(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
二つの前記連結部のうちの一方側の前記連結部は前記ゲートに近い側に配設され、他方側の前記連結部は一方側の前記連結部に比して前記延設部に近い側に配設されていることを特徴とする請求項2に記載の内装部材。
前記調整手段は、前記延設部と前記立壁部との境界と他方側の前記連結部との間及び前記立壁部の前記境界側、の少なくとも片方に形成されており、他方側の前記連結部から前記境界と離れる方向側の肉厚よりも厚くなるよう形成されていることを特徴とする請求項5に記載の内装部材。
樹脂製板状の立壁部と、該立壁部と所定の角度を成して延在する樹脂製板状の延設部と、前記立壁部の裏面と前記延設部の裏面とで形成される内隅部に配設され、構造体として機能する分岐壁と、を有する内装部材の製造装置であって、
前記分岐壁は、前記立壁部と、該立壁部及び前記延設部の少なくとも一つと、の二か所の連結部により連結されるものであり、
前記分岐壁は、前記立壁部及び前記延設部よりも小さい表面積を有して構成されるとともに、前記分岐壁の厚さは、前記立壁部及び前記延設部よりも小さくなるように構成されており、
前記製造装置は、樹脂成形装置であり、
前記内装部材の成型時に樹脂が導入されるゲートは、キャビティにおいて、前記立壁部に形成される一方側の連結部が成形される箇所に近接して配置されるとともに、前記立壁部及び前記延設部の少なくとも一方に形成される他方の前記連結部は、前記キャビティにおいて、一方側の前記連結部が形成される箇所に比して前記ゲートから離隔した位置に配設されており、
前記連結部のうち、前記ゲートから遠い側である他方の前記連結部における表面層は前記立壁部から導入された樹脂で構成されるとともに、裏面層は前記分岐壁より導入された樹脂で構成されるよう形成されている内装部材の製造装置。
【背景技術】
【0002】
自動車の車室内には内装部材が配設され、車室内の各部位を構成している。内装部材は複数の部品から構成され、これら複数の部品が組み付けられている。
例えば、自動車のドアには、ドアトリム等の内装部材が配設され、このドアトリムには、着座した乗員が肘を掛けられるようにアームレストが設置されている。
このような内装部材は、例えば、発泡樹脂等の所定の剛性を有する基材成形品であることが多い。
このような内装部材は、強度、耐久性が求められるのはもちろんのこと、乗員の視認範囲にその一部若しくは全部が露出することが想定されるため意匠性が求められるとともに、搭載性の観点から軽量化もまた求められる。
また、工業製品であるため、製造効率、コストパフォーマンス等も要求されるものである。
【0003】
ところで、このような内装部材には、樹脂からなる基材と、この基材裏面から分岐してまた基材に連結する分岐壁を備えたものがある。
例えば、アームレストが取付けられる基材の上方は、ドア躯体方向に折れ曲がっているが、この内隅を補強するために、分岐壁が形成されている。
【0004】
このように、樹脂からなる基材と、この基材裏面から分岐する分岐壁とから構成された内装部材を製造するにあたっては、通常、金型を用いた射出成型が行われる。
例えば、
図7及び
図8に示す従来例のように、立壁に直近する構造物付近に樹脂注入ゲートTを設け、この樹脂直近ゲートから金型のキャビティに樹脂を注入し、成形を行う方法である。
【0005】
しかし、このような方法を取ると、基材側のキャビティの方が分岐壁側のキャビティよりもはるかに体積が大きいことにより(製品となった内装部材の分岐壁の占有面積は、基材側の占有面積よりも十分に小さい)、また特に基材を薄肉成形する場合には、基材側の流体抵抗が大きくなるため、観察点P3に樹脂が到達する時間が、基材側流路Y2よりも分岐壁側流路Y1の方が短くなる。
【0006】
このため、樹脂の観察点P3において、分岐壁流路Y1から到達した樹脂が先に到達して冷却されるため、流路Y2より後から到達した樹脂との表面温度差が生じる。
この表面温度差が艶ムラとなり、製品の意匠性に影響を及ぼす可能性があった(
図9参照)。
また、このような表面温度差による艶ムラが発生した場合には、当該部分に部分塗装を行うことにより対処することができるが、コストや工数の点において不利となる。
【0007】
このため、意匠面に艶ムラを生じさせない方法として、異なった成形方法が考えられる(例えば特許文献1参照)。
特許文献1には、車両用内装部材の製造方法についての開示がなされている。
この技術によれば、基材側の樹脂層と、分岐壁が形成される側の樹脂層とを分けて成形する。
つまり、コア型に対して2種類の凹型を使用することによって、分岐壁が備えらえた部品を成型する。
このように、分岐壁が形成される裏面と、意匠面となる表面とに分けて成形することができるため、意匠面となる表面に温度差となる艶ムラが発生することを防止することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような特許文献1の技術においては、確かに、意匠面となる表面に温度差となる艶ムラが発生することを防止することは可能となるが、金型の使用数が多くなるため、コスト面で不利となる。
よって、金型の個数を増加させることなく、分岐壁を形成することにより生じる意匠面の艶ムラを解消させる成形方法の開発が望まれていた。
【0010】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、基材から分岐して形成される分岐壁を有する内装部材において、コストを増加させることなく意匠面の艶ムラが生じることを防止することが可能な内装部材及びその製造装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、意匠面の艶ムラを防止しながら低コスト化を実現するとともに、薄肉化を可能とし、より一層の軽量化を実現することを可能とした内装部材及びその製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題は、本発明の内装部材によれば、樹脂製板状の立壁部と、該立壁部と所定の角度を成して延在する樹脂製板状の延設部と、前記立壁部の裏面と前記延設部の裏面とで形成される内隅部に配設され、構造体として機能する分岐壁と、を有する内装部材であって、前記分岐壁は、前記立壁部と、該立壁部及び前記延設部の少なくとも一つと、の二か所の連結部により連結されており、前記分岐壁は、前記立壁部及び前記延設部よりも小さい表面積を有して構成されるとともに、前記分岐壁の厚さは、前記立壁部及び前記延設部よりも小さくなるように構成されており、前記連結部のうち、前記内装部材の成型時に樹脂が導入されるゲートから遠い側における表面層は前記立壁部から導入された樹脂で構成されるとともに、裏面層は前記分岐壁より導入された樹脂で構成されていることにより解決される。
【0012】
また、前記課題は、本発明の内装部材の製造装置によれば、樹脂製板状の立壁部と、該立壁部と所定の角度を成して延在する樹脂製板状の延設部と、前記立壁部の裏面と前記延設部の裏面とで形成される内隅部に配設され、構造体として機能する分岐壁と、を有する内装部材の製造装置であって、前記分岐壁は、前記立壁部と、該立壁部及び前記延設部の少なくとも一方と、の二か所の連結部により連結されるものであり、前記分岐壁は、前記立壁部及び前記延設部よりも小さい表面積を有して構成されるとともに、前記分岐壁の厚さは、前記立壁部及び前記延設部よりも小さくなるように構成されており、前記製造装置は、樹脂成形装置であり、前記内装部材の成型時に樹脂が導入されるゲートは、キャビティにおいて、前記立壁部に形成される一方側の連結部が成形される箇所に近接して配置されるとともに、前記立壁部及び前記延設部の少なくとも一つに形成される他方の前記連結部は、前記キャビティにおいて、一方側の前記連結部が形成される箇所に比して前記ゲートから離隔した位置に配設されており、前記連結部のうち、前記ゲートから遠い側である他方の前記連結部における表面層は前記立壁部から導入された樹脂で構成されるとともに、裏面層は前記分岐壁より導入された樹脂で構成されるよう形成されていることにより解決される。
【0013】
このように構成された本願においては、分岐壁の連結部分(ゲートから遠い側)において、表面層は立壁部から導入された樹脂で構成されるとともに、裏面層は分岐壁より導入された樹脂で構成される。
このように構成されているため、表面層に艶ムラが生じることを有効に防止することができる。
なお、「構造体」とは、例えば、クリップ取付部、ボス設置部等の部分を指す。
【0014】
また、具体的には、上記の内装部材において、前記連結部は、二か所配設されており、双方ともに前記立壁部に配設される。
更に、具体的には、二つの前記連結部のうちの一方側の前記連結部は前記ゲートに近い側に配設され、他方側の前記連結部は一方側の前記連結部に比して前記延設部に近い側に配設されている。
分岐壁は立壁部と延設部との内隅に形成される構造体(例えば、クリップ取付部、ボス設置部等)として機能するため、その表面積は立壁部及び延設部に比して小さいものとなり、よって、従来ではこのように内隅を形成する場合には、ゲートから注入された樹脂は、分岐壁から他方の連結部(ゲートから遠い側)に先に流入して冷却される可能性があった(これが艶ムラの原因となる)。
しかし、従来のような、立壁部から分岐して延設部へと合流する構成と異なり、本発明のような構成とすると、分岐壁は、立壁部から分岐して立壁部へと合流する構成(つまり、略コ字、ループ等)となる。
よって、ゲートから流入した樹脂が、分岐壁を通って他方側の連結部(ゲートから遠い側)へと到達する時間を遅らすことができるとともに、立壁部に双方の連結部が備えられるため、延設部に連結部を形成する場合に比して、ゲートから立壁部を通って他方側の連結部(ゲートから遠い側)に樹脂が到達する時間を短縮することができる。
よって、他方側の連結部(ゲートから遠い側)において、分岐壁からの樹脂が先に到達して冷却され、艶ムラの原因となることを有効に防止することができる。
つまり、成形時、延設部に近い側に配設される連結部(他方側の連結部)において、分岐壁側からの樹脂が先に到達して表面層にこの分岐壁からの樹脂が混入すると、これが艶ムラの原因となるが、表面層は、立壁部から到達した樹脂で構成されるため、艶ムラを防止することができる。
【0015】
更に、他の具体的な方策としては、前記分岐壁は、前記立壁部と前記延設部とを連絡するように備えられており前記分岐壁は、前記立壁部と前記延設部とを連絡する最短ルートよりも長くなるように構成されていると好適である。
また、他の具体的な方策としては、前記延設部及び前記立壁部、の少なくとも片方には、肉厚が大きくなるように形成された調整手段が形成されていると好適である。
このとき、前記調整手段は、前記延設部と前記立壁部との境界と他方側の前記連結部との間及び前記立壁部の前記境界側、の少なくとも片方に形成されており、他方側の前記連結部から前記境界と離れる方向側の肉厚よりも厚くなるよう形成されていると好適である。
また、他の具体的な方策としては、前記分岐壁は、前記立壁部と前記延設部とを連絡するように備えられており、前記分岐壁には、前記調整手段としての凹部が形成されており、該凹部において肉厚が小さくなっていると好適である。
【0016】
いずれにしても、立壁部から延設部にいたる流路の抵抗を低減させたり、一方側の連結部から他方側の連結部に至る経路である分岐壁に、樹脂流路抵抗となる障害を作成することにより、ゲートから他方側の連結部に至る複数経路の樹脂の到達時間を調整することができ、このため、他方の連結部を延設部に形成したとしても、成形時、他方の連結部への樹脂の到達を遅延させることができ、艶ムラを有効に防止することができる。
【0017】
また、分岐壁において、一方側の連結部から他方側の連結部への最短ルートよりも長いルートを確保する具体的方法として、前記分岐壁は、前記立壁部の前記ゲートに近い一方側の連結部から前記延設部と略平行となるよう延びたのち屈曲して他方側の連結部へと到達しており、一方側の前記連結部から、他方側の前記連結部へと至る距離は、最短距離よりも長い距離となるように、複数回屈曲して一方側の前記連結部から他方側の前記連結部へ到達するよう構成するとよい。
【0018】
また、上記の内装部材の製造装置において、前記キャビティにおいて、他方側の前記連結部が形成される箇所は、前記延設部が形成される箇所に配置されており、前記分岐壁を形成するキャビティは、一方側の前記連結部が形成される箇所から前記延設部が形成される箇所と略平行となるよう延びたのち屈曲して他方側の前記連結部が形成される箇所へと到達しており、前記キャビティの前記延設部が形成される位置において、該延設部と前記立壁部との境界と、他方側の前記連結部と、の間のギャップが、他方側の前記連結部から前記境界と離れる方向側のギャップよりも大きくなるよう形成されている第一の調整手段、前記キャビティの前記分岐壁が形成される位置において、凹形状部を形成しギャップが小さくなる位置を構成した第二の調整手段、一方側の前記連結部が形成される位置から、他方側の前記連結部が形成される位置へと至る距離を、最短距離よりも長い距離となるように、複数回屈曲して一方側の前記連結部が形成される位置から他方側の前記連結部が形成される位置へ到達するよう構成した第三の調整手段、のうち、少なくとも一つの調整手段が適用されていると、調整手段を適切に設定でき、艶ムラを防止することができるため好適である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の内装部材及び請求項9の内装部材の製造装置によれば、分岐壁の連結部分(ゲートから遠い側)を、表面層は立壁部から導入された樹脂で、裏面層は分岐壁より導入された樹脂で構成することができる。よって、表面層に艶ムラが生じることを有効に防止することができる。
請求項2及び請求項3の内装部材によれば、ゲートから流入した樹脂が分岐壁を通って他方の連結部(ゲートから遠い側)へと到達する時間を遅らすことができるとともに、立壁部に双方の連結部が備えられるため、延設部に連結部を形成する場合に比して、ゲートから立壁部を通って他方の連結部(ゲートから遠い側)に樹脂が到達する時間を短縮することができる。よって、他方の連結部(ゲートから遠い側)において、分岐壁からの樹脂が先に到達して冷却され、艶ムラの原因となることを有効に防止することができる。
請求項4、請求項5、請求項6、請求項7の内装部材、及び請求項10の内装部材の製造方法によれば、立壁部から延設部にいたる流路の抵抗を低減させたり、一方側の連結部から他方側の連結部に至る経路である分岐壁に、樹脂流路抵抗となる障害を作成することにより、ゲートから他方側の連結部に至る複数経路の樹脂の到達時間を調整することができ、艶ムラを有効に防止することができる。
このため、有効に艶ムラを防止しながら、他方の連結部を延設部に形成することができる。
請求項8の内装部材によれば、具体的に、一方側の連結部から他方側の連結部への最短ルートよりも長いルートを確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)に係る内装部材及びその製造装置について、各図を参照しながら説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の適用を示した例示に過ぎず、本発明を限定するものではない。
すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0022】
図1乃至
図3は、本発明の第一実施形態を示したものであり、
図1は車両ドア内部の概略説明図、
図2は第一内装部材を示す外観説明図、
図3は第一内装部材の断面構成と樹脂流路を示す模式図である。
また、
図4は、本発明の第二実施形態を示したものであり、第二内装部材の断面構成と樹脂流路を示す説明図である。
更に、
図5は、本発明の第三実施形態を示したものであり、第三内装部材の断面構成と樹脂流路を示す説明図である。
また更に、
図6は、本発明の第四実施形態を示したものであり、第四内装部材の断面構成と樹脂流路を示す説明図である。
【0023】
(第一実施形態)
図1乃至
図3により、本実施形態に係る第一内装部材1を説明する。
なお、本実施形態においては、車両用内装材として、ドアトリムDに基づいて説明するが、これに限らず、様々な車両用内装材の取り付けに応用することが可能である。例えば、樹脂部材を備えたインストルメントパネルやルーフライニング、或いは樹脂部材を備えたシートバック等にも適用可能である。
つまり、基材部分から、分岐壁が突出する構成を有する内装部材であれば、どのような部位に使用するものであっても適用することが可能である。
【0024】
図1に示すように、本実施形態に係る第一内装部材1は、ドアトリムDであり、車両用ドアの内張材である。
この車両用ドアの車室側には、ドアポケットD1等が配置されており、本実施形態においては特に
図1のX部分について説明する。
本実施形態に係る第一内装部材1は、第一立壁部11と、この第一立壁部11の一端辺側から屈曲して延設される第一延設部12と、第一立壁部11の裏面側から分岐して構造体として形成される第一分岐部13とを備えて構成されている。
なお、本実施形態において、この「構造体」とは、例えば、クリップ取付部、ボス設置部等の部分等を指す。もちろん、同様の構成を有する他の物を排除する意味ではなく、あくまでも例示であり、同様の構成物及び均等物は範囲に含まれる。
この第一内装部材1は、ポリプロピレン等の硬質の合成樹脂から形成されている。
図3に示すように、第一分岐部13は、第一立壁部11の下方側(ゲートTに近接する側)から分岐して、第一立壁部11の上方側(第一延設部12が形成される側)に連結するように、断面略コ字形状に形成されている。
【0025】
本実施形態においては、第一分岐部13において、第一立壁部11の下方から、第一延設部12が延びる方向と略平行に延びる部分を「第一底部13A」と記し、この第一底部13Aの端辺部から第一立壁部11と略平行に起立する部分を「第一側壁部13B」と記す。また、第一側壁部13Bの上端辺から第一延設部12と略平行に延びて第一立壁部11の上方側へ到達する部分を「第一天面部13C」と記す。
なお、第一側壁部13Bの側方部両側は閉塞されており、この閉塞している壁を「第一閉塞壁13D」と記す。
【0026】
このように、本実施形態においては、第一分岐部13は、第一底部13A、第一側壁部13B、第一天面部13Cにより、断面略コ字形状に形成されている。
また、第一分岐部13は、第一立壁部11と第一延設部12の内隅部に形成される所謂「構造体部分」であるため、第一立壁部11の面積(及び長手方向長さ)は、第一側壁部13Bの面積(及び同方向長さ)よりも十分に大きくなるように構成されることとなる。
また、第一立壁部11及び第一延設部12は、軽量化のために薄肉化される傾向があり、よって、内隅の補強の意味合いのある第一分岐部13に比べて肉厚が小さく形成されている。
【0027】
なお、以下、第一立壁部11の下方側(ゲートTに近接する側)から第一分岐部13が分岐する点を「下方分岐点P1」と記し、第一立壁部11の上方側(第一延設部12が形成される側)と第一分岐部13が合流する点を「上方連結点P2」と記す。
そして、第一延設部12において、第一側壁部13B直上の点を「観察点P3」とする。
この下方分岐点P1が「一方側の連結部」に相当し、上方連結点P2が「他方側の連結部」に相当する。
【0028】
従来例(
図7及び
図8参照)では、上方連結点P2と観察点P3が同一であった。
そして、前述の関係と同様に、従来分岐部1013は、従来立壁部1011と従来延設部1012の内隅部に形成される所謂「構造体部分」であるため、従来立壁部1011の面積(及び長手方向長さ)は、従来側壁部1013Bの面積(及び同方向長さ)よりも十分に大きくなるように構成されている。
【0029】
このため、ゲートTが従来立壁部1011の下端側に配設される場合には、流路Y1を流れる樹脂は、流路Y2を流れる樹脂よりも、早く観察点P3に到達する。
更に、前述の関係と同様に、従来立壁部1011と従来延設部1012は、従来分岐部1013に比して薄肉化されており、よって、成形におけるキャビティ幅も、従来立壁部1011及び従来延設部1012位置のキャビティ幅の方が、従来分岐部1013位置のキャビティ幅に比して小さくなる。
【0030】
よって、従来立壁部1011及び従来延設部1012位置における樹脂の流路抵抗は、従来分岐部1013位置における樹脂の流路抵抗よりも大きくなり、この現象により、流路Y2を流れる樹脂の観察点P3到達時間は、流路Y1を流れる樹脂の観察点P3到達時間よりもより一層遅れることとなる。
よって、観察点P3において、流路Y1から到達した樹脂が先に冷却されてしまい、この現象が最終製品の艶ムラ(
図9参照)の原因となる可能性があった。
【0031】
しかし、本実施形態においては、前述の通り、第一分岐部13は、第一立壁部11の下方側(ゲートTに近接する側)から分岐して、第一立壁部11の上方側(第一延設部12が形成される側)に連結するように、断面略コ字形状に形成されている。
つまり、第一分岐部13を通る流路Y1からの樹脂は、上方連結点P2にて流路Y2の樹脂と合流する。
よって、流路Y1からの樹脂合流の時間を延長させ、流路Y2からの樹脂の上方連結点P2への到達と合わせることができる。
このため、従来例において問題視されていた艶ムラ発生を有効に抑制することができる。
また、流路Y1からの樹脂合流の時間を延長させることができるため、艶ムラを起こすことなく、第一立壁部11及び第一延設部12を薄肉化することができる。
【0032】
(第二実施形態)
次いで、
図4により、第二実施形態について説明する。
上記、第一実施形態と同様の構成の説明は省略する。
第二実施形態に係る第二内装部材21は、第二立壁部211、第二延設部212、第二分岐部213を有して構成されている。
本実施形態に係る第二分岐部213は、
図4に示すように、第二立壁部211の下方側(ゲートTに近接する側)から分岐して、第二延設部212に連結するように、断面略L字形状に形成されている。
【0033】
本実施形態においては、第二分岐部213において、第二立壁部211の下方から、第二延設部212が延びる方向と略平行に延びる部分を「第二底部213A」と記し、この第二底部213Aの端辺部から第二立壁部211と略平行に起立して第二延設部212に到達する部分を「第二側壁部213B」と記す。
当該構成においては、第一分岐部13を構成していた第一天面部13Cに相当する構成はない。
このため、第一実施形態に係る上方連結点P2は、本実施形態においては、観察点P3と同一となり、よって、下方分岐点P1が「一方側の連結部」に相当し、観察点P3(上方連結点P2と一致する)が「他方側の連結部」に相当する。
なお、第一実施形態と同様に、第二側壁部213Bの側方部両側は閉塞されており、この閉塞している壁を「第二閉塞壁213D」と記す。
【0034】
本実施形態においては、第二延設部212の構成を変更した。
具体的には、第二延設部212において、第二分岐壁213との合流点である観察点P3よりもゲートTに近い位置(つまり、第二立壁部212との境界部側)に肉厚が大きくなる第二肉厚部G21を形成した。
この第二肉厚部G21は、第二延設部212において、観察点P3よりもゲートTから離隔する側よりも、肉厚が大きくなるように形成されている。
このため、流路Y2の観察点P3に至る流路抵抗を小さくし、流路Y2からの観察点P3への樹脂到達時間を促進させることができる。
よって、第一実施形態と同様に、艶ムラの発生を防止することができるとともに、第二立壁部211及び第二延設部212の肉厚を薄く成形することができる。
なお、この第二肉厚部は、「調整手段」、「第一の調整手段」に相当する。
【0035】
(第三実施形態)
次いで、
図5により、第三実施形態について説明する。
上記、第一実施形態及び第二実施形態と同様の構成の説明は省略及び簡略化する。
第三実施形態に係る第三内装部材31は、第三立壁部311、第三延設部312、第三分岐部313を有して構成されている。
本実施形態に係る第三分岐部313は、
図5に示すように、第三立壁部311の下方側(ゲートTに近接する側)から分岐して、第三延設部312に連結するように、断面略L字形状に形成されている。
【0036】
本実施形態においては、第三分岐部313において、第三立壁部311の下方から、第三延設部312が延びる方向と略平行に延びる部分を「第三底部313A」と記し、この第三底部313Aの端辺部から第三立壁部311と略平行に起立して第三延設部312に到達する部分を「第三側壁部313B」と記す。
当該構成においては、第一実施形態において、第一分岐部13を構成していた第一天面部13Cに相当する構成はない。
このため、第一実施形態に係る上方連結点P2は、本実施形態においては、観察点P3と同一となり、よって、下方分岐点P1が「一方側の連結部」に相当し、観察点P3(上方連結点P2と一致する)が「他方側の連結部」に相当する。
そして、第一実施形態と同様に、第三側壁部313Bの側方部両側は閉塞されており、この閉塞している壁を「第三閉塞壁313D」(図示せず:上記実施形態と同様に閉塞している)と記す。
【0037】
本実施形態においては、第三側壁部313Bの構成を変更した。
具体的には、本実施形態においては、制限凹部G31を形成した。
この制限凹部G31は、第三側壁部313Bの一面(第三立壁部311が配設される側を向く面に、第三側壁部313Bが第三延設部312に向かって立ち上がる方向と垂直な方向に渡って形成される溝である。
よって、この制限凹部G31が形成された部分の肉厚は、その他の部分よりも小さくなる。
このように、制限凹部G31により、流路Y1に流路抵抗が生じ、流路Y1からの観察点P3への樹脂到達時間を遅延させることができる。
よって、第一実施形態及び第二実施形態と同様若しくはより効率的に、艶ムラの発生を防止することができるとともに、第三立壁部311及び第三延設部312の肉厚を薄く成形することができる。
なお、この制限凹部G31は、「調整手段」、「第二の調整手段」に相当する。
【0038】
(第四実施形態)
次いで、
図6により、第四実施形態について説明する。
上記、第一実施形態乃至第三実施形態と同様の構成の説明は省略若しくは簡略化する。
第四実施形態に係る第四内装部材41は、第四立壁部411、第四延設部412、第四分岐部413を有して構成されている。
本実施形態に係る第四分岐部413は、
図6に示すように、第四立壁部411の下方側(ゲートTに近接する側)から分岐して、第四延設部412に連結するように形成されている。
【0039】
本実施形態においては、第四分岐部413のうち、第四立壁部411の下方から、第四延設部412が延びる方向と略平行に延びる部分を「第四底部413A」と記し、この第四底部413Aの端辺部から第四立壁部411が起立する方向に沿って第四延設部412に到達する部分を「第四側壁部413B」と記す。
当該構成においては、第一分岐部13を構成していた第一天面部13Cに相当する構成はない。
このため、第一実施形態に係る上方連結点P2は、本実施形態においては、観察点P3と同一となり、よって、下方分岐点P1が「一方側の連結部」に相当し、観察点P3(上方連結点P2と一致する)が「他方側の連結部」に相当する。
そして、第一実施形態と同様に、第四側壁部413Bの側方部両側は閉塞されており、この閉塞している壁を「第四閉塞壁413D」(図示せず:上記実施形態と同様に閉塞している)と記す。
【0040】
本実施形態においては、第四側壁部413Bの構成を変更した。
具体的には、本実施形態においては、第四側壁部413Bを段状に形成した。
つまり、第四底部413Aから一度、第四延設部412方向に起立した後、第四立壁部411方向へ(第四延設部412と略平行に)折れ曲がり、再び第四延設部412方向に起立し、再度、第四立壁部411から離れる方向に(第四延設部412と略平行に)折れ曲がった後、第四延設部412方向に立上ってこれに連結される段形状となるように形成される。
この階段形状が、流路延長部G41であり、これが「調整手段」、「第三の調整手段」に相当する。
これにより、ゲートTから流路Y1を通って第四延出部412に向かう経路が長くなるため、流路Y1からの観察点P3への樹脂到達時間を遅延させることができる。
【0041】
このように、本実施形態においては、流路延長部G41(つまり、第四側壁部413Bの段形状)により、流路Y1からの観察点P3への樹脂到達時間を遅延させることができる。
よって、第一実施形態乃至第三実施形態と同様若しくはより効果的に、艶ムラの発生を防止することができるとともに、第四立壁部411及び第四延設部412の肉厚を薄く成形することができる。