(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リンクの長手方向の中間部には、前記一対のリンクの上端部間の距離を拡大する第1の折曲部が形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の車両用シートの跳ね上げ機構。
前記リンクは、前記下端部のシート幅方向外側に補強用カラーが一体で形成され、該補強用カラーのシート幅方向外側には、前記固定部材に固定されるベースブラケットが取着されてなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の車両用シートの跳ね上げ機構。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようにシートクッションを立て起こしてタンブル状態として収納する車両用シートにおいて、シートクッションには回動部材が取り付けられている。シートクッションの収納時は、シートクッションのロックが解除されると、回動機構によってシートクッションが収納姿勢(跳ね上げ位置)まで立て起こされる。一方、着座姿勢にシートクッションを着座姿勢に復帰させる際は、乗員がシートクッションを着座位置まで回転させ、その後ロック機構によってシートクッションの位置(状態)が固定されることにより、シートクッションを着座位置に配置することができる。
【0007】
上記機構においては、シートクッションの回動動作を行う際、回動部材によってシートクッションの回動範囲が決定される。しかし、シートクッションの回動動作が不安定であると、シートクッションがロックできない位置に回転して、着座姿勢まで戻すことができなかったり、また、適切な収納姿勢までシートクッションを回転させることができなかったりすることがある。したがって、シートクッションの回動動作を安定して行い、シートクッションの着座姿勢及び収納姿勢を常に安定して保持することが可能な技術が求められていた。
【0008】
また、特許文献1のダブルフォールディング機構では、シートクッションを取り付ける構造において、シート幅方向及び上下方向に複数の部材が重ねられた構成であるため、車両用シートが大型化し易いという不都合があった。
【0009】
本発明の目的は、車両用シートの跳ね上げ機構において、シートクッションを着座姿勢又は収納姿勢に回転させる際、回転動作を安定して行うことが可能な車両用シートの跳ね上げ機構を提供することにある。また、本発明の他の目的は、車両用シートの跳ね上げ機構において、大型化することなく、省スペース化を図った車両用シートの跳ね上げ機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題は、本発明の請求項1に係る車両用シートの跳ね上げ機構によれば、通常の着座姿勢と、前方に傾倒させた状態で収納する収納姿勢と、にシートクッションを切り替え可能に形成された車両用シートの跳ね上げ機構であって、シート幅方向に離間して配設された長尺体からなる一対のリンクと、該一対のリンクの上端部に取着されて前記シートクッションを支持する一対の取付ブラケットと、該一対の取付ブラケットに架設される連結部材と、前記一対のリンクを回動自在に支持する一対の支持機構と、該支持機構の下方に配設されると共に車体フロアに固定される固定部材と、を備え、前記一対のリンクは、前記上端部間の距離が下端部側間の距離と比較して大きく形成されてなること、により解決される。
【0011】
本発明の車両用シートの跳ね上げ機構において、離間して配設された一対のリンクの上端部間の距離、すなわち、シートクッションが配設される側の端部の間の距離は、他方の端部同士の距離と比較して大きくなるように形成されている。このように、リンクの上端部間の距離を、下端部間の距離よりも大きくすることにより、シートクッションがリンクによって安定して支持される。したがって、リンクに対するシートクッションの取着状態が安定するため、シートクッションを回動させる際、安定して回動動作を行うことが可能である。
また、リンクの下端部間の距離が小さく形成されているため、跳ね上げ機構において、車体フロアに取り付けられる部分がシートクッションを支持する部分と比較して小さくなる。その結果、車両用シートの跳ね上げ機構において、車体フロアに固定される部分が大型化することなく、好適である。
【0012】
また、請求項2のように、前記リンクの長手方向の中間部には、前記一対のリンクの上端部間の距離を拡大する第1の折曲部が形成されてなると好適である。
このように、リンクにおいて折曲部を備えているため、リンクの剛性が向上し、リンクの回動動作を安定させることができる。
さらに、リンクの一部を折曲するという簡単な構成により、リンクの上端部間の距離を大きくすることが可能であるため、製造時の工程が複雑化することがない。
【0013】
さらに、請求項3のように、前記車両用シートは、ヘッドレストをさらに備え、前記一対のリンクは、前記上端部間の距離が前記ヘッドレストの幅よりも大きく形成され、前記下端部から前記第1の折曲部までの距離が前記ヘッドレストの厚みよりも大きく形成されてなると好適である。
このように、離間して配設されるリンク間の距離をヘッドレストの幅よりも大きくし、さらに、リンクの下端部から第1の折曲部までの距離をヘッドレストの厚みより大きくすることにより、車両用シートを収納状態とするとき(すなわち、シートクッションを跳ね上げ状態とするとき)、ヘッドレストをリンクの間に収納することができる。そして、ヘッドレストの高さ方向をシートクッションの底面の延在方向に沿って収納することができるため、車両用シートをコンパクトに収納することが可能となる。
【0014】
また、請求項4のように、前記リンクは、前記第1の折曲部と連続して形成された第2の折曲部をさらに備えてなると好ましい。
このように、リンクにおいて、第1の折曲部だけでなく、さらに第2の折曲部を設けることにより、リンクの剛性がさらに向上する。そして、第1の折曲部と第2の折曲部とを連続して形成することにより、さらにリンクの剛性を向上させることができる。その結果、リンクの回動動作が安定し、シートクッションを確実に着座姿勢または収納姿勢とすることができる。
【0015】
さらに、請求項5のように、前記リンクは、前記下端部のシート幅方向外側に補強用カラーが一体で形成され、該補強用カラーのシート幅方向外側には、前記固定部材に固定されるベースブラケットが取着されてなると好適である。
このように、本発明の車両用シートの跳ね上げ機構では、リンクにおいて最も荷重がかかりやすい回動軸の近傍に、補強用カラーが一体に形成されていると好ましい。上記構成とすることにより、リンクの剛性を向上させることができる。さらに、補強用カラーが形成された部分にベースブラケットを取り付けることにより、リンクが固定部材(車体フロア)に固定されるため、リンクを固定部材に対して強固に取り付けることができる。したがって、固定部材(車体フロア)に対してリンクがぶれることなく固定されるため、リンクの回動動作を安定して行うことができる。
【0016】
また、請求項6のように、前記一対のリンクのうち少なくとも一方は、前記リンクを前方へ付勢する渦巻きバネが取着され、該渦巻きバネと前記ベースブラケットの一部とは、前後方向に重なる位置に取着されてなると好ましい。
このように、リンクを付勢する渦巻きバネとベースブラケットとが高さ方向で重なることがないため、渦巻きバネ及びリンク周辺の構成が大型化することがない。
【0017】
さらに、請求項7のように、前記固定部材は、前記渦巻きバネが配設される位置に開口部を備えてなると好適である。
このように、固定部材において、渦巻きバネが重なる部分に開口部が備えられることにより、渦巻きバネを開口部内に配設することができる。したがって、固定部材と渦巻きバネとが重なることにより渦巻きバネの取り付け位置が高くなることがなく、渦巻きバネが車体フロアに対して近い位置で取着される。その結果、渦巻きバネの取着された部分の高さ方向における大型化を抑制することができる。
【0018】
また、請求項8のように、前記一対の取付ブラケットの少なくとも一方に取着され、前記リンクと略平行に配設される長尺体からなるガイド部材をさらに備え、前記ベースブラケットは、前記固定部材に固定される固定部と、該固定部から折曲して形成される立ち壁部と、を有し、前記ガイド部材は、前記立ち壁部のシート幅方向内側に配設されてなると好ましい。
このように、リンクに沿って配設されるガイド部材を備えることにより、リンクをより安定して回動させることができる。そして、このガイド部材をベースブラケットの内側に取着することにより、シート幅方向外側からの外力に対してガイド部材を保護することができる。また、ガイド部材がベースブラケットの内側に配設されることにより、車両用シートの跳ね上げ機構が大型化することなく、好適である。
【0019】
さらに、請求項9のように、前記ガイド部材の回動軸と、前記リンクの回動軸とは、互いに略同一水平面上に配設されてなると好適である。
このように、ガイド部材とリンクの回動軸とを高さ方向において重ねて配設するのではなく、ガイド部材とリンクの回動軸とを略同一水平面上に配設することにより、ガイド部材及びリンクの回動軸周辺の構成が、高さ方向において大型化するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、リンクの上端部間の距離が下端部間の距離よりも大きく形成されているため、シートクッションが安定して支持される。その結果、リンクがぶれることなく安定して回動し、シートクッションを着座姿勢または収納姿勢に回転させる動作を安定して行うことができる。また、リンクの下端部間の距離が小さく形成されるため、跳ね上げ機構が車体フロア側においてコンパクト化される。
請求項2の発明によれば、折曲部を備えることにより、リンクの剛性が向上するため、リンクが安定して回動可能である。また、リンクの一部を折曲して形成するだけで剛性を向上させることができるため、製造工程が煩雑になることがない。
請求項3の発明によれば、ヘッドレストをリンク間の収納スペースに収納することができるため、収納状態における車両用シートをコンパクト化することができる。
請求項4の発明によれば、第2の折曲部を第1の折曲部に連続して形成することにより、リンクの剛性がさらに向上する。したがって、リンクの回動動作をさらに安定して行うことが可能となる。
請求項5の発明によれば、リンクにおいて補強用カラーを一体に形成することにより、リンクにおいて最も荷重がかかりやすい回動軸の部分を補強することができる。そして、補強用カラーが備えられた部分を固定部材に対して固定することにより、固定部材(車体フロア)に対してリンクが強固に固定されるため、リンクを安定して回動させることができる。
請求項6の発明によれば、リンクを付勢する渦巻きバネ及びリンク周辺の構成が大型化することがなく、車両用シートの跳ね上げ機構をコンパクト化することができる。
請求項7の発明によれば、渦巻きバネ周辺の構成の大型化を抑制し、車両用シートの跳ね上げ機構をコンパクト化することができる。
請求項8の発明によれば、ガイド部材を備えることにより、リンクを安定して回動させることができる。また、ベースブラケットの内側にガイド部材を取着するため、ガイド部材をシート幅方向外側の外力から保護するとともに、シート幅方向の大型化を抑制することができる。
請求項9の発明によれば、ガイド部材及びリンクの回動軸周辺の構成が、高さ方向において大型化するのを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施形態(以下、本実施形態)について、
図1乃至
図15を参照して説明する。なお、以降に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。さらに、以下の説明で挙げる材質や形状等は本発明の効果を発揮させるための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0023】
図1乃至
図15は、本実施形態に係る車両用シート(以下、車両用シートS1)を説明するものである。
図1は、車両用シートS1を搭載した車両後部の側面模式図である。
図2は、車両用シートS1の斜視図である。
図3は、クッションフレーム11の斜視図である。
図4は、シートクッション跳ね上げ機構60の斜視図(第1図)である。
図5は、シートバックフレーム21を前側から見たときの図である。
図6は、ヘッドレスト30の内部フレーム31を示す図である。
図7乃至
図9は、ヘッドレスト回動機構50を示す図であり、
図7は、ヘッドレスト回動機構50を前側から見たときの図であり、
図8は、後側から見たときの図であり、
図9は、斜視図である。
図10は、シートクッション跳ね上げ機構60の斜視図(第2図)である。
図11は、シートクッション跳ね上げ機構60を上方から見たときの図である。
図12は、シートバック支持ユニット90を側方から見たときの図である。
図13は、第1板部112の説明図である。
図14は、
図13のI−I線に相当する断面図である。
図15は支持機構125を上方から見たときの図である。
【0024】
なお、図中の記号FRは車両前方を、記号RRは車両後方を、記号UPは車両上方をそれぞれ示している。また、以下の説明において、左右方向とは、車両前方を向いた状態での左右方向を意味し、後述するシートバックフレーム21の幅方向と一致する方向である。
【0025】
車両用シートS1は、乗物用シートの一例であり、
図1に示すように、自動車の車体後部に荷室スペースを有する車両に後部座席として搭載されるものであって、特に、本実施形態ではワゴン型の自動車に搭載されるものである。
【0026】
車両用シートS1の構成について説明すると、本実施形態では、右側(運転席側)の車両用シートS11と、左側(助手席側)の車両用シートS12とに分かれており、各車両用シートS11,S12は、シートクッション10と、シートバック20と、ヘッドレスト30とを備えている。なお、各車両用シートS11,S12のシートバック20間にはアームレスト40が配置されており、左側の車両用シートS12においては、
図2にてアームレスト40の下方に位置した台座部20aとシートバック20とが一体化されており、
図2にて台座部20aの下方位置に配置された張出部10aとシートクッション10とが一体化されている。以上の点において右側の車両用シートS11と左側の車両用シートS12とは相違するものの、基本構成に関して言えば、両車両用シートS11,S12は共通する。そのため、以下の説明では、右側の車両用シートS11の構成のみを例に挙げて説明する。
【0027】
車両用シートS1は、その姿勢を、乗員が着座可能な通常の姿勢(
図1にて破線で示す姿勢であり、以下、着座姿勢)から、不使用時に荷室部3が形成されるように収納された姿勢(
図1にて実線で示す姿勢であり、以下、収納姿勢)へ切り替えることが可能である。つまり、車両用シートS1の姿勢が収納姿勢に切り替えるにあたって、シートクッション10が車両前方に向けて跳ね上げられる。また、シートクッション10の跳ね上げに連動して、シートバック20が前方に回動し、車体フロア2上の、跳ね上がる前のシートクッション10が配置されていた位置に倒伏するようになっている。さらに、ヘッドレスト30が、シートバック20の上方で略鉛直に配設された状態から約90度前方に回動し、シートバック20が車体フロア2上に倒れ込んだ際には、前方に跳ね上がったシートクッション10と倒伏したシートバック20との間に格納されるようになる。
【0028】
以上の一連の動作により、車両用シートS1は、コンパクトな姿勢で収納することが可能である。そして、上記構成の車両用シートS1をリアシートとして採用する車両1では、当該車両用シートS1の後方に、車体フロア2の一部を構成する荷室部3が形成され、この荷室部3は、車両用シートS1の収納動作によって利用可能なサイズになるまで拡張されるようになる。
【0029】
以上までに説明してきた通り、車両用シートS1は、その姿勢を着座姿勢及び収納姿勢に切り替え可能に構成されており、さらに、着座姿勢からヘッドレスト30のみを前方に倒した姿勢への切り替えや、収納姿勢からシートバック20のみを起こした姿勢への切り替えも可能である。こうした多彩なシートアレンジは、車両用シートS1に具備された種々の駆動機構(具体的には、ヘッドレスト回動機構50、シートクッション跳ね上げ機構60、シートバック倒伏機構70等)によって実現されるものである。以下、車両用シートS1のシートアレンジを実現するための構成について説明する。
【0030】
なお、以下の説明中、シートクッション10、シートバック20、及びヘッドレスト30の着座位置とは、車両用シートS1の姿勢が着座姿勢にある際のシートクッション10、シートバック20、及びヘッドレスト30の位置である。また、シートクッション10の跳ね上げ位置とは、車両用シートS1の姿勢が収納姿勢にある際のシートクッション10の位置であり、シートバック20及びヘッドレスト30の倒れ位置とは、それぞれ、車両用シートS1の姿勢が収納姿勢にある際のシートバック20及びヘッドレスト30の位置である。
【0031】
<<車両用シートS1の基本構成>>
車両用シートS1のシートアレンジを実現するための構成を説明するにあたり、車両用シートS1の基本構成について説明する。車両用シートS1は、前述したように、シートクッション10と、シートバック20と、ヘッドレスト30とを備えている。
【0032】
シートクッション10は、
図3に示すクッションフレーム11に表皮材を取り付けることにより構成される。表皮材の取り付けは、表皮材の端末に縫製された不図示のトリムコードをクッションフレーム11の外縁に掛止することによって行われる。
【0033】
また、シートクッション10の下部には、
図4に示すシートクッション跳ね上げ機構60が配設されている。シートクッション跳ね上げ機構60は、車体フロア2上に固定されており、シートクッション10を支持すると共に、車両用シートS1を収納するにあたり、シートクッション10を着座位置から跳ね上げ位置に向けて跳ね上げるものである。
つまり、シートクッション10は、シートクッション跳ね上げ機構60を介して車体フロア2上の着座位置に固定され、シートクッション跳ね上げ機構60が作動すると、着座位置から跳ね上げ位置に向かって跳ね上がるように構成されている。換言すると、シートクッション10は、着座位置と跳ね上げ位置との間を往復移動することが可能である。
【0034】
なお、シートクッション跳ね上げ機構60は、ストライカロック機構100を備えている。ストライカロック機構100は、車両用シートS1の姿勢が着座姿勢にあるときにシートクッション10を着座位置に固定させるものである。シートクッション跳ね上げ機構60については後に詳述する。
【0035】
シートバック20は、シートバック倒伏機構70によって前方に倒れるように回動するものであり、シートバック20の上端部に設けられている操作部77を乗員が操作することにより、シートバック20のみを単独で前方に倒すことができる。そして、シートバック20は、
図5に示すシートバックフレーム21にクッション材としてのウレタンを重ねて表皮材で覆うことにより構成される。シートバック20のシートバックフレーム21は、シートバックフレーム21の基部をなすパンフレーム22と、シートバックフレーム21の外枠をなすパイプフレーム23とを有する。パンフレーム22は、略矩形状の板金に対して剛性確保のためのビード加工等の加工処理を施すことにより成形される。そして、パンフレーム22の前面には、ヘッドレスト回動機構50やアレンジユニット80が取り付けられている。
【0036】
なお、ヘッドレスト回動機構50は、ピラー33を前方に回動させることにより、ヘッドレスト30を前方に倒す機構であり、乗員が上下方向に沿って収納操作用帯状部材ST1を引っ張る操作により動作させることにより、ヘッドレスト30のみを倒伏させることができる。具体的に説明すると、
図7及び
図8に示すように、ヘッドレスト回動機構50において、乗員によるスライド部材54をスライドさせるため操作を受け付ける収納操作用帯状部材ST1が設けられ、スライド部材54の長手方向一端部54aには収納操作用帯状部材ST1が締結される。そして、乗員が収納操作用帯状部材ST1を引っ張ることにより、スライド部材54がスライドし、これに従動する形でロック部材52が解除位置へ揺動するように形成されている。そして、スライド部材54をスライド移動させることにより、
図9のように、最終的にヘッドレスト30(ピラー33)を前方に倒すことが可能となる。
【0037】
パイプフレーム23は、パンフレーム22を囲うようにパンフレーム22の外縁に沿って配設されており、パンフレーム22と溶接にて接合されている。なお、パイプフレーム23のうち、上下方向において下部に位置する部分と、左右方向において車両外に面する部分とは、シートバック20の厚み方向においてパンフレーム22との間に隙間を設けた状態で配設されている。かかる隙間が形成されている理由は、例えば、シートバックフレーム21に重ねられたクッション材としてのウレタンの端部をパンフレーム22とパイプフレーム23との間に挟み込んで保持するため等である。
【0038】
さらに、シートバックフレーム21の上端部のうち、後述するピラー33の後側に位置する部分には、下向きコの字状のブラケットからなるピラー倒れ規制部25が設けられている。ピラー倒れ規制部25は、ヘッドレスト30が着座位置に位置する時にピラー33の後方への回動(倒れ)を規制する規制部に相当する。なお、ピラー倒れ規制部25は、ピラー33毎に設けられ(すなわち、2個設けられ)、パイプフレーム23の上端部に溶接止めされている。
【0039】
以上のような構成のシートバック20は、その回動軸20bを、車体フロア2に固定されたシートバック支持ユニット90(例えば、
図12参照)の孔部に嵌合させ、シートバック支持ユニット90に回動可能に支持されている。これにより、シートバック20は、車体フロア2に対して前後方向へ回動可能となり、着座位置と倒れ位置との間を移動することが可能となる。なお、本実施形態では、シートクッション10の跳ね上げ動作に連動してシートバック20が前方に倒伏するようになっている。さらに、本実施形態では、シートバック20のみを単独で前方に倒すことも可能である。
【0040】
ヘッドレスト30は、シートバック20(換言すると、シートバックフレーム21)の上方に設けられており、
図6に示す逆U字状の内部フレーム31と表皮材との間に発泡剤を充填することにより構成される。逆U字状の内部フレーム31の両側にある脚部31aは中空状であり、各脚部31aの内部には中空棒状のガイド32を収容する空間が形成されている。ガイド32は、脚部31a内に収容され、内部フレーム31の脚部31aの下端フランジ部31bに設けられた挿入孔(不図示)を通じて進退自在に構成されている。なお、ヘッドレスト30の表皮材には、ガイド32の末端部が表皮材の外側に位置するように通し孔(不図示)が設けられている。
【0041】
以上のような構成のヘッドレスト30において、ガイド32が内部フレーム31の脚部31a内で最も後退した位置に位置している状態(下端フランジ32aを除き、脚部31a内に収納された状態)では、ヘッドレスト30の表皮材のうち、上記の通し孔周りの部分が、内部フレーム31の脚部31aの下端フランジ部31bとガイド32の下端フランジ32aとに挟まれるようになっている。
【0042】
また、本実施形態において、ヘッドレスト30は、金属棒からなる一対のピラー33(
図5参照)がガイド32内に挿入された状態で当該ピラー33に支持され、さらに、各ピラー33はヘッドレスト回動機構50のケーシング51に回動自在に支持されている。
【0043】
そして、ヘッドレスト30は、ヘッドレスト回動機構50により、シートバック20の上方で起立した状態から前方に約90度倒れた状態になるまで回動することが可能である。なお、本実施形態では、シートクッション10の跳ね上げ動作に連動してヘッドレスト30が前方に倒れるように回動することとなっており、さらには、ヘッドレスト30のみを単独で前方に倒すことも可能である。
【0044】
<<シートクッション跳ね上げ機構>>
シートクッション跳ね上げ機構60は、乗員が車両用シートS1を収納するために行う収納操作が受け付けられると、車両用シートS1を収納するための開始動作としてシートクッション10を跳ね上げ位置に向けて跳ね上げるものである。このシートクッション跳ね上げ機構60は、不図示の樹脂カバーで覆われており、シートクッション10が着座位置に位置する際にはシートクッション10の下方位置に位置するように車体フロア2上に設置されている。
【0045】
シートクッション跳ね上げ機構60は、
図4、
図10、
図11に示すように、2つのサブユニットから構成されており、一方のサブユニットは、車体フロア2に取り付けられる取付ユニット110であり、他方のサブユニットは、取付ユニット110上に配置され取付ユニット110(換言すると、車体フロア2)に対してスイング動作(回動動作)を実行可能な可動ユニット120である。
【0046】
取付ユニット110は、上面視でL字状の外観をなした取付板111を主たる構成要素として有する。取付板111のうち、車両1の前後方向に沿って延びた取付部材としての第1板部112は、車体フロア2に締結されたボルトBo及びワッシャWsによって車体フロア2に固定されている(
図11参照)。ここで、第1板部112の後端部には長穴状の取付穴114が形成されており、予め車体フロア2に締結されたボルトBo及びワッシャWsが取付穴114に嵌め込まれることにより、取付ユニット110が車体フロア2上に配置される。
【0047】
なお、取付穴114の長手方向の中間部114bは、前端部114aや後端部114cに比して幾分幅広となっている。かかる構成を利用し、ボルトBo及びワッシャWsを取付穴114に嵌め込む際には、先ず取付穴114の長手方向の中間部114bにボルトBo及びワッシャWsを通し、その後に、ボルトBoが取付穴114の長手方向の前端部114aに嵌合するように取付ユニット110の位置をずらして取付ユニット110の位置決めを行う。
【0048】
また、第1板部112の長手方向の略中央部には、ストライカロック機構100のロック部101が取り付けられている。このロック部101は、鉤状のロック片102と、ロック片102を揺動可能な状態で収容するハウジング103とを有している。ロック片102が後述のストライカ105と係合している状態では、シートクッション10が着座位置にて車体フロア2上に固定されていることになる。一方で、ロック片102が揺動すると、ストライカ105は、ロック片102との係合状態を脱するようになり、シートクッション10は、車体フロア2上に固定された状態から解放されて可動状態となる。
【0049】
さらに、第1板部112は、その一側部に立ち壁部112aを有し、立ち壁部112aのうち、ロック部101が取付位置よりも幾分前方位置に、前述した収納操作用帯状部材ST2を通すためのスリット112bが形成されている。このスリット112bに通された収納操作用帯状部材ST2は、第1板部112と交差するように第1板部112上に配置される。また、収納操作用帯状部材ST2の端部(第1板部112から見て車両1の内側の端部)にはケーブルCの一端部が接続されており、当該ケーブルCを配策する際に配索経路を規定するための経路規定部112cが第1板部112の側部(立ち壁部112aが位置する側とは反対側の側部)に適宜な間隔で設けられている。
【0050】
そして、上記のケーブルCの他端部は、前述のロック片102と連結している連結片104に接続されている。これにより、収納操作用帯状部材ST2が引っ張られると、ケーブルCが連結片104を介してロック片102を引っ張るようになる結果、ロック片102が揺動し、ロック片102とストライカ105との係合が解除されることになる。
【0051】
一方、取付板111のうち、車両1の左右方向(車両用シートS1の幅方向)に沿って延びた固定部材としての第2板部113は、可動ユニット120の土台をなす部分であり、その長手方向中央部には、シートクッション10に着座した乗員が車両1の衝突事故時に腰ベルトの下に潜り込むサブマリン現象を防止するためのサブマリンブラケット115が設けられている。
【0052】
サブマリンブラケット115は、第2板部113の上面から立ち上がる板状部材からなる一対の立設部115aと、該一対の立設部115aとを連結する連結部115bとを備えている。
このように、サブマリンブラケット115は一対の立設部115aを備えているため、取着される第2板部113を補強し、乗員からの荷重に対する剛性を向上させることができる。さらに、一対の立設部115aは連結部115bによって連結されているため、立設部115a、連結部115b、第2板部113とで閉断面構造を構成する。したがって、立設部115aのみを備えた構成と比較して、さらに第2板部113の剛性を向上させることができる。
【0053】
サブマリンブラケット115の立設部115aは、後述のリンク121の回動軸126Aを挟むように前後方向に配設される。すなわち、側面視で一対の立設部115aの間に、回動軸126Aが配設される。このように、大きな荷重が加わる回動軸126Aを立設部115aによって挟むことにより、回動軸126A周辺の剛性を向上させ、リンク121を安定して回動させることが可能である。
【0054】
(可動ユニット120の構成)
可動ユニット120は、略門型の構造を有し、取付板111の第2板部113にボルト止めされる。可動ユニット120は、一対のリンク121と、一対のガイド部材としてのパイプロッド122と、シートクッション10を取り付けるための取付ブラケット124と、取付ブラケット124に架設され、リンク121間を連結する連結バー123と、リンク121及びパイプロッド122を回動自在に支持する一対の支持機構125とを有する。これらの構成要素はユニットとして一体化するように組み合わされており、取付板111の第2板部113に取り付ける際にはユニットとして一体的に取り付けることになる。
【0055】
左右方向(シート幅方向)に離間して配設された一対のリンク121の各々は、板金部材にビード加工等の処理を施して構成される長尺体であり、可動ユニット120の両側部に位置する。各リンク121は、その下端部に形成された通し穴(不図示)に回動軸126Aが嵌合することにより回動自在に支持されている。また、各リンク121の上端部には、リンク121間を連結する連結部材としての連結バー123が取り付けられている。さらに、各リンク121の上端部には、その外側表面に取付ブラケット124が取り付けられている。なお、連結バー123及び取付ブラケット124は、リンク121の上端部に共締形式でボルト止めされることによって取り付けられている。
【0056】
取付ブラケット124は、シートクッション10が固定される取付面部124aと、該取付面部124aの側方端部から延出した側面フランジ部124bとを備えている。側面フランジ部124bは、取付面部124aの左右方向いずれかの端部から延出して形成されており、取付面部124aに対して略垂直に折曲されている。
【0057】
側面フランジ部124b(より詳細には、側面フランジ部124bの内側面)には、リンク121の上端部、連結バー123の端部、及びパイプロッド122の上端部が固定されている。このように、側面フランジ部124bの内側面(車両用シートS11のシート幅方向において内側の面)にリンク121、連結バー123及びパイプロッド122の端部が取着されているため、リンク121、連結バー123及びパイプロッド122の取着部分が一か所に集中する。したがって、上記のように複数の部材を取り付ける部分においても、各部材の取着部分を大型化することなく、省スペース性が高い。
【0058】
そして、側面フランジ部124bにおいて、連結バー123の固定位置とパイプロッド122の固定位置との間には、凹部124cが形成されている。このように、側面フランジ部124bにおいて凹部124cが形成されているため、凹部124cが形成されていない場合と比較して、取付ブラケット124を軽量化することができる。
【0059】
一方、取付面部124aは平滑な平面ではなく、左右方向に沿って折り曲げられた折曲部124dを備えている。このように、取付ブラケット124の取付面部124aを平面とするのではなく、折曲部124dを設けることにより、取付ブラケット124の剛性を向上させることができる。
【0060】
取付ブラケット124に取着された一対のリンク121の上端部同士間の距離は、下端部同士間の距離よりも大きく形成されている。その結果、一対の取付ブラケット124間の距離もまた大きく確保することができるため、シートクッション10を安定して支持することができる。
【0061】
リンク121は、長手方向の中間部に第1の折曲部121cが形成されている。第1の折曲部121cは、リンク121の上端部が左右方向に拡大するように上面視Z字状に折曲されている。この構成により、対になって配設されるリンク121は、上端部間の距離が下端部間の距離よりも大きくなる。
【0062】
また、リンク121には、第1の折曲部121cに連続して形成された第2の折曲部121dが備えられている。このように、第1の折曲部121cだけでなく、第2の折曲部121dを備え、さらに第1の折曲部121cと第2の折曲部121dとが連設されることにより、リンク121の剛性が向上する。
また、第1の折曲部121cと、第2の折曲部121dとが交差するように連続して形成されているため、リンク121の剛性をさらに向上させることができる。
【0063】
さらに、
図15に示すように、リンク121の下端部(回動軸126Aの近傍)には、補強用カラー121eが一体に形成されており、回動軸126A近傍が補強されているため、リンク121が安定して回動することが可能である。さらに、この補強用カラー121eの左右方向(シート幅方向)の外側においてベースブラケット127が備えられている。なお、ベースブラケット127の構成は、後述する。
【0064】
一対のリンク121間の距離は、シートバック20の上方に備えられたヘッドレスト30の幅よりも大きく形成されている。また、リンク121の第1の折曲部121cからリンク121の下端部までの距離は、ヘッドレスト30の厚みよりも大きく形成されている。
上記構成により、車両用シートS11を収納状態とするとき、ヘッドレスト30をリンク121の間に収納することが可能となるため、車両用シートS11をコンパクトに収納することが可能となる。
【0065】
一対のパイプロッド122の各々は、前後方向においてリンク121と略平行に並べて配置される長尺体であり、その下端部に形成された通し穴(不図示)に回動軸126Bが嵌合することにより、リンク121の回動方向と同じ方向に回動可能に支持されている。また、各パイプロッド122の上端部には取付ブラケット124がピン止めされている。つまり、本実施形態では、シートクッション10が取付ブラケット124を介して一対のリンク121及び一対のパイプロッド122に支持されることになる。そして、各パイプロッド122は、リンク121の回動に従動して、リンク121の回動方向と同一方向に回動することになる。
【0066】
シートクッション10が着座姿勢にあるとき(すなわち、
図10の状態のとき)、取付ブラケット124に固定されるパイプロッド122の端部は、取付ブラケット124に固定されるリンク121の端部よりも前方に配置されている。このように、剛性の高いリンク121をより後方側に配設することにより、シートクッション10を着座姿勢に復帰させる際、リンク121及びパイプロッド122を安定して回転させることが可能である。
【0067】
パイプロッド122は、リンク121と略平行に配設される部材であるが、リンク121よりも短く形成されている。そして、リンク121の回動軸126Aと、パイプロッド122の回動軸126Bとが前後方向に並んで略等しい高さで組みつけられることにより、シートクッション10を収納する際、リンク121及びパイプロッド122が安定して回動可能である。
【0068】
また、パイプロッド122は主として金属製の線状部材または管状部材によって構成される。管状部材によってパイプロッド122を形成すると、剛性が向上するため好ましい。なお、パイプロッド122の両端部は、押圧して偏平形状とすることにより、他の部材との固定が容易になる。このように、パイプロッド122を線状部材や管状部材によって構成することにより、安価に製造可能である。また、パイプロッド122の構成が簡素化されるため、製造工程が煩雑になることがなく、好適である。
【0069】
さらに、パイプロッド122はその一部が湾曲して形成されている。そして、その湾曲方向はリンク121が配設された側とは反対側に膨出するように形成されている。この構成により、着座位置から跳ね上げ位置までの可動範囲内において、リンク121とパイプロッド122との接触を避けることができる。その結果、より安定してリンク121とパイプロッド122とを回動させることができる。
【0070】
パイプロッド122は、シートクッション10の収納時において、連結バー123よりも下方に配置されている。より詳細には、取付ブラケット124に取着されたパイプロッド122の端部は、連結バー123よりも下方に配置される。このように、パイプロッド122を連結バー123の下方に配設することにより、シートクッション10の収納時、パイプロッド122の周辺が大型化することなく、好適である。
【0071】
さらに、一対のリンク121及びパイプロッド122のうち、車両1の外に面する側のリンク121及びパイプロッド122に取り付けられた取付ブラケット124の下面(より詳細には、取付面部124aに形成された折曲部124d)には、前述したストライカロック機構100のストライカ105が取り付けられている。そして、リンク121及びパイプロッド122が回動軸126A,126Bから見て後方に倒れるように回動すると、上記のストライカ105が、取付板111(より具体的には第1板部112)に設けられたロック部101のロック片102に係合可能な位置に到達することになる。
【0072】
ストライカ105は、側面フランジ部124bのリンク121とパイプロッド122が取着された面に対し、反対側に取着されている。そして、側面フランジ部124bの左右方向(シート幅方向)内側にリンク121とパイプロッド122が固定されており、側面フランジ部124bの左右方向(シート幅方向)外側にストライカ105が取り付けられている。このように、ストライカ105が左右方向(シート幅方向)外側に備えられているため、リンク121及びパイプロッド122に対してストライカ105が干渉することがない。さらに、リンク121及びパイプロッド122に対してストライカ105が外側に備えられているため、シート幅方向を構成する一対のリンク121間の距離、及び一対のパイプロッド122間の距離が大きくなることがなく、好適である。
【0073】
ストライカ105は、水平方向に延在するように折曲され、ロック片102に係合するフック部105aと、フック部105aの両端から取付ブラケット124側に延設され、取付ブラケット124に取着される取着部105bとを備えている。そして、フック部105aは、取付ブラケット124(より詳細には、側面フランジ部124b)に取着されたリンク121の端部と、パイプロッド122の端部との間に配設されている。
【0074】
このように、ストライカ105のフック部105aが、回動可能に取着されたリンク121の端部とパイプロッド122の端部との間に配設されるため、乗員がシートクッション10に着座した際、安定してその着座荷重を受け止めることができる。
【0075】
また、ストライカ105の取着部105bが取付ブラケット124の折曲部124dに固定されている。より詳細には、ストライカ105の取着部105bの端部(上端)は、取付ブラケット124の折曲部124dに溶接等の手法により固着される。したがって、ストライカ105の取着部105bが剛性の高い折曲部124dに固定されるため、乗員の着座荷重に対する剛性がさらに向上する。なお、取付ブラケット124に固着される取着部105bの端部は、取付ブラケット124に沿うように屈曲され、この屈曲された部分が取付ブラケット124の折曲部124dに固定されると好ましい。
【0076】
(支持機構125の構成)
一対の支持機構125の各々は、リンク121及びパイプロッド122を回動可能に支持するものであり、その下方には、第2板部113が備えられている。支持機構125は、
図4、
図10、
図11に示すように、前述の回動軸126A,126Bの他、ベースブラケット127と、渦巻きバネ128と、ダンパーゴム129とを有する。
【0077】
ベースブラケット127は、上面視で略Z字状の板金部材であり、可動ユニット120の土台をなし、取付板111の第2板部113にボルト止めされている。また、ベースブラケット127のうち、車両1の前後方向に沿って延びている部分は立ち壁部127aになっており、この立ち壁部127aに回動軸126A,126Bが固定されている。
【0078】
そして、リンク121の回動軸126Aと、パイプロッド122の回動軸126Bとは、同一水平面上に備えられている。より詳細には、回動軸126A及び回動軸126Bの軸芯(回転中心軸)が同一水平面上に備えられている。このように、回動軸126Aと回動軸126Bとが略同一水平面上に備えられているので、高さ方向の大型化を抑制することができる。
【0079】
リンク121とパイプロッド122は、立ち壁部127aの左右方向(シート幅方向)内側に固定されている。このように、リンク121とパイプロッド122を立ち壁部127aの内側に取着することにより、リンク121及びパイプロッド122を外力から保護することができる。また、車両用シートS11のシート幅方向の大きさを大型化することなく、好適である。
【0080】
また、ベースブラケット127は、第2板部113(車体フロア2)に固定される固定部127bもまた備えており、立ち壁部127aは、固定部127bから略垂直に折曲して形成されている。
【0081】
固定部127bは、立ち壁部127aを介して二箇所に備えられており、それぞれの固定部127bはボルト等の係止手段によって第2板部113(車体フロア2)に固定される。このとき、係止手段は対角線上に配置され、その対角線上にリンク121の回動軸127Aが配置されるように形成されている。このような構成とすることにより、リンク121を安定して回転させることが可能である。
【0082】
さらに、一方の固定部127bに締結された係止手段は、上記のサブマリンブラケット115の一対の立設部115aのうち、前方に配設された立設部115aと略同一線上に取着されている。より詳細には、前方に配設された立設部115aと第2板部113との接合点と、固定部127bに締結された係止手段とが略同一線上に配設されている。そして、立設部115aの接合点と、係止手段とを通る直線は、リンク121の延在方向に対して略垂直となるように構成されている(
図15参照)。
【0083】
また、他方の固定部127bに締結された係止手段は、サブマリンブラケット115の一対の立設部115aのうち、後方に配設された立設部115aと略同一線上に取着されている。より詳細には、後方に配設された立設部115aと第2板部113との接合点と、固定部127bに締結された係止手段とが略同一線上に配設されている。そして、立設部115aの接合点(接合部分)と、係止手段とを通る直線は、リンク121の延在方向に対して略垂直となるように構成されている。
【0084】
このように、サブマリンブラケット115の立設部115aと、ベースブラケット127を固定する係止手段とが同一直線状に係止されていることにより、左右に離間して配設された一対のベースブラケット127間の第2板部113が補強されるため、荷重に対する剛性を向上させることができる。
【0085】
また、ベースブラケット127は、渦巻きバネ128と前後方向において略重なる位置に配設されている。このように、ベースブラケット127と渦巻きバネ128とが高さ方向において重ならない構成であるので、支持機構125をコンパクト化することができる。
【0086】
渦巻きバネ128は、
図15に示すように、開口部113aの上方に備えられている。換言すると、開口部113aは、渦巻きバネ128と上下方向に対向する位置に備えられている。このような構成とすることにより、渦巻きバネ128と第2板部113とが接触(緩衝)することなく、高さ方向において、渦巻きバネ128を第2板部113に対して接近させることができる。したがって、渦巻きバネ128の取り付け高さが大きくなることがなく、好適である。
さらに、開口部113a内に渦巻きバネ128を配置してもよい。渦巻きバネ128を開口部113a内に配設すると、渦巻きバネ128が取り付けられる部分が高さ方向においてさらにコンパクト化されるため、好適である。
【0087】
また、第2板部113において開口部113aを形成することにより、渦巻きバネ128と第2板部113との接触を避けることができる。その結果、渦巻きバネ128と第2板部113とが接触することにより生じる異音の発生を防止することが可能であり、好適である。
【0088】
ダンパーゴム129は、リンク121が渦巻きバネ128の付勢力により前方に回動して前方限界位置に至った際にリンク121の前端と当接して、リンク121に生じる衝撃を吸収するものである。ダンパーゴム129は、リンク121の、回動支点となる部位よりも幾分前方に位置するように、前述のベースブラケット127に固定されている。
【0089】
なお、本実施形態では、ダンパーゴム129へのリンク121の当接(衝突)によるダンパーゴム129の切損を防止するため、リンク121の長手方向において、ダンパーゴム129に当接する位置にある部分(以下、当接部位121a)を折り曲げて、板厚を大きくし、ダンパーゴム129に対して当接する面積を大きく確保している。したがって、当接部位121aをダンパーゴム129に対して安定して接触させることができる。また、当接部位121aを折り曲げることにより、前端に丸みを帯びさせることができるため、ダンパーゴム129に当接部位121aが当接した際、ダンパーゴム129が損傷することを防止することができる。
【0090】
一対の支持機構125のうち、車両1の外側に位置する支持機構125には、渦巻きバネ128が備えてられている。渦巻きバネ128は、リンク121を前方に倒すように付勢する付勢部材である。渦巻きバネ128の一端部は、回動軸126Aに係止されており、他端部は、リンク121が後側に倒れている状態(換言すると、シートクッション10が跳ね上がる前の状態)では、リンク121の側表面から突出した突出部(不図示)に係止される。
【0091】
上記の構成により、シートクッション10は、ストライカ105とロック片102とが係合した状態にある際には、リンク121を介して渦巻きバネ128の付勢力を受けながらも(換言すると、渦巻きバネ128の付勢力に抗して)着座位置に保持されるようになる。一方で、ストライカ105とロック片102との係合が解除されると、渦巻きバネ128の付勢力により、リンク121が前方に回動する結果、シートクッション10が跳ね上げ位置に向けて跳ね上がるようになる。
【0092】
なお、
図4、
図10、
図11に示すケースでは、一対のリンク121のうち、一方のみに対して渦巻きバネ128を設けることとしたが、これに限定されるものではなく、両方のリンク121に対して、それぞれ、渦巻きバネ128を設ける構成であってもよい。
【0093】
さらに、本実施形態では、一方のリンク121(車両1の外側に位置する方のリンク121)の長手方向中途位置には、差込孔121bが形成されており、当該差込孔121bにケーブルCの一端部が差し込まれている。このケーブルCの他端部は、アレンジユニット80に接続されている。したがって、シートクッション10を跳ね上げるにあたって、上記のリンク121が回動をすることにより、リンク121に連結されたケーブルCが牽引され、最終的には、当該ケーブルCが接続されたアレンジユニット80では、ケーブルCの牽引力を利用してユニット各部が作動するようになる。
【0094】
<<第1板部112の構成>>
着座姿勢と、前方に傾倒させた状態で収納する収納姿勢と、に切り替え可能な車両用シートS1において、シートクッション10の取付構造に関し、
図13及び
図14を参照して、以下、説明する。
【0095】
上記取付板111は、取付部材としての第1板部112と、第1板部112と重ねられて配設される固定部材としての第2板部113を備え、上記車体フロア2に対して組み付けられる。また、車体フロア2側に予め備えられた係止部材としてのボルトBo及びワッシャWsと、第1板部112に形成された係止部としての取付穴114とが係合し、ボルトBoが締結されることにより、第1板部112が車体フロア2に固定される。
【0096】
取付穴114は、第1板部112の後端部に形成された長孔であり、その長軸方向は、第1板部112の長手方向に沿って形成されている。
そして、取付穴114は、
図13に示すように、その長手方向の中間部114bが、前端部114aや後端部114cに比して幾分幅広となっている。さらに詳細には、前端部114aの幅(
図13中のaで示される幅)が最も小さく、次に後端部114cの幅(
図13中のcで示される幅)、さらに中間部114bの幅(
図13中のbで示される幅)の順に次第に大きくなるように取付穴114が形成されている。
【0097】
この最も幅が大きい中間部114bは、その内部にワッシャWsが挿通可能な程度の幅を備えるように形成されている。また、後端部114cの幅は、ボルトBoの頭部が挿通可能なように形成されている。さらに、前端部114aの幅は、ボルトBoの軸部が挿通可能であって、且つワッシャWs及びボルトBoの頭部が挿通不可能となるような幅で形成されている。
【0098】
したがって、取付穴114を、内部の幅が均一に形成された長孔とする場合よりも、上記のように内部の幅が異なる構成とすることにより、ボルトBoやワッシャWsを挿通させることが可能となると共に、ボルトBo及びワッシャWsと、車体フロア2との間で取付穴114(第1板部112)を挟んで係止することが可能となる。その結果、車体フロア2に対して第1板部112の組み付けを容易に行うことが可能となる。
【0099】
そして、上記取付穴114の少なくとも一部は、
図14に示すように、車体フロア2に当接して取り付けられる取付面部112dから立ち上がるように折曲して形成された斜面部112eに形成されている。より詳細には、取付穴114のうち、最も幅広に形成された中間部114bが斜面部112eに重なるように形成されている。なお、斜面部112eよりもさらに後方側に延設された水平部112fは、略水平な平面となるように形成されている。
【0100】
このように、中間部114bが斜面部112eにかかるように形成されていることにより、車体フロア2から略垂直に上方へ突出したボルトBoに向かって第1板部112を車体フロア2上でスライドさせることにより、取付穴114とボルトBoを係合させることができる。
【0101】
そして、前端部114aは、取付面部112dにおいて形成されており、この前端部114aの適当な位置にボルトBoの軸部を挿通して締結することにより、車体フロア2に第1板部112が取着される。
【0102】
従来技術では、車体フロア2に予め形成されているボルト穴に対して、略円形の穴が設けられたブラケットを介して車両用シートS11(S1)を取り付ける技術が多く用いられていた。そして、このとき、車両用シートS11(S1)は重量物であるため、車体フロア2の組み付け位置に正確に載置することが難しく、取付作業を容易に行うことができないという問題点があった。
【0103】
しかし、本発明の車両用シートS11(S1)の取付構造によれば、一度、車体フロア2上に取り付けられたボルトBo及びワッシャWsに対して取付穴114を挿通させた状態で取付板111(第1板部112)を載置してからスライドさせて位置調整が可能となる。その結果、容易に車両用シートS11(S1)の組み付け作業を行うことが可能となる。
【0104】
なお、第1板部112の上方には、予めシートクッション10(さらに、取付ユニット110及び可動ユニット120)が取着されているため、ボルトBoの締結前(車体フロア2に第1板部112を載置しただけの状態において)は、第1板部112はシートクッション10の荷重によって、前方に傾倒しやすい構成となっている。したがって、車体フロア2側に取着されたボルトBoが、取付穴114の前端部114aに挿通して係合することにより、第1板部112の前方への傾倒を防止することができ、その結果、車体フロア2に対して容易に位置決めや組み付け作業を行うことが可能である。
【0105】
さらに、第1板部112は、その側方(より詳細には、取付穴114が形成された部分の側方)において、上方に折曲されたフランジ112gを備えている。
このように、取付穴114の近傍にフランジ112gを設けることにより、取付穴114の近傍の剛性が低下することなく、好適である。
【0106】
また、第1板部112において、フランジ112gだけでなく、取付面部112d、斜面部112eを備えることにより、第1板部112は凹凸を備える構成となるため、第1板部112の外力に対する剛性が向上する。その結果、車体フロア2に組み付ける際、高い剛性を備えることができる。
【0107】
さらに、第1板部112において、取付穴114が形成された部分(後端部)の幅は、他の部分(具体的には、取付面部112d)よりも幅広に形成されている。そして、当該部分には、ケーブルC等を取着するためのクリップ等が挿通可能な取着孔112hが複数形成されている。
【0108】
このように、取付穴114が形成された部分の第1板部112の幅を広く形成することにより、取付穴114によって第1板部112の剛性が低下することを防止する。
さらに、幅広に形成した部分(主として水平部112f)に取着孔112hを備えることにより、車両用シートS11において備えられる他の部材(例えば、ケーブルC)の組み付けを行うことができる。したがって、第1板部112の後端部に取付穴114を設け、その部分を幅広に形成することにより、取付穴114に起因する剛性の低下を防止するだけでなく、その他の部材の配設を好適に行うことができる。
【0109】
さらにまた、第1板部112には、斜面部112eが備えられているが、さらに後方の水平部112fは車体フロア2から離間して略水平に延設されている。したがって、第1板部112の斜面部112eよりもさらに後方側(水平部112f)は、車体フロア2に対して所定距離離間して配設されているため、クリップ等のその他の部材を配設する空間が確保されている。したがって、第1板部112の後端部において、取着孔112hを形成すると、斜面部112eにより水平部112fと車体フロア2との間に形成される空間が有効に活用されるため好ましい。