(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5690009
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】感熱バルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 31/68 20060101AFI20150305BHJP
【FI】
F16K31/68 B
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-122152(P2014-122152)
(22)【出願日】2014年6月13日
【審査請求日】2014年6月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592250414
【氏名又は名称】株式会社テックコーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】309043768
【氏名又は名称】テクノ環境機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074055
【弁理士】
【氏名又は名称】三原 靖雄
(72)【発明者】
【氏名】中本 義範
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 曙
【審査官】
谷治 和文
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−037338(JP,A)
【文献】
特開平10−205392(JP,A)
【文献】
特許第5443644(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/64−31/72
G05D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の径を有する水管(P)の中途に、ボディー本体(10)を設け、該ボディー本体の上部には、熱膨張部材部(1)を設け、該ボディー本体の下部には、水管(P)の流路中に、押しバネ(15)で付勢したポペットバルブ(11)を設け、前記熱膨張部材部(1)の体積の増減により前記ポペットバルブ(11)を開放・閉塞し、
前記ボディー本体(10)の上部付近に凹部を形成し、該凹部にポペットバルブ(11)に固定したシャフト(17)の上端部と当接するワッシャ(8)の周辺部に、ボディー本体(10)との非接触空間部(X)を設けた感熱バルブにおいて、
ボディー本体(10)の上部付近に形成した凹部の周縁部を、断熱性を有する素材のワッシャー(4)を用いて凹部である非接触空間部(X)を閉鎖したことを特徴とする感熱バルブ。
【請求項2】
水管(P)の径が、10A以上20A以下であることを特徴とする請求項1記載の感熱バルブ。
【請求項3】
水管(P)内には、水道水、地下水、アルカリ水、酸性水、電解水、圧縮空気から選ばれた流体が流れることを特徴とする請求項1または2記載の感熱バルブ。
【請求項4】
熱膨張部材部(1)には受熱部材(2)を設けたことを特徴とする請求項1記載の感熱バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、感熱バルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光パネルや屋根、壁、公園、作業現場等、種々の施設において、冷却や水やり等のため、スプリンクラー等の散水装置による散水が行なわれている。散水装置における散水の開始、停止の自動制御には、サーモスタット等の温度センサと湿度センサと電磁弁が一般的に利用されている。
【0003】
電磁弁は電気により駆動するが、電気が不要な自動制御が望まれており、例えば、感熱弁による自動制御が提案されている。該感熱弁は、内包されるワックス等の熱膨張部材の熱膨張を利用して散水の開始、停止を制御している。例えば、特許文献1のように。
【0004】
上記感熱弁は、感熱弁本体を噴霧する水が流れていることから、弁開放時に流れる水量が多い場合では、流れる水によって熱膨張部材が冷却され、弁が閉じてしまい、十分に散水ができなくなるおそれがある。また、流れる水の圧力により、弁の可動部分の振動(チャタリング)が生じ、散水が不均一になるおそれがある。
【0005】
さらに、それに対して、弁開放時に流れる水で冷却されて弁が閉じることの抑制、及びチャタリング発生を抑制する感熱バルブが存在している。例えば、特許文献2のように。
【0006】
しかし、上記感熱バルブは、水が流入される流入口から主排出口へとつながる主水路と、該主水路から分岐して副排出口へとつながる副水路を設けて、前記主水路を開放・閉鎖する親弁と、前記副水路を開放・閉鎖する子弁とを備えており、子弁に、内包されるワックス等の熱膨張部材の熱膨張を利用して散水の開始、停止を制御しており、その機構が複雑となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−256823号公報
【特許文献2】特許第5443644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明の課題は、上記事項に鑑みてなされたものであり、水管を流れる流体を室内・室外の温度の変化や日射熱により弁を開放・閉鎖する際の誤動作の抑制やチャタリング発生の抑制に対して、熱的対策を施し、しかも、従来のように2つの弁(親弁・子弁)は不要であって、1つの弁のみで抑制が可能な感熱バルブを開発・提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこでこの発明は、上記の課題を解決するため、感熱バルブに熱対策を施し、熱膨張部材(1)で受けた熱がボディー本体(10)に逃げないよう、又は、ボディー本体(10)の熱の影響を熱膨張部材(1)が受けないよう構成する。その具体的な手段は、
1) ワッシャー(4)を、例えば,フェノール樹脂などの熱伝導性が低い、即ち,断熱性がある素材で構成する。
2) ワッシャー(8)の周辺部にはボディー本体(10)との非接触空間を設けるよう構成するものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によると、ポペットバルブは、押しバネによって付勢されて閉鎖しており、水道水等の流体の圧力が加わってより強く閉鎖する等の効果を有する。
【0011】
また、ポペットバルブは、弁断面積が大きいため開放時には、一気に大容量を通水することができる。即ち,バルブが抵抗要因にならず、チャタリングの発生は少なく、音もなく開口し、10数秒程度できれいに閉鎖し、半開き状態もない等の効果を有する。
【0012】
また、この発明によると、誤動作がなくミスト装置やスプリンクラーの制御に使用するものであれば、例えば、2台から5台を配列して制御ができ、安価に設置できる等の効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明について詳細に説明する。尚、この発明においては、以下の記述に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲においては適宜変更可能である。
【実施例】
【0015】
先ず、この発明の一実施例を図面に基づいて詳述すると、所定の径を有する水管(P)の中途に、ボディー本体(10)を設け、該ボディー本体の上部には、熱膨張部材部(1)を設け、該ボディー本体の下部には、水管(P)の流路中に、押しバネ(15)で付勢したポペットバルブ(11)を設け、前記熱膨張部材部(1)の体積の増減により前記ポペットバルブ(11)を開放・閉塞することを特徴とする感熱バルブから構成されるものである。
【0016】
本発明の感熱バルブの構造をより詳しく説明すると、前記水管(P)は、一方に流体の流入口(IN)を設け、他方に流出口(OUT)を設けており、該水管(P)の中途に、ボディー本体(10)を設けている。
【0017】
該ボディー本体(10)には、下部にポペットバルブ(11)を設け、該ボディー本体(10)の上部には、受熱板等の受熱部材(2)を設けている。
【0018】
尚、前記水管(P)の一方の流体の流入口(IN)側には、水道管等(図示しない)の流体配管を接続し、他方に流出口(OUT)側には、ミスト発生装置やスプリンクラー等(これらも図示しない)に接続するものである。
【0019】
このような感熱バルブは、室温や外気温により、温度が上昇すると受熱部材(2)による熱が伝搬し、ワックス等の熱膨張部材(1)の体積を膨張させることにより、ピストン(7)、ワッシャー(8)を介してシャフト(17)が押圧され、該シャフトに固定したホルダー(13)を、押しバネ(15)に抗して押圧することにより、ポペットバルブ(11)を開放させるものである。
【0020】
尚、ワッシャー(8)の周辺部にはボディー本体(10)と非接触空間(X)を形成し、かつ、熱膨張部材部(1)で受けた熱がボディー本体(10)に逃げない、又は、ボディー本体(10)の熱の影響を熱膨張部材部(1)が受けない構造としている。
【0021】
また、室温や外気温が下がった際、熱膨張部材(1)の体積を収縮により、前記押しバネ(15)の弾力に付勢されてポペットバルブ(11)は閉鎖される結果、誤動作なく、音もなくきれいに止まり、10秒後強制閉弁されるものである。
【0022】
尚、誤動作とは、バルブの半開状態が続くことや、逆動作することをいい、その要因は、熱膨張部材(1)の熱がバルブ本体に逃げる,又は受けてしまうことをいう。
【0023】
そして、逆動作の要因は、熱膨張部材(1)の熱が、ボディー本体(10)に逃げる、又は受けてしまうことをいう。
【0024】
尚、前記押しバネ(15)は、プラグ(14)で、ボディー(10)に、Oリング(16)介して止水され、堅牢に固定されている。
【0025】
このように、ポペットバルブ(11)は、押しバネ(15)により付勢されて閉鎖しており、水道水の圧力が加わってさらに強靱に閉鎖されている。
【0026】
さらに、ポペットバルブ(11)は、弁断面積が大きいので、開放時には、一気に大容量を通水する。即ち,前記ポペットバルブが抵抗要因にならないからである。従って、チャタリングは小さく半開き(最もイヤな状態)がない。
【0027】
また、宅地内の水道管は、通常、15A(mm)以上の口径が用いられており、該水道管に接続する水管(P)の配管径も、20A〔3/4B(インチ)〕以下、15A(1/2B)以上が望ましい。水道管内の圧力は、通常、0.3から0.4MPa程度である。 即ち,宅地内の水道管は、通常、15A以上の口径のものが使用されており、圧力もこの範囲内であればチャタリングは生じない。
【0028】
従って、上記の範囲内の口径を設け、1/2B=15A、3/4B=20Aであり、宅地内の水道管は口径が15A(mm)を使用しており、ポペットバルブ(11)を設けることにより、センサー、電磁弁、電源等の作動源を必要とせず、室温・外気温を利用して制御でき、水管(P)内の流体には、水道水、地下水、アルカリ水、酸性水、電解水、圧縮空気から選ばれた流体が流れることにより、これらの流体の管理ができる。
【0029】
また、前記水管(P)、ポペットバルブ(11)、押しバネ(15)等は、前記の各流体が流れることにより、各流体の性質により、これらの素材を例えば,ステンレス製等の非腐食性素材を選択して使用するものである。
【0030】
このように、この発明には、植物や屋根への散水装置や、ミスト発生装置に使用する水は、水道水を使用しており、水を制御するバルブは多々存在しているが、大抵は、センサー、電磁弁、電源を必要とせず、小弁単体のバルブを使用し、使用する水に制限されることなく、また、稼働にあたりチャタリングがなくキレイに止まる感熱バルブを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
この発明の感熱バルブの技術を確立し、実施することにより、産業上利用できるものである。
【符号の説明】
【0032】
1 熱膨張部材
2 受熱部材
3 ナット
4 ワッシャー
5 ワッシャー
6 Oリング
7 ピストン
8 ワッシャー
9 ストップリング
10 ボディー本体
11 ポペットバルブ
12 バルブシート
13 ホルダー
14 プラグ
15 押しバネ
16 Oリング
17 シャフト
P 水管
X 非接触空間部
【要約】 (修正有)
【課題】弁開放時に流れる水で冷却されて弁が閉じることの抑制、及びチャタリング発生の抑制が可能で、しかも、親弁・子弁が不要であって、子弁のみで抑制が可能な感熱バルブを提供する。
【解決手段】所定の径を有する水管Pの中途に、ボディー本体10を設け、該ボディー本体の上部には、熱膨張部材部1を設け、該ボディー本体の下部には、水管Pの流路中に、押しバネ15で付勢したポペットバルブ11を設け、前記熱膨張部材部1の体積の増減により前記ポペットバルブ11を開放・閉塞する。
【選択図】
図4