特許第5690158号(P5690158)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5690158アンモニア分解触媒およびアンモニアの分解方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5690158
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】アンモニア分解触媒およびアンモニアの分解方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/83 20060101AFI20150305BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20150305BHJP
   C01B 3/04 20060101ALI20150305BHJP
【FI】
   B01J23/83 MZAB
   B01D53/36 E
   C01B3/04 B
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-22002(P2011-22002)
(22)【出願日】2011年2月3日
(65)【公開番号】特開2012-161713(P2012-161713A)
(43)【公開日】2012年8月30日
【審査請求日】2013年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108030
【氏名又は名称】AGCセイミケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090918
【弁理士】
【氏名又は名称】泉名 謙治
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100072774
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 量三
(72)【発明者】
【氏名】見澤 絢子
(72)【発明者】
【氏名】古谷 健司
【審査官】 山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−094668(JP,A)
【文献】 特開2010−240644(JP,A)
【文献】 特開2010−110697(JP,A)
【文献】 特開平06−335618(JP,A)
【文献】 特開2010−094667(JP,A)
【文献】 特開2011−078947(JP,A)
【文献】 特開2002−079104(JP,A)
【文献】 特開2005−095786(JP,A)
【文献】 特開平05−329372(JP,A)
【文献】 特開平08−084910(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102507662(CN,A)
【文献】 J. KIRCHNEROVA et al.,Synthesis and characterization of perovskite catalysts,Solid State Ionics,1999, 123, 307-317.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00−38/74
B01D53/86,94
C01B3/00−6/34
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペロブスカイト構造を有する下記式(1)で表わされる複合酸化物、または層状ペロブスカイト構造を有する下記式(2)で表わされる複合酸化物の複合酸化物粒子の表面にナトリウム金属もしくはカリウム金属、またはナトリウム化合物もしくはカリウム化合物が存在することを特徴とするアンモニア分解触媒。
La1−xSrNiCoFe1−y−z (1)
La2−xSrNiCoFe1−y−z (2)
(ただし、式(1)においては、0≦x<1、0<y<1、0<z<1であり、y+z<1を満足し、式(2)においては、0≦x<2、0<y<1、0<z<1であり、y+z<1を満足する。)
【請求項2】
0.20≦y≦0.40、0.20≦z≦0.40である請求項に記載のアンモニア分解触媒。
【請求項3】
ナトリウム金属もしくはカリウム金属、またはナトリウム化合物もしくはカリウム化合物の含有量が5〜30重量%である、請求項1または2に記載のアンモニア分解触媒。
【請求項4】
請求項1〜請求項のいずれか1項に記載のアンモニア分解触媒の存在下でアンモニアを分解することを特徴とするアンモニア分解方法。
【請求項5】
分解温度が300〜800℃である請求項に記載のアンモニア分解方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項のいずれか1項に記載のアンモニア分解触媒を使用することを特徴とするアンモニア分解反応装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアガスを効率よく分解するための新規なアンモニア分解触媒、アンモニアの分解方法およびアンモニア分解反応装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
公害防止や環境破壊の観点から、アンモニア分解触媒は古くから研究や開発がなされ、例えば、各種排ガス中に含まれる有害なアンモニアを水と窒素に分解するアンモニア分解触媒や、また水素と窒素とに分解するアンモニア分解触媒が知られている。
一方で、エネルギーの観点から、水素/空気燃料電池は将来のクリーンなエネルギー源として有望視されている。この燃料電池の燃料として使用される水素をアンモニアから生成する試みがなされ、アンモニアから水素と窒素を高転化率で得ることが期待されている。
【0003】
従来、アンモニアを水素と窒素とに分解する方法や触媒としては、以下の技術が知られている。
(1)アルミナなどの無機質担体にニッケル、鉄、パラジウム、白金またはルテニウムを担持した触媒を使用し、加熱下でアンモニアを接触させ、水素と窒素とに分解する方法(特許文献1参照)。
(2)アルミナなどの無機質担体にニッケル−ランタン−白金族(白金、パラジウム、イリジウム、ルテニウムなど)を担持した触媒を使用し、加熱下でアンモニアを接触させ、水素と窒素とに分解する方法(特許文献2参照)。
(3)無機質担体であるMn−Cu系の複合酸化物やMn−Fe系の複合酸化物にルテニウム化合物を担持した触媒を使用し、加熱下でアンモニアを接触させ、水素と窒素とに分解する方法(特許文献3参照)。
【0004】
しかし、このような従来のアンモニア分解触媒は、無機質担体を製造し、さらに、この無機質担体に触媒作用として機能する、いわゆる活性種となる金属を別途に担持せしめたものであるために、製造方法が複雑である。また、無機質担体に活性種となる金属を均一に分散し、担持させることは難しく、触媒としての充分な機能が発揮し難いものであった。
【0005】
また、担持触媒としての白金族はアンモニアの分解に際して高活性を示すが、貴金属なので高価であり、コストの面で課題であった。また、低温での使用条件においては活性が不充分であり、高温での使用条件においては触媒のシンタリングによる性能の劣化が問題となっていた。
【0006】
一方、アンモニア含有排気ガスをアンモニア分解触媒に接触させて排気ガス中のアンモニアを窒素ガスと水とに分解して浄化する際に用いる触媒として、A ’ B O ( A ’ : C a 、S r 、A : L a 、B : M n 、F e 、C o) で表されるペロブスカイト系酸化物が提案されている。(特許文献4参照)
【0007】
また、特許文献5には、一般式La1-x Cex CoO(式中、xは0〜1である。)のランタナ/セリア/コバルト酸化物組成物をアンモニア酸化触媒(アンモニアを窒素酸化物とする酸化反応)として用いることが提案されている。
【0008】
しかし、これらの発明の組成式ABOで表されるペロブスカイト型酸化物は排気ガス中の微量アンモニアの除去を目的としたものであり、生成物への転化率が低く工業的に大量に水素を合成するような用途には適用が困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−84910号公報
【特許文献2】特開平5−329372号公報
【特許文献3】特開2002−79104号公報
【特許文献4】特開2005−95786号公報
【特許文献5】中国特許A−86108985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、高価な白金族を触媒の活性種として担体に担持せしめなくても極めて高い触媒活性を有する新規なアンモニア分解触媒および該触媒を用いたアンモニアの分解方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、La、Ni、Co、及びFeを含有する複合酸化物の表面にカリウム金属もしくはナトリウム金属またはそれらの化合物を存在させた触媒が上記目的を達成できることを見出した。さらに、ABOで表されるペロブスカイト構造またはABOで表される層状ペロブスカイト構造を有する複合酸化物のBサイトにNiとCoとFeの3元素を同時に含有する複合酸化物の表面に、カリウム金属もしくはナトリウム金属またはそれらの化合物を存在させた触媒が上記目的を達成できることを見出した。その原理はまだ明らかになっていないが、La、Ni、Co、及びFeを含有する複合酸化物の表面に存在するナトリウム金属もしくはカリウム金属、またはそれらの化合物が活性点となり転化率の高いアンモニア分解触媒を得ることができたものと考えられる。
【0012】
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものであり、以下の構成を要旨とするものである。
(1)ペロブスカイト構造を有する下記式(1)で表わされる複合酸化物、または層状ペロブスカイト構造を有する下記式(2)で表わされる複合酸化物の複合酸化物粒子の表面にナトリウム金属もしくはカリウム金属、またはナトリウム化合物もしくはカリウム化合物が存在することを特徴とするアンモニア分解触媒。
La1−xSrNiCoFe1−y−z (1)
La2−xSrNiCoFe1−y−z (2)
(ただし、式(1)においては、0≦x<1、0<y<1、0<z<1であり、y+z<1を満足し、式(2)においては、0≦x<2、0<y<1、0<z<1であり、y+z<1を満足する。)
【0013】
)0.20≦y≦0.40、0.20≦z≦0.40である(1)に記載のアンモニア分解触媒。
)ナトリウム金属もしくはカリウム金属、またはナトリウム化合物もしくはカリウム化合物の含有量が5〜30重量%である、(1)または(2)に記載のアンモニア分解触媒。
)(1)〜()のいずれか1項に記載のアンモニア分解触媒の存在下でアンモニアを分解することを特徴とするアンモニア分解方法。
)分解温度が300〜800℃である()に記載のアンモニア分解方法。
)(1)〜()のいずれか1項に記載のアンモニア分解触媒を使用することを特徴とするアンモニア分解反応装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高価な白金族を触媒の活性種として担体に担持せしめなくても極めて高い触媒活性を有する新規なアンモニア分解触媒、および同触媒を用いたアンモニアの分解方法を提供することができる。
また、本発明によれば、かかる触媒を使用することにより、熱耐久性が高く高温においてもシンタリングによる触媒性能の劣化が起こらず、アンモニアを水と窒素に効率良く分解する方法、あるいはアンモニアから燃料電池用の水素と窒素とを効率的に製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1のペロブスカイト型複合酸化物のX線回折スペクトルを示した図である。
図2】アンモニア分解反応用触媒反応管を示した図である。
図3】アンモニア分解反応装置を示した図である。
図4】実施例1のアンモニア分解触媒のアンモニア分解評価後のX線回折スペクトルを示した図である。
図5】実施例4の層状ペロブスカイト型複合酸化物のX線回折スペクトルを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明にかかるアンモニア分解触媒に適用される複合酸化物は、La、Ni、Co、及びFeを含有する複合酸化物であり、式(1)で表されるペロブスカイト構造ABOを有する複合酸化物、または式(2)で表される層状ペロブスカイト構造ABOを有する複合酸化物である
La1−xSrNiCoFe1−y−z (1)
(ただし、0≦x<1、0<y<1、0<z<1であり、y+z<1を満足する。)
La2−xSrNiCoFe1−y−z (2)
(ただし、0≦x<2、0<y<1、0<z<1であり、y+z<1を満足する。)


【0017】
このようなペロブスカイト構造または層状ペロブスカイト構造のBサイト元素としては、Niと、Coと、Feとを同時に含有するのが好ましい。Niと、Coと、Feとからなる3元素のうちいずれか1元素でも欠けるとアンモニアの窒素と水素への転化率が低下するので好ましくない。
また、上記式(1)または式(2)中の酸素Oの組成は複合酸化物が電気的中性を保つように、欠損していてもよいし、または過剰量存在していてもよい。その欠損量または過剰量をδとすると、δはペロブスカイト構造または層状ペロブスカイト構造を維持できる量であれば特に限定されないが、−0.05≦δ≦0.05であるのが好ましい。
【0018】
本発明のアンモニア分解触媒に適用される複合酸化物は前記式(1)または式(2)において、0.20≦y≦0.40、0.20≦z≦0.40であることを特徴とするものが好ましい。アンモニアの水素と窒素への転化率が高いからである。
本発明のアンモニア分解触媒に適用される複合酸化物は前記式(1)において、0≦x≦0.6であることがさらに好ましい。アンモニアの水素と窒素への転化率が高いからである。
本発明のアンモニア分解触媒に適用される複合酸化物は前記式(2)において、0.5≦x≦1.5であることがさらに好ましい。アンモニアの水素と窒素への転化率が高いからである。
【0019】
本願にかかる発明は、ペロブスカイト構造または層状ペロブスカイト構造の酸化物粒子の表面にナトリウム金属もしくはカリウム金属、またはそれらの化合物が存在することが好ましい。ナトリウム化合物またはカリウム化合物としては、取扱いが容易であるので酸化物または炭酸塩が好ましく、炭酸塩が特に好ましい。
【0020】
本発明にかかるアンモニア分解触媒は、ペロブスカイト構造または層状ペロブスカイト構造の酸化物粒子の表面にナトリウム金属もしくはカリウム金属、またはそれらの化合物を存在させることにより製造するのが好ましい。
【0021】
次に、本発明にかかるLa、Ni、Co、及びFeを含有する複合酸化物の製造方法と該複合酸化物を用いたアンモニア分解触媒の製造方法について説明する。
【0022】
本発明にかかるLa、Ni、Co、及びFeを含有する複合酸化物は、固相法、湿式法などの既知方法で製造できる。特に、構成元素の均質性の観点から湿式法である有機酸塩法で製造するのが好ましい。有機酸塩法は、複合酸化物を構成する各金属元素A、Bの炭酸塩、塩基性炭酸塩、有機酸塩、水酸化物、水酸化物の共沈体もしくはそれらの混合物を有機酸と水または有機溶媒中で反応させて複合有機酸塩を中間体として経由し、続いてその複合有機酸塩を乾燥し、その乾燥粉を仮焼成し、本焼成する方法である。
【0023】
上記有機酸としては、クエン酸、ギ酸、または酢酸が好ましく、なかでもクエン酸がその金属塩の水への溶解度を高くできるのでより好ましい。
複合有機酸塩を生成させるのに使用する有機酸の量は、特に限定されないが、より均質な複合有機酸塩を生成させるためには、有機酸中に存在するカルボキシル基の数と有機酸のモル数の積である有機酸の当量数が、複合酸化物の構成元素AまたはBの価数と構成元素AとBのモル数との積の和である構成元素の当量数よりも多いことが好ましい。構成元素AとBのイオンが有機酸中のカルボキシル基と配位し錯体を形成するためである。
【0024】
次に、上記の複合有機酸塩を仮焼成する。仮焼成の焼成温度は400〜700℃が好ましく、500〜600℃が特に好ましい。仮焼成の焼成温度が、400℃以上であると有機酸の炭素成分が残留しにくいので好ましい。また、700℃以下であると構成元素が偏析しにくいので好ましい。
仮焼成の焼成時間は4〜24時間が好ましく、6〜12時間が特に好ましい。仮焼成の焼成時間が、4時間以上であると有機酸の炭素成分が残留しにくいので好ましい。また、24時間以下であると構成元素が偏析しにくいので好ましい。また、仮焼成の焼成雰囲気は酸素含有雰囲気が好ましく、大気中が特に好ましい。焼成雰囲気中に酸素が存在しないと、生成物中に目的とするペロブスカイト相または層状ペロブスカイト相以外の不純物相が存在し、触媒活性を低下させる虞があるので、酸素含有雰囲気が好ましい。仮焼成によって得られた仮焼成粉は、必要に応じてカッターミル、ジェットミル、アトマイザーなどの解砕・粉砕機を用い、一般には乾式で解砕する。
【0025】
次いで、上記の解砕粉を本焼成する。本焼成の焼成温度は、800〜1400℃が好ましく、900〜1100℃が特に好ましい。800℃以上であると、ペロブスカイト相または層状ペロブスカイト相以外の不純物相が生成しにくいので好ましい。また、1400℃以下であると、目的とするペロブスカイト相または層状ペロブスカイト相が分解する可能性が低下するので好ましい。
本焼成の焼成時間は、4〜24時間が好ましく、6〜12時間が特に好ましい。4時間以上であると、生成物中に未反応物質が残留しにくいので好ましく、24時間以下であると生産性が向上するので好ましい。また、本焼成の焼成雰囲気は酸素含有雰囲気が好ましく、大気中が特に好ましい。焼成雰囲気中に酸素が存在しないと、生成物中に目的とするペロブスカイト相または層状ペロブスカイト相以外の不純物相が存在し、触媒活性を低下させる虞があるので、酸素含有雰囲気とする。
【0026】
なお、仮焼成と本焼成は別の工程として記載したが、仮焼成の後、室温まで降温せずに続けて本焼成を行なってもよい。また、1回の焼成で徐々に温度を上げながら焼成してもよいし、何回かに分けて、徐々に温度を上げながら焼成してもよい。
本焼成によって得られた本焼成粉が焼結している場合は、解砕する。解砕後、得られた複合酸化物をボールミル、ジェットミルなどで粉砕して、粒度および比表面積を制御してもよい。
【0027】
次に、上記の方法で製造したLa、Ni、Co、及びFeを含有する複合酸化物粒子の表面にナトリウム金属もしくはカリウム金属、またはナトリウム化合物もしくはカリウム化合物を担持させる。担持させる方法は特に限定されないが、複合酸化物粒子の表面に均質に担持させるという観点から含浸法が好ましい。
【0028】
含浸法とは、上記の製造方法により製造されたLa、Ni、Co、及びFeを含有する複合酸化物の粉末をナトリウム化合物原料もしくはカリウム化合物原料が溶解した溶液、またはナトリウム化合物原料もしくはカリウム化合物原料が分散した分散液に浸漬し、濾過した後に乾燥するか、または濾過をしないで蒸発乾固し、熱処理する方法である。上記の溶液の溶媒、または分散液の分散媒としては、環境に対する負荷が軽く、また使用済み溶媒、または使用済み分散媒の後処理が容易なことから水が好ましい。また、ナトリウム化合物原料もしくはカリウム化合物原料が溶解した溶液を用いるのが好ましい。
ナトリウム化合物原料またはカリウム化合物原料としては、ナトリウムまたはカリウムの炭酸塩、シュウ酸塩、酸化物、水酸化物などが挙げられる。
【0029】
熱処理温度は、400℃から1000℃の範囲が好ましい。400℃以上であると複合酸化物粒子表面とナトリウム化合物またはカリウム化合物の密着性が向上し、触媒能が向上するので好ましく、1000℃以下であると活性点であるナトリウム化合物やカリウム化合物が凝集し、複合酸化物の表面に均質に分散しないため触媒能が低下する可能性が低くなるので好ましい。熱処理時間は5〜24時間が好ましい。また、熱処理の雰囲気は 大気中が好ましい。
【0030】
なお、上記の含浸工程で、La、Ni、Co、及びFeを含有する複合酸化物粒子の表面に付着したナトリウム化合物またはカリウム化合物の一部が、引続き行われる熱処理により、ナトリウムイオンまたはカリウムイオンとしてLa、Ni、Co、及びFeを含有する酸化物の結晶格子中に拡散し、結晶構造中取り込まれていてもよい。
【0031】
La、Ni、Co、及びFeを含有する複合酸化物粒子の表面に担持されるナトリウム金属もしくはカリウム金属、またはナトリウム化合物もしくはカリウム化合物のアンモニア分解触媒中の含有量は5〜30重量%が好ましい。5重量%以上であると触媒能をより発揮でき、30重量%以下であるとナトリウム金属もしくはカリウム金属、またはナトリウム化合物もしくはカリウム化合物が凝集せずに、複合酸化物粒子の表面に均質に分散し触媒能が増加するため好ましい。
【0032】
本発明にかかるアンモニア分解触媒のBET比表面積は0.8〜100.0m/gであるのが好ましい。BET比表面積が0.8〜100.0m/gであるとアンモニアと触媒粒子とが十分に接触し、触媒能が向上するので好ましい。また、平均粒子径(D50)は0.5〜15μmが好ましく、0.8〜10μmがより好ましい。平均粒子径は、例えばレーザー散乱式粒度分布計で測定することができる。
【0033】
本発明の上記複合酸化物およびナトリウム金属もしくはカリウム金属、またはナトリウム化合物もしくはカリウム化合物を含むアンモニア分解触媒は、高活性であるので、既知のアルミナ、シリカ、ムライト等の無機担体を用いなくても使用できるが、必要に応じて無機担体に担持してもよい。無機担体への本発明に係るアンモニア分解触媒の担持方法は、特に限定されず、既知の担持方法を使用することができる。無機担体に本発明にかかるアンモニア分解触媒を担持する場合は、担持触媒中の本発明にかかるアンモニア分解触媒の担持量は10重量%以上が好ましい。10重量%以上であると単位重量当たりの触媒量が十分であるため、触媒能が向上するので好ましい。
【0034】
本発明にかかるアンモニア分解触媒を用いたアンモニアの分解反応は、アンモニア分解装置中に、上記のナトリウム金属もしくはカリウム金属、またはナトリウム化合物もしくはカリウム化合物を複合酸化物の表面に存在させたアンモニア分解触媒を、粒状、造粒状、ペレット状、円柱状などの種々の形状で設置するか、担体や基体に塗布するなどの状態にして設置し、アンモニア分解触媒とアンモニアガスを接触させることにより行なう。
【0035】
アンモニア分解反応の分解温度は、300〜800℃であるのが好ましく、400〜600℃がより好ましい。分解温度が300℃以上の場合には、反応速度が速くなり十分な活性が得られるので好ましく、800℃以下の場合には熱平衡がアンモニア生成側に偏ってしまうことがないため水素の生成量が向上するので好ましい。また、本発明のアンモニア分解触媒は、高い活性を有するので、上記のように比較的低温においてもNOなどの窒素酸化物の副生を抑制できるので好ましい。
【0036】
アンモニア分解を行なう際のアンモニアの体積空間速度は1000h−1から15000h−1であるのが好ましく、3000h−1から12000h−1であるのがより好ましい。1000h−1以上であると転化率は向上し、アンモニアの体積空間速度が十分であるために単位時間当たりの分解量が向上するので好ましく、15000h−1以下であるとアンモニアの流速が速すぎて、未分解のアンモニアが分解生成物中に含まれてしまう可能性が低下するので好ましい。反応は平衡上減圧雰囲気が好ましいが、装置が高価となるため、圧力は常圧でもよい。
【0037】
アンモニア分解反応の反応装置の形式は特に制限されない。バッチ式、連続式のいずれの装置も使用し得るが、連続式の方が効率が良く、生産性が向上するので好ましい。また、固定床方式、または流動床方式のいずれも採用できるが、固定床方式が好ましい。
【実施例】
【0038】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されるべきではない。
【0039】
実施例1
La:Ni:Co:Feが原子比で1.0:1/3:1/3:1/3となるように、即ち酸化ランタン(Laとして84.99wt%)270.97gと炭酸ニッケル(Niとして46.81wt%)68.60gと塩基性炭酸コバルト(Coとして59.03wt%)54.62gとクエン酸鉄水溶液(Feとして8.20wt%)372.60gを秤量し、純水1L(リットル)に分散させた。その溶液に全金属イオンが錯体を形成するのに必要なクエン酸量より50%多いクエン酸(982g)を加え65℃で反応させた。反応終了後、得られた溶液を90℃で乾燥し、複合クエン酸塩を得た。得られた複合クエン酸塩を大気中で、600℃、6時間仮焼した後に、電気炉内でそのまま徐冷した。続いてサンプルミルで解砕して大気中、900℃で6時間焼成した。その結果、400gの複合酸化物を得た。
【0040】
この複合酸化物をCu−Kα線を用いたX線回折測定(XRD)により構造解析し、図1に示すように立方晶系ペロブスカイト構造のLaCo0.40Fe0.60と菱面体晶系ペロブスカイト構造のLaNi0.60Co0.40と菱面体晶系ペロブスカイト構造のLaCoOに帰属できる回折ピークを確認した。X線回折測定の結果と原料の仕込み組成から、この複合酸化物はBサイトにNiとCoとFeが存在するペロブスカイト構造のLaNi1/3Co1/3Fe1/3であることが判った。
【0041】
次に、炭酸カリウム1.33gをイオン交換水40gに溶解させた溶液を作成した。この溶液に上記の複合酸化物であるLaNi1/3Co1/3Fe1/3を5.0g加え、マグネットスターラーで攪拌しながら約15時間浸漬した。
炭酸カリウム水溶液と複合酸化物からなるスラリーを、90℃で6時間蒸発乾固した後に、アルミナ製の匣鉢に移し、大気中、600℃で6時間熱処理しアンモニア分解触媒を得た。
【0042】
その後、アンモニア分解触媒をボールミルで40時間粉砕した後、粒度およびBET比表面積を測定した。粒度分布測定にはHORIBA社製のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(LASER SCATTERING PARTICLE SIZE DISTRIBUTION ANALTZER)LA−920を用い、BET比表面積測定にはMOUNTECH社製の全自動比表面積計(AutoSurface Area Analyzer)Macsorb model−1208を用いた。その結果、平均粒径D50は0.97μmであり、比表面積は2.0m/gであった。
【0043】
石英ガラス製のアンモニア分解反応筒(1)(図2参照、内径4mm、長さ180mm)にシリカウール(2)を詰め、その上に上記の粉砕したアンモニア分解触媒の粉末(3)0.1gを充填し、更にそれをシリカウール(4)ではさんだ。そのアンモニア分解反応筒(1)を試験管(5)につないで電気炉(6)に入れ、600℃に設定した。(図3参照)
【0044】
アンモニア分解反応筒(1)に97%Ar+3%Hガスを約1時間流し、還元処理を行なった後に、NHガスとArガスとをマスフローコントローラーを用いて流量を調整し、アンモニア分解反応筒へ供給した。空間速度は4632h−1とした。
【0045】
アンモニア分解能力の測定方法は、触媒が充填されている反応筒の後に吸収びん(7)を設置し、未反応のアンモニアガスを吸収させた後、アンモニア以外のガス出口流量を測定することで、窒素および水素への転化率を下記式を用いて算出した。その結果、アンモニアの転化率は93%であった。
なお、出口ではGC/MS(AMETEK社のProLine Mass Spectrometer)により、窒素と水素が生成し、それ以外の成分は副生していなことを確認した。
【0046】
【数1】
アンモニア分解評価後のアンモニア分解触媒をアンモニア分解反応筒(1)から取り出し、X線回折測定を行なった。その結果を図4に示す。図4より、アンモニア分解処理後も、母材である複合酸化物は、ペロブスカイト構造を保持していることが確認できた。
【0047】
実施例2
実施例1と同様にしてLaNi1/3Co1/3Fe1/3を得た。次に炭酸ナトリウム0.75gをイオン交換水40gに溶解させ、この溶液に上記のLaNi1/3Co1/3Fe1/3を5.0g加え、マグネットスターラーで撹拌しながら約15時間浸漬した。
炭酸ナトリウム水溶液と複合酸化物からなるスラリーを、90℃で6時間蒸発乾固した後に、アルミナ製の匣鉢に移し、大気中、600℃で6時間熱処理した。
熱処理したアンモニア分解触媒を実施例1と同様にしてボールミルで粉砕し、粒度およびBET比表面積を測定した。その結果、平均粒度D50は1.19μm、比表面積は1.96m/gであった。以下、実施例1と同様にしてアンモニア分解評価を行なった。なお、反応温度は600℃、空間速度は5311h−1とした。その結果、アンモニアの転化率は97%であった。
【0048】
実施例3
La:Ni:Co:Feが原子比で1.0:0.20:0.40:0.40となるように、即ち酸化ランタン201.82gと炭酸ニッケル30.97gと塩基性炭酸コバルト49.31gとクエン酸鉄水溶液336.38gを秤量した以外は実施例1と同様にして複合酸化物300gを得た。
【0049】
その後、実施例1と同様にX線回折スペクトルを測定した。X線回折スペクトルから、この複合酸化物は斜方晶系ペロブスカイト構造のLaCo0.40Fe0.60と菱面体晶系ペロブスカイト構造のLaNi0.60Co0.40に帰属できた。X線回折測定の結果と原料の仕込み組成から、この複合酸化物はBサイトにNiとCoとFeが存在するペロブスカイト構造のLaNi0.20Co0.40Fe0.40であることが判った。
【0050】
次に、炭酸カリウム1.33gをイオン交換水40gに溶解させた。この溶液に上記のLaNi0.20Co0.40Fe0.40を5.0g加え、マグネットスターラーで撹拌しながら約15時間浸漬した。
炭酸カリウム水溶液と複合酸化物からなるスラリーを、90℃で6時間蒸発乾固した後に、アルミナ製の匣鉢に移し、大気中、600℃で6時間熱処理した。
熱処理したアンモニア分解触媒を実施例1と同様にしてボールミルで粉砕した後、粒度および比表面積を測定した。その結果、平均粒径D50は1.35μmであり比表面積は1.1m/gであった。以下、実施例1と同様にしてアンモニア分解評価を行なった。なお、反応温度は600℃、空間速度は4800h−1とした。その結果、アンモニアの転化率は100%であった。
【0051】
実施例4
La:Sr:Ni:Co:Feが原子比で1.0:1.0:1/3:1/3:1/3となるように、即ち酸化ランタン142.17gと炭酸ストロンチウム(Srとして59.76wt%)127.53gと炭酸ニッケル35.99gと塩基性炭酸コバルト28.66gとクエン酸鉄水溶液195.49gを秤量した以外は実施例1と同様にして、複合酸化物300gを得た。
【0052】
その後、実施例1と同様にX線回折スペクトルを測定した。X線回折スペクトルから、この複合酸化物は、図5に示すように、正方晶系層状ペロブスカイト構造のLaSrCo0.50Fe0.50と正方晶系層状ペロブスカイト構造のLaNiOに帰属できた。X線回折測定の結果と原料の仕込み組成から、この複合酸化物はBサイトにNiとCoとFeが存在する層状ペロブスカイト構造のLaSrNi1/3Co1/3Mn1/3であることが判った。
【0053】
次に、炭酸カリウム1.33gをイオン交換水40gに溶解させた。この溶液に上記のLaSrNi1/3Co1/3Fe1/3を5.0g加え、マグネットスターラーで撹拌しながら約15時間浸漬した。
炭酸カリウム水溶液と複合酸化物からなるスラリーを、90℃で6時間蒸発乾固した後に、アルミナ製の匣鉢に移し、大気中、600℃で6時間熱処理した。
熱処理したアンモニア分解触媒を実施例1と同様にしてボールミルで粉砕した後、粒度および比表面積測定した。その結果、平均粒径D50は8.01μmであり比表面積は3.97m/gであった。以下、実施例1と同様にしてアンモニア分解評価を行なった。なお、反応温度は600℃、空間速度は3600h−1とした。その結果、アンモニアの転化率は97%であった。
【0054】
実施例5
実施例4と同様にしてLaSrNi1/3Co1/3Fe1/3を得た。次に、炭酸ナトリウム0.75gをイオン交換水40gに溶解させた溶液を作成した。この溶液に上記のLaSrNi1/3Co1/3Fe1/35.0gを加え、マグネットスターラーで攪拌しながら約15時間浸漬した。
炭酸ナトリウム水溶液と複合酸化物からなるスラリーを、90℃で6時間蒸発乾固した後に、アルミナ製の匣鉢に移し、大気中、600℃で6時間熱処理した。
熱処理したアンモニア分解触媒を実施例1と同様にしてボールミルで粉砕した後、粒度およびBET比表面積を測定した。その結果、平均粒径D50は5.29μm、比表面積は1.1m/gであった。以下、実施例1と同様にしてアンモニア分解評価を行なった。なお、反応温度は600℃、空間速度は4800h−1とした。その結果、アンモニアの転化率は100%であった。
【0055】
比較例1
炭酸カリウムを600℃で6時間熱処理した後に、ボールミルで40時間粉砕した。この粉砕粉について、実施例1と同様にしてBET比表面積を測定した。その結果、比表面積は0.22m/gであった。また、この粉砕粉について、実施例1と同様にしてアンモニア分解評価を行なった。なお、反応温度は600℃、空間速度は4800h−1とした。その結果、アンモニアの転化率は1%であった。
【0056】
比較例2
実施例1と同様にしてLaNi1/3Co1/3Fe1/3を得た。
この複合酸化物を40時間ボールミルで粉砕し、粒度およびBET比表面積を測定した。その結果、平均粒度D50は0.89μm、比表面積は3.8m/gであった。以下、実施例1と同様にしてアンモニア分解評価を行なった。なお、反応温度は600℃、空間速度は3533h−1とした。その結果、アンモニアの転化率は42%であった。
【0057】
比較例3
実施例4と同様にしてLaSrNi1/3Co1/3Fe1/3を得た。
この複合酸化物を40時間ボールミルで粉砕し、粒度およびBET比表面積を測定した。その結果、平均粒度D50は6.1μm、比表面積は0.96m/gであった。以下、実施例1と同様にしてアンモニア分解評価を行なった。なお、反応温度は600℃、空間速度は6316h−1とした。その結果、アンモニアの転化率は32%であった。
【0058】
比較例4
La:Co:Feが原子比で1.0:0.50:0.50となるように、即ち酸化ランタン200.71gと塩基性炭酸コバルト61.30gとクエン酸鉄水溶液418.17gを秤量した以外は実施例1と同様にして複合酸化物300gを得た。
【0059】
その後、実施例1と同様にX線回折スペクトルを測定した。X線回折スペクトルから、この複合酸化物は立方晶系ペロブスカイト構造のLaCo0.40Fe0.60と菱面体晶系ペロブスカイト構造のLaCoOに帰属できた。X線回折測定の結果と原料の仕込み組成から、この複合酸化物はBサイトにCoとFeが存在するペロブスカイト構造のLaCo0.50Fe0.50であることが判った。
【0060】
次に、炭酸カリウム1.33gをイオン交換水40gに溶解させた。この溶液に上記のLaCo0.50Fe0.50を5.0g加え、マグネットスターラーで撹拌しながら約15時間浸漬した。
炭酸カリウム水溶液と複合酸化物からなるスラリーを、90℃で6時間蒸発乾固した後に、アルミナ製の匣鉢に移し、大気中、600℃で6時間熱処理した。
熱処理したアンモニア分解触媒を実施例1と同様にしてボールミルで粉砕した後、この複合酸化物の平均粒径D50および比表面積を測定した。その結果、平均粒径D50は3.22μm、比表面積は0.90m/gであった。以下、実施例1と同様にしてアンモニア分解評価を行なった。なお、反応温度は600℃、空間速度は5167h−1とした。その結果、アンモニアの転化率は65%であった。
【0061】
比較例5
実施例1と同様にしてLaNi1/3Co1/3Fe1/3を得た。次に炭酸マグネシウム7.9gをイオン交換40gに溶解させ、この溶液に上記のLaNi1/3Co1/3Fe1/3を5.0g加え、マグネットスターラーで撹拌しながら約15時間浸漬した。
炭酸マグネシウム水溶液と複合酸化物からなるスラリーを、90℃で6時間蒸発乾固した後に、アルミナ製の匣鉢に移し、大気中、600℃で6時間熱処理した。
熱処理したアンモニア分解触媒を実施例1と同様にしてボールミルで粉砕し、粒度およびBET比表面積を測定した。その結果、平均粒度D50は1.21μm、比表面積は4.08m/gであった。以下、実施例1と同様にしてアンモニア分解評価を行なった。なお、反応温度は600℃、空間速度は4200h−1とした。その結果、アンモニアの転化率は69%であった。
【0062】
比較例6
実施例1と同様にしてLaNi1/3Co1/3Fe1/3を得た。次に炭酸カルシウム3.30gをイオン交換40gに溶解させ、この溶液に上記のLaNi1/3Co1/3Fe1/3を5.0g加え、マグネットスターラーで撹拌しながら約15時間浸漬した。
炭酸カルシウム水溶液と複合酸化物からなるスラリーを、90℃で6時間蒸発乾固した後に、アルミナ製の匣鉢に移し、大気中、600℃で6時間熱処理した。
熱処理したアンモニア分解触媒を実施例1と同様にしてボールミルで粉砕し、粒度およびBET比表面積を測定した。その結果、平均粒度D50は1.23μm、比表面積は7.07m/gであった。以下、実施例1と同様にしてアンモニア分解評価を行なった。なお、反応温度は600℃、空間速度は5517h−1とした。その結果、アンモニアの転化率は53%であった。
【0063】
以上の結果より、BサイトにNiとCoとFeの3元素を有するペロブスカイト構造または層状ペロブスカイト構造の複合酸化物にカリウムなどのアルカリ金属またはその化合物を担持させたアンモニア分解触媒は、それらを担持しないアンモニア分解触媒よりもアンモニア分解性能が飛躍的に向上する触媒を提供することができる。
一方、カリウム化合物のみのアンモニア分解触媒や、ペロブスカイト構造または層状ペロブスカイト構造の複合酸化物のみのアンモニア分解触媒は、高い触媒能は得られなかった。
【0064】
また、BサイトにNi,Co,Feの3元素が含まれている複合酸化物にマグネシウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属またはその化合物を担持させてもアンモニア分解性能の向上は図れなかった。
よって、本発明にかかるアンモニア分解触媒は、カリウム金属もしくはナトリウム金属、またはカリウム化合物もしくはナトリウム化合物とLaとNiとCoとFeの4元素を有する複合酸化物との相互作用により高い触媒能が発現する。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のアンモニア分解触媒は、有害なアンモニアを水素と窒素に効率良く分解する場合や、アンモニアから燃料電池用の水素と窒素とを効率的に製造する場合などのアンモニアの分解に広く利用できる。
【符号の説明】
【0066】
1・・・アンモニア分解反応筒
2・・・シリカウール
3・・・複合酸化物粉末
4・・・シリカウール
5・・・試験管
6・・・電気炉
7・・・吸収びん
図1
図2
図3
図4
図5