(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
印刷工程は、インクジェット印刷、空気圧式噴霧、スクリーン印刷、パッド印刷、レーザ印刷、ドットマトリックス印刷、感熱式印刷、リソグラフィ、又は3D印刷からなる群から選択された印刷技術によって実行される請求項1乃至6の何れか1つに記載の方法。
少なくとも幾つかの前記印刷塗料は、同じタイプのナノ粒子を異なる割合で含み、前記層が塗布されることにより前記膜を通して少なくとも1つの材料の濃度勾配が生成される請求項1乃至7の何れか1つに記載の方法。
各塗料のナノ粒子は、同じ元素を異なる割合で含み、前記層が塗布されることにより前記膜を通して少なくとも1つの材料の濃度勾配が生成される請求項1乃至9の何れか1つに記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
幅広い支持を得るべく、薄膜PV電池は、光子エネルギーの電流への高い変換効率を示すと共に、屋外の環境において、長年に亘り、理想的には30年以上、確実に動作しなければならない。CdTeとCISを用いた技術は、長期の安定性を実証している。しかし、性能の低下も観測されている。電流薄膜デバイスの効率は、理論上の最大値の65%(実験室レベルでは75%)に達し、いまだ、究極の達成可能な性能の90%を実証している単結晶シリコンとGaAs電池に遅れをとっている。薄膜技術の効率の改良は、多接合と傾斜材料を通じて成し遂げることが可能である。例えば、CISの研究は、ガリウムを添加すること、CIGSと呼ばれる化合物を形成すること、GaとInの濃度勾配を示すことが、より良い効率を導くということを明らかにしている。
【0005】
高効率に不可欠である薄膜技術の複雑さが、コストと製造可能性に悪影響を及すことになるため、改良技術、特に既製の装置を用いて実行可能な低コストの技術の確立が必要となる。低コスト且つ信頼性のあるCIGS及びCdTeデバイスの開発への挑戦は、層堆積、1μm以下の厚さを有する吸収層、及び、広範囲に亘る膜均一性の制御のための装置の標準化を含む。
【課題を解決するための手段】
【0006】
様々な実施形態において、本発明は、予め作製されたナノ粒子の2つ又は3つの分散液を連続して印刷及びアニールすることによって連続膜を作製する方法を提供する。具体的には、本発明の幾つかの実施形態は、PV電池及び他の半導体デバイスに使用することが出来る傾斜多接合半導体膜の製造を容易にする。前記方法は、真空を必要としないので、真空に基づく技術より安価であって且つ実施し易い。
【0007】
この発明に係るナノ粒子は特定の元素組成の粒子であって、直径が100nm以下であり、好ましくは直径が20nm以下である。代表的なナノ粒子は、金属酸化物粒子を含んでおり、それらは集団で粉を形成している。半導体薄膜に適している幾つかのナノ粒子の組成は、化学元素Cu、Ag、In、Ga、Al、Te、Se、S、Cd、及びAsの内、2つ以上を含んでいる。しかしながら、本発明は前記元素に限定されないが、前記方法は、一般的に、分散液及び一連の印刷に適したナノ粒子の任意の成分に適用することが出来ることは強調されるべきである。本発明に係る技術の利点の1つは、前駆体ナノ粒子の組成制御を提供することによって薄膜の成分を最適化する能力にある。これは、特定の化学成分の層からなる連続膜の製造を容易にし、それによって、これらの層の組成の最適化が可能となり、そして、その結果として、該膜の電気特性、具体的には該膜の厚さに亘るこれらの特性における変化の、改良された制御が可能となる。
【0008】
本発明に係る分散液は、溶液、コロイド、又は懸濁液であるかに拘わらず、ナノ粒子と、溶媒又は分散剤を含んで適当な流動性を有するキャリアとの任意の(均一)混合物を含んでいる。これらナノ粒子の分散液は、ここでは「印刷塗料」又は「ナノ粒子を基にしたインク」と呼ばれる。
【0009】
本発明に係る方法は、インクジェット印刷、空気圧式噴霧、スクリーン印刷、パッド印刷、レーザ印刷、ドットマトリックス印刷、感熱式印刷、リソグラフィ、又は3D印刷を、これらに限らず含む様々な印刷技術と、これに対応する印刷装置とを用いて実行することが出来る。この汎用性は、実行可能性と費用対効果に寄与する。更に、ナノ粒子の成分は、様々な堆積とアニール工程を通じて変化することが出来る。例えば、本発明の1つの実施形態において、異なる印刷可能な成分は、同じ元素のナノ粒子を異なる割合で含み、例えば、そのナノ粒子は、化学式CuIn
1−XGa
XSe
2を有していてもよく、ここでxは0と1と間で変化し(即ち0≦x≦1)、結果として膜を通して少なくとも1つの元素(この例ではIn及びGa)の濃度勾配がもたらされる。
【0010】
従って、第1の態様において、本発明は、膜を製造する方法を提供し、該方法は、基板と予め作製されたナノ粒子の異なる分散液を含んで流動性を有する印刷塗料とを提供する工程と、続いてこれらの印刷塗料の層を印刷し、アニールして、1つの連続膜にする工程とを有する。幾つかの実施形態において、2つ又はそれ以上の層が、それらがアニールされる前に連続して印刷される。更に、幾つかの実施形態において、エッチング工程がアニールに先行する。幾つかの個々の印刷層は、1μmより小さい厚さを有していてもよい。
【0011】
特定の実施形態においては、印刷塗料は、同じタイプのナノ粒子を異なる割合で含むか、又は同じ元素からなるナノ粒子を異なる割合で含んでおり、アニールされた層は、少なくとも1つの元素の濃度勾配を有する膜を形成している。別の実施形態においては、各印刷塗料は、異なるタイプのナノ粒子を含んでいる。好ましい実施形態において、ナノ粒子は、20nm以下のサイズと低いサイズ分散度とを有している。
【0012】
幾つかの実施形態において、膜は、半導体材料を含み、電気的に基板と相互作用している。更に、この構造は、導電性のスーパーストレートによって補完して、半導体デバイスを形成することが出来る。具体的な実施形態において、そのデバイスは太陽電池である。
【0013】
第2の態様において、本発明は、実質上、粘度に依存しない流動率を有した、流動性を有する印刷塗料を提供する。これらの印刷塗料は、キャリアと、ナノ粒子の分散液とを含み、該ナノ粒子は、第1成分としてのCu及び/又はAgと、第2成分としてのSe、Te、及び/又はSを含んでいる。加えて、印刷塗料は、In、Ga、及び/又はAlを第3成分として含んでいてもよい。
【0014】
本発明に係る方法の実施形態が、上述した印刷塗料に限定されないことは、強調されるべきである。
【0015】
上述した議論は、添付の図面と共に本発明の以下の詳細な説明から、より容易に理解されるだろう。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.製造方法
先ず
図1及び
図2を参照する。ここで、
図1及び
図2はそれぞれ、代表的な一連の過程100、及び、本発明の実施形態を実行する操作装置を図示している。一連の過程は、
図1に示されたフローチャートに詳述されている工程を有し、該装置を利用して
図2に図示されている中間及び最終の構造を得る。最初の工程110において、基板200と、予め作製されたナノ粒子の異なる分散液を含む流動性を有する複数の印刷塗料とを、更に以下で説明される様に、用意する。印刷塗料202aを、工程112にて第1層用に選択し、そして工程114において、この塗料を、プリンタ204を用いて基板200上に印刷する。以下に説明する様に、エッチング工程116を印刷の後に実行することもある。任意工程118において、堆積層を、熱源206を用いて乾燥させると共にアニールして、連続膜208を形成する。「アニール」は、ナノ粒子が均一な構成の連続層に溶け込む十分な温度及び十分な時間での堆積層の加熱を意味する。アニールを特定の層の堆積の後に実行するか否かは、印刷塗料の仕様、層の厚さ、及び、所望の膜特性に依存する。しかし、一般的には、塗料を、該塗料上に次の塗料を堆積させる前に乾燥させる。アニール源206は、適当な熱源、例えばオーブン、真空オーブン、加熱炉、IRランプ、レーザ、又は、ホットプレートであってもよく、適当なアニールの時間と温度は、過度の実験なしに、印刷装置との関連で以下に記載のキャリブレーションによって得られてもよい。尚、アニールの温度と時間は、インク塗料と同様、ナノ粒子のサイズと組成に依存する。アニール温度は、通常、200℃より高い。
【0018】
工程112、114及び任意に工程116、118を繰り返し、第2の印刷塗料202bを印刷する。これにより、この時点では、2つの層を含む膜208が得られる。尚、第2の印刷塗料202bは、通常、塗料202aと異なる。この繰り返しには、同じ印刷及びアニール装置204、206が使用されてもよく、この場合、プリンタ204では、新しい印刷塗料に(例えば、カートリッジの形態で)置き換えられることになる。又は、一連の過程100は、堆積及びアニール工程にそれぞれ専用の別々の印刷及びアニール装置を具えたアセンブリライン形態で実行されてもよい。個々の基板200を連続的に処理する場合には、ライン形態が好ましいかもしれないが、多数の工程にて同じ装置を利用することは、多数の膜を並行して製造する(例えば、多数の基板に対して同じ工程が同時に実行される)場合に、より役立つかもしれない。
【0019】
工程110〜118を複数回繰り返して(必ずしも繰り返す必要はないが)、3つ以上の層202a、202b、202cを有する膜を形成してもよい。再度、特定の印刷塗料を1回以上利用することが出来、傾斜膜の場合ではあるが、該塗料は各堆積工程と共に徐々に変化するだろう。最後の層が印刷された後、エッチング工程120はやはり任意であるが、前のアニール116が実行されていようとなかろうと、複数の堆積層から連続最終膜210を形成するために、最後のアニール工程122は実行されなければならない。この様に堆積してアニールされる多数の層は、少なくとも2つであって、最終膜210の所望の厚さと組成によってのみ限定される。従って、
図2は3つの層を有する膜の製造を図示しているが、これは単に説明のためだけのものである。
【0020】
各層は、単一タイプのナノ粒子を含んでいてもよく、この場合、異なる層は通常、異なる化学組成を有するナノ粒子を含むことになる。或いは(又は、加えて)各層は、複数のタイプのナノ粒子を含んでいてもよく、この場合、同じ組合せのナノ粒子が、異なる層において異なる割合で使用されてもよい。本発明の幾つかの実施形態においては、方法100は、同じ成分を異なる割合で有するナノ粒子を含む種々の印刷塗料を使用して高効率の傾斜膜を製造することに用いられる。例えば、CIGS膜は、変化する化学組成CuIn
1−XGa
XSe
2で製造されてもよい。ここで、xは、連続的に堆積された層(即ち、連続的な印刷塗料)の間で徐々に変化する。例えば、xは、膜の境界面(例えば、構造物の上面、又は基板と接触している境界面)から該膜内の所定の位置までの距離を、膜の厚さで割ったものであってもよい。その様な膜は、化学気相堆積(CVD)によって作成されて、ガリウム濃度が背面接触するモリブデンに向かうほど増大する状態で、PV電池中の吸収層として用いられ、その結果―濃度とそれに対応するバンドギャップの勾配とによって規定される擬電場が原因となって背面再結合が減少した結果、19.5%もの著しく高い効率となる。方法100は、CVD過程に代わるものを提供する。即ち、Moで覆われたガラスのような適当な基板を用いて、CuInSe
2を第1層として堆積させ、次に、Gaの含有量が各層において徐々に(線形的又は非線形的に)増加する印刷塗料を、ナノ粒子の組成が主にCuGaSe
2となるまで堆積させてもよい。一旦、複数の層が好ましい順序で印刷されると、それらをアニールして、高性能な傾斜CIGS膜を形成する。他のナノ粒子を基にしたインクを中間層として導入して、電池の性能を最適化するべく材料のバンド構造を更に調整してもよい。本発明に係る技術は、CVDに比べて、真空装置が必要でないという付加的な利点を有する。
【0021】
本発明の他の実施形態において、印刷塗料は、異なるタイプのナノ粒子を含んでいる。方法100は、例えば、CdS/CdTe薄膜の作製に使用することが出来る。一般的に、本発明の方法は、適当なナノ粒子源が使用可能である幾つかの材料に適用することが出来る。
【0022】
2.印刷装置204
印刷工程114の実行のために、インクジェット印刷、空気圧式噴霧、スクリーン印刷、パッド印刷、レーザ印刷、ドットマトリックス印刷、感熱式印刷、リソグラフィ、及び3D印刷を含むがこれに限られない、よく特徴付けられた種々の印刷方法を、有利に利用することが出来る。コンピュータ制御されたインクジェットプリンタは、直ちに利用することが出来、又、それらが提供する制御のレベルにより発明の実施にとって特に魅力のあるものである。ナノ粒子を基にしたインク(印刷塗料)を、ここに記載する通り印刷するべく、市販のインクジェットプリンタを、殆ど又は全く変更を加えずに使用することが出来る。プリンタヘッドの目詰まりや、他の非互換性の様な問題を避けるべく、印刷塗料の内容について後に詳述する様に、ナノ粒子を基にしたインクの粘度を、プリンタの製造者によって製造されるインクの粘度に調整することが出来る。インクジェットプリンタの様な直ちに利用可能であって低コストの装置への方法100の適用のし易さは、その利点の1つである。
【0023】
個々の層及び膜全体の厚さのコントロールを容易するべく、プリンタを次のように調整することが出来る。各印刷塗料に対して一連の印刷運転が実行され、各印刷運転には異なる回数の印刷パスが含まれる。乾燥とアニールは、各印刷パスの後又は運転の終了時に実行する。各々の運転から得られる膜の厚さは異なり、該厚さは走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、又は他の適当な技術により決定される。結果として、所望の厚さを有する層をその厚さに対応する印刷パスの回数を参照して作製してもよい。所望の膜特性を得るための最適なアニール温度及び時間を決定するために、同様の調整技術を用いてもよい。
【0024】
3.印刷塗料202
ここにおける印刷塗料は、流動性を有するナノ粒子の分散液である。微粒子の前駆体物質は、主要な成分(例えば、Cu、In、Ga)を前駆体粉に正確に混ぜることが出来るので、例えばCIGSの様な多成分物質のための組成制御を簡素化する。これらの粉を作製する1つの方法には、構成要素を必要とされる割合で混ぜること、それらを酸に溶かして水性混合物を形成すること、水酸化物沈殿物を用いて構成要素の水酸化物のゲル状の混合物を形成すること、及び混合物を乾燥させて混合酸化物の微粉を得ることが含まれる。又、ナノ粒子の合成は、例えば、米国特許第6379635号及び同時係属中の米国特許出願第11/579050号及び第11/588880号に記載されている技術を用いて実行することが出来る。
【0025】
CdSe、InS、GaS、ZnS、CdS、ZnAs、CdAs、及び更に関連するナノ結晶物質を生成するための方法は、米国特許第6379635号の実験の節の第1節〜第10節に記載されている。これは、ナノ結晶前駆体が単一の前駆錯体(例えば、必要とされる金属イオンの炭酸アルキル錯体であるが、これに限定されない)にてどのように提供されるかを記載している。尚、ナノ結晶前駆体は、その後、適当な条件(例えば、約200〜300℃の温度)下で熱分解されて、最終的に所望のナノ結晶物質が生成される。
【0026】
例として、ナノ結晶CdSeは次のように形成することが出来る。即ち、1.2MeCddsc(0.5mmol)を、10mlのTOP(98%、アルドリッチ)中に入れ、形成された混合物を濾過し、その後30gのTOPOに200℃で注入した。その後、溶液の温度を250℃まで上昇させ、半時間熱した。それによって形成された深い赤色の溶液を75℃まで冷却した後、過剰の乾燥CH
3OH(BDH)を加えた。形成された凝集沈殿物を、遠心分離によって分離し、且つトルエン中に再分散させ、その後、不溶性物質を全て廃棄した。トルエンを真空(10
−2Torr)下で排出し、CH
3OHで洗浄された深い赤色の材料を生成した。固形物をトルエン中に再分散し、ポートワインの赤色を有する溶液が生成され、それは数週間光学的に透明なままであった。この手順を、引き続いて、分別工程中に得られる上澄み液に光吸収が検出されなくなるまで適用した。
【0027】
同様の方法を用いて、MeCddscを一般的な化学式(AlK1)
2M
IIIE
2CN(AlK2)
2の錯体に置き換えることにより、III-VIナノ結晶材料(例えば、InS、GaS)を製造することが出来る。ここで、AlK1及びAlK2は個々に、Me、Et、Np等のアルキル基であり、各AlK1及びAlK2は同じであるか又は異なっている。M
IIIは、In、Ga等のIII族の金属イオンである。Eは、S、Se等のVI族のイオンである。又、同様の方法を用いて、MeCddscを一般的な化学式[M
II[E
2CN(AlK3)
2]
2]の錯体に置き換えることにより、II-VI又はII-Vナノ結晶材料(例えば、ZnS、CdS,ZnAs、及びCdAs)を製造することが出来る。ここで、各AlK3は、Me、Et,Pr等のアルキル基であり、各AlK3は同じであるか又は異なっている。M
IIは、Zn、Cd等のII族の金属イオンである。Eは、As、又はS、Se等のV又はVI族のイオンである。
【0028】
大量のナノ結晶材料を生成するための方法が、米国特許出願第11/579050及び第11/588880号に記載されている。これらの出願は、初めて、分子クラスタをどのように使用して入れることにより、任意の好ましいナノ結晶材料の成長を制御するのかを記載しており、これにより、分子クラスタに、該分子クラスタ種上で成長したナノ結晶コアを形成する材料とは異なる材料の1又は複数の外殻を設けることが出来る。
【0029】
例として、米国特許出願第11/579050は、例1〜9に、反応混合物の温度の上昇を適当に制御することと組み合せて、適当な時間に亘って(例えばTOPSe及びCd(CH
3CO
2)
2からの)Cdイオン及びSeイオンの添加を制御することによってCdSeナノ結晶を製造するべく、使用することが出来るクラスタ[HNEt
3]
2[Cd
4(SPh)
10]及び[HNEt
3]
4[Cd
10Se
4(SPh)
16]の生成について記載している。例えば、例1は、HDA中の[Et
3HN]
4[Cd
10Se
4(SPh)
16]/TOPSe/Cd(CH
3CO
2)
2からのCdSeナノ粒子の生成について記載している。HDA(300g)を3首フラスコに入れ、動的真空下にて120℃まで1時間熱することにより乾燥/脱気させた。その後、溶液を、70℃まで冷却した。これに1.0gの[Et
3HN]
4[Cd
10Se
4(SPh)
16](0.311mmol)、TOPSe(20ml、40.00mmol)[予めTOP中にセレン粉を溶解させることから生成される]、及びCd(CH
3CO
2)
2(10.66g、40.00ml)を加え、反応混合物の温度を、8時間に亘って70℃から180℃まで徐々に上げた。進行するナノ粒子の形成/成長を、反応混合物から分割量を取得し、且つそれらのUV‐可視光及びPLスペクトルを測定することによって、それらの発光波長により観測した。発光スペクトルが572nmに達したときに、反応物を60℃まで冷却することによって、反応を停止させ、続いて200mlの乾燥した「温かい」エタノールが加え、ナノ粒子の沈殿物を生じさせた。結果として生じたCdSeを乾燥させ、それからトルエン中に再溶解させてセリットを通して濾過し、続いて温かいエタノールから再沈殿させて過剰のHDAとCd(CH
3CO
2)
2を取り除いた。これにより、HDAによってキャッピングされた9.26gのCdSeナノ粒子を作製した。
【0030】
更なる例として、米国特許出願第11/588880号は、Me
2CdTOPの滴下による、HDA中の[HNEt
3]
4[Cd
10Se
4(SPh)
16]/TOPSe/Me
2CdTOPからのCdSeナノ粒子の生成と、Et
2ZnとS-オクチルアミンの滴下による、HDA中の[Et
3HN]
4[Zn
10S
4(SPh)
16]種からのZnSナノ粒子の生成とについて記載している。この方法で形成されたナノ粒子には、その後、1又は複数の殻層を設けて、CdSe/ZnS‐HDAによってキャッピングされたナノ粒子と、ZnSe/ZnSナノ粒子とを供給することが出来る。例えば、ZnSナノ粒子は、HDA中の[Et
3HN]
4[Zn
10S
4(SPh)
16]種から、次の様にEt
2ZnとS-オクチルアミンの滴下によって形成することが出来る。200gの量のヘキサデシルアミン(HDA)を3首丸底フラスコに入れ、動的真空下にて120℃まで>1時間熱することにより乾燥させ脱気させた。溶液は、60℃まで冷却され、反応フラスコを窒素で満たし、そして次の試薬、即ち0.6g[HNEt
3]
4[Zn
10S
4(SPh)
16](0.2mmol)、トリオクチルホスフィン(2mmol)中にEt
2Znを含む4mLの0.5M溶液、及びオクチルアミン(2mmol)中に元素硫黄を含む4mLの0.5M溶液を、フラスコ内に、標準的な無気技術を用いて入れた。温度を120℃まで高め、2時間掻き混ぜた。このとき、〜0.2℃/minの速度で120℃から210℃までのプログラムされた温度勾配を起動した。同時に、8mLの0.5M Et
2Znと8mLの0.5M S-オクチルアミンを〜0.05mL/minの速度で滴下した。PL発光極大が必要とされる発光(λ
max=391nm、FWHM=95nm)に到達したときに、60℃まで冷却して反応を停止させ、続いて、300mlの乾燥エタノール又はアセトンを加えて溶液から粒子を沈殿させた。この沈殿物を、濾過によって分離した。結果として生じたZnS粒子を、トルエン中に再溶解させ、セリットに通して溶液を濾過し、そして温かいエタノールから再沈殿させることにより、(過剰なHDA、硫黄、及び亜鉛を取り除くべく)更に精製した(作製量0.9g)。その後、CdSeナノ粒子のキャッピング又はシェリングを、例えば次のように、HDA(800g)を3首丸底フラスコに入れ、動的真空下にて120℃まで>1時間熱することにより乾燥させ脱気させることによって、実行した。その後、溶液を60℃まで冷却し、これに、585nmのPL極大発光を有する9.23gのCdSeナノ粒子を加えた。その後、HDAを220℃まで熱した。これに、オクチルアミンに溶解された総量20mlの0.5M Me
2Zn・TOPと、0.5M、20mlの硫黄とを、交互に滴下して加えた。それぞれ3.5、5.5、及び11.0mlの3回の添加をし、これにより、最初に3.5mlの硫黄を、PL極大の強度がゼロ近傍になるまで滴下した。その後、3.5mlのMe
2Zn・TOPを、PL極大の強度が最大値に至るまで滴下した。このサイクルを繰り返し、各サイクルにてPL極大はより高い強度に到達した。最後のサイクルでは、PL極大強度に到達すると、最大強度を5〜10%の間で下回るまで追加の前駆体を加え、反応物を、150℃で1時間アニールした。その後、反応混合物を60℃まで冷却し、すぐに300mlの乾燥した「温かい」エタノールを加え、粒子の沈殿を生じさせた。結果として生じたCdSe-ZnS粒子を乾燥させ、その後トルエンに再溶解させてセリットを通して濾過し、続いて温かいエタノールから再沈殿させて過剰のHDAを取り除いた。これにより、HDAによってキャッピングされた12.08gのCdSe-ZnAコアシェルナノ粒子が生じた。元素分析によれば、C=20.27、H=3.37、N=1.25、Cd=40.11、Zn=4.43%、最大PL 590nm、FWHM 36nmであった。
【0031】
セレノール化合物を用いた任意の好ましいストイキオメトリのCIGSナノ粒子を作製するための方法が、米国仮出願第60/991510に開示されている。該方法の実施形態は、(Al、Ga、及び/又はInの内の少なくとも1つとCu、Ag、Zn、及び/又はCdの内の少なくとも1つの源を含む)ナノ粒子前駆体組成の少なくとも第1部分を溶媒(例えば、長鎖炭化水素溶媒)中に分散させること、溶媒を第1温度まで適当な長さの時間熱すること、セレノール化合物を溶媒に加えて該溶媒を熱すること、ナノ粒子前駆体組成の第2部分を反応混合物に加えること、該混合物を第1温度より高い第2温度まで適当な長さの時間に亘って熱すること、及びその温度を最大10時間維持することを含む。粒子が形成された時点で、該粒子の表面原子は通常、キャッピング剤に配位され、これは、該方法において用いられるセレノール化合物を含むことが出来る。揮発性のセレノール化合物を用いた場合、熱することによりこのキャッピング剤を取り除いて、配位リガンドによるキャッピングの影響と更なる処理を受け易い「裸の」ナノ粒子を生み出すことが出来る。例1及び例2は、この方法の実行に関する更なる詳細を提供する。
【0032】
例1:Cu(I)アセテート(1mmol)及びIn(III)アセテート(1mmol)を、きれいで乾燥したRB-フラスコに加える。オクタデセンODE(5mL)を真空下にて100℃で30分間熱せられた反応混合物に加える。フラスコを窒素で埋め戻すと共に、温度を140℃まで高める。1-オクタンセレノールを投入し、温度を120℃まで下げる。結果として生じたオレンジ色の懸濁液を掻き混ぜながら熱し、温度が140℃に達したときに透明なオレンジ/赤色の溶液が得られる。この温度を30分間維持し、その後、1M トリ‐オクチル‐ホスフィン セレナイド TOPSe(2mL、2mmol)を滴下し、そして溶液を160℃で熱する。PLを、それが所望の波長に達するまで観測し、その後、冷却して、そして結果として生じたオイルを、メタノール/アセトン(2:1)を用いて4−5回洗浄し、最後にアセトンを用いて沈殿により分離する。
【0033】
例2(大量生産):TOPSeの原液を、窒素下でTOP(60mL)中にSe粉(10.9、138mmol)を溶解させることにより生成した。乾燥させるべく、脱気されたODEをCu(I)アセテート(7.89g、64.4mmol)とIn(III)アセテート(20.0g、68.5mmol)に加えた。反応ベッセルを、空にして140℃で10分間熱し、N
2によって埋め戻し、そして室温に冷却した。1-オクタンセレノール(200mL)を加えて明るいオレンジ色の懸濁液を作製した。フラスコの温度を140℃まで高め、そして酢酸を120℃で反応物から蒸留した。140℃に達した時点で、TOPSe溶液を1時間の過程に亘って滴下した。3時間後、温度を160℃まで高めた。周期的に反応物から分割量を得て、且つUV/可視光及び発光スペクトルを測定することにより、反応の経過を観測した。7時間後、反応物を室温まで冷却し、そして結果として生じた黒色のオイルをメタノールにより洗浄した。メタノール洗浄を、アセトンの添加によってそのオイルから純粋な黒色の材料を沈殿させることが可能となるまで続けた。黒色の沈殿物を、遠心分離によって分離し、アセトンにより洗浄し、そして真空下で乾燥した。生成量は31.97gであった。
【0034】
粒子の特性又は適当な分散剤の選択を最適化するべく、X線回折(XRD)、UV/可視光/近赤外線分光分析、走査型又は透過型電子顕微鏡(SEM/TEM)、エネルギー分散X線微量分析(EDAX)、発光分光分析、及び/又は元素分析を含む従来の技術によって、ナノ粒子を、その組成、サイズ、及び電荷に関して特徴付けることが出来る。後で除去される1-オクタンセレノールキャッピング剤中で生成された、代表となるCu/In/Seコア粒子は、誘導結合プラズマ原子発光分光分析(ICPAES)解析の結果、次の適当なナノ粒子組成、即ちCu
1.00、In
1.22、Se
2.34、及び0.82のCu/Inの割合に対応するCu 16.6%、In 36、6%、Se 48.3%となる。
【0035】
この発明の好ましい実施形態において、ナノ粒子は、20nm以下の平均サイズと、±約2nm以下の低いサイズ分散度とを有する。これらの制限への適合により、薄膜を、該膜を通じてバンド構造を制御しながら印刷することが容易となり、その結果、高い変換効率が得られる。更に、低いサイズ分散度は、ナノ粒子の優れた充填と、ナノ粒子膜の一様な融解温度を可能にし、それは適当な膜形成に寄与する。
【0036】
ナノ粒子は、トルエンの様な溶媒と分散剤とを含むキャリア中に分散されて、印刷塗料を形成する。分散液は、流動性を有する限り、一般的に粒子サイズに応じて、溶液、コロイド、又は懸濁液の形であってもよく、又、液体、ペースト、又は他の粘弾性材料の濃度を有していてもよい。その粘度は、0.158×10
11cP〜2.3×10
11cPの範囲内であるべきである。
【0037】
非溶性のナノ粒子を用いて水性インクが形成される実施形態において、粒子の表面積及び電荷によって、インク形成に適した分散剤の選択が決められる。例えば、顔料インクジェット印刷において、媒質中に分散された粒子が得る全体の電荷(即ち、ゼータ電位)は、分散安定性を確保するのに十分に高くなければならない。但し、過剰な分散安定性は、結果として凝集及びプリンタヘッドの目詰まりを生じることになり得る。ノズルを通じてのインクの噴射ポテンシャルを確保するべく、平均凝集サイズは最小にされるべきである。印刷産業において、500nmより大きい粒子サイズは、インクジェットノズルの閉塞を招き、印刷の質を低下させる虞があると、一般的に認識されている。
【0038】
プリントヘッドのブロッキングの虞を軽減するべく、ナノ粒子を、メルカプトカルボン酸(例えば、メルカプト酢酸)の様な水溶性のキャッピング剤で覆うことが出来る。例えば、米国特許第6114038号は、不水溶性であってピリジンでキャッピングされたナノ結晶のコーティンググループを大過剰の純メルカプトカルボン酸と交換して、水溶性のキャッピングされたナノ結晶を得る方法を教示している。即ち、ピリジンでキャッピングされたナノ結晶をヘキサンと共に沈殿させ、そして遠心分離する。残渣を純メルカプト酢酸中に溶解させ、そして室温で少なくとも6時間インキュベートする。クロロホルムを加えてナノ結晶を沈殿させ、そして過剰なチオールを洗い流す。そして、ナノ結晶を再び遠心分離し、クロロホルムとヘキサンで洗浄し、そしてアルゴンで乾燥させる。印刷塗料の粘度(ナノ粒子を基にしたインク)が好ましく調整されて、塑性流動性が実現される。即ち、ここで粘度は、基本的に流動率と独立している。これは、コーティング特性の制御を容易にする。可溶化又は懸濁のために必要とされるキャッピング剤を除去して、膜内へのカーボンの堆積物の形成を停止することが出来る。ある場合には、この除去は、上昇した温度でのアニールの結果として自然に生じる一方で、もし生じない場合には、それを前のエッチング工程116、120によって補助することが出来る。
【0039】
4.応用
図1に示される方法に従って作製された半導体薄膜構造は、光電池、LED、トランジスタ、及び他の半導体デバイスに使用することが出来る。
図3Aは、CIGS吸収体膜を有する太陽電池の代表的な構造を示している。基板305は、ガラス上にモリブデンを有し、又、サブミクロンのMo層が電池300のバック接点を提供している。吸収体膜307は、一連のCIGSのアニールされた層を有すると共に、Mo接点300に向かってGa濃度の増加とIn濃度の減少を示している。この膜は、連続して各層の印刷とアニールとを行うことによって作製することが出来る。或いは、
図3Bに示す様に、それは、先ず全ての層を堆積させ、次にこれらの層を1回のアニール工程で1つの連続膜に結合させることによって作製されてもよい。尚、
図3Bは、個々の層のInとGaの含有量を例示している。緩衝層312は、CIGS膜との接合点を形成している。従来、この接合点はCdSを有していた。しかし、Cdに関連した環境と健康の懸念から、好ましいPV電池は、代わりにZnS、ZnO(O,OH)、又はIn
2S
3を使用したカドミウムフリーのものである。従って、ガラスカバー316上のZnO層314は、電池300のスーパーストレートを形成している。ZnO/ZnO(O,OH)/CIGS/Mo電池の性能は、吸収体層307内に他の半導体材料の層を導入することによって改良又は最適化することが出来る。(例えば、次の表1に示す様に)例えばSeがS又はTeに置換され、CuがAgに置換され、若しくはIn又はGaがAlに置換されたCIGSの変異体は、価電子帯及び伝導帯のエネルギーを操作して電子-ホール捕獲を補助するために使用することが出来る。本発明の実施形態は、これらの付加的な層を結合するための便利な手段を提供する。更に、もしナノ粒子源が接合層及び/又は基板又はスーパーストレートに使用可能であれば、必要とされるアニールの温度がデバイス内の他の層に弊害をもたらさない限り、同様に、これらの層を、印刷又はアニールによってデバイス中に結合することが出来る。
【0041】
本発明は特定の詳細に関して記載されたが、そのような詳細は、それらが添付のクレームに含まれていない限り、発明の範囲を限定するものではない。