【文献】
H.Banba, H.Shiga, A.Umezawa, T.Miyaba, T.Tanzawa, S.Atsumi, K.Sakui,"A CMOS Bandgap Reference Circuit with Sub-1-V Operation",IEEE Journal of Solid-State Circuits,米国,IEEE,1999年 5月,VOL.34, NO.5,page(s)670-674
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態による差動増幅器及び基準電圧発生回路について図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態による差動増幅器100を示す概略ブロック図である。
差動増幅器100は、本発明の実施形態で示される差動増幅器の概略構成を代表的な回路の単位にまとめて示したものである。
差動増幅器100は、メイン差動増幅回路10(Main Diff Amp)、バイアス制御差動増幅回路20及び(Bias Ctrl Amp)オープンドレイン出力回路30(Open Drain Buff)を備える。
【0028】
差動増幅器100におけるメイン差動増幅回路10は、正入力端子IN(+)と負入力端子IN(-)の対となる差動入力端子(1対の相補入力端子)、及び正出力端子DOPと負出力端子DONの対となる差動出力端子(相補の対となる出力端子)を有する全差動増幅回路(全差動増幅部)である。メイン差動増幅回路10は、正入力端子IN(+)と負入力端子IN(-)の対となる差動入力端子において、正入力端子IN(+)の電圧が高い場合に正出力端子DOPには高い電圧を出力し、負出力端子DONには低い電圧を出力する。メイン差動増幅回路10は、バイアス電流を定める制御信号が入力される制御端子BCONTが設けられる。メイン差動増幅回路10は、その制御端子BCONTに入力されるバイアス電流制御信号によって定められる動作点における動作特性によって、差動入力端子に入力される入力信号を増幅して、差動出力端子に出力する。
バイアス制御差動増幅回路20は、正入力端子DIPと負入力端子DINの対となる差動入力端子(1対の相補の入力端子)とシングルエンドの出力端子SOを有する差動増幅回路である。オープンドレイン出力回路30は、少なくとも1つのMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタからなるオープンドレイン出力回路である。
【0029】
メイン差動増幅回路10の差動出力端子(DOP、DON)には、バイアス制御差動増幅回路20の差動入力端子(DIP、DIN)が接続される。メイン差動増幅回路10の対となる差動出力端子の正出力端子DOPと負出力端子DONは、バイアス制御差動増幅回路20の対となる正入力端子DIPと負入力端子DINの差動入力端子それぞれに接続される、バイアス制御差動増幅回路20の出力SOには、メイン差動増幅回路10の制御端子BCONTが接続される。
メイン差動増幅回路10の差動出力端子の一方の出力端子(DON)には、オープンドレイン出力回路30のMOSトランジスタ31のゲートが接続され、MOSトランジスタ31のドレインが出力端子に接続される。
【0030】
差動増幅器100は、メイン差動増幅回路10が、正入力端子IN(+)と負入力端子IN(-)の対となる差動入力端子に入力される信号を増幅し、増幅された信号を差動出力端子(DOP、DON)に出力する。メイン差動増幅回路10は、その一方の出力端子である出力端子DONに接続されているオープンドレイン出力回路30に、出力した信号を入力する。オープンドレイン出力回路30は、入力された信号を増幅して、増幅された信号を出力端子に出力する。バイアス制御差動増幅回路20は、メイン差動増幅回路10の差動出力端子の正出力端子DOPと負出力端子DON間の電位差を検出し、検出した電位差に応じてメイン差動増幅回路10の動作点を制御するために、メイン差動増幅回路10のバイアス電流を制御する信号をメイン差動増幅回路10に入力する。
すなわち、本実施形態による差動増幅回路100は、入力される入力信号を定められる動作点における特性で増幅するメイン差動増幅回路10と、メイン差動増幅回路10の差動出力端子間の電位差を増幅しメイン差動増幅回路10の動作点を制御するバイアス制御差動増幅回路20と、メイン差動増幅回路10の出力信号を増幅して出力するオープンドレイン出力回路30とを有して構成される。
【0031】
図を参照して差動増幅器100の具体的な構成例を差動増幅器110として示し、その構成について説明する。
図2は、差動増幅器110を示すブロック図である。
差動増幅器110は、メイン差動増幅回路11、バイアス制御差動増幅回路21及びオープンドレイン出力回路31を備える。
差動増幅器110におけるメイン差動増幅回路11は、N型MOS電界効果トランジスタ(以下、「NMOS」と示す。)NMOS MN1、NMOS MN2、NMOS MN3、P型MOS電界効果トランジスタ(以下、「PMOS」と示す。)PMOS MP1、PMOS MP2を備える。
メイン差動増幅回路11においてNMOS MN1は、ゲートが負入力端子IN(-)に接続される。NMOS MN2は、ゲートが正入力端子IN(+)に接続され、ソースがNMOS MN1のソースに接続される。NMOS MN3は、ソースが接地電位VSSに、ドレインがNMOS MN1のソースに接続され、ゲートを回路点BCONT1とする。PMOS MP1は、ソースが電源VDDに、回路点DOP1を示すドレインがNMOS MN1のドレインに、ゲートが自身のドレインに接続される。PMOS MP2は、ソースが電源VDDに、回路点DON1を示すドレインがNMOS MN2のドレインに、ゲートがPMOS MP1のゲートに接続される。
【0032】
バイアス制御差動増幅回路21は、NMOS MN4、NMOS MN5、PMOS MP4、PMOS MP5を備える。
バイアス制御差動増幅回路21においてPMOS MP4は、ソースが電源VDDに、回路点DIP1を示すゲートがPMOS MP1のドレイン(回路点DOP1)に接続される。PMOS MP5は、ソースが電源VDDに、回路点DIN1を示すゲートがPMOS MP2のドレイン(回路点DON1)に、回路点SO1を示すドレインがNMOS MN3のゲートに接続される。NMOS MN4は、ソースが接地電位VSSに、ドレインがPMOS MP4のドレインに、ゲートが自身のドレインに接続される。NMOS NM5は、ソースが接地電位VSSに、ドレインがPMOS MP5のドレインに、ゲートがNMOS MN4のゲートに接続される。
【0033】
オープンドレイン出力回路31は、PMOS MP3を備える。
オープンドレイン出力回路31においてPMOS MP3は、ソースが電源VDDに、ゲートがPMOS MP2のドレイン(回路点DON1)に、ドレインが出力端子OUTに接続される。
各構成間の接続を整理すると、メイン差動増幅回路11の差動出力端子(DOP1、DON1)には、バイアス制御差動増幅回路21の差動入力端子(DIP1、DIN1)が接続される。メイン差動増幅回路11の対となる差動出力端子の正出力端子DOP1と負出力端子DON1は、バイアス制御差動増幅回路21の対となる正入力端子DIP1と負入力端子DIN1の差動入力端子それぞれに接続される、バイアス制御差動増幅回路21の出力SO1には、メイン差動増幅回路11の制御端子BCONT1が接続される。
メイン差動増幅回路11の差動出力端子の一方の出力端子(DON1)には、オープンドレイン出力回路30のMOSトランジスタ31のゲートが接続され、MOSトランジスタ31のドレインが出力端子に接続される。
【0034】
図を参照し前述の
図2に示した差動増幅器110における動作について説明する。
図3は、差動増幅器110の構成を簡略化して示したブロック図である。
図に示される差動増幅器110において、
図2に示された構成と同じ構成とするものには同じ符号を付し、異なる点について説明する。
差動増幅器110におけるメインの差動増幅回路11は、NMOS MN1とNMOS MN2とからなる差動回路11aと、差動回路11aの負荷となりPMOS MP1とPMOS MP2からなるカレントミラー回路11bと、差動回路11aの動作点を設定するNMOS MN3を有する定電流回路11cによって構成される。
なお、バイアス制御差動増幅回路21は、1つの増幅器としてまとめて示す。
【0035】
メインの差動増幅回路11において、入力オフセット電圧ΔVinが0とする制御での動作について説明する。メインの差動増幅回路11のPMOS MP1とPMOS MP2のドレイン、すなわち回路点DOP1と回路点DON1の電位をVa とVb とする。この時、この差動増幅回路11 の入力オフセット電圧ΔVin は、次式(6)のように表すことができる。
【0036】
ΔVin = (Va - Vb) / (gm・rds) ・・・(6)
【0037】
式(6)において、gmはNMOS MN1とNMOS MN2の相互コンダクタンス、rdsはPMOS MP1とPMOS MP2のドレイン抵抗である。
バイアス制御差動増幅回路21は、回路点DOP1と回路点DON1の電位Va とVbが等しくなるように、回路点BCONT1に与えるバイアス電圧を制御してNMOS MN3に流れるテール電流I0を制御する。バイアス制御差動増幅回路21によって制御された結果、回路点DOP1と回路点DON1の電位Va とVbは、ほぼ等しくなる(Va≒Vb)。すなわち、メインの差動増幅回路11におけるゲインが有限のゲイン(Av=gm・rds)であっても、式(6)に示されるように入力オフセット電圧ΔVinは、ほぼ0V(ボルト)となる(ΔVin≒0)。
【0038】
(第2実施形態)
図を参照して差動増幅器100の第2実施形態による構成例を差動増幅器120として示し、その構成について説明する。
図4は、差動増幅器120を示すブロック図である。
差動増幅器120は、メイン差動増幅回路12、バイアス制御差動増幅回路21及びオープンドレイン出力回路31を備える。この図に示される構成で、
図2に示した構成と同じ構成には、同じ符号を付し、異なる構成のメイン差動増幅回路12について説明する。
差動増幅器120におけるメイン差動増幅回路12は、NMOS MN1、NMOS MN2、NMOS MN3、NMOS MN6、NMOS MN7、NMOS MN8、NMOS MN9、PMOS MP1、PMOS MP2、PMOS MP6、PMOS MP7、PMOS MP8、PMOS MP9を備える。
【0039】
メイン差動増幅回路12におけるNMOS MN1は、ゲートが負入力端子IN(-)に接続される。NMOS MN2は、ゲートが正入力端子IN(+)に接続され、ソースがNMOS MN1のソースに接続される。NMOS MN3は、ゲートが回路点BCONT2を示し、ソースが接地電位VSSに、ドレインがNMOS MN1のソースに接続される。PMOS MP1は、ソースが電源VDDに、ドレインがNMOS MN1のドレインに、ゲートが自身のドレインに接続される。PMOS MP6は、ソースが電源VDDに、ゲートがPMOS MP1のゲートに接続される。NMOS MN6は、ソースが接地電位VSSに、ドレインがPMOS MP6 のドレインに、ゲートが自身のドレインに接続される。NMOS MN8は、ソースが接地電位VSSに、ゲートがNMOS MN6のゲートに接続される。
【0040】
PMOS MP2は、ソースが電源VDDに、ドレインがNMOS MN2のドレインに、ゲートが自身のドレインに接続される。PMOS MP7は、ソースが電源VDDに、ゲートがPMOS MP2のゲートに接続される。NMOS MN7は、ソースが接地電位VSSに、ドレインがPMOS MP7のドレインに、ゲートが自身のドレインに接続される。NMOS MN9は、ソースが接地電位VSSに、ゲートがNMOS MN7 のゲートに接続される。PMOS MP8は、ソースが電源VDDに、回路点DOP2を示すドレインがNMOS MN8のドレインに、ゲートが自身のドレインに接続される。PMOS MP9は、ソースが電源VDDに、回路点DON2を示すドレインがNMOS MN9のドレインに、ゲートがPMOS MP8のゲートに接続される。
【0041】
また、メイン差動増幅回路12と、バイアス制御差動増幅回路21及びオープンドレイン出力回路31との接続を示す。バイアス制御差動増幅回路21における回路点DIP1は、回路点DOP2を示すPMOS MP8のドレインに接続される。バイアス制御差動増幅回路21における回路点DIN1は、回路点DON2を示すPMOS MP9のドレインに接続される。バイアス制御差動増幅回路21における回路点SO1は、回路点BCONT2を示すNMOS MN3のゲートに接続される。オープンドレイン出力回路31の入力を示すゲートは、回路点DON2を示すPMOS MP9のドレインに接続する。
【0042】
差動増幅器120は、接続される負荷が重い場合や、メイン差動増幅回路12の出力振幅範囲(ダイナミックレンジ)をほぼ電源電圧範囲に広げたい場合などに適した回路である。
前述のメイン差動増幅回路11に対して、メイン差動増幅回路12ではPMOS MP6、MP7、MP8及びMP9とNMOS MN6、MN7、MN8及びMN9から構成されたカレントミラー構成の増幅回路を追加したことで、PMOS MP9のドレインとNMOS MN9 のドレイン(回路点DON2)でのメイン差動増幅回路の出力振幅範囲(ダイナミックレンジ)をほぼ電源電圧範囲に広げることができる。
【0043】
例えば、出力端子OUTに接続される負荷電流値が大きく、PMOS MP3のゲート・ソース間電圧VGS(MP3)が大きくなる場合には、前述のメイン差動増幅回路11では、出力端子間のオフセット電圧がゼロになるまでPMOS MP1、MP2のゲート・ソース間電圧VGSを大きくできない場合がある。これはNMOS MN1とMN2の共通接続されたソースの電位の変動範囲によって、ダイナミックレンジが制限されるためである。
一方、メイン差動増幅回路12では、NMOS MN1とMN2の共通接続されたソースの電位の変動範囲に影響されることなくPMOS MP3のゲート・ソース間電圧VGS(MP3)を大きくすることができる。そして、ダイナミックレンジをほぼ電源電圧範囲とすることができるため、大きな出力負荷電流に対しても、出力端子間のオフセット電圧をゼロとすることができる。
【0044】
ところで、
図4に追加されているPMOS MP6、MP7、MP8及びMP9とNMOS MN6、MN7、MN8及びMN9から構成されたカレントミラー構成の増幅回路の構成は、単にダイナミックレンジを広げるという意味では冗長な構成になっている。これは次の理由に依る。
PMOS MP8及びMP9、NMOS MN8及びMN9の各トランジスタを削除して、NMOS MN6のゲート・ドレインをNMOS MN7のゲートに接続したカレントミラー構成の増幅回路として、バイアス制御作動増幅回路の入力を、PMOS MP6とPMOS MP7のドレインからそれぞれ取り出すという構成にした場合について考えてみる。この場合、出力端子間のオフセット電圧がゼロになる条件は、PMOS MP6とPMOS MP7のドレイン電位が等しくなることである。ところが、PMOS MP6のドレインは、PMOS MP6のゲート・ソース間電圧VGSによって電位が決まるので、バイアス制御作動増幅回路によってNMOS MN3に流れる電流を変化させても出力端子間のオフセット電圧がゼロとなる条件を満足できない場合がある。このような問題を回避するために、PMOS MP8及びMP9、NMOS MN8及びMN9を含む一見冗長な構成の増幅回路となっている。
【0045】
上記で示したように
図4の回路においてNMOS MN5に流れる電流I5を考えてみると、NMOS MN1に流れる電流I1とカレントミラーの関係にある。即ち、PMOS MP1とPMOS MP6のカレントミラー接続、NMOS MN6とNMOS MN8のカレントミラー接続、PMOS MP8とPMOS MP4のカレントミラー接続を経由して、NMOS MN4とNMOS MN5のカレントミラー接続にNMOS MN1に流れる電流と同じ値の電流が流れる。つまり、PMOS MP6とNMOS MN6に流れる電流I6、NMOS MN8とPMOS MP8に流れる電流I8、PMOS MP4とNMOS MN4に流れる電流I4及び電流I5は、電流I1と同じ値の電流が流れることになる。
また、
図4の回路では、メイン差動増幅回路12が多段構成となり、その電圧増幅率自体が高くなる。電圧増幅率が高いということは、式(5)の分母(gm・rds) が大きくなるということと同じ意味をもつので、
図3の第1実施形態よりも更にオフセット低減の効果が期待できる。
【0046】
(第3実施形態)
図を参照して差動増幅器100の第3実施形態による構成例を差動増幅器130として示し、その構成について説明する。
図5は、差動増幅器130を示すブロック図である。
差動増幅器130は、メイン差動増幅回路13、バイアス制御差動増幅回路22及びオープンドレイン出力回路31を備える。この図に示される構成で、
図2に示した構成と同じ構成には、同じ符号を付し、異なる構成のメイン差動増幅回路13とバイアス制御差動増幅回路22について説明する。
差動増幅器130におけるメイン差動増幅回路13は、NMOS MN1、NMOS MN2、NMOS MN3、NMOS MN6、NMOS MN7、NMOS MN8、NMOS MN9、PMOS MP1、PMOS MP2、PMOS MP6、PMOS MP7、PMOS MP8、PMOS MP9を備える。
【0047】
メイン差動増幅回路13におけるNMOS MN1は、ゲートが負入力端子IN(-)に接続される。
NMOS MN2は、ゲートが正入力端子IN(+)に接続され、ソースがNMOS MN1のソースに接続される。NMOS MN3は、ゲートが回路点BCONT3を示し、ソースが接地電位VSSに、ドレインがNMOS MN1のソースに接続される。PMOS MP1は、ソースが電源VDDに、ドレインがNMOS MN1のドレインに、ゲートが自身のドレインに接続される。PMOS MP6は、ソースが電源VDDに、ゲートがPMOS MP1のゲートに接続される。NMOS MN6は、ソースが接地電位VSSに、ドレインがPMOS MP6のドレインに、回路点DOP3を示すゲートが自身のドレインに接続される。NMOS MN8は、ソースが接地電位VSSに、ゲートがNMOS MN6のゲートに接続される。
【0048】
PMOS MP2は、ソースが電源VDDに、ドレインがNMOS MN2のドレインに、ゲートが自身のドレインに接続される。PMOS MP7は、ソースが電源VDDに、ゲートがPMOS MP2のゲートに接続される。NMOS MN7は、ソースが接地電位VSSに、ドレインがPMOS MP7のドレインに、ゲートが自身のドレインに接続される。NMOS MN9は、ソースが接地電位VSSに、ゲートがNMOS MN7のゲートに接続される。PMOS MP8は、ソースが電源VDDに、ドレインがNMOS MN8のドレインに、ゲートが自身のドレインに接続される。PMOS MP9は、ソースが電源VDDに、回路点DON3を示すドレインがNMOS MN9のドレインに、ゲートがPMOS MP8のゲートに接続される。
【0049】
差動増幅器130におけるバイアス制御差動増幅回路22は、NMOS MN5、PMOS MP5を備える。
バイアス制御差動増幅回路22においてPMOS MP5は、ソースが電源VDDに、回路点DIN2を示すゲートがPMOS MP9のドレイン(回路点DON3)に、回路点SO2を示すドレインがNMOS MN3のゲートに接続される。NMOS NM5は、ソースが接地電位VSSに、ドレインがPMOS MP5のドレインに、回路点DIP2を示すゲートがNMOS MN6のゲート(回路点DOP3)に接続される。
また、オープンドレイン出力回路31の入力を示すゲートは、回路点DON3を示すPMOS MP9のドレインに接続する。
【0050】
バイアス制御差動増幅回路22は、前述のバイアス制御差動増幅回路21の構成を簡略化した例である。
バイアス制御差動増幅回路22は、対となるPMOS MP5とNMOS MN5からなる。そのNMOS MN5のゲートがNMOS MN6のゲートに接続されている。前述のバイアス制御差動増幅回路21と比べると、バイアス制御差動増幅回路21は、PMOS MP4及びMP5とNMOS MN4及びNMOS MN5で構成されているが、バイアス制御差動増幅回路22は、PMOS MP4とNMOS MN4が省略されている。これは、差動増幅回路13の出力端子間のオフセット電圧がゼロの平衡状態になった時には、NMOS MN1とNMOS MN2に流れる電流I1とI2は等しく、結果としてNMOS MN5に流れる電流I5は、前述の
図4の場合と等しくなるので、このような構成も可能となる。
【0051】
すなわち、
図4に示した差動増幅器120においてMN5に流れる電流I5を考えてみると、MN1に流れた電流I1とカレントミラーの関係にある。具体的には、PMOS MP1とPMOS MP6のカレントミラー接続、NMOS MN6とNMOS MN8のカレントミラー接続、PMOS MP8とPMOS MP4のカレントミラー接続を経由して、NMOS MN4とNMOS MN5のカレントミラー接続に、NMOS MN1に流れる電流値と同じ電流がそれぞれ流れる。したがって、NMOS MN5のゲートをNMOS MN6のゲートに接続すると、PMOS MP4とNMOS MN4は省略可能である。
本実施形態で示したメイン差動増幅回路13は、前述のメイン差動増幅回路12と基本的な動作が同じであり、バイアス制御差動増幅回路22との接続が異なる。
【0052】
(第4実施形態)
図を参照して差動増幅器100の第4実施形態による構成例を差動増幅器140を示し、その構成について説明する。
図6は、差動増幅器140を示すブロック図である。
差動増幅器140は、メイン差動増幅回路14、バイアス制御差動増幅回路22及びオープンドレイン出力回路31を備える。この図に示される構成で、
図2及び
図5に示した構成と同じ構成には、同じ符号を付し、異なる構成のメイン差動増幅回路14について説明する。
差動増幅器120におけるメイン差動増幅回路14は、NMOS MN1、NMOS MN2、NMOS MN3、NMOS MN6、NMOS MN7、NMOS MN8、NMOS MN9、PMOS MP1、PMOS MP2、PMOS MP6、PMOS MP7、PMOS MP8、PMOS MP9を備える。
【0053】
メイン差動増幅回路14におけるNMOS MN1は、ゲートが負入力端子IN(-)に接続される。NMOS MN2は、ゲートが正入力端子IN(+)に接続され、ソースがNMOS MN1のソースに接続される。NMOS MN3は、ゲートが回路点BCONT4を示し、ソースが接地電位VSSに、ドレインがNMOS MN1のソースに接続される。PMOS MP1は、ソースが電源VDDに、ドレインがNMOS MN1のドレインに、ゲートが自身のドレインに接続される。PMOS MP6は、ソースが電源VDDに、ゲートがPMOS MP1のゲートに接続される。NMOS MN6は、ソースが接地電位VSSに、ドレインがPMOS MP6のドレインに、ゲートが自身のドレインに接続される。NMOS MN8は、ソースが接地電位VSSに、ゲートがNMOS MN6のゲートに接続される。
【0054】
PMOS MP2は、ソースが電源VDDに、ドレインがNMOS MN2のドレインに、ゲートが自身のドレインに接続される。PMOS MP7は、ソースが電源VDDに、ゲートがPMOS MP2のゲートに接続される。NMOS MN7は、ソースが接地電位VSSに、ドレインがPMOS MP7のドレインに、ゲートが自身のドレインに接続される。NMOS MN9は、ソースが接地電位VSSに、回路点DOP4を示すゲートがNMOS MN7のゲートに接続される。PMOS MP8は、ソースが電源VDDに、ドレインがNMOS MN8のドレインに、ゲートが自身のドレインに接続される。PMOS MP9は、ソースが電源VDDに、回路点DON4を示すドレインがNMOS MN9のドレインに、ゲートがPMOS MP8のゲートに接続される。
【0055】
また、バイアス制御差動増幅回路22及びオープンドレイン出力回路31との接続を示す。バイアス制御差動増幅回路22における回路点DIN1は、回路点DON4を示すPMOS MP9のドレインに接続される。バイアス制御差動増幅回路22における回路点DIP1は、回路点DOP4を示すNMOS MN9のゲートに接続される。バイアス制御差動増幅回路22における回路点SO1は、回路点BCONT4を示すNMOS MN3のゲートに接続される。
オープンドレイン出力回路31の入力を示すゲートは、回路点DON4を示すPMOS MP9のドレインに接続する。
【0056】
バイアス制御差動増幅回路22は、対となるPMOS MP5とNMOS MN5からなる。そのNMOS MN5のゲートがNMOS MN9のゲートに接続されている。前述のバイアス制御差動増幅回路21と比べると、バイアス制御差動増幅回路21は、PMOS MP4及びMP5とNMOS MN4及びNMOS MN5で構成されているが、バイアス制御差動増幅回路22は、PMOS MP4とNMOS MN4が省略されている。これは、差動増幅回路13の出力端子間のオフセット電圧がゼロの平衡状態になった時には、NMOS MN1とNMOS MN2に流れる電流I1とI2は等しく、結果としてNMOS MN5に流れる電流I5は、前述の
図4の場合と等しくなるので、このような構成も可能となる。
【0057】
すなわち、
図4に示した差動増幅器120においてMN5に流れる電流I5を考えてみると、MN1に流れた電流I1とカレントミラーの関係にある。具体的には、PMOS MP1とPMOS MP6のカレントミラー接続、NMOS MN6とNMOS MN8のカレントミラー接続、PMOS MP8とPMOS MP4のカレントミラー接続を経由して、NMOS MN4とNMOS MN5のカレントミラー接続に、NMOS MN1に流れる電流値と同じ電流がそれぞれ流れる。したがって、NMOS MN5のゲートをNMOS MN6のゲートに接続すると、PMOS MP4とNMOS MN4は省略可能である。
本実施形態で示したメイン差動増幅回路14は、前述のメイン差動増幅回路12及びメイン差動増幅回路13と基本的な動作が同じであり、バイアス制御差動増幅回路22との接続点が異なる。
【0058】
(第5実施形態)
図を参照して差動増幅器100の第5実施形態による構成例を差動増幅器150として示し、その構成について説明する。
図7は、差動増幅器150を示すブロック図である。
差動増幅器150は、メイン差動増幅回路15、バイアス制御差動増幅回路23及びオープンドレイン出力回路32を備える。
差動増幅器150におけるメイン差動増幅回路15は、NMOS MN1、NMOS MN2、NMOS MN3、NMOS MN6、NMOS MN7、PMOS MP1、PMOS MP2、PMOS MP6、PMOS MP7を備える。
【0059】
メイン差動増幅回路15におけるNMOS MN1は、ゲートが正入力端子IN(+)に接続される。NMOS MN2は、ゲートが負入力端子IN(-)に接続され、ソースがNMOS MN1のソースに接続される。NMOS MN3は、ゲートが回路点BCONT5を示し、ソースが接地電位VSSに、ドレインがNMOS MN1のソースに接続される。PMOS MP1は、ソースが電源VDDに、ドレインがNMOS MN1のドレインに、ゲートが自身のドレインに接続される。PMOS MP6は、ソースが電源VDDに、ゲートがPMOS MP1のゲートに接続される。NMOS MN6は、ソースが接地電位VSSに、ドレインがPMOS MP6のドレインに、回路点DOP5を示すゲートが自身のドレインに接続される。
【0060】
PMOS MP2は、ソースが電源VDDに、ドレインがNMOS MN2のドレインに、ゲートが自身のドレインに接続される。PMOS MP7は、ソースが電源VDDに、ゲートがPMOS MP2のゲートに接続される。NMOS MN7は、ソースが接地電位VSSに、回路点DON5を示すドレインがPMOS MP7のドレインに、ゲートがNMOS MN6のゲートに接続される。
【0061】
オープンドレイン出力回路32は、NMOS MN14を備える。
オープンドレイン出力回路32におけるNMOS MN14は、ソースが接地電位VSS、ゲートがNMOS MN7のドレインに、ドレインが出力端子OUTに接続される。
【0062】
バイアス制御差動増幅回路23は、NMOS MN4、NMOS MN5、PMOS MP4、PMOS MP5を備える。
バイアス制御差動増幅回路23におけるNMOS MN4は、ソースが接地電位VSSに、回路点DIP3を示すゲートがNMOS MN6のゲートに接続される。NMOS MN5は、ソースが接地電位VSSに、回路点DIN3を示すゲートがNMOS MN7のドレインに接続される。
PMOS MP4は、ソースが電源VDDに、ドレインがNMOS MN4のドレインに、ゲートが自身のドレインに接続される。PMOS MP5は、ソースが電源VDDに、回路点SO3を示すドレインがNMON MN3のゲートおよびNMOS MN5のドレインに、ゲートがPMOS MP4のゲートに接続される。
【0063】
負荷回路の種類によっては、PMOSオープンドレイン出力よりもNMOSオープンドレイン出力のほうが適している場合がある。そのような場合に、この実施形態は適している。メイン差動増幅回路15におけるNMOS MN6とNMOS MN7のドレイン電位が等しくなるように、バイアス制御差動増幅回路23におけるPMOS MP4、MP5、NMOS MN4、NMOS MN5が、メイン差動増幅回路15のバイアスを制御する動作を行う。
【0064】
(第6実施形態)
図を参照して差動増幅器100を用いた基準電圧発生回路200について説明する。
図8は、基準電圧発生回路200を示すブロック図である。
基準電圧発生回路200は、メイン差動増幅回路10、バイアス制御差動増幅回路20及びオープンドレイン出力回路31からなる差動増幅器100と、基準電源回路41とを備える。
この図に示される構成で、
図1に示した構成と同じ構成には、同じ符号を付し、異なる構成の基準電源回路41について説明する。
【0065】
基準電圧発生回路210における基準電源回路41は、「非特許文献1」に報告されている低電圧バンドギャップ電源回路である。
その構成を説明する。
PNOS MP11とPNOS MP12は、ソースが電源VDDに接続され、ゲートが差動増幅器のオープンドレイン出力回路31のMOSトランジスタのゲートにカレントミラー接続される。ダイオードD1は、抵抗R1と並列接続され、アノードがPMOS MP11のドレインに、カソードが接地電位VSSに接続される。ダイオードD2は、アノードが抵抗R3を介してPMOS MP12のドレインに、カソードが接地電位VSSに接続される。抵抗R2は、PMOS MP12のドレインと、接地電位VSSに接続される。NMOS MN13は、ゲートが入力端子PwrUPに、ドレインがオープンドレイン出力回路31のMOSトランジスタのゲートに、ソースが接地電位VSSに接続される。また、PNOS MP11のドレインは、回路点BGX1を示し、差動増幅器の正入力端子IN(+)に接続される。PNOS MP12のドレインは、回路点BGXNを示し、差動増幅器の正入力端子IN(−)に接続される。
【0066】
差動増幅器100は、前述の本実施形態に示した各差動増幅器が適用できる。差動増幅器の具体的な構成を適用した基準電圧発生回路の例を示す。
図10は、基準電圧発生回路210を示すブロック図である。
基準電圧発生回路210は、メイン差動増幅回路11、バイアス制御差動増幅回路21及びオープンドレイン出力回路31からなる差動増幅器110と、基準電源回路41とを備える。差動増幅器110の負入力端子IN(-)、正入力端子IN(+)及び回路点DON1には、基準電源回路41の回路点BGXN、BGX1及びBGBがそれぞれ接続される。
【0067】
また、
図11は、基準電圧発生回路220を示すブロック図である。
基準電圧発生回路220は、メイン差動増幅回路12、バイアス制御差動増幅回路21及びオープンドレイン出力回路31からなる差動増幅器120と、基準電源回路41とを備える。差動増幅器120の負入力端子IN(-)、正入力端子IN(+)及び回路点DON2には、基準電源回路41の回路点BGXN、BGX1及びBGBがそれぞれ接続される。
【0068】
また、
図12は、基準電圧発生回路230を示すブロック図である。
基準電圧発生回路230は、メイン差動増幅回路14、バイアス制御差動増幅回路22及びオープンドレイン出力回路31からなる差動増幅器140と、基準電源回路41とを備える。差動増幅器140の負入力端子IN(-)、正入力端子IN(+)及び回路点DON4には、基準電源回路41の回路点BGXN、BGX1及びBGBがそれぞれ接続される。
【0069】
これらの図に示される構成で、前述の各図に示した構成と同じ構成には、同じ符号を付し、異なる構成の基準電源回路41について説明する。
【0070】
図9を参照して、低電圧バンドギャップ電源の動作について簡単に説明する。
ダイオードD1とダイオードD2の接合面積の比は1:Nとする。また、簡単のために抵抗R1と抵抗R2は等しい値で、PMOS MP11、MP12及びMP3のP型チャネルのゲート幅とゲート長は等しいと仮定する。
NMOS MN1、MN2及びMN3並びにPMOS MP1及びMP2から構成される差動増幅器によって、差動増幅回路の相補入力電圧Vx1 とVxNの電位が等しくなるように、電流I11,I12,及びI3が制御される。すなわち、次式(7)が成り立つと仮定する。
【0071】
I11 = I12 = I3 ・・・(7)
【0072】
Vx1 = Vf1、Vx1 = Vx2、かつR1 = R2 であるから、抵抗R1とR2に流れる電流I11b, I12b は次式(8)の通りである。
【0073】
I11b = I12b = Vf1 / R1 ・・・(8)
【0074】
ダイオードD1に流れる電流I11aとダイオードD2に流れる電流I12aは次のように表すことができる。
【0075】
I11a = Is・A・exp{Vf1 / (kT/q)} ・・・(9)
【0076】
I12a = Is・NA・exp{Vf2 / (kT/q)} ・・・(10)
【0077】
式(9)と式(10)において、Isは単位面積あたりの接合の逆方向飽和電流、AとNAはダイオードD1とダイオードD2の接合面積である。
PMOS MP11とMP12は、チャネルサイズの等しいPMOSトランジスタによるカレントミラー回路なので、ダイオードD1とD2に流れる電流は等しく(I11a=I12a)なることから、式(9)と式(10)の比を取り、Vf1とVf2の差を求めると次式(11)のようになる。
【0078】
Vf1 - Vf2 = (kT/q)・ln(N) ・・・(11)
【0079】
差動増幅回路の相補入力電圧は仮想ショートされて等しい(Vx1=VxN)ので、式(11)は、抵抗R3に掛かる電圧dVf と等しいから、次の通りである。
【0080】
dVf = Vf1 - Vf2 = (kT/q)・ln(N) ・・・(12)
【0081】
式(7)と式(8)より、I11a=I12a であり、式(12)から抵抗R3に流れる電流I12a が次式(13)として示される。
【0082】
I11a=I12a = dVf / R3 = (1 / R3)・(kT/q)・ln(N) ・・・(13)
【0083】
以上より、PMOS MP3の電流I3 が次式(14)として示される。
【0084】
I3 = I12 = I12a + I12b = (1 / R3)・(kT/q)・ln(N) + Vf1 / R1 ・・・(14)
【0085】
これより、出力される基準電圧Vref が次式(15)として示される。
【0086】
Vref = R4・I3 = (R4 / R1)・{Vf1 + (R1 / R3)・(kT/q)・ln(N)} ・・・(15)
【0087】
式(15)の{ }内は、通常のバンドギャップ電源と同じ形である。{ }内第1項のVf1 が負の温度係数を持ち、{ }内第2項の((kT/q)・ln(N))は正の温度係数を持つので、R1/R3の値を適切に調整すると温度係数を相殺することができる。詳細は省略するが、{ }内で示される電圧が1.2V(ボルト)程度で温度係数がゼロになることが知られている。式に示すと式(16)となる。
【0088】
Vf1 + (R1 / R3)・(kT/q)・ln(N) = 1.2(V) ・・・(16)
【0089】
したがって、抵抗R1に対する抵抗R4の比を0.5〜0.6程度(R4/R1=0.5〜0.6) に設定すると、基準電圧として0.6〜0.72V(ボルト)(Vref = 0.6〜0.72V)の電圧を得ることができる。このようにして、電源電圧が1.2V(ボルト)程度の低電圧半導体装置向けのバンドギャップ電源として適切な基準電圧を得ることができる。
以上の動作の説明の中では、差動増幅回路の入力オフセット電圧の影響はゼロであることを仮定していた。
【0090】
実際の回路では、入力オフセット電圧の影響をゼロにすることは、
図9の差動増幅回路の構成では困難であることを以下に説明する。
説明を簡単にするために、PMOS MP1、MP2、MP11、MP12及びMP3のゲート長とゲート幅は等しいと仮定する。
【0091】
まず、差動増幅回路のテール電流I0が、ダイオードD1とD2に流れる電流I11、I12の2倍よりも小さい場合を考えてみる。式で示すと式(17)で示される。
【0092】
I0 < 2・I11 又は I0 < 2・I12 ・・・(17)
【0093】
仮に、入力オフセット電圧が生じていない場合では、Vx1=VxN であれば、I1=I2となり、Va=Vb となるはずである。ところが、Va=Vb であるということは、PMOS MP11とPMOS MP12は、カレントミラーと同じなので、I11=I12=I1=I2でなければならないこととなる。
これは上記の式(17)で示した仮定と矛盾してしまう。したがって、少なくともVb>Va となって、PMOS MP11とMP12に式(14)に示す電流が流せるように、差動増幅回路のI1とI2はI1>I2となる。この電流の差(I1 - I2)は、NMOS MN1とMN2の入力オフセット電圧の発生原因そのものである。すなわち、入力オフセット電圧ΔVos = Vx1 - VxN とすると、NMOS MN1とMN2の相互コンダクタンスgm として、次式(18)のように表すことができる。
【0094】
ΔVos = (I1 - I2) / gm ・・・(18)
【0095】
さらに、テール電流I0をダイオードD1とD2に流れる電流I11、I12の2倍よりも大きくする場合(I0 > 2・I11 又は I0 > 2・I12)も同様である。
すなわち、ΔVos をゼロにするには、テール電流I0は、ダイオードD1とD2に流れる電流I11、I12の2倍(I0=2・I11 又はI0=2・I12)を満足させる必要がある。
図9の場合、PMOS MP11のゲート幅をPMOS MP11、MP12の2倍程度にして、I0=2・I11 又はI0=2・I12 を満足させようとする場合には、NMOS MN3とMN10のミラー比が一定にならないとそのような設計はできない。ところが、NMOS MN3のドレイン電圧となるコモンソースのノード電位Vcs は、次式(19)のようになる。
【0096】
Vcs = Vf1 - VGS(MN2) ・・・(19)
【0097】
これは、NMOS MN10のドレイン電圧であるVGS(MN10)よりは相当に低く、NMOS MN3が飽和領域で動作することは非常に難しいことは容易に想像できる。例えば、
【0098】
Vf1=600mV、VGS(MN2)=500mV、VGS(MN10)=600mV
【0099】
とすれば、Vcs=100mV しかなく、NMOS MN3は明らかに線形領域で動作することになる。つまり、NMOS MN3に流れる電流値I0をある特定の条件でI0=2・I11 又はI0=2・I12 となるように設計したとしても、温度や電源電圧の変動でいくらでも変化してしまうことになる。これを軽減するために、NMOS MN1とMN2のスレッショルド電圧VT をディプレッション側に低くすることも対策手段の一つであるが、スレッショルド電圧VTの異なる複数のトランジスタを用意する必要が生じる。
そこで、上記の問題を解決するために、本発明の第1実施形態である
図2の差動増幅回路を適用した
図10の回路では、特別なトランジスタを用いること無く、かつ温度や電源電圧が変動しても、ΔVos=0 にすることができる。
図10の回路では、NMOS MN3に流れる電流を、PMOS MP1とMP2のドレイン電圧が等しくなるように制御するので、
図9のI1〜I3、I11、I12に相当する電流は全て等しくなり、式(13)の右辺は常にゼロに保たれることになる。
【0100】
図を参照し、本実施形態による基準電圧発生回路の特性について説明する。
図13は、基準電圧発生回路の基準電圧出力特性を示すグラフである。このグラフの横軸は電源電圧VDD(V(ボルト))を示し、縦軸は基準電圧出力の電圧Vref(V(ボルト))を示す。
この図に示されるグラフ11は、基準電圧発生回路210が出力する基準電圧出力の電源電圧変化に対する依存性を示す。グラフ12は、基準電圧発生回路220が出力する基準電圧出力の電源電圧変化に対する依存性を示す。グラフ13は、基準電圧発生回路230が出力する基準電圧出力の電源電圧変化に対する依存性を示す。また、グラフ14は、
図9に示した従来方式における基準電圧発生回路290が出力する基準電圧出力の電源電圧変化に対する依存性を比較のためにあわせて示す。この図に示されたグラフから、従来方式によるグラフ14に比べ、グラフ11、12及び13の傾きが平坦となっていることが示されている。すなわち、グラフ11、12及び13では、電源電圧変化があっても出力される電圧の変化量が少なくなり、安定に動作していることが示されている。
【0101】
図14は、基準電圧発生回路の入力オフセット電圧特性を示すグラフである。このグラフの横軸は電源電圧VDD(V(ボルト))を示し、縦軸は入力オフセット電圧ΔVos(V(ボルト))を示す。
この図に示されるグラフ21は、基準電圧発生回路210における入力オフセット電圧の電源電圧変化に対する依存性を示す。グラフ22は、基準電圧発生回路220における入力オフセット電圧の電源電圧変化に対する依存性を示す。グラフ23は、基準電圧発生回路230における入力オフセット電圧の電源電圧変化に対する依存性を示す。また、グラフ24は、
図9に示した従来方式における基準電圧発生回路290における入力オフセット電圧の電源電圧変化に対する依存性を比較のためにあわせて示す。この図に示されたグラフから、従来方式によるグラフ24に比べ、グラフ21、22及び23の値が小さくなっていることが示されている。また、グラフ21、22及び23では、電源電圧変化があっても入力オフセット電圧の変化も少なくなり、安定に動作していることが示されている。
【0102】
(第7実施形態)
図を参照し、本発明の差動増幅器を適用するのに好適な他の実施形態について説明する。その実施形態の例として、定倍回路について示す。
図15は、定倍回路310を示すブロック図である。
図に示される定倍回路310は、差動増幅器110と、抵抗R5、抵抗R6を備える。
抵抗6は、一端が差動増幅器110の出力端子に接続され、他端が抵抗R5を介して接地電位VSSに接続され、また差動増幅器110の負入力端子IN(−)(反転入力端子)に接続される。抵抗R5と抵抗R6は、差動増幅器110の出力電圧VOUTを分圧し、分圧された電圧をフィードバック量とする負帰還回路を構成している定倍回路である。
定倍回路310の出力電圧VOUTは、次式(20)で表される。
【0103】
VOUT = ( 1 + R6 / R5)・Vin ・・・(20)
【0104】
図16は、比較のために示した従来技術の定倍回路390を示す。
定倍回路390に用いられる差動増幅器190では、差動入力のテール電流を制御するNMOS MN3は、NMOS MN12とカレントミラー接続されている。そのため、抵抗R7とNMOS MN12とで定められる電流に応じた電流が、NMOS MN3に流れるテール電流となる。
【0105】
図を参照し、定倍回路310の出力電圧特性について説明する。
図17は、定倍回路の出力電圧を負荷電流がゼロの時に1V(ボルト)になるように設定したときの、出力電圧と負荷電流の関係を示すグラフである。このグラフの横軸は、負荷電流Iout(μA(マイクロ アンペア))を示し、縦軸は入力オフセット電圧ΔVos(V(ボルト))を示す。
この図に示されるグラフ31は、定倍回路310の出力電圧特性を示すグラフである。
グラフ32は、従来回路の差動増幅器190を用いた定倍回路390の出力電圧特性を示すグラフである。
本発明の差動増幅回路によるグラフ31では、負荷電流Ioutが増加すると、出力電圧が低下する傾向を示しているが、その電圧の変化は大きな変化ではない。それに対し、従来回路によるグラフ32では、負荷電流の増加に伴い出力電圧が大きく変動してしまう。
それぞれのグラフを比較を行うと、本発明を適用することで改善されていることが示されている。
【0106】
このような特性を得ることができる定倍回路の動作について説明する。
説明を簡単にするため、
図15に示される差動増幅器110及び
図16に示される差動増幅器190のPMOS MP1、MP2及びMP3のサイズは等しく、同じ特性を有しているものと仮定する。
この仮定に基づき
図16に示される定倍回路390において、負荷電流Ioutがゼロの時に所定の出力電圧が得られるような回路定数の最適化について説明する。前述の入力オフセット電圧について示したことからも明らかなように、
図16のNMOS MN3に流れるテール電流I0を、フィードバック路をなす抵抗R5とR6に流れる帰還電流の2倍に設定したときに、誤差の無い出力が得られることになる。
【0107】
このような定倍回路390では、消費電流を抑えるために、抵抗R5とR6の抵抗値が十分高い抵抗値に設定され、NMOS MN3に流すテール電流I0も少なく設定されることが多い。そのような場合、抵抗R5とR6に流れる帰還電流が少なくなる。さらに、負荷電流Ioutが無い場合において、このテール電流I0を多く流すとオフセット誤差を発生してしまうことになる。
【0108】
また、負荷電流Ioutを増加させていくと、入力オフセット電圧が極端に悪化する。その原因は、負荷電流Ioutの増加に応じてPMOS MP3のゲート電位を下げることが必要になり、テール電流I0を少なく設定しているために、NMOS MN1とMN2に流れる電流I1とI2のバランスを崩して、それぞれの電流の比を大きくすることが必要となるためである。そのため、入力オフセットは極端に悪化してしまう。
【0109】
一方、
図15に示す回路では、NMOS MN3に流れる電流I0は、負荷電流Ioutと抵抗R5,R6に流れる帰還電流の和(すなわちMP3に流れる電流)の2倍になるようにバイアス制御差動増幅回路21によって制御されることになる。そのため、負荷電流Ioutが増加しても入力オフセット電圧を最小となる条件となるようにバイアス制御差動増幅回路21が制御するので、出力電圧の変動幅を小さくすることができる。
【0110】
差動増幅器を適用する回路において、入力信号の電圧レベルが小さい場合、或いは出力電流が変動する場合などの要因によって、その差動増幅器のバイアス設定を最適化させることが困難となることがある。そのような条件の場合に、本発明の差動増幅器を適用することによって、入力オフセット電圧を抑制することができ、誤差の少ない基準電圧を提供することが可能となる。
【0111】
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。本発明の差動増幅器並びに基準電圧発生回路における、構成要素には、類似の機能を有する素子を適用することができ、構成数や接続形態についても特に限定されるものではない。
また、本実施形態で示した回路構成について、電源の極性と回路素子の極性をそろえて代えることにより、極性の異なる導電型の回路素子を適用することができる。
また、オープンドレイン出力回路30、オープンドレイン出力回路31及びオープンドレイン出力回路32は、1つのMOSトランジスタを備えることとして説明したが、複数のMOSトランジスタを用いた回路とすることもできる。
【0112】
本発明の差動増幅器は、差動増幅器100、差動増幅器110、差動増幅器120、差動増幅器130、差動増幅器140、差動増幅器150である。また、本発明のメイン差動増幅回路は、メイン差動増幅回路10、メイン差動増幅回路11、メイン差動増幅回路12、メイン差動増幅回路13、メイン差動増幅回路14、メイン差動増幅回路15である。また、本発明のバイアス制御差動増幅回路は、バイアス制御差動増幅回路20、バイアス制御差動増幅回路21、バイアス制御差動増幅回路22、バイアス制御差動増幅回路23である。また、本発明のオープンドレイン出力回路は、オープンドレイン出力回路30、オープンドレイン出力回路31、オープンドレイン出力回路32である。また、本発明の第1のオープンドレイン出力回路は、オープンドレイン出力回路31である。また、本発明の第2のオープンドレイン出力回路は、オープンドレイン出力回路32である。
また、本発明の基準電圧発生回路は、基準電圧発生回路200、基準電圧発生回路210、基準電圧発生回路220、基準電圧発生回路230である。
【0113】
また、本発明の1対の差動増幅回路は、N型MOSトランジスタ(NMOS) NM1とP型MOSトランジスタ(PMOS)とで構成される差動回路11aである。また、本発明の電流制御回路は、定電流回路11c(N型MOSトランジスタ(NMOS) MN3)である。また、本発明のカレントミラー回路は、例えばカレントミラー回路11bである。また、本発明の差動増幅部は、メイン差動増幅回路10、メイン差動増幅回路11、メイン差動増幅回路12、メイン差動増幅回路13、メイン差動増幅回路14、メイン差動増幅回路15である。