(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜6に記載の装置によれば、液体をより均一に撹拌させることができ、しかも撹拌させる際に撹拌羽根を高速回転させないので、危険性が少なく、かつ撹拌容器内壁に羽根をぶつけることがないため撹拌工程を安定的に行うことができる。
しかしながら撹拌と同時に加熱を行う際には、撹拌装置とは別に加熱ヒータ等の加熱装置も撹拌容器内に投入させる必要があり、この結果、折角、撹拌容器内に均一に撹拌できる液体の流れが形成されても、別に投入したヒータによりその流れが阻害されてしまう。
さらに撹拌工程において撹拌の強さを変化させる際には、同時に加熱の強さも調整する必要があるところ、撹拌と加熱を別の装置で行うと、これらの強さを関連付けて制御することが困難になる。
また、例えば粘度が比較的高い液体を撹拌する際に、撹拌容器内の加熱ヒータの設置箇所と撹拌装置の設置箇所が離れると、加熱により粘度が低下した部分の液体を撹拌容器内に送ることが困難になり、加熱による粘度の低下が液体の撹拌を容易にするまでに長い時間がかかる。
【0007】
特許文献7及び8に記載の、加熱のための機構と撹拌装置を一体化させた装置によると、撹拌翼を回転させる軸や、撹拌容器全体にわたり拡がる撹拌翼に加熱装置が内蔵されるので、撹拌による液体の流れがヒータにより阻害されることはない。
しかしながら、例えば特許文献7に記載の装置によれば、撹拌翼により形成される液体の流れとヒータにより加熱される箇所とが離れることがあるので、粘度が高い液体を加熱しながら撹拌する際に、加熱により粘度が低下した部分の液体を速やかに撹拌容器内に拡げることが困難である。
また、特許文献8の装置では、撹拌容器内全体にわたって拡がる回転撹拌翼内部全体に熱媒を通すので、撹拌容器外で加熱された熱媒を回転軸内に供給する構造が複雑になり、かつ、撹拌翼全体に対して均一に熱媒を供給することが困難であるし、回転翼自体の重量も重くなるので、撹拌に多大なエネルギーを要することになる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の課題を解消するためのものであり、具体的には以下の通りである。
1.回転軸に支持された撹拌体であって、
回転軸上及び/又は回転軸付近に液体吸入口を備え、
該液体吸入口より回転軸から離れた箇所に該液体吸入口に連通路により連通する液体吐出口を備え、
該連通路内及び/又は液体吐出口を加熱するヒータを備えた撹拌体。
2.該ヒータは該連通路に隣接して設けられているか、及び/又は、液体吐出口付近に設けられている1に記載の撹拌体。
3.該ヒータは撹拌体内に設けられている1又は2に記載の撹拌体。
4.液体吸入口及び液体吐出口をそれぞれ独立して1つ以上有し、連通路は液体の流れを分岐及び/又は合流可能に設けられている1〜3のいずれかに記載の撹拌体。
5.1〜4のいずれかに記載の撹拌体を、該回転軸方向に1つ以上配置して構成してなる撹拌装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の撹拌体は、回転翼を有するものではなく、液体吸入口から吸入した液体を遠心力を利用して撹拌体の縁部に設けた液体吐出口から吐出させることによって撹拌させるものであって、このとき、加熱用ヒータが該連通路内及び/又は液体吐出口を加熱するように配置されて、該吐出口付近や該連通路内の液体を加熱するので、このような撹拌体内での液体の加熱によって該液体の粘度が低下し、それにより流動性を増した液体は、該液体吐出口から撹拌容器壁面に向かう方向にさらに円滑に吐出されることができる。
つまり撹拌体内の液体は撹拌体の回転による遠心力を受けて撹拌体の吐出口からの吐出を促進すると同時に、連通路内での加熱による粘度低下によって流動性が高くなり、さらに該吐出口に向けて流通されやすくなる。
よって、撹拌開始時に液体が比較的高粘度の状態であっても、撹拌体は比較的流体抵抗を受けることなく回転を開始することができ、加熱を継続しながら撹拌体を回転させることにより、撹拌に要するエネルギーをより小さくしながら、速やかに液体を均一に加熱・撹拌することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の撹拌体に関して、その基本的事項を説明する。
本発明の撹拌体は、モータ等の公知の駆動源により回転される回転軸に接続されるものであり、撹拌体は撹拌容器内の液体に浸漬されて回転することにより撹拌容器内の液体を撹拌体内に吸入し、これを吐出することを基本とする。
撹拌される対象の液体は特に限定されず、液体、エマルジョン、分散液等、いわゆる流動性を有し、液体として撹拌される物質であれば特に制限されるものではなく、公知の撹拌装置により撹拌される液体に使用される。
中でも加熱を併用して撹拌する液体(未加熱時には固体であるが加熱撹拌後液体となるものも包含する)に対して使用することが望ましい。
【0012】
このような本発明の撹拌体は、特に、加熱しながら撹拌することができる撹拌装置であって、例えば撹拌容器の外面から液体を加熱するような装置や、撹拌体とは別にヒータを撹拌容器内に投入または設置して加熱を行いながら撹拌を行う装置、撹拌羽根に加熱装置を埋設した装置、撹拌容器外に加熱手段を備えた循環経路を設けてこの循環経路内に被加熱液体を循環・加熱する装置等の装置において、これらの撹拌及び加熱に関する装置や構造に対して、撹拌体の回転機構と共に置換して設けることができる。
【0013】
本発明の撹拌体は、従来の撹拌のための装置、つまり液体を撹拌体内に吸入しこれを吐出させて撹拌を行う装置とは異なり、回転軸上及び/又は回転軸付近から吸入した液体を撹拌体内において加熱することにより、該液体の粘度を低下させて撹拌体内での液体の流動性を高め、それにより撹拌体の周縁付近からの吐出をより促進する。つまり、回転する撹拌体の周縁部から遠心力により吐出する液体が、さらに流動性が高まることによって、より勢いよく吐出され、ひいては撹拌が効率的かつ均一に行えると共に、加熱もより速やかに均一な加熱を行うことができる。
言い換えれば、撹拌体の吸入口から液体を吸入する際に、撹拌体内部で液体を加熱しない場合よりもより多くの液体を吸入でき、撹拌容器内部の液体全体をより速やかに撹拌すると共に、より均一な温度とすることができる。
なお、本発明でいう回転軸上や回転軸付近とは、撹拌体を回転させる回転軸そのものや回転軸付近、及び、回転軸そのものではないが、撹拌体上の箇所であって回転軸の延長線上に位置する箇所及びその付近を含む。
【0014】
それに加え、撹拌される液体が、特に高温下にて反応や変質などを起こす不安定な液体である場合、従来は、撹拌容器中の加熱装置表面の温度を高くすると、その表面に触れた部分的な液体が高温になりすぎるため反応や変質して、該液体全体の品質が悪化するため、品質を低下させずに液体を均一に加熱するのに長時間かかっていた。
本発明は加熱された撹拌体内面をより速い速度で液体が通過するので、加熱面の表面に常に未加熱の液体が接し、部分的に液体を加熱し過ぎることを防止できる。
【0015】
本発明の撹拌体において使用される各部材の材料は、撹拌装置として公知の材料を採用することができる。
撹拌体は金属、セラミックス、樹脂、木質材料等から選択して採用でき、回転軸は金属、セラミックスや樹脂からなるものである。また撹拌体内部は中実でもよく、連通路やヒータの他の部分は空洞でもよいが、ヒータの熱を連通路に伝えることを考慮すると、中実のほうが連通路内を加熱するためには好ましい。
さらに撹拌体内の任意の位置に温度計を設置しておくことができる。それにより撹拌体内の液体の通過前後の温度変化等を検知・制御して、より適切な加熱を行うことが可能となる。
ヒータは撹拌容器内の液体を撹拌するときに採用できる公知のヒータであれば良く、撹拌体に接続または撹拌体内に設置できる形状や大きさであることが必要である。
本発明の撹拌体を得るために、金属、樹脂や木材により連通路や外面を形成する場合には、これらの材料から形成された部材とヒータとを組み合わせて一体のものとすることもできるが、例えば樹脂の場合には、連通路や吐出口、吸入口が形成される型内の所定の箇所にヒータを載置しておき、型内に樹脂を充填することによって、樹脂とヒータが一体となった本発明の撹拌体を得ることができる。
【0016】
このような、本発明の撹拌体を採用した撹拌装置にて撹拌される液体は、加熱しながら撹拌することを必要とする液体である。
そのような液体としては、化学工業の薬液反応プロセス、食品工業での製造プロセス、飲食品の保温、血液の保温、薬液、薬品や水の加熱、薬品製造、電子材料や半導体の製造プロセスでの薬液や洗浄剤の加熱、水槽内の保温等、これまで、加熱や保温等を行ってきた用途に使用することができる。
これらの用途に応じて、撹拌容器としては、タンク、ボトル、水槽、血液や薬品、飲食品等の液体中に撹拌体を投入して加温や保温等を行うための容器等が挙げられる。
そして、このような用途に応じて、室温よりも僅かに高い温度までの加熱・保温、高温まで加熱や保温、液体の昇温速度の高低、回転数等、加熱や保温等の条件に応じて、本発明の撹拌体Aの形状、構造や大きさ等を選択することができる。
【0017】
以下に図面に基づいて本発明を説明する。
図1は、本発明の撹拌体Aを使用した撹拌装置の全体概要図である。
撹拌容器Cの上部に回転軸Sを回転させるためのモータMを設け、該回転軸Sの先端にネジや係合、溶着等の公知の手段により撹拌部材を設けた構成は、回転軸を垂直に設けるタイプの撹拌装置とそれを備えた撹拌容器とからなる一般的な装置と共通する。
さらに例えば、上部から液体Lの任意の場所の温度を測定するための温度計Tを設けている。
この
図1において、回転軸Sの下端に図示しない連通路を加熱する加熱装置を備えた撹拌体Aを設け、これを回転させることによって、
図1中の矢印で示された液体Lの流れが発生して均一に撹拌するとともに均一に加熱を行う。
【0018】
図1に示す撹拌体Aを使用して撹拌容器内の液体を撹拌する方法について説明する。この方法は基本的に以下の図に示す他の形状及び/又は構造を有する撹拌体Aにも共通する。
撹拌体Aが撹拌容器内の液体内に浸漬され、次いで、撹拌体Aは
図2(a)の回転軸Sの図示する回転の方向に回転する。
撹拌体Aを液体内に浸漬したときには、特に撹拌体Aの吸入口1は直接液体からの液圧や、浸漬時に液体内を撹拌体Aが降下することによる押圧力にさらされる。
そのような力によって、該吸入口1内には液体が侵入して、少なくとも連通路3の一部を満たすことになる。
【0019】
例えば
図2(a)において、そのような状態の撹拌体Aを回転させることにより、連通路3内の液体に遠心力が働くことになり、その液体は吐出口2に向けて、つまり撹拌体Aの半径方向外側に向けて移動し、ついには吐出口2から撹拌体Aの外の液体内に吐出される。この吐出された液体はヒータ4によって加熱されており、かつ加熱前の液体よりも低粘度化されているので、撹拌体Aに吐出された後に上昇流となって、かつ撹拌体Aから受けた遠心力も作用して液体内に拡散する。なお、このときに、回転する撹拌体A付近の液体も回転方向に力が加わるので、吐出口から吐出された液体に随伴して、撹拌容器内を移動する。
連通路3内のこのような液体の動きによって、連通路3内の液体が減少するため、これを補うように吸入口1付近にあった液体が吸入口1から新たに吸入される。このような連通路3内の動きが連続して起こることによって、連続して吸入口1から液体が吸入され、吐出口2から連続して加熱された液体が吐出されるので、この撹拌体によって加熱と撹拌を同時に行うことができる。
この吸入口1付近に存在していた液体は連通路3内においてヒータ4によって加熱されて、温度が上昇すると共に、粘度も低下しながら吐出口2に向けて遠心力の作用により移動し最後には吐出口2から吐出される。このとき、ヒータ4から発生した熱は熱伝導によって連通路3や吐出口2の壁面を加熱するので、連通路3内の液体はそれらの壁面から加熱される。また、撹拌体Aの構造や形状にもよるが、ヒータ4から発生した熱の一部は撹拌体Aの外面にも伝熱して撹拌体Aの外面の液体も加熱でき、撹拌体周囲の粘度低下による液体の流動化を促進する効果もある。
このような液体の動きを継続することによって、撹拌容器内の液体が速やかに均一な温度にまで撹拌される。
なお、撹拌体Aに設けたヒータ4に通電するために、回転軸S内にはヒータ4に接続するための配線が設けられ、回転軸Sの上部には、該配線に接続されたリード部が設けられているために、該リード部を介して回転軸外から電力が供給される。
【0020】
以下に撹拌体Aについて、いくつかの具体的な形状、構造を以下の各図に示して説明する。
各図に示す撹拌体Aは、全て撹拌容器内の液面に垂直に設けた回転軸により回転されるものである。
図2(a)は撹拌体Aの断面図である。この撹拌体Aは円盤形状をしており、その円盤の一面は回転軸Sに接続されている。円盤の他面中央部であって、回転軸Sの延長線上に吸入口1を設け、撹拌体Aの周面には吸入口1と対応する吐出口2が設けられ、これらの吸入口1と複数吐出口2は連通路3により接続されている。
ここで、それぞれの連通路3の上部と下部には、連通路内の液体を加熱するようにヒータ4が設けられている。また、連通路3の上部と下部のみではなく、連通路3を取り囲むように連通路3の側部にもヒータ4を配置することもでき、ヒータ4と連通路3とは熱伝導性が良い金属等の部材により接続して、ヒータ4からの熱を積極的に連通路3に伝熱させてもよい。
なお、ヒータ4から発生した熱は全て連通路3内を加熱するために消費されるのではなく、結果的に、一部は撹拌体Aの表面に伝熱して、直に撹拌容器内の液体を加熱するために消費される。
吸入口1から吸入された液体はすぐに90°方向を変更されて、撹拌体Aの周縁部に向けて遠心力によって移動される。このような連通路は、例えばドリルによる穴加工で容易に吸入口1、吐出口2および連通路3を形成できるようにしている。
図2(b)は
図1に記載の撹拌体Aを下から見た図であり、この例では吸入口1は1つで吐出口2と連通路3は4つ設けられている。
図2(c)は
図1の撹拌体Aの側面図であって、撹拌体Aの側面に吐出口2を確認することができる。
図2(d)は撹拌体Aのヒータ4部分を大きくしたものである。このような大きいヒータ4を使用することにより、連通路3内をより確実に加熱することができる。
図2では吸入口1の断面を円形とし、吐出口2の断面を長方形としていたが、本発明において吸入口1や吐出口2の断面形状は特に限定されず、円形、楕円形、三角形、菱形等の任意の形状にすることができる。連通路3の断面形状も同様に限定されない。また、吸入口1、連通路3、及び吐出口2の断面積は互いに異なっていてもよい。
【0021】
図3(a)は撹拌体Aの断面図であり、上記
図1に示した撹拌体とは異なり、
図3(b)に示すように、撹拌体の回転軸Sと接続しない側の面には4つの吸入口1が、撹拌体Aの側面にも4つの吐出口2が、それぞれ等間隔で設けられており、吸入口1と吐出口2は1対1で接続するように、連通路3にて接続されている。
そして各連通路3の上下にはヒータ4が設けられており、個々のヒータ4は対応する連通路3内の液体を加熱する。
【0022】
図4(a)及び(b)に示す撹拌体Aにおいて、吸入口1、吐出口2および連通路3の配置は上記
図3に記載のものと共通するものの、ヒータ4を連通路3の上下に配置するのではなく、連通路3の側部に配置したものである。
このように配置することによって、撹拌体Aの厚さを薄くすることができるので、特に高粘度の液体を撹拌する際に、撹拌体Aの回転に係る抵抗を低減することができ、ひいては必要とするエネルギーを削減することもできる。
【0023】
図5は
図2で示した撹拌体Aの変形例である。連通路3と吐出口2を撹拌体Aの軸方向に2段にして、吸入口1を1つとし、この吸入口1から吸入した液体を2段の連通路3に分配した例である。
この例において、ヒータ4を2段の連通路3を挟むように3段設けることができる。
このような構造によれば、撹拌体の吐出口2から吐出させることができる液体の量を増加させることができ、ひいては撹拌をより速やかに行うことができる。
【0024】
図6は
図1に示した撹拌体Aにおいて吸入口1の位置を連通路から離して、吸入口1と連通路3を回転軸上に設けた長い縦方向連通路5により接続した例の図である。
このような形式の撹拌体Aによれば、例えば撹拌容器の底部付近の液体を吸入口1から吸入し、これを縦方向連通路5を通じて連通路3に供給し、その後吐出口2から吐出させることができる。このように、吸入口1を撹拌容器の底部付近に位置させる場合には、例えば、粒子や塊状物が沈殿している液体について、これらの沈殿物も液体と共に吸入口1から吸入しつつ、吐出口2から吐出することによって、積極的に沈殿物を撹拌する機能を発揮することも可能である。
このとき吐出口2の位置を撹拌容器中の液体の液面付近にしたり、液体中の中間の高さ付近にしたりして、撹拌容器中の液体の高さを考慮し、液体中のどの位置から液体を吸入し、どの位置に吐出するかを計画して、これに応じて適宜縦方向連通路5の長さを調整した撹拌体Aを採用することができる。
【0025】
図7(a)は
図6に示した撹拌体Aの変形例である。
図6に示した撹拌体Aの縦方向連通路5の長さを短くし、かつ、縦方向連通路5の周囲にもヒータ4を設置して吸入した液体を、より長い連通路5を通過する間に加熱することができる。このため加熱温度をより高くしたり、又は縦方向連通路5を通過する間、より液体の温度の上昇速度を遅くしながら所定の温度となるように加熱することができる。
加えて、縦方向連通路5、連通路3とその周囲のヒータ4を、吐出口2から吸入口1を被覆体6によって円錐の表面を形成するように被覆するので、特に粘度が高い液体に撹拌体を押し込む際の抵抗をより少なくすることができる。さらに撹拌体Aの回転時において、吸入口1付近の液体の一部が撹拌体Aの回転に付随して撹拌体Aと共に回転し、それによる遠心力によって撹拌体Aの表面に沿って上昇するので、このような作用によっても、液体を撹拌することができる。
このような結果、撹拌体Aの周囲の液体の流通がより円滑になり、液体が滞留し液体全体を均一に加熱できなくなる可能性を低減できる。
図7(a)の被覆体6の表面は撹拌体Aの縦方向連通路5や連通路3に向けて凹部を形成するようにされているが、
図7(b)は
図7(a)のさらに変形例であって、逆に凸部を形成するように、吐出口2から吸入口1までを被覆体6で被覆することにより表面を略半球状としている。
このような形状によって、上記
図7(a)で示す撹拌体Aと同様の作用を発揮することができる。
これら
図7(a)及び(b)に示す撹拌体Aにおける被覆体6の内部は空洞であってもよく、中実であってもよい。被覆体内部の構造や材料は、撹拌体Aを回転する際に必要なトルク、液体中の浮力等を考慮して決定することができる。材料としては、金属、樹脂、木質材料、セラミックス等の任意の材料を採用することができるが、撹拌対象である液体や、液体中に含有される粒子や塊状物を変質させる材料ではなく、また、撹拌される液体や液体中に含有される粒子や塊状物により変質される材料は使用できない。また特に樹脂を使用するときには、成形型内にヒータと必要な配線類を配置させた状態で液状の樹脂を注入することによって被覆体とヒータとを一体化させることもできる。
図7(c)は撹拌体Aのヒータ4部分を大きくしたものであり、このようなヒータ4を使用することにより、連通路3内をより確実に加熱することができる。
なお、
図7の各図においては撹拌体Aの下方の面のみの形状を変更したが、上方の面についても、同様に半球状等に成形することもでき、これにより撹拌力をさらに高めることができる。
【0026】
図8は例えば
図2に示す撹拌体Aの連通路3の形状を変更した例であって、撹拌体Aを下方から見た図である。回転軸S上に設けた吸入口1から吸入された液体は、4つの連通路3に分配されて、例えば、連通路3の上及び/又は下に配置したヒータ4によって加熱されながら吐出口2に向けて移動し、吐出口2から液体中に吐出さる。
このとき、連通路3は撹拌体Aの回転方向(吸入口1に記載した矢印)の後方に向けてなだらかに曲げられている。そのため、図示はしないがヒータ4により加熱される連通路3の長さは、連通路3が曲がっている分だけ長く、より加熱することができる。加えて、吐出口2から吐出する直前の連通路内の液体は、その移動方向が撹拌体Aの回転方向の後方に向けられている。そのため、遠心力により吐出されるときに、吐出口2の外側の周囲の液体に対する抵抗が少なく、かつその周囲の液体の粘性によって、吐出口2から吐出されて液体が周囲の液体に引っ張られる力も発生するために、より円滑に撹拌をすることが可能となる。
【0027】
図9は
図8の変形例であり、連通路3の長さを長くした撹拌体Aである。
連通路3の長さが長いことは、ヒータ4によって加熱される長さも長いことを示しており、吸入口1から吸入した液体をより高い温度に加熱したり、連通路3内での加熱速度をゆっくりとし、所定の温度にまで加熱をする場合に有用である。
加えて、吐出口2から吐出される液体は撹拌体Aの接線方向により近くなり、撹拌体Aの回転方向の後方により近くなるので、さらに円滑に加熱された多くの液体を吐出することができる。
【0028】
図2の変形例を
図10に示す。
図10の撹拌体Aは、回転軸上に設けられた吸入口1から吸入された液体が連通路3内を通過し、その間ヒータ4により加熱されて吐出口2から吐出される構造を有する。このとき、連通路3を広くしたので、連通路内面に接する液体の面積が増加したので、それだけヒータにより加熱される液体の量が増加することになる。そのため、より高温に加熱する場合や、連通路内にてより遅い昇温速度で加熱するとき等に使用することができる。
【0029】
図3に示した撹拌体Aの変形例を
図11に示す。
図11は撹拌体Aの回転軸Sの横であって、撹拌体Aの上部に吸入口1を設けた例である。この
図11に示す撹拌体Aを使用することによって、撹拌容器内において、撹拌体Aの上に位置する液体を吸入し連通路3内でヒータ4によって加熱して吐出口2から吐出することができる。
このような撹拌体Aを使用する場合には、例えば撹拌体Aを撹拌容器の底部付近に位置するようにし、撹拌体Aの上の回転軸S付近の液体を吸入し、吐出口2から吐出させた加熱された液体を、その加熱による比重の低下も利用して液面付近にまで対流させて、これを継続することによって、液体全体を加熱することが可能となる。
【0030】
図2の変形例を
図12(a)及び(b)に示す。
図12(a)では吐出口2の向きを斜め上方向にした。その結果、加熱されて吐出された液体が本来有する上昇流を形成する性質に加え、予め吐出する向きを斜め上方向とすることにより上昇流の形成をより強力なものとして、液体全体の撹拌、温度の均一化を促進できる。
このような撹拌体Aは特に撹拌槽の底部付近に位置させることによって、液体全体をより効率よく撹拌できることになる。
図12(b)の撹拌体Aは吐出口2が斜め下向きに向くように形成されているので、例えば底面の面積が大きく、それに比べて撹拌体が小さい場合に、撹拌体Aを撹拌容器底面付近に位置するようにして撹拌を行うことができる。そのとき、吐出されて本来上昇流を備えた加熱された液体は、すぐに液体中を上昇することなく、遠心力によって、下方向に拡散した後に液体中を上昇することになる。その結果、撹拌容器底面に対して特に小さい撹拌体を採用する場合であっても、液体全体を均一に撹拌することができる。
【0031】
図2の変形例を
図13に示す。
図13においては連通路3を回転軸に平行な方向に湾曲させて形成している。このような構造の連通路3とすることによって、連通路3内の液体を均一に加熱することができる。その結果、連通路3内の液体の流れをよりスムーズにすることができ、撹拌の効率を向上させることができる。
【0032】
以上、本発明の撹拌体に関して、その形状や構造を述べたが、撹拌体の形状や構造はこれらの図面に示したものに留まらず、吸入口、吐出口、連通路の数、吐出口の向き、連通路の形状等は上記図面に基づき任意に変更することができる。