特許第5690303号(P5690303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中越パルプ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5690303-竹ファイバー及びその製造方法 図000002
  • 特許5690303-竹ファイバー及びその製造方法 図000003
  • 特許5690303-竹ファイバー及びその製造方法 図000004
  • 特許5690303-竹ファイバー及びその製造方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5690303
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】竹ファイバー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B27J 1/00 20060101AFI20150305BHJP
   B27K 9/00 20060101ALI20150305BHJP
【FI】
   B27J1/00 H
   B27K9/00 K
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-122484(P2012-122484)
(22)【出願日】2012年5月29日
(65)【公開番号】特開2013-244736(P2013-244736A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2013年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】591023642
【氏名又は名称】中越パルプ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095740
【弁理士】
【氏名又は名称】開口 宗昭
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】清水 喜作
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕之
(72)【発明者】
【氏名】橋場 洋美
【審査官】 木村 隆一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−209595(JP,A)
【文献】 特開2008−160641(JP,A)
【文献】 特開2005−193405(JP,A)
【文献】 特開2003−166137(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0056484(US,A1)
【文献】 特開2010−274178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27J 1/00
B27K 9/00
B27L 11/08
B27N 1/00−9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
竹由来のパルプを水に混合した50〜300MPaの高圧状態の混合液をノズルから噴射させる解繊処理を行うことによって得られ、平均太さ5〜50nm,平均長さ0.1〜5.0μmであり、均一性が良好であることを特徴とする竹ファイバー。
【請求項2】
太さの標準偏差σ=6.0以下及び/又は長さの標準偏差σ=0.3以下である請求項1記載の竹ファイバー。
【請求項3】
解繊処理を10〜20パス行うことによって得られる請求項1記載の竹ファイバー。
【請求項4】
竹由来のパルプを水に混合した50〜300MPaの高圧状態の混合液をノズルから噴射させる解繊処理を10〜20パス行い、平均太さ5〜50nm,平均長さ0.1〜5.0μmであり、均一性が良好であるファイバーにすることを特徴とする竹ファイバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竹を原料とする竹ファイバーに関し、特に太さがナノレベルの細い竹ファイバー及びその製造方法に係る。
【背景技術】
【0002】
竹を原料とする繊維は、天然セルロースファイバーとして、その利用が期待されている。
本出願人はこれまで竹をチッパー機でチップにし、これを蒸解して竹パルプを得ることを行っている。
本発明は、パルプよりもさらに太さが細い竹ファイバーを得ることを目的に達成されたものである。
【0003】
これまで竹を原料にファイバーを得る方法として、特許文献1は竹を加熱加圧状態から瞬時に非加圧状態とする爆砕工程と、強アルカリ水液に浸漬する後処理工程と、さらに第2の細分化工程にて竹ファイバーを得る方法を開示する。
しかし、そのファイバーサイズは、太さが1μm〜200μm,長さ10mm〜300mmもあるものであった。
特許文献2は、所定の長さに切断した竹材を高圧雰囲気下に所定期間置いた後に、一気に大気圧中に放出する製造方法を開示するが、それにより得られた竹ファイバーは太さが0.01mm〜0.5mm,長さが5mm〜60cmもあるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4234087号公報
【特許文献2】特開昭63−7903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、太さがナノレベルの竹ファイバー及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る竹ファイバーは、竹由来のパルプを水に混合した50〜300MPaの高圧状態の混合液をノズルから噴射させる解繊処理を行うことによって得られ、平均太さ5〜50nm,平均長さ0.1〜5.0μmであり、均一性が良好であることを特徴とする。
ここで、竹ファイバーの好ましい太さは、平均で5nm〜30nm,好ましい長さは平均で0.5μm〜2.0μmの範囲である。
竹ファイバーの太さが5nm未満になると、天然の階層構造が大きな損傷を受け補強効果が低下し、50nmを超えるとナノ構造の特異性が発現できなくなる。
また本発明の竹ファイバーは竹由来のパルプを用いる結果、単に高圧状態の混合液をノズルから噴射させるという簡易な解繊処理を10〜20パス行うことによって効率よく得られる。
しかも本発明の竹ファイバーは均一性が良好である、具体的には太さの標準偏差σ=6.0以下及び/又は長さの標準偏差σ=0.3以下であるσ=0.158〜0.202程度であることから、樹脂材料等と複合化する等の各種の取り扱いの際に必須となる均一分散性が良好で得られる複合化樹脂材料等は均一性の良好な強化材料となる。
【0007】
また本発明の竹ファイバーの製造方法は、竹由来のパルプを水に混合した50〜300MPaの高圧状態の混合液をノズルから噴射させる解繊処理を10〜20パス行い、平均太さ5〜50nm,平均長さ0.1〜5.0μmであり、太さの標準偏差σ=6.0以下及び/又は長さの標準偏差σ=0.3以下であるファイバーにすることを特徴とする。
竹を蒸解等によりパルプ化した竹パルプを0.5〜10%程度含有する混合液を、50〜300MPa程度の高圧状態から一気に大気解放させることで、キャビテーションや乱流が生じ、これによりパルプ繊維を比較的均一に細く解繊することができる。
また、必要に応じて混合液に分散剤等を添加してもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る竹ファイバーは、竹由来のパルプを水に混合した50〜300MPaの高圧状態の混合液をノズルから噴射させる解繊処理を行うことによって得られ、平均太さ5〜50nm,平均長さ0.1〜5.0μmであり、均一性が良好であるので樹脂材料等と複合化すると均一性に優れたファイバー強化材となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】竹ファイバーサンプル1の3D像を示す。
図2】竹ファイバーサンプル1の太さ及び長さの分布図を示す。
図3】竹ファイバーサンプル2の3D像を示す。
図4】竹ファイバーサンプル2の太さ及び長さの分布図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るファイバーの製造例を説明する。
原料となる竹の種類に限定はなく、産地も日本国内外を問わない。
現在、日本では約600種類の竹があるといわれ、代表例としては真竹,孟宗竹,淡竹等が挙げられる。
竹をチッパー機でチップにし、これを蒸解してパルプにした。
このパルプを0.5〜10質量%の水混合液にしたものを、約200MPaの高圧状態から例えば、ノズルから噴射させることで一気に大気解放した。
この高圧状態から大気解放させる処理回数をパス回数と表現する。
また、この高圧水流による細分化をする前に叩解処理等の予備処理をすると、細分化のコストを抑えることができる。
【実施例1】
【0011】
高圧水流処理を0パスした竹ファイバーサンプル1の3D像を図1に示し、図2に竹ファイバーの長さの分布(a)及び太さの分布(b)を示す。
竹ファイバーの計測は、走査型プローブ顕微鏡(株式会社島津製作所製 SPM−9700)を用いて行い、太さはファイバー高さ(Z)として計測した。
図2に示した分布図から算出した竹ファイバーの平均長さは0.28μm,標準偏差σ=0.158であり、太さの平均は9.7nm,標準偏差σ=4.43であった。
【実施例2】
【0012】
高圧水流処理を0パスした竹ファイバーサンプル2の3D像を図3に示し、その分布図を図4に示す。
その結果、10パスの実施例1よりもやや長さが長く、平均長さ0.34μm,標準偏差σ=0.202,太さもやや太く、平均太さ12.48nm,標準偏差σ=5.77であった。
このことから、高圧水流による処理回数は10〜20パスで充分であることが推定される。
図1
図2
図3
図4