特許第5690346号(P5690346)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジーイー センシング アンド インスペクション テクノロジーズ ゲ−エムベーハーの特許一覧

特許5690346超音波検査装置用の改良された接触媒質供給装置
<>
  • 特許5690346-超音波検査装置用の改良された接触媒質供給装置 図000002
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5690346
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】超音波検査装置用の改良された接触媒質供給装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/28 20060101AFI20150305BHJP
【FI】
   G01N29/28
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-535722(P2012-535722)
(86)(22)【出願日】2010年10月4日
(65)【公表番号】特表2013-509573(P2013-509573A)
(43)【公表日】2013年3月14日
(86)【国際出願番号】EP2010064712
(87)【国際公開番号】WO2011051081
(87)【国際公開日】20110505
【審査請求日】2013年9月25日
(31)【優先権主張番号】102009051097.4
(32)【優先日】2009年10月28日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506082124
【氏名又は名称】ジーイー センシング アンド インスペクション テクノロジーズ ゲ−エムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(72)【発明者】
【氏名】プラウゼ,ラインハート
(72)【発明者】
【氏名】ブライデンバッハ,クリストフ
【審査官】 南 宏輔
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−525374(JP,A)
【文献】 実開昭60−079157(JP,U)
【文献】 実開平06−080169(JP,U)
【文献】 特開2004−138473(JP,A)
【文献】 特開平03−245056(JP,A)
【文献】 実開平01−067565(JP,U)
【文献】 実開平05−002062(JP,U)
【文献】 特開昭62−058103(JP,A)
【文献】 特開平11−137909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00−29/52
G01B 17/00−17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波検査ステップを含む超音波検査方法において、検査対象は超音波検査プローブによって発生される超音波を用いて非破壊的に検査され、液体接触媒質は前記超音波検査ステップの前および前記超音波検査ステップ時に、前記検査プローブの外側の連続した循環流に導入される、超音波検査方法であって、
前記接触媒質の一部が、前記超音波検査ステップの間、前記循環流から枝分れされ、前記超音波検査プローブと前記検査対象の間の伝達チャンバに供給され、
前記循環流からの前記接触媒質の前記分岐が、前記循環流を中断することなく、少なくとも超音波検査ステップの前および後に中断される、
方法。
【請求項2】
前記接触媒質が、前記伝達チャンバに供給された後に前記循環流に戻されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記接触媒質が水を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記接触媒質が天然水であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記接触媒質が、前記循環流内で脱気されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記検査対象が前記検査プローブに対して、または前記検査プローブが前記検査対象に対して、前記超音波検査ステップ時に、または複数の超音波検査ステップの間に間欠的に移動されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記検査対象が棒材または管材であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波検査プローブと、超音波を用いて非破壊的に試験すべき検査対象との間の伝達チャンバ内への接触媒質の改良された特により気泡のない供給を有する、非破壊超音波検査のための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波検査の原理は知られている。これは鋳造欠陥または、クラック、空洞、貫孔などの他の材料不良を検出するのに役立つ。棒材を検査する目的は、特に内部欠陥の検査、および表面欠陥の試験であり、また寸法を検査することでもある。この場合は超音波検査プローブは、検査対象の検査すべき材料内に向けられる短い超音波パルスを発生するための電気パルスによって励振される、少なくとも1つの発信器を備える。検査すべき材料内のたとえばクラック、空洞などの欠陥は、関係するパルスのエコーを引き起こし、プローブに戻るように反射され、この場合は同時に受信器としても働く発信器によって受信され、または反射エコーは発信器に隣接して配置された検査プローブの別個の受信器によって受信することもできる。もとのパルスとエコーの戻りとの間の時間の遅れを測定することによって、欠陥の深さの判定を行うことができる。評価できるものの一例を挙げると、エコー強度は欠陥の大きさを示すことができる。さらに空間的な分解能を有して欠陥を試験することも可能である。
【0003】
接触媒質は、放射された超音波を検査対象に効果的に導入するために設けられる。たとえば超音波検査プローブと、検査すべき検査対象たとえば棒材との間に、水の領域が設けられ維持される。この目的のためには、液浸技法、パドル技法、または誘導型水ジェットなどのいくつかの技法が知られている。さらにしばしばSPSと呼ばれる、検査対象の通路を有する密閉された水室も存在する。検査対象が密閉された水室に入った後に、検査対象は水室の注入口および排出口を密閉する。水室は、検査プローブと検査対象の間の結合を得るために水で満たされる。
【0004】
さらに回転型検査装置も知られている。検査プローブを含む検査チャンバ全体を回転することにより、安定な水ジャケットが発生される。注入口と排出口に密閉システムを配置することにより、それを通って検査対象を移動することができるほぼ管状の水ジャケットを生じる。
【0005】
このタイプの知られている検査システムの1つの難点は、たとえば水などの接触媒質の不均一性が音の伝播に影響を与え、それにより誤った解釈となり得ることである。具体的には接触媒質内の気泡は、検査に干渉を及ぼす。
【0006】
したがって気泡のない接触媒質が超音波検査のために必要である。これを確実にすることは、特にいくつかの検査プローブおよび検査プローブ保持器からなる複雑な検査システムが関係する場合、および特にそれらが異なる時点でスイッチオンおよびスイッチオフされる場合には難しい。
【0007】
給水源と検査プローブの間の長い距離を接触媒質が移動するこのような検査システムでは、接触媒質の無気泡性を確実にすることは特に難しい。供給システム内での異なる断面積および圧力条件により、気泡のない接触媒質供給装置はより困難となるが、これらはたとえば剛性の管から可動の管材への移行は不可避であるので、設計要件のために避けることはできない。
【0008】
従来技術では無気泡性は、調節弁、側管、速やかな空気抜き、および供給ライン内に一体化された沈降タンクなどの多大な技術的努力により、検査流に向かう低流量でできるだけ連続した流動状態によって達成される。変化する動作条件の場合にもこの連続性を確保するためには、たとえば周波数変換器により制御することができるポンプを設けるなどの制御技術に関する多大な努力がなされる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許第10118124号公報
【発明の概要】
【0010】
したがって本発明は、診断に関してはより信頼性があり、技術的努力に関してはより簡単であり、特にさらに気泡のない接触媒質を供給することができる、検査対象の超音波検査を実現することを目的とする。
【0011】
この目的は、請求項1に記載の方法、および独立請求項の装置を用いて達成される。「特許請求の範囲」において個別に記載された特徴は、任意の技術的に意味のあるやり方で組み合わせることができ、本発明の他の実施形態を示すことができることが理解されなければならない。説明、特に図に関連する説明は追加的に本発明を特徴付け詳述する。
【0012】
超音波検査方法は、超音波検査プローブによって発生される超音波を用いた超音波検査ステップにて、検査対象を非破壊的に検査することを可能にする。本発明は、超音波検査にて用いられる技術関連、または検査対象関連に限定されない。原理的に本方法は、検査プローブと検査対象の間の音響結合のために、液体接触媒質、したがって流動性を有する接触媒質が供給される任意のタイプの超音波検査に適する。したがって検査対象は、たとえば生体、金属またはプラスチックからなる品目、中空またはかたまりの品目でもよい。
【0013】
本発明によれば、接触媒質は検査プローブの外側の連続した循環流に導入することが可能になる。連続した循環流という用語は広く解釈されるべきであり、媒質が循環流路たとえば導管内を導かれることを意味する。本発明によれば、流速はプロセス内で一定に保つ必要はない。本発明の意味での連続したとは、流れが中断されないすなわち流速がゼロまで減少しないことを意味する。
【0014】
本発明によれば、循環流すなわち循環する接触媒質から一部が枝分れされ、この部分は、超音波検査プローブと検査対象の間の伝達チャンバに供給される。接触媒質は超音波検査プローブを通じて部分的にのみ導かれ、超音波検査の前および/または超音波検査時に超音波検査プローブの外側の循環流路内を導かれることにより、接触媒質は、循環流内で効果的に沈降されかつ/または脱気され、次いで超音波検査プローブのみに供給される。したがって接触媒質の無気泡性は改善され、超音波診断の品質が向上される。
【0015】
本発明による方法の有利な実施形態ではさらに、接触媒質の損失を補償するための供給がもたらされる。
【0016】
好ましくは循環流経路設定は、検査プローブを担持する装置の外側でかつ離れて行われる。検査プローブを担持する装置の外側で循環流経路設定が行われる場合はしたがって、たとえば検査プローブへの分岐管だけが設けられるので、検査プローブの近くでの循環流と比べて接触媒質を導く導管を短縮することができる。
【0017】
検査プローブの外側での循環流のもう1つの大きな利点は、検査プローブに向かう接触媒質の流入量は、循環流を中断せずに弁などの供給を中断する手段によって制御することができ、すなわち検査プローブのための接触媒質供給装置は、上述の圧力および流動状態の変化によって供給システム全体において気泡が形成することなくスイッチオンおよびスイッチオフできることである。したがって循環流からの接触媒質の分岐は、循環流を中断せずに、少なくとも超音波検査ステップの前および後に中断されることが好ましい。
【0018】
好ましい実施形態によれば接触媒質は、伝達チャンバに供給された後に循環流に戻され、それにより接触媒質の消費量を低減することができる。
【0019】
超音波検査ステップの間に接触媒質は、循環流から連続的に枝分れされ、連続的に検査対象に供給されることが好ましい。接触媒質流の中断を避けることにより、かつそれに伴う圧力変動、特に供給ラインが再開されたときの圧力低下を避けることにより、気泡形成は最小となる。
【0020】
接触媒質は、中でもコスト関連の理由から実質的に水を含むことが好ましく、天然水であることがさらに好ましい。
【0021】
接触媒質は、循環流内で脱気されることが好ましい。本発明の意味での脱気することは、流動する接触媒質の脱気を促進する脱気手段が設けられることを意味する。これは沈降タンクであることが好ましい。接触媒質の損失を補償するために、有利な実施形態によりもたらされる供給は、沈降タンク内で生じることが好ましい。他の有利な実施形態によれば、脱気する手段は、接触媒質の曲がりくねった経路設定または流れが得られるように構成される。それによって達成される流動方向の変化は、接触媒質の脱気を助長する。曲がりくねった流れの経路設定は、沈降タンク内に組み込まれることが好ましい。
【0022】
他の有利な実施形態によれば、脱気する手段は、重力の方向に従う接触媒質の流れが得られるように構成される。接触媒質が重力に従って流れる場合は、気泡と接触媒質の分離、したがって脱気が容易になる。この流動方向は、沈降タンク内の曲がりくねった経路設定での垂直な流路によって実現することができる。
【0023】
本発明による方法は、超音波検査ステップの間に、またはいくつかの超音波検査ステップの間で間欠的に、検査対象が検査プローブに対してまたは検査プローブが検査対象に対して移動されるような方法の場合に特に適している。
【0024】
本明細書で述べる方法は、DE19931350A1、DE102007039325A1に記載されている検査装置において特に有利であることが判明しており、この点に関してこれらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0025】
接触媒質の無気泡性は、超音波を平面に結合できないような検査対象の場合に特に有利であることが分かっている。したがって本発明による方法は、好ましくは検査対象としての棒材または管材に用いられる。
【0026】
本発明はさらに超音波検査装置に関し、方法の特定の実施形態に関して上述した利点はそれぞれの装置にも付随する。
【0027】
本発明による装置は、超音波検査プローブによって発生される超音波を用いて、検査対象に対して超音波検査ステップを実行するための超音波検査プローブと、超音波検査プローブと検査対象の間の伝達チャンバ内に液体接触媒質を供給する手段とを備える。装置は、検査プローブの外側で、好ましくは検査プローブを担持する装置の外側で、連続した循環流内に接触媒質を導入する手段と、伝達チャンバへの供給のために、循環流から接触媒質の一部を枝分れする手段とが設けられることを特徴とする。
【0028】
接触媒質は超音波検査プローブを通じてまたは超音波検査プローブに部分的にのみ供給され、超音波検査の前および/または超音波検査時に超音波検査プローブの外側の循環流路内を導かれることにより、接触媒質は循環流内で有効に沈降および/または脱気することができ、次いでたとえば分岐管にて、脱気された状態で超音波検査プローブに有効に供給されるだけとすることができる。したがって接触媒質の無気泡性が改善され、従来技術よりも超音波装置の超音波診断の品質は向上される。さらに検査プローブの外側での循環流経路設定の場合は、接触媒質を導く導管を短縮することができる。検査プローブの外側の循環流の他の大きな利点は、検査プローブに向かう接触媒質の流入量は循環流を中断せずに制御できることであり、すなわち検査プローブのための接触媒質供給装置は、循環流内での脱気を中断せずにスイッチオンおよびスイッチオフすることができることであり、それにより上述の圧力および流動状態の変化によって供給システム全体において気泡が形成される問題を回避する。したがって、検査プローブへの供給管内に設けるので循環流が中断されない、弁などの伝達チャンバへの接触媒質の供給を中断する手段を設けることが好ましい。
【0029】
接触媒質の損失を低減するために、回収システムなどの、伝達チャンバに供給された接触媒質を循環流に戻す手段を設けることが好ましい。
【0030】
上述したように、接触媒質を脱気する手段を設けることが好ましい。
【0031】
本発明および技術的環境について、以下で図を参照してより詳しく述べる。図は本発明の特に好ましい実施形態を示すが、本発明はそれらに限定されないことが理解されなければならない。図は概略的に下記を示す。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明による方法を実施するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は好ましい実施形態での本発明の方法を概略的に示し、実質的に接触媒質供給装置のために設けられた構成要素のみが示され、検査プローブを除いて、超音波検査のために設けられた構成要素、および関係する検査対象は、見やすいように示していない。接触媒質は、好ましくは天然水であり、それぞれの検査プローブ8と、超音波を用いて検査すべき検査対象との間の音響結合として働き、この目的のために接触媒質はそのために設けられた伝達チャンバに供給され、伝達チャンバは詳しくは示していない。本発明による接触媒質供給装置は、接触媒質の連続した循環流を生じる。循環プロセスは、超音波検査の間および/または超音波検査の前に実行される。図示の実施形態での強制循環流は、導管2、3,および分配器4、沈降タンク1、およびポンプ5によって実現される。この場合、沈降タンク1、および特に、その中に設けられた曲がりくねった導管システム6は、接触媒質を脱気するために設けられる。曲がりくねった導管システム6は、接触媒質が重力の方向に従って流れるように流れの進路がその中で選択される、できるだけ長い部分区間が設けられるように経路設定され、それにより気泡と媒質の分離が助長されしたがって脱気が助長される。さらに沈降タンク1内には、接触媒質の損失を補償することができるように新しい接触媒質を供給する働きをする領域7が設けられる。
【0034】
接触媒質の一部は、分配器4を通して循環流から枝分れされ、手動遮断弁14および空気圧作動弁9によって遮断することができる分岐管15を通じて、検査プローブ8に供給される。伝達チャンバから流出した接触媒質は、回収トラフによって回収され、ポンプ12および戻り管13を用いて循環流すなわち沈降タンク1に戻される。システムの保守、清掃などのために排出口11が設けられる。接触媒質は、超音波検査プローブを通じて部分的にのみ導かれ、かつ超音波検査の前および/または超音波検査時に循環流路内を導かれるということにより、接触媒質は循環流内で有効に沈降および/または脱気され、次いで超音波検査プローブに供給するだけとすることができる。したがって接触媒質の無気泡性が改善され、超音波診断の品質が向上される。さらに、検査プローブが脱気のために設けられる循環流内に組み込まれない本発明による循環流経路設定を用いることにより、接触媒質を導く導管は、検査プローブのみを通じた循環流と比べて短縮することができる。検査プローブの外側の循環流の他の大きな利点は、検査プローブに向かう接触媒質の流入量を制御できることであり、すなわち検査プローブのための接触媒質供給装置は、上述の圧力および流動状態の変化により供給システム全体において気泡が形成されることなくスイッチオンおよびスイッチオフできることである。
【符号の説明】
【0035】
1 沈降タンク
2 導管
3 導管
4 分配器
5 ポンプ
6 導管システム
7 領域
8 検査プローブ
9 空気圧作動弁
10 回収トラフ
11 排出口
12 ポンプ
13 戻り管
14 手動遮断弁
15 分岐管
図1