(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記小ピッチ部が前記ロッドのロック解除用押し込み量を残して圧縮された状態で、前記ロック手段が前記ロッドを前記ケースの後退位置にロックする請求項2または請求項3に記載の押上装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、フューエルリッドを閉める際に、フューエルリッドが押上装置に当接すると、スプリングの反力によって、フューエルリッドが押し戻され、フューエルリッドがばたつく場合がある。このため、フューエルリッドを閉める際のフューエルリッドのばたつきを抑制し操作性を向上することが求められている。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、フューエルリッドを閉める際のフューエルリッドのばたつきを抑制し操作性を向上できる押上装置を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明の押上装置は、フューエルリッドに対向する車体側に固定される筒形のケースと、前記ケース内にスライド可能に保持され、前記ケース内から突出して前記フューエルリッドを押し出すロッドと、前記ケースと前記ロッドとの間に位置し、前記ケース内で弾性変形により圧縮されて前記ロッドを前記ケース内から突出する方向へ付勢する付勢手段と、前記ケースと前記ロッドとの間に位置し、前記付勢手段の付勢力に抗して前記ロッドを押し込むことで、前記ロッドを前記ケースの後退位置にロックするためのロック手段と、を有し、前記付勢手段は、前記ロッドを前記ケース内へ押し込む初期のストロークに対する付勢力の増加率が、前記初期のストロークに続く後期のストロークに対する付勢力の増加率に比べて小さい。
【0007】
請求項1に記載の本発明の押上装置では、フューエルリッドに対向する車体側に固定される筒形のケースと、ケース内にスライド可能に保持されケース内から突出してフューエルリッドを押し出すロッドとの間に位置する付勢手段が、ケース内で弾性変形により圧縮されてロッドをケース内から突出する方向へ付勢する。また、付勢手段は、ロッドをケース内へ押し込む初期のストロークに対する付勢力の増加率が、初期のストロークに続く後期のストロークに対する付勢力の増加率に比べて小さくなっている。このため、フューエルリッドを閉める時、フューエルリッドが押上装置に当接した際に、フューエルリッドを押し戻す押上装置の付勢手段の反力が、初期において小さく、その後、大きくなる。この結果、フューエルリッドを閉める際に、押上装置の付勢手段の反力によって、フューエルリッドが押し戻されることで生じるフューエルリッドのばたつきが抑制され、操作性が向上する。
【0008】
請求項2記載の本発明は請求項1に記載の押上装置において、前記付勢手段は、ピッチが異なる大ピッチ部と小ピッチ部とを有するコイルスプリングである。
【0009】
請求項2に記載の本発明の押上装置では、付勢手段が、ピッチが異なる大ピッチ部と小ピッチ部とを有するコイルスプリングであるため、付勢手段に1本のコイルスプリングを使用することができ構成が簡単になる。
【0010】
請求項3記載の本発明は請求項2に記載の押上装置において、前記小ピッチ部は、前記コイルスプリングの長手方向両端部に形成されている。
【0011】
請求項3記載の本発明の押上装置では、コイルスプリングの長手方向両端部に形成されている小ピッチ部がケースとロッドとに当接する。このため、コイルスプリングが圧縮された際に、コイルスプリングの長手方向両端部が長手方向に対して湾曲し難い。この結果、コイルスプリング全体の圧縮変形が安定する。
【0012】
請求項4記載の本発明は請求項2または請求項3に記載の押上装置において、前記小ピッチ部が前記ロッドのロック解除用押し込み量を残して圧縮された状態で、前記ロック手段が前記ロッドを前記ケースの後退位置にロックする。
【0013】
請求項4記載の本発明の押上装置では、小ピッチ部がロッドのロック解除用押し込み量を残して圧縮された状態で、ロック手段がロッドをケースの後退位置にロックする。このため、ロッドをケースの後退位置にロックするロック状態でのコイルスプリングの付勢力が大きくなり、ロック状態でのロッド及びフューエルリッドのばたつきを抑制できる。
【0014】
請求項5記載の本発明は請求項1または請求項2に記載の押上装置において、前記ロック手段は、前記ロッドの押し込みによりカムが作動しロックとロック解除が切り替わるカム式ロック機構である。
【0015】
請求項5記載の本発明の押上装置では、ロック手段がカム式ロック機構であり、ロッドの押し込みにより、カムが作動しロックとロック解除が切り替わる。このため、ロックとロック解除との切り替わりが確実である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の本発明の押上装置は、上記構成としたので、フューエルリッドを閉める際のフューエルリッドのばたつきを抑制し操作性を向上できる。
【0017】
請求項2に記載の本発明の押上装置は、上記構成としたので、簡単な構成でフューエルリッドを閉める際のフューエルリッドのばたつきを抑制し操作性を向上できる。
【0018】
請求項3に記載の本発明の押上装置は、上記構成としたので、コイルスプリングの圧縮変形が安定する。
【0019】
請求項4に記載の本発明の押上装置は、上記構成としたので、ロック状態でのロッド及びフューエルリッドのばたつきを抑制できる。
【0020】
請求項5に記載の本発明の押上装置は、上記構成としたので、ロックとロック解除との切り替わりを確実にできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る押上装置を示す断面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る押上装置のコイルスプリングを示す側面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る押上装置のコイルスプリングにおけるストロークと荷重との関係を示すグラフである。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る押上装置の車体への取付状態を示す断面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る押上装置の車体への取付状態を示す分解斜視図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る押上装置のロッドと回転子との組付状態を示す斜視図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る押上装置のロッド、回転子及びスリーブの組付状態を示すスリーブを断面とした斜視図である。
【
図8】(A)、(B)は本発明の第1実施形態に係る押上装置のロック手段の動作を説明するための説明図である。
【
図9】(A)、(B)はロッドを押し込んだ状態を示す
図8に対応する説明図である。
【
図10】(A)、(B)はロック手段のロック状態を示す
図8に対応する説明図である。
【
図11】本発明の第1実施形態に係る押上装置のケースを示す側面図である。
【
図12】本発明の第1実施形態に係る押上装置のケースを示す側断面図である。
【
図13】本発明の第1実施形態に係る押上装置のキャップを示す側面図である。
【
図14】本発明の第1実施形態に係る押上装置のキャップを示す他の方向から見たる側面図である。
【
図15】本発明の第1実施形態に係る押上装置のキャップを示す平面図である。
【
図17】本発明の第1実施形態に係る押上装置のロッドを示す側面図である。
【
図18】本発明の第1実施形態に係る押上装置のロッドを示す底面図である。
【
図19】本発明の第1実施形態に係る押上装置の回転子を示す側面図である。
【
図20】本発明の第1実施形態に係る押上装置の回転子を示す平面図である。
【
図21】本発明の第1実施形態に係る押上装置の回転子を示す断面図である。
【
図22】本発明の第1実施形態に係る押上装置のスリーブを示す側面図である。
【
図23】本発明の第1実施形態に係る押上装置のスリーブを示す断断面図である。
【
図24】本発明の第2実施形態に係る押上装置を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
次に、本発明の押上装置の第1実施形態を
図1〜
図23に従って説明する。
図4に示すように、本実施形態の押上装置10は、フューエルリッド12に対向する車体としての、例えば、インナーパネル14に設けられており、インナーパネル14に開閉可能に取り付けられたフューエルリッド12が、押上装置10によって、開方向(
図4の矢印A方向)へ押し出されるようになっている。
【0023】
図1に示すように、押上装置10は、ケース16、キャップ18、ロッド20、回転子22、スリーブ24、付勢手段としてのコイルスプリング26、ブーツ28及び後述するロック手段を備えている。なお、押上装置10のパーツは、上記したパーツに限定されない。
【0024】
(ケース)
図5に示すように、ケース16は筒形に形成されている。また、インナーパネル14には、表裏面に貫通する方形の取付孔32が形成されており、この取付孔32にケース16が固定されている。
【0025】
図11及び
図12に示すように、ケース16は、上面が開口した円筒形に形成されており、底面が形成されている。また、ケース16の外径は、インナーパネル14の取付孔32の内径以下に設定されている。ケース16の開口側端部には、半径方向の外向きに張り出すフランジ部34が形成されており、フランジ部34の上側には、ブーツ28を取り付ける環状の取付凹部36が形成されている。また、フランジ部34の下側には、ケース16の外周から放射状に複数個の、例えば2個の弾性変形可能に突出する弾性爪38が形成されており、これらの弾性爪38は、インナーパネル14の板厚の間隔を保ってフランジ部34の下面から離れている。
【0026】
図4に示すように、ケース16を取付孔32に合わせてはめ込むと、弾性爪38が一旦引っ込み、その後、インナーパネル14の裏面側で弾性的に復帰し、フランジ部34の下面との間でインナーパネル14を挟持することで、取付孔32にケース16が固定されるようになっている。
【0027】
(キャップ)
図1に示すように、キャップ18は、ケース16の開口上面に取り付けられている。
【0028】
図13及び
図14に示すように、キャップ18は、ケース16の開口上面より一回り大きい蓋部40と、蓋部40の下面から一段細くなって円筒形に延びる円筒部42とを備えている。
【0029】
図15及び
図16に示すように、キャップ18の蓋部40には、上下に貫通した円形の貫通孔44が形成されており、貫通孔44には、ロッド20が挿通されるようになっている。
【0030】
図1に示すように、キャップ18の円筒部42は、外周がケースA16の内径以下に設定されており、ケースA16内に挿入されている。
【0031】
図13〜
図16に示すように、キャップ18の円筒部42の外周における蓋部40に隣接する部位には、放射状に複数個の、例えば2個の弾性変形可能に突出する係止爪46が形成されている。
【0032】
図11及び
図12に示すように、ケース16の取付凹部36の近傍には、内外に貫通する係止孔48が形成されており、ケース16の係止孔48にキャップ18の係止爪46がはまり込むようになっている。
【0033】
従って、キャップ18の円筒部42をケース16の開口上面に合わせてはめ込むと、係止爪46が一旦、引っ込み、その後、係止孔48に弾性的にはまり込むことで、ケース16にキャップ18が固定されるようになっている。
【0034】
図16に示すように、キャップ18の円筒部42の内周面には、凹設されたスライド溝50が形成されている。スライド溝50は、ロッド20をスライド可能で、且つ回転不能に保持するようになっている。なお、スライド溝50は、複数個、例えば3個形成されており、上端部が行き止まり、下端部が開放している。スライド溝50の下側には、円筒部42の内周面に凹設されたロック溝52が形成されており、ロック溝52が回転子22を回転不能にロックするようになっている。また、ロック溝52は、隣接したスライド溝50の間隔内に形成され、円筒部42の内周面の周方向に沿って鋸歯状に形成されている。
【0035】
図8〜
図10に示すように、ロック溝52は、1個のスライド溝50を基準として、当該スライド溝50から回転子22の回転方向(
図8〜
図10中、矢印B方向)の前方に向かい、上方に向かって上り傾斜した第1斜面部52Aと、第1斜面部52Aの傾斜上端部、すなわち回転子22の回転方向の前方に位置し、後述する回転子22の係合突起56がはまり込むロック部52Bと、ロック部52Bから下方に向かって切り立った垂直部52Cと、垂直部52Cの下端部から上方に向かって上り傾斜し、傾斜上端部が回転子22の回転方向の前方に位置する他の1個のスライド溝50に臨む第2斜面部52Dとを備えている。
【0036】
また、第1斜面部54の傾斜下端部、すなわち回転子22の回転方向の後方は、1個のスライド溝50に臨んでいる。なお、第1斜面部52Aと第2斜面部52Dとの傾斜角度は、一致している。
【0037】
(ロッド)
図1に示すように、ロッド20は、ケース16内にスライド可能に保持され、ケース16内から突出してフューエルリッド12を押し出すようになっている。
【0038】
図17及び
図18に示すように、ロッド20は、円柱形に形成され、軸方向の中間部に位置し、半径方向に外向きに突出するカム部64と、カム部64の上側に位置し、ケース16内から突出してフューエルリッド12を押し出す上側ロッド部66と、カム部64の下側に位置し、コイルスプリング26が挿通される下側ロッド部68とを備えている。
【0039】
カム部64の下面には、後述する回転子A22の可動側カム面70とかみ合う固定側カム72が形成されている。固定側カム72は、カム部64の下面の円周方向に沿って連続的に形成されており、鈍角波歯状に形成されている。また、カム部64の外周には、放射状に複数個の、例えば3個の突出するスライド突起74が形成されている。
【0040】
ロッド20のスライド突起74は、キャップ18のスライド溝50にはまり合い、スライド溝50に沿って昇降することで、ロッド20がキャップ18内にスライド可能で、且つ回転不能に保持されるようになっている。
【0041】
図1及び
図17に示すように、ロッド20の上側ロッド部66の上端部には、ブーツ28を取り付ける環状の環状溝76が形成されている。また、ロッド20の下側ロッド部68の下端部には、後述するスリーブ24の縮径部78がはまり込むように細くなった、くびれ部80が形成されている。
【0042】
図1に示すように、ロッド20のくびれ部80の高さは、スリーブ24の縮径部78の上下方向の肉厚より高く設定されている。このため、くびれ部80に、縮径部78がはまり込んだ状態で、くびれ部80の高さ方向にクリアランスが発生するようになっている。このため、スリーブ24の縮径部78は、ロッド20のくびれ部80のクリアランス分だけ上下に昇降可能となっている。
【0043】
なお、クリアランスの量は、後述する回転子22の可動側カム部82がカム部64の固定側カム72にかみ合った第1の高さ位置と、固定側カム72から係脱する第2の高さ位置との間において昇降する回転子22の昇降量に応じて設定されている。
【0044】
(スリーブ)
図22及び
図23に示すように、スリーブ24は、スリーブ本体88、張出部84、縮径部78及びスリット92を備えている。
【0045】
図1及び
図5に示すように、スリーブ24は、ロッド20の下側ロッド部68に挿通され、回転子22とコイルスプリング26との間に位置すると共に、ロック手段のロック位置においてロッド20のスライド方向の移動を制限するようになっている。
【0046】
図7に示すように、スリーブ24のスリーブ本体88は筒形に形成されており、下側ロッド部68に挿通されている。また、スリーブ24の張出部84は、回転子22と当接するスリーブ本体88の上端部に位置しており、半径方向に外向きに張り出している。
【0047】
図23に示すように、スリーブ24の縮径部78は、上端部と反対側のスリーブ本体88の下端部に位置しており、半径方向に内向きに環状に突出している。スリット92は、スリーブ本体88の下端部を複数、例えば二つ割りに切り割っており、スリット92は、スリーブ本体88の直径方向に一対形成され、スリーブ本体88の下側の端面から上方に向かって途中まで形成されている。なお、スリットA92は、例えば一対形成したが、3個以上形成しても良い。
【0048】
なお、スリーブ24は、ロッド20が短縮したロック位置において当該ロッド20のスライド方向の移動を制限するようになっている。すなわち、ロッド20の固定側カム72と、後述する回転子22の可動側カム部82とがかみ合った状態において、固定側カム72と可動側カム部82とが離隔する方向、すなわち上下方向にロッド20がガタ付くのを防止するようになっている。
【0049】
(コイルスプリング)
図1に示すように、コイルスプリング26は、ケース16とロッド20との間に位置し、ロッド20の下側ロッド部68に回転子22及びスリーブ24を挿通した状態で、スリーブ24の張出部84とケース16の底との間で圧縮されるようになっており、ロッド20をケース16内から突出する方向に向かって付勢している。また、コイルスプリング26は、ケース16内で弾縮され、回転子22をロッド20のカム部64に向かって付勢している。
【0050】
図2に示すように、コイルスプリング26は、ピッチが異なる大ピッチ部26Aと小ピッチ部26B、26Cとを有する不等ピッチのコイルスプリングとなっている。また、コイルスプリング26の小ピッチ部26Bと小ピッチ部26Cとは、コイルスプリング26の長手方向両端部に形成されており、コイルスプリング26の長手方向中間部が大ピッチ部26Aとなっている。
【0051】
なお、コイルスプリング26の全長L、大ピッチ部26Aの長さL1、小ピッチ部26Bの長さL2及び小ピッチ部26Cの長さL3における各長さの関係は、一例として、L=L1+L2+L3、L1>L2=L3となっている。
【0052】
従って、コイルスプリング26のストローク(以下Sと記載する)と荷重(以下Nと記載する)との関係は、
図3に示すようになっている。
【0053】
図3に示すように、コイルスプリング26の自由長さ(S=S0)における荷重(N=N0)に対して、押上装置10を車体に取付け、フューエルリッド12を開放した状態ではS=S1、N=1となっている。
【0054】
また、フューエルリッド12を閉める場合に、フューエルリッド12が押上装置10に当接した際の、ロッド20をケース16内へ押し込む初期のストローク(S2−S1)に対する荷重の増加(N2−N1)の割合(N2−N1)/(S2−S1)が、初期のストローク(S2−S1)に続く後期のストローク(S6−S2)に対する荷重の増加(N6−N2)の割合(N6−N2)/(S6−S2)に比べて小さくなっている。
【0055】
このため、コイルスプリング26による付勢力の増加の割合が、初期のストローク(S2−S1)に続く後期のストローク(S6−S2)に対する付勢力の増加率に比べて小さくなっている。
【0056】
なお、
図3において、S3はフューエルリッド12を閉じた状態のストロークを示し、N3はその状態での荷重を示している。また、S4は押上装置10がロックする時のストロークを示し、N4はその状態での荷重を示している。また、S5は押上装置10のロックを解除する時のストロークを示し、N5はその状態での荷重を示している。また、S6は押上装置10の最大オーバーストロークを示し、N6はその状態での荷重を示している。さらに、
図3に一点鎖線で示したグラフは、等ピッチのコイルスプリングのストロークと荷重との関係を示している。
【0057】
また、コイルスプリング26が圧縮され、大ピッチ部26Aに続いて圧縮された小ピッチ部26B、26Cが、ロッド20のロック解除用押し込み量(S5−S4)を残して圧縮された状態、即ち、コイルスプリング26の小ピッチ部26B、26Cが略密着した状態で、ロック手段によってロッド20がケース16の後退位置にロックされるようになっている。
【0058】
(ロック手段)
図6に示すように、ロック手段は回転子22を備えた回転カム式となっており、ケース16とロッド20との間に位置し、コイルスプリング26の付勢力に抗してロッド20をケース16の後退位置にロックするようになっている。また、回転子22は、ロッド20の下側ロッド部68に回転可能で、且つ軸方向にスライド可能に支持されており、カム部64の固定側カム72にかみ合うと共に、ロッド20のスライドにより係脱し、一方向の回転力を付与するための可動側カム部82を有している。
【0059】
図19〜
図21に示すように、回転子22はドーナツ形に形成されている。また、
図20及び
図21に示すように、回転子22は中心に上下に貫通し、ロッド20の下側ロッド部68に挿通される中心孔86と、上面に形成され、ロッド20のカム部64の固定側カム72にかみ合うと共に、ロッド20のスライドにより係脱し、一方向の回転力を付与するための可動側カム部82とを備えている。可動側カム部82は、ロッド20のカム部64の固定側カム72と相補的な形状を成しており、回転子22の上面の円周方向に沿って連続的、且つ鈍角波歯状に形成されている。また、可動側カム部82の外周には、放射状に複数個の、例えば3個の突出する係合突起56が形成されている。
【0060】
図10に示すように、回転子22の係合突起56は、上面に斜面を有する平面台形形に形成されており、キャップ18のロック溝52のロック部52Bにはまり込むようになっている。また、回転子22の係合突起56の台形形の斜面は、ロック溝A52の第1斜面部52Aと第2斜面部52Dの傾斜角度に一致している。
【0061】
図8に示すように、回転子22の係合突起56の左右方向の横幅は、キャップ18のスライド溝50の左右の溝幅以下に設定されており、スライド溝50をスライド可能としている。
【0062】
従って、本実施形態では、回転子22の係合突起56、キャップ18のロック溝52に加え、ロッド20のカム部64及びスライド突起74、キャップ18のスライド溝50もロック手段の一構成要素として機能している。
【0063】
(ブーツ)
図1に示すように、ブーツ28は、ケース16から突出する上側ロッド部66を覆う伸縮可能なものであり、ケース16に取り付けられている。ブーツ28は下面が開口した中空の蛇腹状に形成されており、上端部が袋状に閉じている。ブーツ28の上端部の内周面には、半径方向に内向きに環状に突出した環状突起94が形成されており、環状突起94はロッド20の環状溝76にはまり込むようになっている。また、ブーツ28の開口下面の内周面には、半径方向に内向きに環状に突出した環状凸部96が形成されており、環状凸部96は、ケース16の取付凹部36にはめ込まれている。
【0064】
(作用・効果)
次に、本実施形態の押上装置10の作用効果について説明する。
図4に示すように、押上装置10は、組み立てた状態で、ケース16を、インナーパネル14の取付孔32に合わせてはめ込むことで、インナーパネル14に固定される。また、
図10に示すように、フューエルリッド12が閉じた状態では、押上装置10はロッド20が短縮したロック状態にロックされている。
【0065】
次に、
図9に示すように、閉じた状態のフューエルリッド12を押し込むと、押上装置10のロッド20がケース16内に押し込まれ、ロック状態が解除される。この結果、
図8に示すように、コイルスプリング26の圧縮復元力により、ロッド20がケース16内から突出し、フューエルリッド12を押し開く。このため、押し開かれたフューエルリッド12を手で容易に開くことができる。
【0066】
より具体的に説明すると、
図10に示すように、ロッド20が短縮したロック状態では、回転子22の係合突起56とキャップ18のロック溝52とが係合し、ロック部52Bにはまり込んでいる。この状態で、ロッド20がケース16内に押し込まれると、ロッド20のカム部64に押されて回転子22が下降する。このため、
図9に示すように、回転子22の係合突起56が、キャップ18のロック部52Bから係脱する。このとき、ロッド20のカム部64の固定側カム72と、回転子22の可動側カム部82とのかみ合いが係脱し、矢印Bの方向に、回転子22が回転する。次いで、ロッド20を押し込む力が解放されると、回転子22が、コイルスプリング26の圧縮復元力により押し上げられる。このとき、回転子22の係合突起56が、キャップ18の第2斜面部52Dに当接する。このため、係合突起56は、第2斜面部52Dに摺接しながら上昇し、
図8に示すように、第2斜面部52Dの斜面上端部からスライド溝50にはまり込む。
【0067】
図8に示すように、係合突起56が、スライド溝50にはまり込むと、係合突起56はスライド溝50に沿って上昇可能となる。このため、コイルスプリング26の圧縮復元力により、回転子22を介してロッド20のカム部64が押し上げられ、ロッド20がケース16から突出して伸張する。
【0068】
一方、開いたフューエルリッド12を手で閉じると、フューエルリッド12が押上装置10に当接し、伸張したロッド20が、コイルスプリング26の付勢力に抗して、ケース16に向かって押し込まれ、回転子22の係合突起56が、スライド溝50に沿って下降する。
【0069】
この際、本実施形態では、
図2に示すように、コイルスプリング26が、ピッチの異なる大ピッチ部26Aと小ピッチ部26B、26Cとを有している。
【0070】
このため、
図3に示すように、ロッド20をケース16内へ押し込む初期のストローク(S2−S1)に対する荷重の増加(N2−N1)の割合(N2−N1)/(S2−S1)が、初期のストローク(S2−S1)に続く後期のストローク(S6−S2)に対する荷重の増加(N6−N2)の割合(N6−N2)/(S6−S2)に比べて小さくなる。この結果、コイルスプリング26による付勢力の増加の割合が、初期のストローク(S2−S1)に続く(S6−S2)に対する付勢力の増加率に比べて小さくなる。
【0071】
従って、フューエルリッド12が押上装置10に当接した際に、フューエルリッド12を押し戻すコイルスプリング26の反力が、初期において小さく、その後、大きくなる。このため、フューエルリッドが押上装置10に当接した際に、コイルスプリング26の反力によって、フューエルリッド12が押し戻されることで生じる、フューエルリッド12のばたつきが抑制され、操作性が向上する。この結果、高級感のあるフューエルリッド12の閉操作が可能となる。
【0072】
次いで、ロッド20が、コイルスプリング26の付勢力に抗して、ケース16に向かってさらに押し込まれ、回転子22の係合突起56が、スライド溝50に沿って下降し、係合突起56がスライド溝50の開口下端から抜け出ると、回転子22の回転が可能となる。このため、固定側カム72と可動側カム部82とのかみ合いの係脱により、
図9の矢印Bの方向に、回転子22が回転し、スライド溝50の下側からロック溝52の第1斜面部52に向かって移動する。
【0073】
次いで、ロッド20を押し込む力が解放されると、回転子22が、コイルスプリング26の圧縮復元力により押し上げられる。このとき、係合突起56が第1斜面部52Aに当接する。このため、係合突起56は、第1斜面部52Aに摺接しながら上昇し、
図10に示すように、ロック部52Bにはまり込み、再度、ロック状態に復帰する。
【0074】
このように、本実施形態では、ロック手段が回転式カム式ロック機構であり、ロッド20の押し込みにより、回転式カムが作動しロックとロック解除が切り替わる。このため、ロックとロック解除との切り替わりが確実である。
【0075】
また、本実施形態では、付勢手段として大ピッチ部26Aと小ピッチ部26B、26Cとを有する1本のコイルスプリング26を使用するため、構成が簡単になる。この結果、コストアップを抑制できる。
【0076】
また、本実施形態では、コイルスプリング26の長手方向両端部に形成されている小ピッチ部26B、26Cが、ケース16とロッド20とに当接する。このため、コイルスプリング26が圧縮された際に、コイルスプリング26の長手方向両端部が長手方向に対して湾曲し難くい。この結果、コイルスプリング26全体の圧縮変形が安定する。
【0077】
また、本実施形態では、コイルスプリング26が圧縮され、大ピッチ部26Aに続いて圧縮された小ピッチ部26B、26Cが、ロッド20のロック解除用押し込み量(S5−S4)を残して圧縮された状態、即ち、コイルスプリング26の小ピッチ部26B、26Cが略密着した状態で、ロック手段がロッド20をケース16の後退位置にロックする。このため、ロッド20をケース16の後退位置にロックしたロック状態でのコイルスプリング26の付勢力が大きくなり、ロック状態でのロッド20及びフューエルリッド12のばたつきを抑制できる。
【0078】
(その他の実施形態)
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、
図24に示す第2実施形態の押上装置90のように、ケース100にロッド102が押し込まれることによって、制御スプリング108の端部108Aがハート形状の制御カム106に沿って移動し、制御カム106の凹部106Aで制御スプリング108の端部108Aが係止されロック状態となり、再度、ケース100にロッド102が押し込まれることによって、制御スプリング108の端部108Aが制御カム106の凹部106Aから外れてロック状態が解除される、所謂、ハートカム式押上装置(独国特許19650594A1号等に記載の押上装置)を使用し、ロッド102をケース100内から突出する方向へ付勢する付勢手段として第1実施形態のコイルスプリング26を使用した構成としてもよい。
【0079】
また、上記各実施形態では、コイルスプリング26の小ピッチ部26B、26Cが、コイルスプリング26の長手方向両端部に形成されており、コイルスプリング26の長手方向中間部が大ピッチ部26Aとなっている構成としたが、コイルスプリング26はピッチが異なる小ピッチ部と大ピッチ部とが形成されていればよく、小ピッチ部と大ピッチ部の数や位置は上記各実施形態に限定されない。
【0080】
また、コイルスプリング26の太さや材質を部分的に変えることで、例えば、コイルスプリング26の小ピッチ部26B、26Cの太さを、大ピッチ部26Aの太さに比べて太くしたり、コイルスプリング26の小ピッチ部26B、26Cを構成する材質の弾性力を大ピッチ部26Aを構成する材質の弾性力に比べて強くすることで、ロッドをケース内へ押し込む初期のストロークに対する付勢力の増加率が、初期のストロークに続く後期のストロークに対する付勢力の増加率に比べて小さくした構成としてもよい。
【0081】
また、上記各実施形態では、付勢手段としてコイルスプリング26を使用したが、コイルスプリングに代えて、例えば、ロッドをケース内へ押し込む初期のストロークに対する付勢力の増加率が、初期のストロークに続く後期のストロークに対する付勢力の増加率に比べて小さくなるよに、弾性力の異なる円柱形状のゴムを連結した他の付勢手段を使用してもよい。