(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一対のガラス部材各々は、前記基台の前記設置面に対して鉛直方向に沿う断面が台形形状であり、前記台形形状の斜辺を含む前記ガラス部材の斜面が押圧されることで、前記基台に固定されることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ再被覆装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態に係る光ファイバ再被覆装置Aは、光ファイバの任意の中間部における被覆(中間被覆)を除去して光ファイバ型光部品を製造した後の部分を再被覆する装置である。なお、上記光ファイバ再被覆装置Aによって再被覆される光ファイバは、軸心からクラッド部と、このクラッド部の外周側に被覆された被覆とが同心状に形成されている。また、光ファイバの被覆は、例えば、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、ポリブタジェンアクリレート系、シリコーンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系などの紫外線硬化型樹脂からなる。
【0013】
上記光ファイバ再被覆装置Aは、
図1に示すように、光ファイバ被覆部M、光ファイバ把持部Kを備える。
光ファイバ被覆部Mは、
図1に示すように、石英ガラスの如き透明材料からなる上下一対の成形部材より構成されるガラス型開閉部M1から構成される。
【0014】
上記ガラス型開閉部M1の成形部材であるガラス部材G1, G2は、互いに突き合わされる面の中央部に、リコート(再被覆)用の溝G11,G21(
図2及び
図3参照)を有している。これら溝G11,G21は、上記各ガラス部材G1, G2が互いに突き合わされたときに、略円柱状の空隙部であるキャビティ部を構成する。
【0015】
このとき、上記ガラス型開閉部M1のガラス部材G1, G2は、キャビティ部を上下から挟み込んだ状態となる。この光ファイバ被覆部Mにおいて、上側のガラス部材G1は調整台BD(基台)を介して上側の設置台D1に固定されている。一方、下側のガラス部材G2は下側の設置台D2(基台)に固定されている。なお、調整台BD及び下側の設置台D2は、本実施形態における基台である。
【0016】
設置台D1は、下側の設置台D2の縁部分を中心にして、ヒンジH1によって回動可能に支持されている。すなわち、上側のガラス部材G1は、下側のガラス部材G2に対して、この下側のガラス部材G2に突き合わされてキャビティ部を締める状態と、この下側のガラス部材G2から離間されてキャビティ部を開く状態との間にわたって回動可能となっている。
【0017】
そして、ガラス型開閉部M1の下側のガラス部材G2には、キャビティ部に液体状の樹脂、つまり硬化前の樹脂を注入するための後述するスプールSp及びゲートGtが設けられている。
【0018】
また、ガラス型開閉部M1の下側のガラス部材G2の上側のガラス部材G1に突き合わされる面には、溝G21以外の部分に、クローム(Cr) 膜からなる遮蔽部が設けられている。この遮蔽部は、下側のガラス部材G2に対してクロームがコーティングされることにより形成されている。この遮蔽部は、キャビティ部内の樹脂材料を硬化させるための紫外線が後述するスプールSp及びゲートGtにある樹脂材料に照射されないようにするためのものである。なお、上記ガラス型開閉部M1の詳細については、後述する。
【0019】
この光ファイバ被覆部Mは、光源(図示略)が設置される。この光ファイバ被覆部Mに対しては、光源により、例えば紫外線が注入後の樹脂に向けて照射されることとなる。そして、紫外線に照射された樹脂は、硬化する。
【0020】
光ファイバ把持部Kは、光ファイバ被覆部Mに光ファイバをセットしたときに、光ファイバ被覆部Mの両側に引き出された状態となる光ファイバを保持するためのものである。
【0021】
次に、ガラス型開閉部M1について詳細に説明する。
上記ガラス型開閉部M1は、
図1及び
図4に示すように、一対のガラス部材G1, G2、一対の設置台D1, D2、ヒンジH1、調整台BD、一対の第1側方押圧部材ST11,ST12及び一対の第2側方押圧部材ST21,ST22を備える。
【0022】
ガラス部材G1, G2は、
図2及び
図3に示すように、調整台BDの設置面BD1及び設置台D2の設置面D21(
図4参照)に対して鉛直方向に沿う断面が台形形状であり、台形形状の短辺側の中央部、つまり、互いに突き合わされる面の中央部に、リコート(再被覆)用の溝G11,G21を有している。これら溝G11,G21は、上記各成形部材が互いに突き合わされたときに、略円柱状の空隙部であるキャビティ部を構成する。
【0023】
さらに、下側のガラス部材G2は、溝G21に加えて、上述したスプールSp及びゲートGtが形成されている。
スプールSpは、液体状の樹脂、つまり硬化前の樹脂が流れるために高さ方向に貫かれた流路であり、上記台形形状の短辺側、つまり、ガラス部材G2のガラス部材G1に突き合わされる面の中央部に形成されるゲートGtに一端が接続される。また、スプールSpは、ゲートGtに接続される一端とは反対側の他端が、ポンプ等から構成される樹脂供給部(図示略)に接続され、該樹脂供給部から供給される樹脂がゲートGtに向けて流れる。
【0024】
ゲートGtは、台形形状の短辺側、つまり、ガラス部材G2のガラス部材G1に突き合わされる面の中央部に形成された溝であり、スプールSpの一端に接続されると共に、溝G21に接続され、スプールSpを介して樹脂が流入する。該樹脂は、溝G11,G21によって形成されるキャビティ部に向かって流れる。キャビティ部では、ゲートGtから流れ込む樹脂によって、光ファイバの再被覆が行われる。
【0025】
調整台BDは、上側のガラス部材G1が固定される基台であり、上側の設置台D1上に固定され、設置台D1上の前後方向(正面側から背面側に向かう方向)の位置が後述する位置調整ネジN41, N42によって調整されている。
【0026】
一対の第1側方押圧部材ST11,ST12は、調整台BDの設置面BD1の上に設置され、上側のガラス部材G1の上述した断面の台形形状の斜辺を含むガラス部材G1の2つの斜面Sh11,Sh12(
図3参照)それぞれに面接触する斜面を有するものである。上側のガラス部材G1は、一対の第1側方押圧部材ST11,ST12によって、正面側及び背面側から挟まれている。
【0027】
一対の第2側方押圧部材ST21,ST22は、下側の設置台D2の設置面D21の上に設置され、下側のガラス部材G2の上述した断面の台形形状の斜辺を含むガラス部材G2の2つの斜面Sh21,Sh22(
図2参照)それぞれに面接触する斜面を有するものである。下側のガラス部材G2は、一対の第2側方押圧部材ST21,ST22によって、正面側及び背面側から挟まれている。なお、上記正面側及び背面側のうち、背面側とは、
図1及び
図4に示すように、ガラス型開閉部M1におけるヒンジH1が設けられた側であり、一方、正面側とは、背面側の反対側である。
【0028】
例えば、上記一対の第1側方押圧部材ST11,ST12各々は、調整台BDの設置面BD1に対する鉛直方向に沿ってネジ穴At1,At2が設けられる。また、調整台BDの設置面BD1にも、上記一対の第1側方押圧部材ST11,ST12のネジ穴At1,At2に対応するように、第1側方押圧部材ST11,ST12の設置個所にネジ穴が設けられている。このネジ穴At1,At2及び調整台BDのネジ穴に、固定ネジN11,N12それぞれが螺合されて、調整台BDと上記一対の第1側方押圧部材ST11,ST12とが連結される。
【0029】
また、調整台BDは、中央部がへこむ容器のような形状をしており、その容器の内底面が設置面BD1である。この調整台BDにおける第1側方押圧部材ST12側(背面側)の側面には、第1側方押圧部材ST12への方向にネジ穴Ahが設けられている。このネジ穴Ahに側方押圧ネジN3が螺合され、第1側方押圧部材ST12は、側方押圧ネジN3の軸によって上側のガラス部材G1に向けて押圧される。なお、第1側方押圧部材ST12のネジ穴At2については、固定ネジN12の軸の周面よりも若干緩めに形成されているため、側方押圧ネジN3によって押圧された第1側方押圧部材ST12は、上側のガラス部材G1を押圧する。この結果、ガラス部材G1は、
図5に示すように、上側の設置台D1の方向に押圧されるので、調整台BDに強く固定される。
【0030】
また、設置台D1も、中央部がへこむ容器のような形状をしており、その容器に調整台BDを収容している。この設置台D1における第1側方押圧部材ST11側(正面側)及び第1側方押圧部材ST12側(背面側)の2つの側面には、調整台BDへの方向にネジ穴Af1, Af2が設けられている。このネジ穴Af1, Af2に位置調整ネジN41, N42が螺合され、調整台BDは、位置調整ネジN41, N42によって押圧される。この結果、調整台BDの設置台D1上の前後方向(正面側から背面側に向かう方向)の位置が調整される。
【0031】
また、上記一対の第2側方押圧部材ST21,ST22各々は、下側の設置台D2の設置面D21に対する鉛直方向に沿ってネジ穴As1,As2が設けられる。また、下側の設置台D2の設置面D21にも、上記一対の第2側方押圧部材ST21,ST22のネジ穴As1,As2に対応するように、第2側方押圧部材ST21,ST22の設置個所にネジ穴が設けられている。このネジ穴As1,As2及び設置台D2のネジ穴に固定ネジN21,N22が螺合されて、下側の設置台D2と上記一対の第2側方押圧部材ST21,ST22とが連結される。
【0032】
また、設置台D2は、中央部がへこむ容器のような形状をしており、その容器の内底面が設置面D21である。この設置台D2における第2側方押圧部材ST21側(正面側)の側面には、第2側方押圧部材ST21に向かうネジ穴Agが設けられている。このネジ穴Agに側方押圧ネジN5が螺合され、第2側方押圧部材ST21は、側方押圧ネジN5の軸によって下側のガラス部材G2に向けて押圧される。なお、第2側方押圧部材ST21のネジ穴As1については、固定ネジN21の軸の周面よりも若干緩めに形成されているため、側方押圧ネジN5によって押圧された第2側方押圧部材ST21は、下側のガラス部材G2を押圧する。この結果、ガラス部材G2は、下側の設置台D2の方向に押圧されるので、設置台D2に強固に固定される。
【0033】
また、本実施形態における変形例として、
図6(a)に示すように、上記側方押圧ネジN3の代わりに、調整台BDの側面と第1側方押圧部材ST12との間にバネ等の付勢手段Fを設け、この付勢手段Fによって、第1側方押圧部材ST12がガラス部材G1に向けて押圧されるようにしてもよい。
【0034】
また、本実施形態における変形例として、
図6(b)に示すように、上記第1側方押圧部材ST11,ST12を、固定ネジN11,N12によって調整台BDに固定するのではなく、調整台BDに上記第1側方押圧部材ST11,ST12を上下方向に挟持する挟持機構KJ1, KJ2を設けるようにしてもよい。
【0035】
また、本実施形態における変形例として、
図6(c)に示すように、上記第1側方押圧部材ST12のみで、上側のガラス部材G1を押圧し、第1側方押圧部材ST11側(正面側)に、上側のガラス部材G1の斜面Sh11に面接触する側方押圧機構BD2を調整台BDに設けるようしてもよい。
【0036】
また、本実施形態における変形例として、
図6(d)に示すように、第1側方押圧部材ST12に代わって、上側のガラス部材G1の斜面Sh12に面接触する斜面を有する第1側方押圧部材ST32を設け、この第1側方押圧部材ST32によって、上側のガラス部材G1の斜面Sh12に対する鉛直方向かつ上側のガラス部材G1に向けて、調整台BDにネジ止めされた側方押圧ネジN6によって押圧するようにしてもよい。また、上側のガラス部材G1の斜面Sh11に対しても、第1側方押圧部材ST32と同じ第1側方押圧部材を用意し、この第1側方押圧部材を用いてガラス部材G1を調整台BDに強く固定するようにしてもよい。
【0037】
なお、上述した固定ネジN11,N12,N21,N22、側方押圧ネジN3、位置調整ネジN41, N42、側方押圧ネジN5及び側方押圧ネジN6については、
図4、
図5及び
図6には図示していないが、光ファイバ再被覆装置Aの幅方向に複数設けられる。
【0038】
このような本実施形態によれば、一対のガラス部材G1, G2は、調整台BDの設置面BD1及び設置台D2の設置面D21(
図4参照)に対して鉛直方向に沿う断面が台形形状であると共に、台形形状の短辺側に溝G11,G21が設けられ、台形形状の斜辺を含むガラス部材の斜面Sh11, Sh12, Sh21, Sh22が押圧されることによって、ガラス部材G1, G2の反りを発生さることなく、ガラス部材G1, G2にネジ穴を設けずにガラス部材G1, G2を固定できる。
【0039】
また、本実施形態によれば、上述したように、ガラス部材G1, G2にネジ穴を設ける必要がなく、そのためガラス部材G1, G2を小型化することできるので、純粋石英の原材料費を抑制することができる。
また、本実施形態によれば、ガラス部材G1, G2の小型化によって、ガラス部材G1, G2の剛性が向上する。
また、本実施形態によれば、上述したように、ガラス部材G1, G2にネジ穴を設ける必要がなく、そのためのガラス部材G1, G2に対する研削加工が必要ないため、ガラス部材G1, G2の破損が減少して、信頼性を向上する。
【0040】
また、本実施形態によれば、上述したように、ガラス部材G1, G2にネジ穴を設ける必要がなく、そのための研削加工が必要ないため、加工コストを削減して、安価にすることができる。
また、本実施形態によれば、ネジによるガラス部材G1, G2への局所的な直接押下が無くなり、ガラス部材G1, G2の局所的な歪みが無くなる。
【0041】
また、本実施形態によれば、調整台BDの設置面BD1及び設置台D2の設置面D21と、ガラス部材G1, G2の底面とを精密研磨することでガラス部材G1, G2の反りをより抑制することが可能である。
また、本実施形態によれば、ガラス部材G1, G2が、調整台BDの設置面BD1及び設置台D2の設置面D21に強く固定されているため、ガラス型開閉部M1の開閉動作時の衝撃によるガラス部材G1, G2の位置ズレを抑制することできる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、例えば以下のような変形が考えられる。
(1)上記実施形態において、一対のガラス部材G1, G2両方は、上述した断面が台形形状であると共に、斜面Sh11, Sh12, Sh21, Sh22が押圧されることによって調整台BDの設置面BD1や設置台D2の設置面D21に固定されているが、一対のガラス部材G1, G2の少なくとも一方が、上述した断面が台形形状であると共に、斜面が押圧されることによって設置面に固定されていればよい。
【0043】
また、ガラス部材G1, G2両方は、断面が2つの斜辺を有する台形形状であるが、2つの斜辺を有する台形形状ではなく、1つの斜辺ともう一方が底辺に対して鉛直な直線である台形形状であり、1つの斜辺を含む斜面に対して側方押圧部材を設けるようにしてもよい。なお、台形形状の底辺に対して鉛直な直線を含む平面に対しては、調整台BDの側面に当接するようにすればよい。また、本発明は、上述した断面の形状として、調整台BDの設置面BD1や設置台D2の設置面D21に対して斜辺を有する形状であれば、上述した台形形状に限定されない。
【0044】
(2)上記実施形態では、側方押圧ネジN3,N5,N6によって直接第1側方押圧部材ST12、第2側方押圧部材ST22及び第1側方押圧部材ST32を押圧しているが、側方押圧ネジN3,N5,N6と第1側方押圧部材ST12、第2側方押圧部材ST22及び第1側方押圧部材ST32との間に板状部材を設置し、側方押圧ネジN3,N5,N6の押圧力が第1側方押圧部材ST12、第2側方押圧部材ST22及び第1側方押圧部材ST32全体に加わるようにしてもよい。
【解決手段】光ファイバの被覆を除去された部分に樹脂を硬化して被覆する光ファイバ被覆部を具備する光ファイバ再被覆装置であって、光ファイバ被覆部は、溝が形成された一対のガラス部材と共に一対のガラス部材各々が設置される2つの基台を有し、一対のガラス部材の溝が合わさって、光ファイバを被覆するための空洞が形成され、一対のガラス部材の少なくとも一方は、基台の設置面に対して鉛直方向に沿う断面が台形形状であると共に、台形形状の短辺側に溝が設けられ、台形形状の斜辺を含むガラス部材の斜面が押圧される。