(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5690118
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】スライドファスナー
(51)【国際特許分類】
A44B 19/36 20060101AFI20150305BHJP
A44B 19/32 20060101ALI20150305BHJP
【FI】
A44B19/36
A44B19/32
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2010-255049(P2010-255049)
(22)【出願日】2010年11月15日
(65)【公開番号】特開2011-104371(P2011-104371A)
(43)【公開日】2011年6月2日
【審査請求日】2013年7月26日
(31)【優先権主張番号】0920212.8
(32)【優先日】2009年11月18日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100108589
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 利光
(72)【発明者】
【氏名】マイリオン ウィリアムズ
(72)【発明者】
【氏名】マーク デイビス
【審査官】
新田 亮二
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭52−125906(JP,U)
【文献】
実公昭46−001148(JP,Y1)
【文献】
特開2008−206986(JP,A)
【文献】
実開昭49−028268(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B 19/00 − 19/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のファスナーテープと、
前記一対のファスナーテープの隣接エッジに沿って設けられる一対の連結要素と、
前記一対の連結要素を嵌合又は開離するスライダーと、
前記一対の連結要素の端部において前記ファスナーテープに固定されるエンドストップと、を備えるスライドファスナーであって、
前記一対の連結要素は、前記一対の連結要素の端部の一領域で固定され、
前記スライダーの基部が前記エンドストップに接している状態において、前記固定された一対の連結要素が、前記スライダーのダイヤモンドの後方先端部と前記スライダーの前記基部との間に延在し、
前記連結要素が連続コイルにより形成され、
前記スライドファスナーが防水スライドファスナーであり、
前記ファスナーテープは、前記ファスナーテープのテープ層の片面に防水層を備え、互いの前記防水層が当接し、
当接する前記防水層がさらに溶融されて溶着されている、ことを特徴とするスライドファスナー。
【請求項2】
前記連結要素が射出成形により固定される、ことを特徴とする請求項1に記載のスライドファスナー。
【請求項3】
前記連結要素が縫製により固定される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のスライドファスナー。
【請求項4】
前記連結要素が溶着又は溶融により固定される、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のスライドファスナー。
【請求項5】
前記ファスナーテープ及び前記連結要素が、前記ファスナーテープの前記隣接エッジの間の前記エンドストップの延出部により結合される、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のスライドファスナー。
【請求項6】
前記エンドストップが密閉エンドストップであり、前記ファスナーテープの前記隣接エッジを被覆するように設けられる、ことを特徴とする請求項5に記載のスライドファスナー。
【請求項7】
前記エンドストップが、前記ファスナーテープの少なくとも片方のテープ表面に形成される本体部分を有している、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のスライドファスナー。
【請求項8】
前記エンドストップが前記防水層の隣接エリアにわたって延在する、ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のスライドファスナー。
【請求項9】
前記エンドストップは、前記本体部分の前記連結要素と反対側に延出し、前記ファスナーテープの端部まで延在する、ことを特徴とする請求項7又は8に記載のスライドファスナー。
【請求項10】
前記エンドストップが1つ以上の連結要素を被包する、ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のスライドファスナー。
【請求項11】
前記エンドストップは、前記スライダーの基部が当接する前記連結要素のチェーンの方向に前記エンドストップから突出する突部を更に備える、ことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のスライドファスナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンドストップを備えるスライドファスナー又はジップファスナーに関連する。本発明は、連結要素を有するスライドファスナーとの使用について特に用途が見出されるが、ファスナーテープのエッジの所定箇所に圧着される金属製の連結要素を有するファスナーに使用することができ、成形又は形成要素との使用も好ましい。本発明のスライドファスナー及びエンドストップは、プラスチック製の連結要素とともに使用されることがより好ましい。
【背景技術】
【0002】
現在のスライドファスナー又はジップファスナーの使用において稀に見られる欠点の1つは、ほとんどのスライドファスナーで連結要素の交互嵌合により形成されるチェーンが、スライドファスナーを折り返して充分な圧力を加えること、又は連結要素の交互嵌合又は連結が外れるように充分な力で交互嵌合している連結要素を押圧することによって、外れてしまうことである。たいていの場合、これは非常に稀な出来事であるが、例えば、過剰な力の使用によって発生すると、スライドファスナーが装着されている製品が実際に使用できなくなるだろう。
【0003】
このようにして外れたスライドファスナーを修復するのにしばしば採用される方法の1つは、開いてしまった連結要素の上でスライドファスナーに存在するスライダーをスライドファスナーの開始位置へ戻してから、間違って開いてしまった連結要素を協働構成に戻そうとしてスライダーを再び引き上げることである。端部開放スライドファスナー(つまり、分離可能な底部ストップを用いることで2本のテープが一緒に結合されたスライドファスナー)では、スライダーが開始位置へ戻ることが可能であるため、これは比較的簡単な手順である。端部密閉スライドファスナー(これは、チェーンの底端部が結合テープを有する場合である)については、スライドファスナーの底部でスライダーを開始位置に戻すことが可能であるが、このアプローチでは充分でない。その理由は、スライドファスナーを使用する時に、正確な密閉角度となるようにスライダーの中央に存在するダイヤモンドの周囲を連結要素が通過する必要があるためである。そのため、スライダーのダイヤモンドは、開いた連結要素よりも下の位置から始まる必要がある。しかし、ダイヤモンドはスライダーの前部の方に固定されているため、スライダーの後部より下までダイヤモンドが移動することは決してない。さらに、端部密閉スライドファスナーでは、スライダーの底部が底部ストップより下まで移動するとスライダーがスライドファスナーから落下するため、スライダーの底部がそこまで移動することは決してない。その結果、スライダーがスライドファスナーの底部にある時でも、いったんチェーンが壊れて開いてしまうと連結要素が開離したままであることにより、スライドファスナーの連結要素のすべてが再び完全に閉じることを妨げる。ある範囲の用途で使用されるスライドファスナーにはこの状況が不充分であることは、自明である。
【0004】
そのため、本発明は、改良型エンドストップ、最も好ましくは改良型底部エンドストップによりこの問題に対処しようとする。
【0005】
限定されるわけではないが、本発明が特に有益である状況の1つは、ある種のコンシールファスナーなど、熱可塑性コーティング層を有するスライドファスナー、又は特許文献1及び特許文献2に記載されたような流体密封スライドファスナーに関するものである。これらの構成では、ファスナーテープの一表面に形成された天然又は合成ゴムの熱可塑性コーティング層あるいは防水層が、連結要素の面より上で相互に当接して、水の浸透を防止するシールを形成する。結果的に、上述したように防水シールを形成する熱可塑性コーティング層を有するファスナーについては、ファスナーの連結要素が外れてしまうという問題は、スライドファスナーが取り付けられた物品を使用不能にする。
【0006】
そのため、本発明は、連結要素が開離してしまった密閉エンドストップを有するスライドファスナーのための防水スライドファスナーと関連する問題を克服しようとするものでもある。しかし、本発明は主として、連結要素の一部又は全部が開いてしまったスライドファスナーの連結要素のすべてを再び交互嵌合させることが望ましいというスライドファスナーの問題に対処しようとする。
【0007】
スライドファスナーに密閉エンドストップを形成するための様々な方法が存在する。密閉エンドストップとは、ファスナーテープを架橋して2本のテープを一緒に固定することに加えてスライダーの移動を拘束するエンドストップである。たいてい、密閉エンドストップはファスナーの底端部(下方側)で使用されるが、1つ以上のスライダーが使用されるスライドファスナーでは、このようなエンドストップが上端部にも使用される。しかし、底部エンドストップ(又は上端部)の目的は、連結要素、ひいてはスライドファスナーを開閉するためにスライダーを往復動作させる時に、スライダーがスライドファスナーから外れるのを防止することである。
【0008】
一般的に、最も基本的なエンドストップは、金属製ステープル又はクリンプをファスナーテープ又はテープに圧着することにより形成される。底部エンドストップについては、スライドファスナーの2本のテープを架橋してこれらを一緒に保持することにより、取り付けられたスライダーがスライドファスナーから外れるのを防止するように、金属製ステープル又はクリンプが設けられるとよい。
【0009】
特許文献3には、一対のテープと、テープの隣接エッジに沿った連結要素とを包含する防水スライドファスナーとともに使用するためのエンドストップが開示されており、テープが部分的に切除されて、テープエッジに沿って連結要素から離間するように延在する、エンドストップが成形される間隙が形成される。
【0010】
特許文献4では、補強を行うため、密閉底部エンドストップの下においてファスナーチェーンの端部にストリップ(布などの片)が締結され、特許文献5では、ストリップを一群のコイルタイプの連結要素に溶着することによりエンドストップが形成される。
【0011】
連続コイルタイプの連結要素では、エンドストップを形成するのに連結要素そのものを利用するという試みが多く行われている。これらの試みは一般的に、対向する連結要素を連結配置で融着するため(底部エンドストップの場合)、又は上端部の隣接する連結要素をテープエッジに融着するため(上部エンドストップの場合)、特許文献6に記載されているような連結要素の溶融を必要とする。しかし、このアプローチは一般的に、複雑で時間のかかるプロセスであるため、エンドストップ又はコイル形状の連結要素には不充分であるという結果を生んでいる。
【0012】
特許文献7には、底部エンドストップを備えるスライドファスナーが記載されており、長尺部材がスライドファスナーの底部の連結状態のコイルの重複中央開口部に挿入されてから、スライドファスナーの底部で一巻き以上のコイルを変形することにより所定箇所に固定される。
【0013】
特許文献8には、ともに合成樹脂からなるロッド状の本体と連結要素の連結ヘッドとを備え、ロッド状の本体が連結ヘッドにより形成されるスペースに挿入され、スライドファスナーへ一緒に選択的に融着されることにより形成されるスライドファスナー用エンドストップが記載されている。
【0014】
特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13には、防水性とともにエンドストップを備える様々な形のスライドファスナーが開示されているが、これら文献のいずれも、スライドファスナーのチェーンが開いてしまった時でも開離したままの連結要素が決して存在しないように底部連結要素が結合されているスライドファスナー用エンドストップを提供するという本発明の問題には対応していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】欧州特許第1057423号明細書
【特許文献2】欧州特許第1175842号明細書
【特許文献3】欧州特許第1964486号明細書
【特許文献4】米国特許第3924305号明細書
【特許文献5】実公昭63−28887号公報
【特許文献6】英国特許第1270179号明細書
【特許文献7】米国特許第4091509号明細書
【特許文献8】欧州特許第1543739号明細書
【特許文献9】英国特許第1024733号明細書
【特許文献10】欧州特許第1772071号明細書
【特許文献11】欧州特許第0345799号明細書
【特許文献12】欧州特許第1321062号明細書
【特許文献13】米国特許第3616939号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明によれば、例えば、射出成形によってある長さの連結要素を対向する連結テープに一緒に溶着することにより密閉エンドストップの形成が可能であることが、現時点で判明している。連結関係となるように射出成形される前に、連結要素が代替的及び/又は付加的に一緒に溶着されてもよい。一緒に溶着及び/又は射出成形される前に、連結要素が一緒に縫い付けられてもよい。取り付けられた時にファスナーテープを被覆する熱可塑性防水層の対向エッジ又は密封リップも、融着又は射出成形された連結要素の領域に一緒に溶着又は密閉されるとよい。このプロセスステップの組み合わせは、エンドストップの強度を高め、ファスナーの両面に滑らかな表面を設けるとともに、例えば、防水スライドファスナーの構成とともに使用するためのエンドストップの下における流体密封性を高める。しかし、熱可塑性防水層が存在するかしないかに関係なく、本発明は、スライドファスナーのチェーンが外れた時に連結要素が開いたままとなることに関連する問題を扱う。
【0017】
加えて、テープへのエンドストップの射出成形により連結要素が結合される時には、これはエンドストップの位置についてのより良好な視覚的表示となるとともに、エンドストップの位置でのテープの分離に対する耐性を高める。
【0018】
さらに、射出成形されたプラスチック材料が、連結要素及び/又は溶着された連結要素に、又は連結要素の直下の間隙チェーンに存在することで、連結要素のチェーンが外れた場合に再び交互嵌合することのできない連結要素の領域が決して存在しないように、成形及び/又は溶着された連結要素を通過する際にスライダーの基部に支承される前部を有する延出エンドストップが設けられる。
【0019】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、密閉エンドストップを有するスライドファスナーであったても、一部又は全部が開いてしまった連結要素のすべてを再び交互嵌合させることができるスライドファスナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
そのため本発明の第1の面によれば、
一対のファスナーテープと、
一対のファスナーテープの隣接エッジに沿って設けられる一対の連結要素と、
一対の連結要素を嵌合又は開離するスライダーと、
一対の連結要素の端部においてファスナーテープに固定されるエンドストップと、を備えるスライドファスナーであって、
一対の連結要素は、一対の連結要素の端部の一領域で固定され、
スライダーの基部がエンドストップに接している状態において、固定された一対の連結要素が、スライダーのダイヤモンドの後方先端部とスライダーの基部との間に延在
し、
連結要素が連続コイルにより形成され、
スライドファスナーが防水スライドファスナーであり、
ファスナーテープは、ファスナーテープのテープ層の片面に防水層を備え、互いの防水層が当接し、
当接する防水層がさらに溶融されて溶着されている、ことを特徴とするスライドファスナーが設けられる。
【0021】
連結要素は、射出成形により固定されるとよい。代替的に、連結要素は、縫製により固定されてもよい。また、連結要素は、溶着又は溶融により固定されてもよい。しかし、本発明の好適な実施形態では、連結要素に適当な材料を溶着又は溶融することにより、また射出成形することにより、連結要素が固定されてもよい。
【0022】
本発明では、スライドファスナーのファスナーテープ及び連結要素が、ファスナーテープの隣接エッジの間のエンドストップの延出部により結合される
。
【0023】
本発明では、エンドストップが密閉エンドストップであり、ファスナーテープの隣接エッジを被覆するように設けられる。
【0024】
本発明では、エンドストップが、ファスナーテープの少なくとも片方のテープ表面に形成される本体部分を有している。
【0026】
エンドストップが防水層の隣接エリアにわたって延在することも好ましい。さらに、エンドストップが、本体部分の連結要素と反対側に延出し、ファスナーテープの端部まで延在することが好ましい。
【0027】
本発明では、エンドストップが1つ以上の連結要素を被包する。
【0028】
さらに、本発明のスライドファスナーにおいて、エンドストップは、スライダーの基部が当接する連結要素のチェーンの方向にエンドストップから突出する突部を更に備えることが好ましい。突部は、プラスチック材料からなることが好ましく、スライダーの当接を可能にする設計を維持しながら、突部を越えないようにスライダーを停止させるような寸法を持つ。
【0029】
本発明の他の好適な特徴及び面は、以下の説明及び添付の請求項から明らかになるだろう。
【発明の効果】
【0030】
本発明のスライドファスナーによれば、一対の連結要素が、一対の連結要素の端部の一領域で固定され、スライダーの基部がエンドストップに接している状態において、固定された一対の連結要素が、スライダーのダイヤモンドの後方先端部とスライダーの基部との間に延在するため、密閉エンドストップを有するスライドファスナーであったても、一部又は全部が開いてしまった連結要素のすべてを再び交互嵌合させることができる。
また、本発明のスライドファスナーによれば、スライドファスナーが防水スライドファスナーであり、ファスナーテープは、ファスナーテープのテープ層の片面に防水層を備え、互いの防水層が当接して防水シールを形成し、さらに当接する前記防水層が溶融されて溶着されているため、耐水性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
添付図面を参照して、本発明を例としてさらに説明する。
【
図5】底部エンドストップを所定箇所に成形するステップの前の、
図1に対応する代替スライドファスナーの上面図を示す。
【
図6】底部エンドストップを所定箇所に成形するステップの前の、
図2に対応する代替スライドファスナーの下面図を示す。
【
図7】領域Aで示された溶着後の連結要素を備える本発明によるスライドファスナーの下面図を示す。
【
図8】防水層の密封リップがさらに溶着された、
図5に対応するスライドファスナーの上面図を示す。
【
図9】連結要素の一部分がエンドストップの上で一緒に溶着された、
図1及び
図2のスライドファスナーの下面図を示す。
【
図10】溶着後の連結要素の上の位置に支承されたスライダーを備える本発明によるスライドファスナーの下面図を示す。
【
図11】射出成形されたプラスチック材料の被覆部により連結要素の一部分が固定された、本発明によるエンドストップを備えるスライドファスナーの下面図を示す。
【
図12】ダイヤモンドが露出したスライダーの一部切欠斜視図を示す。
【
図13】ダイヤモンドの後方先端部より下の領域Aで示された量だけ溶着された連結要素を備えるスライドファスナーの一部分の拡大平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1及び
図2には、スライドファスナー、より詳しくは、上記特許文献1に見られ参考として取り入れられている一般的なタイプの防水スライドファスナー2が示されている。スライドファスナー2は、テープ層5,7を有して、例えば、ポリエステルなどの編製又は織製からなる一対のファスナーテープ(以下、単に「テープ」とも言う)4,6を包含する。当該技術でよく周知のように、テープ層5,7の下面16,18において、その隣接エッジ(一対のファスナーテープ4,6の隣り合う縁部)20,22には連結要素12,14が縫い付けられている。連結要素12,14は、モノフィラメントをコイル状に成形して連続コイルとし、そのコイル状の連結要素12,14に、互いに嵌合するための頭部(膨大状に形成される)を有するものであり、コイル状ファスナーエレメントとも言う。連結要素12,14は、ファスナーテープ4,6が形成される際にファスナーテープ4,6に織り込まれるか編み込まれても、後で縫い付けられてもよい。例えば、ポリウレタンなどの防水性の熱可塑性エラストマ材料による防水層8,10が、テープ層5,7の上面に設けられている。テープ層5,7及び防水層8,10の材料は、相互に対する接合部を容易に形成するように融和性であることが好ましい。つまり、ここで使用される「融和性」の語は、相互への接合が容易であるという性質を意味する。ここで、上記例では、テープ層5,7及び防水層8,10をファスナーテープ4,6とするが、防水層8,10を有さずに、テープ層5,7のみのファスナーテープ4,6もあり得る。
【0033】
周知のスライドファスナーによれば、スライダー130,131(
図12,
図13参照)の往復動作により連結要素12,14が相互に連結嵌合又は開離する。スライダー130,131の往復動作において、相互の連結要素12,14を嵌合させるスライダーの移動方向をスライドファスナー2の前方、前方側と反対方向で、相互の連結要素12,14を開離させるスライダーの移動方向をスライドファスナー2の後方とする。スライダー130,131は、一般的に、スライダーの一般的構造であるガイドポスト又はダイヤモンド120により接続された上方翼部100(
図10参照)及び下方翼部110を包含する。ここで、ダイヤモンド120は、スライダー130,131の上下翼部100,110の前方寄りに位置し、上下翼部100,110の前方端を肩口とし、上下翼部100,110の後方端をスライダーの基部140(又は後口)とする。しかし、スライダー130,131は、この一般的構造に必ずしも限定されず、この形のスライダーに本発明が限定されるわけではないことは理解されるだろう。例えば、スライダーの性質及びこれが閉じる必要のあるスライドファスナーのタイプに応じて、ダイヤモンド又はガイドポストの位置を移動させ、形状を変化させることができる。しかし、本発明にとって重要なのは、
図12及び
図13に示すダイヤモンド120と、
図9及び
図13に領域Aと記された溶着された連結要素12,14(160)との関係である。
【0034】
図1及び
図2は、全体として参照番号26で示された成形底部エンドストップを示す。本発明の一実施形態におけるエンドストップ26の形成については、エンドストップ26の形成の前のスライドファスナー2を示す
図5及び
図6を参照して、以下で説明する。
【0035】
図1及び
図2に示された形のエンドストップ26では、エンドストップ26がプラスチック材料から成形される。また、エンドストップ26は、防水層8,10と同様の熱可塑性エラストマで成形することもできる。エンドストップ26は、上部44と下部46とを有する本体部分34を有する。上部44及び下部46はそれぞれ、テープ層5,7及び防水層8,10の上及び/又は下に延在する。エンドストップ26は、一対のテープ層5,7に跨り、連結要素12,14の列の後端部に形成される。
【0036】
このように形成された本体部分34は、連結要素12,14を連結又は分断(開離)するためにスライダー130,131が連結要素12,14に沿って往復動作される時に、スライダー130,131が連結要素12,14から外れるのを防止する役割を果たす。
【0037】
図4に示すように、本発明の一実施形態では、エンドストップ26がテープ4,6の対向エッジ30,32の間に取り付けられた時に、本体部分34がテープ4,6の対向エッジ30,32間の間隙28を埋める。本体部分34は、テープ4,6の対向エッジ30,32も覆って、ファスナーテープ(ファブリック層)4,6の下面16,18及び防水層8,10の上面36,38に支承されこれに接合される。そして、本体部分34から延出するエンドストップ26の延出部(延出エンドストップ)54は、本体部分34からスライドファスナー2の後方向(連結要素12,14が形成される側と反対側)に、テープ層5,7に沿って延びて形成され、一対のテープ層5,7間の間隙を埋める。また、延出エンドストップ54は、本体部分34よりも高さが低い(厚さが薄い)部分である。
【0038】
図5及び
図6には、エンドストップ26の形成前の本発明の一面によるスライドファスナー2の上下面部分がそれぞれ図示されている。
【0039】
図7及び
図9には、溶着又は融着された連結要素を備える本発明によるスライドファスナーの下面図(連結要素側を表す図)が図示されている。溶着又は融着されて連結要素12,14が固定されたエリアは、
図7及び
図9では領域Aと記され、
図9のエンドストップ26の最前部分からある長さの連結要素12,14に沿ってこのエリアが延在することが分かる。例えば、金属製クリップの形の単純なエンドストップが使用される場合には、溶着又は融着された連結要素12,14がクリップの直後から始まることは、理解されるだろう。このようにして、溶着又は融着後の連結要素12,14は延出エンドストップ55を形成する。つまり、本体部分34から延出するエンドストップ26の延出部(延出エンドストップ)55は、本体部分34からスライドファスナー2の前方向(連結要素12,14が形成される側)に延びて形成されている。また、延出エンドストップ55は、本体部分34よりも高さが低い(厚さが薄い)部分であり、スライダー130,131の上下翼部100,110間の間隙内に入り込む。
【0040】
本発明によれば、溶着、縫製、及び射出成形のうちの1つ以上によって形成されて延出エンドストップ55を形成する連結要素12,14の結合(固定)領域「A」の大きさは、
図12で領域「A」と記されたスペースと等しい必要があることは明らかだろう。
図12に示すように、領域「A」と記されたスライダー130の領域は、スライダー130の基部(底部又は後口)140からダイヤモンド120の後方先端部150まで延在する。この結合領域「A」における連結要素12,14は、互いに分離不可能に一体に固定されている。
【0041】
結果的に、
図13に示すように、スライダー131の基部140が、溶着又は融着された連結要素160の始点と同じ高さ(厚さ)となるように、スライダー131がスライドファスナー2を移動すると、ダイヤモンド120の後方先端部150は、溶着又は融着された連結要素160(一緒に縫製されてもよい。この縫製は、一対の連結要素12,14を互いに連結するように糸で縫い付けることにより行われ、縫製された連結要素190となる。)の前端部(本体部分34と反対側の端部)に支承される。なお、連結要素160の高さ(厚さ)とは、ファスナーテープ4,6の前後方向に平行な寸法である。後述する幅とは、ファスナーテープ4,6に水平且つ前後方向に垂直な方向の寸法であり、その方向を幅方向とも言う。つまり、本発明による連結要素160の溶着又は融着の程度は、スライダー130,131の基部140とダイヤモンド120の後方先端部150との間の距離と同程度でなければならず、ゆえに両方が領域「A」と記されている。
【0042】
そのため、連結要素160の溶着又は融着部分Aの大きさは、スライダー130,131の基部140がエンドストップ26の前部180に支承される時(例えば、エンドストップ26がテープ4,6に射出成形された時)に、スライダー130,131が溶着後の連結要素160を通過して、連結要素160がスライダー130,131によって隠れるため、スライダー130,131のダイヤモンド120の後方先端部150より後方に不意に開離してしまい締結不能な連結要素12,14が存在しないようにするのに十分な大きさである必要がある。結果的に、スライドファスナー2の開放連結要素12,14に沿ってスライダー130,131が再び引っ張られると、開放連結要素12,14が再び閉じられ、開いたままの連結要素12,14を残さない。換言すると、連結嵌合している連結要素12,14が不意に開離してしまったとしても、スライダー130,131をエンドストップ26に接するまで移動させることにより、エンドストップ26の延出エンドストップ55が、スライダー130,131の後口から入り込み、ダイヤモンド120の後方先端部150に接触する。これにより、開離してしまった連結要素12,14は、ダイヤモンド120の後方先端部150より前方に位置し、後方先端部150より後方には、溶着又は融着された連結要素160である延出エンドストップ55しか存在しない(即ち、スライドファスナー2を正常にエンドストップ26まで開いた状態になる)。従って、スライダー130,131を再び引き上げることにより、開離状態の連結要素12,14が最初の1つ目から正常に嵌合するので、引き上げられたスライダー130,131とエンドストップ26との間に開離状態のままの連結要素12,14が残ることはなく、すべての連結要素12,14を再び交互嵌合させることが可能となる。
【0043】
ゆえに、本発明によれば、領域Aと記された連結要素のエリアが一緒に溶着又は融着されて、
図11に55で示された延出エンドストップを形成するか、代替的及び/又は付加的に、
図11に示す突部を形成するのに使用されるのと同じ材料で連結要素が射出成形されて、二重に補強されたエリアを形成する。
【0044】
突部の形の射出成形エンドストップがさらに形成された時に射出成形突部が最後の融着連結要素と当接するか部分的にこれと重複するように、延出エンドストップを形成する融着後の連結要素が間隙チェーンでも使用されてもよい。なお、間隙チェーンとは、突部と最後の連結要素との間に間隙を有するチェーンである。
【0045】
領域「A」と記された本発明の延出エンドストップは、追加縫製が行われても行われなくてもよく、また、テープ間の連結要素を、融着、溶着、縫製、及び射出成形のうちの1種類の接続方法で結合することにより形成されてもよく、例えば、連結要素が加熱により融着されるか射出成形プロセスを用いて溶着されてもよいが、領域「A」と記された連結要素のエリアに、追加縫製が行われても行われなくてもよく、また、領域「A」と記された連結要素のエリアが、最初に熱によって溶着又は融着されてから射出成形によりさらに被覆されてもよい。つまり、不意に開離してしまったスライドファスナーについて上に概説した問題に対応する強力な延出エンドストップを形成することが好ましい。
【0046】
最後に、スライドファスナー2のテープ層5,7の上部又は上面が熱可塑性エラストマ材料の防水層8,10で被覆される時に、延出エンドストップ
55の形成の前か後に、防水層8,10の当接により形成される防水層8,10の密封リップを、
図8に示す中央線24において溶融して溶着することにより、耐水性に関して延出エンドストップ
55がさらに改良されるとよい。
【0047】
さらに、
図1及び
図2に示すように、防水層8,10の上面36,38又はテープ層5,7の下面16,18にわたって、また、必要に応じてテープ4,6の端部40,42まで延在する層52,54を形成するように、エンドストップ26が延在してもよい。
【0048】
そのため、強制的な開離により従来のスライドファスナーでは開いたままとなっていた連結要素が溶着又は融着されて固定され、長尺状のエンドストップ、最も好ましくは長尺状の底部エンドストップを形成することによって、上に概説した旧型のエンドストップを備えるスライドファスナーの問題が解決される。
【0049】
つまり、スライドファスナー2のチェーンが外れて完全に開いてしまった場合でも、スライダー130,131のダイヤモンド120の後方先端部150から基部140までの連結要素12,14を溶着、融着、射出成形することにより、底部エンドストップ26に延出エンドストップ55を形成して、この延出エンドストップ55にスライダー130,131を支承させることによって、スライダー130,131のダイヤモンド120の後方先端部150より後方には開いたままの連結要素12,14が存在せず、ゆえに再結合されることのない連結要素12,14も存在しない。
【0050】
本発明によるスライドファスナー2及びエンドストップ26は、以下のように準備される。
【0051】
最初に、
図7及び
図9で「A」と記された連結要素12,14の範囲又は部分が、一緒に縫製される、及び/又は例えば、超音波により溶着される。こうして、互いの連結要素12,14そのものが引き離されることが確実になくなり、また、底部エンドストップ26の配置を計算するための基部(溶着された連結要素160)が用意される。
【0052】
第2に、スライドファスナー2が密閉スライドファスナーとして使用される時には、スライドファスナー2の防水層8,10の密封リップが加熱されて一緒に結合される。普通のスライドファスナー又はジップファスナーでは、プラスチックのシールがそこには存在しないので、このステップが必要ないことが、当該技術分野の当業者には理解されるだろう。
【0053】
第3に、溶着された連結要素160のエリアより下で、エンドストップ26がテープ4,6に射出成形される。これと一体的に、プラスチック材料も連結要素160の溶着部に重複成形(溶着部の外側を被覆するように成形)されて、完成品の延出エンドストップ55を形成する。
【0054】
溶着又は融着された連結要素160の上でのこの付加的成形は溶着部を補強して、これを美的に好ましいものにもする。付加的成形は、溶着部の全体がスライドファスナー2から引き剥がされることを防止するのにも役立つ。
【0055】
突部が底部エンドストップから突出している本発明の好適な実施形態では、スライダーの底部(基部)がここで停止することで、時間が経つと摩耗して破損する重複成形される溶着エリアまでスライダーのダイヤモンドが引っ張られて過剰に接触することを防止する。スライダーの幅又は高さよりも突出する突部を有する底部エンドストップがないと、過剰な力によってスライダー全体がチェーンから一緒に引き離される危険が常に存在する。突部は、嵌合状態の連結要素の厚さよりも厚くなるように突出しており、さらに、嵌合状態の連結要素の幅方向寸法よりも大きく、連結要素の外側に突出している。突部は、本体部分34の一部であり、スライダーの基部と当接して、スライダーがファスナーチェーンから抜脱することを防止する役割がある。
【0056】
突部及び重複成形部は一体的である必要はなく、実際には金属製の留め金又は類似のものでよいことが理解されるだろう。図示例において、連結要素は、コイル状の連結要素であるが、これに限定されず、通常のスライドファスナーに使用される適宜の連結要素を使用してもよい。例えば、連結要素がファスナーテープに射出成形されていてもよく、また、連結要素をファスナーテープ上に配置して、溶着又は溶融により固定してもよい。
【符号の説明】
【0057】
2 スライドファスナー
4,6 ファスナーテープ
5,7 テープ層
8,10 防水層
12,14 連結要素
16,18 下面
20,22 隣接エッジ
24 中央線
26 エンドストップ
30,32 対向エッジ
34 本体部分
36,38 上面
40,42 テープ端部
44 上部
46 下部
52 本体部分の層
54 延出エンドストップ
55 延出エンドストップ(突部)
100 上方翼部
110 下方翼部
120 ダイヤモンド
130,131 スライダー
140 スライダー基部
150 後方先端部
160 溶着された連結要素
180 エンドストップの前部
190 縫製された連結要素
A 領域