特許第5690138号(P5690138)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5690138
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】微分散エマルションの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/00 20060101AFI20150305BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20150305BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20150305BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20150305BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20150305BHJP
【FI】
   B01J13/00 A
   A61K8/06
   A61K8/37
   A61K8/60
   A61K8/92
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-512581(P2010-512581)
(86)(22)【出願日】2008年6月14日
(65)【公表番号】特表2010-530297(P2010-530297A)
(43)【公表日】2010年9月9日
(86)【国際出願番号】EP2008004802
(87)【国際公開番号】WO2008155074
(87)【国際公開日】20081224
【審査請求日】2011年6月13日
【審判番号】不服2013-10958(P2013-10958/J1)
【審判請求日】2013年6月12日
(31)【優先権主張番号】07011967.2
(32)【優先日】2007年6月19日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】102007046575.2
(32)【優先日】2007年9月27日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102008017032.1
(32)【優先日】2008年4月3日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102008017034.8
(32)【優先日】2008年4月3日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102008022433.2
(32)【優先日】2008年5月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】505066718
【氏名又は名称】コグニス・アイピー・マネージメント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Cognis IP Management GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・フロウハ
(72)【発明者】
【氏名】エスター・キュステルス
(72)【発明者】
【氏名】ヤスミン・メンツァー
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフ・アイスフェルト
【合議体】
【審判長】 山田 靖
【審判官】 豊永 茂弘
【審判官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特表平6−501942(JP,A)
【文献】 特開2006−249087(JP,A)
【文献】 特開2007−15972(JP,A)
【文献】 特表平2005−500149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 13/00
A61K 8/06
A61K 8/37
A61K 8/60
A61K 8/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1μm未満の平均粒度を有する水性エマルションの製造方法であって、まず第1工程において、
(a)10〜20重量%の一般式:
O−[G]
[式中、Rは4〜22個の炭素原子を含有するアルキルおよび/またはアルケニル基であり、Gは5または6個の炭素原子を含有する糖基であり、pは1〜10の数である。]で示されるアルキル(オリゴ)グリコシド、
(b)4〜10重量%の、グリセロールと鎖長C12〜C22脂肪酸とのエステル、
(c)5〜30重量%の油体、および
(d)100重量%までの残量としての、水および任意に更なる成分
からなり、100nm未満の平均粒度を有するマイクロエマルションを調製し、次いで第2工程において、このマイクロエマルションを、15〜35℃の温度でマイクロエマルションの体積の5〜20倍の水を用いて希釈し、油体が、アルキル基1つあたり6〜22個の炭素原子を含有する直鎖または分枝、対称または非対称のジアルキルエーテルであることを特徴とする方法。
【請求項2】
更なる成分が、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤またはカチオン性界面活性剤であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
更なる成分が、一般式:
−OH
[式中、Rは6〜22個の炭素原子を含有する飽和または不飽和、分枝または非分枝のアルキルまたはアルケニル基である。]
で示される脂肪アルコールであることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
更なる成分が、一般式:
O−(CHCHO)SO
[式中、Rは6〜22個の炭素原子を含有する直鎖または分枝のアルキルおよび/またはアルケニル基であり、は1〜10の数であり、Xはアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属、アンモニウム、アルキルアンモニウム、アルカノールアンモニウムまたはグルカンモニウムである。]
で示される脂肪アルコールエーテルスルフェートであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
第1工程で調製されるマイクロエマルションが以下の組成:
10〜20重量%のアルキル(オリゴ)グリコシド、
4〜10重量%のグリセロール脂肪酸エステル、
5〜30重量%の油体、
0〜15重量%の脂肪アルコールエーテルスルフェート、
0〜15重量%の脂肪アルコール、
100重量%までの残量としての、水および任意に更なる成分
からなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法に従って製造された、1μm未満の平均粒度を有する水性エマルション。
【請求項7】
請求項6に記載の水性エマルションを含んでなる化粧組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧組成物の分野で微分散エマルションとして存在するエマルション、およびそのようなエマルションの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非イオン性乳化剤を用いて調製された水中油型エマルションは、しばしば加熱時の相反転に悩まされることが知られている。即ち、高温で外部水相が内部相になり得る。この過程は一般に可逆性であり、このことは、冷却すると元のエマルション型が再び生じることを意味する。相反転温度より高温で調製されたエマルションは、一般に、粘度が低く、貯蔵安定性が高い。WO 97/06870 A1は、このタイプの糖界面活性剤含有エマルションを開示している。しかしながら、そのようなエマルションの製造は、エマルションをまず加熱し、次いで冷却しなければならないので、実際には複雑かつ高価である。更に、微分散エマルションを直接、即ち適用前または適用中に製造することに対する消費者側の要求が存在する。その結果として、微分散エマルションの貯蔵安定性を高めるために通常使用される添加剤を省くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO 97/06870 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、製造がより簡単な水性微分散エマルションを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は最初に、1μm未満の平均粒度を有する水性エマルションの製造方法であって、まず第1工程において、
10〜20重量%の一般式:
O−[G]
[式中、Rは4〜22個の炭素原子を含有するアルキルおよび/またはアルケニル基であり、Gは5または6個の炭素原子を含有する糖基であり、pは1〜10の数である。]
で示されるアルキル(オリゴ)グリコシド、
4〜10重量%の、グリセロールと鎖長C12〜C22脂肪酸とのエステル、
5〜30重量%の油体、および
100重量%までの残量としての、水および任意に更なる成分
を少なくとも含んでなるマイクロエマルションを調製し、次いで第2工程において、このマイクロエマルションを、10〜45℃、好ましくは15〜35℃の温度でマイクロエマルションの体積の5〜20倍の水を用いて希釈する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
このように、本発明の方法は2段階法であり、第1工程ではマイクロエマルションをそれ自体既知の方法で調製する。マイクロエマルションはまず、2種の不混和性液体および少なくとも1種の非イオン性界面活性剤または1種のイオン性界面活性剤からなる視的に均一で光学的に透明な低粘性の特に熱力学的に安定な混合物の全てを意味すると理解される。マイクロエマルションの平均粒度は通常100nm未満であり、マイクロエマルションは、高い透明性を有し、2000rpmで少なくとも30分間遠心分離した際の可視的相分離に対して安定である。
【0007】
第1工程(以下、工程1とも称する)におけるマイクロエマルションの調製は、好ましくは、油相と他の油溶性成分との混合、全成分の融点より高い温度までの油相の加熱、および続く界面活性剤含有水相の添加によって簡単に実施される。その後、熱力学的に安定なマイクロエマルションが自発的に生じる。適切な場合は、少し撹拌することも必要である。
【0008】
マイクロエマルションは、必須成分として、糖界面活性剤、即ちアルキル(オリゴ)グリコシド(以下「APG」とも称される)を含んでなる。本発明の教示において、アルキルおよび/またはアルケニルオリゴグリコシドは、式:RO−[G][式中、Rは4〜22個の炭素原子を含有するアルキルおよび/またはアルケニル基であり、Gは5または6個の炭素原子を含有する糖基であり、pは1〜10の数である。]に従う。それらは、従来の有機化学の適切な方法によって得られる。アルキルおよび/またはアルケニルオリゴグリコシドは、5または6個の炭素原子を含有するアルドースまたはケトース、好ましくはグルコースから誘導され得る。従って、好ましいアルキルおよび/またはアルケニルオリゴグリコシドは、アルキルおよび/またはアルケニルオリゴグルコシドである。一般式(I)中の添え字pは、オリゴマー化度(DP)、即ち、モノ−およびオリゴグリコシドの分布を示し、1〜10の数である。所定の化合物中のpは常に整数でなければならず、本発明では特にP=1〜6の値をとり得るが、特定のアルキルオリゴグリコシドについての値pは、ほとんどの場合端数の、分析によって決定される計算値である。1.1〜3.0の平均オリゴマー化度pを有するアルキルおよび/またはアルケニルオリゴグリコシドを使用することが好ましい。応用の観点から、1.7未満、とりわけ1.2〜1.4のオリゴマー化度を有するアルキルおよび/またはアルケニルオリゴグリコシドが好ましい。APGは、本発明のマイクロエマルション中に、いずれの場合にもマイクロエマルションの総量に基づいて10〜20重量%の量で存在する。本発明では、14〜19重量%の範囲の量が特に好ましい。
【0009】
更に、本発明のエマルションには、鎖長C12〜C22脂肪酸とグリセロールとのエステルが存在する。本発明では、グリセロールのモノエステルを使用することが好ましい。特に、グリセロールと不飽和直鎖脂肪酸とのモノエステルが適している。本発明では、グリセロールモノオレエートがとりわけ好ましい。これらのグリセロールエステルは、マイクロエマルション中に、いずれの場合にもマイクロエマルションの総量に基づいて4〜10重量%、好ましくは5〜9重量%の量で存在する。
【0010】
最後に、本発明のマイクロエマルションは、5〜30重量%の量で、油体、例えば非水溶性有機相も含んでなる。本発明において特に好ましい油相は、以下からなる群から選択される:6〜18個の炭素原子を含有する脂肪アルコールに基づくゲルベアルコール、直鎖C〜C22脂肪酸と直鎖または分枝C〜C22脂肪アルコールとのエステル、または分枝C〜C13カルボン酸と直鎖または分枝C〜C22脂肪アルコールとのエステル、直鎖C〜C22脂肪酸と分枝アルコールとのエステル、C〜C22脂肪アルコールおよび/またはゲルベアルコールと芳香族カルボン酸とのエステル、C〜C10脂肪酸に基づくトリグリセリド、C〜C18脂肪酸に基づく液体状モノ−/ジ−/トリグリセリド混合物、C〜C12ジカルボン酸と1〜22個の炭素原子を含有する直鎖または分枝アルコール或いは2〜10個の炭素原子および2〜6個のヒドロキシル基を含有するポリオールとのエステル、植物油、分枝第一級アルコール、置換シクロヘキサン、直鎖および分枝C〜C22脂肪アルコールカーボネート、6〜18個、好ましくは8〜10個の炭素原子を含有する脂肪アルコールに基づくゲルベカーボネート、安息香酸と直鎖および/または分枝C〜C22アルコールとのエステル、アルキル基1つあたり6〜22個の炭素原子を含有する直鎖または分枝、対称または非対称のジアルキルエーテル、エポキシ化脂肪酸エステルのポリオールによる開環生成物、シリコーン油および/または脂肪族またはナフテン炭化水素、ジアルキルシクロヘキサンおよび/またはシリコーン油。
【0011】
炭化水素は、炭素および水素のみからなる有機化合物を指称するために使用される用語である。炭化水素は、環式化合物および非環式(=脂肪族)化合物の両方を包含する。炭化水素は、飽和化合物、およびモノ不飽和化合物またはポリ不飽和化合物のいずれも包含する。炭化水素は、直鎖または分枝であり得る。炭化水素中の炭素原子の数によって、炭化水素は、奇数炭化水素(例えば、ノナン、ウンデカン、トリデカン)または偶数炭化水素(例えば、オクタン、ドデカン、テトラデカン)に分けることができる。分枝のタイプによって、炭化水素は、直鎖(=非分枝)炭化水素または分枝炭化水素に分けることができる。飽和脂肪族炭化水素は、パラフィンとも称される。
【0012】
「炭化水素混合物」は、10重量%までの炭化水素種ではない物質を含んでなる炭化水素混合物を意味すると理解される。直鎖C11炭化水素および直鎖C13炭化水素の重量%データは、いずれの場合にも、混合物中に存在する炭化水素の和を意味する。10重量%までの量で存在する非炭化水素は、この計算に考慮されない。
【0013】
炭化水素種ではなく、炭化水素混合物中に10重量%まで、特に8重量%まで、好ましくは5重量%までの量で存在し得る物質は、例えば脂肪アルコールであり、これは、炭化水素混合物中に未反応出発物質として残留する。
【0014】
用語「CX炭化水素」は、炭素原子数がXの炭化水素を包含する。従って、例えば、用語「C11炭化水素」は、炭素原子数が11の炭化水素の全てを包含する。
【0015】
炭化水素混合物が炭化水素の和に基づいて
(a)50〜90重量%の直鎖C11炭化水素、好ましくはn−ウンデカン、
(b)10〜50重量%の直鎖C13炭化水素、好ましくはn−トリデカン
を含んでなる、炭化水素混合物が好ましい。
【0016】
更に、炭素数が2以上異なる、少なくとも2種の異なった炭化水素を含んでなる炭化水素混合物が好ましい。これら2種の異なった炭化水素は、炭化水素の和に基づいて少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%を構成する。
【0017】
用語「2種の異なった炭化水素」は、異なった炭素数を有する炭化水素を意味する。
【0018】
このことは、炭化水素混合物が、炭素数n(n=整数)の炭化水素を含んでなる場合、該混合物が、n+2以上またはn−2以下の炭素数を有する少なくとも1種の更なる炭化水素も含んでなることを意味する。
【0019】
好ましくは、nは奇数、特に7、9、11、13、15、17、19、21および/または23である。
【0020】
更に、使用される炭化水素は、14C同位体を含んでなる炭化水素混合物であり得る。炭化水素混合物は、炭素数が2以上異なる、少なくとも2種の異なった炭化水素を含んでなる。
【0021】
しかしながら、油成分として、固体状の脂肪および/またはワックスを使用することもできる。これらは、先の段落に記載した油を含む混合物中に存在してもよい。脂肪の典型例は、グリセリド、即ち、高級脂肪酸の混合グリセロールエステルから本質的になる固体状または液体状の植物性生成物または動物性生成物である。本発明では、特に、固体状のモノグリセリドおよびジグリセリド、例えば、グリセロールモノオレエートまたはグリセロールモノステアレートが挙げられる。適当なワックスは、とりわけ天然ワックス、例えば、カンデリラろう、カルナウバろう、木ろう、アフリカハネガヤろう、コルクろう、グアルマろう、ライスオイルろう、サトウキビろう、オウリカリろう、モンタンろう、蜜ろう、セラックろう、鯨ろう、ラノリン(羊毛ろう)、尾羽脂、セレシン、オゾケライト(地ろう)、ペトロラタム、パラフィンワックス、マイクロワックス;化学修飾ワックス(硬ろう)、例えばモンタンエステルろう、サソールろう、水素化ホホバろう、並びに合成ワックス、例えばポリアルキレンワックスおよびポリエチレングリコールワックスである。トコフェロールおよび精油も、油成分として適している。しかしながら、本発明では、グリセロールモノエステルは、油相成分であるとは見なさない。
【0022】
本発明の方法で使用されるマイクロエマルションの更なる必須成分は、水である。水は好ましくは脱塩されるべきである。方法の第1工程で使用されるマイクロエマルションは、好ましくは81重量%までの水を含んでなる。好ましい水量範囲は、30〜80重量%、特に45〜65重量%である。
【0023】
前記成分に加えて、マイクロエマルションは、付加的成分として、一般式:R−OH
[式中、Rは6〜22個の炭素原子を含有する飽和または不飽和、分枝または非分枝のアルキルまたはアルケニル基である。]で示される脂肪アルコールも含み得る。典型例は以下である:カプロンアルコール、カプリルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、カプリンアルコール、ラウリルアルコール、イソトリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、パルモレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、エライジルアルコール、ペトロセリニルアルコール、リノリルアルコール、リノレニルアルコール、エレオステアリルアルコール、アラキルアルコール、ガドレイルアルコール、ベヘニルアルコール、エルシルアルコールおよびブラシジルアルコール、並びに例えば、脂肪および油に基づく工業用メチルエステルまたはRoelenのオキソ合成からのアルデヒドの高圧水素化において、およびモノマー画分として不飽和脂肪アルコールの二量化において得られる、それらの工業用混合物。好ましいものは、12〜18個の炭素原子を含有する工業用脂肪アルコール、例えば、ヤシアルコール、パームアルコール、パーム核アルコールまたは獣脂脂肪アルコールである。セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコールおよびそれらの混合物を併用することが特に好ましい。
【0024】
脂肪アルコールが存在するならば、それらは好ましくはマイクロエマルション全体に基づいて15重量%までの量で使用される。1〜10重量%の範囲が好ましく、2〜8重量%が特に好ましい。本発明では、非水溶性有機成分を構成するこれら脂肪アルコールも、油体の定義下には入らない。
【0025】
本発明の方法の第1工程で調製されるマイクロエマルションは、更に、アニオン性界面活性剤も含み得る。アニオン性界面活性剤の典型例は以下である:石鹸、アルキルベンゼンスルホネート、アルカンスルホネート、オレフィンスルホネート、α−メチルエステルスルホネート、スルホ脂肪酸、アルキルスルフェート、アルキルエーテルスルフェート、モノ−およびジアルキルスルホスクシネート、モノ−およびジアルキルスルホスクシナメート、スルホトリグリセリド、モノグリセリドスルフェート、アミド石鹸、エーテルカルボン酸およびその塩、脂肪酸イセチオネート、脂肪酸サルコシネート、脂肪酸タウリド、N−アシルアミノ酸、例えば、アシルラクチレート、アシルタートレート、アシルグルタメートおよびアシルアスパルテート、アルキルオリゴグルコシドスルフェートおよびタンパク質脂肪酸縮合物(特に、小麦に基づく植物性生成物)。
【0026】
本発明において好ましいものは、脂肪アルコールエーテルスルフェート、特に、一般式:RO−(CHCHO)SOX[式中、Rは6〜22個の炭素原子を含有する直鎖または分枝のアルキルおよび/またはアルケニル基であり、は1〜10の数であり、Xはアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属、アンモニウム、アルキルアンモニウム、アルカノールアンモニウムまたはグルカンモニウムである。]で示される脂肪アルコールエーテルスルフェートである。アルキルエーテルスルフェート(「エーテルスルフェート」)は、脂肪アルコールまたはオキソアルコールポリグリコールエーテルのSOまたはクロロスルホン酸(CSA)硫酸化および続く中和によって工業的に調製される既知のアニオン性界面活性剤である。典型例は以下である:ナトリウム塩および/またはマグネシウム塩としての、カプロンアルコール、カプリルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、カプリンアルコール、ラウリルアルコール、イソトリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、パルモレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、エライジルアルコール、ペトロセリニルアルコール、アラキルアルコール、ガドレイルアルコール、ベヘニルアルコール、エルシルアルコールおよびブラシジルアルコール並びにそれらの工業用混合物の、平均1〜10mol、特に2〜5molエチレンオキシド付加生成物のスルフェート。本発明では、エーテルスルフェートは、通常または狭い同族体分布のいずれを有してもよい。工業用C12/14−またはC12/18−ヤシ脂肪アルコール画分の平均2〜3molエチレンオキシド付加生成物に基づくエーテルスルフェートを、それらのナトリウム塩および/またはマグネシウム塩として使用することが特に好ましい。
【0027】
本発明の方法に使用されるマイクロエマルションは、更に、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤および/またはカチオン性界面活性剤も、好ましくはエマルションの総重量に基づいて合計で1〜25重量%の量で含み得る。(アルキル(オリゴ)グリコシドの他に)更なる非イオン性界面活性剤の典型例は、例えば、脂肪酸N−アルキルグルカミド、ポリオール脂肪酸エステル、糖エステル、ソルビタンエステル、ポリソルベート、アルコールエトキシレートおよびアミンオキシドである。調製物によって、アルコールエトキシレートは、脂肪アルコールエトキシレートまたはオキソアルコールエトキシレートと称され、好ましくは式:RO(CHCHO)HR[式中、Rは、6〜22個の炭素原子を含有する直鎖または分枝のアルキルおよび/またはアルケニル基であり、nは1〜50の数である。]に従う。典型例は以下である:カプロンアルコール、カプリルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、カプリンアルコール、ラウリルアルコール、イソトリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、パルモレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、エライジルアルコール、ペトロセリニルアルコール、アラキルアルコール、ガドレイルアルコール、ベヘニルアルコール、エルシルアルコールおよびブラシジルアルコール並びに例えば、脂肪および油に基づく工業用メチルエステルまたはRoelenのオキソ合成からのアルデヒドの高圧水素化において、およびモノマー画分として不飽和脂肪アルコールの二量化において得られる、それらの工業用混合物の、平均1〜50mol、好ましくは5〜40mol、特に10〜25mol付加生成物。好ましいものは、12〜18個の炭素原子を含有する工業用脂肪アルコール、例えば、ヤシアルコール、パームアルコール、パーム核アルコールまたは獣脂脂肪アルコールの、10〜40molエチレンオキシド付加生成物である。
【0028】
適当な両性界面活性剤および双性イオン性界面活性剤の例は、アルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、アミノプロピオネート、アミノグリシネート、イミダゾリニウムベタインおよびスルホベタインである。適当なアルキルベタインの例は、第二級アミンおよび特に第三級アミンのカルボキシアルキル化生成物である。典型例は、ヘキシルメチルアミン、ヘキシルジメチルアミン、オクチルジメチルアミン、デシルジメチルアミン、ドデシルメチルアミン、ドデシルジメチルアミン、ドデシルエチルメチルアミン、C12/14−ココアルキルジメチルアミン、ミリスチルジメチルアミン、セチルジメチルアミン、ステアリルジメチルアミン、ステアリルエチルメチルアミン、オレイルジメチルアミン、C16/18−獣脂−アルキルジメチルアミンおよびそれらの工業用混合物の、カルボキシメチル化生成物である。アミドアミンの更なるカルボキシアルキル化生成物も適している。典型例は、6〜22個の炭素原子を含有する脂肪酸(即ち、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルモレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、ペトロセリン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、アラキン酸、ガドレイン酸、ベヘン酸、エルカ酸)およびこれらの工業用混合物とN,N−ジメチルアミノエチルアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノエチルアミンおよびN,N−ジエチルアミノプロピルアミンとの反応生成物を、クロロ酢酸ナトリウムと縮合させたものである。C8/18−ヤシ脂肪酸−N,N−ジメチルアミノプロピルアミドとクロロ酢酸ナトリウムとの縮合生成物を使用することが好ましい。更に、イミダゾリニウムベタインも適当である。これらの物質も、例えば1〜2molの脂肪酸と多官能性アミン(例えばアミノエチルエタノールアミン(AEEA)またはジエチレントリアミン)との環化縮合によって得られる、既知の物質である。対応するカルボキシアルキル化生成物は、様々な開鎖ベタインの混合物である。典型例は、前記脂肪酸とAEEAとの縮合生成物、好ましくは、ラウリン酸または再びC12/14−ヤシ脂肪酸に基づくイミダゾリンを、続いてクロロ酢酸ナトリウムでベタイン化させたものである。
【0029】
カチオン性界面活性剤の典型例は、第四級アンモニウム化合物およびエステルクォート、特に四級化脂肪酸トリアルカノールアミンエステル塩である。
【0030】
工程1にとって特に好ましいマイクロエマルションは、以下の組成を有する:
アルキル(オリゴ)グリコシド 10〜20重量%
グリセロール脂肪酸エステル 4〜10重量%
油体 5〜30重量%
脂肪アルコールエーテルスルフェート 0〜15重量%
脂肪アルコール 0〜15重量%。
そして、100重量%までの残量は、いずれの場合にも、適切な場合は更なる任意成分で補われた水である。
【0031】
本発明の方法の第1工程で調製された前記マイクロエマルションを、独立した工程において水で希釈すると、1μm未満の平均粒度を有する本発明の微分散エマルションが自発的に生じる。本発明では、マイクロエマルションの体積に基づいて5〜20倍の体積の水を希釈に使用する。希釈工程は、15〜35℃の温度、好ましくは室温(=21℃)で実施できる。好適には、マイクロエマルション1部あたり4〜9部の水を添加する。希釈工程は、工程1におけるマイクロエマルションの調製後に直接実施できる。しかしながら、後に希釈することも可能であり、実際のところは好ましい。工程1からのマイクロエマルションは、同様に貯蔵安定である。このことは、この中間体の長期貯蔵時でさえ、第2工程において後に調製されるエマルションの安定性または組成に関して不都合が生じないことを意味する。
【0032】
最終希釈工程によって得られるエマルションは、1μm未満、好ましくは0.8μm未満の平均粒度を有する。本発明では、1μm未満の直径または寸法を有する液滴画分が、液滴全体の少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%であることが好適である。このようにして調製された微分散エマルションは、それらとしては本出願によって提供される。
【0033】
本発明に従って調製された微分散エマルションは、化粧品、例えば、ヘアシャンプー、ヘアローション、フォームバス、シャワージェル、クリーム、ジェル、ローション、アルコール性溶液および水性/アルコール性溶液、エマルション、ワックス/脂肪物質、スティック製剤、パウダーまたは軟膏の製造に使用され得る。これらの化粧組成物は、更なる助剤および添加剤として、穏やかな界面活性剤、油体、乳化剤、真珠光沢ワックス、コンシステンシー調整剤、増粘剤、過脂化剤、安定剤、ポリマー、シリコーン化合物、脂肪、ワックス、レシチン、リン脂質、生物起源活性成分、UV太陽光保護因子、酸化防止剤、消臭剤、制汗剤、フケ防止剤、フィルム形成剤、膨潤剤、防虫剤、日焼け剤、チロシン抑制剤(脱色剤)、ヒドロトロープ、可溶化剤、防腐剤、香油、染料なども含んでなることができる。従って、本出願は更に、前記水性エマルションを含んでなる化粧組成物を提供する。皮膚または毛髪を手入れするための低粘性ローションが好ましい。
【実施例】
【0034】
最初に、以下の組成を有するマイクロエマルションを、成分の混合により調製した。
【0035】
【表1】
【0036】
次いで、このマイクロエマルションを、本発明に従って水で希釈した。ここでは、3種の希釈物を分析した。結果を以下の表に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
エマルションの粒度は、Horiba LB500型測定装置を用いて測定した。得られたエマルションは貯蔵安定である。即ち、40℃での4週間にわたる貯蔵で、目に見える油の堆積は起こらなかった。