特許第5690184号(P5690184)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5690184
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】車載機器操作支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20150305BHJP
【FI】
   B60R16/02 640K
   B60R16/02 630Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-70326(P2011-70326)
(22)【出願日】2011年3月28日
(65)【公開番号】特開2012-201330(P2012-201330A)
(43)【公開日】2012年10月22日
【審査請求日】2013年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】502324066
【氏名又は名称】株式会社デンソーアイティーラボラトリ
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100117444
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 健一
(72)【発明者】
【氏名】アリ ウィドド
(72)【発明者】
【氏名】松井 武
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 顕
【審査官】 志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/145003(WO,A1)
【文献】 特開2003−252075(JP,A)
【文献】 特開2001−210169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転席周りに設けられ特定の車載機器の駆動用操作信号を出力するスイッチと、
前記スイッチの近傍に設けられ、該スイッチへの近接物を検知する検知部と、
前記検知部の出力信号に基づき、前記近接物の接近の程度に応じた接近信号を出力する接近信号処理部と、
前記接近信号処理部から出力される前記接近信号に基づいて、少なくとも2種類のスイッチ関連情報を前記接近の程度に応じて出力する提示情報処理部と、
を備え
前記スイッチがステアリングの裏側にあるクルーズスイッチである車載機器操作支援装置。
【請求項2】
前記提示情報処理部は、前記接近信号処理部から出力される前記接近信号に基づいて、前記接近の程度が所定の距離A以内である場合に前記スイッチの状態を示すスイッチ状態情報を出力し、前記接近の程度が所定の距離B(B>A)以内である場合に前記スイッチの操作案内情報または推奨操作情報を出力する、請求項1に記載の車載機器操作支援装置。
【請求項3】
さらに、前記提示情報処理部から出力された情報を、音声情報または表示情報の少なくとも一方の情報としてユーザに提供する情報提示部、を備えている請求項1又は2に記載の車載機器操作支援装置。
【請求項4】
前記スイッチは前記クルーズスイッチを含め複数設けられており、前記検知部、前記接近信号処理部、および、前記提示情報処理部は、前記複数のスイッチのそれぞれに対応付けられて設けられており、前記所定の距離A及びBは、前記複数のスイッチのそれぞれに対応付けられて設けられた前記検知部ごとに定められている、請求項1乃至3の何れか1項に記載の車載機器操作支援装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許は、ユーザであるドライバが車載機器の操作を行う際に当該操作をし易くするための支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、車両搭載機器(車載機器)が車内の限られたスペース内に多数装備され、しかも、それぞれの機器には多くの機能が設けられる傾向にある。車両のドアミラーの操作を例にとると、ドアミラーの操作スイッチ群は運転席のドア側の特定の場所に集約されており、ユーザは、これらのスイッチ群の中から特定のスイッチを選択した上で、当該特定のスイッチの特定の部位を押下などして、特定のドアミラーを所望の位置に調整することになる。
【0003】
車内には、このような類のスイッチは複数あり、しかもそれぞれが異なる場所にある。しかも、あるスイッチで操作される部位の状態を即座に把握した上で、所望の操作を行うことは、必ずしも容易でない。上述の例で言えば、例えばユーザが運転席側のドアミラーの状態を制御しようとする際には、どのスイッチを操作しなければならないのか、また、運転席側ドアミラー操作のスイッチがON状態にあるのか否か等を確認するために、一旦目視によりスイッチを確認することが求められるのが一般的である。
【0004】
しかし、このような目視による確認作業は、運転の安全性を確保する観点からは好ましくない。特に、高齢者や身障者にとって、スイッチ操作の度の目視による確認作業は安全な運転の阻害となり、大きな負担を強いる結果ともなる。
【0005】
ところで、特許文献1(特開2001-210169号公報)には、車載機器の操作スイッチの操作を容易にするためのスイッチ種別報知装置の発明が開示されている。特許文献1に開示の発明では、人体の一部をいずれかの操作スイッチ近傍に近づけると、その操作スイッチの操作内容を示す音声情報や表示情報が出力され、視線を前方に保った状態で所望の操作スイッチを容易に探し出すことができる。
【0006】
しかし、特許文献1に開示の装置では、ユーザが操作を目的としているスイッチか否かの判断は可能であるものの、当該スイッチがどのような状態にあるのか或いは目的とする制御を行うためにはそのスイッチをどのように操作すればよいのか等についてまでの情報は提供されない。このため、上述のような確認のためにはやはりスイッチを目視することが必要であり、スイッチ操作に起因する危険性や不便さなどはなお残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001-210169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、ユーザが操作を目的としているスイッチがどのような状態にあるのか或いは目的とする制御を行うためにはそのスイッチをどのように操作すればよいのか等について、当該スイッチを目視しなくても確認できるようにし、スイッチ操作に起因する危険性や不便さを解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
係る課題を解決するために、本発明の車載機器操作支援装置は、車両の運転席周りに設けられ特定の車載機器の駆動用操作信号を出力するスイッチと、前記スイッチの近傍に設けられ、該スイッチへの近接物を検知する検知部と、前記検知部の出力信号に基づき、前記近接物の接近の程度に応じた接近信号を出力する接近信号処理部と、前記接近信号処理部から出力される前記接近信号に基づいて、少なくとも2種類のスイッチ関連情報を前記接近の程度に応じて出力する提示情報処理部とを備えている。
【0010】
例えば、前記提示情報処理部は、前記接近信号処理部から出力される前記接近信号に基づいて、前記接近の程度が所定の距離A以内である場合に前記スイッチの状態を示すスイッチ状態情報を出力し、前記接近の程度が所定の距離B(B>A)以内である場合に前記スイッチの操作案内情報または推奨操作情報を出力する。
【0011】
本発明の車載機器操作支援装置は、さらに、前記提示情報処理部から出力された情報を、音声情報または表示情報の少なくとも一方の情報としてユーザに提供する情報提示部を備えている態様とすることができる。
【0012】
本発明の車載機器操作支援装置は、また、前記スイッチは複数設けられており、前記検知部、前記接近信号処理部、および、前記提示情報処理部は、前記複数のスイッチのそれぞれに対応付けられて設けられており、前記所定の距離A及びBは、前記複数のスイッチのそれぞれに対応付けられて設けられた前記検知器ごとに定められている態様とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車載機器操作支援装置によれば、車載機器を操作するためのスイッチの状態や操作案内等を目視に拠らず確認することができるため、運転の安全性やユーザであるドライバの利便性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の車載機器操作支援装置の構成例を説明するためのブロック図である。
図2】車載機器操作支援装置が行う処理内容を説明するためのフロー図である。
図3A】定速走行補助装置(クルーズコントロール)のスイッチの様子を示す図である。
図3B】近接センサがクルーズコントロールスイッチの近傍に設けられている様子を示す図である。
図4A】通常時のメータ表示状態を示す図である。
図4B】クルーズコントロールスイッチの状態が表示されているメータ表示状態を示す図である。
図4C】クルーズコントロールスイッチの推奨操作が表示されているメータ表示状態を示す図である。
図5A】ウィンカのスイッチの近傍に設けられたセンサにドライバが指を近づけた場合の情報提供の様子を説明するための図である。
図5B】ウィンカのスイッチの近傍に設けられたセンサにドライバが指を近づけた場合の情報提供の様子を説明するための図である。
図5C】ウィンカのスイッチの近傍に設けられたセンサにドライバが指を近づけた場合の情報提供の様子を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照して、本発明の車載機器操作支援装置について説明する。なお、以下では、接近信号処理部から出力される接近信号に基づいて出力されるスイッチ関連情報が2種類あるとして説明するが、3種類以上のスイッチ関連情報がある場合にも本発明の適用が可能であることは明らかである。
【0016】
図1は、本発明の車載機器操作支援装置の構成例を説明するためのブロック図である。この車載機器操作支援装置100は、スイッチ101a〜dと、センサ(検知部)102a〜dと、接近信号処理部103a〜dと、提示情報処理部104a〜dと、情報提示部105を備えている。
【0017】
この図に示した構成例では、スイッチ、センサ(検知部)、接近信号処理部、および提示情報処理部はそれぞれ4セット設けられているが、1セットでもよく5セット以上であってもよい。図中に符号106で示した提示情報選択部は、スイッチが複数ある場合に、何れのスイッチに関する情報を提示するかを選択するためのものである。また、情報提示部105は1つだけ設けられているが、提示情報処理部ごとに設けられる態様などとしてもよい。なお、スイッチが複数設けられる場合には、上述の所定の距離A及びBは、複数のスイッチのそれぞれに対応付けられて設けられた検知器ごとに定められている態様とすることができる。
【0018】
スイッチ101a〜dは車両の運転席周りに設けられており、それぞれが特定の車載機器の駆動用操作信号を出力する手段である。
【0019】
センサ102a〜dはそれぞれ、対応付けられるスイッチ101a〜dの近傍に設けられており、当該スイッチへの近接物を検知する手段である。
【0020】
接近信号処理部103a〜dはそれぞれ、対応付けられるセンサ102a〜dの出力信号に基づき、近接物の接近の程度に応じた接近信号を出力する手段である。
【0021】
提示情報処理部104a〜dはそれぞれ、対応付けられる接近信号処理部103a〜dから出力される接近信号に基づいて、接近の程度が所定の距離A以内である場合にスイッチの状態を示すスイッチ状態情報を出力し、接近の程度が所定の距離B(B>A)以内である場合にスイッチの操作案内情報または推奨操作情報を出力する手段である。
【0022】
ここで、スイッチ状態情報とは、例えば当該スイッチがONであるかOFFであるかといった情報である。
【0023】
また、スイッチの操作案内情報とは、例えばそのスイッチのどこをどのようにすれば所望の操作が行えるのかといった情報であり、推奨操作情報とは、例えば行おうとする操作は注意して行うことを推奨するなどの情報である。
【0024】
情報提示部105は、提示情報処理部104a〜dから出力された情報を、音声情報または表示情報の少なくとも一方の情報としてユーザに提供する手段である。
【0025】
提示情報選択部106は、スイッチが複数ある場合に何れのスイッチに関する情報を提示するかを選択するためのもので、ユーザであるドライバの手や指が複数種のスイッチ近傍にあるような場合に、ドライバが何れのスイッチを操作しようとしているのかを各スイッチへの接近度等に基づいて判断(優先順位付け等)する手段である。
【0026】
[実施の態様1]
図2は、車載機器操作支援装置100が行う処理内容を説明するためのフロー図である。なお、このフロー図では、スイッチ、センサ、接近信号処理部、および提示情報処理部が1セットで行う処理として説明する。
【0027】
先ず、ユーザが車両のエンジンをONすると(S101)、センサが起動する(S102)。ここでは、センサは、ユーザの手や指の接近を近赤外線で感知する近接センサであり、このセンサは、図3Aに示すようなステアリングの裏側にある定速走行補助装置(クルーズコントロール)のスイッチ(クルーズスイッチ)の近傍に、図3Bに示したような状態で設けられている。センサは、超音波により近接物の接近を検知するようなものであってもよい。
【0028】
このセンサにユーザの手や指が接近すると、赤外線によりその接近の程度に応じた信号が接近信号処理部へと出力され、この出力信号に基づき、ユーザの手や指(近接物)の接近の程度に応じた接近信号が出力される。
【0029】
提示情報処理部は、この接近信号処理部から出力される接近信号に基づいて接近の程度を判断し、接近の程度が所定の距離A以内である場合(S103:Yes)、スイッチの状態を示すスイッチ状態情報を出力する。情報提示部は、このスイッチ状態情報を受け、音声情報または表示情報の少なくとも一方の情報としてユーザに提供する(S104)。
【0030】
センサにユーザの手や指がさらに接近してその接近の程度が所定の距離B(B>A)以内になると(S105:Yes)、提示情報処理部はスイッチの操作案内情報または推奨操作情報を出力し、情報提示部はこの操作案内情報または推奨操作情報を受けて、音声情報または表示情報の少なくとも一方の情報としてユーザに提供する(S106)。
【0031】
図4A〜Cは、クルーズコントロールに関する情報がどのようにユーザに提示されるかを例示により説明するための図で、図4Aは通常時のメータ表示状態を示す図、図4Bはクルーズコントロールスイッチの状態が表示されているメータ表示状態を示す図、そして、図4Cはクルーズコントロールスイッチの推奨操作が表示されているメータ表示状態を示す図である。
【0032】
ユーザがスイッチの操作案内情報または推奨操作情報の提供を受けて実際にスイッチ操作を行うと(S107:Yes)、その操作結果をユーザに提示するようにしてもよい(S108)。
【0033】
図4Aに示したように、ユーザにクルーズコントロールスイッチを操作する意思がない場合には、ユーザの手や指はスイッチに近接しないから、当該スイッチがどのような状態にあるかは表示されない。
【0034】
ユーザがクルーズコントロールスイッチを操作しようとして手や指をスイッチに所定の距離A(例えば5cm程度)まで近づけると、図4Bに示すように、クルーズコントロールスイッチの現在の状態(ここでは、ACCがOFFである状態)がメータ上に表示される。
【0035】
ユーザが手や指をさらにスイッチに近づけて所定の距離B(例えば2cm程度)以内となると、図4Cに示すように、クルーズコントロールスイッチのどの部分をどのように操作すれば所望の状態が得られるか(ここでは、ボタンスイッチ部分を押込するとACCがONの状態となる)という情報(操作案内情報)がメータ上に表示される。
【0036】
このような一連の動作において、ユーザであるドライバは一度もクルーズコントロールスイッチを黙視する必要はなく、前方を確認した状態で、コントロールパネルに表示される上記情報を確認するだけでよい。
【0037】
なお、上述したように、このような情報は表示によりのみ提供される必要はなく、音声により提供されてもよく、双方の提示がなされるようにしてもよい。
【0038】
[実施の態様2]
上述の実施の態様1では、スイッチはクルーズコントロールスイッチであった。本実施の態様2では、スイッチが車線変更スイッチである場合について説明する。なお、基本的な処理のフローは上述のとおりであるので、繰り返しての説明は省略する。
【0039】
図5A〜Cは、方向指示(ウィンカ)のスイッチの近傍に設けられたセンサにドライバが指を近づけた場合の情報提供の様子を説明するための図である。
【0040】
ドライバが右折(もしくは左折)のためにウィンカスイッチに所定の距離A(例えば2cm程度)まで指を近づけると、図5Aに示すように車両の右側面後方に歩行者や車両あるいは障害物等がないかを表示によりドライバに知らせたり、図5Bに示すように左右のドアミラーに設けられたカメラから得られた画像を電子ミラーの画像として表示するなどする。
【0041】
例えば図5Bに示したように左右の電子ミラーの画像を表示した後、ドライバが指をさらにスイッチに近づけて所定の距離B(例えば1cm程度)以内となると、図5Cに示すように、左側の電子ミラーは例えば青縁取りされて左折は安全に行える一方で、右側の電子ミラーは例えば黄縁取りされて右折は注意して行う必要がある旨の情報(推奨操作情報)がメータ上の電子ミラーに表示される。
【0042】
本発明は上述したような実施の態様に限定されず、例えば、後進する際の後方の安全確認や、ドアを開く際の安全確認等、種々の態様で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
上述したように、本発明の車載機器操作支援装置によれば、車載機器を操作するためのスイッチの状態や操作案内等を目視に拠らず確認することができるため、運転の安全性やユーザであるドライバの利便性が向上する。
【符号の説明】
【0044】
100 車載機器操作支援装置
101a〜d スイッチ
102a〜d センサ
103a〜d 接近信号処理部
104a〜d 提示情報処理部
105 情報提示部
106 提示情報選択部
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C