(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
検出可能なレポーター遺伝子が、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、およびβーガラクトシダーゼから成る群から独立して選択される、請求項1に記載のプラスミド。
第一の組内の2個のレア制限酵素部位が、I−CeuI、PI−SceI、TevII、BmoI、およびDmoIから成る群から独立して選択され、そして互いに異なる、請求項1に記載のプラスミド。
【発明の開示】
【0004】
発明の要旨
少なくとも2個の異なる発現カセットを担持するウイルスベクターを生成するシステムが提供される。該システムは、挿入された発現カセットの効率的な検出および選択を可能とする独自の多価プラスミドバックボーンを利用する。
【0005】
本発明の多価バックボーンを使用して多価ウイルス粒子を生成する方法も提供する。
【0006】
本発明のそれらおよびその他の態様および利益は、以下に詳細に記載される。
【0007】
発明の詳細な説明
本発明は、標的に対する複数の発現カセットを担持するウイルスベクターを生成するシステムを提供する。本システムは、標識遺伝子を担持する可動クローニングカセットを含むウイルスゲノムを担持するDNA分子を利用する。このDNA分子は、ウイルスゲノム内の異なる座内に位置する複数の異種発現カセットを含むウイルスゲノムを担持するトランスファーベクターを生成するために使用される。異種発現カセットを担持するウイルスゲノムは、本発明のトランスファーベクターからレスキューされそして適切なウイルスキャプシドまたは発現タンパク質内にパッケージングされて、多価ウイルスベクターを作製する。
【0008】
本明細書中で使用される場合に、DNA分子および/またはトランスファーベクターは、本発明に従うウイルスゲノムを担持できるかまたは宿主細胞内へゲノムを移動できるなんらかの遺伝因子から誘導できる。いずれの適合する遺伝因子(またはバックボーン)でも選択でき、それには、例えばプラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、エピソームなどが含まれる。一つの態様では、遺伝因子は、原核発現に適するが、しかしその他のクローニングシステムも使用され得る。
【0009】
本明細書中で使用される場合に、「異なる座」の用語とは、第一に選択された標的産物に対する異種発現カセットが第二の異種発現カセットに隣接(contiguous)していない部位内でウイルスバックボーン内に位置することを指し、すなわちウイルス配列が異種発現カセットの間に位置する。それらの座は、異なる遺伝子領域内または単一の遺伝子領域内の異なるオープンリーディングフレーム内にあってもよい。あるいは、複数の座は単一のオープンリーディングフレーム内ではあるが互いに隣接せず、例えばスペーサー、本来の配列、制限酵素部位などで分離されていてもよい。
【0010】
本明細書中で使用される場合に、「発現カセット」は、宿主細胞への送達のための産物をコードする核酸配列を含んでなる。産物をコードする核酸配列は、宿主内の産物の発現を指令する調節制御配列の制御下にある。好適には、発現カセットはカセットに側面を接する(flank)ベクター配列とは異種である。一つの態様では、それぞれの異種発現カセット内の調節制御配列は、細胞内のクローニングプロセスおよびウイルス操作プロセスの間の相同組換えの危険を最小化(または排除)するために、他の異種発現カセット中の調節制御配列とは異なる。一つの態様では、それぞれの異種発現カセットは、異なるプロモーターおよび/またはエンハンサー、および/またはポリA配列を備えている。しかし、別の態様では、本発明の多価ベクター内の一つの異種発現カセットが、多価ベクター内の他の異種発現カセットと共通の1個もしくはそれ以上の調節制御配列を有することができる。かかる態様では、調節制御要素は、好ましくは組換えを許さない短い配列である。
【0011】
本明細書中に記載のように、コードされた産物は、体液性および/または細胞性免疫反応を誘導するように免疫系のために標的を提供してもよく、他のコードタンパク質のためのアジュバントであってもよく、免疫モジュレーター効果を提供してもよく、および/または治療効果を提供してもよい。かかる産物の組合せは、本発明に従って多価ウイルスベクター内で送達できる。
【0012】
「機能的に欠損した」または「機能的欠損」の用語は、遺伝子領域が遺伝子発現の機能性産物を産生することがもはやできないように、遺伝子領域の十分な量が取り去られたかまたはその他の様式、例えば突然変異または改変により損傷されていることを意味する。所望の場合には、全遺伝子領域を取り去ってもよい。遺伝子破壊または欠損に適する他の部位は本出願の別の箇所で考察する。
【0013】
I.多価ウイルス構築物
A.ウイルスゲノムおよび複数のレポーター遺伝子を担持するDNA分子
一つの態様では、本発明は、多価ウイルスベクター内にパッケージングされるウイルスの配列を担持するDNA分子を提供する。一つの態様では、かかるDNA分子はプラスミドである。しかし、上記のような他の適当な遺伝因子を選択してもよい。細胞内へのベクターの導入は、トランスフェクションを含む、当該技術分野で公知のいずれかの方法または本明細書中で開示の方法により達成できる。
【0014】
ウイルス配列は、送達ベヒクルとして使用されることが望まれそして複数の発現カセットを収容するために十分なスペースを有する種類のウイルスから選択される。それらのウイルス配列は、なかでもキャプシドタンパク質を有するウイルス、例えばアデノウイルス、から、またはエンベロープされたウイルス、例えばレトロウイルス、例えばネコ白血病ウイルス(FeLV)、HTLVIおよびHTLVII〕、およびレンチウイルス〔例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウマ感染性貧血症ウイルス、および泡沫ウイルス)〕)、ポックスウイルス(例えばカナリアポックス)などから容易に選択できる。さらに別のウイルスが当該技術分野の熟練者により容易に選択できる。
【0015】
一つの態様では、ウイルス配列は、アデノウイルス由来である。好適には、多価DNA分子はウイルスゲノムをキャプシド内にパッケージングするために必要な配列を少なくとも含むアデノウイルスゲノムからの核酸配列を含む。典型的には、多価アデノウイルス分子は、5’アデノウイルスシス因子および3’アデノウイルスシス因子をアデノウイルスゲノムのそれぞれ5’最末端および3’最末端に含む。アデノウイルスゲノムの5’末端はパッケージングおよび複製のために必要な5’シス因子を含む;すなわち、5’逆方向
末端反復(ITR)配列(複製の起点として機能する)および5’パッケージングエンハンサードメイン(E1プロモーターのための線型Adゲノムおよびエンハンサー因子をパッケージングするために必要な配列を含む)を含む。アデノウイルスゲノムの3’末端は、パッケージングおよびキャプシド化のために必要な3’シス因子(ITRを含む)を含む。
【0016】
さらに、多価DNA分子は、追加のアデノウイルス配列を含んでもよく、または1個もしくはそれ以上のアデノウイルス遺伝子領域内で少なくとも機能的に欠損されてもよい。一つの態様では、本発明に使用されるアデノウイルスベクターは、E2領域またはその機能的部分(例えばE2aおよび/またはE2bコードする領域)、および1個もしくはそれ以上の後期遺伝子、例えばL1、L2、L3、L4およびL5を含む。幾つかの態様では、本発明に使用されるアデノウイルスベクターは、E4領域のすべてまたは一部分(例えばE4 ORF6)を含んでもよい。
【0017】
例えば、アデノウイルス遅延型(delayed)初期遺伝子E3の全体または一部分は、ベクターの一部分を形成するアデノウイルス配列から除去されてもよい。サルE3の機能は組換えウイルス粒子の機能および産生と無関係と信じられる。
【0018】
例えば、E1欠失Adベクターは、少なくともE4遺伝子のORF6領域、またはこの領域の機能の重複性により、全E4領域の欠失があっても構築できる。本発明のさらに別のベクターは、遅延型初期遺伝子E2a内に欠失を含む。好適には、それらのベクターは後期遺伝子(すなわち、L1、L2、L3、L4およびL5)、およびウイルス粒子中にアデノウイルスベクターのパッケージングのために必須の他の因子を保持する。欠失は、ある目的のためには、中間遺伝子IXおよびIVa2内で起きてもよい。その他の欠失は、他の構造または非構造アデノウイルス遺伝子内で起きてもよい。以上に考察した欠失は、個別に、すなわち本発明内で使用するアデノウイルス配列が単一領域内でのみ欠失を含むように使用されてもよい。あるいは、それらの生物学的活性を破壊するために有効な全遺伝子またはそれらの部分の欠失は、どのような組合せで使用されてもよい。例えば、一つの例示的ベクターでは、アデノウイルス配列は,E1遺伝子およびE4遺伝子、またはE1遺伝子の欠失を有するか、またはE3の欠失を有してもなくてもよい。
【0019】
他の態様では、レンチウイルスゲノムが使用される。典型的には、レンチウイルスベクタープラスミドは、ベクターが標的細胞を感染するためおよび異種発現カセットの移動のために必要なシス作用性遺伝子配列を含む。好適には、当初のエンベロープタンパク質、およびgag配列プロモーターが除去されている。
【0020】
プラスミドバックボーン内のウイルス配列は、それらが挿入されるキャプシドまたはエンベロープの形式による配列に限定される必要はない。従って、プラスミドバックボーンは、他の起源からのエンベロープ内へのキャプシド化またはパッケージングされる一つのウイルス出所からのウイルス配列を含んでもよい。例えば、多価HIVベクターはFIVエンベロープ内にパッケージングできる。多価FIVベクターはHIVエンベロープ内にパッケージングできる。多価アデノウイルスベクターは他の血清型からのキャプシド内にパッケージングできる。さらに別の擬タイプ(pseudotype)のウイルスベクターが当該技術分野の熟練者には直ちに明らかであろう。
【0021】
ウイルス配列が当該技術分野の熟練者には公知の技術を使用してプラスミド内にクローニングされると、ウイルスゲノムは、ウイルスゲノムの第一の欠失領域内に位置する第一の可動カセットおよびウイルスゲノムの第二の欠失領域内に位置する第二の可動カセットを含むように改変される。場合により、プラスミドは複数の可動カセットを含むことができ、それぞれはウイルスゲノムの異なる座内に位置する。それぞれの可動カセットは、プ
ラスミドからのそれらの選択的除去および異種発現カセットの容易な挿入を許容する制限酵素部位の独特な組が側面に接する。
【0022】
本発明内に使用されるそれぞれの可動カセットは、宿主細胞内でのそれらの発現を指令する配列に作動可能に連結する検出可能なレポーター遺伝子の核酸配列を含む。好適には、それぞれの可動カセットは、プラスミドバックボーンにより担持される他の可動カセットにより担持されるレポーター遺伝子から容易に区別できる独特のレポーターを含む。一つの態様では、レポーター遺伝子は相互に色により見分けができる産物を発現する。
【0023】
適合するレポーター遺伝子は、本発明の多価プラスミドバックボーンにより担持される他のレポーター遺伝子から区別できるコード化産物を含む。例えば、蛍光タンパク質は、適切な光の波長を用いる励起により色による識別が可能であり、例えば赤色蛍光タンパク質、緑色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、シアン色蛍光タンパク質、黄色−緑色蛍光タンパク質を含む。選択された宿主細胞タイプに対する使用に適する蛍光タンパク質は、例えばClonTechから商業的に入手可能である。色により識別が可能なさらに別の好適なレポーター遺伝子は、例えばgusA(青色)、DsRed(赤色)、ルシフェラーゼ(赤色)およびβ−ガラクトシダーゼを含む。あるいは、当該技術分野の熟練者は、タグまたは標識を付けて提供される他のレポーター遺伝子を提供でき、その多数は当該技術分野の熟練者には公知である。
【0024】
適切なレポーター遺伝子は、クローニングに使用される宿主細胞を観察して選択してもよい。宿主細胞自体は原核(例えば細菌性)細胞、および昆虫細胞、酵母細胞および哺乳動物細胞を含む真核細胞性を含むどの生物学的生物体から選択してもよく、以下にさらに詳細に記述する。
【0025】
一つの特に望ましい態様の特定の態様では、原核生物系が使用される。さらに宿主細胞はDNAのトランスフェクション、トランスフェクションされたDNAの発現、および所望の様式、例えば比色測定法で選択されたレポーター遺伝子を発現することが可能である。
【0026】
適切な原核生物システムの例は周知であり、細菌細胞を含んでなる。例えば、適切な細菌株は、例えば、大腸菌(Escherichia coli)C600−F−,e14,mcrA,thr−1 supE44,thi−1,leuB6,lacY1,tonA21,〔〔Lambda〕〕〔−〕〔Huynh,Young,and Davis(1985)DNA Cloning,第1巻,1,56−110〕;DH1−F〔−〕,recA1,endA1,gyrA96,thi−1,hsdR17(rk〔−〕,mk〔+〕,supE44,relA1,〔〔Lambda〕〕〔−〕〔−Hanahan(1983)J,Mol,Biol,166,557−580;XL1Blue−MRF’−D(mcrA)182,D(mcrCB−hsdSMR−mrr)172,endA1,supE44,thi−1,recA,gyrA96,relA1,lac,l−,〔F’proAB,lacI〔q〕ZDM15,Tn10(tet〔r〕)〕;SURE Cells〔Stratagene〕;e14(mcrA),D(mcrCB−hsdSMR−mrr)171,sbcC,recB,recJ,umuC::Tn5(kan〔r〕),uvrC,supE44,lac,gyrA96,relA1,thi−1,end A1〔F’proAB,lacI〔q〕DM15,Tn10(tet〔r〕)〕;GM272−F〔−〕,hsdR544(rk〔−〕,mk〔−〕),supE44,supF58,lacY1または、〔〔Delta〕〕lacIZY5,galK2,galT22,metBlm,trpR55,〔〔lambda〕〕〔−〕;HB101−F〔−〕,hsdS20(rb〔−〕,mb〔−〕),supE44,ara14,galK2,lacY1,proA2,rspL20(str〔R〕),xyl−5,mtl−
1,〔〔lambda〕〕〔−〕,recA13,mcrA〔+〕,mcr〔−〕〔Raleigh and Wilson(1986)Proc,Natl,Acad,Sci,USA 83,9070−9074〕;JM101−supE,thi,〔〔Delta〕〕(lac−proAB),〔F’,traD36,proAB,lacIqZ〔〔Delta〕〕M15〕,制限:(rk〔+〕,mk〔+〕),mcrA
+〔Yanisch−Perron et al,,(1985)Gene 33,103−119〕;XL−1 blue recA1,endA1,gyrA96,thi,hsdR17(rk〔+〕,mk〔+〕),supE44,relA1,〔〔lambda〕〕〔−〕,lac,〔F’,proAB,lacIqZ〔〔Delta〕〕M15,Tn10(tet〔R〕)〕〔−Bullock,et al,(1987)BioTechniques 5,376−379〕;GM2929〔B,Bachman,Yale E,coli Genetic Stock Center(CSGS#7080)より〕;M,Martins株;sexF〔−〕;(ara−14,leuB6,fhuA13,lacY1,tsx−78,supE44,〔glnV44〕,galK2,galT22,l〔−〕,mcrA,dcm−6,hisG4,〔Oc〕,rfbD1,rpsL136,dam−13::Tn9,xyl−5,mtl−1,recF143,thi−1,mcrB,hsdR2,);MC1000−(araD139,D〔ara−leu〕7679,galU,galK,D〔lac〕174,rpsL,thi−1);ED8767(F−,e14−〔mcrA〕,supE44,supF58,hsdS3〔rB〔−〕mB〔−〕〕,recA56,galK2,galT22,metB1,lac−3またはlac3Y1を含んでもよい。適合する真核宿主細胞は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Cultute Collection,Manassas,VA,US)、その他の公的細胞寄託機関、および各種の学問的および商業的由来で入手できる。適合するクローニングシステムまたは細胞の選択は本発明を限定しない。
【0027】
本発明の構築物内に使用されるそれぞれの可動カセットは、レア(rare)制限酵素部位の独特の組が側面に接している。レア制限酵素部位のそれぞれの組は、可動カセットの5’末端で第一のレア制限酵素部位および可動カセットの3’末端で第二のレア制限酵素部位を提供する。一つの態様では、レア制限酵素部位の組は、座内への発現カセットの方向指定クローニングを許容する。しかし、本発明は挿入の方向に限定はされない。換言すると、可動カセットおよび/または異種発現カセットは、周囲のウイルスゲノムのリーディングフレームの方向に関して5’から3’または3’から5’のいずれに位置してもよい。さらに、ある態様では、レア制限酵素部位の組は、選択された座内への発現カセットの非方向指定クローニングを許容してもよい。
【0028】
一つの例で、レア制限酵素I−SceIは、単一の組を構成する5’および3’レア制限酵素部位の双方に対して選択されてもよい。この酵素は、カセットの両端に隣接した場合でも、方向指定クローニングを許容する。他の態様で、I−SceIは、制限酵素部位の組を形成するために別のレア制限酵素と組み合わせて使用されてもよい、好適には、レア制限酵素のそれぞれの組は独特であり、単一座のみの消化および選択された標的部位内への異種発現カセットの容易な挿入を許容する。
【0029】
別の態様で、レア制限酵素はウイルスゲノム内の選択した位置のみで切断されるように選択され、すなわち、切断は可動カセットおよび/または異種発現カセットの5’および3’末端のみで達成され、そしてウイルスゲノムを担持する遺伝因子もウイルスゲノ内の他の場所でも切断はされない。
【0030】
本適用において、かかる制限酵素は、レア・カッター(rare cutter)と呼ばれる。かかるレア・カッターの例は、7個、8個、またはそれを越える塩基数の認識部
位を有するものを含み、例えばI−Ceu I、PI−Sce I、TevII、BmoI、DmoI、FseI、PacI、PmeI、PsrI、BcgI、BglI、BsabI、BstXI、DrdI、EcoNI、FseI、MaM I、Msl I、Mwo
I、Psha I、Sfi I、Swa I、Xcm IおよびXmn Iなどを含む。好適なレア・カッターは、文献中および各種のオンライン・データベース、例えばREBASE
TMデータベース内で当該技術分野の熟練者に容易に利用でき情報を用いて同定されてもよい。本方法の好適なカッターは、種々の計算機プログラムおよび/またはオンラインデータベースを用いて容易に決定できる。好適な制限酵素は、各種の商業的出所、例えばなかでもEngland Biolabs、Obiogene、Lift Technology、Roche、BB Clontech、Stratagene、Amersham Pharmaciaから利用できる。
【0031】
従って、本発明の多価プラスミドは、少なくとも2個の可動カセットを含み、そのそれぞれは、異種発現カセットを用いる可動カセットの選択的置換を許容するレア制限酵素の独特の組が側面に接している。それらの多価プラスミドは、可動カセットにより担持される標識の発現を許容する宿主細胞内へトランスフェクションされる。
【0032】
B.異種発現カセットを担持する多価トランスファーベクター
適切な消化酵素が選択されると、従来の消化および再結合技術が利用される。典型的には、プラスミドDNAを制限酵素と混合しそして約12〜約48時間インキュベーションする。その後、従来のフェノール/クロロホルム抽出工程が行われる。例えば、フェノール/クロロホルム抽出が利用されてもよく、次いで本方法の工程の残りに使用するためにエタノールを用いる沈降、および沈降物の溶解が続く(例えばTEまたはその他の適切な緩衝液中)。例えばSambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、5.28−5.32,Appendix E.3−E.4(Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,New York,1989)を参照されたい。その他の適合する方法は、使用する制限酵素の製造者または販売者により提供されるかまたは当該技術分野の熟練者には公知である。
【0033】
典型的には、異種発現カセットの適切な挿入を確実にするために、異種発現カセットは制限酵素制限部位を有する5’および3’末端に隣接しており、それは発現カセットが挿入される部位のための可動カセットを近接する制限酵素部位の組に相補的である。
【0034】
従って、典型的には、第一異種発現カセットは、切除された可動カセットの部位内にクローニングされる。有利には、本発明の方法は、第一の異種発現カセットを含むプラスミドの迅速な同定を可能とさせる。かかるプラスミドは第一の標識遺伝子の発現を欠失するが、しかし第二の標識遺伝子産物(ならびに存在するいずれかのその他の標識遺伝子産物)を発現しているであろう。換言すると、もし第一の可動カセットが緑色蛍光タンパク質を発現すると、消化および再結合の後に緑色が存在しないことは、第一の標識遺伝子の部位内への可動カセットの除去が成功したことを示す。
【0035】
一つの態様では、消化および再連結工程は、それぞれの可動カセットについて順次反復される。換言すると、第一の消化工程は単一の可動カセットを除去するために制限酵素の第一の組を用いて行われ、それは異種発現カセットが所望の座内に挿入されたことを確認するためである。その後、第二の消化工程が、第二の可動カセットに近接する組に独特な制限酵素の第二の組を用いて行われる。第二の可動カセットに近接する組に相当する制限酵素部位により近接された第二の異種発現カセットがプラスミドバックボーン内に連結され、そして第二の標識遺伝子の発現を欠失するクローンが選択される。場合により、1個もしくはそれ以上のさらなる可動カセットを除去するために、一回またはそれ以上の追加
の消化工程が行われる。
【0036】
従って、本発明の方法は、感染性ウイルス粒子の産生のために有用な多価トランスファーベクターの効果的な産生を許容する。
【0037】
II.多価ウイルスベクターの産生方法
本発明の多価トランスファーベクターは、当該技術分野の熟練者には公知の方法を用いて、キャプシドまたはエンベロープを有するウイルス粒子を生成するために使用できる。かかる技術は、cDNAの従来のクローニング技術、例えば教科書〔Sambrook
et al,上記に引用〕中に記載の方法を含み、アデノウイルスゲノムの重複オリゴヌクレオチド、ポリメラーゼ連鎖反応、および所望のヌクレオチド配列をもたらすいずれかの適切な方法の使用である。標準的なトランスフェクションおよび同時−トランスフェクション技術、例えばCaPO
4沈降技術が利用される。使用されるその他の従来の方法は、ウイルスゲノムの相同的組換え、アガー上層内のウイルスのプラク形成、シグナル生成測定方法などを含む。
【0038】
適合する産生細胞株は、当該技術分野の熟練者により容易に選択される。例えば、適合する宿主細胞は、原核(例えば細菌)細胞および昆虫細胞、酵母細胞および哺乳動物細胞を含む真核細胞を含むいずれかの生物学的生物体から選択できる。宿主細胞は、例えばA549、WEHI、3T3、10T1/2、HEK293細胞またはPERC6(これら双方は機能性アデノウイルスE1を発現する)〔Fallaux,FJ et al.,(1998),Hum.Gene Ther.9:1909−1917〕、Saos、C2C12、L細胞、HT1080、HepG2およびヒト、サル、マウス、ラット、ラビットあよびハムスターを含む哺乳動物から誘導された初期繊維芽細胞、肝細胞および筋芽細胞を含み、それらに限定はされないいずれかの哺乳動物種中から選択できる。細胞を提供する哺乳動物種の選択は本発明を制限せず、哺乳動物細胞の種類、例えば繊維芽細胞、肝細胞、腫瘍細胞なども限定ではない。
【0039】
一般的に、トランスフェクションにより宿主細胞へ異種発現カセットを含んでなる多価トランスファーベクターが送達された場合に、バックボーンは、約5μg〜約100μgDNA、または約10〜約50μgDNA、1x10
4細胞まで、1x10
13細胞まで、または1x10
5細胞の量で送達される。しかし、宿主細胞に対するプラスミドDNAの相対量は、例えば選択されたベクター、送達方法および選択された宿主細胞などの要因を考慮に入れて調節してもよい。
【0040】
典型的には、多価トランスファーベクターは、キャプシドタンパク質および/またはエンベロープタンパク質を発現する宿主細胞内で培養される。宿主細胞内で、異種発現カセットを発現する多価ウイルスゲノムは、レスキューされてキャプシドタンパク質またはエンベロープタンパク質内にパッケージングされて感染性ウイルス粒子を形成する。
【0041】
A.キャプシドタンパク質を有するウイルスベクター
一つの態様では、本発明は、感染性ウイルスキャプシド内へ多価ウイルスゲノムをパッケージングする方法を提供する。
【0042】
一つの態様では、ウイルスキャプシドはアデノウイルスから誘導される。本発明のアデノウイルス粒子またはベクターは、2個またはそれ以上の異種発現カセットを含む多価ウイルスゲノムをその中にパッケージングしている感染性アデノウイルスタンパク質キャプシドから成り、それらカセットそれぞれは宿主内で発現される産物を担持する。さらなる態様ではそれらのアデノウイルスベクターは複製能欠損であり、それにより宿主内での複製を避ける。
【0043】
ベクター内に存在するアデノウイルス配列の血清型の選択は、本発明を限定しない。種々のアデノウイルス株がアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションから入手でき、または種々の商業的および関連機関由来で要求に応じて利用できる。さらに、多数のかかる株の配列は、例えばPubMed
TMおよびGenBank
TMを含む各種のデータベースから入手できる。他のサルまたはヒトアデノウイルスから調製された同種アデノウイルスベクターは、公開文献中に記載されている〔例えば、米国特許第5,240,846号明細書参照〕。多数のアデノウイルスタイプのDNA配列はGenBankから利用でき、それにはタイプAd5〔GenBank
TM、アクセッション番号M73260〕が含まれる。アデノウイルス配列は、公知のいかなるアデノウイルス血清型、例えば血清型2、3、4、7、12および40から得られ、そして現在同定されたヒトタイプのいずれもさらに含まれる。同様に、ヒト以外の動物(例えばサル)に感染するとして知られるアデノウイルスを本発明のベクター構築物内に使用してもよい。一つの態様では、本発明中に使用される少なくとも1種のアデノウイルスは、ヒト以外の霊長類から誘導される。適切なヒト以外の霊長類の例には、例えばPan5(C5も)、Pan6(C6も)、Pan7(C7も)、Pan9(C68も)およびC1のようなサルアデノウイルスが含まれる。組換えアデノウイルスは、宿主細胞への分子の送達のために記載されている。2種のチンパンジーアデノウイルス、C1およびC68(Pan9とも呼ばれる)から誘導されたアデノウイルスベクターを提供する米国特許第6,083,716号明細書および国際特許公開番号WO02/33645号明細書〔Pan5、Pan6、Pan7誘導ベクター〕参照のこと。しかし、本発明はそれらに限定はされない。
【0044】
アデノウイルス粒子の種々の産生方法が当該技術分野の熟練者に公知である。適切な産生方法の選択は、本発明の制限ではない。例えば、米国特許第6,083,716号明細書、国際特許公開番号WO02/33645号明細書および米国特許出願番号10/465,302号明細書およびその対応する国際出願WO2005/001103号明細書参照。
【0045】
要約すると、重要ないずれかのアデノウイルス遺伝子産物(例えばE1a、E1b、E2a、E2b、および/またはE4 ORF6)の機能性バージョンを発現する能力を欠失する本発明の多価アデノウイルストランスファーベクターは、アデノウイルス粒子のウイルス感染性および繁殖性のために要求される欠損アデノウイルス遺伝子産物の存在下で培養できる。それらのヘルパー機能は、1種もしくはそれ以上のヘルパー構築物(例えばプラスミドもしくはウイルス)またはパッケージング宿主細胞の存在下でバックボーンを培養して提供されてもよい。例えば、1996年5月9日付で公開された国際特許公開番号WO96/13597号明細書中の「最小」ヒトアデノウイルス(Ad)ベクターの調製に関して記載された技術参照。
【0046】
1.ヘルパーウイルス
従って、発現カセットを担持するために使用される多価トランスファーベクターのアデノウイルス遺伝子含有量に応じて、ヘルパーアデノウイルスまたは非反復ウイルスフラグメントが、発現カセットを含む感染性組換えウイルス粒子を産生するために必要な十分なアデノウイルスベクター遺伝子配列をもたらすために必要であろう。有用なヘルパーウイルスは、アデノウイルス構築物中に存在しないおよび/またはベクターがトランスフェクションされるパッケージング細胞株により発現しない選択されたアデノウイルス遺伝子配列を含む。一つの態様では、ヘルパーウイルスは複製能欠損でありそして上記の配列に加えて種々のアデノウイルスウイルス遺伝子を含む。かかるヘルパーウイルスは、E1発現細胞株と組み合わせて使用されることが望ましい。
【0047】
ヘルパーウイルスは、Wu et al,J.Biol.Chem,264:1698
5−16987(1989);K.J.Fisher and J.M.Wilson,Biochem.J.,299:49(1994年4月1日)に記載のようなポリカチオン接合体内に形成されてもよい。ヘルパーウイルスは、場合により第二レポーター発現カセットを含んでもよい。多数のかかるヘルパーウイルスが当該技術分野では公知である。アデノウイルスベクター上の遺伝子産物とは異なるヘルパーウイルス上のレポーター遺伝子の存在は、Adバックボーンベクターおよびヘルパーウイルスの両者を独立して監視することを可能とする。この第二リポーターは精製後に得られる組換えウイルスとヘルパーウイルスの間の分離を可能とするために使用される。
【0048】
2.相補性細胞株
上記のいずれかの遺伝子を欠失された組換えアデノウイルス(Ad)を生成するために、ウイルスの複製および感染性に必須の場合には、欠損された遺伝子領域の機能は、ヘルパーウイルスまたは細胞株、すなわち相補性またはパッケージング細胞株により組換えウイルスへ供給されなければならない。多くの場合に、ヒトE1を発現する細胞株は、チンパンジーAdベクターをトランスコンプリメント(transcomplement)するために使用できる。これは、本発明のチンパンジーAd配列と現在利用できるパッケージング細胞内に見られるヒトAdE1配列の間の多様性に起因して、現在のヒトE1含有細胞の使用が複製および産生プロセスの間の複製適格アデノウイルスの生成を防止するために、これは特に有利である。しかし、ある場合には、E1欠失サルアデノウイルスの産生のためにE1遺伝子産物を発現する細胞株の使用が望ましいであろう。かかる細胞株は記載されている。例えば米国特許第6,083,716号明細書参照。
【0049】
所望の場合には、選択された親細胞株内での発現のためのプロモーターの転写的制御下で少なくともアデノウイルスE1遺伝子を発現するパッケージング細胞または細胞株を生成するために本明細書中で提供される配列を使用してもよい。誘導可能または構成的プロモーターがこの目的のために使用されてもよい。かかるプロモーターの例は、本明細書の別の箇所に詳細に記載されている。いずれかの所望のAd遺伝子を発現する新規の細胞株の生成のために親細胞が選択される。限定ではなく、かかる親細胞株は、なかでもHeLa〔ATCCアクセッション番号CCL2〕、A549〔ATCCアクセッション番号CCL185〕、HEK293、KB〔CCL17〕、Detroit〔例えばDetroit510、CCL72〕およびWI−38〔CCL75〕であってもよい。それらの細胞株は、すべてアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection,10801 University
Boulevard,Manassas,Virginia 20110−2209)から入手できる。その他の適合する親細胞株は他の起源から入手されてもよい。
【0050】
かかるE1発現細胞株は、組換えアデノウイルスE1欠失ベクターの生成に有用である。追加的、または改変的に、本発明は、1種もしくはそれ以上のサルアデノウイルス遺伝子産物、例えばE1a、E1b、E2a、および/またはE4 ORF6を発現する細胞株を提供し、それらは組換えサルウイルスベクターの生成に使用されたと本質的に同様の手順を用いて構築できる。かかる細胞株は、それらの産物をコードする必須遺伝子中で欠失されたトランスコンプリメントアデノウイルスベクターに利用できる。本発明による宿主細胞の調製は、選択されたDNA配列のアセンブリーのような技術を含む。このアセンブリーは、従来の技術を使用して達成されるであろう。かかる技術は、所望のヌクレオチド配列をもたらすポリメラーゼ連鎖反応、合成方法、およびいずれかのその他の適合する方法と組合せたアデノウイルスゲノムの重複オリゴヌクレオチドを使用するcDNAおよびゲノムクローニングを含み、それらは周知でありそして上記のSambrook et
al.中に記載されている。
【0051】
さらに別の代替方法では、必須アデノウイルス遺伝子産物は、ベクターおよび/または
ヘルパーウイルスによりトランス的にもたらされる。かかる場合に、適合する宿主細胞は、原核(例えば細菌)細胞および昆虫細胞、酵母細胞および哺乳動物細胞を含む真核細胞を含むいずれかの生物学的生物体から選択できる。適合する宿主細胞は当該技術分野では公知でありそして本明細書中に同定されるものを含む。
【0052】
3.ウイルス粒子のアセンブリーおよび細胞株のトランスフェクション
1個もしくはそれ以上の欠損アデノウイルス遺伝子は、宿主細胞のゲノム内に安定に組み込まれるか、エピソームとして安定に発現されるか、または一時的に発現されてもよい。遺伝子産物は、一時的、エピソーム上または安定に組込まれてすべて発現されてもよいか、または一部の遺伝子産物が安定に発現され他のものが一時的に発現されてもよい。
【0053】
さらに、それぞれのアデノウイルス遺伝子のプロモーターが、構成的プロモーター、誘導可能プロモーターまたは本来のアデノウイルスプロモーターから独立して選択されてもよい。プロモーターは、例えば生物体または細胞の特定の生理学的状態により(すなわち分化状態により、または複製もしくは静止細胞中で)または外因的に付加された因子により調節されてもよい。宿主細胞内への分子(プラスミドまたはウイルスとして)の導入は、当該技術分野の熟練者に公知の技術を用いそして本明細書中で考察したようにして達成されてもよい。一つの態様では、直接クローニング技術が利用される。かかる技術は記載されている〔G.Gao et al.Gene Ther.2003 Oct;10(22):1926−1930;米国特許公開番号2003−0092161−A、2003年5月15日;国際特許出願番号PCT/US03/12405号〕。別の態様では、標準トランスフェクション技術、例えばCaPO
4トランスフェクションまたは電気穿孔法が使用される。各種中間体プラスミド内へのアデノウイルスの選択されたDNA配列(ならびに産物およびその他のベクター要素をコードする配列)のアセンブリー、および組換えウイルス粒子を産生するプラスミドおよびベクターの使用は、従来の技術を用いてすべて達成される。例えば、所望の多価ウイルスベクターの構築およびアセンブリーに続いて、ベクターをヘルパーウイルスの存在下でパッケージング細胞株中へ実験室内でトランスフェクションする。相同組換えがヘルパーとベクター配列との間で起き、それはベクター内でのアデノウイルス遺伝子配列の複製およびビリオンキャプシド内へのパッケージングを許容して組換えウイルスベクター粒子をもたらす。かかるウイルス粒子を産生する現在の方法は、トランスフェクションに基づくものである。しかし、本発明はかかる方法に限定はされない。
【0054】
得られた組換えアデノウイルスは、選択された細胞へ2個もしくはそれ以上の異種発現カセットを移動するために有用である。
【0055】
B.エンベロープタンパク質を有するウイルスベクター
別の態様では、本発明のトランスファーベクターはエンベロープタンパク質を有するウイルス、例えばレンチウイルスまたはポックスウイルスの感染性粒子内にウイルスベクターをパッケージングするために使用される。適切なレンチウイルスの例は、例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヤギ関節炎および脳炎ウイルス、ウマ感染性貧血ウイルス、牛免疫不全ウイルス、ビスナウイルス、およびネコ免疫不全ウイルス(FIV)を含む。本明細書中で提示する実施例は、HIVおよびFIVから誘導されるミニ遺伝子の使用を例示する。しかし、ヒトまたはヒト以外由来の他のレンチウイルスを使用してもよい。本発明の構築物内に使用される配列は、学問的、非営利的(例えばアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、Manassas,Virginia)またはレンチウイルスの商業的出所からもたらされてもよい。かかるウイルスベクターを精製する方法は、当該技術分野の熟練者には公知である。
【0056】
レンチウイルスベクターを産生する方法は記載されている。例えば、自己不活性化レン
チウイルスベクターを用いるレンチウイルスシステムに基づくHIV−1の産生が記載されている。例えば自己複合体活性化レンチウイルスベクターを用いるHIVに基づくレンチウイルスシステムの産生を記載したJE Coleman,et al.,Physiol Genomics.2003年2月6日;12(3):221−8を参照のこと。一つの例では、レンチウイルスベクターは、細胞株が3種の別々のプラスミド発現系を用いてトランスフェクションされた一時的トランスフェクション系内で創成される。それらには、本発明により産生されそして選択されたレンチウイルスプロウイルスおよび異種発現カセットの部分を含むトランスファーベクタープラスミド、パッケージングプラスミドまたは構築物、および同一レンチウイルスまたは異なるウイルスのエンベロープタンパク質であってもよいレンチウイルスエンベロープ遺伝子(ENV)を有するプラスミドを含む〔Amado and Chen、「レンチウイルスベクター−遺伝子治療の約束が手の届く範囲に」Science.285(5428):674−76(1999)。ベクターの3種のプラスミド成分をパッケージング細胞内に入れ、それらは次にレンチウイルスシェル内に挿入する。
【0057】
一つの態様では、トランスファーベクタープラスミドは、細胞を感染するためのベクターおよび治療的(またはレポーター)遺伝子の移動に必要なシス作用性遺伝子配列を含みそして所望の遺伝子を挿入するための制限部位を含む。3’および5’LTR、当初のエンベロープタンパク質、およびgag配列プロモーターが取り除かれる。パッケージングプラスミドは、ベクターのために必要な因子、例えば構造タンパク質、HIV遺伝子(T細胞の感染をコードする遺伝子envを除き、またはベクターはそれらの細胞の感染のみが可能である)、およびベクター粒子を生成する酵素を含む。典型的には、パッケージングシグナルおよびそれらの隣接するシグナルが、ウイルスDNAをパッケージングするために役立つ部分がそれらを活性化する部分から分離されているように分離される。従って、パッケージング配列はウイルスゲノム内に組み込まれずそしてウイルスはそれが宿主細胞に感染した後に再産生しない。
【0058】
異なるウイルスの第三プラスミドのエンベロープ遺伝子は、T細胞の代わりに標的となりそして感染する細胞のタイプ、例えばなかでもVSVおよびMLVとして知られる水疱性口内炎ウイルスの糖タンパク質を指定する。通常、HIVはヘルパーT細胞のみを感染できるが、それはそれらのgp120タンパク質がCD4受容体に結合するために使用されるからである。しかし、CD4受容体結合タンパク質を、遺伝子治療が行われる異なる細胞タイプをコードする別のタンパク質で遺伝子的に交換することも可能である。これはレンチウイルスベクターに標的細胞の広範な可能性を与える。その他のレンチウイルス産生方法およびベクター因子は、国際特許公開番号WO03/092582号明細書(引用することにより編入される)中に記載されている。
【0059】
さらに別のエンベロープされたウイルスベクターが本発明の多価ウイルスバックボーン法を用いて産生できる。例えば「ベクターとしてポックスウイルスの使用」、Current Gene Therapy、第3巻、第6号、583−585ページ(2003年12月);M.E.Perkus,et al.「ガン、AIDS、およびその他の感染性疾患のためのポックスウイルスに基づくワクチン候補」,Journal of Leukocyte Biology,第58巻、第1号1−13(1995)参照。
【0060】
III.多価ウイルスベクターの使用
本発明の多価ウイルスベクターは、生理学的に適切な担体を含む組成物中に配合される。それらの組成物は各種の治療および免疫化方式として有用である。有利には、多価ウイルスベクターからの複数遺伝子産物の発現は、所望の生物学的効果を達成するために対象者に送達するために必要なベクターまたは他の薬剤の量を減少するであろう。
【0061】
一つの態様では、本発明の多価ウイルスベクターは治療産物を担持する異種発現カセットを含む。かかる多価ウイルスベクターは、さらに1種もしくはそれ以上の治療産物を担持できる。追加の治療産物は、第一治療産物に、または異なる指示と関連する同様の条件または症候を処置するために指定できる。所望の場合には、選択された治療遺伝子産物が多価ウイルスベクターへのなんらかの反応を調節するために送達できる。
【0062】
別の態様では、本発明の多価ウイルスベクターは、標的に体液性および/または細胞毒性免疫反応を誘導する産物を担持する異種発現カセットを含む。かかる多価ウイルスベクターは、1個もしくはそれ以上の追加のかかる免疫原性産物をさらに担持できる。この第二の産物は標的または交差反応を起こし得る標的に免疫反応を誘導するために向けることができる。さらに別の態様では、第二の産物は、原因となる条件と関連する病状を処置するようにされた治療産物であることが設計できる。さらに別の態様では、多価ウイルスベクターにより送達される別の遺伝子産物のためのアジュバントであることができる。さらに別の態様では、第二の産物は多価ウイルスベクターへのなんらかの反応を調節するために送達される治療産物である。
【0063】
本明細書中で使用される場合に、免疫モジュレーターは、免疫系の反応を変更する産物、例えばウイルスベクターを含む。免疫モジュレーターの例は、例えばサイトカインおよびインターロイキンである。
【0064】
本明細書中で使用される場合に、適合する免疫調節性化合物は、例えばCTLA4免疫グロブリン;抗CD4抗体;FK506;およびIL1〜21のいずれか、例えばIL−2、IL−3、IL−4、IL−10、IL−12、およびL−18を含むインターロイキン(IL)を含むことができる。例えば、IL−10は局所抗炎症反応をダウンレギュレートする際に有用であろう。Fasリガンドはアデノウイルス媒介T細胞反応をダウンレギュレートする際に有用であろう。
【0065】
本発明の多価ウイルスベクター内、1個もしくはそれ以上の本発明の多価ウイルスベクターを含むカクテル内、または1個もしくはそれ以上の本発明の多価ウイルスベクターの送達を含む治療方式内で到達されるべき産物のさらに別の適合する組合せは、本明細書から当該技術分野の熟練者には明らかであろう。
【0066】
A.治療分子の多価ウイルスベクター媒介送達
一つの態様では、多価ベクターは遺伝子治療の公開された方法に従ってヒトに投薬される。複数の異種発現制御カセットを担持するウイルス多価ベクターは、好ましくは生物学的に適合する溶液または製薬学的に許容できる送達ベヒクル内に懸濁して患者に投薬されてもよい。適切なベヒクルは滅菌食塩水を含む。製薬学的に許容できる担体として公知でありそして当該技術分野の熟練者には周知のその他の水性および非水性等張性滅菌注入溶液および水性および非水性滅菌懸濁液が、この目的に使用されてもよい。
【0067】
多価ベクターは、不当な不利益がないかまたは薬剤的に受容できる生理学的効果をもって治療的利益を提供するために、標的細胞を形質変換しそして遺伝子導入および発現の十分なレベルを提供するために十分な量で投薬され、それは医学の専門家により決定できる。従来からそして製薬学的に許容できる投薬経路は、網膜への直接送達およびその他の眼内送達方法、肝臓への直接送達、吸入、鼻内、静脈内、筋肉内、気管内、皮下、皮内、直腸、経口およびその他の投薬の非経口経路を含み、それらに限定はされない。投与経路は、遺伝子産物または条件に依存して、組合せまたは所望の場合には調整されてもよい。投薬の経路は、一次的には処置される条件の性質に依存する。
【0068】
ウイルスベクターの投与量は、例えば患者の処置される状態、年齢、体重および健康の
ような因子に主として依存し、従って患者間で変化する。例えば、ウイルスベクターの治療的に有効な成人または獣医的投与量は、一般に約1x10
6〜約1x10
15粒子、約1x10
11〜約1x10
13粒子、または約1x10
9〜約1x10
12ウイルス粒子の濃度を含む担体の約100μl〜約100mLの範囲内である。投与量は動物の大きさおよび投薬の経路に依存して調整される。例えば、筋肉内注入のために適合するヒトまたは獣医的投与量(動物約80kgに対して)は、一部位に対してmLあたりに約1x10
9〜約5x10
12粒子の範囲内である。場合により、複数の投薬部位で送達してもよい。別の例では、適当なヒトまたは獣医的投与量は、経口製剤に対して約1x10
11〜約1x10
15粒子の範囲内であってもよい。当該技術分野の熟練者は、投薬経路、および組換えベクターが使用される治療またはワクチン適用に依存してそれらの投与量を調整してもよい。治療産物、または免疫原の発現のレベル、循環抗体のレベルは、投与される投薬の頻度を決定するために測定できる。投薬の時期および頻度を決定するためのさらに別の方法は、当該技術分野の熟練者には直ちに明らかであろう。
【0069】
一つの態様では、多価ウイルスベクターは、治療産物をコードする異種発現カセットおよび免疫モジュレーターをコードする異種発現カセットを含む。選択された免疫モジュレーターは、本発明の組換えベクターに向けられた中和抗体の形成を阻害できるかまたはベクターの細胞溶解性Tリンパ球(CTL)排除を阻害できる薬剤として本明細書内では定義される。免疫モジュレーターは、Tヘルパーサブセット(T
H1またはT
H2)およびB細胞の間の相互作用と干渉して中和抗体形成を阻害するであろう。あるいは、免疫モジュレーターは、T
H1細胞とCTLとの間の相互作用を阻害してベクターのCTL排除の機会を低下させるであろう。これらの用途のために有用な各種の免疫モジュレーターおよび投与量は、例えば、Yang et al.,J.Virol.,70(9)(1996年9月);国際特許公開番号WO96/12406号明細書、1996年5月2日公開;および国際特許公開番号WO96/26285号明細書中に記載されている。
【0070】
1.治療産物
異種発現カセットによりコードされる有用な治療産物は、インスリン、グルカゴン、成長ホルモン(GH)、副甲状腺ホルモン(PTH)、成長ホルモン放出因子(GRF)、濾胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、ヒト絨毛腺刺激ホルモン(hCG)、血管内皮増殖因子(VEGF)、アンギオポエチン(angiopoietin)、アンギオスタチン(angiostatin)、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、エリスロポエチン(EPO)、結合組織増殖因子(CTGF)、塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性繊維芽細胞増殖因子(aFGF)、上皮増殖因子(EGF)、形質転換成長因子α(TGFα)、血小板由来増殖因子(PDGF)、インスリン増殖因子IおよびII(IGF−IおよびIGF−II)、TGF、アクチビン、インヒビン、または骨形態形成タンパク質(BMP)BMP1〜15のいずれかを含む形質転換成長因子スーパーファミリーのいずれか、成長因子のヘレグルイン(heregluin)/ニューレグリン(neuregulin)/ARIA/neu分化因子(NDF)ファミリーのいずれか、神経成長因子(NGF)、脳由来神経向性因子(BDNF)、神経栄養因子NT−3およびNT−4/5、毛様体神経栄養因子(CNTF)、膠細胞系統由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン(neurturin)、アグリン、セマフォリン(semaphorin)/コラプシン(collapsin)のファミリーのいずれか、ネトリン(netrin)−1およびネトリン−2、肝細胞増殖因子(HGF)、エフリン(ephrin)、ノジン(noggin)、ソニックヘッジホッグおよびチロシン加水分解酵素を限定ではなく含むホルモンおよび増殖および分化因子を含む。
【0071】
その他の有用な遺伝子産物は、サイトカインおよびリンホカイン、例えばトロンボポエチン(TPO)、インターロイキン(IL)IL−1〜IL−25(例えばIL−2、IL−4、IL−12およびL−18を含む)、単球色誘引タンパク質、白血病阻害因子、
顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、Fasリガンド、腫瘍壊死因子および、インターフェロン、および、幹細胞因子、flk−2/flt3リガンドを限定ではなく含む免疫系を調節するタンパク質を含む。免疫系により産生される遺伝子産物も本発明に有用である。それらには、免疫グロブリンIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgE、キメラ免疫グロブリン、ヒト化抗体、一本鎖抗体、T細胞受容体、キメラT細胞受容体、一本鎖T細胞受容体、クラスIおよびクラスII MHC分子、ならびに操作された免疫グロブリンおよびMHC分子を限定ではなく含む。有用な遺伝子産物は、相補性調節タンパク質、例えば相補性調節タンパク質、膜共同因子タンパク質(MPC)、崩壊促進因子(DAF)、CR1,CR2およびCD59も含む。
【0072】
さらに別の有用な遺伝子産物は、ホルモン、増殖因子、サイトカイン、リンホカイン、調節タンパク質および免疫系タンパク質に対する受容体のいずれかを含む。本発明は、低密度リポプロテイン(LDL)受容体、高密度リポプロテイン(HDL)受容体、超低密度リポプロテイン(VLDL)受容体、およびスカベンジャー受容体を含むコレステロール調節のための受容体を包含する。本発明は、遺伝子産物、例えば糖コルチコイド受容体およびエストロゲン受容体を含むステロイドホルモン受容体スーパーファミリーのメンバー、ビタミンD受容体およびその他の核受容体も包含する。さらに、有用な遺伝子産物は、転写因子、例えばjun、fos、max、mad、血清反応因子(SRF)、AP−1、AP2、myb、MyoDおよびミオゲニン、ETS−box含有タンパク質、TFE3、E2F、ATF1、ATF2、ATF3、ATF4、ZF5、NFAT、CREB、HNF−4、C/EBP、SP1、CCAAT−box結合タンパク質、インターフェロン調節因子(IRF−1)、ウイルムス腫瘍タンパク質、ETS結合タンパク質、STAT、GATA−box結合タンパク質、例えばGATA−3、およびウイング付ラセンタンパク質のフォークヘッドファミリーも含む。
【0073】
その他の有用な遺伝子産物は、カルバモイルシンセターゼI、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギノスクシン酸シンターゼ、アルギノスクシン酸リアーゼ、アルギナーゼ、フマルアリールアセトアセテート加水分解酵素、フェニルアラニン加水分解酵素、アルファ−1アンチトリプシン、グルコース−6−ホスファターゼ、ポルフォビリノゲン・デアミナーゼ、第8因子、第9因子、シスタチオン・ベータ−シンターゼ、側鎖ケト酸デカルボキシラーゼ、アルブミン、イソバレリル−coA脱水素酵素、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ、メチルマロニルCoAムターゼ、グルタリルCoA脱水素酵素、インスリン、ベータ−グルコシダーゼ、ピリビン酸カルボキシラート、肝ホスホリラーゼ、ホスホリラーゼ・キナーゼ、グルシン・デカルボキシラーゼ、H−タンパク質、T−タンパク質、嚢胞性繊維症経膜レギュレーター(CTFR)配列およびジストロフィンcDNA配列を含む。
【0074】
その他の有用な遺伝子産物は、天然には存在しないポリペプチド、例えば天然に存在しないアミノ酸配列を含む挿入、欠失またはアミノ酸置換を有するキメラまたはハイブリッドポリペプチドを含む。例えば、一本鎖操作免疫グロブリンは、一定の免疫低下患者に有用であろう。天然に存在しないその他の遺伝子配列はアンチセンス分子および触媒性核酸、例えばリボザイムを含み、それらは標的の過剰発現を低下するために使用できるであろう。遺伝子の発現の低下および/または調節は、ガンおよび乾癬の場合と同様に、過剰増殖する細胞を特徴とする過剰増殖条件の処置のために特に望ましい。標的ポリペプチドは、正常な細胞と比較して過剰増殖細胞内で独占的または高レベルで産生されるポリペプチドを含む。標的抗原は腫瘍遺伝子、例えばmyb、myc、fyn、および転移遺伝子bcr/abl、ras、src,P53、neu、trkおよびEGRFによりコードされるポリペプチドを含む。標的抗原としての腫瘍遺伝子産物に加えて、抗ガン処置および防御的治療方式のための標的ポリペプチドは、いくつかの態様で、自己免疫疾患における標的抗原としても使用されるB細胞リンパ種により作られる抗体の可変領域およびT細胞
リンパ種のT細胞受容体の可変領域を含む。その他の腫瘍関連ポリペプチドは、例えばモノクローナル抗体17−1Aにより認識されるポリペプチドおよび葉酸結合ポリペプチドを含む腫瘍細胞内で高いレベルで見られるポリペプチドのような標的ポリペプチドとして使用できる。
【0075】
その他の適合する治療的ポリペプチドおよびタンパク質は、自己免疫疾患および自己指令抗体を産生する細胞受容体および細胞を含む自己免疫と関連する標的に対する広範な基礎保護免疫反応を与えることによる障害を患う個体を処置するために有用であるものを含む。T細胞媒介自己免疫疾患は、リウマチ性関節炎(RA)、多発性硬化症(MS)、シェーグレン症候群、サルコイドーシス、インスリン依存性糖尿病(IDDM)、自己免疫性甲状腺炎、反応性関節炎、強直性脊髄炎、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、乾癬、脈管炎、ウェーゲナー肉芽腫症、クローン病および潰瘍性大腸炎を含む。それらの疾患のそれぞれは、内因性抗原に結合しそして自己免疫疾患と関連する炎症カスケードを開始するT細胞受容体(TCR)を特徴とする。
【0076】
本発明の多価ウイルスベクターは、遺伝子産物の複数のウイルス媒介送達が望まれる治療方式、例えば同一産物の再送達を含む方式または他の遺伝子産物の送達を含む複合方式に特に良く適する。
【0077】
B.免疫原性遺伝子産物の多価ウイルス媒介送達
本発明の多価ウイルスベクターは免疫原性組成物として使用されてもよい。本明細書中に使用される場合に、免疫原性組成物とは、哺乳動物、そして好ましくは霊長類動物への送達に従う免疫原性組成物により送達される産物に体液性(例えば抗体)または細胞性(例えば細胞毒性T細胞)反応が乗せられた組成物である。本発明は、そのアデノウイルス配列のいずれかにおいて、所望の免疫原をコードする第一異種発現カセットの欠失を含むことができる多価ウイルスベクターを提供する。多価ウイルスベクターは、免疫原、追加の免疫原性産物、治療産物、または多価ウイルスベクターに対する免疫反応をダウンレギュレートする産物のためのアジュバントをコードする異種発現カセットをさらに含むことができる。
【0078】
多価ウイルスベクターが多価アデノウイルスベクターである場合には、人由来のアデノウイルスと比較して異なる動物種内において生の組換えウイルスワクチンとしての使用に適するが、しかしかかる使用に限定はされない。組換え多価ウイルスは、免疫反応の誘導のために重要でありそして病原の蔓延を制限できる抗原が同定されそしてそれに対してDNAが利用できるいずれの病原に対してでも予防的または治療的ワクチンとして使用できる。
【0079】
かかるワクチン(またはその他の免疫原性)組成物は、上記のように適合する送達ベヒクル内に配合される。一般に、免疫原性組成物の投与量は、治療用組成物に対して上記に定義した範囲内である。選択された遺伝子の免疫性のレベルは、もし利用できる場合には、ブースターの必要性を決定するために測定できる。血清内の抗体力価の評価に続いて、最適なブースター免疫化が望まれるであろう。
【0080】
場合により、本発明のワクチン組成物は、例えばアジュバント、安定剤、pH調整剤、保存剤などを含む他の成分を含んで配合されてもよい。かかる成分は、ワクチンの業界の熟練者には周知である。適切なアジュバントの例は、リポソーム、ミョウバン、モノホスホリル脂質A、およびいずれかの生物学的活性因子、例えばサイトカイン、インターロイキン、ケモカイン、リガンド、およびそれらの最適な組合せを限定ではなく含む。それらの生物学的活性因子のいくつかは、例えばプラスミドまたはウイルスベクターを介して生体内で発現できる。例えば、かかるアジュバントは、抗原のみをコードするDNAワクチ
ンを用いて初回抗原刺激した場合に発生する免疫反応と比較して、抗原をコードする初回刺激DNAワクチンを用いて投薬して抗原特異性免疫反応を促進できる。
【0081】
多価ウイルスベクターは、「免疫原性量」、すなわち、多価ウイルスベクターの量が所望の細胞をトランスフェクションするための投薬経路で効果的でありそして免疫反応を誘導するために十分なレベルの選択された遺伝子の発現もたらす量で投薬される。防御的免疫がもたらされる場合に、多価ウイルスベクターは、疾患感染および/または再発疾患を防止するために有用なワクチン組成物であると考えられる。
【0082】
代替としてまたは追加として、本発明のベクターは選択された免疫原に対して免疫反応を誘導するペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質をコードする遺伝子を含んでもよい。本発明の多価アデノウイルスベクターは、ベクターにより発現される挿入異種抗原タンパク質に対する細胞溶解性T細胞および抗体を誘導することに高度に有効と期待される。
【0083】
例えば、免疫原は各種のウイルスファミリーから選択されてもよい。それに対して免疫反応が望ましいウイルスファミリーの例は、通常の風邪の原因の約50%を占めるライノウイルス属を含むピコルナウイルス科、ポリオウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、およびヒト腸内ウイルス例えばA型肝炎ウイルスを含むエンテロウイルス属、主としてヒト以外の動物における足および口疾患の原因となるアフトウイルス属を含む。ウイルスのピコルナ科内で、標的抗原はVP1、VP2、VP3、VP4、およびVPGを含む。その他のウイルスファミリーは、流行性胃腸炎の重要な原因であるウイルスのノーウオークグループを包含するカルシウイルス科を含む。ヒトおよびヒト以外の動物内で免疫反応を誘導する標的抗原での使用が望ましいさらに別のウイルスファミリーは、シンドビスウイルス、ロスリバー(RossRiver)ウイルス、およびベネズエラ、イースタン&ウエスタンウマ脳炎を含むアルファウイルス属および風疹ウイルスを含むルビウイルス属を含むトガウイルス科である。フラビウイルス科は、デング熱、黄熱病、日本脳炎、セントルイス(St Louis)脳炎およびダニ媒介脳炎ウイルスを含む。その他の標的抗原は、C型肝炎〔例えば米国特許公開番号US2003/190606号明細書(2003年10月9日);US2002/081568号明細書(2002年6月27日)または多数の非ヒトウイルス、例えば感染性喘息ウイルス(家禽類)、ブタ伝染性胃腸炎ウイルス(ブタ)、ブタ赤血球凝集性脳脊髄炎ウイルス(ブタ)、ネコ感染性腹膜炎ウイルス(ネコ)、ネコ腸コロナウイルス(ネコ)、イヌコロナウイルス(イヌ)、および通常の風邪および/またはA、BおよびC型以外の肝炎を起こすヒト呼吸器コロナウイルス、および突然急性呼吸器症候群(SARS)の推定原因因子を含むコロナウイルス科から生成されてもよい。コロナウイルス科の範囲内で、標的抗原はE1(Mまたはマトリックスタンパク質とも呼ばれる)、E2(Sまたはスパイクタンパク質とも呼ばれる)、E3(HEまたはヘマグルチン−エルテロース(hemagglutin−elterose)とも呼ばれる)糖タンパク質(すべてのコロナウイルス内には存在しない)、またはN(ヌクレオキャプシド)を含む。さらに別の抗原は、ベシクロウイルス属(例えばインディアナ型水疱性口内炎ウイルス)およびリッサウイルス属(例えば狂犬病)を含むラブドウイルス科に対して標的とされてもよい。ラブドウイルス科内で、適切な抗原はGタンパク質またはNタンパク質から誘導されてもよい。出血熱ウイルス、例えばマールブルグおよびエボラウイルスを含むフィロウイルス科も抗原の適切な起源であろう。パラミクソウイルス科は1型パラインフルエンザウイルス、3型パラインフルエンザウイルス、3型ウシパラインフルエンザウイルス、ルブラウイルス(おたふくかぜウイルス)、2型パラインフルエンザウイルス、4型パラインフルエンザウイルス、ニューキャッスル病ウイルス(ニワトリ)、牛疫、麻疹およびネコジステンパーを含む麻疹ウイルス、および呼吸器合胞体ウイルスを含むニューモウイルスを含む。インフルエンザウイルスは、オルトミクソウイルス科内に分類されそして抗原(例えばHAタンパク質、N1タンパク質)の適合する起源である。ブニヤウイルス科は、ブニヤウイルス属(カリフォルニア脳炎、クロ
ス)、フレボウイルス(リフトヴァレー熱)、ハンタウイルス属(プレマラ(puremala)はヘマハジン(hemahagin)熱ウイルスである)、ナイロウイルス属(ナイロビヒツジ病)および種々の帰属されていないブニヤウイルス属を含む。アレナウイルス科は、LCMおよびラッサ熱ウイルスに対する抗原を提供する。レオウイルス科は、レオウイルス属、ロタウイルス属(これは小児に急性胃腸炎を起こす)、オルビウイルス属、およびクルチ(culti)ウイルス属(コロラドダニ熱ウイルス、レボンボ(Lebombo)(ヒト)、ウマ脳炎、ブルータング)を含む。
【0084】
レトロウイルス科は、ネコ白血病ウイルス、HTCLIおよびHTVLIIのようなヒトおよび獣医的疾患を包含するオンコリ(oncori)ウイルス亜科、レンチウイルス亜科(ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウマ感染性貧血症ウイルス、およびスプーマウイルスを含む。レンチウイルスの中で、多数の適合する抗原が記載されそして容易に選択できる。適合するHIVおよびSIV抗原の例は、gag、pol、Vif、Vpx、VPR、Env、Tat、Nef、およびRevタンパク質、ならびにそれらの種々のフラグメントを限定ではなく含む。例えばEnvタンパク質の適合するフラグメントは、gp120、gp160、gp41、またはそれらのより小さいフラグメント、例えば少なくともアミノ酸8個の長さのもののようないずれかのそのサブユニットを含んでもよい。同様に、tatタンパク質のフラグメントが選択されてもよい〔米国特許第5,891,994号明細書および米国特許第6,193,981号明細書参照〕。また、D.H.Barouch et
al,J.Virol.75(5):2462−2467(2001年3月)、およびR.R.Amara,et al.,Science,292:69−74(2001年4月)に記載のHIVおよびSIVタンパク質も参照のこと。別の例では、HIVおよび/またはSIV免疫原性タンパク質またはペプチドは、融合タンパク質またはその他の免疫原性分子を形成するために使用されてもよい。例えば、国際特許公開番号WO01/54719号明細書、2001年8月2日公開、および国際特許公開番号WO99/16884号明細書、1999年4月8日公開中に記載のHIV−1 Tatおよび/またはNefタンパク質および免疫化方式を参照のこと。本発明は、本明細書中に記載のHIVおよび/またはSIV免疫原性タンパク質またはペプチドに限定はされない。さらに、それらのタンパク質に対する種々の変性が記載されるかまたは当該技術分野の熟練者により容易に作製できる。例えば、米国特許第5,972,596号明細書に記載の変性gagタンパク質を参照のこと。さらに、いずれかの所望のHIVおよび/またはSIV免疫原は、単独又は組合せて送達されてもよい。かかる組合せは、単一ベクターからまたは複数ベクターからの発現を含んでもよい。
【0085】
場合により、別の組合せは1個もしくはそれ以上の発現された免疫原の送達とタンパク質形態での1個もしくはそれ以上の免疫原の送達を含んでもよい。かかる組合せは以下にさらに詳細に考察される。パポーバウイルス科は、ポリオーマウイルス亞科(BKUおよびJCUウイルス)およびパピローマウイルス亞科(乳頭腫のガンまたは悪性進行に関連する)を含む。例えばパピローマウイルス抗原およびそれらの組合せが記載されている。例えば米国特許出願公開番号2003/129199号明細書(2003年7月10日)、米国特許出願公開番号2002/18221号明細書(2002年12月15日)、米国特許第6,342,224号明細書参照。
【0086】
アデノウイルス科は呼吸器疾患および/または腸炎を起こすウイルス(EX、AD7、ARD、O.B.)を含む。パルボウイルス科は、ネコパルボウイルス(猫腸炎)、ネコ汎白血球減少症ウイルス、イヌパルボウイルス、およびブタパルボウイルスを含む。ヘルペスウイルス科は、シンプレックスウイルス属(HSVI、HSVII)、ワリセロ(varicello)ウイルス属(仮狂犬病、水胞性帯状疱疹ウイルス)を包含するアルファヘルペスウイルス亞科およびサイトメガロウイルス属(HCMV、ムロメガロウイルス
)を含むベータヘルペスウイルス亞科、およびリンホクリプトウイルス属、EBV(バーキットリンパ種)、感染性鼻気管炎、マレック病ウイルス、およびラジノウイルス(rhadinovirus)を含むガンマヘルベスウイルス亞科を含む。ポックスウイルス科は、オルトポックス属(痘瘡(天然痘)およびワクチニア(牛痘))、パラポックスウイルス属、アビポックスウイルス属、カプリポックスウイルス属、レポリポックスウイルス属、スイポックスウイルス属を包含するチョルドポックスウイルス亞科、およびエントモポックスウイルス亞科を含む。ヘパドナウイルス科は、B型肝炎ウイルスを含む。抗原の起源として適合するであろう一つの分類されていないウイルスは、デルタ型肝炎ウイルスである。さらの他のウイルス起源は、トリ感染性嚢性疾患ウイルスおよびブタ呼吸器および生殖器症候群ウイルスを含んでもよい。アルファウイルス科は、馬関節炎ウイルスおよび種々の脳炎ウイルスを含む。
【0087】
本発明は、ヒトまたはヒト以外の動物を、ヒトまたはヒト以外の脊椎動物に感染する細菌、真菌、寄生微生物または多細胞寄生体を含む他の病原に対して、またはガン細胞または腫瘍細胞由来を含む他の病原に対して免疫化するために有用な免疫原も包含する。細菌性病原の例は、肺炎双球菌、ブドウ球菌および連鎖球菌を含む病原性グラム陽性球菌を含む。病原性グラム陰性球菌は、髄膜炎菌、淋菌を含む。病原性腸内グラム陰性桿菌は、腸内菌科;シュードモナス、アシネト菌およびエイケネラ菌(Eikenella);類鼻疽菌;サルモネラ菌;赤痢菌;ヘモフィルス菌;モラクセラ菌;軟性下疳菌(H.ducreyi)(軟性下疳を起こす);ブルセラ菌;フラニセラ ツラレンシス(Franisella tularensis)(ツラレミア病を起こす);エルシニア菌(パスチュレラ(pasteurella);モニリホルム連鎖球菌(Streptobacilus moniliformis)およびスピリルム菌を含む。グラム陽性桿菌は、リステリア菌(listeria monocytogenes);豚丹毒菌(erysipelothrix rhusiopathiae);ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheria)(ジフテリア);コレラ菌;炭疽菌(B.anthracis)(炭疽);ドノヴァノシス(donovanosis)(鼠蹊肉芽腫);およびバルトネラ症菌を含む。病原性嫌気細菌により起きる疾患は、破傷風、ボツリヌス中毒、その他のクロストリジウム属細菌、結核、癩病、およびその他のマイコバクテリウム属の細菌を含む。病原性スピロヘータ疾患は、梅毒;トレポネーマ症;イチゴ腫、ピンタおよびその他の地方流行性梅毒;およびレプトスピラ症を含む。その他の高次病原性細菌および病原性真菌により起きる感染症は、アクチノミセス症、ノカルジア症、クリプトコックス症、ブストミセス症、ヒストプラズマ症およびコクシヂオイデス症;カンジダ症;アペルギルス症、およびムコール症;スポロトリウム症;パラコクシジオイデス症;ペトリエリジオシス(petriellidiosis);トルロプシス症、ミセトーマ(mycetoma)およびクロモミコーシス(chromomycosis);および皮膚糸状菌症を含む。リッケチア感染症は、発疹チフス、ロッキー山紅斑熱、Q熱、およびリッケチア痘を含む。マイコプラズマおよびクラミジア感染症の例は、マイコプラズマ肺炎、リンパ肉芽腫、オウム病、及び周生期クラミジア感染症を含む。病原性真核生物は、病原性原生生物および蠕虫を包含しそしてそれらにより起きる感染症は、アメーバ症、マラリア、レイシュマニア症、トリパノソーマ症、トキソプラズマ症、カリニ肺炎、トリカンズ(Trichans)、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)、バベシア病、ランブル鞭毛虫症、旋毛虫症、フィラリア症、住血吸虫症、線虫類、吸虫類またはフルーク、および条虫(サナダムシ)感染症を包含する。
【0088】
多数のそれらの生物体および/またはそれらにより産生される毒素は、生物攻撃に使用される可能性がある薬剤として、疾病管理センター〔(CDC)、米国保健および社会福祉省〕により同定されている。例えば、生物学的薬剤の一部の例には下記が含まれる:炭疽菌(Bacillus anthracis)(炭疽)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)およびその毒素(ボツリヌス症)、ペスト菌(Yer
sinia pestis)(ペスト)、大痘瘡(重篤痘瘡)、フランシセラ ツラレンシス(Francisera tularensis)(ツラレミ菌)、およびウイルス性出血熱〔フィロウイルス(例えばエボラ、マーブルグ)〕、およびアレナウイルス〔例えばラサ、マチュポ〕、これらのすべは現在カテゴリーA薬剤に分類されている;コクシエラ ブルネチ(Coxiella burnetti)(Q熱);ブルセラ種(ブルセラ症)、ブルコルデリア マレイ(Brukholderia mallei)(鼻疽)、ブルコルデリア シュドマレイ(Brukholderia pseudomallei)(メロイドーシス(meloidosis))、ヒマ(Ricinus communis)およびその毒素(リシン毒素)、ウエルシュ菌(Clostridium perfringens)およびその毒素(イプシロン毒素)、ブドウ球菌(Staphylococcus)種およびそれらの毒素(腸毒素B)、オウム病クラミジア(Clamidia psittaci)(オウム病)、水の安全への脅威(例えばコレラ菌(Vibrio cholerae)、クリトスポルジウム パルブム(Crytosprodium parvum)、チフス熱(リッケチア ポワゼキ(Richettsia powazekii))、およびウイルス性脳炎(アルファウイルス、例えばベネズエラウマ脳炎、イースタンウマ脳炎、ウエスタンウマ脳炎);それらのすべては現在カテゴリーB薬剤に分類されている;およびナイパン(Nipan)ウイルスおよびハンタウイルス、それらは現在カテゴリーC薬剤に分類されている。さらに、そのように分類されているかまたは異なって分類されているその他の生物体は、将来同定されるかおよび/またはかかる目的に使用されるであろう。本明細書中に記載のウイルスベクターおよびその他の構築物は、それらの生物体、ウイルス、それらの毒素またはその他の副産物からの抗原を送達するために有用であり、それらはそれらの生物学的薬剤を用いる感染またはその他の不利益な反応を防止および/または処置するであろう。
【0089】
T細胞の可変領域に対する免疫原を送達するための本発明のベクターの投薬は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を含む免疫反応を誘発してそれらのT細胞を排除する。リウマチ性関節炎(RA)の場合に、疾患に関与するT細胞受容体(TCR)の数個の特定の可変領域が検討された。それらのTCRはには、V−3、V−14、V−17およびVα−17が含まれる。従って、それらのポリペプチドの少なくとも1個をコードする核酸配列の送達は、RAに関与するT細胞を標的とする免疫反応を誘発する。多発性硬化症(MS)では、疾患に関与するTCRの数個の特定の可変領域が検討された。それらのTCRはV−7およびVα−10を含む。従って、それらのポリペプチドの少なくとも1個をコードする核酸配列の送達は、MSに関与するT細胞を標的とする免疫反応を誘発する。強皮症では、疾患に関与するTCRの数個の特定の可変領域が検討された。それらのTCRは、V−6、V−8、V−14およびVα−16、Vα−3C、Vα−7,Vα−14、Vα−15、Vα−16、Vα−28およびVα−12を含む。従って、それらのポリペプチドの少なくとも1個をコードする組換えサルアデノウイルスの送達は、強皮症に関与するT細胞を標的とする免疫反応を誘発する。
【0090】
下記の実施例は、本発明の多価アデノウイルスのクローニングおよび例示的な多価アデノウイルスベクターの構築物を説明する。それらの実施例は説明のためのみであり、そして本発明の範囲を限定はしない。
【実施例】
【0091】
図1および2に示すように、チンパンジーアデノウイルスPan9に基づくベクターが、本発明にしたがう多価トランスファーベクターとして構築される。
【0092】
A.可動カセットを用いるDNA分子の構築
図1を参照して、Pan9 E1遺伝子領域の部位中に変異緑色蛍光タンパク質標識(GFP)カセット、ウシ成長ホルモンpolyA、および部分形質転換E3欠失を有する
、チンパンジーアデノウイルスPan9ウイルスゲノムを担持するプラスミドバックボーンを選択した。このプラスミドは、国際特許公開番号WO2003/046124号明細書中に記載されている。
【0093】
pPan9−pkGFPをAvrIIを用いて消化して(
図1A)Pan9のE3領域を除去し,pSL1180中にクローニングしてpSL1180〔Pharmaciaより商業的に入手〕pSL1180−Pan9−Avr(II)を形成し、それはアンピシリン耐性遺伝子を有していた。
【0094】
プラスミドRSV−Red2はRSVプロモーター、I−SceIおよびPI−PspI部位により近接されているAsRed2産物(Lac−AsRed2)を駆動し、lacプロモーター、次いでSV40 PolyAを含む。このpRSV−Red2プラスミドは、pUC19およびpkRFPから構築されたプラスミド内にRSVプロモーターをクローニングして構築された(Clontech)。pSL1180−Pan9−Avr(II)プラスミドをNruIにより消化して(
図1B)Pan9E3フラグメントを放出し、pRSV−Red2をPvuIIおよびHpaIを用いて消化して(
図1C)I−SceI−RSV−lac−AsRed2−PI−SceIカセットを放出しそして再結合して、アンピシリン耐性遺伝子を有するプラスミドpSL1180−Pan9−Avr(II)pkRFPを形成し、これはE3領域の部位内にI−SceI−RSV−lac−AsRed2−PI−SceIカセットを有している。
【0095】
上記のpPan9−pkGFPのAvrII消化からもたらされるのは、E3領域内に欠失を有するPan9ウイルスゲノムを含むプラスミドである(
図1D)。再結合の後、得られたプラスミドをpPan9−pkGFP−Avr(II)と称する。このプラスミドおよびpSL1180−Pan9−Avr(II)pkRFPプラスミドをAvrIIを用いて消化しそして再結合してE1座にGFPレポーター遺伝子およびE3座にREFレポーター遺伝子を含む単一プラスミド形成する。得られたプラスミドをpPan9−(E1)−pkGFP−(E3)pkRFPと称する。黄色を発現するコロニーを選択して、緑色および赤色蛍光タンパク質の双方を発現するベクターを選択する。
【0096】
この設計は、抗原発現カセットの容易なシャトルおよび組換え物の便利な色に基づくコロニーの便利な選択を可能とし、それは高処理量ベクター創成に適する。
【0097】
B.多価トランスファーベクターの構築
本発明の多価トランスファーベクターを構築するために、先に選択された異種発現カセットをシャットルベクター内の適切な部位内にクローニングする。
【0098】
図2を参照すると、これは「抗原1」を複数のクローニング部位を有するプラスミド内にクローニングし、上記A部に従って産生されたDNA分子の所望の領域内にそれらに相当する制限酵素部位により近接、すなわちI−CeuIおよびPI−SceI部位により近接された部位を選択することを示している。
【0099】
第二の異種発現カセット(抗原2)は、I−SceI部位の間の適当なベクター(例えばpUC19−RSV)内にクローニングされる。
【0100】
適切な酵素を用いる消化の後に、所望の異種発現カセットを含むベクターが比色手段により選択できる。さらに具体的には、適当な波長の光を用いる励起で赤色を発現するコロニーは、GFPを含む可動カセットが抗原1で置換され、しかしRFPを含むベクターを含む可動カセットは保存されているベクターの存在を示す。適当な波長の光を用いる励起により緑色を発現するコロニーを保存は、RFPを含む可動カセットが抗原1で置換され
ており、しかしGFPを含む可動カセットは保存されているベクターの存在を示す。GFPおよびRFPに適合する波長の光で励起された後に白色に見えるコロニーは、双方の可動カセットが異種発現カセットで置換されたベクターを示す。従って、白色コロニーを選択して、本発明の多価トランスファーベクターを容易かつ正確に選択できる。
【0101】
C.抗原発現の際の導入遺伝子カセットの位置(E1またはE3)および方向の影響の研究
同一のCMV−hA1AT発現カセットを、E1欠失Pan9(C9とも呼ばれる)ベクターのE1座およびE1/E3欠失C9ベクターのE3座に別々にクローニングした。異なる座からA1ATを発現する組換えC9ウイルスが産生されそして1x10
11pts/マウスの投与量でC57/L/6マウスに静脈内注入した。遺伝子転移の3および7日後に動物から採血しそして比較のために血清hA1ATレベルを測定した。そのデータは、E3座から発現されたhA1ATは、E1マウスからのものより実際に少なくとも2倍は高かったことを明らかにした。
図3参照。
【0102】
本発明のクローニングプロセスは、一価および多価ベクターの組換えのための便利な二重色選択システム選択を有する。さらに、このデータは、サルアデノウイルスベクター内の導入遺伝子発現の際に不利な座依存性効果がないことを示す。
【0103】
本明細書中で利用したすべての出版物、および配列表は、引用することにより本明細書に編入される。本発明は特定の態様を参照して説明されたが、本発明の精神から外れることなく変更ができ得ることは認められるであろう。かかる変更は別記の請求範囲の範囲内に入ると考える。