特許第5690434号(P5690434)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5690434電気錫めっき鋼板のリフロー処理設備における冷却装置および冷却方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5690434
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】電気錫めっき鋼板のリフロー処理設備における冷却装置および冷却方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 5/50 20060101AFI20150305BHJP
   C25D 5/26 20060101ALI20150305BHJP
【FI】
   C25D5/50
   C25D5/26 B
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-161562(P2014-161562)
(22)【出願日】2014年8月7日
【審査請求日】2014年8月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】新日鉄住金エンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390022873
【氏名又は名称】NSプラント設計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】二宮 慶史
(72)【発明者】
【氏名】神尾 圭司
(72)【発明者】
【氏名】洗川 拓也
【審査官】 阿川 寛樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−180596(JP,A)
【文献】 特開平09−157890(JP,A)
【文献】 特開2001−288594(JP,A)
【文献】 特開平05−163596(JP,A)
【文献】 特開平02−243793(JP,A)
【文献】 特開昭51−126934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 5/50
C25D 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気錫めっき鋼板のリフロー処理設備における冷却装置において、
上方から下方へ搬送される前記電気錫めっき鋼板の表裏面に向けて、冷却媒体を噴射する冷却装置のみを前記電気錫めっき鋼板の搬送方向に複数段配設し、
前記冷却装置の入側および出側における、前記電気錫めっき鋼板の温度を検出又は演算する温度検出又は演算手段のいずれかを配設するとともに、
前記温度検出又は演算手段で検出又は演算された前記電気錫めっき鋼板の入側および出側の温度に応じて、前記冷却装置の冷却媒体流量を制御する流量制御手段を備え、前記冷却装置出側の前記電気錫めっき鋼板の温度が140℃以下であることを特徴とする
電気錫めっき鋼板のリフロー処理設備における冷却装置。
【請求項2】
前記冷却装置は、それぞれ独立に冷却媒体流量を制御する流量調整装置を有していることを特徴とする
請求項1に記載の電気錫めっき鋼板のリフロー処理設備における冷却装置。
【請求項3】
前記冷却装置の冷却媒体を水又は水と蒸気を混合した媒体することを特徴とする
請求項1又は2に記載の電気錫めっき鋼板のリフロー処理設備における冷却装置。
【請求項4】
電気錫めっき鋼板のリフロー処理設備における冷却方法であって、
上方から下方へ搬送される前記電気錫めっき鋼板の表裏面に向けて、上下方向に複数段配設した冷却装置のみで冷却媒体を噴射し、前記冷却装置の入側および出側における前記電気錫めっき鋼板の温度を検出又は演算し、前記電気錫めっき鋼板の入側および出側の温度に応じて前記冷却装置の冷却媒体流量を制御し、前記冷却装置出側の前記電気錫めっき鋼板の温度を140℃以下に冷却することを特徴とする
電気錫めっき鋼板のリフロー処理設備における冷却方法。
【請求項5】
前記冷却装置内で前記電気錫めっき鋼板の温度が低下するのに応じて、前記冷却装置の冷却媒体流量を錫の凝固点以下温度に到達するまで傾斜的に低下させるように制御することを特徴とする
請求項4に記載の電気錫めっき鋼板のリフロー処理設備における冷却方法。
【請求項6】
冷却媒体流量の制御を実施する区域を錫の凝固点以下温度に到達するまで前記電気錫めっき鋼板を冷却する上部冷却区域と錫の凝固点以下温度に到達した前記電気錫めっき鋼板を冷却する下部冷却区域に分割し、前記上部冷却区域の流量W1が前記下部冷却区域の流量W2より小さいことを特徴とする
請求項4又は5に記載の電気錫めっき鋼板のリフロー処理設備における冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気錫めっき鋼板を加熱して表面の錫を溶融した後、急冷することにより良好な金属光沢を得るためのリフロー処理において、電気錫めっき鋼板を急冷する冷却装置および冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リフロー処理における冷却装置には、クエンチタンクが用いられているが、加熱された電気錫めっき鋼板をクエンチタンクに突入させるとクエンチタンク内の冷却水が沸騰し、発生した気泡が鋼板表面を覆うことによって溶融錫の凝固が不均一になるため、クエンチステインと呼ばれる汚れ模様の表面欠陥が発生するという問題があった。
【0003】
そこで、このクエンチステインを防止する技術が種々開発されており、例えば、特許文献1には、クエンチタンク上部に設置された多段冷却ノズルとクエンチタンクとクエンチタンク内に設置された液中スプレーノズルで構成された冷却装置において、リフローされた電気錫めっき鋼板のクエンチタンク入口温度が一定(錫凝固点温度以下)となるように、多段冷却ノズルから高圧大容量の空気又は窒素を吹き付けて鋼板の温度をフィードバック制御し、次いでクエンチタンク内に設置した高圧大容量の液中スプレーで冷却を行うことにより、クエンチステインを防止する方法が開示されている。
また、特許文献2には、クエンチタンク内での鋼板表面の沸騰状態を安定化させることを目的に、リフローされた電気錫めっき鋼板によってクエンチタンク内に搬入される熱量に応じて、クエンチタンク内の冷却水が適正な温度を保つようにフィードフォワード制御することにより、クエンチステインを防止する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−285195号公報
【特許文献2】特開2011−190467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されている技術では、高圧大容量の冷却ガスが使用されており、鋼板上の溶融された錫にこの高圧大容量の冷却ガスを吹き付けると、ガス圧力による溶融錫の微視的な凹凸、すなわち、風紋と呼ばれる欠陥模様が発生してしまう。また、非接触式温度計によってクエンチタンクの入側での鋼板の温度を測定しようとしても、測定点がクエンチタンク直上となるため、クエンチタンクから発生する多量の蒸気雰囲気の中での測定となり、鋼板の温度を安定して測定することが困難である。その結果、鋼板が錫の融点以上の温度でクエンチタンクに突入してしまうと、やはり沸騰によって発生した気泡によるクエンチステインが発生する。
【0006】
特許文献2に記載されている技術では、クエンチタンクに搬入される熱量に応じてクエンチタンク水温を制御しようとしても、クエンチタンク内に相当量の水量があるため熱慣性が大きく、水温を即座には変更することができないため、完全にクエンチステインを防止することが困難である。
【0007】
本発明の課題は、このような問題点を解消するために、電気錫めっき鋼板のリフロー処理において、クエンステインを防止する冷却装置および冷却方法を提供するものである。
すなわち、この発明のクエンチステイン防止方法は、リフローされた電気錫めっき鋼板を浸漬冷却させなければ、浸漬時の沸騰により発生する気泡を有効に防止できること、および冷却媒体噴射方式によれば、その冷却能を即座に変更できることに着目してなされたものであり、具体的には、リフローされた鋼板を浸漬冷却させることなく、流量制御機能を有した冷却媒体噴射装置のみで冷却することを特徴とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、電気錫めっき鋼板のリフロー処理設備における冷却装置において、上方から下方へ搬送される前記電気錫めっき鋼板の表裏面に向けて、冷却媒体を噴射する冷却装置のみを前記電気錫めっき鋼板の搬送方向に複数段配設し、前記冷却装置の入側および出側における、前記電気錫めっき鋼板の温度を検出又は演算する温度検出又は演算手段のいずれかを配設するとともに、前記温度検出又は演算手段で検出又は演算された前記電気錫めっき鋼板の入側および出側の温度に応じて、前記冷却装置の冷却媒体流量を制御する流量制御手段を備え、前記冷却装置出側の前記電気錫めっき鋼板の温度が140℃以下であることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の電気錫めっき鋼板のリフロー処理設備において、前記冷却装置は、それぞれ独立に冷却媒体流量を制御する流量調整装置を有していることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の電気錫めっき鋼板のリフロー処理設備において、前記冷却装置の冷却媒体を水又は水と蒸気を混合した媒体とすることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、電気錫めっき鋼板のリフロー処理設備における冷却方法であって、上方から下方へ搬送される前記電気錫めっき鋼板の表裏面に向けて、上下方向に複数段配設した冷却装置のみで冷却媒体を噴射し、前記冷却装置の入側および出側における前記電気錫めっき鋼板の温度を検出又は演算し、前記電気錫めっき鋼板の入側および出側の温度に応じて前記冷却装置の冷却媒体流量を制御し、前記冷却装置出側の前記電気錫めっき鋼板の温度を80℃以下に冷却することを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の電気錫めっき鋼板のリフロー処理設備における冷却方法において、前記冷却装置内で前記電気錫めっき鋼板の温度が低下するのに応じて、前記冷却装置の冷却媒体流量を錫の凝固点以下温度に到達するまで傾斜的に低下させるように制御することを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項4又は5に記載の電気錫めっき鋼板のリフロー処理設備における冷却方法において、冷却媒体流量の制御を実施する区域を錫の凝固点以下温度に到達するまで前記電気錫めっき鋼板を冷却する上部冷却区域と錫の凝固点以下温度に到達した前記電気錫めっき鋼板を冷却する下部冷却区域に分割し、前記上部冷却区域の流量W1が前記下部冷却区域の流量W2より小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明の冷却装置又は請求項4に係る発明の冷却方法によれば、クエンチタンクを使用しないので、リフロー処理された電気錫めっき鋼板をクエンチタンク内に浸漬することで発生する沸騰による気泡を防止でき、クエンチステインの発生を確実に防止できる。
【0015】
また、冷却装置の入側および出側における電気錫めっき鋼板の温度を検出又は演算するとともに、冷却媒体流量を制御するようにしているので、電気錫めっき鋼板の入側および出側の温度に応じて、即座に冷却媒体流量を制御することにより冷却能を変更でき、クエンチステインが発生しない適正な冷却条件を安定的に保つことができる。
【0016】
請求項2に係る発明の冷却装置又は請求項5に係る発明の冷却方法によれば、電気錫めっき鋼板の搬送方向に沿ってそれぞれ独立して冷却媒体流量を調整できるので、冷却が進行するに従い電気錫めっき鋼板の温度が低下するのに応じて、冷却媒体流量を錫の凝固点以下温度に到達するまで傾斜的に低下させ、電気錫めっき鋼板表面(伝熱面)での熱流束、すなわち沸騰状態(安定した膜沸騰状態が望ましい)を一定に保つことができる。したがって、電気錫めっき鋼板を安定して均一に冷却することが可能となり、クエンチステインをより確実に防止できる。
【0017】
請求項3に係る発明の冷却装置によれば、冷却媒体に水又は水と蒸気の混合体を使用するので、冷却媒体の温度を容易に制御でき、冷却能の調整範囲が広くなる。
【0018】
請求項2に係る発明の冷却装置又は請求項4若しくは5に係る発明の冷却方法において、クエンチステインを発生させない条件で冷却を進行させ、鋼板表面の溶融錫を凝固させれば、以降は制約なく最大の冷却能で冷却すればよい。すなわち、冷却媒体流量制御を実施する区域を上部冷却区域と下部冷却区域に分割し、上部冷却区域で錫凝固点以下温度に到達するまで電気錫めっき鋼板を冷却し、下部冷却区域では錫の凝固点以下温度に到達した電気錫めっき鋼板により多くの流量を噴射することで、冷却装置の設置スペースをコンパクトにすることができる。
【0019】
さらに、請求項2に係る発明の冷却装置では、電気錫めっき鋼板の搬送方向に沿ってそれぞれ独立して冷却媒体流量を調整できるので、鋼板表面の錫が溶融してから冷却を開始するまでの距離を自由に制御することができるため、クエンチステインを防止しながら、かつ、錫合金量の微調整も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例の冷却装置の概略構成を示す図。
図2】実施例の冷却装置における電気錫めっき鋼板の温度変化を示すグラフ。
図3】実施例の冷却方法を示す模式図。
図4】実施例の上部冷却装置の概略構成を示す図。
図5】実施例の錫合金量の制御方法を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0021】
図1に示すように、電気錫めっき鋼板1は第1コンダクターロール2と搬送ロール4および5を介して第2コンダクターロール3に搬送される。搬送ロール5と第2コンダクターロール3との間に、電気錫めっき鋼板1の表裏面に向けて冷却媒体を噴射する冷却装置が配設されている。
【0022】
冷却装置は、ノズルヘッダ22a〜n、24a〜nと、ノズルヘッダ22a〜n、24a〜nに取り付けられたノズル23a〜n、25a〜nと、ノズルヘッダ22a〜n、24a〜nに供給される冷却媒体の流量を調整する流量調整弁20a〜n、21a〜nとが、電気錫めっき鋼板1の搬送方向に複数段配設されている。
そして、複数段設置された冷却配管は表用冷却ヘッダ17および裏用冷却ヘッダ18に連結されている。各冷却ヘッダ17、18には、冷却配管13、14が表用流量調整弁15および裏用流量調整弁16を介して連結されている。
冷却媒体供給ヘッダには混合器12が配設されており、混合器12には蒸気配管26が連結されている。
【0023】
冷却装置の入口には電気錫めっき鋼板1の冷却開始点Bにおける温度を検出する冷却前温度検出器又は演算器8が配置され、冷却装置の出口には、電気錫めっき鋼板1の冷却終了点Dにおける温度を検出する冷却後温度検出器又は演算器9が配置されている。
冷却前温度検出器又は演算器8、および冷却後温度検出器又は演算器9で測定された電気錫めっき鋼板1の温度は制御装置10に送信され、制御装置10は演算結果に基づいて、各流量調整弁15、16、20、21を制御する。
【0024】
図2に示すように、電気錫めっき鋼板1は第1コンダクターロール2と第2コンダクターロール3の間で通電加熱により冷却開始前温度が予め設定された錫の融点温度以上に加熱され、冷却装置に侵入する。
【0025】
冷却装置では、表用流量調整弁15と裏用流量調節弁16を開として表用冷却ヘッダ17および裏用冷却ヘッダ18に通水する。各冷却ヘッダ17、18より電気錫めっき鋼板1の搬送方向に複数段に配設した流量調整弁20a〜nおよび21a〜nを開いて各段のノズルヘッダ22a〜nおよび24a〜nに通水することで、各段のノズル23a〜nおよび25a〜nから電気錫めっき鋼板1に向かって冷却媒体が噴射される。
冷却媒体により冷却された電気錫めっき鋼板1は、冷却装置内で錫融点以下のC点を経て、D点まで冷却される。
【0026】
ここで、各温度検出器又は演算器8、9によって測定された、電気錫めっき鋼板1の冷却前温度と冷却後温度は、制御装置10に送信され、制御装置10によってクエンチステインの発生しない最適冷却条件を演算し、演算結果を用いて各流量調整弁15、16、20a〜n、21a〜nを制御する。最適冷却条件の演算は、電気錫めっき鋼板1の冷却前後温度に加えて、電気錫めっき鋼板1の生産条件、すなわち、板厚、板巾、ライン速度の各パラメーターを用いて計算される。
【0027】
また、冷却媒体の温度を調整できるように、蒸気配管26が冷却配管11に連結されている。
冷却配管11には混合器12を設置し、この混合器12に前記した蒸気配管26が連結されている。冷却水と蒸気が混合された冷却水は混合器12の出側の冷却配管13に設置した温度計28により温度が検知され、設定温度になるように蒸気弁27が調整される。
このように、電気錫めっき鋼板1に噴射する冷却媒体の温度を任意に設定できるように構成されている。
【0028】
図3は、冷却開始点Bにおける冷却前温度から、C点において錫凝固点以下の温度へ電気錫めっき鋼板1が冷却される際の冷却媒体流量の制御方法について模式的に示したものである。
従来の電気錫めっき鋼板1の冷却方法である冷却媒体の一定流量方法では、電気錫めっき鋼板1の温度が下がるにつれて鋼板表面(伝熱面)での熱流束が上がり、その結果、鋼板表面で遷移沸騰領域や核沸騰領域となりクエンチステインが発生しやすくなる。
そのため、本発明においては、図3の実線30に示すように、電気錫めっき鋼板1の冷却が進行するに従い鋼板の温度が低下するのに応じて、一点鎖線31に示すように冷却媒体流量を傾斜的に低下させる。このようにすることで、電気錫めっき鋼板表面(伝熱面)での熱流束、すなわち沸騰状態(安定した膜沸騰状態が望ましい)を一定に保つことができる。
したがって、電気錫めっき鋼板1を安定して均一に冷却することが可能となり、クエンチステインをより確実に防止できる。
【0029】
また、電気錫めっき鋼板1が錫凝固点以下温度に到達し、錫の凝固が完了すれば、それ以降はクエンチステインの発生に関して制約なく冷却することが可能となる。
したがって、C点以降は一点鎖線32に示すように冷却媒体流量を多くすれば、冷却長が短縮でき、設備をコンパクトにすることができる。
【実施例2】
【0030】
図4は、本発明の冷却装置を用いたその他の実施例である。
本実施例では、各流量調整弁42a〜f、44a〜fを上部の一部だけ閉とすることで、鋼板表面の錫が溶融してから冷却を開始するまでの距離を自由に変更することができるため、クエンチステインを防止しながら、錫合金量の微調整も可能となる。
なお、実施例1と同様に、冷却装置は表用流量調整弁37、裏用流量調整弁38、ノズルヘッダ46a〜fおよび47a〜f等を備えている。
【0031】
図5は錫合金量の制御方法について模式的に示したものである。電気錫めっき鋼板1のリフロー処理においては、錫と母材の鉄との間に錫合金層が形成され、この錫合金量は、電気錫めっき鋼板1の耐食性に関わる重要な因子であり、品質上管理が必要となる。
錫合金量は、リフロー処理の際に、錫が融点に到達してから再凝固する(錫合金が成長する)までの距離、すなわち三角形51,52,53の面積によって決定される。
したがって、例えば、電気錫めっき鋼板1の冷却開始点Bを基準(流量調整弁42b〜fおよび44b〜fのみを開)とした場合、錫合金量を少し減少させたいときは冷却開始点をB1(流量調整弁42a〜fおよび44a〜fを全て開)として冷却開始を早め、錫合金量を少し増加させたいときは冷却開始点をB2(流量調整弁42c〜fおよび44c〜fのみを開)として冷却開始を遅くすれば、精密に錫合金量を制御できる。
【符号の説明】
【0032】
1 電気錫めっき鋼板 2 第1コンダクターロール
3 第2コンダクターロール 4 搬送ロール 5 搬送ロール
6 通電加熱制御装置 8 冷却前温度検出器又は演算器
9 冷却後温度検出器又は演算器 10 流量制御装置 12 混合器
13、14 冷却配管 15 表用流量調整弁 16 裏用流量調整弁
17 表用冷却ヘッダ 18 裏用冷却ヘッダ 20a〜n 流量調整弁
21a〜n 流量調整弁 22a〜n ノズルヘッダ 23a〜n ノズル
24a〜n ノズルヘッダ 25a〜n ノズル 26 蒸気配管
27 蒸気流量調整弁 28 温度計 30 電気錫めっき鋼板温度
31 冷却媒体流量(錫凝固前) 32 冷却媒体流量(錫凝固後)
37 表用流量調整弁 38 裏用流量調整弁
42a〜f 流量調整弁 44a〜f 流量調整弁
46a〜f ノズルヘッダ 47a〜f ノズルヘッダ
【要約】      (修正有)
【課題】電気錫めっき鋼板のリフロー処理設備における冷却装置又は冷却方法において、クエンチステインの発生を防止するとともに、冷却装置出側における電気錫めっき鋼板1の温度を140℃以下に制御できるようにする。
【解決手段】上方から下方へ搬送される電気錫めっき鋼板1の表裏面に向けて、冷却媒体を噴射するノズル23a〜n、25a〜nを複数段配設し、冷却装置の入側および出側に、電気錫めっき鋼板1の温度を検出又は演算する温度検出器又は演算器8、9を配設するとともに、温度検出器又は演算器8、9で測定された電気錫めっき鋼板1の入側および出側の温度に応じて、冷却装置の冷却媒体流量を制御する流量制御装置10を備え、冷却装置出側の電気錫めっき鋼板1の温度が140℃以下となるようにする電気錫めっき鋼板のリフロー処理設備における冷却装置。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5