(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5690108
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】電装収納箱の内部冷却構造
(51)【国際特許分類】
H01M 10/613 20140101AFI20150305BHJP
H01M 10/617 20140101ALI20150305BHJP
H01M 10/652 20140101ALI20150305BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20150305BHJP
H01M 10/6566 20140101ALI20150305BHJP
H01M 2/10 20060101ALI20150305BHJP
【FI】
H01M10/613
H01M10/617
H01M10/652
H01M10/6563
H01M10/6566
H01M2/10 S
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-228412(P2010-228412)
(22)【出願日】2010年10月8日
(65)【公開番号】特開2012-84314(P2012-84314A)
(43)【公開日】2012年4月26日
【審査請求日】2013年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】夘沢 康裕
(72)【発明者】
【氏名】板坂 哲也
【審査官】
坂本 聡生
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−250515(JP,A)
【文献】
特開2009−245785(JP,A)
【文献】
特開2002−190288(JP,A)
【文献】
特開2001−167804(JP,A)
【文献】
特開2010−092723(JP,A)
【文献】
特開2007−299638(JP,A)
【文献】
特開2001−319697(JP,A)
【文献】
特表2012−519353(JP,A)
【文献】
特開2002−373710(JP,A)
【文献】
特表2010−515219(JP,A)
【文献】
特開2004−185867(JP,A)
【文献】
特開2001−155789(JP,A)
【文献】
特開平10−270095(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/082111(WO,A1)
【文献】
国際公開第2010/098598(WO,A2)
【文献】
特開2008−135358(JP,A)
【文献】
特開2000−133225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
10/52−10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電装収納箱内に取り込んだ冷却風を電装品の直下に流し込んで上方へ抜き出す電装収納箱の内部冷却構造であって、該電装収納箱内の前記電装品の直下の冷却風の流路下面に、前記電装品の温度差を低減するよう、流路下面から斜め上方へ向かう傾斜面を有して冷却風を斜め上方へ誘導する第一の凸部と、該第一の凸部の下流後方に位置し且つ流路下面から上方へ向かう障害面を有して冷却風を上方へ誘導する第二の凸部を備えたことを特徴とする電装収納箱の内部冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電装収納箱の内部冷却構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ディーゼル−電気ハイブリッドエンジンの開発が進められているが、この種のディーゼル−電気ハイブリッドエンジンは、ディーゼルエンジンのフライホイールハウジング内に超薄型の三相交流機を内蔵させ、エンジンの起動時には三相交流機をスタータとして作動させ、車両の発進加速時には三相交流機をトルクアシスト用モータとして作動させ、車両の制動時には三相交流機を電気ブレーキとして作動させることによって、三相交流機にディーゼルエンジンの補佐をさせ、ディーゼルエンジンの負担を軽減して、燃費の向上を図り且つディーゼルエンジンによる大気汚染物質の排出量を低減させるようにしたものである。
【0003】
このようなディーゼル−電気ハイブリッドエンジンを搭載したハイブリッド自動車においては、モータ駆動用のバッテリ(ニッケル水素電池)を搭載する必要があり、しかも、このバッテリを効率良く空冷し得るようにしなければならないが、特にハイブリッド自動車がキャブオーバトラック等である場合には、バッテリをキャブ側に搭載することがスペース的に困難であるため、
図6に示す如く、バッテリパック(電装収納箱)1をシャシフレーム2に対しブラケット3を介して架装させるようにしている。
【0004】
図7に示す如く、前記バッテリパック1の内部には、多数の電池モジュール4aから成るバッテリ4(電装品)が収容されており、吸気口5から取り込んだ外気6をインテークダクト7のU字型流路を通してブロワ8に導き、該ブロワ8からバッテリ4の直下に流し込んで各電池モジュール4a間を通し上方へ抜き出すことでバッテリ4を強制的に空冷するようにしており、各電池モジュール4a間を通し上方へ抜き出た外気6は、吸気口5と反対側のバッテリパック1の側壁1aに開口された排気口9から外部へ排出されるようになっている。
【0005】
ここでブロワ8から取り込まれた外気6は、冷却風として電池モジュール4a間に流れるように、ブロワ8から吸気チャンバ10を介してバッテリ4の底面へ流れている。
【0006】
尚、この種のバッテリパック1に関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−80930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、冷却風を吸気チャンバ10から電池モジュール4a間に流すだけでは、電池モジュール4aの間を流れる冷却風に流量のばらつきを生じ、各電池モジュール4aに温度差が発生して電池モジュール4aの電気容量の変化や高温に伴う劣化進行を生じるという問題があった。また吸気チャンバ10の上流側の電池モジュール4aは、下流側の電池モジュール4aに比べて高温になるという問題があった。
【0009】
本発明は、斯かる実情に鑑み、冷却風の流量のばらつきを抑制する電装収納箱の内部冷却構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、電装収納箱内に取り込んだ冷却風を電装品の直下に流し込んで上方へ抜き出す電装収納箱の内部冷却構造であって、該電装収納箱内の
前記電装品の直下の冷却風の流路下面に、前記電装品の温度差を低減するよう
、流路下面から斜め上方へ向かう傾斜面を有して冷却風を斜め上方へ誘導する第一の凸部と、該第一の凸部の下流後方に位置し且つ流路下面から上方へ向かう障害面を有して冷却風を上方へ誘導する第二の凸部を備えたことを特徴とする電装収納箱の内部冷却構造、にかかるものである。
【0011】
而して、このようにすれば、流路下面の凸部により冷却風の流れを誘導して電装品へ適切に冷却風を流すことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項
1に記載の発明によれば、流路下面の凸部により冷却風を所望の方向へ誘導するので、冷却風の流量のばらつきを抑制して電装品の温度差を低減し、電装品の劣化進行等のばらつきを防止することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明を実施する形態例を示す概略図である。
【
図2】本発明を実施する形態例において電装品との関係を示す概略側面図である。
【
図3】本発明を実施する形態例において冷却風の流れを示す概略図である。
【
図6】ハイブリッド自動車のバッテリパックの斜視図である。
【
図7】
図6のバッテリパックの内部の様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明の実施の形態例を図面を参照しつつ説明する。
【0018】
図1〜
図5は本発明を実施する形態例を示すもので、
図6、
図7と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0019】
図1〜
図5に示す如く形態例のバッテリパック(電装収納箱)1の内部には、多数の電池モジュール4aから成るバッテリ(電装品)4が収容されており(
図2参照)、バッテリ4の下部には、冷却風11が流れる吸気チャンバ12が配置されている。
【0020】
吸気チャンバ12は、バッテリ4の底面より大きい流路下面13と、流路下面13の両側に位置する流路側面14と、流路下面13の一端で冷却風11の入口側に位置する流路入口面15と、流路下面13の他端で流路入口面15に対向する流路端面16とを備えている。
【0021】
流路入口面15には、ブロワ8(
図7参照)から吸気チャンバ12内へ冷却風11を流すダクト17が備えられている。ここでダクト17は、冷却風11の流路方向を、
図1、
図3に示す如く吸気チャンバ12内での冷却風11の流れ方向に対して斜め方向に向いても良いし、他の方向にしても良い。
【0022】
流路下面13には、
図2に示す如く流路入口面15側のバッテリ側面から延びる第一基準線P1と、流路端面16側のバッテリ側面から延びる第二基準線P2との間に、第一の凸部18及び第二の凸部19が配置されている。また第一の凸部18は、電池モジュール4aの温度が高い領域に対応して配置されており、第二の凸部19は、電池モジュール4aの温度が高い領域に対応し且つ第一の凸部18より下流後方に配置されている。ここで第一の凸部18及び第二の凸部19の位置を具体的に説明すると、第一の凸部18及び第二の凸部19の上端を基準位置にした場合、第一の凸部18は、第一基準線P1から第二基準線P2までの距離LSに対し、第一基準線P1より10%の位置から30%の位置までの距離に配置されており、第二の凸部19は、第一の凸部18より下流後方であり、且つ第一基準線P1から第二基準線P2までの距離LSに対し、第一基準線P1より40%の位置から60%の位置までの距離に配置されている。また流路下面13には、冷却風11やバッテリ4から落下した水を排出するように排水穴(図示せず)を備えており、流路下面13の底面は、排水穴に向かって傾斜していることが好ましい。
【0023】
第一の凸部18は、
図4に示す如く流路下面13から下流後方に沿って斜め上方へ向かう前方の傾斜面20と、前方の傾斜面20の上端から下流方向に沿って流路下面13まで斜め下方へ向かう後方の傾斜面21とを備えており、前方の傾斜面20は、傾斜角度を水平面に対して20°以上40°以下の範囲で設定し、後方の傾斜面21は、傾斜角度を水平面に対して10°以上30°以下の範囲で設定している。また第一の凸部18は、上端の高さLh1を、流路下面13からバッテリ4の底面までの高さに対して15%以上30%以下の範囲に設定している。更に第一の凸部18は、前方の傾斜面20における水平方向の長さLf1を、上端の高さLh1に対して150%以上200%以下の範囲に設定しており、後方の傾斜面21における水平方向の長さLr1を、上端の高さLh1に対して300%以上400%以下の範囲に設定している。また前方の傾斜面20及び後方の傾斜面21は、流路下面13の横幅における横幅Lw1を、必要に応じて所定の長さにしても良いし、流路下面13の幅と同じ長さに設定しても良い。
【0024】
一方、第二の凸部19は、
図5に示す如く流路下面13から垂直に上方へ向かう障害面22と、障害面22の上端から下流方向に沿って流路下面13まで斜め下方へ向かう後方の傾斜面23とを備えており、後方の傾斜面23は、傾斜角度を水平方向に対して10°以上30°以下の範囲で設定している。また第二の凸部19は、上端の高さLh2を、流路下面13からバッテリ4の底面までの高さに対して20%以上35%以下の範囲に設定している。更に第二の凸部19は、後方の傾斜面23における水平方向の長さLr2を、上端の高さLh2に対して250%以上300%以下の範囲に設定しており、また障害面22及び後方の傾斜面23は、流路下面13の横幅における横幅Lw2を、必要に応じて所定の長さにしても良いし、流路下面13の幅と同じ長さに設定しても良い。
【0025】
次に、上記実施の形態例の作用を説明する。
【0026】
図2、
図3に示す如く冷却風11をブロワ8(
図7参照)からダクト17を介して吸気チャンバ12に流す際には、第一の凸部18における前方の傾斜面20により、冷却風11を斜め上方へ誘導して一部の冷却風11を強制的に高温の電池モジュール4a間に通し、高温の電池モジュール4aを冷却する。同時に第一の凸部18における後方の傾斜面21や上端位置により、残りの冷却風11を下流側へ流す。なお第一基準線P1に近傍に位置するバッテリ4の端部は、過冷却となる傾向にあるため、端側の電池モジュール4aの入口を塞ぐことが好ましい。
【0027】
そして第一の凸部18より下流側へ冷却風11を流した際には、第二の凸部19における障害面22により、冷却風11を上方へ誘導して大部分の冷却風11を強制的に他の高温の電池モジュール4a間に通し、所定の高温の電池モジュール4aを冷却する。同時に第二の凸部19における後方の傾斜面21や上端位置により、残りの冷却風11を下流側へ流して下流側の残りの電池モジュール4aを冷却する。
【0028】
而して、このように実施の形態例によれば、第一の凸部18及び第二の凸部19により冷却風11を所望の方向へ誘導するので、冷却風11の流量のばらつきを抑制して各電池モジュール4aの温度差を低減し、電池モジュール4aの電気容量の変化や劣化進行を防止することができる。
【0029】
また実施の形態例において、第一の凸部18は、冷却風11を斜め上方へ誘導するように、流路下面13から斜め上方へ向かう前方の傾斜面20を有すると、冷却風11の一部を所定の高温の電池モジュール4aに流すと共に冷却風11の残りを下流後方へ流し、冷却風11の流れを調整するので、冷却風11の流量のばらつきを抑制して各電池モジュール4aの温度差を低減し、電池モジュール4aの電気容量の変化や劣化進行を適切に防止することができる。ここで第一の凸部18が、第一基準線P1より10%の位置から30%の位置にある場合、前方の傾斜面20の角度が20°以上40°以下の範囲にある場合、後方の傾斜面21の角度が10°以上30°以下の範囲にある場合、上端の高さLh1が、流路下面13からバッテリ4までの高さに対して15%以上30%以下の範囲にある場合には、所定の高温の電池モジュール4aをより適切に冷却することができる。
【0030】
更に実施の形態例において、第二の凸部19は、冷却風11を上方へ誘導するように、流路下面13から上方へ向かう障害面22を有すると、冷却風11の大部分を所定の高温の電池モジュール4aに流すと共に冷却風11の残りを下流後方へ流し、冷却風11の流れを調整するので、冷却風11の流量のばらつきを抑制して各電池モジュール4aの温度差を低減し、電池モジュール4aの電気容量の変化や劣化進行を適切に防止することができる。ここで第二の凸部19が、第一基準線P1より40%の位置から60%の位置にある場合、前方の障害面22の角度が垂直である場合、後方の傾斜面23の角度が10°以上30°以下の範囲にある場合、上端の高さLh2が、流路下面13からバッテリ4までの高さに対して20%以上35%以下の範囲にある場合には、所定の高温の電池モジュール4aをより適切に冷却することができる。
【0031】
また実施の形態例において凸部は、流路下面13から斜め上方へ向かう前方の傾斜面20を有する第一の凸部18と、第一の凸部18の下流後方に位置し且つ流路下面13から方へ向かう障害面22を有する第二の凸部19とを備えると、冷却風11を所望の方向へ最適に誘導するので、冷却風11の流量のばらつきを一層抑制して各電池モジュール4aの温度差を低減し、電池モジュール4aの電気容量の変化や劣化進行を好適に防止することができる。
【0032】
尚、本発明の電装収納箱の内部冷却構造は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、必要に応じて他の凸部を追加しても良いこと、傾斜面及び障害面に凹凸を備えても良いこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0033】
1 バッテリパック(電装収納箱)
4 バッテリ(電装品)
11 冷却風
13 流路下面
18 第一の凸部
19 第二の凸部
20 前方の傾斜面
20a 前方の傾斜面
22 障害面