(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5690119
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】潤滑油及び軽油燃料の良否判定システム
(51)【国際特許分類】
G01N 33/30 20060101AFI20150305BHJP
G01N 33/22 20060101ALI20150305BHJP
【FI】
G01N33/30
G01N33/22 B
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-261180(P2010-261180)
(22)【出願日】2010年11月24日
(65)【公開番号】特開2012-112759(P2012-112759A)
(43)【公開日】2012年6月14日
【審査請求日】2013年10月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000177276
【氏名又は名称】三輪精機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】392023681
【氏名又は名称】株式会社サンエー
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】舟橋 博
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 尚己
(72)【発明者】
【氏名】牧野 努
(72)【発明者】
【氏名】岡 弘志
【審査官】
草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−010866(JP,A)
【文献】
特開2009−210568(JP,A)
【文献】
特開平06−117987(JP,A)
【文献】
特開平05−164675(JP,A)
【文献】
特表2003−524169(JP,A)
【文献】
特開平05−215682(JP,A)
【文献】
特開昭59−211859(JP,A)
【文献】
実開昭61−143049(JP,U)
【文献】
特開昭63−313065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/30
G01N 33/22
G01N 1/10
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジンに用いられる潤滑油と軽油燃料の良否を、ディーゼルエンジンに搭載した判定ユニットで自動的に判定するシステムであって、前記判定ユニット内に設けられて所定量の潤滑油を貯留し得るオイルチャンバと、ディーゼルエンジンで使用される潤滑油の一部を導いて前記オイルチャンバの上部を経由させてから判定ユニット外へ送り出すオイルラインと、該オイルラインにおける前記オイルチャンバの上流側で流路を開閉する潤滑油用開閉弁と、前記オイルチャンバ内に設けられて潤滑油の粘度を計測する潤滑油用粘度センサと、前記判定ユニット内に設けられて所定量の軽油燃料を貯留し得る燃料チャンバと、ディーゼルエンジンで使用される軽油燃料の一部を導いて前記燃料チャンバの上部を経由させてから判定ユニット外へ送り出す燃料ラインと、該燃料ラインにおける前記燃料チャンバの上流側で流路を開閉する燃料用開閉弁と、前記燃料チャンバ内に設けられて軽油燃料の粘度を計測する燃料用粘度センサと、ディーゼルエンジンの稼働中に潤滑油用開閉弁及び燃料用開閉弁を制御してオイルチャンバ及び燃料チャンバに潤滑油及び軽油燃料を採取し且つディーゼルエンジンの停止後に潤滑油用粘度センサ及び燃料用粘度センサにより採取済みの潤滑油及び軽油燃料の粘度を計測して良否を判定する制御装置とを備えたことを特徴とする潤滑油及び軽油燃料の良否判定システム。
【請求項2】
燃料チャンバを判定ユニット内におけるオイルチャンバより下側に設けると共に、前記オイルチャンバの底部と前記燃料チャンバの天井部とを連絡ラインにより連通し、該連絡ラインの途中に流路を開閉する混合用開閉弁を設け、該混合用開閉弁を潤滑油及び軽油燃料の粘度の計測の後に開けてオイルチャンバの潤滑油を燃料チャンバに落とすことで軽油燃料と混合し且つその混合油の粘度を燃料用粘度センサにより計測してバイオ燃料の混入度合を判定するように制御装置を構成することを特徴とする請求項1に記載の潤滑油及び軽油燃料の良否判定システム。
【請求項3】
オイルチャンバの潤滑油の温度を検出する温度検出手段を備え、ディーゼルエンジンの始動直後から潤滑油用開閉弁と燃料用開閉弁を開け且つ前記温度検出手段により検出される潤滑油の温度が規定温度に達した時に前記潤滑油用開閉弁と燃料用開閉弁を閉じるように制御装置を構成することを特徴とする請求項1又は2に記載の潤滑油及び軽油燃料の良否判定システム。
【請求項4】
判定ユニット内における潤滑油用開閉弁の上流側に所定量の潤滑油を貯留し得る一時溜めチャンバを設けることを特徴とする請求項3に記載の潤滑油及び軽油燃料の良否判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油及び軽油燃料の良否判定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動車の潤滑油は、走行に伴い劣化してくるものであるため、潤滑油の劣化状態を定期的に測定し、その劣化の度合に応じて潤滑油を交換する必要があるが、現状では、自動車のボンネットを開けてエンジンルーム内のオイルゲージにより潤滑油の劣化状態を調べる方法しかないため、特にユーザーが意識的に潤滑油の劣化状態を調べない限り、潤滑油が劣化したまま放置されてしまう虞れがある。
【0003】
また、自動車に搭載されるディーゼルエンジンは、軽油を燃料として最適動作するように設計されており、軽油よりも安価な灯油や重油を混合された粗悪な軽油燃料を使用することでディーゼルエンジンを傷める虞れがあるため、このような粗悪な軽油燃料の使用は避けなければならないが、開発途上国などでは、悪質な業者により粗悪な軽油燃料が販売されているケースがあり、ユーザーが気づかないまま粗悪な軽油燃料を購入して使用してしまっているケースもある。
【0004】
更に、近年においては、バス・大型トラック・建設機械・船舶・軍用車両用の軽油代替燃料として、バイオ燃料(BDF
[登録商標]/Bio Diesel Fuel)を5%前後混入して使用することが行われ始めている。この種のバイオ燃料は、一般の動植物油脂をメタノール処理又は水素化分解して製造したもので、5%を超える混入では、バイオ燃料が潤滑油に溶け込んで該潤滑油を希釈してしまったり、固形物が生成して燃料フィルタを詰まらせたりする虞れがあるため、バイオ燃料の混入は5%を超えないよう考慮しなければならないが、ユーザーにはバイオ燃料の混入が5%を超えているか否かを確認する術がないのが実情である。
【0005】
このため、現在使用している潤滑油の劣化状態や軽油燃料が許容範囲の品質のものであるか否かを自動的に判断することが可能な車載システムの導入が望まれており、例えば、潤滑油の劣化を判定する車載システムとして下記の特許文献1等が提案されており、燃料の種類を識別する車載システムとして下記の特許文献2等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−10866−号公報
【特許文献2】特開2009−210568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これまでに提案されている車載システムは、何れもエンジン稼働中に配管内を流れる潤滑油の粘度を計測して劣化度合を判定したり、燃料タンク内の燃料の粘度を計測して種類を識別したりする形式のものであったため、エンジン振動の影響により正確な粘度の計測が難しく、しかも、バイオ燃料は混入度合により大きな粘度変化が起こらないため、バイオ燃料の混入度合が過剰であるか否かまでは判定することができなかった。
【0008】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、ディーゼルエンジンに用いられる潤滑油と軽油燃料の良否を自動的に判定するにあたり、従来より精度の高い粘度計測を実現して正確な判定を行い得るようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ディーゼルエンジンに用いられる潤滑油と軽油燃料の良否を、ディーゼルエンジンに搭載した判定ユニットで自動的に判定するシステムであって、前記判定ユニット内に設けられて所定量の潤滑油を貯留し得るオイルチャンバと、ディーゼルエンジンで使用される潤滑油の一部を導いて前記オイルチャンバの上部を経由させてから判定ユニット外へ送り出すオイルラインと、該オイルラインにおける前記オイルチャンバの上流側で流路を開閉する潤滑油用開閉弁と、前記オイルチャンバ内に設けられて潤滑油の粘度を計測する潤滑油用粘度センサと、前記判定ユニット内に設けられて所定量の軽油燃料を貯留し得る燃料チャンバと、ディーゼルエンジンで使用される軽油燃料の一部を導いて前記燃料チャンバの上部を経由させてから判定ユニット外へ送り出す燃料ラインと、該燃料ラインにおける前記燃料チャンバの上流側で流路を開閉する燃料用開閉弁と、前記燃料チャンバ内に設けられて軽油燃料の粘度を計測する燃料用粘度センサと、ディーゼルエンジンの稼働中に潤滑油用開閉弁及び燃料用開閉弁を制御してオイルチャンバ及び燃料チャンバに潤滑油及び軽油燃料を採取し且つディーゼルエンジンの停止後に潤滑油用粘度センサ及び燃料用粘度センサにより採取済みの潤滑油及び軽油燃料の粘度を計測して良否を判定する制御装置とを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
而して、このようにすれば、ディーゼルエンジンの稼働中に制御装置により潤滑油用開閉弁と燃料用開閉弁を開けると、ディーゼルエンジンから抜き出された潤滑油の一部がオイルラインに流通し、前記オイルチャンバを経由してからオイルパンに戻され、また、コモンレールから燃料タンクへのリターン管から抜き出された軽油燃料の一部が燃料ラインに流通し、前記燃料チャンバを経由してから前記リターン管に戻される。
【0011】
この際に、オイルチャンバと燃料チャンバの夫々が潤滑油と軽油燃料の連続的な流れ込みにより洗浄され、然る後に潤滑油用開閉弁と燃料用開閉弁を閉じると、オイルラインと燃料ラインとにおける潤滑油と軽油燃料の流通が停止してオイルチャンバと燃料チャンバの夫々に所定量の潤滑油と軽油燃料が採取される。
【0012】
そして、ディーゼルエンジンが停止後に潤滑油用粘度センサと燃料用粘度センサとにより採取済みの潤滑油及び軽油燃料の粘度を計測すると、ディーゼルエンジンが停止して振動が無くなった状態で潤滑油及び軽油燃料の粘度を精度良く計測することが可能となり、その精度の高い計測結果に基づいて潤滑油及び軽油燃料の良否が正確に判定されることになる。
【0013】
例えば、潤滑油及び軽油燃料の粘度の計測結果に基づいて潤滑油及び軽油燃料の良否を判定するにあたっては、ディーゼルエンジン用の未劣化状態の潤滑油の粘度のデータと、混じり物のない純粋な軽油燃料の粘度のデータとを制御装置に夫々持たせておき、このデータと実測の潤滑油及び軽油燃料の粘度とを比較して相互の偏差の度合から潤滑油の劣化状態や軽油燃料が許容範囲の品質のものであるか否か(灯油、重油、未脱硫の軽油が混合された粗悪な軽油燃料であるか否か)を判定させるようにしておけば良い。
【0014】
更に、本発明においては、燃料チャンバを判定ユニット内におけるオイルチャンバより下側に設けると共に、前記オイルチャンバの底部と前記燃料チャンバの天井部とを連絡ラインにより連通し、該連絡ラインの途中に流路を開閉する混合用開閉弁を設け、該混合用開閉弁を潤滑油及び軽油燃料の粘度の計測の後に開けてオイルチャンバの潤滑油を燃料チャンバに落とすことで軽油燃料と混合し且つその混合油の粘度を燃料用粘度センサにより計測してバイオ燃料の混入度合を判定するように制御装置を構成することが好ましい。
【0015】
このようにすれば、制御装置により潤滑油及び軽油燃料の粘度の計測の後に混合用開閉弁が開けられ、オイルチャンバの潤滑油が燃料チャンバに落ちて軽油燃料と混合し、その混合油の粘度が燃料用粘度センサにより計測されてバイオ燃料の混入度合が判定されることになる。
【0016】
即ち、バイオ燃料の混入度合は、単に燃料チャンバで燃料用粘度センサにより軽油燃料の粘度を計測するだけでは判定が難しいが、バイオ燃料には潤滑油に溶け込み易い性質があり、バイオ燃料の混入度合が高ければ燃料用粘度センサで計測される粘度が大幅に低下することになるため、その粘度の変化の度合によりバイオ燃料の混入度合を判定することが可能となる。
【0017】
また、本発明においては、オイルチャンバの潤滑油の温度を検出する温度検出手段を備え、ディーゼルエンジンの始動直後から潤滑油用開閉弁と燃料用開閉弁を開け且つ前記温度検出手段により検出される潤滑油の温度が規定温度に達した時に前記潤滑油用開閉弁と燃料用開閉弁を閉じるように制御装置を構成することが好ましい。
【0018】
このようにすれば、ディーゼルエンジンの始動直後から潤滑油用開閉弁と燃料用開閉弁を開けてオイルライン及び燃料ラインに潤滑油と軽油燃料を流し、温度検出手段により検出される潤滑油の温度が規定温度に達した時に前記潤滑油用開閉弁と燃料用開閉弁を閉じてオイルチャンバと燃料チャンバに所定量の潤滑油と軽油燃料を採取すると、粘度の計測に適した十分に高い温度の潤滑油と軽油燃料を採取することが可能となる。
【0019】
尚、このようにして採取された潤滑油と軽油燃料は、判定ユニットがディーゼルエンジンに搭載されてエンジンルーム内に収容されていることから、粘度の計測に適した温度に保たれ易く、ディーゼルエンジンの停止後も直ぐに温度低下してしまうことがない。
【0020】
また、潤滑油の温度が規定温度に達したところで採取を完了してしまえば、登坂時等における極めて高い温度の潤滑油がオイルラインに流れ込んで潤滑油用粘度センサを損傷する虞れも未然に回避することが可能となる。
【0021】
更に、このようにした場合には、判定ユニット内における潤滑油用開閉弁の上流側に所定量の潤滑油を貯留し得る一時溜めチャンバを設けることが好ましく、このようにすれば、前述の如き登坂時等で潤滑油が極めて高い温度となったままディーゼルエンジンが停止され、未だディーゼルエンジン側の潤滑油が予熱により極めて高い温度のままであるのにディーゼルエンジンが再始動されて潤滑油の採取が開始されてしまったような場合に、一時溜めチャンバに貯留されている潤滑油が熱を緩衝する役割を果たすことになる。
【0022】
即ち、ディーゼルエンジンからの極めて高い温度の潤滑油が一時溜めチャンバにおける相対的に低い温度の潤滑油と混ざることで温度低下し、潤滑油用粘度センサが極めて高い温度の潤滑油に晒される虞れが未然に回避されることになり、オイルチャンバの潤滑油の温度が規定温度に達したところで燃料用開閉弁が閉じられて潤滑油用粘度センサが保護される。
【発明の効果】
【0023】
上記した本発明の潤滑油及び軽油燃料の良否判定システムによれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0024】
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、ディーゼルエンジンの稼働中に潤滑油用開閉弁及び燃料用開閉弁を制御してオイルチャンバ及び燃料チャンバに潤滑油及び軽油燃料を所定量ずつ採取しておき、ディーゼルエンジンの停止後に振動が無くなった状態で潤滑油用粘度センサ及び燃料用粘度センサにより採取済みの潤滑油及び軽油燃料の粘度を精度良く計測することができるので、その精度の高い計測結果に基づいて潤滑油及び軽油燃料の良否を正確に判定することができる。
【0025】
(II)本発明の請求項2に記載の発明によれば、混合用開閉弁を潤滑油及び軽油燃料の粘度の計測の後に開けてオイルチャンバの潤滑油を燃料チャンバに落とすことで軽油燃料と混合し、その混合油の粘度を燃料用粘度センサにより計測することによって、これまで軽油燃料の粘度を計測するだけでは判定が難しかったバイオ燃料の混入度合の判定を実現することができる。
【0026】
(III)本発明の請求項3に記載の発明によれば、ディーゼルエンジンの始動直後からオイルライン及び燃料ラインに潤滑油と軽油燃料を流し、潤滑油の温度が規定温度に達した時に前記潤滑油用開閉弁と燃料用開閉弁を閉じて所定量の潤滑油と軽油燃料をオイルチャンバ及び燃料チャンバに採取することができるので、粘度の計測に適した十分に高い温度の潤滑油と軽油燃料を採取することができ、しかも、登坂時等における極めて高い温度の潤滑油がオイルラインに流れ込んで潤滑油用粘度センサを損傷する虞れも未然に回避することができる。
【0027】
(IV)本発明の請求項4に記載の発明によれば、登坂時等で潤滑油が極めて高い温度となったままディーゼルエンジンが停止された後に、該ディーゼルエンジンが直ぐに再始動されて潤滑油の採取が開始されてしまったとしても、一時溜めチャンバに貯留されている潤滑油に熱を緩衝する役割を果たさせることができるので、潤滑油用粘度センサが極めて高い温度の潤滑油に晒される虞れを未然に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明を実施する形態の一例を示す概略図である。
【
図2】
図1の判定ユニットの内部構造を示す模式図である。
【
図3】
図1の判定ユニットの制御系を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0030】
図1〜
図3は本発明を実施する形態の一例を示すもので、
図1中における符号の1はディーゼルエンジン、2は燃料タンクを示し、該燃料タンク2から燃料供給管3及び燃料フィルタ4を介して導いた軽油燃料5が燃料ポンプ6により昇圧されてコモンレール7に貯えられ、該コモンレール7内の軽油燃料5がインジェクションパイプ8を介しディーゼルエンジン1の各気筒毎に装備された複数のインジェクタ9に向け供給されて前記各気筒内に噴射されるようにしてあり、また、前記コモンレール7から内部を所定圧に維持するためにリリーフされた軽油燃料5がリターン管10を介し燃料タンク2へ戻されるようになっている。
【0031】
そして、本形態例においては、前述の如きディーゼルエンジン1に用いられる潤滑油11と軽油燃料5の良否が、ディーゼルエンジン1に搭載した判定ユニット12で自動的に判定されるようになっており、該判定ユニット12に前記ディーゼルエンジン1のシリンダヘッド1aからゴムホース13を介し潤滑油11が流し落とされて導かれ且つ前記判定ユニット12内を経由した潤滑油11がゴムホース14を介し前記ディーゼルエンジン1のオイルパン1bに流し落とされて戻されると共に、リターン管10から軽油燃料5の一部がゴムホース15を介し流し落とされて導かれ且つ前記判定ユニット12内を経由した軽油燃料5がゴムホース16を介し前記リターン管10に流し落とされて戻されるようにしてある。
【0032】
前記判定ユニット12の内部構造は、
図2に示す通りであり、前記判定ユニット12内における適宜位置に所定量(1cm
3程度)の潤滑油11を貯留し得るオイルチャンバ17が設けられていると共に、前記判定ユニット12の頂部から下方に延びて前記オイルチャンバ17の上部に到り且つ該オイルチャンバ17の上部を経由した後に側方に延びて前記判定ユニット12の側部に突き出すオイルライン18が設けられており、該オイルライン18の上方の端部にゴムホース13が接続されてディーゼルエンジン1のシリンダヘッド1aから潤滑油11の一部が導かれ、前記オイルライン18の下方の端部にゴムホース14が接続されて潤滑油11がディーゼルエンジン1のオイルパン1bに送り出されるようになっている。
【0033】
更に、前記オイルライン18における前記オイルチャンバ17の上流側に、流路を開閉する潤滑油用開閉弁19が設けられていると共に、該潤滑油用開閉弁19の上流側には、所定量の潤滑油11を貯留し得る一時溜めチャンバ20が設けられており、また、前記オイルチャンバ17内には、潤滑油11の粘度を計測する潤滑油用粘度センサ21が設けられている。
【0034】
ここで、潤滑油用粘度センサ21には、各種の方式を採用することが可能であるが、本形態例にあっては、後述する如く、ディーゼルエンジン1の停止後に振動の無い状態で粘度の計測を行うようにしているので、発熱部(ヒータ部)と超精密検温部とを備えて、発熱部の僅かな発熱により潤滑油11が流動して生じる僅かな温度変化で粘度を計測する方式を採用しており、オイルチャンバ17の潤滑油11の温度を検出する温度検出手段としても機能するようになっている。
【0035】
また、前記判定ユニット12内における前記オイルチャンバ17より下側に、所定量(1cm
3程度)の軽油燃料5を貯留し得る燃料チャンバ22が設けられていると共に、該燃料チャンバ22より上側の判定ユニット12の側部から側方に延びてから下方に屈曲して前記燃料チャンバ22の上部に到り且つ該燃料チャンバ22の上部を経由した後に側方に延びて前記判定ユニット12の側部に突き出す燃料ライン23が設けられており、該燃料ライン23の上方の端部にゴムホース15が接続されてリターン管10から軽油燃料5の一部が導かれ、前記燃料ライン23の下方の端部にゴムホース16が接続されて軽油燃料5がリターン管10に戻されるようになっている。
【0036】
更に、前記燃料ライン23における前記燃料チャンバ22の上流側に、流路を開閉する燃料用開閉弁24が設けられていると共に、前記燃料チャンバ22内には、軽油燃料5の粘度を計測する燃料用粘度センサ25が設けられており、前述した潤滑油用粘度センサ21と同じ方式のものを採用している。
【0037】
しかも、本形態例においては、前記オイルチャンバ17の底部と前記燃料チャンバ22の天井部とが連絡ライン26により連通されており、該連絡ライン26の途中には、流路を開閉する混合用開閉弁27が設けられている。
【0038】
そして、
図3に示す如く、前述した潤滑油用開閉弁19と燃料用開閉弁24と混合用開閉弁27は、制御装置28からの制御信号19x,24x,27xにより開閉作動を制御されるようになっており、しかも、潤滑油用粘度センサ21及び燃料用粘度センサ25からの検出信号21y,25yが前記制御装置28に入力されるようになっていると共に、該制御装置28とエンジン制御コンピュータ29(ECU:Electronic Control Unit)とが接続されてディーゼルエンジン1の始動停止に関する情報を共有できるようになっている。
【0039】
より具体的には、ディーゼルエンジン1の始動直後から潤滑油用開閉弁19と燃料用開閉弁24とが制御装置28により開けられ、前記潤滑油用粘度センサ21(温度検出手段)により検出される潤滑油11の温度が規定温度に達した時に前記潤滑油用開閉弁19と燃料用開閉弁24が閉じられてオイルチャンバ17及び燃料チャンバ22に潤滑油11及び軽油燃料5が採取されるようになっている。
【0040】
しかも、ディーゼルエンジン1の停止後に潤滑油用粘度センサ21及び燃料用粘度センサ25により採取済みの潤滑油11及び軽油燃料5の粘度が計測され、その良否が制御装置28にて判定されるようになっており、また、この潤滑油11及び軽油燃料5の粘度の計測の後に、前記制御装置28により混合用開閉弁27が開けられ、オイルチャンバ17の潤滑油11が燃料チャンバ22に落とされて軽油燃料5と混合され、その混合油の粘度が燃料用粘度センサ25により計測され、バイオ燃料の混入度合が判定されるようになっている。
【0041】
尚、本システムにあっては、ディーゼルエンジン1の停止後も、潤滑油用粘度センサ21及び燃料用粘度センサ25による粘度計測や、制御装置28における良否の判定、混合用開閉弁27の開操作等を行い得るよう本システム用の図示しない電源装置が備えられている。
【0042】
而して、ディーゼルエンジン1の始動直後に制御装置28により潤滑油用開閉弁19と燃料用開閉弁24を開けると、ディーゼルエンジン1のシリンダヘッド1aから抜き出された潤滑油11の一部がオイルライン18に流通し、前記オイルチャンバ17を経由してからオイルパン1bに戻され、また、コモンレール7から燃料タンク2へのリターン管10から抜き出された軽油燃料5の一部が燃料ライン23に流通し、前記燃料チャンバ22を経由してから前記リターン管10に戻される。
【0043】
この際に、オイルチャンバ17と燃料チャンバ22の夫々が潤滑油11と軽油燃料5の連続的な流れ込みにより洗浄され、然る後に潤滑油用粘度センサ21(温度検出手段)により検出される潤滑油11の温度が規定温度に達した時に前記潤滑油用開閉弁19と燃料用開閉弁24を閉じると、オイルライン18と燃料ライン23とにおける潤滑油11と軽油燃料5の流通が停止してオイルチャンバ17と燃料チャンバ22の夫々に所定量の潤滑油11と軽油燃料5が採取される。
【0044】
このようにすれば、粘度の計測に適した十分に高い温度の潤滑油11と軽油燃料5を採取することが可能となり、しかも、判定ユニット12がディーゼルエンジン1に搭載されてエンジンルーム内に収容されていることから、粘度の計測に適した温度に保たれ易く、ディーゼルエンジン1の停止後も直ぐに温度低下してしまうことがない。
【0045】
また、潤滑油11の温度が規定温度に達したところで採取を完了してしまえば、登坂時等における極めて高い温度の潤滑油11がオイルライン18に流れ込んで潤滑油用粘度センサ21を損傷する虞れも未然に回避することが可能となる。
【0046】
尚、登坂時等で潤滑油11が極めて高い温度となったままディーゼルエンジン1が停止され、未だディーゼルエンジン1側の潤滑油11が予熱により極めて高い温度のままであるのにディーゼルエンジン1が再始動されて潤滑油11の採取が開始されてしまったような場合に、一時溜めチャンバ20に貯留されている潤滑油11が熱を緩衝する役割を果たすことになる。
【0047】
即ち、ディーゼルエンジン1からの極めて高い温度の潤滑油11が一時溜めチャンバ20における相対的に低い温度の潤滑油11と混ざることで温度低下し、潤滑油用粘度センサ21が極めて高い温度の潤滑油11に晒される虞れが未然に回避されることになり、オイルチャンバ17の潤滑油11の温度が規定温度に達したところで燃料用開閉弁24が閉じられて潤滑油用粘度センサ21が保護される。
【0048】
そして、ディーゼルエンジン1が停止後に潤滑油用粘度センサ21と燃料用粘度センサ25とにより採取済みの潤滑油11及び軽油燃料5の粘度を計測すると、ディーゼルエンジン1が停止して振動が無くなった状態で潤滑油11及び軽油燃料5の粘度を精度良く計測することが可能となり、その精度の高い計測結果に基づいて潤滑油11及び軽油燃料5の良否が正確に判定されることになる。
【0049】
例えば、潤滑油11及び軽油燃料5の粘度の計測結果に基づいて潤滑油11及び軽油燃料5の良否を判定するにあたっては、ディーゼルエンジン1用の未劣化状態の潤滑油11の粘度のデータと、混じり物のない純粋な軽油燃料5の粘度のデータとを制御装置28に夫々持たせておき、このデータと実測の潤滑油11及び軽油燃料5の粘度とを比較して相互の偏差の度合から潤滑油11の劣化状態や軽油燃料5が許容範囲の品質のものであるか否か(灯油、重油、未脱硫の軽油が混合された粗悪な軽油燃料5であるか否か)を判定させるようにしておけば良い。
【0050】
尚、潤滑油11及び軽油燃料5の粘度の測定は、ディーゼルエンジン1の停止直後の比較的温度の高い条件と、ディーゼルエンジン1の停止後に時間を置いて温度が所定温度まで低下した条件の少なくとも二回行うことが好ましく、このようにすることで、より精度の高い粘度の判定が可能となる。
【0051】
更に、潤滑油11及び軽油燃料5の粘度の計測の後に制御装置28により混合用開閉弁27を開けると、オイルチャンバ17の潤滑油11が燃料チャンバ22に落ちて軽油燃料5と混合し、その混合油の粘度が燃料用粘度センサ25により計測されてバイオ燃料の混入度合が判定されることになる。
【0052】
即ち、バイオ燃料の混入度合は、単に燃料チャンバ22で燃料用粘度センサ25により軽油燃料5の粘度を計測するだけでは判定が難しいが、バイオ燃料には潤滑油11に溶け込み易い性質があり、バイオ燃料の混入度合が高ければ燃料用粘度センサ25で計測される粘度が大幅に低下することになるため、その粘度の変化の度合によりバイオ燃料の混入度合を判定することが可能となる。
【0053】
ここで、バイオ燃料の混入度合についての判定は、所定時間毎に複数回実施して温度低下に伴う粘度変化を観察し、この粘度変化を混じり物のない純粋な軽油燃料5の粘度変化のデータと比較することで、より精度の高いバイオ燃料の混入度合の判定を行うことが可能となる。
【0054】
尚、粘度の測定に必要な潤滑油11は1cm
3程度の少量で良いため、軽油燃料5との混合油として燃料タンク2に戻されても特に支障をきたす虞れはない。
【0055】
従って、上記形態例によれば、ディーゼルエンジン1の稼働中に潤滑油用開閉弁19及び燃料用開閉弁24を制御してオイルチャンバ17及び燃料チャンバ22に潤滑油11及び軽油燃料5を所定量ずつ採取しておき、ディーゼルエンジン1の停止後に振動が無くなった状態で潤滑油用粘度センサ21及び燃料用粘度センサ25により採取済みの潤滑油11及び軽油燃料5の粘度を精度良く計測することができるので、その精度の高い計測結果に基づいて潤滑油11及び軽油燃料5の良否を正確に判定することができる。
【0056】
また、混合用開閉弁27を潤滑油11及び軽油燃料5の粘度の計測の後に開けてオイルチャンバ17の潤滑油11を燃料チャンバ22に落とすことで軽油燃料5と混合し、その混合油の粘度を燃料用粘度センサ25により計測することによって、これまで軽油燃料5の粘度を計測するだけでは判定が難しかったバイオ燃料の混入度合の判定を実現することができる。
【0057】
更に、ディーゼルエンジン1の始動直後からオイルライン18及び燃料ライン23に潤滑油11と軽油燃料5を流し、潤滑油11の温度が規定温度に達した時に前記潤滑油用開閉弁19と燃料用開閉弁24を閉じて所定量の潤滑油11と軽油燃料5をオイルチャンバ17及び燃料チャンバ22に採取することができるので、粘度の計測に適した十分に高い温度の潤滑油11と軽油燃料5を採取することができ、しかも、登坂時等における極めて高い温度の潤滑油11がオイルライン18に流れ込んで潤滑油用粘度センサ21を損傷する虞れも未然に回避することができる。
【0058】
また、登坂時等で潤滑油11が極めて高い温度となったままディーゼルエンジン1が停止された後に、該ディーゼルエンジン1が直ぐに再始動されて潤滑油11の採取が開始されてしまったとしても、一時溜めチャンバ20に貯留されている潤滑油11に熱を緩衝する役割を果たさせることができるので、潤滑油用粘度センサ21が極めて高い温度の潤滑油11に晒される虞れを未然に回避することができる。
【0059】
尚、本発明の潤滑油及び軽油燃料の良否判定システムは、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、オイルチャンバの潤滑油の温度を検出する温度検出手段を、潤滑油用粘度センサとは別に設けても良いこと、また、潤滑油用粘度センサ及び燃料用粘度センサには、表面音響波を利用する方式等の各種の方式を採用し得ること、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0060】
1 ディーゼルエンジン
5 軽油燃料
11 潤滑油
12 判定ユニット
17 オイルチャンバ
18 オイルライン
19 潤滑油用開閉弁
20 一時溜めチャンバ
21 潤滑油用粘度センサ
22 燃料チャンバ
23 燃料ライン
24 燃料用開閉弁
25 燃料用粘度センサ
26 連絡ライン
27 混合用開閉弁
28 制御装置