【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の課題を解決するために、透析装置は、ダイアライザと接続されたチューブ、該チューブ内へ医薬品を送達するための手段、および該チューブと該ダイアライザとを通した血液輸送のための血液ポンプを含んでいる。さらに、本透析装置は、少なくとも1つの医薬品をポンプの吸引作用またはポンプの加圧作用または気体もしくは液体の過剰圧によって送達するための手段を含んでいる。
【0014】
少なくとも1つの医薬品の送達はポンプまたは容器内の過剰圧によって生成される流れによって行われるので、送達は自動的である。さらに、医薬品を自動的に投与するために別のポンプもしくはモータは必要とされず、したがって簡単な態様で投与される。
【0015】
本発明の1つの実施形態では、少なくとも1つの薬剤のためのチューブ内への入口通路の断面は小さいので、この医薬品の総量を投与するためには少なくとも5分間、好ましくは少なくとも10分間を要する。透析装置のマニホールドは、医薬品のための入口を含むことができる。典型的な医薬品は、Venofer(登録商標)のような鉄製剤、EPO、活性型ビタミンD、瘻を洗浄するための薬剤および/または凝血を防止するためのヘパリンのような薬剤である。この実施形態は、スイスの会社であるVifor(International)AG製のVenofer(登録商標)のような医薬品において、短時間内、例えば1分間以内の急速様式で当該医薬品の総量を投与することが許容されていない場合に、特に有用である。本発明のこの実施形態では、手動またはモータ駆動ピストンなどによりVenofer(登録商標)のような医薬品を段階的に投与することは必要とされない。この実施形態では、モータ駆動ピストンを必要とせずにヘパリンのような医薬品を継続的に投与することもまた可能である。この場合には、チューブ内への入口通路は、総ヘパリン量の送達が数時間を必要とするような小さな断面積を含むことができる。
【0016】
少なくとも1つの医薬品の流量を制御するために、チューブ内への医薬品用入口は、柔軟性チューブを含むことができる。そこで、流路の断面積を減少させるために該柔軟性チューブを締め付けることができる。
【0017】
例えば、透析手技の終了時には、スタッフメンバーは、少なくとも1つの医薬品の送達を開始または始動しさえすればよい。例えば、同時に、好ましくは透析手技の開始時に、上述の医薬品を含有する全容器もしくはシリンジを該透析装置と接続することができる。1つの医薬品の送達の始動は、対応する弁の開放によって発生させることができる。
【0018】
もはや、医薬品を手動で、追加のモータまたは追加のポンプによって投与する必要はない。医薬品を含有する全容器もしくはシリンジを処置開始時に透析装置と接続すれば、スタッフメンバーは、全透析工程中にこの状況を制御することができる。これは、医薬品の投与を忘れない、または1つの医薬品を2回適用しないために役立つ。これらの理由から、本発明は、費用を節約し、少なくとも1つの医薬品の投与を促進する。
【0019】
透析を実施するための医薬品を含有する全容器もしくはシリンジが処置開始時に透析装置と接続されると、送達の始動を制御装置によって自動的に管理することができる。この実施形態は、さらに透析装置の取り扱いも容易にする。
【0020】
本発明の1つの実施形態では、透析装置は、医薬品の送達を制御するための少なくとも1つの膜バルブを含んでいる。膜バルブは、極めて衛生的および漏れ防止型である。膜バルブは、自動的に開閉させることが容易である。
【0021】
膜バルブは、その全域で伸縮する膜を有するハウジングを含んでいる。膜は、中間分離リッジもしくはシートを有する流れ開口部に向かって偏向することができる。膜が各々シートである分離リッジに対して偏向すると、流れ開口部を通る流れ連絡(flow communication)は中断される。この偏向は、膜の反対側への圧媒体の適用後、または手動で膜の反対側に向けてボルトを移動させることによるいずれかで実行できる。ボルトは、例えばハウジング内にネジ入れしたモータ駆動スピンドルによって、またはより好ましくは磁力によって移動させられる。好ましくは、スピンドルもしくはボルトは透明材料から製造されるので、膜の位置は、スピンドル内のボルトの位置をチェックすることによって視認できる。ハウジング内の流体は、弁の可動パーツと接触することはあり得ない。この理由から、弁は極めて衛生的である。さらに、膜は、シートもしくは分離リッジの方向への膜の移動が流路の断面積を減少させるので、弁を通る流量の制御を許容する。そこで本発明のこの実施形態は、医薬品の送達期間を管理すること、特に増加させることを許容する。
【0022】
本発明の1つの実施形態では、透析装置もしくは該透析装置のマニホールドは、複数の膜バルブのための1つ以上のハウジングを含んでいるが、複数のハウジングを被覆するのは1枚の膜だけである。この実施形態は、複数の液体医薬品の投与を制御するためにスペースを取らず、費用を節約する複数の膜バルブの構造を可能にする。
【0023】
本発明の1つの実施形態では、少なくとも1つの医薬品は、該少なくとも1つの医薬品の容器が血液ポンプの入口側のチューブと接続されており、該容器が折り畳み可能であるので、血液ポンプの吸引作用によって投与される。この場合、容器は追加の気体を含有していてはならず、該医薬品の投与中にまた別の開口部を含んでいてはならない。血液ポンプは、入口部位のチューブ内で吸引力を生成する。この吸引力のために、折り畳み可能な容器の液体含量は例えば対応する弁が開放された後にチューブ内へ流入する。投与の経過において容器と環境との間にはまた別の流体接続が存在しないので、投与は自動的に停止する。気体は、医薬品容器が液体医薬品しか含有していないので、チューブに到達することができない。
【0024】
容器が各々折り畳み可能ではあるが柔軟性ではない場合は、容器が液体医薬品ならびに既定気体量を含有していれば十分な可能性がある。さらに、容器は、少なくとも医薬品の投与中にはまた別の開口部を含んでいてはならない。この場合、液体医薬品は、該液体医薬品の投与を始動する前に容器の出口に接していなければならない。この結果を達成するために、容器の出口は、容器がチューブと接続されている場合は、好ましくは底部にある。投与の経過において、容器内では沈降が発生し、時期が来ると投与が停止される。容器が十分な液体医薬品を含有している場合は、容器内の沈降力が前記吸引力と対応すると該医薬品の投与が停止されるので、空気のような気体はチューブには到達しない。
【0025】
そのような容器は、医薬品を含有する第1容器を気体を含有する第2容器と接続することによって提供することができる。第1医薬品容器は、ポンプの入口側のチューブと接続されている。この実施形態は、シリンジまたはバイアルのような所望の医薬品を含有する従来型医薬品容器の使用を許容する。
【0026】
従来型容器がシリンジである場合は、シリンジのニードルは、例えば対応する注射部位を備えるポンプの入口側のチューブと接続されなければならない。気体を含有する第2容器は、シリンジの反対側と接続されなければならない。第2気体容器とシリンジとの接続を提供するために、第2容器は、シリンジのピストンを貫通するニードルの形態にある出口を含むことができる。
【0027】
従来型容器は、国際公開第2007/082325号から公知であるような穿刺可能なゴム栓を備えるアンプルまたはバイアルであってよい。入口通路および出口通路を備えるニードルを含むそのようなアンプルまたはそのようなバイアルのためには周知の従来型アダプタが存在する。気体を含有する第2容器は、ニードルの入口通路と接続されなければならない。ニードルの出口通路は、ポンプの入口側のチューブと接続されなければならない。アダプタのニードルは、前記接続を提供するためにゴム栓に貫通する。
【0028】
そのような方法では、第1従来型容器、つまりポンプの入口側のチューブと接続された液体医薬品を含有しているシリンジまたはバイアルが存在する。さらに、気体を含む第2容器ならびに第1および第2容器の間の接続が存在する。液体量と気体量との関係は、該医薬品の投与の時期が来ると自動的に停止するような様式で調整されるが、これは気体ではなく医薬品の所望量がチューブ内に流入することを意味する。医薬品の投与は、第2容器内の沈降力が前記吸引力と同等になると、または対応すると停止する。
【0029】
本発明の1つの実施形態では、前記第1および前記第2容器との間の接続は、投与および/または対応する流量を制御するために減圧弁を含んでいる。追加して、または代わりに、医薬品容器の出口と透析装置のチューブ内への入口との間の接続は、投与および/または対応する流量を制御するための減圧弁を含むことができる。
【0030】
穿刺可能なゴム栓を備える従来型アンプル(バイアル)のための従来型アダプタは、典型的には雌ルアーロックを含んでいる。他方の側では、透析装置は、さらにまた典型的には雌ルアーロックを備える注射部位も含んでいる。この理由から、本透析装置は、2つの雌ルアーロック間を接続させる少なくとも1つの接続ピースを含むことができる。
【0031】
本発明のまた別の実施形態では、注射部位は、前記接続ピースを回避するために雄ルアーロックを含んでいる。または、バイアル用のアダプタは、前記接続ピースを回避するために雄ルアーロックを含んでいる。
【0032】
従来型容器がシリンジの場合は、気体容器へ接続するためにニードルを用いた穿刺中のシリンジのピストンの移動を回避することが必要である。この理由から、穿刺用ニードルはスレッドを含むことができる。そこで、ニードルをピストン内へ下向きに回転させることができるので、それによりピストンのあらゆる位置ずれが回避される。代替法として、ニードルは、逆打ちプライヤを含むことができる。医薬品を含有する従来型シリンジのピストンは、隙間を含んでいる。逆打ちプライヤは、ピストンを固定するために隙間の内壁を掴むことができる。そこで、ピストンを動かさずにニードルにピストンを貫通させることができる。
【0033】
本発明の1つの実施形態では、ポンプの圧作用によって少なくとも1つの医薬品を送達するための手段は、メインラインおよび該メインラインのためのバイパスラインを含んでいる。メインラインはポンプの出口側のチューブの1区間と置き換えられてよく、または前記チューブの1区間であってよい。バイパスラインの第1区間の1つの端部はメインラインと接続されており、バイパスラインの第1区間の他方の端部は、医薬品容器内への入口と、好ましくは容器の上部にある入口と接続されている。バイパスラインの第2区間は、好ましくは容器の底部にある医薬品容器の出口とメインラインとの間で流体接続している。各々第2区間との前記流体接続はメインライン内へ下流へ排出されるので、血液はバイパスの第1区間内へ流入し、その後に容器を通って、およびその後に前記また別の流体接続を通ってメインライン内へ戻される。バイパスラインのために、医薬品は容器から加圧側でメインライン内へ流入する。好ましくは、容器は、医薬品だけを含有していて気体を含有していない。この場合には、気体はメインライン内へ流入しない。全透析ラインは、血液が再び患者の体内に入る前に各々エアートラップである気泡トラップを含有しているので、偶発的に血流に流入した気体は容器から捕捉される。
【0034】
概して、バイパスラインの第1および/または第2区間の断面積は、メインライン内への医薬品の流量を決定する。バイパスラインが弁を含む場合は、弁の断面積は追加して医薬品の流量を決定でき、または影響を及ぼすことができる。医薬品の流量を決定する関連断面積は、好ましくは、所望の期間内に対応する医薬品の投与が行われるような様式で設計される。例えば、Venofer(登録商標)が医薬品である場合は、関連断面積は、投与が好ましくは少なくとも5分間、好ましくは10〜20分間、または30分間まで持続するように設計される。
【0035】
容器は、上述した理由のためのゴム栓を備えるシリンジまたはバイアルのような従来型容器であってよい。
【0036】
本発明の1つの実施形態では、マニホールドは、前記メインラインおよび前記バイパスラインを含んでいる。本発明の1つの実施形態では、メインラインの1つの端部にはこの端部を各々ダイアライザの雌コネクタである雌ロッキングアダプタと接続するためのダイアライザコネクタが用意されている。メインラインの他方の端部にはダイアライザコネクタのためのそのような雌ロッキングアダプタが用意されている。ダイアライザコネクタは、透析装置のチューブを各々ダイアライザのコネクタである雌ロッキングアダプタと接続するための標準的雄ロッキングアダプタである。メインラインはダイアライザで使用するためのそのような標準的コネクタシステムを含んでいるので、マニホールドを、標準的雄ロッキングシステムを含むあらゆる公知の透析装置と接続することが可能である。公知の透析装置を再設計する必要はない。
【0037】
本発明の1つの実施形態では、マニホールドは、少なくとも2本のバイパスラインを含んでいるが、このとき各バイパスラインはバイパスラインの2つの区間を上述したように医薬品容器の入口および出口と接続するための手段を含んでいる。この場合には、複数の医薬品容器をマニホールド内に同時に挿入することが可能であり、これにより上述した理由のための取り扱いが促進される。バイパスラインの第1区間は、好ましくはスペースおよび費用を節約するためにメインラインと接続された共通入口ラインを含んでいる。バイパスラインの第2区間の共通出口ラインが存在することは可能であるが、望ましくはない。共通出口ラインが存在する場合は、第1医薬品が第2医薬品と直接接触することが考えられ、これは望ましくない化学反応を誘発することがある。このため、望ましくない作用を排除するために共通出口ラインが存在しないことが有益である。
【0038】
本発明の1つの実施形態では、バイパスラインは、医薬品の投与を始動させるための少なくとも1つの弁を含んでいる。弁は、好ましくは膜バルブである。弁があるために、医薬品の投与を手動によって、または制御器具によって自動的に制御することができる。弁の各ハウジングは、製造コストが低くなるように射出成形部品であってよい。対応する膜の製造コストもまた低い。この理由から、少なくともハウジングおよび膜は、使い捨て部品であってよい。膜バルブのボルトは血液と直接接触しないので、コストを節約するためにボルトは再使用することが可能である。この理由から、本発明の1つの実施形態におけるマニホールドは、膜によって被覆されている膜バルブのハウジングしか含んでおらず、弁のボルトを含んでいない。この場合には、ボルトは、対応する弁を閉鎖および/または開放するためにボルトを制御する、および動かす手段を含むまた別の機器の部品であってよい。例えば、また別の機器は、米国特許第3942759号明細書から公知の様式でボルトまたは膜を動かすための磁気手段を含んでいる。また別の機器は、膜バルブを閉鎖するための圧縮応力バネおよび弁を開放するためのコイルを含むことができる。
【0039】
マニホールドは、プラスチックから製造されている1つまたは2つの射出成形部品から構成することができ、または含んでいてよい。この場合には、製造コストは低い。この理由から、マニホールドは、有益には衛生上の理由から有益である使い捨て部品であってよい。
【0040】
本発明の1つの実施形態では、マニホールドのラインは、メインラインおよびバイパスラインを通る血流をチェックするために透明である。
【0041】
マニホールドをダイアライザと直接的に接続することは必要ではない。さらにメインラインの両端をチューブの適切な端部と接続することも可能である。しかし、次にダイアライザ装置のためのチューブの共通設計を修飾することが必要である。この場合には、マニホールドのメインラインにダイアライザコネクタおよび対応するロッキングアダプタが用意されることは余り好都合ではない。チューブの修飾が必要である場合は、各々コネクタシステムである他のロッキング手段の使用は、何の問題も伴わずに可能である。
【0042】
マニホールドがポンプの入口側のチューブと接続されている場合は、マニホールドは、気体が充填された1つ以上の容器および各気体容器を医薬品容器の入口と接続するための手段を含むことができる。各気体容器を医薬品容器の入口と接続するための手段は、シリンジのピストンを貫通するためのバイアルまたはニードルのためのアダプタであってよい。さらに、マニホールドは、医薬品を含有する容器の出口をチューブの注射部位と接続するための手段を含むことができる。
【0043】
本発明の1つの実施形態では、ポンプの入口側に据え付けられたマニホールドは、調節可能な量を備える少なくとも1つの気体容器を含んでいる。調節可能な量を含む容器は、例えば米国特許出願公開第2008/0200886(A1)号明細書から公知である。気体容器は、医薬品容器の容量に依存して所望の量を調節するための可動ピストンを含むことができる。漏れを回避するために、気体容器は、柔軟性膜を含むことができる。ピストンのような手段は、膜の位置を、したがって気体容器の容量を変化させることができる。気体容器は、気体容器の所望の容量の調節を支援できるためにピストンのような手段のための1つ以上のラッチ位置を含むことができる。
【0044】
最新技術から、透析セッションの経過においてヘパリンの流量を変化させることが有益であることは公知である。本発明は、例えば適切な弁を制御することによって、ヘパリンまたは対応する医薬品の流量を所望の流量に適応させることを可能にする。追加して、または代わりに、ヘパリンを含有する複数の医薬品容器は透析装置と接続される。ヘパリンを含有する医薬品容器は、本発明によるマニホールド内に挿入することができる。次に追加の医薬品容器のヘパリンの投与を始動するために対応する弁を開放する工程によってヘパリン流量を増加させることができる。
【0045】
本発明の1つの実施形態では、医薬品容器の出口は、透析装置のチューブと接続される。医薬品容器の入口は、輸液を含有する柔軟性バッグと接続される。輸液は、重力に起因して医薬品容器を通って流れることができる。この方法で、医薬品は透析機器のチューブに到達する。