(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5690351
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】磁場強度閾値警報器
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20150305BHJP
【FI】
A61B5/05 390
【請求項の数】19
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-539918(P2012-539918)
(86)(22)【出願日】2010年10月22日
(65)【公表番号】特表2013-511332(P2013-511332A)
(43)【公表日】2013年4月4日
(86)【国際出願番号】US2010053645
(87)【国際公開番号】WO2011062725
(87)【国際公開日】20110526
【審査請求日】2013年7月5日
(31)【優先権主張番号】12/623,616
(32)【優先日】2009年11月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512133797
【氏名又は名称】コップ ディベロップメント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100081695
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 正明
(72)【発明者】
【氏名】コップ,キース
(72)【発明者】
【氏名】ディメント,ハロルド,デュアン
【審査官】
宮澤 浩
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2009/0251316(US,A1)
【文献】
特開平09−101323(JP,A)
【文献】
特開2006−223670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁場に反応し,所定の閾値を超える磁場強度に応答して作動し,エネルギーを消費することなく作動するように動作可能に構成され,質量中心と一致する回転軸を有する回転可能部材を備えた検知手段と,
前記検知手段の作動に反応して警報を出力し,前記検知手段の作動より前にエネルギーを消費しないように構成され,前記検知手段の作動の後にのみエネルギーを消費する警報手段とを備える磁場強度閾値警報器。
【請求項2】
前記検知手段と,前記警報手段と,エネルギー貯蔵手段とを動作可能に接続し,前記検知手段が作動した時にのみ電気エネルギーが供給されるように電気エネルギーの供給を制御する制御手段を更に備える請求項1記載の磁場強度閾値警報器。
【請求項3】
前記磁場強度閾値警報器は,前記検知手段が作動していない時には,前記磁場強度閾値警報器から電磁エネルギーを放射しないように構成される請求項1記載の磁場強度閾値警報器。
【請求項4】
前記検知手段は,前記検知手段への前記磁場の入射方向に関係なく前記磁場に反応するように構成される請求項1記載の磁場強度閾値警報器。
【請求項5】
前記検知手段は,スイッチ開状態とスイッチ閉状態との間で動作可能なスイッチを備え,前記スイッチは,磁場強度が前記所定の閾値を超えると,前記スイッチ開状態から前記スイッチ閉状態へと変わる請求項1記載の磁場強度閾値警報器。
【請求項6】
前記検知手段は,前記スイッチが前記スイッチ開状態から前記スイッチ閉状態へと変わる前記磁場強度の閾値を変更するための調節可能なバネを備える請求項5記載の磁場強度閾値警報器。
【請求項7】
前記検知手段は,少なくとも1つの磁石を備え,前記磁石の数は,前記スイッチが前記スイッチ開状態から前記スイッチ閉状態へと変わる前記磁場強度の閾値の変更に関連する請求項5記載の磁場強度閾値警報器。
【請求項8】
前記検知手段は,前記検知手段が加速によって誤作動しないように構成される請求項1記載の磁場強度閾値警報器。
【請求項9】
前記警報手段は,音声警報と視覚警報の少なくとも一方を含む請求項1記載の磁場強度閾値警報器。
【請求項10】
前記磁場強度閾値警報器は,前記検知手段がオープンボアMRI又はクローズドボアMRIからの磁場に反応するように構成される請求項1記載の磁場強度閾値警報器。
【請求項11】
前記検知手段は,オープンボアMRI又はクローズドボアMRIからの磁場にそれぞれ反応する少なくとも1つの磁場強度センサを備える請求項10記載の磁場強度閾値警報器。
【請求項12】
前記磁場強度閾値警報器は,前記検知手段が核磁気共鳴装置からの磁場に反応するように構成される請求項1記載の磁場強度閾値警報器。
【請求項13】
前記磁場強度閾値警報器は,MRI磁石室に備えられる機器に取り付けられるように構成され,前記機器の位置におけるMRI磁石室内のMRIからの磁場強度が前記所定の閾値を超えたことに応答して警報を発する請求項1記載の磁場強度閾値警報器。
【請求項14】
前記磁場強度閾値警報器は,人が着用するように構成される請求項1記載の磁場強度閾値警報器。
【請求項15】
磁場に反応し,所定の閾値を超える磁場強度に応答して作動すると共に,質量中心と一致する回転軸を有する回転可能部材を備えた検知手段と,
前記検知手段の作動に反応して警報を出力する警報手段と,
少なくとも前記警報手段が前記警報を出力するための電気エネルギーを供給するエネルギー貯蔵手段とを備え,
前記検知手段と,前記警報手段と,前記エネルギー貯蔵手段とは,前記検知手段が作動した時のみ前記エネルギー貯蔵手段から電気エネルギーが供給されるように動作可能に接続される磁場強度閾値警報器。
【請求項16】
前記磁場強度閾値警報器は,前記検知手段が作動していない時には,前記磁場強度閾値警報器から電磁エネルギーを放射しないように構成される請求項15記載の磁場強度閾値警報器。
【請求項17】
前記検知手段は,前記検知手段への前記磁場の入射方向に関係なく,前記磁場に反応するように構成される請求項15記載の磁場強度閾値警報器。
【請求項18】
磁場に反応し,所定の閾値を超える磁場強度に応答して作動し,エネルギーを消費することなく作動するように動作可能に構成され,質量中心と一致する回転軸を有する回転可能部材を備えた検知手段と,
前記検知手段の作動に反応して警報を出力する警報手段と,
少なくとも前記警報手段が前記警報を出力するための電気エネルギーを供給するエネルギー貯蔵手段とを備え,
前記警報手段は,前記検知手段の作動よりも前に前記警報手段がエネルギーを消費しないように構成され,前記エネルギー貯蔵手段に動作可能に接続される磁場強度閾値警報器。
【請求項19】
前記磁場強度閾値警報器は,前記検知手段が作動していない時には前記磁場強度閾値警報器から電磁エネルギーを放射しないように構成される請求項18記載の磁場強度閾値警報器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,動作中の磁気共鳴画像(MRI)装置の近傍の磁場強度を検出し,事前設定された磁場強度を越えた場合に反応する装置又は機器の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
MRIは,手術を行うことなく人体の内部を撮影し,検査するのに極めて有益な手段となっている。MRIは,他の手段では区別することのできない,正常組織と病変組織,脂肪と筋肉,また,体内の互いに隣接する構造を区別することができる。MRIは,安全な電波と強磁場を用いて,コンピュータで処理される情報を生成して,画像を形成する。現在,米国では約10,000台のMRI装置が使用されている。
【0003】
より高品質でより高解像度のものが求められることから,静磁場の強度は,過去25年の間に着実に増加し,1テスラの何分の1であったものが,現状では3テスラの磁石が一般的になっており,現在,7テスラの磁石が市場に登場している。最新のMRI用磁石は,超伝導磁石であり,起動コストが高いため,常に磁石を作動しておく必要性が生じる。これらの超伝導MRI磁石は,緊急時に瞬時に停止することができない。
【0004】
MRIの近傍領域における強い磁場では,強磁性の物体がその強い磁場に引き寄せられる恐れがある。物体が飛翔体となり,近傍の職員や患者が怪我をするという事例が数多く記録されている。飛翔体が衝突することによってMRI装置自体が大きな損害を受けることも考えられる。
【0005】
強磁性の飛翔体による事故の危険を低減するために,米国特許第7,489,128号の「MRI保護装置」に記載されるような強磁性体検知システムが,MRI装置を収容する部屋の入口に使用される。この装置は,強磁性材料を収容した装置が強磁性体検知門を通過した場合に,警報を発する。
【0006】
MRI装置が収容された部屋に,強磁性材料を含む装置を持ち込む必要がある場合もある。そのため,このような状況では,強磁性検知器は,危険が存在する可能性があることを職員に警告する以外には有用でない。輸液ポンプ,造影剤注入器,患者モニタ,及び麻酔器等の医療機器は,MRI装置を収容する部屋に通常必要である。
【0007】
MRIの磁場に備えられる医療機器がもたらす飛翔体の潜在的な危険性に加えて,多くの医療装置は,強磁場下で作動すると,正常に機能しない,或いは,損傷する。例えば造影剤注入器は,設計された磁場最大値を超えた磁場に曝されると,誤った量の造影剤を注入する恐れがある。
【0008】
様々な医療装置は,該医療装置が正常に動作する及び/又は強磁性飛翔体の危険性を示さない限度値を磁場強度が下回る領域にその装置を保持できるように予防措置をとることで,MRI磁気の近傍で安全に動作することができる。MRI室に備えられる医療機器は,通常,車輪の付いたカートの上に載せられる。よって,機器は,磁場が危険なほど強い領域に容易に移動したり誤って突き当たったりする恐れがある。床やその他の場所に様々な磁場強度を示すマークが付与されていることは稀である。結果として職員は,存在する危機に気付かない可能性がある。医療装置が潜んでいる危険な磁場を職員に警告する装置が必要である。
【0009】
MRIの撮影中に生成されて画像作成に使用される電磁信号は,非常に弱い。そのため,現在のMRIは,スクリーン室やMRI室と呼ばれることのある,特別に構築された電磁気を遮断する部屋に収容される。このスクリーン室内で動作するいかなる電気・電子機器も干渉の発生源となり得る。電磁干渉は,MRIプロセスによって作成される画像の診断に関わる品質を低下させ得る。その結果,電気機器は,どうしても必要な場合や,厳しい試験過程によって該機器がMRIの性能を低下させないことが確認された場合を除いて,スクリーン室に備えられることはない。この検証過程を経てもなお,MRI画像の品質を低下させる重大な危険性がある。
【0010】
患者モニタ,輸液ポンプ,及び自動注入器等の機器は,スクリーン室内で頻繁に移動される。よって,機器に電気を供給する電源コードは不便であるとともに,電磁干渉の潜在的危険性を有する。このため,MRIスクリーン室に備えられる電気機器のほとんどはバッテリ駆動である。
【0011】
ホール効果,フラックスゲート,及び異方性磁気抵抗等の様々な検知技術を利用する各種ガウスメータが市場に出ている。MRI環境の磁場強度を検出するための磁場強度警報器は公知である。例えば,「磁場警報表示器」という名称の米国特許第4,954,812号には,水平面に取り付けられて磁場の各回転成分を検知する複数の磁場検知器を備えた磁場警報検知装置が開示されている。360°の視界における中程度に均等の感度でさえ,実現するには少なくとも3つのセンサが必要となる。回転感度の均等性を向上させるには,より多くのセンサが必要である。使用するホール効果センサ及び必要な処理のための電子機器は,かなりの量の電力を使用する。開示された発明は,その効果を発揮するために,記載の装置が磁場強度を監視する間は常時電力を消費する。結果として,定期的にバッテリを充電又は交換しなければならない。更に,開示された発明の装置は,スクリーン室内にある間は常に電源が入っているため,電磁干渉をもたらす危険性が非常に高い。この危険性は,スクリーン室の医療機器の多くが,当該発明に記載される警報器を取り付けている場合に,更に増加する。
【0012】
「MRIの安全性のための,鉄製物体及び/又は磁場の検知方法及び装置」という名称の米国特許出願第2007/0132581号に記載の装置は,無線周波数識別(RFID)システムを使用して,MRI室に入る時は装置の電源を入れ,MRI室を出るときは装置の電源を切ることにより電力消費の問題に対処しようとしている。この手法は,特定の状況下では装置の電力消費を抑える可能性がある。しかし,前述のタイプの医療機器は,MRI室に保管されるのがかなり一般的である。装置の電源は入れたままにしなければならず,結果として,この一般的な状況において電力消費は低減されない。更に,装置の電源がMRI室内では入ったままなので,MRI装置に対する電磁干渉の危険性も解決されない。実際,RFID回路の存在により,電磁干渉の危険性は高まり得る。
【0013】
発明の簡単な概要
以下の概要は,本明細書に記述したシステム及び/又は方法のいくつかの態様の基本的な理解を提供するために,簡略した概要を示す。この概要は,本明細書に記載したシステム及び/又は方法の広範囲の要旨ではない。主要/重要な要素を特定し,そのようなシステム及び/又は方法の範囲を詳細に記述するものではない。この概要の唯一の目的は,後述のより詳細な記述への序文として,いくつかの概念を簡略した形で示すことである。
【0014】
一態様によれば,本発明は,磁場に反応し,所定の閾値を超える磁場強度に応答して作動し,エネルギーを消費することなく作動するように動作可能に構成された検知手段と,前記検知手段の作動に反応して警報を出力し,前記検知手段の作動より前にエネルギーを消費しないように構成され,前記検知手段の作動の後にのみエネルギーを消費する警報手段とを備える磁場強度閾値警報器を提供する。
【0015】
別の態様によると,本発明は,磁場に反応し,所定の閾値を超える磁場強度に応答して作動する検知手段と,前記検知手段の作動に反応して警報を出力する警報手段と,少なくとも前記警報手段が前記警報を出力するための電気エネルギーを供給するエネルギー貯蔵手段とを備え,前記検知手段と,前記警報手段と,前記エネルギー貯蔵手段とは,前記検知手段が作動した時にのみ前記エネルギー貯蔵手段から電気エネルギーが供給されるように,動作可能に接続される磁場強度閾値警報器を提供する。
【0016】
更に別の態様によると,本発明は,磁場に反応し,所定の閾値強度を超える磁場に応答して作動し,エネルギーを消費することなく作動するように動作可能に構成された検知手段と,前記検知手段の作動に反応して警報を出力する警報手段と,少なくとも前記警報手段が前記警報を出力するための電気エネルギーを供給するエネルギー貯蔵手段とを備え,前記警報手段は,前記検知手段の作動よりも前に前記警報手段がエネルギーを消費しないように構成されて,前記エネルギー貯蔵手段に動作可能に接続される,磁場強度閾値警報器を提供する。
【0017】
本発明の前述及び他の態様は,本発明が関係する技術の当業者にとって,添付図面を参照し,以下の記述を読むことで明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1a】クローズドボア磁気共鳴撮影装置(MRI)の静磁場図の概略端面図。
【
図1b】クローズドボアMRIの静磁場図の概略斜視図。
【
図2a】オープンボアMRIの静磁場図の概略上面図。
【
図2b】オープンボアMRIの静磁場図の概略等角図。
【
図3】外部磁場が印加されていない状態の磁場強度センサの概略図。
【
図4a】閾値未満の外部磁場が印加された,
図3の磁場強度センサの図。
【
図4b】閾値を超える外部磁場が印加された,
図3の磁場強度センサの図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面において,本発明の1又は複数の態様を含む実施例が記載及び図示されている。これらの説明される例は,本発明を限定するものではない。例えば,本発明の1又は複数の態様を,他の実施形態や他の種類の装置に使用することも可能である。更に,特定の技術はここで便宜上使われるものであって,本発明を限定するものではない。
【0020】
図1a及び
図1bに,クローズドボア磁気共鳴撮影装置(MRI)の概略例が示される。MRI磁石MR−1を囲む磁場MF−1は略水平であることが分かる。本発明の一態様によれば,このような磁場を効率的に検知するためには,センサは,磁石のトルクが該磁石の双極子モーメントと外部磁場とのベクトル外積であるという関係に依存し得る。
【0021】
図3には,
図1a及び
図1bの磁場を検知するための,本発明の例示的態様による磁場強度センサ11の例が示される。磁場強度センサ11は,円筒状ハウジング5内に位置するセンサ磁石1(
図3では中立位置にある)を備える。センサ磁石1は,導電性チューブ3に収容される,多数のより小さな円筒状磁石2として設けられ得る。これらの小型の円筒状磁石2の数を変更することにより,センサ磁石1の磁気双極子モーメントを変えることができる。
【0022】
センサ磁石1は球状の玉軸受6に軸支され,この玉軸受6は,円筒状ハウジング5内に支持/固定される回転/旋回台の上に支持される。玉軸受6は,ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の,低摩擦抵抗電気絶縁体である。図示の例では,玉軸受6がセンサ磁石の略中間で,センサ磁石1を支持する。
【0023】
付勢バネ7が,センサ磁石1の底部に取り付けられる。バネ7は,
図3に示す中立位置にセンサ磁石1を戻すよう促す付勢力を提供する。このような付勢力は,
図1a及び
図1bに示すMRIからの外部磁場によってセンサ磁石1に付与される力に対抗することとなる。バネ7(
図3)は,磁場と相互作用しないように,ベリリウム銅から製造され得る。バネ7はセンサ磁石1の偏向軸上にあるので,センサ磁石1の任意の偏向角の均衡力は,偏向方向を問わず同一である。よって,スイッチを閉じるのに必要な磁場強度は,磁場強度センサ11の360°視界のどこにおいても同じである。
【0024】
バネ7は調節ネジ8に接続される。調節ネジ8は,バネ7の張力を変更するために回転され得る。磁場強度センサ11は感度を調節するために調節可能であることを理解されたい。すなわち,センサ磁石1内の小型の円筒状磁石2の数を変更することにより,センサの磁場強度トリップ点を大まかに調節できる。磁場強度トリップの微調節は,バネ調節ネジ8によって達成される。
【0025】
接触リング4が,ハウジング5内の,センサ磁石1の導電性チューブ3の上端部が移動して接触リングに接触し得る位置に設けられる。導電性ワイヤ9が閾値調節ネジ8に取り付けられ,ワイヤ10が接触リング4に取り付けられる。センサ磁石1がMRIからの電磁力の影響で旋回し,且つその電磁影響がバネ7の付勢力に打ち勝つほど十分に強い場合,導電性チューブ3の上端部は接触リング4に接触する。これにより,ワイヤと,調節ネジ8と,導電性チューブ3と,接触リング4と,ワイヤ10との間が電気接続される。このように,これらの電気接続された部品によってスイッチが閉じられる。このようなスイッチ作用は,信号として使用可能な指示を提供できる。また,ネジで付勢されたセンサ磁石1を変位させるのに必要な磁力の程度は調節に基づいて選択可能である。このように,スイッチの作用もまた磁場強度を示す。
【0026】
センサ磁石1は,磁場強度センサ11が
図1に示す略水平の磁場にさらされると,センサ磁石1が垂直指向の状態で,最大のトルクを得る。すなわち,
図3に示す磁場強度センサ11のセンサ磁石1が,
図1に示すMRI磁石MR−1に近寄ると,センサ磁石1はトルクを受けて,センサ磁石1が
図1に示すMRI磁石MR−1の磁場線MF−1に沿って向こうとする。
図4aにおいて,バネ7の力によって,センサ磁石1のトルクによる回転が制限されている。
図4bは,磁場強度センサ11がMRI磁石MR−1に十分に近づいて,センサ磁石1が,円筒状の電気的接触リング4と接触するのに必要な程度偏向した状態を示す。当然,磁場強度センサの構成には様々あり得ることを理解されたい。よって,磁場強度センサ11は,磁場に反応し,所定閾値を超える磁場強度に応答して作動する検知手段の一例である。検知手段の他の例が考えられることを理解されたい。
【0027】
図5を参照すると,起動回路13が例示される。起動回路13は磁場強度センサ11と警報装置LS1とに動作可能に接続され,ある所定の閾値を上回る磁場強度を検知すると反応して閉回路となる,通常は開状態の回路である。磁場強度センサ11はスイッチとして作用するので,
図5ではS1として概略的に示されている。バッテリBT1は,(スイッチとしての)磁場強度センサS1と警報装置LS1とに並列接続される。警報装置LS1は,起動回路13のトランジスタ(例えばダーリントントランジスタ)Q1を介して,動作可能にグラウンドに接続される。(スイッチとしての)磁場強度センサS1は,起動回路13の一連の抵抗器R1及びR2を介してトランジスタQ1の制御ベースに接続され,起動回路13のコンデンサC1は,これら抵抗器の間に介在するノードとグラウンドとの間に接続される。抵抗器R1とコンデンサC1とがローパスフィルタを形成して過渡電流によって警報装置が起動するのを防ぐ。抵抗器R2は,ダーリントントランジスタQ1に供給される電流を制限する。このように,(スイッチとしての)磁場強度センサS1はトランジスタQ1の動作を制御する。よって,(スイッチとしての)磁場強度センサS1は,警報装置LS1の(例えばオン−オフの)動作を制御する。当業者には分かるように,起動回路は異なった構成を持ち得るため,例示的な起動回路13は,当然一例にすぎず,本発明がこれに特定的に限定されないことを理解されたい。
【0028】
磁場強度センサS1が開状態の時,つまり,センサS1における磁場強度がトリップ閾値を下回っていると,トランジスタQ1はオフになり,電流は警報装置LS1を流れない。したがって,センサS1における磁場強度がトリップ点を下回っていると,バッテリBT1から電気エネルギーは引き出されない。
【0029】
磁場強度センサS1は,所定のトリップ閾値を超える強度の磁場にさらされると閉じる。磁場強度センサS1が閉じると,トランジスタQ1がオンになり,警報装置LS1に電流が流れる。また,コンデンサC1が充電される。磁場強度センサS1がMRI磁石から離れると,磁場強度は所定のトリップ点を下回り,磁場強度スイッチS1が開く。コンデンサC1が充電されているので,トランジスタQ1に電流が供給され,コンデンサC1と抵抗器R2の値によって決まる期間,トランジスタQ1はオンとなる。トランジスタQ1がオンである間は,警報装置はオンを維持する。このR2とC1によるラッチ機能は,振動等によってスイッチS1が短期間開いて,警報装置LS1の動作が停止してしまうことを防ぐ。
【0030】
警報装置LS1に関しては,その警報は音声及び/又は視覚的出力を含む,様々な態様/構成を有し得る。Q1の出力は,例えば,本発明が取り付けられた患者モニタへの入力として使用し得る。この場合,患者モニタのディスプレイ及び/又は警報は,磁場強度センサS1からの磁場強度レベルの状態指標として使用される。Q1からの出力は,その他の1つ又は複数の安全装置を起動させるのにも使用され得る。例えば,Q1の出力をソレノイドに接続して,監視するカートがMRI環境の危険地帯と思われる領域に持ち込まれた場合に,このソレノイドがこのカートの車輪をロックすることも可能である。車輪をロックすることによって,カートがMRI環境の危険地帯に更に進入することを阻止するだろう。
【0031】
このように,警報装置LS1は,検知手段の作動に反応して警報を出力する警報手段の一例である。警報手段のその他の例も考えられることを理解されたい。バッテリBT1は,少なくとも警報手段が警報を出力するための電気エネルギーを供給するエネルギー貯蔵手段の一例である。エネルギー貯蔵手段のその他の例も考えられることを理解されたい。起動回路13は,検知手段と,警報手段と,エネルギー貯蔵手段とを動作可能に接続し,検知手段が作動した時にのみ電気エネルギーが供給されるように制御するための制御手段の一例である。制御手段のその他の例も考えられることを理解されたい。
【0032】
警報手段は,検知手段の作動の前にエネルギーを消費せず,検知手段の作動の後にのみエネルギーを消費するように構成されることを理解されたい。また,警報手段とエネルギー貯蔵手段とは,検知手段が作動した時にのみエネルギー貯蔵手段から電気エネルギーが供給されるように,動作可能に接続されることを理解されたい。また,警報手段は,検知手段が作動する前に,警報手段によってエネルギーが消費されないように構成されてエネルギー貯蔵手段に動作可能に接続されることを理解されたい。
【0033】
機器搭載可能筐体ME−1内に,本発明の少なくとも1つの態様を有する第1実施形態の装置GA1を示す。図示の例では,磁場強度センサ11と,起動回路13と,(本実施例では音声・視覚警報器14とされる)警報装置LS1と,(本例では例示的にウルトラライフ(UltraLife)社のバッテリ12とされる)バッテリBT1とが機器搭載可能筐体ME−1内に配置される。本例において,ウルトラライフ社のバッテリ12は,一般に入手可能な9Vバッテリ構造として提供されるが,10年の耐用年数を有する特殊なウルトラライフ社のリチウム二酸化マンガン型のものである。通常の動作条件においては電力が消費されないため,このバッテリを使えば最大10年まで交換を要しない。通常動作のバッテリ寿命が長いことから,装置の充電機能やRFID起動は不要である。しかし,このような構造とは異なってもよい。電力が消費されていない時においても,装置GA1は,電源スイッチやその他の起動手段をオンにする必要なく,警報を鳴らすことができる。したがって,装置GA1を,バッテリ12のエネルギーレベルや耐用年数を低下させることなく,MRI室に置かれた医療機器に,長期間,動作した状態で取り付けたままにできる。
【0034】
MRI撮影作業は,前述のように,電磁干渉による低下に対して非常に敏感である。MRIスクリーン室に持ち込まれた電気装置はどれも,干渉の危険をもたらす。先に参照した先行技術では,電磁干渉の危険を減らすために,MRIスクリーン室に備えられる装置を特別に遮蔽することや,その装置の構成要素を選択することが行われている。この先行技術が採る対策では,電磁干渉の危険性を,低減はしても,取り除くことはない。本発明は,本発明の通常動作中における電磁干渉の可能性を完全に取り除く。これは,非警報状態においては,本発明から電流が流れないようにすることにより達成される。電磁放射を発生させるには,経時変化する量の電流が必要である。経時変化する量の電流がなければ,又は実際に全く電流がなければ,本発明が,MRI撮影作業に電磁干渉を引き起こす可能性はない。
【0035】
バッテリ12及びその他使用されるすべての構成要素は,非常に低い強磁性内容物を有する。装置GA−1の強磁性が低いことにより,その製品自体が強磁性の飛翔体となる危険性が確実に無くなる。
【0036】
磁場強度センサ11は均一の磁場感度を有する360°の視界を有するため,装置GA−1は,これが取り付けられる医療機器の部分の回転に関係なく,警報器を作動させる。前述の先行技術では,360°の視界に亘る磁場強度感度に一定限度の均一性を持たせるのに,少なくとも3つのセンサを要する。
【0037】
図2a及び
図2bには,オープンボアMRI装置と,その磁場線の例が示される。磁場線MF−2の向きは,実質的に垂直方向である。本発明の一態様によれば,外部印加磁場がない状態でセンサ磁石1(
図3)が水平となるように装置が90°回転した場合,1又は複数の実施形態は,この環境下において効果的に機能する。そのような実施形態では(つまり,水平方向に向く状態では),重力によって生じるトルク成分を取り除くために,玉軸受6がセンサ磁石1の質量中心に位置している。更に,玉軸受6をセンサ磁石1の質量中心に設置することにより,本発明が取り付けられる医療装置の加速によって生じる,センサ磁石1に対するトルクモーメントが除去される。
【0038】
本発明の一態様に係るその他の実施形態は,一方のセンサは垂直方向を向き,他方のセンサが水平方向を向くように構成された,2つのセンサを含み得る。この構成によって,
図1a及び
図1bに示すクローズドボアMRI MR−1又は
図2a及び
図2bに示すオープンボアMRI MR−2のいずれに対しても,装置を一方のタイプのMRI装置から他方のタイプのMRI装置へ移動させる際に90°回転させる必要なく,すぐに使用可能となる。
【0039】
図7は,本発明の一態様に係る別の実施形態である装置GA−2を示す。この装置GA−2は,MRI環境の強い磁場にさらされて働く職員等によって着用される。この実施形態は,着用者及びその近傍の職員に,着用者が過度の磁場の領域に進入したことについて,注意を喚起する。医療規則及び国際的な安全性基準の多くは,一般市民がさらされる磁場強度の限度を5ガウス(500μテスラ)未満と規定している。心臓ペースメーカーや医療インプラントを有する職員や,妊娠中の職員にとっては,過度の磁場強度への暴露の危険性は,より高まる。
【0040】
装置GA−2は,ボールペンに似た筐体15内に収容される。ポケットクリップ16によって,磁場強度センサ11は垂直方向を向く。代わりに,筐体の頂部に位置するリング17により,首にかけるストラップに取り付けることも可能である。起動回路19が設けられ,その構成は,
図5に示され,
図6で図示された起動回路13と同一又は同様であってよい。バッテリ18(
図7)が設けられる(すなわち,
図5に示すBT1の機能が設けられる。バッテリ18は,小型のボタン型バッテリであり得る。他の例同様,音声・視覚警報器14は,磁場強度センサ11に動作可能に接続され,起動回路19を介してバッテリ18に動作可能に接続される。装置GA−2の下から上へ向かって,ボタン型バッテリ18,起動回路19,磁場強度センサ11,及び音声・視覚警報器14の位置が示されている。しかし,これらの位置は異なっていてもよい。
【0041】
本発明は,MRI環境に加えて,NMRスペクトロメータ等の,その他の核磁気共鳴(NMR)装置にも適用可能である。NMRスペクトロメータには,20テスラを超える磁場強度を有するものがある。
【0042】
このように,本発明は,前述の態様の任意の組み合わせを含み得ることを理解されたい。本発明が提供する例示的な態様のいくつかは,以下に挙げるものを含み,これらは任意の組み合わせでまとめることができる。
【0043】
磁場強度閾値警報器は,磁場に反応し,所定の閾値を超える磁場強度に応答して作動し,エネルギーを消費することなく作動するように動作可能に構成された検知手段と,前記検知手段の作動に反応して警報を出力する警報手段であって,前記検知手段の作動より前にエネルギーを消費しないように構成され,前記検知手段の作動の後にのみエネルギーを消費する警報手段とを備える。
【0044】
あるいは,磁場強度閾値警報器は,磁場に反応し,所定の閾値を超える磁場強度に応答して作動する検知手段と,前記検知手段の作動に反応して警報を出力する警報手段と,少なくとも前記警報手段が前記警報を出力するための電気エネルギーを供給するエネルギー貯蔵手段とを備え,前記検知手段と,前記警報手段と,前記エネルギー貯蔵手段とは,前記検知手段が作動した時にのみ前記エネルギー貯蔵手段から電気エネルギーが供給されるように,動作可能に接続される。
【0045】
あるいは,磁場強度閾値警報器は,磁場に反応し,所定の閾値を超える磁場強度に応答して作動し,エネルギーを消費することなく作動するように動作可能に構成された検知手段と,前記検知手段の作動に反応して警報を出力する警報手段と,少なくとも前記警報手段が前記警報を出力するための電気エネルギーを供給するエネルギー貯蔵手段とを備え,前記警報手段は,前記検知手段の作動よりも前に前記警報手段がエネルギーを消費しないように構成されて,前記エネルギー貯蔵手段に動作可能に接続される。
【0046】
磁場強度閾値警報器は,前記検知手段と,前記警報手段と,エネルギー貯蔵手段とを動作可能に接続し,前記検知手段が作動した時にのみ電気エネルギーが供給されるように電気エネルギーの供給を制御する制御手段を更に備えてもよい。
【0047】
前記磁場強度閾値警報器は,前記検知手段が作動していない時には,前記磁場強度閾値警報器から電磁エネルギーを放射しないように構成されてもよい。
【0048】
前記検知手段は,前記検知手段への前記磁場の入射方向に関係なく前記磁場に反応するように構成されてもよい。
【0049】
前記検知手段は,スイッチ開状態とスイッチ閉状態との間で動作可能なスイッチを備えてもよく,前記スイッチは,磁場が前記所定の閾値を超えると,前記スイッチ開状態から前記スイッチ閉状態へと変わる。
【0050】
前記検知手段は,前記スイッチが前記スイッチ開状態から前記スイッチ閉状態へと変わる前記磁場の閾値を変更するための調節可能なバネを備えてもよい。
【0051】
前記検知手段は,少なくとも1つの磁石を有してもよく,前記磁石の数は,前記スイッチが前記スイッチ開状態から前記スイッチ閉状態へと変わる前記磁場の閾値の変更に関連する。
【0052】
前記検知手段は,加速によって誤作動しないように構成されてもよい。
【0053】
前記検知手段は,質量中心と一致する回転軸を有する回転可能部材を備えてもよい。
【0054】
前記警報手段は,音声警報と視覚警報の少なくとも一方を含んでもよい。
【0055】
前記磁場強度閾値警報器は,前記検知手段がオープンボアMRI又はクローズドボアMRIからの磁場に反応するように構成されてもよい。
【0056】
前記検知手段は,オープンボアMRI又はクローズドボアMRIからの磁場にそれぞれ反応する少なくとも1つの磁場強度センサを備えてもよい。
【0057】
前記磁場強度閾値警報器は,前記検知手段が核磁気共鳴装置からの磁場に反応するように構成されてもよい。
【0058】
前記磁場強度閾値警報器は,MRI磁石室に持ち込まれ得る機器に取り付けられるように構成されてもよく,前記機器の位置におけるMRI磁石室内のMRIからの磁場強度が前記所定の閾値を超えたことに応答して警報を発する。
【0059】
前記磁場強度閾値警報器は,人が着用するように構成されてもよい。
【0060】
磁場強度センサは,磁場のトルクを受ける磁化バーを含む。磁場が高まると,このトルクはいずれ,バネの張力に打ち勝つのに十分となる。この磁化バーは,円筒状の接触領域の側面と接触し,電気回路を閉じる。MRI磁石によって特定の静磁場強度が生じた時に接触を閉じるように,バネの張力を調節すること,又はバー磁石に使用される磁石を変えることによって,磁場強度センサの閾値又は「設定点」を制御できる。事前設定された磁場強度に達した場合,磁場強度センサは電気スイッチを閉じる。バー磁石は,360°の視界を自由に偏向する。スイッチを閉じることにより,バッテリからコンデンサに充電される。このコンデンサに充電されたエネルギーによって,バッテリを警報回路に接続してラッチする回路が起動する。そして警報器は,事前設定の磁場強度値を超える磁場強度を有する領域に機器が進入したことを職員に警告する警報を発する。警報器が作動していない状態では,バッテリからエネルギーは失われず,電磁エネルギーは放射されない。
【0061】
上述の実施形態を参照して本発明を説明した。本明細書を読み,理解することで,変更や修正がなされるだろう。添付の特許請求の範囲内において,そのような全ての変更や修正は,本発明の1以上の態様を組み合わせた実施形態に含まれるものとする。