精子数が少ない精液を使用した。この実施形態は、上記から逸脱している。なぜならば、妊娠率の増加を達成するために、従来の精子数を有する精液を用いた授精前に、排卵検査が、全雌牛に対して行われるからである。この実施形態は、性別選別済精液または未選別精液と共に使用されてもよい。本願の出願日現在、大部分の性別選別済精液は、1つのストロー当たり約210万個の精子を有する1/4ccストローにパッケージングされる。本願の出願日現在、米国での大部分の未選別精液は、約2000万個の精子を有する1/2ccストローにパッケージングされ、米国外では、未選別精液は、約2000万個の精子を有する1/4ccストローにパッケージングされる。これらの従来の精子数が、本実施形態において使用される。
【0069】
授精の前に、ウシAI技師および/または獣医師もしくは資格のある他の者が、どちらの卵巣が卵子を作り出したかを決定するための雌牛の検査を行う。この卵巣の排卵検査は、超音波によって行われることが出来るか、またはその検査は、手による卵巣の直腸触診によって行われることが出来る。
【0070】
排卵検査の後、少なくとも従来の精子数を有する精液は、授精溶液を形成するように、希釈剤と接触させられる。ここでもやはり、希釈剤の種類や希釈剤の量は、ウシAI技師の判断に任せられる。授精溶液は、単一の使い捨て非毒性シリンジに配置される。
図6または
図9に示されるように、または何らかの別の手段で、単一の使い捨て非毒性シリンジと中空の細長い金属ピペットとの間で、流体連通が確立される。中空の細長い金属ピペットは、直腸触診技術を使用して、排卵検査によって先に決定されたように、雌牛の膣、子宮頸、や子宮を通って、卵子を受精させるように精子を輸送する導管として働く子宮角の中に誘導される。正しい子宮角へのピペットの適切な配置は、照光式検鏡やバルーンカテーテルを用いることなく達成される。この手順の使用が、本明細書で考察されたように、従来の妊娠率と比べたときに、妊娠率の増加をもたらす。受精の機会をさらに改善するために、この技術は、従来の精子数を有する2つの精液ストローと共に使用されてもよい。この2つのストローの手法は、一部の雌牛にとって利益があり得る。
【0071】
本特許出願の出願日現在、性別選別済精液は、乳牛の若い雌牛と牛肉用の若い雌牛とにおける使用に推奨されるだけである。乳牛は、2000万個の精子を含有する未選別ストローで妊娠させるのが困難であるので、210万個の精子の使用には問題がある。この理由のために、性別選別精液の生産元は、現在、乳牛での性別選別精液の使用を推奨しない。
【0072】
希釈剤と選別済精液との実質的に全てが、本発明の教示を使用して、卵子を受精させるために精子を輸送するための導管として働く子宮角に送達される場合には、受精前の、乳牛や牛肉用雌牛の排卵検査を行うことは、性別選別精液が、歴史上初めて、首尾よく、商業ベースで幅広く使用されることを可能にする。乳牛における性別選別済精液の使用は、重要なブレイクスルーである。なぜならば、若い雌牛よりもずっと多くの乳牛や牛肉用雌牛の群れが存在するからである。このブレイクスルーは、性別選別済精液の生産元が、収入を急増させることを可能に出来る新たな巨大なマーケットに入ることを効率的に可能にする。(性別選別済精液は、典型的には、商業ベースで使用に制限がある。なぜならば、性別選別済精液は、巨大な群れの僅かな部分である乳牛用の若い雌牛や牛肉用の若い雌牛に主に使用されているからである)。