【文献】
大塚博 他、尿素付加化合物生成による直鎖炭化水素の分離、北海道大學工學部研究報告,1966年 3月30日、Vol.40,125−137頁
【文献】
佐藤信也 他、シエールオイル中のn−パラフィンおよび1−オレフィンの尿素アダクト法による分離,石油学会誌、1996年、Vol.39.36−369頁
得られる被処理物の尿素アダクト値が4〜6質量%の範囲であり且つ粘度指数が100以上となるように、減圧蒸留留出油、減圧蒸留留出油のマイルドハイドロクラッキング処理油、脱れき油、脱れき油のマイルドハイドロクラッキング処理油又はこれらの2種以上の混合油を原料として、水素化分解触媒の存在下で水素化分解を行い、更に、脱芳香族処理及び脱ろう処理を組み合せて処理し、得られる被処理物から下記条件(A)、(B)又は(C):
条件(A):尿素アダクト値が4〜6質量%、粘度指数が100以上、100℃における動粘度が1.5mm2/s以上3.0mm2/s未満、40℃における動粘度が6.0mm2/s以上12mm2/s未満、−35℃におけるCCS粘度が1000mPa・s以下
条件(B):尿素アダクト値が4〜6質量%、粘度指数が100以上、100℃における動粘度が3.0mm2/s以上4.5mm2/s未満、40℃における動粘度が12mm2/s以上28mm2/s未満、−35℃におけるCCS粘度が5000mPa・s以下
条件(C):尿素アダクト値が4〜6質量%、粘度指数が100以上、100℃における動粘度が4.5〜20mm2/s、40℃における動粘度が28〜50mm2/s、−35℃におけるCCS粘度が18000mPa・s以下
を満たす潤滑油基油を選別する、潤滑油基油の製造方法であって、
前記水素化分解は、全圧力が100〜130kg/cm2の中低圧、温度が360〜440℃、LHSVが0.2〜0.3hr−1の低LHSV、水素対原料油比が2,500〜5,000s.c.f/bbl−原料油である反応条件で行なわれ、
前記脱芳香族処理は、溶剤脱芳香族処理又は高圧水素化脱芳香族処理であり、
前記溶剤脱芳香族処理は、溶剤にフルフラールを用い、溶剤/油容積比4以下、温度90〜150℃で行なわれ、ラフィネート収率が60容積%以上となるように操作され、
前記高圧水素化脱芳香族処理は、アルミナ担体にVIb族金属及び第VIII族鉄族金属を担持して硫化した触媒の存在下、全圧力150〜200kg/cm2、温度280〜350℃、LHSV0.2〜2.0hr−1の条件で行なわれ、
前記脱ろう処理は、溶剤脱ろう処理又は接触脱ろう処理であり、
前記溶剤脱ろう処理は、溶剤としてベンゼン、トルエン、アセトン又はベンゼン、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)の混合溶剤を使用し、脱ろう油が所定の流動点になるように、溶剤/油の容積比が0.5〜5.0、温度が−5〜−45℃である処理条件で行なわれ、
前記接触脱ろう処理は、ペンタシル型ゼオライトを触媒とし、水素流通下、脱ろう油が所定の流動点になるように、全圧力が10〜70kg/cm2、温度が240〜400℃、LHSVが0.1〜3.0hr−1である反応条件で行なわれることを特徴とする潤滑油基油の製造方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0021】
本発明の潤滑油基油は、尿素アダクト値が4〜6質量%、且つ粘度指数が100以上のものである。
【0022】
また、本発明の潤滑油基油の尿素アダクト値は、粘度−温度特性を損なわずに低温粘度特性を改善する観点から、上述の通り4〜6質量%であることが必要であり、好ましくは4.0〜5.8質量%、より好ましくは4.0〜5.6質量%、更に好ましくは4.0〜5.4質量%である。また、尿素アダクト値が前記範囲内であると、潤滑油基油の製造工程において脱ろう処理を行うに際し、脱ろう条件を緩和することができ、経済性にも優れるため好ましい。
【0023】
本発明の潤滑油基油の粘度指数は、粘度−温度特性の観点から、上述の通り100以上であることが必要であり、好ましくは110以上、より好ましくは120以上、更に好ましくは130以上、特に好ましくは140以上である。粘度指数が100に満たない場合には、良好な低温粘度特性が得られないおそれがある。
【0024】
本発明においては、尿素アダクト値が4〜6質量%の範囲であり且つ粘度指数が100以上の潤滑油基油を得ることができれば、その製造方法は特に制限されないが、減圧蒸留留出油(WVGO)、WVGOのマイルドハイドロクラッキング(MHC)処理油(HIX)、脱れき油(DAO)、DAOのMHC処理油またはこれらの混合油又はこれらの2種以上の混合油を原料として、水素化分解触媒の存在下で水素化分解し、更に、脱芳香族処理及び脱ろう処理を組み合せて処理することによって、本発明の潤滑油基油を好適に得ることができる。
【0025】
前記WVGOは原油の常圧蒸留装置からの残渣油を減圧蒸留装置で蒸留した際に得られる留出油で、好ましくは360℃〜530℃の沸点を有するものである。
【0026】
前記HIXとはWVGOをMHC処理(全圧力が100kg/cm
2以下、好ましくは60〜90kg/cm
2、温度が370〜450℃、好ましくは400〜430℃、LHSVが0.5〜4.0hr
−1、好ましくは1.0〜2.0hr
−1の反応条件下、360℃
+留分の分解率が20〜30wt%の範囲にある比較的温和な水素分解のことをいう)によって生成する重質減圧軽油である。MHC処理の触媒としてはアルミナ、シリカアルミナ、アルミナボリア等の複合酸化物担体に、第VI族金属及び第VIII族金属を担持し硫化したものが使用できる。アルミナには例えばリン化合物のようなプロモーターが添加されることがある。前記金属の担持量は、酸化物基準で第VI族金属、例えばモリブデン、タングステン、クロムは5〜30wt%、好ましくは10〜25wt%、第VIII族金属、例えばコバルト、ニッケルは1〜10wt%、好ましくは2〜10wt%の範囲にある。WVGOとHIXを混合する場合は、WVGOにHIXを50wt%以上混合することが好ましい。
【0027】
前記脱れき油とは、原油の常圧蒸留装置からの残渣油を減圧蒸留装置で蒸留し、その際に得られる残渣油をプロパン脱れき法等で処理した実質アスファルテンを含有しない油である。
【0028】
原料油の水素化分解は、水素化分解触媒の存在下、全圧力が150kg/cm
2以下、好ましくは100〜130kg/cm
2の中低圧であり、温度が360〜440℃、好ましくは370〜430℃、LHSVは0.5hr
−1以下、好ましくは0.2〜0.3hr
−1の低LHSVであり、水素対原料油比が1,000〜6,000s.c.f/bbl−原料油、好ましくは2,500〜5,000s.c.f/bbl−原料油である反応条件で行うことができる。原料油の水素化分解に際しては、原料油中360℃
+留分の分解率が40wt%以上、好ましくは45wt%以上、更に好ましくは50wt%以上になるよう反応条件が調節される。なお、原料油としてHIXを用いた場合、MHC処理と水素化分解の合計の分解率は、60wt%以上、好ましは70wt%以上である。また、未分解油の一部をリサイクルする場合、ここでいう分解率はリサイクル油込みの分解率ではなく、フレッシュフィールド当りの分解率を指す。
【0029】
水素化分解に用いる触媒は、二元機能を有するものが好ましく、具体的には例えば、第VIb族金属及び第VIII族鉄族金属から構成される水素化点と、第III族、第IV族及び第V族元素の複合酸化物から構成される分解点を有する触媒が使用される。第VIb族金属としてはタングステン、モリブデンがあり、第VIII族鉄族金属としてはニッケル、コバルト、鉄があり、これらは複合酸化物担体に担持後、最終的には硫化物として用いられる。
【0030】
担体に用いる複合酸化物としては、シリカアルミナ、シリカジルコニア、シリカチタニア、シリカマグネシア、シリカアルミナジルコニア、シリカアルミナチタニア、シリカアルミナマグネシアなどがあり、結晶性シリカアルミナ(ゼオライト)、結晶性アルミナホスフェート(ALPO)、結晶性シリカアルミナホスフェート(SAPO)が用いられることもある。
【0031】
複合酸化物への前記金属の担持量は、酸化物基準として第VIb族金属では5〜30質量%、好ましくは10〜25質量%、第VIII族鉄族金属では1〜20質量%、好ましくは5〜15質量%である。
【0032】
念のため付言すれば、原料油を水素化分解するに当っては、水素化分解触媒充填床の上流側に、脱硫及び又は脱窒素能に優れた前処理触媒を充填しても差支えない。この種の前処理触媒としては、アルミナ、アルミナボリア等の担体に、第VI族金属及び第VIII族金属を担持し、硫化したものが使用できる。アルミナ、アルミナボリアにはプロモーター、例えばリン化合物が添加されることがある。
【0033】
原料油を水素化分解した後は、必要に応じて分解生成物から通常の蒸留操作で潤滑油留分を回収してもよい。回収可能な潤滑油留分としては、沸点範囲が343℃〜390℃の70ペール留分、390℃〜445℃のSAE−10留分、445℃〜500℃のSAE−20留分、500℃〜565℃のSAE−30留分が潤滑油留などがある。
【0034】
必要に応じて潤滑油留分が分離回収された前記の水素化分解生成物は、脱ろう処理された後で脱芳香族処理されるか、あるいは、脱芳香族処理された後で脱ろう処理される。
【0035】
脱ろう処理としては、溶剤脱ろう処理又は接触脱ろう処理が採用できる。
【0036】
溶剤脱ろう処理は、例えばMEK法などの通常の方法で行うことができる。MEK法は溶剤としてベンゼン、トルエン、アセトン又はベンゼン、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)などの混合溶剤を使用する。処理条件は脱ろう油が所定の流動点になるように冷却温度を調節する。溶剤/油の容積比は0.5〜5.0、好ましくは1.0〜4.5、温度は−5〜−45℃、好ましくは−10〜−40℃である。
【0037】
接触脱ろう処理は通常の方法で行うことができる。例えばペンタシル型ゼオライトを触媒とし、水素流通下、脱ろう油が所定の流動点になるように反応温度を調節するがその反応条件は一般に、全圧力が10〜70kg/cm
2、好ましくは20〜50kg/cm
2、温度が240〜400℃、好ましくは260〜380℃である。LHSVは0.1〜3.0hr
−1、好ましくは0.5〜2.0hr
−1の範囲にある。
【0038】
脱芳香族処理としては、溶剤脱芳香族処理あるいは高圧水素化脱芳香族処理のいずれもが採用可能であるが、溶剤脱芳香族処理が好ましい。
【0039】
溶剤脱芳香族処理は通常フルフラール、フェノール等の溶剤を用いるが、本発明では溶剤にフルフラールを用いることが好ましい。溶剤脱芳香族処理の条件としては、溶剤/油容積比4以下、好ましくは3以下、更に好ましくは2以下、温度90〜150℃で行なわれ、ラフィネート収率は60容積%以上、好ましくは70容積%以上、更に好ましくは85容積%以上となるように操作される。
【0040】
高圧水素化反応による脱芳香族処理は、通常アルミナ担体にVI b族金属及び第VIII族鉄族金属を担持して硫化した触媒の存在下、全圧力150〜200kg/cm
2、好ましくは70〜200kg/cm
2、温度280〜350℃、好ましくは300〜330℃、LHSV0.2〜2.0hr
−1、好ましくは0.5〜1.0hr
−1の条件で行なわれる。触媒の金属担持量は、酸化物基準で第VI b族金属、例えばモリブデン、タングステン、クロムは5〜30質量%、好ましくは10〜25質量%、第VIII族鉄族鉄金属、例えばコバルト、ニッケルは1〜10質量%、好ましくは2〜10質量%である。
【0041】
脱芳香族処理として溶剤脱芳香族処理を用いた場合、必要によりこの処理の後に、水素化処理を行うことができる。この水素化処理は溶剤脱芳香族処理油を、全反応圧力50kg/cm
2以下、好ましくは25〜40kg/cm
2の低圧の水素化反応条件で、アルミナ担体に第VIb族金属及び第VIII族鉄族金属を担持して硫化した水素化触媒と接触させることにより行う。このような比較的低圧下での水素化処理は溶剤脱芳香族油の光安定性を飛躍的に向上させる。前記金属の担持量は酸化物基準で第VIb族金属、例えばモリブデン、タングステン、クロムは5〜30質量%、好ましくは10〜25質量%、第VIII族鉄族金属、例えばコバルト、ニッケルは1〜10質量%、好ましくは2〜10質量%である。
【0042】
本発明の潤滑油基油の製造方法において、その製造過程で原料油の水素化分解後生成物から潤滑油留分を回収しなかった場合は、脱芳香族処理、脱ろう処理あるいは水素化処理の後に、通常の蒸留操作により、潤滑油留分を回収することができる。ここで回収される潤滑油留分は、先の場合と同様、沸点範囲が343℃〜390℃の700ペール留分、390℃〜445℃のSAE−10留分、445℃〜800℃のSAE−20留分、500℃〜565℃のSAE−30留分等である。
【0043】
上記の製造方法により得られる本発明の潤滑油基油においては、尿素アダクト値及び粘度指数がそれぞれ上記条件を満たせば、その他の性状は特に制限されないが、本発明の潤滑油基油は以下の条件を更に満たすものであることが好ましい。
【0044】
本発明の潤滑油基油における飽和分の含有量は、潤滑油基油全量を基準として、好ましくは90質量%以上、より好ましくは93質量%以上、更に好ましくは95質量%以上である。また、当該飽和分に占める環状飽和分の割合は、好ましくは0.1〜60質量%、より好ましくは0.5〜55質量%、更に好ましくは1〜52質量%、特に好ましくは5〜50質量%である。飽和分の含有量及び当該飽和分に占める環状飽和分の割合がそれぞれ上記条件を満たすことにより、粘度−温度特性及び熱・酸化安定性を達成することができ、また、当該潤滑油基油に添加剤が配合された場合には、当該添加剤を潤滑油基油中に十分に安定的に溶解保持しつつ、当該添加剤の機能をより高水準で発現させることができる。更に、飽和分の含有量及び当該飽和分に占める環状飽和分の割合がそれぞれ上記条件を満たすことにより、潤滑油基油自体の摩擦特性を改善することができ、その結果、摩擦低減効果の向上、ひいては省エネルギー性の向上を達成することができる。
【0045】
なお、飽和分の含有量が90質量%未満であると、粘度−温度特性、熱・酸化安定性及び摩擦特性が不十分となる傾向にある。また、飽和分に占める環状飽和分の割合が0.1質量%未満であると、潤滑油基油に添加剤が配合された場合に、当該添加剤の溶解性が不十分となり、潤滑油基油中に溶解保持される当該添加剤の有効量が低下するため、当該添加剤の機能を有効に得ることができなくなる傾向にある。更に、飽和分に占める環状飽和分の割合が60質量%を超えると、潤滑油基油に添加剤が配合された場合に当該添加剤の効き目が低下する傾向にある。
【0046】
本発明において、飽和分に占める環状飽和分の割合が30〜50質量%であることは、飽和分に占める非環状飽和分が70〜50質量%であることと等価である。ここで、非環状飽和分にはノルマルパラフィン及びイソパラフィンの双方が包含される。本発明の潤滑油基油に占めるノルマルパラフィン及びイソパラフィンの割合は、尿素アダクト値が上記条件を満たせば特に制限されないが、イソパラフィンの割合は、潤滑油基油全量基準で、好ましくは40〜70質量%、より好ましくは42〜65質量%、更に好ましくは44〜60質量%、特に好ましくは45〜55質量%である。潤滑油基油に占めるイソパラフィンの割合が前記条件を満たすことにより、粘度−温度特性及び熱・酸化安定性をより向上させることができ、また、当該潤滑油基油に添加剤が配合された場合には、当該添加剤を十分に安定的に溶解保持しつつ、当該添加剤の機能を一層高水準で発現させることができる。
【0047】
なお、本発明でいう飽和分の含有量とは、ASTM D 2007−93に準拠して測定される値(単位:質量%)を意味する。
【0048】
また、本発明でいう飽和分に占める環状飽和分及び非環状飽和分の割合とは、それぞれASTM D 2786−91に準拠して測定されるナフテン分(測定対象:1環〜6環ナフテン、単位:質量%)及びアルカン分(単位:質量%)を意味する。
【0049】
また、本発明でいう潤滑油基油中のノルマルパラフィンの割合とは、前記ASTM D 2007−93に記載された方法により分離・分取された飽和分について、以下の条件でガスクロマトグラフィー分析を行い、当該飽和分に占めるノルマルパラフィンの割合を同定・定量したときの測定値を、潤滑油基油全量を基準として換算した値を意味する。なお、同定・定量の際には、標準試料として炭素数5〜50のノルマルパラフィンの混合試料が用いられ、飽和分に占めるノルマルパラフィンは、クロマトグラムの全ピーク面積値(希釈剤に由来するピークの面積値を除く)に対する各ノルマルパラフィンに相当に相当するピーク面積値の合計の割合として求められる。
(ガスクロマトグラフィー条件)
カラム:液相無極性カラム(長さ25mm、内径0.3mmφ、液相膜厚さ0.1μm)昇温条件:50℃〜400℃(昇温速度:10℃/min)
キャリアガス:ヘリウム(線速度:40cm/min)
スプリット比:90/1
試料注入量:0.5μL(二硫化炭素で20倍に希釈した試料の注入量)
【0050】
また、潤滑油基油中のイソパラフィンの割合とは、前記飽和分に占める非環状飽和分と前記飽和分に占めるノルマルパラフィンとの差を、潤滑油基油全量を基準として換算した値を意味する。
【0051】
なお、飽和分の分離方法、あるいは環状飽和分、非環状飽和分等の組成分析の際には、同様の結果が得られる類似の方法を使用することができる。例えば、上記の他、ASTM D 2425−93に記載の方法、ASTM D 2549−91に記載の方法、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)による方法、あるいはこれらの方法を改良した方法等を挙げることができる。
【0052】
また、本発明の潤滑油基油における芳香族分は、潤滑油基油全量を基準として、好ましくは5質量%以下、より好ましくは0.05〜3質量%、更に好ましくは0.1〜1質量%、特に好ましくは0.1〜0.5質量%である。芳香族分の含有量が上記上限値を超えると、粘度−温度特性、熱・酸化安定性及び摩擦特性、更には揮発防止性及び低温粘度特性が低下する傾向にあり、更に、潤滑油基油に添加剤が配合された場合に当該添加剤の効き目が低下する傾向にある。また、本発明の潤滑油基油は芳香族分を含有しないものであってもよいが、芳香族分の含有量を0.05質量%以上とすることにより、添加剤の溶解性を更に高めることができる。
【0053】
なお、ここでいう芳香族分の含有量とは、ASTM D 2007−93に準拠して測定された値を意味する。芳香族分には、通常、アルキルベンゼン、アルキルナフタレンの他、アントラセン、フェナントレン及びこれらのアルキル化物、更にはベンゼン環が四環以上縮合した化合物、ピリジン類、キノリン類、フェノール類、ナフトール類等のヘテロ原子を有する芳香族化合物などが含まれる。
【0054】
また、本発明の潤滑油基油の%C
pは、好ましくは80以上、より好ましくは82〜99、更に好ましくは85〜98、特に好ましくは90〜97である。潤滑油基油の%C
pが80未満の場合、粘度−温度特性、熱・酸化安定性及び摩擦特性が低下する傾向にあり、更に、潤滑油基油に添加剤が配合された場合に当該添加剤の効き目が低下する傾向にある。また、潤滑油基油の%C
pが99を超えると、添加剤の溶解性が低下する傾向にある。
【0055】
また、本発明の潤滑油基油の%C
Nは、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、より好ましくは1〜12、更に好ましくは3〜10である。潤滑油基油の%C
Nが20を超えると、粘度−温度特性、熱・酸化安定性及び摩擦特性が低下する傾向にある。また、%C
Nが1未満であると、添加剤の溶解性が低下する傾向にある。
【0056】
また、本発明の潤滑油基油の%C
Aは、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.1〜0.5である。潤滑油基油の%C
Aが0.7を超えると、粘度−温度特性、熱・酸化安定性及び摩擦特性が低下する傾向にある。また、本発明の潤滑油基油の%C
Aは0であってもよいが、%C
Aを0.1以上とすることにより、添加剤の溶解性を更に高めることができる。
【0057】
更に、本発明の潤滑油基油における%C
Pと%C
Nとの比率は、%C
P/%C
Nが7以上であることが好ましく、7.5以上であることがより好ましく、8以上であることが更に好ましい。%C
P/%C
Nが7未満であると、粘度−温度特性、熱・酸化安定性及び摩擦特性が低下する傾向にあり、更に、潤滑油基油に添加剤が配合された場合に当該添加剤の効き目が低下する傾向にある。また、%C
P/%C
Nは、200以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、50以下であることが更に好ましく、25以下であることが特に好ましい。%C
P/%C
Nを200以下とすることにより、添加剤の溶解性を更に高めることができる。
【0058】
なお、本発明でいう%C
P、%C
N及び%C
Aとは、それぞれASTM D 3238−85に準拠した方法(n−d−M環分析)により求められる、パラフィン炭素数の全炭素数に対する百分率、ナフテン炭素数の全炭素数に対する百分率、及び芳香族炭素数の全炭素数に対する百分率を意味する。つまり、上述した%C
P、%C
N及び%C
Aの好ましい範囲は上記方法により求められる値に基づくものであり、例えばナフテン分を含まない潤滑油基油であっても、上記方法により求められる%C
Nが0を超える値を示すことがある。
【0059】
また、本発明の潤滑油基油のヨウ素価は、好ましくは0.5以下であり、より好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.15以下であり、また、0.01未満であってもよいが、それに見合うだけの効果が小さい点及び経済性との関係から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.05以上である。潤滑油基油のヨウ素価を0.5以下とすることで、熱・酸化安定性を飛躍的に向上させることができる。なお、本発明でいうヨウ素価とは、JIS K 0070「化学製品の酸価、ケン化価、ヨウ素価、水酸基価及び不ケン化価」の指示薬滴定法により測定したヨウ素価を意味する。
【0060】
また、本発明の潤滑油基油における硫黄分の含有量は、その原料の硫黄分の含有量に依存する。本発明の潤滑油基油においては、熱・酸化安定性の更なる向上及び低硫黄化の点から、硫黄分の含有量が10質量ppm以下であることが好ましく、5質量ppm以下であることがより好ましく、3質量ppm以下であることが更に好ましい。
【0061】
また、本発明の潤滑油基油における窒素分の含有量は、特に制限されないが、好ましくは5質量ppm以下、より好ましくは3質量ppm以下、更に好ましくは1質量ppm以下である。窒素分の含有量が5質量ppmを超えると、熱・酸化安定性が低下する傾向にある。なお、本発明でいう窒素分とは、JIS K 2609−1990に準拠して測定される窒素分を意味する。
【0062】
また、本発明の潤滑油基油の動粘度は、その100℃における動粘度は、好ましくは1.5〜20mm
2/s、より好ましくは2.0〜11mm
2/sである。潤滑油基油の100℃における動粘度が1.5mm
2/s未満の場合、蒸発損失の点で好ましくない。また、100℃における動粘度が20mm
2/sを超える潤滑油基油を得ようとする場合、その収率が低くなり、分解率を高めることが困難となるため好ましくない。
【0063】
本発明においては、100℃における動粘度が下記の範囲にある潤滑油基油を蒸留等により分取し、使用することが好ましい。
(I)100℃における動粘度が1.5mm
2/s以上3.5mm
2/s未満、より好ましくは2.0〜3.0mm
2/sの潤滑油基油
(II)100℃における動粘度が3.0mm
2/s以上4.5mm
2/s未満、より好ましくは3.5〜4.1mm
2/sの潤滑油基油
(III)100℃における動粘度が4.5〜20mm
2/s、より好ましくは4.8〜11mm
2/s、特に好ましくは5.5〜8.0mm
2/sの潤滑油基油。
【0064】
また、本発明の潤滑油基油の40℃における動粘度は、好ましくは6.0〜80mm
2/s、より好ましくは8.0〜50mm
2/sである。本発明においては、40℃における動粘度が下記の範囲にある潤滑油留分を蒸留等により分取し、使用することが好ましい。
(IV)40℃における動粘度が6.0mm
2/s以上12mm
2/s未満、より好ましくは8.0〜12mm
2/sの潤滑油基油
(V)40℃における動粘度が12mm
2/s以上28mm
2/s未満、より好ましくは13〜19mm
2/sの潤滑油基油
(VI)40℃における動粘度が28〜50mm
2/s、より好ましくは29〜45mm
2/s、特に好ましくは30〜40mm
2/sの潤滑油基油。
【0065】
上記潤滑油基油(I)及び(IV)は、尿素アダクト値及び粘度指数がそれぞれ上記条件を満たすことにより、粘度グレードが同じ従来の潤滑油基油と比較して、粘度−温度特性と低温粘度特性とを高水準で両立することができ、特に、低温粘度特性に優れ、粘性抵抗や撹拌抵抗を著しく低減することができる。また、流動点降下剤を配合することにより、−40℃におけるMRV粘度を10000mPa・s以下とすることができる。なお、−40℃におけるMRV粘度とは、JPI−5S−42−93に準拠して測定された粘度を意味する。
【0066】
また、上記潤滑油基油(II)及び(V)は、尿素アダクト値及び粘度指数がそれぞれ上記条件を満たすことにより、粘度グレードが同じ従来の潤滑油基油と比較して、粘度−温度特性と低温粘度特性とを高水準で両立することができ、特に、低温粘度特性に優れ、更には揮発防止性及び潤滑性に優れる。例えば、潤滑油基油(II)及び(V)においては、−35℃におけるCCS粘度を3000mPa・s以下とすることができる。
【0067】
また、上記潤滑油基油(III)及び(VI)は、尿素アダクト値及び粘度指数がそれぞれ上記条件を満たすことにより、粘度グレードが同じ従来の潤滑油基油と比較して、粘度−温度特性と低温粘度特性とを高水準で両立することができ、特に、低温粘度特性に優れ、更には揮発防止性、熱・酸化安定性及び潤滑性に優れる。例えば、潤滑油基油(III)及び(VI)においては、−35℃におけるCCS粘度を20000mPa・s以下とすることができる。
【0068】
また、本発明の潤滑油基油の流動点は、潤滑油基油の粘度グレードにもよるが、例えば、上記潤滑油基油(I)及び(IV)の流動点は、好ましくは−10℃以下、より好ましくは−12.5℃以下、更に好ましくは−15℃以下である。また、上記潤滑油基油(II)及び(V)の流動点は、好ましくは−10℃以下、より好ましくは−15℃以下、更に好ましくは−17.5℃以下である。また、上記潤滑油基油(III)及び(VI)の流動点は、好ましくは−10℃以下、より好ましくは−12.5℃以下、更に好ましくは−15℃以下である。流動点が前記上限値を超えると、その潤滑油基油を用いた潤滑油全体の低温流動性が低下する傾向にある。なお、本発明でいう流動点とは、JIS K 2269−1987に準拠して測定された流動点を意味する。
【0069】
また、本発明の潤滑油基油の−35℃におけるCCS粘度は、潤滑油基油の粘度グレードにもよるが、例えば、上記潤滑油基油(I)及び(IV)の−35℃におけるCCS粘度は、好ましくは1000mPa・s以下である。また、上記潤滑油基油(II)及び(V)の−35℃におけるCCS粘度は、好ましくは5000mPa・s以下、より好ましくは4500mPa・s以下、更に好ましくは4000mPa・s以下、更に好ましくは3500mPa・s以下、特に好ましくは3000mPa・s以下である。また、上記潤滑油基油(III)及び(VI)の−35℃におけるCCS粘度は、好ましくは18000mPa・s以下、より好ましくは15000mPa・s以下である。−35℃におけるCCS粘度が前記上限値を超えると、その潤滑油基油を用いた潤滑油全体の低温流動性が低下する傾向にある。なお、本発明でいう−35℃におけるCCS粘度とは、JIS K 2010−1993に準拠して測定された粘度を意味する。
【0070】
また、本発明の潤滑油基油の15℃における密度(ρ
15)は、潤滑油基油の粘度グレードによるが、下記式(1)で表されるρの値以下であること、すなわちρ
15≦ρであることが好ましい。
ρ=0.0025×kv100+0.816 (1)
[式中、kv100は潤滑油基油の100℃における動粘度(mm
2/s)を示す。]
【0071】
なお、ρ
15>ρとなる場合、粘度−温度特性及び熱・酸化安定性、更には揮発防止性及び低温粘度特性が低下する傾向にあり、また、潤滑油基油に添加剤が配合された場合に当該添加剤の効き目が低下する傾向にある。
【0072】
例えば、上記潤滑油基油(I)及び(IV)のρ
15は、好ましくは0.825以下、より好ましくは0.820以下である。また、上記潤滑油基油(II)及び(V)のρ
15は、好ましくは0.835以下、より好ましくは0.830以下である。また、上記潤滑油基油(III)及び(VI)のρ
15は、好ましくは0.840以下、より好ましくは0.835以下である。
【0073】
なお、本発明でいう15℃における密度とは、JIS K 2249−1995に準拠して15℃において測定された密度を意味する。
【0074】
また、本発明の潤滑油基油のアニリン点(AP(℃))は、潤滑油基油の粘度グレードによるが、下記式(2)で表されるAの値以上であること、すなわちAP≧Aであることが好ましい。
A=4.3×kv100+100 (2)
[式中、kv100は潤滑油基油の100℃における動粘度(mm
2/s)を示す。]
【0075】
なお、AP<Aとなる場合、粘度−温度特性及び熱・酸化安定性、更には揮発防止性及び低温粘度特性が低下する傾向にあり、また、潤滑油基油に添加剤が配合された場合に当該添加剤の効き目が低下する傾向にある。
【0076】
例えば、上記潤滑油基油(I)及び(IV)のAPは、好ましくは105℃以上、より好ましくは108℃以上である。また、上記潤滑油基油(II)及び(V)のAPは、好ましくは110℃以上、より好ましくは113℃以上である。また、上記潤滑油基油(III)及び(VI)のAPは、好ましくは120℃以上、より好ましくは123℃以上である。なお、本発明でいうアニリン点とは、JIS K 2256−1985に準拠して測定されたアニリン点を意味する。
【0077】
また、本発明の潤滑油基油の蒸留性状は、ガスクロマトグラフィー蒸留で、初留点(IBP)が290〜440℃、終点(FBP)が430〜580℃であることが好ましく、かかる蒸留範囲にある留分から選ばれる1種又は2種以上の留分を精留することにより、上述した好ましい粘度範囲を有する潤滑油基油(I)〜(III)及び(IV)〜(VI)を得ることができる。
【0078】
例えば、上記潤滑油基油(I)及び(IV)の蒸留性状に関し、その初留点(IBP)は、好ましくは260〜340℃、より好ましくは270〜330℃、更に好ましくは280〜320℃である。また、10%留出温度(T10)は、好ましくは310〜390℃、より好ましくは320〜380℃、更に好ましくは330〜370℃である。また、50%留出点(T50)は、好ましくは340〜440℃、より好ましくは360〜430℃、更に好ましくは370〜420℃である。また、90%留出点(T90)は、好ましくは405〜465℃、より好ましくは415〜455℃、更に好ましくは425〜445℃である。また、終点(FBP)は、好ましくは430〜490℃、より好ましくは440〜480℃、更に好ましくは450〜490℃である。また、T90−T10は、好ましくは60〜140℃、より好ましくは70〜130℃、更に好ましくは80〜120℃である。また、FBP−IBPは、好ましくは140〜200℃、より好ましくは150〜190℃、更に好ましくは160〜180℃である。また、T10−IBPは、好ましくは40〜100℃、より好ましくは50〜90℃、更に好ましくは60〜80℃である。また、FBP−T90は、好ましくは5〜60℃、より好ましくは10〜55℃、更に好ましくは15〜50℃である。
【0079】
また、上記潤滑油基油(II)及び(V)の蒸留性状に関し、その初留点(IBP)は、好ましくは310〜400℃、より好ましくは320〜390℃、更に好ましくは330〜380℃である。また、10%留出温度(T10)は、好ましくは350〜430℃、より好ましくは360〜420℃、更に好ましくは370〜410℃である。また、50%留出点(T50)は、好ましくは390〜470℃、より好ましくは400〜460℃、更に好ましくは410〜450℃である。また、90%留出点(T90)は、好ましくは420〜490℃、より好ましくは430〜480℃、更に好ましくは440〜470℃である。また、終点(FBP)は、好ましくは450〜530℃、より好ましくは460〜520℃、更に好ましくは470〜510℃である。また、T90−T10は、好ましくは40〜100℃、より好ましくは45〜90℃、更に好ましくは50〜80℃である。また、FBP−IBPは、好ましくは110〜170℃、より好ましくは120〜160℃、更に好ましくは130〜150℃である。また、T10−IBPは、好ましくは5〜60℃、より好ましくは10〜55℃、更に好ましくは15〜50℃である。また、FBP−T90は、好ましくは5〜60℃、より好ましくは10〜55℃、更に好ましくは15〜50℃である。
【0080】
また、上記潤滑油基油(III)及び(VI)の蒸留性状に関し、その初留点(IBP)は、好ましくは440〜480℃、より好ましくは430〜470℃、更に好ましくは420〜460℃である。また、10%留出温度(T10)は、好ましくは450〜510℃、より好ましくは460〜500℃、更に好ましくは460〜480℃である。また、50%留出点(T50)は、好ましくは470〜540℃、より好ましくは480〜530℃、更に好ましくは490〜520℃である。また、90%留出点(T90)は、好ましくは470〜560℃、より好ましくは480〜550℃、更に好ましくは490〜540℃である。また、終点(FBP)は、好ましくは505〜565℃、より好ましくは515〜555℃、更に好ましくは525〜565℃である。また、T90−T10は、好ましくは35〜80℃、より好ましくは45〜70℃、更に好ましくは55〜80℃である。また、FBP−IBPは、好ましくは50〜130℃、より好ましくは60〜120℃、更に好ましくは70〜110℃である。また、T10−IBPは、好ましくは5〜65℃、より好ましくは10〜55℃、更に好ましくは10〜45℃である。また、FBP−T90は、好ましくは5〜60℃、より好ましくは5〜50℃、更に好ましくは5〜40℃である。
【0081】
潤滑油基油(I)〜(VI)のそれぞれにおいて、IBP、T10、T50、T90、FBP、T90−T10、FBP−IBP、T10−IBP、FBP−T90を上記の好ましい範囲に設定することで、低温粘度の更なる改善と、蒸発損失の更なる低減とが可能となる。なお、T90−T10、FBP−IBP、T10−IBP及びFBP−T90のそれぞれについては、それらの蒸留範囲を狭くしすぎると、潤滑油基油の収率が悪化し、経済性の点で好ましくない。
【0082】
なお、本発明でいう、IBP、T10、T50、T90及びFBPとは、それぞれASTM D 2887−97に準拠して測定される留出点を意味する。
【0083】
また、本発明の潤滑油基油における残存金属分は、製造プロセス上余儀なく混入する触媒や原料に含まれる金属分に由来するものであるが、かかる残存金属分は十分除去されることが好ましい。例えば、Al、Mo、Niの含有量は、それぞれ1質量ppm以下であることが好ましい。これらの金属分の含有量が上記上限値を超えると、潤滑油基油に配合される添加剤の機能が阻害される傾向にある。
【0084】
なお、本発明でいう残存金属分とは、JPI−5S−38−2003に準拠して測定される金属分を意味する。
【0085】
上記構成を有する本発明の潤滑油基油は、粘度−温度特性及び低温粘度特性に優れると共に、粘性抵抗や撹拌抵抗が低く、更には熱・酸化安定性及び摩擦特性が改善されたものであり、摩擦低減効果の向上、ひいては省エネルギー性の向上を達成することができるものである。また、本発明の潤滑油基油に添加剤が配合された場合には当該添加剤の機能(流動点降下剤による低温粘度特性向上効果、酸化防止剤による熱・酸化安定性向上効果、摩擦調整剤による摩擦低減効果、摩耗防止剤による耐摩耗性向上効果など)をより高水準で発現させることができる。そのため、本発明の潤滑油基油は、様々な潤滑油の基油として好適に用いることができる。本発明の潤滑油基油の用途としては、具体的には、乗用車用ガソリンエンジン、二輪車用ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ガスエンジン、ガスヒートポンプ用エンジン、船舶用エンジン、発電エンジンなどの内燃機関に用いられる潤滑油(内燃機関用潤滑油)、自動変速機、手動変速機、無断変速機、終減速機などの駆動伝達装置に用いられる潤滑油(駆動伝達装置用油)、緩衝器、建設機械等の油圧装置に用いられる油圧作動油、圧縮機油、タービン油、工業用ギヤ油、冷凍機油、さび止め油、熱媒体油、ガスホルダーシール油、軸受油、抄紙機用油、工作機械油、すべり案内面油、電気絶縁油、切削油、プレス油、圧延油、熱処理油などが挙げられ、これらの用途に本発明の潤滑油基油を用いることによって、各潤滑油の粘度−温度特性、熱・酸化安定性、省エネルギー性、省燃費性などの特性の向上、並びに各潤滑油の長寿命化及び環境負荷物質の低減を高水準で達成することができるようになる。
【0086】
本発明の潤滑油組成物においては、本発明の潤滑油基油を単独で用いてもよく、また、本発明の潤滑油基油を他の基油の1種又は2種以上と併用してもよい。なお、本発明の潤滑油基油と他の基油とを併用する場合、それらの混合基油中に占める本発明の潤滑油基油の割合は、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。
【0087】
本発明の潤滑油基油と併用される他の基油としては、特に制限されないが、鉱油系基油としては、例えば100℃における動粘度が1〜100mm
2/sの溶剤精製鉱油、水素化分解鉱油、水素化精製鉱油、溶剤脱ろう基油などが挙げられる。
【0088】
また、合成系基油としては、ポリα−オレフィン又はその水素化物、イソブテンオリゴマー又はその水素化物、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル(ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等)、ポリオールエステル(トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等)、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテル等が挙げられ、中でも、ポリα−オレフィンが好ましい。ポリα−オレフィンとしては、典型的には、炭素数2〜32、好ましくは6〜16のα−オレフィンのオリゴマー又はコオリゴマー(1−オクテンオリゴマー、デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンコオリゴマー等)及びそれらの水素化物が挙げられる。
【0089】
ポリα−オレフィンの製法は特に制限されないが、例えば、三塩化アルミニウム又は三フッ化ホウ素と、水、アルコール(エタノール、プロパノール、ブタノール等)、カルボン酸又はエステルとの錯体を含むフリーデル・クラフツ触媒のような重合触媒の存在下、α−オレフィンを重合する方法が挙げられる。
【0090】
また、本発明の潤滑油組成物は、必要に応じて各種添加剤を更に含有することができる。かかる添加剤としては、特に制限されず、潤滑油の分野で従来使用される任意の添加剤を配合することができる。かかる潤滑油添加剤としては、具体的には、酸化防止剤、無灰分散剤、金属系清浄剤、極圧剤、摩耗防止剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、摩擦調整剤、油性剤、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、シール膨潤剤、消泡剤、着色剤などが挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0091】
特に、本発明の潤滑油組成物が流動点降下剤を含有する場合、本発明の潤滑油基油による流動点降下剤の添加効果が最大限に発揮されるため、優れた低温粘度特性を達成することができる。例えば上記基油(II)及び(V)に流動点降下剤を配合した場合、その−40℃におけるMRV粘度は、20000mPa・s以下とすることができ、より好ましくは18000mPa・s以下、更に好ましくは16000mPa・s、特に好ましくは15000mPa・s以下の極めて優れた低温粘度特性を有する潤滑油組成物を得ることができる。この場合、流動点降下剤の配合量は、組成物全量基準で0.05〜2質量%、好ましくは0.1〜1.5質量%であるが、特にMRV粘度を低下させることができる点で0.4〜1.0質量%の範囲が最も良く、流動点降下剤としては、その重量平均分子量は好ましくは1〜30万、より好ましくは5〜20万のものが特に好ましく、更に流動点降下剤としては、ポリメタアクリレート系のものが特に好ましい。なお、ここでいう−40℃におけるMRV粘度は、JPI−5S−42−93に準拠して測定された−40℃におけるMRV粘度を意味する。