特許第5690007号(P5690007)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5690007
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】板バネ式マグネットキャッチ
(51)【国際特許分類】
   E05C 19/16 20060101AFI20150305BHJP
   E05C 19/06 20060101ALI20150305BHJP
   E05F 5/02 20060101ALI20150305BHJP
   E05F 1/08 20060101ALI20150305BHJP
【FI】
   E05C19/16 Z
   E05C19/06 B
   E05F5/02 D
   E05F1/08
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-99276(P2014-99276)
(22)【出願日】2014年5月13日
【審査請求日】2014年7月25日
(31)【優先権主張番号】特願2013-185594(P2013-185594)
(32)【優先日】2013年9月6日
(33)【優先権主張国】JP
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596028538
【氏名又は名称】伊集院 勝
(72)【発明者】
【氏名】伊集院 勝
【審査官】 神崎 共哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−109227(JP,A)
【文献】 実開昭62−063381(JP,U)
【文献】 特許第5066269(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05C 1/00−21/02
E05F 1/00−13/04,17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸を戸口枠体に係着するため、その何れか一方に磁石を固定し、他の一方に板バネを板バネ後端部で固定し、板バネ前端部に磁着受部を固着し、該板バネ後端部と該板バネ前端部間の部位を板バネ主体部とする構成の板バネ式マグネットキャッチに於いて、
前記板バネ主体部の少なくとも一部は、その内幅の一部を切欠き、前記板バネ前端部と共に左右に分離した後、該板バネ前端部を互いに引き寄せ重ね合わせて固着することにより、横倒れ座屈状となったものとなし、
または、前記板バネ主体部の少なくとも一部は、その内幅の一部を切欠き、その切欠き部の前後両端の少なくとも何れか一方の端面近傍を浅く絞り加工することにより、横倒れ座屈状となったものとなし、
前記板バネの飛移り座屈に伴う瞬発力を前記磁石の磁着力より小さくすることにより、戸を開閉の都度、該板バネに該磁石から離れる方向の変形を一部制限した変形経路の飛移り座屈を起こさせることを特徴とする板バネ式マグネットキャッチ。
【請求項2】
戸を戸口枠体に係着するため、その何れか一方に磁石を固定し、他の一方に板バネを板バネ後端部で固定し、板バネ前端部に磁着受部を固着し、該板バネ後端部と該板バネ前端部間の部位を板バネ主体部とする構成の板バネ式マグネットキャッチに於いて、
前記磁着受部を、前記板バネの板厚より薄い薄鉄片と、該薄鉄片の裏側に固着された該薄鉄片より板厚が厚い厚鉄片、とで形成させ、
かつ、前記薄鉄片は、前記厚鉄片との固着周端の少なくとも一部から、僅かな斜角で表側に延設された延設部を有することを特徴とする板バネ式マグネットキャッチ。
【請求項3】
上記板バネ主体部の少なくとも一部が、2段以上となるよう、該板バネ主体部を折返し構造とした、請求項1または請求項2の何れか1項に記載の板バネ式マグネットキャッチ。
【請求項4】
上記板バネ前端部と上記磁着受部との固着面は、該磁着受部の裏側の前半分よりやや小さいものとした、請求項1、請求項2、請求項3の何れか1項に記載の板バネ式マグネットキャッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開き戸と引戸の双方に対し、戸開時の抵抗を円滑化すると共に、戸閉時の跳ね返りによる隙間発生機会を少なくする、板バネ式マグネットキャッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、比較的簡便にして廉価な戸閉装置としてマグネットキャッチがあるが、これには、戸開時に一気にやや強い力が必要であり、往々にして円滑な戸の開閉を実現していないという大きな弱点がある。そして特に引戸には、荒締めや戸口枠体を含めた経年変化等により隙間ができ易いという弱点があるにも拘らず、開き戸ほどマグネットキャッチの使用が普及していないように見受けられる。これは、隙間を防止するに十分な強い磁石を用いると、戸開時の前記問題が大きくなるためと思われる。そこでこれらの問題を解決するため、マグネットキャッチの磁着受部側を板バネとする構造の発明や、磁石を円柱状としてコイルスプリングを組み込んだ構造の発明がなされている。
【0003】
一方、本発明が関与する横倒れ座屈形板バネについては、キーボードやマイクロスイッチの他、次の二つの事例ではクリップの分野に応用され、周知であるが、本発明に掛かる分野においては、その応用例を発見し得ない。しかし、これら2例の横倒れ座屈形板バネを得る手法について、本発明はその一部を共用するので、次に夫々の概要を記す。
図7は、横倒れ座屈形板バネを髪留めに利用した例であって、(A)に示すように板バネの後端部を残し、先端部から板バネ主体部の内幅の一部を切欠いて左右に分離した後、降伏を起すことなく(B)に示すように両先端部を中心線上に寄せ合わせて固着すると、側面図(C)の実線に示すように両主体部は横倒れ座屈状となり、自ずと僅かに球面を帯びたアーチ状を成す。この両端部を支えて中央部を背面方向に押すと、飛移り座屈を起こして反転し、仮想線で示した形状となる。中央の切欠いて残された細帯部は挟持体の一方と成し、主体部と共に髪を挟む機能を果たしている。
【0004】
図8は、横倒れ座屈形板バネを衣服の裾留めに利用した例であって、(A)に示すように板バネの前後両端部を残して内幅の一部を切欠き、板バネ主体部を左右に分離した後、切欠き部端面を含む前後両端部に浅い絞り加工を施している。これにより、左右の板バネ主体部は横倒れ座屈状となり、前記例と同様に自ずとアーチ状を呈し、両端部を支えて中央部を背面方向に押すと、飛移り座屈を起こして(B)に示すように反転する。中央の細帯部は主体部後端で折り返され、挟持体の一方となって前記例と同様に機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭54−109227号公報
【特許文献2】特開2000−248811号公報
【特許文献3】特許第5066269号公報
【非特許文献】
【0006】
道田祥二、他「横倒れ座屈形板バネの飛移り挙動の解析」日本機械学会出版、日本機械学会論文集A編、第45巻(1979)、P674−682
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
文献1記載の発明は、主として戸開時に必要な力を円滑化する課題に取り組んだものであるが、板バネ式マグネットキャッチであって、磁着受部の片端から徐々に磁石より離脱させる構造であるため、当該磁石の磁着力の半分以上を先ず減殺し、更に、磁着受部が薄板である場合には、磁着力が少なからず減殺されることから、当該磁石の磁着力を有効に活用できない可能性が大きい。
文献2記載の発明は、コイルスプリング式であって、引戸用のマグネットキャッチの上記問題にほぼ解決を与えたものと考えられるが、未だ普及を得ていないのは、開き戸には不向きなこと、後付け(戸の新設後に装置を追加取付けすること)が手軽にできる形態でないこと、防音対策が十分でないこと等がその原因と思われる。
文献3記載の板バネ式マグネットキャッチの発明は、開き戸にも適するだけでなく、文献2記載のコイルスプリング式に比して同様の効果を得ながら取付け容易とし、経済的にも有利とすることができる。しかし、戸の跳ね返り防止能力は、未だ改善余地が大きく、また、作動音を緩和する対策が、十分とは言えない。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、開き戸と引戸の双方に対して、当該磁石の磁着力をできるだけ有効に使いながら、戸開時抵抗を緩和してソフトな感触の戸開閉を実現すると共に、引戸の跳ね返りによる隙間発生機会を低く抑え、そして作動音を極力小さくすることができ、戸閉時に適度な押込み感があり、小型で後付けも手軽に可能とする、板バネ式マグネットキャッチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、戸を戸口枠体に係着するため、その何れか一方に磁石を固定し、他の一方に板バネを板バネ後端部で固定し、板バネ前端部に磁着受部を固着し、該板バネ後端部と該板バネ前端部間の部位を板バネ主体部とする構成の板バネ式マグネットキャッチに於いて、
前記板バネ主体部の少なくとも一部は、その内幅の一部を切欠き、前記板バネ前端部と共に左右に分離した後、該板バネ前端部を互いに引き寄せ重ね合わせて固着することにより、横倒れ座屈状となったものとなし、
または、前記板バネ主体部の少なくとも一部は、その内幅の一部を切欠き、その切欠き部の前後両端の少なくとも何れか一方の端面近傍を浅く絞り加工することにより、横倒れ座屈状となったものとなし、
前記板バネの飛移り座屈に伴う瞬発力を前記磁石の磁着力より小さくすることにより、戸を開閉の都度、該板バネに該磁石から離れる方向の変形を一部制限した変形経路の飛移り座屈を起こさせるものである。
【0010】
請求項2記載の発明は、戸を戸口枠体に係着するため、その何れか一方に磁石を固定し、他の一方に板バネを板バネ後端部で固定し、板バネ前端部に磁着受部を固着し、該板バネ後端部と該板バネ前端部間の部位を板バネ主体部とする構成の板バネ式マグネットキャッチに於いて、
前記磁着受部を、前記板バネの板厚より薄い薄鉄片と、該薄鉄片の裏側(磁石と反対側を常に「裏側」とする)に固着された該薄鉄片より板厚が厚い厚鉄片、とで形成させ、
かつ、前記薄鉄片は、前記厚鉄片との固着周端の少なくとも一部から、僅かな斜角で表側に延設された延設部を有するようにしたものである。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2の何れか1項に記載の板バネ式マグネットキャッチに於いて、上記板バネ主体部の少なくとも一部が、2段以上となるよう、該板バネ主体部を折返し構造としたものである。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1、請求項2、請求項3の何れか1項に記載の板バネ式マグネットキャッチに対し、上記板バネ前端部と上記磁着受部との固着面は、該磁着受部の裏側の前半分(板バネ後端部から道のりを辿って板バネ前端部を目指す方向をもって、全ての場合に「前」方向とする)よりやや小さいものとした、ものである。
【発明の効果】
【0013】
図9は、請求項1記載の発明による効果を簡明に説明するための図である。図に於いて、(A)は板バネ2を横倒れ座屈状として、その上端部を板バネ固定金具10で固定し、下端部に磁着受部9を固着させている。この磁着受部をPの力で裏側方向へ押すと、アーチ部を反転させる方向の曲げモーメントが加わるから、板バネ2は(B)の形状を経て飛移り座屈を起こし、他に拘束が無ければ(C)に示す通りとなる。しかし、板バネ2の裏向きへの変形を磁石1により一部制限すると、一定の力Pで表側へ引き戻された形で(D)の通りとなる。
従って、前記座屈に伴う瞬発力が磁石1の磁着力以上であれば、磁着受部9は磁石1から離脱し、通常の飛移り座屈を起こして(C)の状態となり、戸開時に板バネ2を元の状態に引き戻すことができないが、本発明では前記座屈に伴う瞬発力を磁石1の磁着力より小さくしたから、戸閉時に座屈に伴う変形は一部制限され、(C)の状態になることなく(B)から(D)の状態へ瞬間的に移行し、戸開時には板バネ2は元の状態に戻る。
このような原理の請求項1記載の装置では、戸閉時、板バネ2は初め表側に突出した状態にあるから、戸の勢いを和らげるクッションとして働き、座屈を起こすまで一定の押込む力Pが必要となる。裏側への座屈を起こした後は一転して戸を戸口枠体に引き付け、Pの力で戸を係着する。次に、戸開時には、板バネは表側への座屈を起こすまで単なる板バネとして撓んで戸開時抵抗を和らげ、座屈後は戸を突き放す力を放出する。
このようにして、本発明装置は装着した一つのバネで、クッション用バネと係着用バネの二つの機能を座屈の前後で果たし、板バネの総変形量も大きくできるから、荒締めを和らげ、適度な押込み感があり、戸開閉に必要な外力を緩やかにする効果を生み出す。
【0014】
請求項2記載の板バネ式マグネットキャッチに依れば、厚鉄片を薄鉄片の裏側に固着させた部分については、十分な板厚を得て磁石の持つ磁着力を有効に使い易くでき、固着されずに延設された薄鉄片延設部については、十分な弾性を持たせることができるから、磁着受部が磁石に吸着される時には、そのクッション効果によって、作動音を有効に緩和することができる。
【0015】
請求項3記載の板バネ式マグネットキャッチに依れば、負荷に応じ、板バネ後端部から最初の折返し部までの1段目(以下、次の折返し部までを「2段目」、更にその次を「3段目」と称する)の板バネ主体部によって得られる変形量より、当然大きな変形量が得られる。
板バネの大きな変形量が得られることで、戸閉時に跳ね返った戸を引き戻すことのできる領域が拡大し、跳ね返り防止能力を拡大することができる。そのことは、戸開時に磁石から離脱するまでの距離を拡大することも同時に意味するから、その間に戸開動作の慣性を得て、戸開時抵抗を一層緩やかにする効果も、得ることができる。
【0016】
請求項4記載の発明による効果は、次の通りである。板バネ前端部に固着した磁着受部を磁石に磁着するに、簡明化のため図10(A)〜(C)で示した3つの場合を想定する。磁着受部9が磁石1と全面に磁着した時の磁着力をMとすると、(B)では磁着受部9後端の裏に固着された板バネ前端部後端があり、戸開時にここからMの半分の力で磁着受部9の磁石1からの離脱が起こる。(C)では磁着受部9前端の裏に板バネ前端部後端があり、ここからMの半分の力で磁着受部9の磁石1からの離脱が起こる。従って、(A)のように、戸開時にその中間部に必ず前後均衡して離脱する板バネ前端部後端の位置が存在し、その時の力はMに等しい。
一方、板バネ2は戸開時(A)の仮想線に示すように変形し、磁着受部9の下端は小矢印方向に引寄せられるから、該下端の磁石1からの離脱を支援する。この作用のため、上下均衡を保つ板バネ前端部後端は、常に磁着受部9の中央より上に位置する。
これらのことから、板バネ前端部と磁着受部との固着面は、磁着受部裏側の前半分よりやや小さいもの(以下、「やや小さい前半分」のように記す)とすれば、当該磁石の持つ磁着力を大きく減殺することなく、有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の引戸への実施例を説明するための図である。(実施例1)
図2】本発明の開き戸への実施例を説明するための図である。(実施例2)
図3】本発明の他の実施例を説明するための図である。(実施例3)
図4】本発明の他の実施例を説明するための図である。(実施例4)
図5】本発明の他の実施例を説明するための図である。(実施例5)
図6】本発明の他の実施例を説明するための図である。(実施例6)
図7】横倒れ座屈形板バネを髪留めに利用した例を説明するための図である。
図8】横倒れ座屈形板バネを衣服の裾留めに利用した例を説明するための図である。
図9】板バネの飛び移り座屈を説明するための略図である。
図10】板バネと磁着受部の固着方式例の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
戸開時の抵抗を円滑化して戸閉時に適度な押込み感があり、荒締めを和らげて跳ね返りによる隙間発生機会を少なくし、開き戸と引戸の双方に利用できるような板バネ式マグネットキャッチを、当該磁石の磁着力を有効に使いつつ、小型で後付けも手軽に可能とし、かつ、作動音を小さくすることができるように、実現した。
【実施例1】
【0019】
図1は、2段構成の板バネの2段目が飛移り座屈を起こすようにした本発明装置の引戸への実施例を示したもので、(A)は正面図、(B)は2段目板バネ主体部周りの斜視図である。2段目板バネ主体部2Cは、図7で説明したと同様に内幅の一部を切欠き、前端部と共に左右に分離した後、それを中心線上に寄せ合せて一つの板バネ前端部2Aとしているから、横倒れ座屈状となっている。そして、厚鉄片3の略後半部を後薄鉄片クリンチ部4Cにより包んで薄鉄片4と固着し、厚鉄片3のやや小さい前半分に板バネ前端部2Aを重ねて前薄鉄片クリンチ部4Bにより包んで固着し、厚鉄片3と薄鉄片4から成る磁着受部9と板バネ前端部2Aを部分的に一体化している。
図の仮想線は板バネ2の戸開時状態を示し、殆ど制約を受けないアーチ状となっているが、戸閉時には実線で示す通り、磁着受部9は磁石ユニット16に吸着されて垂直方向にある。そして、板バネ主体部2Cの前端近傍は後薄鉄片クリンチ部4Cを乗越えるため、磁着受部9に対して斜角を成すよう拘束されているから、表側への座屈を起こし易くしている。薄鉄片4両端の延設部4Aは、厚鉄片3に対し僅かに傾斜して固着端面から表側に突出しているので、磁石ユニット16に磁着時にはクッション効果が生じて、作動音を有効に緩和する。
尚、2段目板バネ主体部2Cは、降伏することなく座屈させるために焼入れ鋼帯など比較的高強度材料とするのが好ましいから、必要に応じ、1段目とは別の材料として1段目の前端部で接続してもよいし、曲げ加工が困難な部分は局部的に焼戻ししてもよい。
【実施例2】
【0020】
図2は、1段構成の板バネ2が飛移り座屈を起こすようにした本発明装置を開き戸に利用した例で、磁石1周りの構造を示すために磁石1と磁着受部9とは離間して示している。
図8で説明したと同様、板バネ主体部2Cは、前後両端部を残して内幅の一部を切欠き、板バネ主体部2Cを左右に分離した後、その切欠き部の前後両端面近傍に絞り加工を施しているから、横倒れ座屈状となっている。そして、磁着受部9周りは実施例1で述べたと同様の構造となっており、板バネ2は戸当りを兼ねた板バネ固定金具10を介して戸口枠体12の上角部に固定されている。磁石1はヨーク6に挟まれて磁石ユニット16を構成し、戸11の上角部に固定されている。戸開時には、板バネ2は図1に示したと同様にアーチ状となり、表側に突出する。
【実施例3】
【0021】
図3に、本発明装置を引戸へ利用した他の実施例を示す。板バネ後端部2Dを固定部とし、板バネ主体部2Cは作動時の段間の衝突を避けるため、バネ変形量以上の間隔となるよう折返して、1段目と2段目を構成している。
そして磁石ユニット16に対向して薄鉄片4を設け、その裏側にそれと同じ長さで別体の厚鉄片3を、両薄鉄片延設部4Aを残して溶接またはカシメ等の手段により固着し、磁着受部9と成している。更にその裏側に2段構成の板バネ2が、板バネ前端部2Aで厚鉄片3の裏側のやや小さい前半分と固着されている。
【実施例4】
【0022】
図4に、板バネ2を複数段とせず、本発明装置を開き戸に用いた他の実施例を示すが、板バネ2は磁石ユニット16より拡大して示している。磁石ユニット16はケース7に収められ、戸口枠体12の上角部に戸当りとして固定されている。これに対向して実施例3と同様にして磁着受部9を設け、板バネ前端部2Aと固着しているが、コスト節減のため、磁石1及び厚鉄片3は薄鉄片4の薄鉄片延設部4Aを除いた長さとしたことが、実施例と相違している。板バネ主体部2Cは、バネ作動時に固定面との衝突が避けられるよう、その後端近傍で僅かに曲げられ、固定面と一定の傾斜を成している。
【実施例5】
【0023】
図5は、本発明装置の他の実施例で、板バネの部分のみを示しており、引戸と開き戸の何れにも利用できるものである。本例では、コスト節減のため厚鉄片3の代わりに、板バネ主体部2Cの2段目から折返した板バネ延設部2Bを用い、そのやや小さい前半分を平潰しにして板バネ前端部2Aと固着している。薄鉄片4には実施例1及び2と同様にして、前薄鉄片クリンチ部4Bと後薄鉄片クリンチ部4Cを設け、夫々板バネ延設部2Bの板バネ前端部2Aを固着した部分と、略後半分を包んで固着している。
【実施例6】
【0024】
図6は、本発明装置の他の実施例で、板バネの部分のみを示しているが、板バネ主体部2Cを3段構成にしたことと、薄鉄片4の表側に防音のための弾性被膜8を貼付したこと以外は、実施例3と略同じ構造としたものである。このように板バネ主体部2Cの段数を増やせば、戸の跳ね返り防止能力等の性能改善が図り易くなると共に、1段当たりのバネ変形量を小さくできるから作動音を低減できる等の利点が得られる。
【0025】
以上述べた実施例では、磁石ユニット16及び板バネ固定金具10の戸口枠体12または戸11への固定を夫々ネジ5C、5Dで示したが、戸11が軽快である場合には接着剤に依ってもそれらの固定は可能であるから、金属製の戸11や戸口枠体12にも本発明装置の取付けは手軽にできる。
【符号の説明】
【0026】
1 磁石
2 板バネ
2A 板バネ前端部
2B 板バネ延設部
2C 板バネ主体部
2D 板バネ後端部
3 厚鉄片
4 薄鉄片
4A 薄鉄片延設部
4B 前薄鉄片クリンチ部
4C 後薄鉄片クリンチ部
5C ネジ
5D ネジ
6 ヨーク
7 ケース
8 弾性被膜
9 磁着受部
10 板バネ固定金具
11 戸
12 戸口枠体
16 磁石ユニット
【要約】      (修正有)
【課題】開き戸と引戸の双方に対して、戸開時の抵抗を緩和すると共に、適度な押込み感があり、跳ね返りによる隙間発生機会を減少させ、作動音発生を極力抑えることができ、小型で後付けも手軽にできるようなマグネットキャッチを提供する。
【解決手段】戸11を戸口枠対12に係着するため、戸11或いは戸口枠体12の何れか一方に磁石を固定し、他方に板バネ2を板バネ後端部2Dで固定し、板バネ前端部2Aに磁着受部9を固着したことを特徴とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10