(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記再構成領域を基準とするビュー角度は、前記走査ガントリのアイソセンタを基準としたビュー角度に基づいて求められる請求項1または請求項2に記載のX線CT装置。
前記制御手段は、前記投影データに前記撮影テーブルの高さ位置前記被検体をスカウト撮影して得られたスカウトデータに基づいて、前記撮影テーブルの昇降を制御する請求項4に記載のX線CT装置。
前記データ処理手段は、前記加重加算処理により前記データ空間の軸に対して傾いている線に沿った複数のチャネルデータを求めることにより、前記パラレルビーム投影データを得る請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のX線CT装置。
前記加重加算処理は、前記データ空間において、求めようとする前記パラレルビーム投影データのチャネルデータの位置に近接しており、前記配置されたファンビーム投影データを構成している複数のチャネルデータを、前記求めようとするチャネルデータの位置と前記複数のチャネルデータの位置との距離に応じた重み付けにより加重加算して、該求めようとするチャネルデータを算出する処理である請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のX線CT装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、画像再構成処理のある1つの方法では、画像再構成計算を簡単にするために、逆投影処理前に投影データのファンパラ(fan-parallel)変換を行うことがある。ファンパラ変換は、データ収集時にX線パス(path)がファン(fan)状に広がっているファンビーム(fan-beam)投影データ(data)を、X線パスが平行であるパラレルビーム(parallel-beam)投影データに変換するものである。ファンパラ変換では、直交軸の一方をビュー(view)角度、他方をデータチャネル(data
channel)位置に取ったデータ空間に、各ビューのファンビーム投影データを配置し、これら配置されたファンビーム投影データを加重加算処理して、各X線パス方向ごとのパラレルビーム投影データを得る。
【0005】
しかしながら、従来のファンパラ変換では、撮影テーブルの高さを一定にしたままのスキャンを想定しており、X線管やX線検出器などを含むデータ収集系が、再構成領域との幾何学的な位置関係を変えずに回転している場合を前提としている。一方、撮影テーブルの高さを変化させながらスキャンする場合には、この幾何学的な位置関係がスキャン中に変化してしまうため、従来のファンパラ変換のアルゴリズム(algorithm)をそのまま用いることができない。
【0006】
このような事情により、撮影テーブルの高さを変化させながらスキャンして収集された投影データに対してファンパラ変換を行うことができるX線CT装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の観点の発明は、被検体を載置する撮影テーブルと、X線焦点から前記被検体にX線のファンビームを放射するX線源と、検出素子が前記X線のファン方向に複数チャネル分配列されたX線検出器とを有している走査ガントリと、前記撮影テーブルおよび前記走査ガントリを制御することによりスキャンを実行して複数ビューのファンビーム投影データを収集する制御手段とを備えたX線CT装置であって、前記制御手段が、前記被検体が載置された前記撮影テーブルを前記スキャン中に昇降させており、前記複数のファンビーム投影データを加重加算処理することにより、前記ファンビーム投影データが収集された各時点におけるX線焦点と再構成領域の中心とを結ぶ直線と平行なパラレル投影データを得るデータ処理手段と、前記得られたパラレルビーム投影データに基づいて前記再構成領域の画像を再構成する再構成手段とを備えているX線CT装置を提供する。
【0008】
第2の観点の発明は、前記ファンビーム投影データが収集された時点におけるX線焦点と再構成領域の中心とを結ぶ直線と直交し、前記再構成領域の中心を通る直線を第1の直線として、該時点における前記再構成領域を基準とするビュー角度を一方の軸とし、該時点における前記第1の直線と該時点に収集されたファンビーム投影データの各チャネルデータに対応する各X線パスとの交点の位置を他方の軸とするデータ空間に、前記複数ビューのファンビーム投影データをそれぞれ配置するデータ配置手段をさらに備えており、前記データ処理手段が、前記データ空間において前記配置されたファンビーム投影データを加重加算処理することによりパラレルビーム投影データを得る、上記第1の観点のX線CT装置を提供する。
【0009】
第3の観点の発明は、前記再構成領域を基準とするビュー角度が、前記走査ガントリのアイソセンタを基準としたビュー角度に基づいて求められる上記第1の観点または第2の観点のX線CT装置を提供する。なお、「アイソセンタ」は、X線源の回転中心である。
【0010】
第4の観点の発明は、前記制御手段が、前記スキャン中に、前記被検体のスキャン面における中心が前記走査ガントリのアイソセンタに近づくよう前記撮影テーブルの昇降を制御する上記第1の観点から第3の観点のいずれか一つの観点のX線CT装置を提供する。
【0011】
第5の観点の発明は、前記制御手段が、前記被検体をスカウト撮影して得られたスカウトデータ(scout data)に基づいて、前記撮影テーブルの昇降を制御する上記第4の観点のX線CT装置を提供する。
【0012】
第6の観点の発明は、前記データ処理手段が、前記加重加算処理により前記データ空間の軸に対して傾いている線に沿った複数のチャネルデータを求めることにより、前記パラレルビーム投影データを得る上記第1の観点から第5の観点のいずれか一つの観点のX線CT装置を提供する。
【0013】
第7の観点の発明は、前記加重加算処理が、前記データ空間において、求めようとする前記パラレルビーム投影データのチャネルデータの位置に近接しており、前記配置されたファンビーム投影データを構成している複数のチャネルデータを、前記求めようとするチャネルデータの位置と前記複数のチャネルデータの位置との距離に応じた重み付けにより加重加算して、該求めようとするチャネルデータを算出する処理である上記第1の観点から第6の観点のいずれか一つの観点のX線CT装置を提供する。
【0014】
第8の観点の発明は、前記スキャンが、ヘリカルスキャン(helical scan)である上記第1の観点から第7の観点のいずれか一つの観点のX線CT装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、撮影テーブルの高さを変化させながらスキャンして収集された投影データに対してファンパラ変換を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図を参照して発明の実施形態について説明する。
【0018】
図1は、本実施形態のX線CT装置の構成ブロック図である。このX線CT装置100は、操作コンソール(console)1、撮影テーブル10、走査ガントリ20とを具備している。
【0019】
操作コンソール1は、操作者の入力を受け付ける入力装置2と、画像再構成処理などを実行する中央処理装置3と、走査ガントリ20で取得した投影データを収集するデータ収集バッファ(buffer)5と、投影データから再構成したCT画像等を表示するモニタ(monitor)6と、プログラム(program)やデータ、CT画像などを記憶する記憶装置7とを具備している。
【0020】
撮影テーブル10は、被検体を載置して走査ガントリ20の空洞部に対し搬入搬出するクレードル12を具備している。クレードル12は、撮影テーブル10に内蔵するモータ(motor)で昇降および水平直線移動される。
【0021】
走査ガントリ20は、X線管21と、X線コントローラ(controller)22と、コリメータ(collimator)23と、X線検出器24と、データ収集部DAS(Data
Acquisition System)25と、被検体の体軸の回りにX線管21などを回転させる回転部コントローラ26と、制御信号などを操作コンソール1や撮影テーブル10とやり取りする制御コントローラ29とを具備している。
【0022】
X線検出器24は、複数の検出素子が、被検体の体軸方向すなわちz方向に対して垂直な面方向すなわちxy面方向において円弧状に配列されてなる。この各検出素子をチャネルという。チャネル数は約1000程度を想定する。X線検出器24は、シングルスライス(single slice)、マルチスライス(multi slice)のいずれでもよいが、本例では、説明の簡単のため、シングルスライスを想定する。
【0023】
本実施形態におけるX線CT装置の構成は概ね上記の通りである。この構成のX線CT装置において、投影データの収集は例えば次のように行われる。
【0024】
まず、被検体を走査ガントリ20の空洞部に搬送する。そして、X線管21とX線検出器24を被検体の周囲で回転させながら、X線管21からのX線ビームを被検体に照射し、その透過X線をX線検出器24で検出する。この透過X線の検出を、投影角度すなわちビュー角度を変化させながら投影データ収集を行う。
【0025】
検出された各透過X線は、DAS25でディジタル(digital)値に変換されて投影データとしてデータ収集バッファ5を介して操作コンソール1に転送される。スキャン方式としては、コンベンショナルスキャン(conventional
scan)すなわちアキシャルスキャン(axial scan)や、ヘリカルスキャンを考えることができる。
【0026】
操作コンソール1は、走査ガントリ20から転送されてくる投影データを中央処理装置3の固定ディスク(disk)HDDに格納するとともに、例えば、所定の再構成関数と重畳演算を行い、逆投影処理により断層像を再構成する。
【0027】
これより、本実施形態によるX線CT装置の動作について説明する。
【0028】
図2は、本実施形態によるX線CT装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【0029】
ステップ(step)S1では、被検体のスカウト撮影を行う。スカウト撮影は、これからスキャンしようとする部位のX線吸収量などの情報を事前に得るために行われるものである。スカウト撮影では、通常、X線管21から本スキャンより低い線量のX線を、被検体のスキャンしようとする部位を含む領域に照射して、その透過X線をX線検出器24で検出し、その検出データであるスカウトデータを取得する。本例では、被検体が載置されたクレードル12をz方向に移動させながら、被検体の側面方向(x方向)からX線を照射して、その透過X線をX線検出器24で検出する。これにより、被検体のz方向の各位置におけるx方向へのプロジェクション(projection)Px(z)を取得する。なお、スカウト撮影は、本スキャンより低い線量のX線を用いるアキシャルスキャンやヘリカルスキャン等であってもよい。
【0030】
ステップS2では、スカウトデータを基に、被検体中心曲線を求める。被検体中心曲線は、被検体のスライス面方向における中心の体軸方向(z方向)に対する変化を表す曲線である。本例では、被検体のz方向の各位置について、x方向へのプロジェクションPx(z)が占めるy方向の範囲の中心位置を算出し、これら中心位置をz方向に結んで、
図3に示すような被検体中心曲線C(z)を求める。なお、被検体中心曲線は、被検体のz方向の各位置について、x方向へのプロジェクションPx(z)のy方向の重心位置を算出し、これら重心位置をz方向に結んで求めてもよい。
【0031】
ステップS3では、クレードル昇降付きスキャンを行う。すなわち、被検体中心曲線C(z)から特定されるスキャン面での被検体の中心が、走査ガントリ20のアイソセンタとy方向で一致するようクレードル12を昇降させながらスキャンを行う。これにより、スライス面方向において、被検体の中心が再構成領域の中心と常に一致する形で複数ビューのファンビーム投影データが収集される。
【0032】
ファンビーム投影データは、X線管21のX線焦点fから被検体にファンビームX線を照射したときにX線検出器24で得られる投影データである。つまり、ファンビーム投影データは、
図4に示すように、投影データを構成する各チャネルデータに対応するX線パス、すなわちX線焦点fとX線検出器24の各チャネルとを結ぶX線パスが、ファン状に広がる投影データである。
【0033】
ここで、クレードル昇降付きスキャンの一例を示す。
【0034】
図5は、クレードル昇降付きスキャンの条件を説明するための図である。
【0035】
まず、被検体中心曲線は、
図5に示すような曲線C′であるものとする。すなわち、曲線C′上の被検体中心位置は、座標z1でアイソセンタISOとy方向で一致している。また、座標z1〜z2でy方向に+dだけ上昇し、座標z2〜z3でy方向に−dだけ下降する。
【0036】
X線管21のX線焦点fは、
図6に示すように、走査ガントリ20のアイソセンタISOを中心とする半径rの円周上を回転する。ここで、アイソセンタISOを基準としたときのX線焦点fのy軸からの回転角度を焦点回転角度θと定義する。
【0037】
スキャン範囲は、
図5に示すように、z方向の座標z1〜z3を含む範囲とし、座標z1で焦点回転角度θ=0、座標z2で焦点回転角度θ=π〔rad〕、座標z3で焦点回転角度θ=2π〔rad〕となるようヘリカルスキャンを行うものとする。そして、焦点回転角度θが、0から2πまでのπ/4間隔の各回転角度となるときを各ビューとしてファンビーム投影データを収集する。なお、本例では、説明を簡単にするためにビューをかなり粗く取っているが、実際には、X線焦点fの1回転当たり、すなわち回転角度2π〔rad〕(360°)分に対して1000ビュー程度が割り当てられる。
【0038】
再構成領域は、被検体を基準とした座標空間における所定のスライス面に設定され、再構成領域の中心Oは、スキャン開始位置である座標z1でアイソセンタISOと重なる位置とする。再構成領域すなわち被検体側からX線焦点fの動きを見ると、
図7に示すようになる。この図において、点f1〜f8は、各ビューでのX線焦点fの位置をそれぞれ示している。焦点回転角度θ=0のとき、すなわちビュー番号v=1のビューでは、X線焦点fは、再構成領域の中心Oを中心とする半径rの円周F上の点f1に位置している。焦点回転角度θ=0〜πの間では、X線焦点fは、円周Fの軌道から−y方向に徐々にシフト(shift)してゆく。そして、焦点回転角度θ=πのとき、X線焦点fは、円周Fの軌道から−y方向に距離dだけシフトした点f5に位置している。また、焦点回転角度θ=π〜2πの間では、X線焦点fは、円周Fの軌道から+y方向に徐々にシフトしてゆく。そして、焦点回転角度θ=2πのとき、すなわちビュー番号v=9のビューでは、X線焦点fは、円周F上の点f1に戻る。
【0039】
なお、各ビューのファンビーム投影データには、そのファンビーム投影データが収集された時点におけるクレードルの高さ情報htおよび水平位置情報ztと、焦点回転角度θとが付される。これにより、各ビューのファンビーム投影データ収集時におけるX線データ収集系と被検体との幾何学的な位置関係を知ることができ、各ビューについて、X線焦点fから再構成領域の中心Oへのビュー角度(投影角度)βを求めることができる。ここでは、再構成領域FOVの中心Oを基準としたときのX線焦点fのy軸からの回転角度をビュー角度βと定義する。
【0040】
ステップS4では、投影データ配置処理を行う。すなわち、収集されたファンビーム投影データのデータチャネル位置を仮想的に決定して、所定のデータ空間に配置する。
【0041】
ここでは、一例として、ステップS3で例示したクレードル昇降付きスキャンにより収集されたファンビーム投影データを処理対象として、投影データ配置処理について詳しく説明する。
【0042】
図8は、投影データ配置処理(S4)を示すフローチャートである。
【0043】
また、
図9は、焦点回転角度θ=0のビューにおけるファンビーム投影データに対する投影データ配置処理を概念的に示す図である。
【0044】
ステップS41では、ビューを選択する。ここでは、焦点回転角度θ=0のビューが選択されたものとする。
【0045】
ステップS42では、選択されたビューのファンビーム投影データを記憶装置7から読み出す。
【0046】
ステップS43では、読み出したファンビーム投影データに付帯している、クレードル高さ情報htおよび水平位置情報zt、焦点回転角度θなどの情報を取得する。
【0047】
ステップS44では、ステップS43で取得した情報から、選択されたビューにおけるデータ収集系の幾何学的位置関係、すなわち再構成領域FOVの中心O、X線焦点fの位置、X線検出器24の各チャネル位置、ビュー角度βなどを求める。ここでは、
図9に示すように、X線焦点fが点f1に位置しているときのデータ収集系の幾何学的位置関係が求められる。
【0048】
ステップS45では、選択されたビューにおいて、X線焦点fと再構成領域FOVの中心Oとを結ぶ直線Lを求め、この直線Lに直交し、再構成領域FOVの中心Oを通る直線Sを求める。ここでは、
図9に示すように、点f1と再構成領域FOVの中心Oとを結ぶ直線Lを求め、次いで直線Sを求める。
【0049】
ステップS46では、選択されたビューにおける仮想的チャネルデータ位置を決定する。具体的には、選択されたビューにおけるX線焦点fとX線検出器24の各チャネルとを結ぶ各X線パスと上記直線Sとの各交点を、このビューにおけるファンビーム投影データの仮想的チャネルデータ位置sとする。すなわち、ファンビーム投影データの各チャネルデータのチャネルデータ位置を、そのチャネルデータに対応するX線パスと直線Sとの交点の位置に仮想的に置き換える。ここでは、
図9に示すように、X線パスと直線Sとの各交点s11,s12,・・・,s1nを、仮想的なチャネルデータ位置とする。
【0050】
ステップS47では、選択されたビューのファンビーム投影データを、ビュー角度βと直線S上の仮想的チャネルデータ位置とを両軸に取るデータ空間に配置する。ここでは、
図9に示すように、データ空間上において、ビュー角度βおよび直線S上の各点s11,s12,・・・,s1nに対応する各位置に、それぞれのチャネルデータを配置する。
【0051】
ステップS48では、選択すべきビューがまだ残っているかを判定する。残っている場合には、ステップS41に戻り、投影データ配置処理を続ける。残っていない場合には、投影データ配置処理を終了する。
【0052】
このようにして、各ビューにおける投影データ配置処理が行われる。
【0053】
図10〜13は、それぞれ、焦点回転角度θ=π/4,π/2,3π/4,πの各ビューにおける投影データ配置処理を概念的に示している。
【0054】
各ビューにおける投影データ配置処理が完了すると、
図14に示すように、データ空間に配置されたファンビーム投影データが得られる。
【0055】
ステップS5では、ファンパラ変換処理を行う。すなわち、ステップS4でデータ空間に配置されたファンビーム投影データのチャネルデータ値同士を加重加算処理することにより、パラレルビーム投影データを得る。パラレルビーム投影データは、
図15に示すように、各チャネルデータに対応するX線パス、すなわち再構成領域FOVを通過するX線パスがパラレルビーム状となる投影データである。
【0056】
図16,
図17は、クレードル昇降付きスキャンによって収集されたファンビーム投影データに対するファンパラ変換処理を説明するための図である。
図16は、ファンパラ変換処理が行われるデータ空間全体を示しており、
図17は、その一部拡大図を示している。
図16,
図17において、横軸は再構成領域FOVの中心Oを基準とした直線S上の仮想的なチャネルデータ位置s、縦軸はビュー角度β、黒丸はファンビーム投影データを構成する実測チャネルデータ値である。また、斜め矢印は、X線パスの方向が同じになるチャネルデータ値を貫くよう設けられたものであり、1つの斜め矢印上に並ぶチャネルデータ値が1つのビューのパラレルビーム投影データを構成する。例えば、図中の斜め矢印A1上に並ぶチャネルデータ値はビュー角度β1に対応するパラレルビーム投影データPP(β1)を示しており、斜め矢印A2上に並ぶチャンネルデータ値はビュー角度β2に対応するパラレルビーム投影データPP(β2)を示している。
【0057】
本ステップにおけるファンパラ変換処理は、この
図17を参照して説明すると、ファンビーム投影データを構成する黒丸の実測チャネルデータ値に基づいて、各斜め矢印上に並ぶチャネルデータ値を求める処理である。ここでは、斜め矢印上の各位置、例えば仮想的な各チャネルデータ位置に対応するチャンルデータ値のうち、黒丸の実測チャネルデータ値と重複しない白丸で表されたチャネルデータ値を求める。白丸のチャネルデータ値は、その白丸のチャネルデータ値のビューに近接する複数のビューのファンビーム投影データに含まれる黒丸の実測チャネルデータ値同士を、白丸のチャネルデータ値と黒丸の実測チャネルデータ値との間の距離に基づく加重加算係数を用いて加重加算処理することにより得られる。
【0058】
例えば、ビュー角度β2に対応する斜め矢印A2上のチャネルtに対応する白丸のチャネルデータ値PP(β2,si)は、次式で表される加重加算処理により求める。なお、ここでは、2点のデータから加重加算処理を行っているが、3点以上の複数の点のデータから加重加算処理を行ってもよい。
【0059】
PP(β2,si)=
W1(β2,si)×FP(β2,sa)+W2(β2,si)×FP(β3,sb)
但し、W1(β2,si)=d2(β3,sb)/(d1(β2,sa)+d2(β3,sb)),
W2(β2,si)=d1(β2,sa)/(d1(β2,sa)+d2(β3,sb))
…(数式1)
【0060】
ここで、FP(β2,sa)は、(ビュー角度β2,チャネルデータ位置sa)に対応する黒丸の実測チャネルデータ値、FP(β3,sb)は、(ビュー角度β3,チャネルデータ位置sb)に対応する黒丸の実測チャネルデータ値である。また、W1(β2,si),W2(β2,si)は加重加算係数、d1(β2,sa)はチャネルデータ値PP(β2,si)と実測チャネルデータ値FP(β2,sa)との間の距離、d2(β3,sb)はチャネルデータ値PP(β2,si)と実測チャネルデータ値FP(β3,sb)との間の距離である。
【0061】
なお、ファンパラ変換処理の別の手法として、まず、複数のビュー角度について、ビュー角度βが同一でチャネルデータ位置が異なる実測チャネルデータ値同士をチャネルデータ位置s方向に、距離に応じた加重加算処理をして、処理済みチャネルデータ値を得、次に、得られた処理済みチャネルデータ値同士をビュー角度方向に、距離に応じた加重加算処理をして、パラレルビーム投影データのチャネルデータ値を求める手法を用いてもよい。
【0062】
このようにして、斜め矢印A1,A2,・・・のそれぞれについて、斜め矢印上の各白丸のチャネルデータ値を求める。
【0063】
ここでのデータ空間は、前述のように、ビュー角度βと直線S上の仮想的なチャネルデータ位置sとを両軸に取るデータ空間である。また、従来の一般的なファンパラ変換でも、このようにビュー角度とチャネルデータ位置とを両軸に取るデータ空間にファンビーム投影データを配置し、そのデータ空間上で加重加算処理することにより、パラレルビーム投影データに変換している。
【0064】
したがって、ここでは、ファンパラ変換の処理対象がクレードルの高さを変化させながら収集したファンビーム投影データであるにも拘らず、既に確立している従来のファンパラ変換のアルゴリズムを略そのまま用いてファンパラ変換処理を行うことができる。つまり、設計変更を最小限にとどめてクレードル昇降付きスキャンに対応したファンパラ変換を行うことができ、製品化における工数の削減、コスト削減が可能になる。本実施形態における特長は、まさにこの点にある。
【0065】
ステップS6では、パラレルビーム画像再構成を行う。すなわち、ステップS5で変換されたパラレルビーム投影データを再構成領域FOVで逆投影処理して、画像再構成を行う。ここでのパラレルビーム画像再構成には、従来公知の手法を用いればよい。また、ここでは詳細には説明していないが、ヘリカルスキャンのビュー重み付け処理も従来の手法と同様に行うことができる。
【0066】
ステップS7では、ステップS6で再構成された画像を表示する。
【0067】
以上、本実施形態によれば、収集されたファンビーム投影データのチャネルデータ位置を、再構成領域を基準とする仮想的なチャネルデータ位置に置き換えて、そのファンビーム投影データをビュー角度とチャネルデータ位置とを両軸とするデータ空間に配置することができる。このデータ空間は、従来のファンパラ変換でパラレルビーム投影データを得るための加重加算処理を行うデータ空間と同様のデータ空間である。そのため、スキャン中の撮影テーブルの昇降により被検体とデータ収集系との位置関係が変化したとしても、既に確立している従来通りのアルゴリズムでファンパラ変換処理を行うことができる。これにより、撮影テーブルの高さを変化させながらスキャンして収集された投影データに対してファンパラ変換を行うことができる。
【0068】
なお、本実施形態は、発明の一実施形態に過ぎず、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更・追加が可能である。
【0069】
例えば、本実施形態では、クレードルの高さを連続的に変化させながらヘリカルスキャンを行っているが、クレードルの高さは段階的に変化させながらヘリカルスキャンを行ってもよい。
【0070】
また、同様に、ファンパラ変換を用いない場合には、画像再構成領域において、ファンビーム投影データを、画像再構成中心から撮影テーブルの昇降分の距離だけずらして画像再構成処理を行うことで、断層像の画像再構成処理を行ってもよい。
【0071】
また例えば、スキャンは、上記の一般的なヘリカルスキャンのほか、ヘリカルシャトルスキャン(helical shuttle scan)、可変ピッチヘリカルスキャン(variable pitch helical scan)であってもよいし、アキシャルクラスタスキャン(axial
cluster scan)、シネクラスタスキャン(cine cluster scan)等であってもよい。